JP2017012168A - 食品の褐変化抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】焙煎味噌を利用して食品の褐変化を抑制することができる食品の褐変化抑制剤を提供する。【解決手段】本発明に係る食品の褐変化抑制剤は、空気中で加熱して得られた焙煎味噌からエタノールで抽出したエタノール抽出物を含有する。本発明に係る食品の褐変化抑制剤の製造方法は、味噌を空気中で加熱して焙煎味噌を製造する工程と、得られた焙煎味噌からエタノールで抽出してエタノール抽出物を得る工程とを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、食品の褐変化を抑制する食品の褐変化抑制剤に関する。
食品の品質を、その外観、風味、食感などの指標により判断することがある。新鮮な食品や製造してからの時間が短い食品の色と比較して、同じような色の食品であれば、品質が維持されているとみなすことがある。
食品の色を変化させる機構の一つに糖とアミノ酸との反応であるメイラード反応がある。メイラード反応では、最終的にメラノイジンと呼ばれる重合体の褐色生成物などが生成される。メイラード反応を阻害する物質として、食品加工において発生する物質を原料として用いて製造したメイラード反応阻害剤がある。例えば、醤油粕抽出物、あん粕抽出物、そばがら水抽出物を含むメイラード反応阻害剤が特許文献1に開示されている。その他、摘果ブドウ抽出物を含む抗糖化剤が特許文献2に開示されている。
特開2006−256977号公報 特開2012−116835号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されるメイラード反応阻害剤は必ずしも実用化に至っていないという課題がある。
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、焙煎味噌を利用して食品の褐変化を抑制することができる食品の褐変化抑制剤を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明の食品の褐変化抑制剤は次の構成を備える。すなわち本発明は、空気中で加熱して得られた焙煎味噌からエタノールで抽出したエタノール抽出物を含有することを特徴とする。この構成によれば、食品の褐変化を抑制することができる。
また、本発明において、前記焙煎味噌が、味噌を、スプレードライ装置によってスプレードライして乾燥味噌を製造する際、前記スプレードライ装置に付着して過加熱された味噌であってもよい。これによれば、過加熱された焙煎味噌を有効利用できる。
また、本発明において、醤油に添加することにより、醤油の褐変化を抑制できる。これによれば、色が変化しやすい醤油の褐変化を抑制できる。
また、本発明において、さらに、しらこたん白抽出物を含有していてもよい。これによれば、食品の褐変化を抑制する効果が高まる。
また、本発明の食品の褐変化抑制剤は、フラボノイドを有効成分として含有することを特徴とする。
また、本発明において、前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有する。
(1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=255.0616[M+H]+、m/z=253.0501[M−H]-
(2)分子量:254
(3)分子式:C16143
また、本発明において、前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有する。
(1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=255.0616[M+H]+、m/z=253.0501[M−H]-
(2)分子量:254
(3)分子式:C15104
また、本発明において、前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有する。
(1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=271.0561[M+H]+、m/z=269.0443[M−H]-
(2)分子量:270
(3)分子式:C15105
また、本発明において、前記フラボノイドが、ゲニステインである。
上記の目的を達成するため、本発明の食品の褐変化抑制剤の製造方法は次の構成を備える。すなわち本発明は、味噌を空気中で加熱して焙煎味噌を製造する工程と、得られた焙煎味噌からエタノールで抽出してエタノール抽出物を得る工程とを含むことを特徴とする。この構成によれば、焙煎味噌のエタノール抽出物に食品の褐変化を抑制する物質が含まれる。
また、本発明において、前記焙煎味噌は、スプレードライ装置によってスプレードライして乾燥味噌を製造する際、前記スプレードライ装置に付着した味噌を過加熱して製造してもよい。これによれば、通常の味噌としては利用できない過加熱された味噌から食品の褐変化抑制剤を得ることができる。
また、本発明において、前記エタノール抽出物に、フラボノイドを有効成分として含有する。
また、本発明において、前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有する。
(1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=255.0616[M+H]+、m/z=253.0501[M−H]-
(2)分子量:254
(3)分子式:C16143
また、本発明において、前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有する。
(1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=255.0616[M+H]+、m/z=253.0501[M−H]-
(2)分子量:254
(3)分子式:C15104
また、本発明において、前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有する。
(1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=271.0561[M+H]+、m/z=269.0443[M−H]-
(2)分子量:270
(3)分子式:C15105
また、本発明において、前記フラボノイドが、ゲニステインである。
本発明に係る食品の褐変化抑制剤によれば、焙煎味噌を利用して食品の褐変化を抑制することができる食品の褐変化抑制剤を提供できる。
食品のエタノール抽出物添加による醤油の色濃淡安定率を示す。 分離された各フラクションを試験管に入れたときの外観写真である。 Fr.4をゲルろ過クロマトグラフィーにより分離し、エタノールの溶出量に対する紫外線吸光度(A254)のグラフである。 液体クロマトグラフ質量分析計を用いて測定したピーク1のMSスペクトルである。 液体クロマトグラフ質量分析計を用いて測定したピーク2のMSスペクトルである。
本実施形態の褐変化抑制剤の原料となる物質は味噌である。食品の褐変化抑制剤は、焙煎味噌から抽出される抽出物を含有するものであり、焙煎味噌の抽出物の抽出には極性溶媒を用い、例えば、エタノールを用いて行うことができる。一般的な抽出方法によって焙煎味噌の抽出物は得られ、例えばソックスレー抽出器を用いたソックスレー抽出法を採用し得る。焙煎味噌から抽出されたエタノール抽出物を含有することにより、食品の褐変化を抑制することができる。
焙煎味噌は、味噌を鉄板などの上で加熱する通常の焙煎方法によって得ることができる。あるいは、乾燥味噌の製造工程において大量に発生して廃棄される味噌を有効利用できる。乾燥味噌の製造方法として、スプレードライ装置によって、液状味噌をノズルから加熱空気中に噴霧して粉状に乾燥するスプレードライ法がある。スプレードライ装置によって味噌を乾燥すると、製品となる乾燥味噌が得られると共に、スプレードライ装置におけるノズルや液状味噌が噴霧される容器の壁面に付着した液滴が過加熱された、いわゆる焦げ味噌が生じる。通常この過加熱された焦げ味噌は廃棄される。この焦げ味噌は焙煎味噌と呼べるものであって、本実施形態では、この焦げ味噌を焙煎味噌として有効利用するものである。焙煎味噌は、製品となる乾燥味噌と同様に粉末状であり、乾燥味噌よりも褐色が濃い。
焙煎味噌を得る味噌は、その原料、配合量、熟成期間などは特に限定されない。すなわち、味噌の種類は特に限定されなく、色の違いによる赤味噌、白味噌、原料の違いによる米味噌、豆味噌、麦味噌を用いることができる。焙煎されることで元の味噌よりも褐色が濃くなるので、焙煎時間が長くなるとY値は低くなる。
褐変化が抑制される食品としては、醤油、味噌などが挙げられる。醤油や味噌などの食品に褐変化抑制剤を添加する際、褐変する前の食品に褐変化抑制剤を添加することで、褐変化の進行を抑制できる。
また、本実施形態の食品の褐変化抑制剤は、焙煎味噌からエタノールで抽出したエタノール抽出物の他に、食品を原料とする他の抽出物が含まれていてもよい。例えば、しらこたん白抽出物であるプロタミンが含まれていてもよい。これにより、より高い食品の褐変化抑制効果が得られる。
本実施形態の食品の褐変化抑制剤として、味噌の抽出物をそのまま用いてもよく、適当な担体または賦形剤等と混合して用いてもよい。担体または賦形剤は毒性が低いもの、あるいはないものが好ましく、医薬上許容されるものが特に好ましい。本実施形態の食品の褐変化抑制剤に使用可能な担体または賦形剤の例としては、精製水、エタノール、食用油、デンプン、セルロース、糖蜜、砂糖、乳糖、タルク等が挙げられるがこれらに限らない。さらに着色料、香料等を添加してもよい。
焙煎味噌からエタノールで抽出したエタノール抽出物には、質量分析、NMR分析の結果、分子量254(分子式:C16143、C15104)、分子量270(分子式:C15105)であるフラボノイドが含まれている。これらの物質はいずれも褐変化抑制には有効である。エタノール抽出物には、分子式がC15105であるゲニステインが含まれている。焙煎味噌には、分子量254の物質、分子量270であるゲニステインは、少なくともどちらか一方の物質が含まれ、分子量254の物質とゲニステインが両方含まれている場合でも、分離することは可能である。
以下、実施例を挙げて説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
[実施例1][焙煎味噌とその他食品との比較]
(焙煎味噌の色)
焙煎味噌について測色色差計(日本電色工業株式会社製)(C光源)を用いて、味噌の色を示すXYZ表色系(Yxy表色系)のY値を測定した。比較として、スプレードライされた淡色系の乾燥味噌、スプレードライされた赤色系の乾燥味噌もY値を測定した。スプレードライされた淡色系の乾燥味噌のY値は46.0〜51.0の範囲にあり、スプレードライされた赤色系の乾燥味噌のY値は25.5〜30.5の範囲にあった。焙煎味噌のY値は21.6であり、この焙煎味噌は褐色が濃かった。
(焙煎味噌からの抽出)
ソックスレー抽出法により、焙煎味噌のエタノール抽出を実施した。ミキサーで粉砕した焙煎味噌20gを円筒濾紙に入れ、ソックスレー抽出器の中間の位置にセットした。エタノール150mLを下部のフラスコに入れ、ソックスレー抽出を60℃で48h加熱し、焙煎味噌のエタノール抽出物を得た。
(色濃淡安定率試験)
醤油の色は時間が経過するに連れ、赤褐色から黒色に変化することを利用し、試料のエタノール抽出物を醤油に添加し、色の経時変化を観察した。なお、密封パックされ、赤色のまま販売されている醤油を使用した。醤油10mLに対して、焙煎味噌のエタノール抽出物1%(V/V)を添加した。室温で保存して、色の変化を色彩色差計(コニカミノルタ製、CR−5)で測定した。色の濃淡であるL*値を測定し、L*値の変化を観察した。L*値は、淡い色ほど高い値を示し、濃い色ほど低い値を示す。本試験では、高いL*値を保っているほど効果が高いとした。なお、色濃淡安定率(%)は以下の数式1を用いて算出した。
焙煎味噌の他、比較として生味噌(赤味噌)、大豆の脱皮、栗の渋皮、梅の熱水抽出後残渣、梅の種、焼き芋、生芋について、上記焙煎味噌と同じ抽出条件で各食品のエタノール抽出物を得た。そして、同じ試験条件で、エタノール抽出物を醤油に添加し、色の経時変化を観察した。また、ブランク試料についても試験を実施した。
図1に、焙煎味噌を含む食品のエタノール抽出物添加による醤油の色濃淡安定率を示し、横軸に経過時間を示し、縦軸に色濃淡安定率を示す。また、表1に4日目、7日目における色濃淡安定率(%)を示す。焙煎味噌を添加した醤油の色は、ブランクよりも色の濃淡安定率が10%以上高く、その他の食品と比較して濃淡安定率が高かった。また、焙煎味噌のエタノール抽出物の濃度を変え、濃縮乾固することにより、4つの濃度19、38、56、75mg/mLの濃度に調製し、醤油による色濃淡安定率試験を行った。その結果、19〜56mg/mL間では、添加量が増えるにつれて、濃淡安定率が上昇したのに対して、56mg/mLと75mg/mLでは、大きな差がなかった。
また、DPPHラジカル消去活性能を測り、焙煎味噌を含む上記各食品の抗酸化力を測定した。この結果、焙煎味噌のエタノール抽出物のDPPHラジカル消去活性が24%であり、生芋、焼きイモ、ワサビ菜、栗渋皮と比較して低かった。栗渋皮はポリフェノールによる高い抗酸化能があるのに対し、焙煎味噌のエタノール抽出物は抗酸化能が高くないことが示された。これにより、醤油の色の変化を抑制しているのは抗酸化作用ではないと言える。
また、醤油のメイラード反応系とは異なるグルコース・BSA系により、上記各食品のエタノール抽出物に対してAGEs生成阻害試験を行った。この結果、焙煎味噌は、AGEs生成阻害率が14%と低い阻害率であるのに対し、栗の渋皮が50%という高い阻害率を示した。
[実施例2][分画した焙煎味噌のエタノール抽出物の褐変化抑制]
(焙煎味噌成分の分画)
上述のソックスレー抽出法により、焙煎味噌のエタノール抽出を実施し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、エタノール抽出物を分画した。
(1)カラムの調製
吸着剤には、シリカゲル60(カラムクロマトグラフィー用70−230mesh ASTM)(Merck)を使用した。以後シリカゲルと記載する。乾熱機でシリカゲルを十分な乾燥状態にし、その後は最初の移動相であるヘキサンに浸し、懸濁させた。その後、クロマトグラム管(Φ3cm×30cm)に上記で準備したヘキサンに懸濁させたシリカゲルを注入した。コックを開き、溶媒を流出させながら、気泡が入らないように注意し、クロマトグラム管に均一に充填させてカラムを調製した。最後に、クロマトグラム管の内径の大きさに合わせて切った濾紙をシリカゲルの上部に静置し、カラムの表面を水平にした。
・担体量(シリカゲル):70.35g
・カラム体積:140.7mL
(2)試料の注入
焙煎味噌エタノール抽出物の溶解量が1gになるように調整して、焙煎味噌エタノール抽出物をシリカゲルに浸み込ませた。ドラフト内で一晩放置して溶媒を除去した後、少量の移動相の溶媒に懸濁し、カラム上部の濾紙の上に静置した。
(3)試料の溶出
溶出溶媒はヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、メタノールを使用した。溶出溶媒は、以下の通り行い、各液500mLずつ流し、500mLずつ回収した。
〔Fr.1〕ヘキサン100%
〔Fr.2〕ヘキサン:酢酸エチル=4:1(v/v)
〔Fr.3〕ヘキサン:酢酸エチル=2:1(v/v)
〔Fr.4〕ヘキサン:酢酸エチル=1:1(v/v)
〔Fr.5〕クロロホルム100%
〔Fr.6〕クロロホルム:メタノール=9:1(v/v)
〔Fr.7〕クロロホルム:メタノール:水=8:2:0.1(v/v/v)
〔Fr.8〕クロロホルム:メタノール:水=7:3:0.5(v/v/v)
〔Fr.9〕クロロホルム:メタノール:水=6:4:1(v/v/v)
〔Fr.10〕クロロホルム:メタノール:水=5:5:1.5(v/v/v)
〔Fr.11〕メタノール:水=9:1(v/v)
(4)回収物の溶解
エバポレーターを用いて溶媒を飛ばし、析出した回収物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かした。
表2にオープンカラムクロマトグラフィーを用い、溶媒1〜11(Fr.1〜11)により焙煎味噌エタノール抽出物を分離した結果を示す。エタノール抽出物からカラムを用いて分離したときの収率はおよそ91%であり、ほぼ回収できた。図2にオープンカラムクロマトグラフィーにより分離された各フラクションを試験管に入れたときの外観写真を示す。極性が高く、褐色物質の量が全体の大半を占めていた。この色の多くは、焙煎味噌の褐色物質であるAGEsの色であると考えられる。極性が低い部分には、色の薄い成分が多く回収された。
(焙煎味噌フラクションを用いた色濃淡安定率)
醤油の褐変色素産生系であるD−Xylose・Glycine系において試験を実施した。D−XyloseとGlycineが0.1Mになるように、D−XyloseとGlycineを67mMリン酸緩衝液(pH7.2)に添加した。さらに、分画した焙煎味噌エタノール抽出物の各フラクションであるFr.1〜11を10mg/mLに調製し、67mMリン酸緩衝液(pH7.2)10mLに対して100μLを添加した。調製した液体を、15mL容ファルコンチューブに5mLずつ分注し、恒温恒湿度器で、60℃、50%でインキュベートした。色の変化を、色彩色差計(コニカミノルタ製、CR−5)で測定した。なお、褐変色素が生成された後のD−Xylose・Glycine系を含む溶液の色は2日間でも十分な変化が見られたころから、試験期間は2日間とし、0日目のL*値から2日目のL*値を引いたΔL*値で比較した。併せてa*値、b*値も測定し、0日目と2日目における差であるΔa*値、Δb*値を比較した。
表3に焙煎味噌の各フラクションを用いた溶液のΔL*値を示す。ΔL*値は、すべてのフラクションでブランクよりも小さく、褐変化を抑制していた。また、極性の低いフラクションであるFr.1〜4において高い褐変化抑制効果を示した。その一方でa*値、b*値に着目するとブランクよりも変化しており、かつその値からブランクよりも赤味と黄味も増していることがわかった。
[実施例3][焙煎味噌のエタノール抽出物とプロタミンとの褐変化抑制]
D−Xylose・Glycine系において試験を実施した。D−XyloseとGlycineが0.1Mになるように、D−XyloseとGlycineを、プロタミン(0.1mg/mL)を含む67mMリン酸緩衝液(pH7.2)に添加した。さらに、分画した焙煎味噌エタノール抽出物の各フラクションであるFr.1〜11が0.05mg/mLになるよう、分画した焙煎味噌エタノール抽出物を67mMリン酸緩衝液(pH7.2)に添加した。調製した液体を、15mL容ファルコンチューブに5mLずつ分注し、恒温恒湿度器で、60℃、50%でインキュベートした。色の変化を、色彩色差計(コニカミノルタ製、CR−5)で測定した。なお、褐変色素が生成された後のD−Xylose・Glycine系を含む溶液の色は2日間でも十分な変化が見られたころから、試験期間は2日間とし、0日目のL*値から2日目のL*値を引いたΔL*値で比較した。これを、15mL容ファルコンチューブに5mLずつ分注し、恒温恒湿度器で、60℃で48hインキュベートした。色の変化を、色彩色差計で測定し、0日目のL*値から2日目のL*値を引いたΔL*値で比較した。
表4に焙煎味噌の各フラクションとプロタミンとを用いた溶液のΔL*値を示す。ΔL*値は、すべてのフラクションでブランクよりも小さく、褐変化を抑制していた。また、極性の低いフラクションでは、ブランクとの差がおよそ10となった。焙煎味噌のエタノール抽出物とプロタミンとを併用することで相乗効果が生じ、より高い褐変化抑制効果を示した。また、プロタミンの添加濃度を高くすればするほどその効果は高くなった。
[実施例4][焙煎味噌のエタノール抽出物に含まれる成分について]
上記ソックスレー抽出法において時間を変更し、ソックスレー抽出を60℃で20h加熱し、焙煎味噌のエタノール抽出物を得た。そして、焙煎味噌のエタノール抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分画した。このうち、Fr.4(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(v/v)画分)について、さらにゲルろ過クロマトグラフィーにより分画した。ゲルろ過クロマトグラフィーの条件は、下記の通りである。
・担体:Sephadex LH20
・カラム:Φ1.6×110cm(221.1cm3
・アプライ量:8ml
・溶出液:エタノール500mL
・流速:0.5mL/min
図3にFr.4をゲルろ過クロマトグラフィーにより分離し、エタノールの溶出量(保持時間)に対する紫外線吸光度(A254)のグラフを示す。Fr.4をゲルろ過クロマトグラフィーにより分離した結果、エタノールの溶出量に対する紫外線吸光度(A254)は、0.8以上の極大値を有する2つのピークであるピーク1、ピーク2が見られた。ゲルろ過クロマトグラフィーにおける保持時間を変えることでそれぞれのピークを分離した。ピーク1、ピーク2およびFr.4について薄層クロマトグラフィーを実施したところ、Fr.4では異なるRf値の2つのスポットが見られた。一方、ピーク1では1つのスポットが見られ、ピーク2ではピーク1とは異なるRf値に1つのスポットが見られた。なお、ピーク1、ピーク2にあるそれぞれのスポットはFr.4で見られた2つのスポットと同じRf値であった。これにより、ゲルろ過クロマトグラフィーによりFr.4に含まれる分子量の異なる2つの物質を分離することができた。
(メイラード反応の評価法)
メイラード反応の後期段階において糖化反応後期段階生成物(AGEs)が生成される。食品の褐変化の原因であるメラノイジン色素(褐変色素)もAGEsの一種である。これらの多くは、蛍光を発するため蛍光強度でその生成を確認できる。ピーク1、ピーク2、Fr.4についてD−xylose・glycine系色素生成抑制効果試験を行った。D−XyloseとGlycineが0.1Mになるように、D−XyloseとGlycineを67mMリン酸緩衝液(pH7.2)に添加し、さらに、ピーク1、ピーク2、Fr.4を67mMリン酸緩衝液(pH7.2)に添加して各分画画分が0.5mg/50μLになるように調製した。調製した液体を、恒温恒湿度器で60℃、湿度50%でインキュベートした。なお、AGEs生成阻害率(%)は下記の数式2より求めた。ピーク1、ピーク2、Fr.4について、色の変化を、色彩色差計(コニカミノルタ製、CR−5)で測定した。試験期間は2日間(48h)とし、0日目のL*値から2日目のL*値を引いたΔL*値で比較した。
ピーク1、ピーク2、Fr.4によるΔL*値、AGEs生成阻害率を表5に示す。ピーク1、ピーク2の色の変化はブランクよりも小さかった。また、AGEs生成阻害率は、ピーク1はピーク2よりも高い値を示した。ピーク1およびピーク2に含まれる成分は、食品の褐変化を抑制する物質として有効である。
焙煎味噌エタノール抽出物の成分を同定するため、液体クロマトグラフ質量分析計(島津製作所:LCMS−IT−TOF、LCMS−2020)を用いて測定した。その他の条件は以下の通りである。
・カラム:Intertsil ODS−3 3μm 2.1mm×50mm
・サンプル:Fr.4、ピーク1、ピーク2(1mg/mL)
・移動相:超純水(ギ酸1%)とアセトニトリル(ギ酸1%)
アセトニトリル10%から90%までグラジエントをかける
・流速:0.20mL/min
図4、図5に液体クロマトグラフ質量分析計を用いて測定したピーク1、ピーク2のMSスペクトルを示す。ピーク1のMSスペクトルのポジティブイオンモードの測定では、255.0616にピークが見られ、ネガティブイオンモードの測定では、253.0501にピークが見られた。ピーク2のMSスペクトルのポジティブイオンモードの測定では、271.0561にピークが見られ、ネガティブイオンモードの測定では、269.0443にピークが見られた。ゲルろ過クロマトグラフィーより、保持時間を変えることで、それぞれのピークに含まれる物質の分子量は、ピーク1の分子量>ピーク2の分子量となるが、シリカゲルの影響により分子量の順に溶出するとは限らない。このため、ピーク1に含まれる物質の分子量は530ではなく、254であると考えられる。また、ピーク2は分子量270であると考えられる。
また、ピーク1、ピーク2の1H−NMR測定を実施した。NMR装置はJEOL AL−400、積算回数16、溶媒は重メタノールである。この結果、ピーク1およびピーク2には、フラボノイドが含まれていると考えられる。ピーク2に含まれるフラボノイドは、分子式がC15105であるゲニステインである。また、ピーク1に含まれるフラボノイドの候補として、分子式がC16143、C15104が挙げられ、一例としてダイゼイン(分子式:C15104)がある。

Claims (16)

  1. 空気中で加熱して得られた焙煎味噌からエタノールで抽出したエタノール抽出物を含有することを特徴とする食品の褐変化抑制剤。
  2. 前記焙煎味噌が、味噌を、スプレードライ装置によってスプレードライして乾燥味噌を製造する際、前記スプレードライ装置に付着して過加熱された味噌であることを特徴とする請求項1に記載の食品の褐変化抑制剤。
  3. 醤油に添加することにより、醤油の褐変化を抑制できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の食品の褐変化抑制剤。
  4. さらに、しらこたん白抽出物を含有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の食品の褐変化抑制剤。
  5. フラボノイドを有効成分として含有することを特徴とする食品の褐変化抑制剤。
  6. 前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有することを特徴とする請求項5に記載の食品の褐変化抑制剤。
    (1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=255.0616[M+H]+、m/z=253.0501[M−H]-
    (2)分子量:254
    (3)分子式:C16143
  7. 前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有することを特徴とする請求項5に記載の食品の褐変化抑制剤。
    (1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=255.0616[M+H]+、m/z=253.0501[M−H]-
    (2)分子量:254
    (3)分子式:C15104
  8. 前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有することを特徴とする請求項5に記載の食品の褐変化抑制剤。
    (1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=271.0561[M+H]+、m/z=269.0443[M−H]-
    (2)分子量:270
    (3)分子式:C15105
  9. 前記フラボノイドが、ゲニステインであることを特徴とする請求項5に記載の食品の褐変化抑制剤。
  10. 味噌を空気中で加熱して焙煎味噌を製造する工程と、
    得られた焙煎味噌からエタノールで抽出してエタノール抽出物を得る工程とを含むことを特徴とする食品の褐変化抑制剤の製造方法。
  11. 前記焙煎味噌は、スプレードライ装置によってスプレードライして乾燥味噌を製造する際、前記スプレードライ装置に付着した味噌を過加熱して製造することを特徴とする請求項10に記載の食品の褐変化抑制剤の製造方法。
  12. 前記エタノール抽出物に、フラボノイドを有効成分として含有することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の食品の褐変化抑制剤の製造方法。
  13. 前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有することを特徴とする請求項12に記載の食品の褐変化抑制剤の製造方法。
    (1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=255.0616[M+H]+、m/z=253.0501[M−H]-
    (2)分子量:254
    (3)分子式:C16143
  14. 前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有することを特徴とする請求項12に記載の食品の褐変化抑制剤の製造方法。
    (1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=255.0616[M+H]+、m/z=253.0501[M−H]-
    (2)分子量:254
    (3)分子式:C15104
  15. 前記フラボノイドが、下記(1)〜(3)の理化学的性質を有することを特徴とする請求項12に記載の食品の褐変化抑制剤の製造方法。
    (1)質量分析(LC−TOF−MS):m/z=271.0561[M+H]+、m/z=269.0443[M−H]-
    (2)分子量:270
    (3)分子式:C15105
  16. 前記フラボノイドが、ゲニステインであることを特徴とする請求項12に記載の食品の褐変化抑制剤の製造方法。
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