JP2017148043A - 多孔質のスポンジ状立体構造の表面を微細凹凸構造で覆われたパン粉 - Google Patents
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Abstract
Description
最近のパン粉利用の傾向として、食感の硬いドライタイプから生のソフトタイプへ移行している点などを考慮すると、パン粉を用いたフライ衣は食感が軽い方が好ましい。すなわち、従来の低吸油フライ衣の技術ではフライ時の吸油量は低下するものの、食感が硬くなるという嗜好面での問題を残しており、そのため、それらのパン粉は広く普及していないのが現状である。
微細な凹凸構造の表面を形成するには、粒度分布の異なる粒子を混合することによって、形成することが可能であると考えられる。
また、粘着性のある、グルテンを含む小麦粉のみからは、その粘着力が作用して表面が一つの塊となって、表面に微細な凹凸構造を形成できない可能性がある。そこで、上記の粒子に関しては、粘着性のある物質(小麦粉などのグルテンを含む小麦粉を含むもの)とそれ以外の粘着性のない物質(食物繊維など)との混合物とすることが重要であると考えられる。
これらの点に着目し、鋭意研究開発を行うことにより本発明に到達した。
(1)多孔質のスポンジ状の立体構造を有し、表面が蓮の葉やバラの花びらに類似したマイクロレベルの凹凸を有する表面構造からなることを特徴とするパン粉。
(2)前記表面構造が、1〜300μmオーダーの微細な凹凸構造である、上記(1)に記載のパン粉。
(3)粘着性のある材料と粘着性のない材料の混合物を出発原料とする、上記(1)または(2)に記載のパン粉。
(4)前記粘着性のある材料がグルテンを含む穀粉からなり、前記粘着性のない材料がでん粉、裸麦粉、ふすまおよび竹粉末から選ばれる、上記3に記載のパン粉。
(5)前記粘着性のない材料がでん粉である場合、前記出発原料が粘着性のある材料を主原料とするものであって、粘着性のある材料を100wt%としたとき、その8〜50wt%がでん粉で置き換えられていることを特徴とする、上記(4)に記載のパン粉。
(6)前記でん粉が、アミロース24wt%以上、アミロペクチン含有率76wt%以下のでん粉である、上記(5)に記載のパン粉。
(7)前記でん粉が、じゃがいも、とうもろこし、小麦、大手ぼう豆、青えんどう豆由来のでん粉から選ばれる、上記(6)に記載のパン粉。
(8)目開き106μmのふるいを通過しない粒子径のものを含んでいる、上記(5)ないし(7)のいずれかに記載のパン粉。
(9)前記出発原料の中心粒径が、10−5mオーダーの粒子、10−4mオーダーの粒子、および10−3mオーダーの粒子のうちの少なくとも2種類を混合した粒子径の異なるものからなる、上記(3)ないし(8)のいずれかに記載のパン粉。
(10)上記(1)から(9)のいずれかに記載のパン粉を油調用食材の衣材とした、吸油量の少ないフライ食品。
多孔質であることにより、パン粉内部の空孔の開口部の微細構造において、撥油構造であるリ・エントラント(再陥没)構造が形成されている。さらに、空孔の開口部周辺に微細凹凸表面を有することにより、開口部の形状が、ダブル・リ・エントラント構造となり、濡れのピン止め効果が機能し、パン粉内部の空孔に油が入り込まないと考えられる。パン粉内部にある、油が入り込まない空孔の多さにより、吸油率が低下すると考えられる。低吸油性(油調時の油の吸収を抑制することおよび/または油切れをよくすることができる)でありながら良好な食感を有するパン粉、およびそれを使用したおいしいフライ食品(揚げ物)、特に低吸油フライ類を提供することができる。
出発原料としてグルテンを含む穀粉からなる粘着性のある材料とでん粉、裸麦粉、ふすまおよび竹粉末から選ばれる粘着性のない材料の混合物を用いることにより、好ましくは出発原料の中心粒径が、10−5mオーダーの粒子、10−4mオーダーの粒子、および10−3mオーダーの粒子のうちの少なくとも2種類を混合した粒子径の異なるものとすることにより、低吸油性(油調時の油の吸収を抑制することおよび/または油切れをよくすることができる)でありながら良好な食感を有するパン粉を提供することができる。
それらを使用して、食感を変化させずに、すなわち食味を損なわずに油調時の油の吸収を抑制することおよび/または油切れをよくすることができるパン粉、それを使用した低吸油性(油調時の油吸収抑制および/または油切れのよい)フライ類を提供することができ、パネラーによる、試食テストの結果により、クリスピー感のあるパン粉が得られることが判明した。パン粉の柔らかさに関しては、従来品より劣るが、もろさのあるカリカリした独特のクリスピー感があるという効果を発揮することができる。
より詳細には、多孔質(porous)のスポンジ状の立体構造を有するパン粉の表面にハスの葉やバラの花びらの表面構造に似た微細なマイクロレベルの凹凸表面構造を有することを特徴とするパン粉、言い換えれば、多孔質のスポンジ構造の表面をマイクロレベルの微細凹凸構造で覆うことによって、パン粉の表面積を最大化するような構造を有するものである。ハスの葉やバラの花びらの表面構造に似た微細なマイクロレベルの凹凸表面構造は階層的な微細な凹凸構造(微細なマイクロナノレベルでのフラクタル凹凸構造)であって、その凹凸表面は孔のあいた多孔体の形を形成しており、それらの表面積は非常に大きいものとなる。すなわち、フラクタルとは非整数の次元をもつ図形の総称であり、フラクタル図形は、無限に凹凸した表面、あるいは、無数の孔のあいた多孔体の形をしている。フラクタル図形は、無限に入り組んだ折れ線の形をしており、その折れ線に沿って測った長さは無限大となる。もちろん、自然界に存在するフラクタルは近似的にフラクタルであるにすぎず、それゆえ、長さや表面積が実際に無限大になることはないのだが、それでも非常に大きいことは確かである。
前記表面構造の微細なマイクロナノレベルでのフラクタル凹凸構造は無限に入り組んだ折れ線の形をしており、その折れ線に沿って測った長さは無限大となるが、表面に現れた凹凸は、SEM画像から、1〜300μmオーダーの微細な凹凸構造であることが分かる。
微細な凹凸構造を形成するには、粒度分布の異なる粒子を混合することによって、形成することが可能であると考えられる。
フライ調理するということは、油調加熱することによる脱水現象であると考えられるが、加熱時に、水と油の置換が起こるかという点にかかっている。この水と油の置換に関して、食物繊維の水分保持性によって直接的に吸油率を低減できるとは考え難い。さらに、ライデンフロスト効果について検討を加える。ライデンフロスト効果とは、ドイツの物理学者であるライデンフロスト氏によって1756年に偶然に発見されたものであり、非常に高温の鉄板(200℃以上:水の蒸発温度より高い)の上に、水滴を落として、浮揚して激しく動き回っている状態を観察したものである。
フライ食品を180℃前後の油で油調(Frying)する時に、高温の油とフライ食品の接する界面温度が、見かけ上は、油の温度である180℃前後と考えられるが、水分が蒸発する際に気化熱を奪い、いわゆる、ライデンフロスト温度と言われている、120℃から150℃の温度にフライ食品内部の水分が接し、その時に、内部の水分が1600倍の気体となり、瞬時に気化し、フライ食品表面より激しく水蒸気が噴き出し、フライの周りに水蒸気の膜が形成される。高温の油の中を浮遊した状態となり動き回ると考えられる。フライ食品に関しては、従来、油調中に油とフライ食品との界面が接していると考えられていたが、水蒸気の層が形成されている可能性が高く、フライ食品の表面からの水蒸気の噴出により接したり離れたりして、水蒸気の層の厚みも絶えず変化していると考えられる。フライ食品内部の水分の蒸発により、揚げ上がり間際に、水蒸気の噴出が少なくなり、気泡が小さくなることにより、その時点で、初めてフライと油の界面が接するのではないかと考えられる。これにより、水と油の置換が油調中に起こるとは考えにくい。また、パン粉の水分率を測定したが、吸油率との明確な相関関係は見られず、食物繊維の水分保持性によって水蒸気の噴出する時間は長くなるが、直接的に吸油率を低減できるとは考え難いのである。
なお、水の界面張力(72.9mN/m)と油の界面張力(20-32mN/m)は同一とは考えられないが、ここでは、同じと考えて、議論を進めたい。微細な表面凹凸構造を形成するために、粒度分布の測定を考慮して、粒径の異なるものを混合して、主に10−5mオーダーの粒子、10−4mオーダーの粒子、および10−3mオーダーの粒子のうちの少なくとも2種類を混合することによって、形成することが可能であると考えられる。
従来技術によるパン粉材について、粒度分布を測定した結果を示す。
[粒度分布測定]
島津 SALD−3000J粒度分布測定器
溶液 イソプロパノール(イソプロピルアルコール)
(1)強力粉の粒度分布を測定した結果を図1に示す。強力粉は、中心粒径がほぼ10−4mオーダーの粒子であることが示されている。
(2)薄力粉の粒度分布を測定した結果を図2に示す。薄力粉は強力粉より小さいが、中心粒径がほぼ10−4mオーダーの粒子であることが示されている。
(3)裸麦粉の粒度分布を測定した結果を図3に示す。裸麦粉は中心粒径がほぼ10−5mオーダーの粒子とほぼ10−4mオーダーの粒子の混合物であることが示されている。
(4)竹粉の粒度分布を測定した結果を図4に示す。竹粉は中心粒径が10−4mオーダーから10−3mオーダーに広がった粒子であることが示されている。
(5)ふすまの粒度分布を測定した結果を図5に示す。ふすまは、中心粒径が10−3mオーダーの粒子であることが示されている。
(6)結晶セルロース(アビセル 旭化成)の粒度分布を測定した結果を図6に示す。結晶セルロースは中心粒径が10−4mオーダーの10−5mオーダーの粒子をも包含するなだらかに広がった粒子であることが示されている。
(7)トウモロコシでん粉の粒度分布を測定した結果を図7に示す。中心粒径が10−5mオーダーと10−4mオーダーの中間にある粒子であることが示されている。
ハスの葉やバラの花びらの表面には特殊な微粒子が散りばめられており、微細なマイクロナノレベルでのフラクタル凹凸構造を形成し超撥水構造を有し、特にバラの花びらにおいては、超撥水性を維持しながら水滴を表面に「縫いつける」という不思議な粘着性のある機能を合わせ持っている。そこで、吸油率低減に関して、パン粉の構造または表面構造に階層的な微細な凹凸構造(微細なマイクロナノレベルでのフラクタル凹凸構造)を形成することによって、また、撥油構造としてのリ・エントラント構造を形成することとなり、吸油率が低下していると考えた。
微細な凹凸構造を形成するには、粒度分布の異なる粒子を混合することによって、形成することが可能であると考えられる。
また、粘着性のある、グルテンを含む小麦粉のみからは、その粘着力が作用して表面が一つの塊となって、表面の微細な凹凸構造を形成できない可能性がある。そこで、上記の粒子に関しては、粘着性のある物質(小麦粉などのグルテンを含む小麦粉を含むもの)とそれ以外の粘着性のない物質(食物繊維など)との混合物とすることが重要であると考えられる。
吸油率は表面積などによっても変わるので、栄養価計算する際には、素揚げなら3%、から揚げなら5%、天ぷらなら10%と決めて栄養計算をすることが多々ある。正確に衣に吸収された油の量は、油の調理前と調理後の重量の差を測る。その値は、たとえば鶏のから揚げの場合、吸油率は、調理後に、油の量が必ず増えている。鶏の脂肪が油に流出しているということになる。食材によって、あるいは衣の種類、衣のつけ方、表面積、油の温度で吸油量が違うことがわかる。
本発明においては、パン粉について、キッチンペーパーで油きりした後の試料に含まれている油の量(吸油量1)、遠心分離で分離した油の量(吸油量2)、遠心分離で分離されなかった油の量(残油量)を試料の乾燥重量で割った、吸油率1、吸油率2、残油率を求めた。
常法において原材料は、典型的には、穀粉類、イースト、食塩、糖類、油脂、イーストフードおよび水を含むものとすることができ、必要に応じて他の材料を混合してもよい。原材料の配合割合は、特に限定されるものではないが、典型的には、小麦粉100重量部に対して、イースト3.0重量部、食塩1.0重量部、糖類1.0重量部、油脂12.0重量部、イーストフード0.1〜1.0重量部、水37.0重量部とすることが好ましい。
本発明においてパン粉原材料は、粘着性のある材料と粘着性のない材料の混合物を出発原料とする。粘着性のない材料を混合することによって、食感に悪影響を与えることなく吸油率を低下させることができる。
粘着性のある材料を主原料とするものであって、粘着性のある材料を100wt%としたとき、その8〜50wt%が粘着性のない材料で置き換えられていることを特徴とする。
粘着性のある材料としては、グルテンを含む穀粉である小麦粉を用いることが好ましく、強力粉がより好ましいが、これらに限定されるものではない。例えば、強力粉、中力粉または薄力粉を適宜混合して用いることもできる。
粘着性のない材料としては、でん粉、食物繊維、ふすま、竹粉末などが例示される。
でん粉としては、アミロース24wt%以上、アミロペクチン含有率76wt%以下のでん粉であることが好ましい。そのでん粉は、じゃがいも、とうもろこし、小麦、大手ぼう豆、青えんどう豆由来のでん粉から選ばれる。これらの1種類のみでなく複数種類を混合してもよい。
例えば、トウモロコシでん粉は、図7に示すとおり、中心粒径が10−5mオーダーと10−4mオーダーの中間にある粒子であり、目開き106μmのふるいを通過しない粒子径のものを含んでいるし、また、中心粒径が、10−5mオーダーの粒子および10−4mオーダーの粒子の2種類を混合した粒子径の異なるものからなる。
大麦は、食物繊維に富み、特に機能性の高い水溶性のβ−グルカンを豊富に含んでいるため、大変優れた健康食品素材であるということができ、現在、大麦パンとして知られているものとしては、小麦粉の一部を大麦粉に置き換えて製造した大麦パンが挙げられる。大麦パンは比容積が小さく硬くて食感が悪いものでありこうした問題点を改善するべく技術開発がなされてきているものの油調用のパン粉あるいはバッターミックスとしての適用について注目した事例は見あたらない。さらに、パン粉に関しては、パン粉の日本農林規格(平成19年11月28日制定、農林水産省告示第1491号、平成25年12月24日最終改訂農林水産省告示第3121号)いわゆるパン粉JASの規定に、原材料(食品添加物以外の)として「次に挙げる以外のものを使用していないこと。」とし、1.小麦粉、2.イースト、3.米粉、とうもろこし粉、大豆粉、ライ麦粉およびでん粉、4.米こうじおよび麦芽粉、5.大豆食物繊維、6.粉末状植物性たん白、7.乳製品および卵、8.食塩、9砂糖類、10.還元水あめ、11.醸造酢、12.食用油脂、13.野菜および果実並びにそれらの加工品と定義されている。上記のパン粉JASの規定に、大麦、並びに裸麦等の記載がなく、パン粉の製造に、大麦並びに裸麦等に注目して使用した事例が見当たらないと考えられる。
本発明の油調用衣材のパン粉は、大麦粉を原料に配合して製造したパンから通常の手法によりパン粉に加工される。裸麦粉は中心粒径がほぼ10−5mオーダーの粒子とほぼ10−4mオーダーの粒子の混合物であり、本発明のパン粉材として好ましい。
大麦は粉砕して粉体状のものが使用されるが、大麦粉は、大麦粒を必要に応じ歩留り60%程度まで精白(搗精)した後、これを粉砕することによって得られるものであり、さらに必要に応じ、精製、蒸煮、加熱、分級、漂白などの処理を施したものなどいずれをも用いることができる。特にβ−グルカンを多く含むものが好ましい。大麦粉を得るには、原料となる大麦として、β−グルカンを比較的多量に含むことが知られている大麦、例えば、蛋白質含有量の高い性質を持った二条や六条の大麦種、あるいは、澱粉がもち性の性質を持ったもち性皮つき大麦、もち性裸大麦を使用する方法、大麦粒の外周部と内部でのβ−グルカン含量および存在形態の違いを利用して粉砕後に分級してβ−グルカン含量の高い部分を得た分級大麦粉を使用する方法でもよく、また、これらの2法を組み合わせてもよい。大麦の粉砕方法は、常法に従えば良く、例えば、ローラー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ハンマーミル(粉砕機)、石臼粉砕機などを使用して粉砕すればよい。分画方法は特に限定されず、例えば穀類の分級に通常用いられる篩い、気流分級などにより分画し、篩い分画では、例えば、所望の粗さのスクリーンを用いて一定時間篩い分画して、スクリーン上の画分を分取すればよい。市販小麦粉(薄力粉)の粒度分布は、粒径30μm以上の粒子が45重量部程度含まれている。小麦粉と同様に、本発明で用いる大麦粉は大麦を通常の製粉方法で粉砕するにあたり、例えば、粒径30μm以下が80重量%以上になるよう大麦粉を採取する。50μm以下の粒径が60%以上含まれると、結着防止効果は維持されるが、カリカリとした適度な歯ごたえと軽さのバランスをもつ食感を創出する事ができない。分級大麦粉を得るためには、例えば、少なくとも胚乳部分を50質量%以上含む大麦を、粒子径500μm以上の粒子が10体積%以下であり且つ粒子径40μm以下の粒子が30〜95体積%となるように粉砕し、得られた粉砕物から粒子径50〜500μmの粒子が80体積%以上の画分を利用するのが好ましい(図3参照)。
また、パン粉中に含有される大麦粉は、油調衣材中の小麦粉と大麦粉の総重量において10〜60重量%を占めていることが好ましい。下限値の10重量%を下回ると油調がうまくいった後の油切れが良くないなどの不都合が生じ好ましくない。上限値の60重量%を上回ると硬くなりもろくなりすぎて好ましくない。さらに好ましい大麦粉の含有範囲は30〜60重量%であり、最も好ましくは50〜60重量%の範囲である。
β−グルカンは、免疫力や抵抗力を高める作用と体内のがん細胞や感染細胞を攻撃したりする作用があるといわれている。一般に、β−グルカンとはβ−(1→3)−D−グルカンを指し免疫賦活作用やガンに対する予防効果、抑制効果などの効能が認められ、一般の人であっても、β−グルカンが免疫賦活作用や抗がん作用を示すキノコ類などの有効成分であると答えるほど知名度は高い物質である。免疫力の向上により、アレルギー反応の沈静化、血糖値を下げる、血圧を抑える、腸を刺激して便通をよくする作用、コレステロール値を低下させる働きなどがあるとされている。
本発明は、大麦粉を油調用のパン粉に使用することにより、大麦中に含まれるβ−グルカンを利用することが可能となり、低油脂含有の油調用衣材とすることと相まって健康増進をいっそう図ることができる。
油調用衣材中に含有される衣材中には、β−グルカンを0.1〜7.0g/100gの範囲で含有することが好ましく、下限値の0.1g/100gを下回ると油切れが悪く、衣中の油含有量が多くなり好ましくない。上限値の7.0g/100gを上回ると衣が固くなりすぎるため好ましくない。さらに好ましいβ−グルカンの含有範囲は0.5〜5.0g/100gであり、最もさらに好ましくは1.0〜4.0g/100gの範囲である。
生地の作り方は、配合された原材料を混捏し、醗酵させて、生地を作る。中種法を用いる場合には、例えば、まず上述の原材料の一部を、例えば混捏ミキサーなどを用いて、好ましくは約28℃〜約32℃、低速約3分間、高速約6分間の条件で、混捏する。混捏時の温度は、醗酵不良にならないように、過醗酵にならないように調整する。混捏時間は、グルテンネットワークの形成不足にならないように、オーバーミキシングにならないように調整する。次に、混捏した原材料を、好ましくは温度約28℃〜約31℃、湿度約70%〜約80%、時間約2時間〜約3時間の条件で醗酵させて、中種を生成する。最後に、中種に残りの原料を加え、好ましくは約26℃〜約30℃、低速約3分、高速約6分間の条件で本混捏して、生地を得ることができる。
直捏法を用いる場合には、例えば、上記の原材料のすべてを、例えば混捏ミキサーなどを用いて、好ましくは約26℃〜約30℃、低速約3分間、高速約6分間の条件で混捏することによって、生地を得ることができる。この場合には、生地は、後の工程を経過する際に醗酵が徐々に進んでいくことになる。
中種法および直捏法のいずれにおいても、生地の水分量は、生地生成工程終了時における水分量が約40重量%以下となるように調整することが好ましい。生地の伸ばしやすさや滑らかさ、生地の水分調整の容易さなどの観点から、中種法を用いることがより好ましい。
焼成工程が終了した焼成生地は、所定の温度環境下で冷却されることが好ましい。例えば、約5℃以下の冷蔵庫において、焼成パンの温度が約10℃以下になるまで冷却される。焼成パンは、次に破砕され、適切なサイズの複数のフレーク状衣片からなる衣材にされる。破砕工程は、通常の衣材の製造において一般的に用いられる破砕機を用いて行うことができる。破砕工程においては、例えば粉砕機に装着されるスクリーンメッシュを適切なサイズのものにすることによって、所望のサイズを有する複数のフレーク状衣片を得ることができる。
焼き温度の関係で、メイラード反応により焙焼式ではパンの表面に焦げ目ができるが、電極式ではパンの表面が焦げないので、電極式パン粉のほうが均一な外観のパン粉になる。冷却、粉砕、乾燥、ふるい分けをして製品になる。中種法はソフトなパン粉には欠かせない方法であり、ソフトなサクサク感のあるパン粉ができ、揚げ色を薄くした場合は退色し易くなる。直捏法は小麦粉、食塩、糖類、油脂を一度に捏ねあげて醗酵させる。直捏法は中種法のパン粉と比較するとやや固めのパン粉となり、揚げ色は退色し難い。
目的とするパン粉の特性に応じて製法あるいは添加剤などを調整することができる。
(配合例1:一般的な小麦粉100%使用の配合例)
小麦粉 57.14%、ブドウ糖2.12%、塩0.85%、ショートニング0.85%、水分38.25%の他にイースト、粉末状大豆蛋白、イーストフード、乳化剤を加えて総計100%とした。
(配合例2:配合例1の小麦粉の10%をトウモロコシでん粉で置き換えたものを使用の配合例)
トウモロコシでん粉5.714%、小麦粉 51.426%、ブドウ糖2.12%、塩0.85%、ショートニング0.85%、水分38.25%の他にイースト、粉末状大豆蛋白、イーストフード、乳化剤を加えて総計100%とした。
(配合例3:配合例1の小麦粉の20%をトウモロコシでん粉で置き換えたものを使用の配合例)
トウモロコシでん粉11.428%、小麦粉45.712%、ブドウ糖2.12%、塩0.85%、ショートニング0.85%、水分38.25%の他にイースト、粉末状大豆蛋白、イーストフード、乳化剤を加えて総計100%とした。
(配合例4:配合例1の小麦粉の30%をトウモロコシでん粉で置き換えたものを使用の配合例)
トウモロコシでん粉17.142%、小麦粉39.998%、ブドウ糖2.12%、塩0.85%、ショートニング0.85%、水分38.25%の他にイースト、粉末状大豆
蛋白、イーストフード、乳化剤を加えて総計100%とした。
次いで、下記の条件により醗酵、焼成、粉砕を行いパン粉の製造した後、以下に示す試験に供した。
実施例における、吸油率などの各種検査は、一般社団法人おいしさの科学研究所に依頼した。
以下の5種のパン粉を評価試料として用意し水分コンテントの測定と吸油率と残油率を測定した。
1.焙焼パン粉10mm、
2.電極パン粉10mm、
3.トウモロコシでん粉10%パン粉10mm、
4.トウモロコシでん粉20%パン粉10mm、
5. トウモロコシでん粉30%パン粉10mm
上記5種類のパン粉の試料を表3に示した。
No.1の「10mm焙焼」は、配合例1に記載のパン原料を使用して表2に記載の焙焼式で焼成したパンを使用し、粉砕機で10mmの網を使用して粉砕したパン粉を表す。
No.2の「10mm電極」は、配合例1に記載のパン原料を表1に記載の電極方式で焼成したパンを使用し、粉砕機で10mmの網を使用して粉砕したパン粉を表す。
No.3の「10mmトウモロコシでん粉10%添加」は、配合例2に記載のパン原料を使用して、表1に記載の電極方式で焼成したパンを使用し、粉砕機で10mmの網を使用して粉砕したパン粉を表す。
No.4の「10mmトウモロコシでん粉20%添加」は、配合例3に記載のパン原料を使用して、表1に記載の電極方式で焼成したパンを使用し、粉砕機で10mmの網を使用して粉砕したパン粉を表す。
No.5の「10mmトウモロコシでん粉30%添加」は、配合例4に記載のパン原料を使用して、表1に記載の電極方式で焼成したパンを使用し、粉砕機で10mmの網を使用して粉砕したパン粉を表す。
本発明の実施例にあたるNo.3、4および5(表3参照)は小麦粉およびトウモロコシでん粉の合計量の10重量%、30重量%、50重量%がトウモロコシでん粉である原材料を用いて、表1の電極方式でパンを焼成し、粉砕機でそれぞれ「10mm」の網で粉砕したパン粉を表す。
パン粉は5℃の冷蔵庫で一晩解凍し、2mm目の篩にかけ、細かい粒子を除いたものを試料とした。
1−1乾燥試験
シャーレに試料を5g量りとり、150℃で2時間乾燥させた後、重量を測定した。蒸発した水分量を元のパン粉の重量で割り、水分率をもとめた。具体的には、乾燥後の重量を乾燥前の重量で除した値で示す。結果を表4に示す。
茶こしに試料を5g量り取り、油を175℃に熱した後、IHヒーターを切ってから茶こしごと試料を油に入れ、2分間揚げた。従って揚げ温度は175〜165℃である。揚げた試料をキッチンペーパーの上に広げ、10分間油きりをした後、重量を測定した。また、油きりした試料をガーゼに包み、専用の金属容器に入れ、遠心分離(3000rpm、10分、25℃)して重量を測定した。
(吸油量1)キッチンペーパーで油きりした後の試料に含まれている油の量、(吸油量2)遠心分離で分離された油の量、
(残油率)遠心分離で分離されなかった油の量のそれぞれを試料の乾燥重量で割って、吸油率1、吸油率2、残油率をもとめた。結果を表5に示す。
吸油率2:遠心分離された油の量/試料の乾燥重量、具体的には遠心分離後の試料の重量を乾燥重量で除した値である。
残油率:遠心分離で分離されなかった油の量/試料の乾燥重量
吸油率1、吸油率2、残油率の結果のから、実際に食べる時の状態に近い吸油率1の値を対比すると、トウモロコシでん粉を入れたサンプルはトウモロコシでん粉の入っていないサンプルよりも吸油率の値が低くなっており(統計的に有意差もみられる)、パン粉にトウモロコシでん粉を入れることで順次、吸油率が低くなると結論される。
特に、トウモロコシでん粉を30重量%含有する「でん粉30」は「焙焼」や「電極」の65%程度と吸油率が低下している。
また、パン粉の構造物(グルテン膜、でん粉、β−グルカンなど)と油の親和性を示すと考えられる残油率を見ると、水分率とは逆に、「でん粉10」が高く、「でん粉30」が低く、焙焼と電極はトウモロコシでん粉入りパン粉の中間でん粉20の値を示した。水分率と残油率が相関していないのは、これらがパン粉自身の構造物の親水性、親油性の傾向をそのまま表していると考えられる。水分率は「でん粉30」が高く、「でん粉10」が低く、残油率は「でん粉10」が高く、「でん粉30」が低いという結果は、トウモロコシでん粉の水保持能はその油保持能よりも大きく、油調中油が水と置換するのを抑止する傾向を示していると考えられる。
一方、吸油率1および2は残油率とは傾向が異なっており、構造物自身の性質よりパン粉の立体構造が大きな影響を及ぼしていることが考えられる。パン粉の立体構造は、例えばトウモロコシでん粉の添加により二次醗酵が抑制される傾向にあったかどうか、パンの比容積が傾向にあったかどうか、パン粉の食感が良好である傾向にあったかどうかにも係わっている。「でん粉30」がパン粉の立体構造によい影響を及ぼしていることが分かる。
(裸麦50%添加パン粉)
裸麦50%、小麦粉50%使用の配合例。
裸麦30.68%、小麦粉30.68%、ショートニング1.19%、塩0.85%、水分35.46%の他にブドウ糖、イーストフード、乳化剤を加えて総計100%となるよう配合した。
次いで、上記パン原料を使用して、表1に記載の電極方式で焼成したパンを使用し、粉砕機で10mmの網を使用して粉砕して、裸麦50%添加パン粉を得た。
上記吸油率は、焙焼パン粉83.9%と電極パン粉83.9%が予想に反して、逆の結果となった(おいしさの科学研究所調べ)。裸麦50%含有パン粉は、強力粉50%と裸麦粉50%添加(裸麦はグルテンを含まない)。裸麦50%含有パン粉は電極方式で焼成したパンを使用している。焙焼パン粉と電極パン粉の違いは、焙焼パン粉は、強力粉100%で、ガス火で、220℃で40分焼いており、電極パン粉は、強力粉50%と薄力粉50%で、通電して、約10分で、焼きあげている。上記吸油率の逆の結果は、強力粉と薄力粉の配合割合の差なのか、焼き時間による差が出ているかは、不明である。
ただし、食感としては、裸麦50%添加パン粉は硬さがあるが、さくみがある。竹粉末10%添加パン粉は、裸麦50%添加パン粉より、もっと食感が硬かった。
裸麦50%添加パン粉、竹粉末10%添加パン粉、ふすま30%添加パン粉のそれぞれの電子顕微鏡写真を図10に示す。
生パン粉と加熱処理したパン粉の比較を行う。
加熱処理に関して、今回は、油調したパン粉はSEMで観察できないため、水分コンテントの測定を行い、300℃で20分前後焼いた状態のものを加熱処理と考えた(表6参照)。
生パン粉と加熱処理したパン粉の差がどのようなものか、SEMで観察した。
設定温度 300℃ 設定モード93 (30秒間に変動幅0.05%以下になった時測定終了)
走査電子顕微鏡 JEOL JCM−5700型
でん粉30%添加パン粉SEM画像(生パン粉と300℃20分焼きパン粉の比較)を図11に示す。
でん粉20%添加パン粉SEM画像(生パン粉と300℃20分焼きパン粉の比較)を図12に示す。
でん粉10%添加パン粉SEM画像(生パン粉と300℃20分焼きパン粉の比較)を図13に示す。
焙焼パン粉SEM画像(生パン粉と300℃20分焼きパン粉の比較)を図14に示す。
電極パン粉SEM画像(生パン粉と300℃20分焼きパン粉の比較)を図15に示す。
裸麦50%含有パン粉SEM画像(生パン粉と300℃20分焼きパン粉の比較)を図16に示す。
生のパン粉36%前後の水分コンテントのものと乾燥パン粉の14%前後のものとでは、表面の微少な凹凸の大小は、原料組成の相違によるところが大きい。
走査電子顕微鏡(SEM)では、大気中での油調済みパン粉の表面や、パン粉内部の油の分布状態を、立体構造として観察することは容易ではない。
上記の低吸油性でありながら良好な食感を有するパン粉に関して、従来のパン粉と比べ、吸油率の有意差についてのメカニズムを解明するために、大型放射光施設スプリングエイト(SPring−8)を使って、油調済みパン粉の油との界面の微細表面観察を試み、また、内部の油の分布状況の観察を試みた。
以下に、各種パン粉試料のマイクロX線CT画像およびその画像の特定区域(図中で黄色く示した部分)のImageJの解析(Analyze)のプロファイル・プロット(Plot Profile)によってのプロファイル(Profile)を解析した。画像では、パン粉が最も淡く、空気は最も濃く、油は中間の濃淡で表される。図中の白いリングは、マイクロX線CT測定時に、パン粉試料を保持した、ガラスリングである。
図17ないし図37に、スプリングエイトによる解析結果を示す。
1 裸麦含有生パン粉(1)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図17に示す。
2 裸麦含有生パン粉(2)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図18に示す。
3 裸麦含有揚げ(油調済み)パン粉(1)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図19に示す。
4 裸麦含有揚げ(油調済み)パン粉(2)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図20に示す。
5 裸麦含有揚げ(油調済み)パン粉のマイクロX線CT測定の縦断面スライス画像を図21に示す。
6 裸麦含有揚げ(油調済み)パン粉のマイクロX線CT測定の縦断面スライス画像を図22に示す。
7 でん粉30%生パン粉(1)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図23に示す。
8 でん粉30%生パン粉(2)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図24に示す。
9 でん粉30%生パン粉のマイクロX線CT測定の縦断面スライス画像を図25に示す。
10 でん粉30%揚げ(油調済み)パン粉(1)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図26に示す。
11 でん粉30%揚げ(油調済み)パン粉(2)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図27に示す。
12 でん粉30%揚げ(油調済み)パン粉(3)のマイクロX線CT測定の断面構造を撮影した写真を図28に示す。
13 でん粉30%揚げ(油調済み)パン粉のマイクロX線CT測定の縦断面スライス画像を図29に示す。
14 でん粉10%生パン粉(1)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図30に示す。
15 でん粉10%生パン粉(2)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図31に示す。
16 でん粉10%揚げ(油調済み)パン粉(1)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図32に示す。
17 でん粉10%揚げ(油調済み)パン粉(2)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図33に示す。
18 焙焼生パン粉(1)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図34に示す。
19 焙焼生パン粉(2)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図35に示す。
20 焙焼揚げ(油調済み)パン粉(1)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図36に示す。
21 焙焼揚げ(油調済み)パン粉(2)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図37に示す。
22 電極生パン粉(1)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図38に示す。
23 電極生パン粉(2)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図35に示す。
24 電極揚げ(油調済み)パン粉(1)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図39に示す。
25 電極揚げ(油調済み)パン粉(1)のマイクロX線CT測定の断面スライス画像を図40に示す。
しかし、パン粉が多孔質のスポンジ構造であることが観察でき、また、油調済みパン粉の内部に空孔の存在が確認でき、油で満たされていない空孔と、油で満たされた空孔が観察された。この油で満たされていない空孔がパン粉内部に多く存在することにより、油調後の吸油率と油切れを決定づけていると言う考えに至った。
裸麦は、食後血糖値の上昇抑制、心疾患リスクの低減、コレステロール低下など様々な機能性を有するβ−グルカンを含有する。当初、機能性を有するフライ食品の製造を念頭に、小麦粉に裸麦を添加したパン粉を製造し、フライ食品を製造したところ、「油ぎれ」が良いように思われた。これを確認するため、パン粉の吸油性について、遠心分離による方法を用いて調べたところ、裸麦を含有するパン粉は、通常のパン粉と比較して有意に吸油性が低下した(20〜30%)。
この様な場合、従来は単に親水性の多糖類を添加したために、パン粉内の親水性の増大やそれによるパン粉中の水分含量の増大などにより吸油性が低下すると考えられてきた。しかし、パン粉中の裸麦含量と吸油率の関係を調べたが、有意な相関性は見られなかった。さらに、パン粉の水分率を測定し、吸油率との関係を調べたところ、有意な相関性はほとんど無いと考えられた。そこでこれまでの考え方に疑問を持ち、通常のパン粉、裸麦50%含有パン粉について走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、図9に示した様に、通常の裸麦粉を含有しない焙焼および電極パン粉では表面が滑らかであったのに対し、裸麦50%含有パン粉では、ハスの葉やバラの花びらの表面構造のように凹凸構造が観察された。この様な表面構造の違いが、吸油性に影響を与えているのではと推測された。
電子顕微鏡では大気中での油調済みパン粉表面やパン粉内部の油の状態を観察することは容易ではない。そこで、SPring−8のマイクロX線CTによる油調済みパン粉の微細構造観察を試みた。図42に油調済み焙焼パン粉(図37、38参照)、図43に油調済み電極パン粉(図40、41参照)、図44に油調済み裸麦50%含有パン粉(図19〜22参照)のX線CT画像を示す。図中の黄色で示した長方形の横軸の長さは、700μmである。
画像では、パン粉が最も淡く、空気は最も濃く、油は中間の濃淡で表される。
図中の白いリングは、マイクロX線CT測定時に、パン粉試料を保持した、ガラスリングである。どのパン粉でも、空孔部分と油浸漬部分が存在した。油浸漬部分は境界面が曲線を描き、メニスカス(三日月の意)を示している。このことからも、この部分が液体である油に満たされていることが確認できる。
どのパン粉も油に浸漬されていない空孔を有する。定性的ではあるが、油に満たされていない空孔は、油調済み焙焼パン粉および油調済み電極パン粉より、油調済み裸麦50%含有パン粉の方が多いことがわかる。
ImageJのAnalyzeのPlot Profileによって図中で黄色く示した部分のProfileを解析したが、パン粉と油浸漬部分の間に空気の層は確認できなかった。パン粉表面で、油をはじいているのでは無く、パン粉内部の構造で油の吸収が低下したと、現在のところ推測している。
なお、裸麦50%含有パン粉では、ハスの葉やバラの花びらの表面構造のように微細なマイクロナノレベルでのフラクタル凹凸構造が観察され(図9参照)、この様な表面構造が、吸油性に影響を与えていることが推測され、同様に、図10に示すように、竹粉末10%添加パン粉、ふすま30%添加パン粉も裸麦50%添加パン粉と同様な微細なマイクロナノレベルでのフラクタル凹凸構造が観察されており、また、図11ないし13に示すように、でん粉30%添加パン粉も同様な微細なマイクロナノレベルでのフラクタル凹凸構造が観察されている。そして、図21、22,26,27を参酌すると、凹凸した表面は無数の孔のあいた多孔体の表面を構成しており、表面に現れた凹凸は、SEM画像から、1〜300μmオーダーの、好ましくは1〜200μmオーダーの微細な凹凸構造であり、これらは油の吸収が低下した実施例に相当する。それらはパネラーによる試食テストの結果により、パン粉の柔らかさに関しては、従来品より劣るが、もろさのあるカリカリした独特のクリスピー感があるという効果を発揮することが分かった。
ハスの葉やバラの花びらのような凹凸表面で覆われた多孔質のスポンジ構造を有するパン粉(図49−図52参照)が低吸油性を実現することを明らかとした。裸麦50%含有パン粉のSEM画像も×50、×100、×500、×1000の立体構造によって、窪みに、突起物がある構造(凹に凸)が理解しやすい。そこで、裸麦50%添加パン粉の電子顕微鏡写真を示す図8の1000倍を図49に、500倍を図50に示す。これらは裸麦50%添加パン粉の表面凹凸構造を説明するための図面である。裸麦50%添加パン粉の電子顕微鏡写真を示す図8の100倍を図51に、50倍を図52に示す。これらは裸麦50%添加パン粉の多孔質のスポンジ構造を説明するための図面である。
パン粉の油切れは、添加する材料によって性質が異なることが経験的に分かっているが、具体的にどういう現象が起きているのかは解明できていない。表面の微細構造によって親水性、疎水性の性質が現れているのではないかと考え、BL46XUのX線CTを用い、製造方法及び組成の異なるパン粉の微細構造観察を試みた。特に、微細表面構造における、油調済みパン粉と油の界面の観察と、パン粉内部の油の分布状況を観察した。
その結果、測定前に予想された、各種油調済みパン粉の微細表面構造と油浸漬部との境界面の空気の層の存在は確認できなかった。また、どのパン粉も内部に、油に浸漬されていない空孔を有していた。定性的ではあるが、油に満たされていない空孔は、油調済み焙焼パン粉及び油調済み電極パン粉より、電極式で作成した油調済み裸麦50%含有パン粉の方が多いようであった。
〈背景と研究目的〉
裸麦は、食後血糖値の上昇抑制、心疾患リスクの低減、コレステロール低下など様々な機能性を有するβ-グルカンを含有する(非特許文献1)。当初、上記の機能性を有するフライ食品の製造を念頭に、小麦粉に裸麦を添加したパン粉を製造し、これを用いてフライ食品を製造したところ、「油切れ」が良いように思われた。油切れを客観的に確認するため、油調済みパン粉の油を遠心分離機などにより分離し、パン粉に対する残存した油の割合、即ち吸油率を調べたところ、裸麦を50%含有するパン粉は、通常のパン粉と比較して有意に吸油率が低下した (20〜30%)(特許文献13参照)。
この様な場合、従来は単に親水性の多糖類を添加したために、パン粉内の親水性の増大やそれによるパン粉中の水分含量の増大などにより吸油性が低下すると考えられてきた。しかし、裸麦50%含有パン粉中の水分含量と吸油率の関係を調べたが、有意な相関性は見られなかった。さらに、それぞれのパン粉の水分含量を測定し、吸油率との関係を調べたところ、有意な相関性はほとんど無いと考えられた。
そこでこれまでの考え方に疑問を持ち、東日本で主に使われる焙焼パン粉、西日本で主に使われる電極パン粉及び電極式で作成した裸麦50%含有パン粉について走査電子顕微鏡 (SEM)で観察した。その結果、図9に示した様に、裸麦を含有しない通常の焙焼及び電極パン粉では表面構造が比較的滑らかであったのに対し、裸麦50%含有パン粉では、ハスの葉やバラの花びらの表面構造に似た微細凹凸構造が観察された。この様な表面構造の違いが、吸油性に影響を与えているのではと推測された。
油調済み裸麦50%含有パン粉の微細凹凸表面と油との界面に、空気の層が存在することによって油調後に油切れが良く吸油率の差となって表れているのではないかと考え、Spring−8のマイクロX線CTにより、空気の層が存在するカシー状態(非特許文献4)か空気の層が存在しないウエンゼル状態(非特許文献5)かを観察した。
即ち、前述の微細な表面構造が、油調済みパン粉と油の界面状態に影響し、パン粉表面とパン粉内部の油の存在状態に影響を与えていることが推測されたが、走査電子顕微鏡では大気中での油調済みパン粉の表面やパン粉内部の油の状態を観察することは容易ではない。そこで、Spring−8のマイクロX線CTによる油調済みパン粉の微細構造観察を試みた。
BL46XUにて、試料をX線測定用ガラスキャピラリーに投入し、キャピラリー内で特に固定せず、試料の入ったガラスキャピラリーを回転試料台にセットした後、X線エネルギーは12.39keV、カメラ長は10mm、視野サイズを1.4mm×0.9mm、露光時間は150ms、試料方位角間隔はステップ操作の場合は0.4°、連続操作の場合は1.2°、試料回転角度は180°で測定し、透過像を得た。検出器は、浜松ホトニック製C4880−41Sを用いた。
得られた透過像から、filtered back−projection(FBP)法に基づく再構成ソフトを用いてCT再構成画像を作成した。
・焙焼生パン粉試料
通常のパンのように、小麦粉、水、イーストどの原料を混合し、これを発酵して得た生地をガス火で焙焼して粉砕したパン粉。
・電極生パン粉試料
前述の焙焼パン粉と同様に調製した生地を通電し、ジュール熱効果で蒸し焼きした後、粉砕したパン粉。
・裸麦含有生パン粉試料
小麦粉の一部を裸麦粉に置き換えて、前述と同様に生地を調製し、これに通電し、ジュール熱効果で蒸し焼きした後、粉砕したパン粉。裸麦50%含有パン粉は、小麦粉の50%を裸麦に置き換えて調製したパン粉。
・油調済パン粉試料
それぞれの生パン粉を市販のキャノーラ油を使用し175℃で2分30秒間、油調した試料。以後、油調済み焙焼パン粉、油調済み電極パン粉及び油調済み裸麦50%含有パン粉と表示する。
焙焼生パン粉試料、電極生パン粉試料、裸麦生パン粉試料を測定に供したが、試料がいずれも柔らかく、測定中に変形し、良好なCT画像を得ることは出来なかった。それぞれの油調済みパン粉を油調した食用油に浸漬して試料の測定も試みたが、測定中に食用油中で試料パン粉が移動し、CT画像を得ることが出来なかった。ここでは、油調済パン粉試料について報告する。
図42に油調済み焙焼パン粉、図43に油調済み電極パン粉、図44に油調済み裸麦50%含有パン粉のX線CT画像を示す。各図のAはCTの全体画像で、白いリングはマイクロX線CT測定時に、パン粉試料を保持した、ガラスキャピラリーである。各図のBはA中の枠で示した部分の拡大画像である。画像では、パン粉が最も淡く、空気は最も濃く、油は中間の濃淡で表される。
どのパン粉でも、空孔部分と油浸漬部分が存在した。油と予想される中間の濃淡領域は空気である最も濃い濃淡領域に対して境界面が曲線を描き、メニスカスを示している。このことからも、この部分が液体である油に満たされていることが確認できる。
さらに、Image Jのplot Profileによって詳細な解析を試みたが、パン粉と油浸漬部分の間に明確な空気の層はこれまでのところ確認できなかった。
どのパン粉も内部に油に浸漬されていない空孔を有する。定性的ではあるが、油に満たされていない空孔は、油調済み焙焼パン粉及び油調済み電極パン粉より、電極式で作成した油調済み裸麦50%含有パン粉の方が多いようである。
パン粉の油切れに関する有意差について、パン粉表面の微細凹凸構造と油との界面に空気の層が存在することによるのではなく、パン粉内部の空孔の相対的な多さがパン粉の油切れの良さ(吸油率)に関係があると予想される。さらに、図44Bでは真ん中の空孔が油浸漬部分に開口しているにもかかわらず油が入り込んでいない様に見える。そこで図45に示したようにこの部分を拡大すると、明らかに開口していることが分かった。これも裸麦50%含有パン粉の高い油ぎれの原因と推測される。
図46から、油の浸漬していない空孔が存在する原因は、下記に考察したように、濡れのピン止め効果(非特許文献2)とリ・エントラント構造(非特許文献3)によるものではないかと推測している。濡れのピン止め効果とは、図47で示したように、液滴が斜面を移動する時に、接触角θと屈曲角αを加算した以上に、液滴の接触角が大きくならないと、先に進めない効果である。図45のように空孔の上部が大きく張り出しており、図48左のリ・エントラント構造になっており、大きな屈曲を有し、油が浸入しにくい状態である。さらに、図46から、リ・エントラン構造の開口部が下向きに湾曲し、内側に微細凹凸構造が存在し、あたかも、ダブル・リ・エントラン構造(図48右)を示している。このような構造のため、屈曲角が穴の内部に回り込む時に、より大きな屈曲角となる可能性が高く、濡れのピン止め効果が強く働くのではないかと考えられる。裸麦50%含有パン粉は、微細凹凸構造で表面を覆われた多孔質のスポンジ構造を有する。この構造が、濡れのピン止め効果や、空孔入口のダブル・リ・エントラント構造として機能し、裸麦50%含有パン粉の空孔に油が入り込まず、油ぎれが良くなる原因ではないかと推測している。
Claims (10)
- 多孔質のスポンジ構造を有し、表面が蓮の葉やバラの花びらに類似したマイクロレベルの凹凸を有する表面構造からなることを特徴とするパン粉。
- 前記表面構造が、1〜300μmオーダーの微細な凹凸構造である、請求項1に記載のパン粉。
- 粘着性のある材料と粘着性のない材料の混合物を出発原料とする、請求項1または2に記載のパン粉。
- 前記粘着性のある材料がグルテンを含む穀粉からなり、前記粘着性のない材料がでん粉、裸麦粉、ふすまおよび竹粉末から選ばれる、請求項3に記載のパン粉。
- 前記粘着性のない材料がでん粉である場合、前記出発原料が粘着性のある材料を主原料とするものであって、粘着性のある材料を100wt%としたとき、その8〜50wt%がでん粉で置き換えられていることを特徴とする、請求項4に記載のパン粉。
- 前記でん粉が、アミロース24wt%以上、アミロペクチン含有率76wt%以下のでん粉である、請求項5に記載のパン粉。
- 前記でん粉が、じゃがいも、とうもろこし、小麦、大手ぼう豆、青えんどう豆由来のでん粉から選ばれる、請求項6に記載のパン粉。
- 目開き106μmのふるいを通過しない粒子径のものを含んでいる、請求項5ないし7のいずれかに記載のパン粉。
- 前記出発原料の中心粒径が、10−5mオーダーの粒子、10−4mオーダーの粒子、および10−3mオーダーの粒子のうちの少なくとも2種類を混合した粒子径の異なるものからなる、請求項3ないし8のいずれかに記載のパン粉。
- 請求項1から9のいずれかに記載のパン粉を油調用食材の衣材とした、吸油量の少ないフライ食品。
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