JP2017155511A - 柱梁仕口部及び柱梁接合方法 - Google Patents

柱梁仕口部及び柱梁接合方法 Download PDF

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Abstract

【課題】H形鋼の柱のフランジとH形鋼の梁のフランジとを簡易な加工で溶接接合し、柱梁仕口部の破断を抑制する。【解決手段】H形鋼の柱20のフランジ21とH形鋼の梁30のフランジ31とが開先40を介して溶接接合された柱梁仕口部10であって、開先40の底部に設けられた裏当て金50に起因し、当該裏当て金50と柱20のフランジ21との間に形成される形状ノッチ70における最も柱20側に位置する端部70bが、開先40に埋め込まれる溶接金属60において最も柱20側に位置する端部よりも梁30側に位置している。すなわち、溶接熱影響部71は形状ノッチ70の端部70bを起点とする応力直交方向と一致していない。【選択図】図3

Description

本発明は、H形鋼の柱のフランジと梁のフランジとが開先を介して溶接接合された柱梁仕口部の構造、及びこれら柱と梁とを開先を介して溶接接合する方法に関する。
従来、鉄骨構造物に用いられるH形鋼の柱と梁との接合部において、柱のフランジと梁のフランジを溶接接合した仕口部が用いられる。
図8は、従来の柱梁仕口部の構造を説明する図である。かかる柱梁仕口部10では、柱20のフランジ21(以下、柱フランジ21という。)と梁30のフランジ31(以下、梁フランジ31という。)は、レ形の開先40を介して完全溶け込み溶接により接合される。すなわち、開先40の底部に裏当て金50を設け、開先40に溶接金属60を埋め込んで、柱フランジ21と梁フランジ31が直接溶接される。
例えば鉄骨構造物が地震力を受けた場合、梁30に引張力が作用し、柱フランジ21に板厚方向に応力が作用する。
一方、柱フランジ21と裏当て金50の間に形成される形状ノッチ70には、応力が集中しやすい。応力集中の要因は種々あるが、例えば柱フランジ21と裏当て金50の形状的な不連続によるものである。また、柱20と梁30に囲まれたパネルゾーンがせん断変形することで柱フランジ21が局所的に曲げ変形して形状ノッチ70が広がり、これにより応力集中が大きくなる。また、ウェブボルト接合のすべりによって生じる梁フランジ31の局部変形により、形状ノッチ70が広がり、これにより応力集中が大きくなる。
そして、溶接を行った近傍の鋼材、すなわち溶接金属60に接する柱フランジ21は、その材質が劣化する。この材質が劣化した溶接熱影響部71が、応力が作用する方向と直交する方向(以下、応力直交方向という。)と一致していると、形状ノッチ70における底部70a(以下、ノッチ底70aという。)を起点に溶接熱影響部71に沿って、亀裂が入り破断する場合がある(図中の破断線P)。
例えば特許文献1には、表面になだらかな凹曲面が形成された裏当て金を用いて、柱と梁を溶接した後、当該裏当て金を除去し、柱と梁の両部材間に亘って連続するなだらかな曲面をなす溶着部を形成することが開示されている。このように溶接金属の有効断面積を増加させることで、柱梁仕口部に作用する応力の低減が図られている。
また、特許文献2、3には、それぞれ柱と梁の溶接に用いられる裏当て金の表面に切り欠きを形成したことが開示されている。かかる場合も、溶接金属の有効断面積が増加し、柱梁仕口部に作用する応力の低減が図られている。
また、特許文献4には、柱に設けられたダイアフラムを梁側に突出させ、このダイアフラムの突出部に梁の下フランジを搭載可能とする支持部を設け、さらに支持部の上面に梁の下フランジの幅方向両端の位置を規制するエンドタブを設ける。そして、エンドタブをダイアフラムに一体形成することで、形状ノッチをなくし、柱梁仕口部に作用する応力の低減が図られている。
また、特許文献5には、溶接接合する第一の鋼材に増厚加工を行い、第一の鋼材端部と第二の鋼材端部とを開先を介して突合せ溶接を行い、第一の鋼材の増厚部の所定の範囲に、突合せ溶接部に連続した化粧盛り溶接を行うことが開示されている。このように応力集中する箇所を補強することで、破断の抑制が図られている。
また、非特許文献1には、梁の下フランジの溶接をレ形開先による完全溶け込み溶接で行い、その後裏当て金を除去して裏はつりした後に補修溶接することが開示されている。このように裏当て金を除去することで、初層溶接に生じやすい溶接欠陥を除去し、また裏当て金に起因する形状ノッチをなくし、柱梁仕口部に作用する応力の低減が図られている。
特開平5−8033号公報 特開昭59−1094号公報 特開2011−136350号公報 特開平6−240745号公報 特開2003−117654号公報
AISC358−10 Prequalified Connections for Special and Intermediate Steel Moment Frames for Seismic Applications, 2010, incl. Supplement No.1
しかしながら、特許文献1に記載された接合方法を用いる場合、裏当て金の表面に凹曲面を形成する必要があり、さらに裏当て金を除去する必要があるため、加工工程が多くコストもかかる。
また、特許文献2、3に記載された裏当て金を用いる場合、当該裏当て金の表面に切り欠きを形成する必要があるため、やはり加工工程が多くコストもかかる。
また、特許文献4に記載された柱梁仕口部を用いる場合、ダイアフラムへの複雑な加工が必要となるため、コストもかかる。
また、特許文献5に記載された接合方法を用いる場合、第一の鋼材に増圧加工が必要であり、さらに突合せ溶接後に化粧盛り溶接を行う必要があるため、加工工程が多くコストもかかる。
また、非特許文献1に記載された溶接方法を用いる場合、柱梁接合部の溶接は建設現場で行われるため、補修溶接時には溶接姿勢が上向きとなるなど、施工手順が煩雑となる。
以上のように特許文献1〜5、非特許文献1に記載されたいずれの柱梁仕口部を用いた場合でも、加工が複雑でコストもかかる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、H形鋼の柱のフランジとH形鋼の梁のフランジとを簡易な加工で溶接接合し、柱梁仕口部の破断を抑制することを目的とする。
前記の目的を達成するため、本発明は、H形鋼の柱のフランジとH形鋼の梁のフランジとが開先を介して溶接接合された柱梁仕口部であって、前記開先の底部に設けられた裏当て金に起因し、当該裏当て金と前記柱のフランジとの間に形成される形状ノッチにおける最も柱側に位置する端部が、前記開先に埋め込まれる溶接金属において最も柱側に位置する端部よりも梁側に位置していることを特徴としている。
前記柱のフランジには、板厚方向に切り欠かれた切り欠き部が形成され、前記溶接金属は、前記切り欠き部を含む前記開先に埋め込まれていてもよい。かかる場合、前記切り欠き部の板厚方向の深さは2mm以上であることが好ましい。
また、前記柱は、前記柱のフランジにおける前記梁と相対する外面に設けられた、前記梁側に突出する突出部を備えていて、前記裏当て金は、前記突出部の前記梁側の部分に当接され、前記形状ノッチは、前記裏当て金と前記突出部との間に形成され、前記溶接金属は、前記柱のフランジ側の開先面がその柱のフランジの平坦な外面により形成される前記開先に埋め込まれていてもよい。かかる場合、前記突出部は、前記柱のフランジにおける前記梁と相対する外面に固定された、前記裏当て金とは別の他の裏当て金であってもよい。また、前記他の裏当て金は前記柱のフランジの外面に隅肉溶接されて固定され、前記隅肉溶接された金属が前記溶接金属と共に前記開先に埋め込まれていてもよい。
別な観点による本発明は、H形鋼の柱のフランジとH形鋼の梁のフランジとを、開先を介して溶接接合する柱梁接合方法であって、前記開先の底部に裏当て金を設け、当該開先に溶接金属を埋め込む溶接工程を有し、前記溶接工程において、前記裏当て金に起因し、当該裏当て金と前記柱のフランジとの間に形成される形状ノッチにおける最も柱側に位置する端部を、前記開先に埋め込まれる溶接金属において最も柱側に位置する端部よりも梁側に配置することを特徴としている。
前記溶接工程の前に、前記柱のフランジの外面を板厚方向に切削加工して切り欠き部を形成し、前記溶接工程において、前記切り欠き部を含む前記開先に前記溶接金属を埋め込んでもよい。
また、前記溶接工程の前に、前記柱のフランジの外面を板厚方向にガウジング加工して切り欠き部を形成し、前記溶接工程において、前記切り欠き部を含む前記開先に前記溶接金属を埋め込んでもよい。
また、前記溶接工程の前に、前記柱のフランジにおける前記梁と相対する外面に、前記梁側に突出する突出部を形成し、前記溶接工程において、前記突出部の梁側の面に前記裏当て金を当接させた状態で、前記溶接金属を前記開先に埋め込んでもよい。かかる場合、前記突出部は、前記裏当て金とは異なる他の裏当て金を、前記柱のフランジにおける前記梁と相対する外面に隅肉溶接して固定することにより形成し、前記溶接工程において、前記他の裏当て金に前記裏当て金を当接させた状態で、前記溶接金属を前記隅肉溶接された金属と共に前記開先に埋め込んでもよい。
本発明によれば、H形鋼の柱梁仕口部の構造において、溶接金属の柱側の端部に比して、形状ノッチを梁側にずらして位置させることにより、柱梁仕口部の柱フランジ溶接熱影響部に作用する応力を低減し、当該柱梁仕口部における破断を抑制することができる。しかも、従来のように複雑な加工は不要で、製造コストを低廉化することができる。したがって、柱梁仕口部を効率的に製造することができる。
第1の実施の形態にかかる柱梁仕口部を備えた柱と梁を示す説明図である。 第1の実施の形態にかかる柱梁仕口部の構造を示す説明図である。 第1の実施の形態にかかる柱梁仕口部の構造を示す説明図であって、(a)は柱梁仕口部の全体構造を示し、(b)は形状ノッチ部分の拡大図を示す。 第2の実施の形態にかかる柱梁仕口部の構造を示す説明図であって、(a)は柱梁仕口部の全体構造を示し、(b)は形状ノッチ部分の拡大図を示す。 第3の実施の形態にかかる柱梁仕口部の構造を示す説明図であって、(a)は柱梁仕口部の全体構造を示し、(b)は形状ノッチ部分の拡大図を示す。 実施例における柱(梁)の断面寸法を示す説明図である。 実施例の解析結果を示し、(a)は応力分布を示し、(b)はひずみ分布を示す。 従来の柱梁仕口部の構造を示す説明図であって、(a)は柱梁仕口部の全体構造を示し、(b)は形状ノッチ部分の拡大図を示す。
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本発明は柱梁仕口部において、溶接熱影響部を、形状ノッチを起点とする応力直交方向から柱フランジ側に角度を設けることで、あるいは、形状ノッチを梁側にずらして位置させることにより、破断危険部位の応力を低減し、さらにひずみを低減する。なお、ここに示す溶接熱影響部とは、柱フランジにおいて溶接金属に近接し溶接入熱によって材質変化した柱フランジ母材の部分を指す。また、応力は柱フランジの板厚方向に作用し、応力直交方向は当該応力に直交する方向、すなわち柱フランジの材軸方向である。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる柱梁仕口部10を備えた柱20と梁30を示す。柱梁仕口部10は、H形鋼から形成された柱20の柱フランジ21に対して、H形鋼から形成された梁30の梁フランジ31を接合する仕口部であり、上側の梁フランジ31と下側の梁フランジ31の両方に設けられる。なお図1においては、本発明の理解を容易にするため、他の部材の図示を省略している。例えば柱20と梁30の接合部において、柱フランジ21と梁30のウェブ32がボルト接合されていてもよい。また、柱20のウェブ22に他の梁が接合されていてもよい。また柱20にスチフナが設けられていてもよい。
図2に示すように柱梁仕口部10において、梁30に対向する柱フランジ21には、板厚方向に切り欠かれた切り欠き部80が形成されている。切り欠き部80は、柱フランジ21の外面から傾斜した切り欠き部80aと、柱フランジ21の内部において材軸方向に延伸する切り欠き部80bとから構成される。切り欠き部80の板厚方向の深さD、すなわち柱フランジ21の外面と切り欠き部80bの距離は2mm以上である。また、切り欠き部80aにおいて、柱フランジ21の外面からの傾斜角度θは45度以上である。
切り欠き部80を形成する方法は、種々の方法を用いることができる。例えば柱フランジ21の外面を切削加工してもよいし、あるいは柱フランジ21の外面(後述する溶接初層部の領域)をガウジング加工してもよい。
そして、図3に示すように柱フランジ21と梁フランジ31との間に形成された断面略レ形の開先40の底部に裏当て金50を設け、切り欠き部80を含む開先40に溶接金属60を埋め込み、完全溶け込み溶接する。こうして、柱フランジ21と梁フランジ31との間に柱梁仕口部10が形成される。
かかる柱梁仕口部10においても、従来の図8に示した場合と同様に、柱フランジ21と裏当て金50の間には、裏当て金に起因する形状ノッチ70が形成される。
一方、溶接金属60に接する柱フランジ21において、その材質が劣化した溶接熱影響部71は、切り欠き部80に沿って形成される。すなわち、溶接熱影響部71は、切り欠き部80aに沿って柱フランジ21の外面から傾斜した溶接熱影響部71aと、切り欠き部80bに沿って材軸方向に延伸する溶接熱影響部71bとから構成される。
溶接熱影響部71aは、形状ノッチ70(ノッチ底70a)における最も柱20側に位置する端部70bを起点とする応力直交方向(柱20の材軸方向と一致)から柱フランジ21側に傾斜しているので、形状ノッチ70から溶接熱影響部71aにおける応力を低減することができる。また、溶接熱影響部71bは、形状ノッチ70の端部70bより柱フランジ21側に位置しているので、溶接熱影響部71bにおける応力も低減することができる。このように溶接熱影響部71は形状ノッチ70の端部70bを起点とする応力直交方向と一致していないので、溶接熱影響部71に作用する応力を十分に低減することができ、柱梁仕口部10における破断を抑制することができる。
しかも、この実施の形態においては、切り欠き部80の深さDを2mm以上としているため、溶接熱影響部71に作用する応力を十分に低減することができる。なお、この切り欠き部80の深さDの下限を2mmとした臨界的意義については、後述する実施例において説明する。
また、この実施の形態においては、切り欠き部80aの傾斜角度θを45度以上としているため、溶接熱影響部71aに作用する応力を分散させることができ、その応力を十分に低減することができる。さらに傾斜角度θを45度以上としたため、切り欠き部80に溶接金属60を適切に埋め込むことができる。
なお、溶接金属60は母材(すなわち柱20と梁30)に比して硬い。このため、母材に比べ、溶接金属60は、形状ノッチ70から応力直交方向に内部が破断しにくい。
次に、かかる構成の柱梁仕口部10を介した柱20と梁30の接合方法について説明する。まず、図2に示したように柱フランジ21の外面に切削加工又はガウジング加工を行って切り欠き部81を形成する。切削加工の場合は工場において切り欠き部81を形成し、ガウジング加工の場合は建設現場で切り欠き部81を形成する。
その後、裏当て金50を梁フランジ31に組立溶接した後、さらに裏当て金50に柱フランジ21を組立溶接する。こうして図3に示したように開先40の底部に裏当て金50が設けられる。
その後、切り欠き部80を含む開先40に溶接金属60を埋め込み、完全溶け込み溶接する(本発明における溶接工程)。そうすると、柱梁仕口部10が形成され、これにより柱20と梁30が接合される。
本実施の形態によれば、柱梁仕口部10に作用する応力を低減し、当該柱梁仕口部10における破断を抑制することができる。そして、このように破断を抑制することで、例えば地震力などにより梁30に作用する引張力を、柱20に適切に伝達することができる。
しかも、切削加工又はガウジング加工のように簡易な加工で柱フランジ21に切り欠き部80を形成することができ、従来の複雑な加工は不要となる。このため、柱梁仕口部10の形成を容易に行うことが可能となる上、製造コストを低廉化することができる。特に切削加工の場合は、工場で切り欠きを加工できるので、建設現場における作業負荷を軽減でき、また機械加工によって製作精度の確保が容易になる。またガウジング加工の場合は、建設現場での作業となるが、切削機械などの大掛かりな装置を省略した製作加工が可能となる。
また、切り欠き部80の形成や裏当て金50の設置は、それぞれ鉄骨加工工場で事前に準備しておくことが可能であり、建設現場での作業は本溶接作業のみとすることができる。このため、建設工期の短縮も可能となる。
次に図4に基づいて、本発明の第2の実施の形態にかかる柱梁仕口部10の構成について説明する。
柱20は、柱フランジ21における梁30と相対する外面に、突出部23を備えている。この突出部23は、柱20の材軸方向に長い断面略矩形状に形成されたもので、この実施の形態においては、柱フランジ21の外面から梁30が位置する方向に向けて突出するように削り出し等の任意の手段によって、柱フランジ21の幅方向に延設されている。そして、この突出部23の梁30側の面には、裏当て金50が当接している。一方で、柱フランジ21には、前記第1の実施の形態においては設けられていた切り欠き部80が形成されていない。
本実施の形態の柱梁仕口部10では、形状ノッチ70は裏当て金50と突出部23の間に形成される。したがって、開先40は、柱フランジ21側の開先面がその柱フランジ21の平坦な外面(すなわち、第1の実施の形態のような切り欠き部80が存在しない外面)により形成され、溶接金属60はこの開先40内に埋め込まれる。
一方、溶接熱影響部71は柱フランジ21の平坦な外面に沿って形成され、当該溶接熱影響部71は形状ノッチ70における最も柱20側に位置する端部70bを起点とする応力直交方向と一致しない。したがって、上記第1の実施の形態と同様の効果を享受でき、すなわち溶接熱影響部71に作用する応力を十分に低減して、柱梁仕口部10における破断を抑制することができる。
ここで、本実施の形態の柱20と梁30の接合方法では、まず、図4に示したように柱フランジ21の外面に突出部23を形成した後、裏当て金50を梁フランジ31に組立溶接する。なお、これら突出部23の形成と裏当て金50の組立溶接は、いずれを先に行ってもよい。その後、裏当て金50を突出部23に組立溶接する。こうして、開先40が形成される。さらにその後、溶接金属60を開先40内に埋め込み、完全溶け込み溶接する(本発明における溶接工程)。そうすると、柱梁仕口部10が形成される。本実施の形態では、前記第1の実施の形態のような切り欠き部80を柱フランジ21に形成する必要がないため、柱20の形成が比較的容易である。
次に図5に基づいて、本発明の第3の実施の形態にかかる柱梁仕口部10の構成について説明する。
柱20は、柱フランジ21における梁30と相対する外面に、前記第2の実施の形態における突出部23として、他の裏当て金90を備えている。この実施の形態における他の裏当て金90は、柱20の材軸方向に長い断面略矩形状に形成された直方体状のもので、柱フランジ21の外面に隅肉溶接により固定されている。そして、他の裏当て金に90の梁30側の面には、裏当て金50が当接している。
したがって、開先40は、柱フランジ21側の開先面が、その柱フランジ21の平坦な外面(すなわち、第1の実施の形態のような切り欠きが存在しない外面)により形成され、溶接金属60はこの開先40内に埋め込まれる。このとき、裏当て金90を柱フランジ21に固定している隅肉溶接91の金属は、開先40に埋め込まれる溶接金属60と共に開先内に埋め込まれる。
なお、柱梁仕口部10の他の構成、即ち柱20のウェブ22、梁30のウェブ32、裏当て金50等の構成は、図4に示した前記第2の実施の形態における柱梁仕口部10の構成と実質的に同じである。
本実施の形態の柱梁仕口部10では、形状ノッチ70は裏当て金50と他の裏当て金90の間に形成される。一方、溶接熱影響部71は柱フランジ21の外面に沿って形成され、当該溶接熱影響部71は形状ノッチ70における最も柱20側に位置する端部70bを起点とする応力直交方向と一致しない。したがって、上記実施の形態と同様の効果を享受でき、すなわち溶接熱影響部71に作用する応力を十分に低減して、柱梁仕口部10における破断を抑制することができる。
ここで、本実施の形態の柱20と梁30の接合方法では、まず、図5に示したように他の裏当て金90を、柱フランジ21の外面に隅肉溶接して固定することにより突出部を形成した後、裏当て金50を梁フランジ31に組立溶接する。なお、これら他の裏当て金90の形成と裏当て金50の組立溶接は、いずれを先に行ってもよい。その後、裏当て金50を他の裏当て金90に組立溶接する。こうして、開先40が形成される。さらにその後、溶接金属60を隅肉溶接91の金属と共に開先40内に埋め込み、完全溶け込み溶接する(本発明における溶接工程)。そうすると、柱梁仕口部10が形成される。本実施の形態では、前記第1の実施の形態のような切り欠き部80を形成する必要がない上、他の裏当て金90の設置も現場で行うことが可能であるため、施工性がきわめて高く、建設工期の短縮が可能となる。
なお、柱に設けられた他の裏当て金90は、隅肉溶接91によって柱フランジに固定されているため、これら柱フランジ21と他の裏当て金90の間に応力が集中することを抑制できる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例としては図3に示した柱梁仕口部10を使用し、比較例としては図8に示した柱梁仕口部10を使用した。そして、これら柱梁仕口部10を有限要素解析でモデル化し、以下の条件で応力とひずみを解析した。
図6に示すように柱20の断面寸法は、そのせいH1が474.6mmであり、幅B1が424.0mmであり、フランジ21の板厚tf1が77.0mmであり、ウェブ22の板厚tw1が47.6mmであり、フィレットのr1が15.2mmである。梁30の断面寸法は、その幅B2が300mmであり、フランジ31の板厚tf2が32mmである。また柱20と梁30の引張強度は、それぞれ490MPaである。
図3及び図8に示す柱梁仕口部10において、柱フランジ21の外面と梁フランジ31の先端部との距離は6mmであり、梁フランジ31の傾斜角度は45度である。また、裏当て金50は、その高さが12mmであり、幅が25mmである。そして、切り欠き部80の深さDを、0mm(ケース1)、2mm(ケース2)、4mm(ケース3)に変化させ、梁フランジが塑性化するまで梁フランジに引張力を与えた。すなわち、ケース1は図8に示す比較例であり、ケース2、3は図3に示す実施例である。
本実施例では、梁フランジが塑性化した後の形状ノッチ70から溶接熱影響部71(溶接金属60の境界)に沿った応力とひずみを調査した。その解析結果を図7に示す。図7(a)は相当応力分布であり、縦軸は形状ノッチ70からの位置を示し、横軸は溶接熱影響部71の相当応力を示している。図7(b)は相当塑性ひずみ分布であり、縦軸は形状ノッチ70からの位置を示し、横軸は溶接熱影響部71の相当塑性ひずみを示している。
図7を参照すると、比較例であるケース1では、応力が大きくひずみも大きい。これに対して、本発明の実施例であるケース2、3では、ノッチ底から離れた直後に応力、ひずみが大きく低減している。したがって、本発明によれば、柱梁仕口部10に作用する応力を低減でき、当該柱梁仕口部10における破断を抑制することができることが分かった。また、ケース2とケース3の解析結果が大きく変わらないことから、切り欠き部80の深さDは2mm以上あれば、十分な効果を享受できることが分かった。
本発明は、地震力が作用する鉄骨構造物において、H形鋼の柱フランジと梁フランジを溶接接合した梁柱仕口部に適用できる。また、地震力を考慮する必要がない鉄骨構造物における梁柱仕口部にもそのまま適用できる。
10 柱梁仕口部
20 柱
21 フランジ
22 ウェブ
23 突出部
30 梁
31 フランジ
32 ウェブ
40 開先
50 裏当て金
60 溶接金属
70 形状ノッチ
71(71a、71b) 溶接熱影響部
80(80a、80b) 切り欠き部
90 他の裏当て金
91 隅肉溶接

Claims (11)

  1. H形鋼の柱のフランジとH形鋼の梁のフランジが開先を介して溶接接合された柱梁仕口部であって、
    前記開先の底部に設けられた裏当て金に起因し、当該裏当て金と前記柱のフランジとの間に形成される形状ノッチにおける最も柱側に位置する端部が、前記開先に埋め込まれる溶接金属において最も柱側に位置する端部よりも梁側に位置していることを特徴とする、柱梁仕口部。
  2. 前記柱のフランジには、板厚方向に切り欠かれた切り欠き部が形成され、
    前記溶接金属は、前記切り欠き部を含む前記開先に埋め込まれることを特徴とする、請求項1に記載の柱梁仕口部。
  3. 前記切り欠き部の板厚方向の深さは2mm以上であることを特徴とする、請求項2に記載の柱梁仕口部。
  4. 前記柱は、前記柱のフランジにおける前記梁と相対する外面に設けられた、前記梁側に突出する突出部を備えていて、
    前記裏当て金は、前記突出部の前記梁側の部分に当接され、
    前記形状ノッチは、前記裏当て金と前記突出部との間に形成され、
    前記溶接金属は、前記柱のフランジ側の開先面がその柱のフランジの平坦な外面により形成される前記開先に埋め込まれることを特徴とする、請求項1に記載の柱梁仕口部。
  5. 前記突出部は、前記柱のフランジにおける前記梁と相対する外面に固定された、前記裏当て金とは別の他の裏当て金であることを特徴とする請求項4に記載の柱梁仕口部。
  6. 前記他の裏当て金は前記柱のフランジの外面に隅肉溶接されて固定され、
    前記隅肉溶接された金属が前記溶接金属と共に前記開先に埋め込まれていることを特徴とする、請求項5に記載の柱梁仕口部。
  7. H形鋼の柱のフランジとH形鋼の梁のフランジとを、開先を介して溶接接合する柱梁接合方法であって、
    前記開先の底部に裏当て金を設け、当該開先に溶接金属を埋め込む溶接工程を有し、
    前記溶接工程において、前記裏当て金に起因し、当該裏当て金と前記柱のフランジとの間に形成される形状ノッチにおける最も柱側に位置する端部を、前記開先に埋め込まれる溶接金属において最も柱側に位置する端部よりも梁側に配置することを特徴とする、柱梁接合方法。
  8. 前記溶接工程の前に、前記柱のフランジの外面を板厚方向に切削加工して切り欠き部を形成し、
    前記溶接工程において、前記切り欠き部を含む前記開先に前記溶接金属を埋め込むことを特徴とする、請求項7に記載の柱梁接合方法。
  9. 前記溶接工程の前に、前記柱のフランジの外面を板厚方向にガウジング加工して切り欠き部を形成し、
    前記溶接工程において、前記切り欠き部を含む前記開先に前記溶接金属を埋め込むことを特徴とする、請求項7に記載の柱梁接合方法。
  10. 前記溶接工程の前に、前記柱のフランジにおける前記梁と相対する外面に、前記梁側に突出する突出部を形成し、
    前記溶接工程において、前記突出部の梁側の面に前記裏当て金を当接させた状態で、前記溶接金属を前記開先に埋め込むことを特徴とする、請求項7に記載の柱梁接合方法。
  11. 前記突出部は、前記裏当て金とは異なる他の裏当て金を、前記柱のフランジにおける前記梁と相対する外面に隅肉溶接して固定することにより形成し、
    前記溶接工程において、前記他の裏当て金に前記裏当て金を当接させた状態で、前記溶接金属を前記隅肉溶接された金属と共に前記開先に埋め込むことを特徴とする、請求項10に記載の柱梁接合方法。
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