JP3065862B2 - 流量検出装置および流量検出方法 - Google Patents

流量検出装置および流量検出方法

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JP3065862B2
JP3065862B2 JP5291267A JP29126793A JP3065862B2 JP 3065862 B2 JP3065862 B2 JP 3065862B2 JP 5291267 A JP5291267 A JP 5291267A JP 29126793 A JP29126793 A JP 29126793A JP 3065862 B2 JP3065862 B2 JP 3065862B2
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喬 犬島
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ダイヤモンド薄膜を応
用した気体、液体、霧状流体(噴霧化された流体)また
は固体粉末の流体等の流量を測定する流量検出装置に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より知られている流量検出装置の種
類としては、大きく分けて熱的検出装置と力学的検出装
置とに分別される。熱的検出装置は流量に従って変化す
る検出器部分の温度を検出することにより、流量を測定
する。この方式は被測定物への影響が少なく、かつ比較
的高速動作が可能であるが、被測定物との反応、あるい
は感度に問題がある。力学的検出装置は力学的作用(例
えば流体の圧力)を利用するもので、感度及び反応速度
に優れているが機械的限界があり、また被測定物への影
響が発生する難点がある。
【0003】なお一般に流量の単位としては、sccmが使
用される。これは流体のある断面において、毎分どれほ
どの量の流体(cm3で示される) が通過するかを示すもの
であり、単位はcm3/分で示される。例えば、流速が2cm
/分の流体が10cm2 のパイプ中を流れているとすると、
パイプの断面において、毎分2×10cm3 の流体が通過す
ることになり、流量は20sccmということになる。
【0004】熱的検出装置は感度、反応の改善を目指し
て種々のものが報告されている。例えばシリコンウエハ
ーの中に作り込んでICと一体化することで高精度化を
計ったものや、圧力センサーと一体化することで感度の
向上を達成しようとする試み等が知られている。
【0005】これらの方法は、いずれも流量検出器部分
をサーミスタ構造とし、この検出器部分を局所的に加熱
状態におき、検出器から流体によって運び去られる熱量
をサーミスタ機能で読み取ることで流量に換算しようと
するものである。また流体によって運び去られる熱量を
敏感に検出するために、サーミスタ部分は極力小さく
し、その熱容量を小さくするのが普通である。
【0006】サーミスタとは温度の変化に従い物質の電
気抵抗が変化する性質を利用した素子であり、金属や半
導体を用いたものが良く知られている。実際の測定に当
たっては、サーミスタ機能によりサーミスタ部分の温度
を測定し、これから流体によって運び去られる熱量を算
出し、この流体によって運び去られる熱量を基に流体の
流速が算出される。そして流速が得られれば、流量が算
出される。
【0007】従来の流量検出装置としては、シリコン基
板上に形成されたPまたはN型のシリコン半導体をサー
ミスタとして用い、また流体に運び去られる熱量を多く
するために該サーミスタを適当な方法で加熱する構成が
とられていた。
【0008】〔従来技術の問題点〕しかしながら基板と
してシリコンを用いた場合には、シリコンの持つ熱伝導
率や比熱の問題からサーミスタ部分に上手く熱量が供給
できず、サーミスタ部分から流体に運び去られる熱量を
正確に計測することができなかった。
【0009】例えばサーミスタ部分とサーミスタ部分を
加熱する加熱体との間の距離を大きくすると、サーミス
タ部分に熱量が上手く供給されず、一旦流体によりサー
ミスタ部分の熱量が運び去られると、サーミスタ部分が
冷却されてしまう。流量の測定において、例えば一定の
流量の流れている時は、サーミスタからの出力は一定で
なければならず、一定の流量が流れている場合でも時間
の経過とともにサーミスタ部分の温度が下がっていって
しまったのでは、出力は一定にならない。即ち正確な流
量計測はできないことになる。
【0010】またサーミスタ部分を効率良く加熱するす
ために、発熱体をサーミスタ部分に接近させて設けた場
合、サーミスタ部分に過剰の熱量が供給されてしまう。
すると流体によって運び去られる微量な熱量が発熱体か
ら供給される莫大な熱量の影響で正確に計測できなくな
ってしまう。これは、サーミスタ部分の温度が流体によ
って持ち去られる熱量を正確に反映したものではなく、
発熱体の影響を大きく受けたものになるからである。
【0011】従って従来のシリコンサーミスタを用いた
流量検出装置においては、サーミスタ部分と発熱体との
位置関係、または熱的な関係を微妙に調整し、サーミス
タ部分に熱量が供給不足でもなくさりとて供給過剰でも
なく、とういった微妙な状態を実現させたようとした構
造をとっていた。しかし、サーミスタ部分に供給する適
切な熱量は、流量によって大きく変わるものであり、上
記の微妙な状態もまた流量によって変化する。従って現
実には、測定流量範囲や測定精度に鑑み、適当なところ
で妥協した構造を取らざるを得なかった。そして、結果
として流量測定範囲を狭くし、流量計測の精度をある程
度落として使わざるを得なかった。
【0012】流量測定範囲が狭いということは、測定で
きる最大流量と最小流量の比が小さいということであ
り、即ちダイナミックレンジが狭いということである。
【0013】また出来るだけ感度を高めるために、サー
ミスタ部分の発熱体を高温(例えば100℃以上)とした
場合、塩酸や発火の危険性が高いガソリンなどの流量測
定が行えないという大きな問題があった。特にガソリン
等の可燃性の流体(気体であっても、液体であっても、
霧状であっても、また粉体のようなものでも良い)の場
合においては、高温の加熱は危険であり、必然的に感度
の低いものを用いざるをえなかった。
【0014】また、従来のサーミスタを用いた流量検出
装置においては、サーミスタ部分や発熱体、さらにはそ
れらの金属配線を流体による腐食から守るために酸化珪
素膜等の保護膜を必要としていた。しかし保護膜は計測
精度を低下させる要因となっていた。この場合、計測に
際して影響を低減させるために熱伝導率が高く、比熱が
小さい材料で保護膜を形成することも考えられるが、こ
の保護膜としてサーミスタ部分や発熱体との熱伝導率や
比熱が異なる材料を用いると、熱伝導率や比熱の差が原
因で、保護膜とサーミスタ部分との界面において熱の反
射や屈折が生じ、やはり計測精度を低下させてしまう。
以上のような要因で、現実には最小感度として1sccm程
度(計測できる最小流量)、応答速度として0.5sec程度
が実用化されているに過ぎなかった。
【0015】また従来の流量検出装置は、検出感度と検
出の応答速度とを両立させることができなかった。即ち
検出感度を高めると応答速度が低下し、応答速度を高め
ると検出感度が低下してしまっていた。
【0016】〔発明の目的〕以上のような背景から本発
明は、高い加熱を必要とせず、また微小流量を測定で
き、さらに高感度と高速応答性を両立させ、しかも大き
なダイナミックレンジを有する流量検出装置を提供する
ことを発明の目的とする。
【0017】〔発明の背景〕サーミスタが直接検出する
温度とサーミスタ部分から流体によって運び去られる熱
量の関係を考察すると、流体の温度を一定と仮定した場
合、流量を正確にサーミスタ部分によって測定するに
は、サーミスタ部分の温度が流体によって運び去られる
熱量のみに依存することが必要であると結論される。こ
れは言い換えるならば、流体によって持ち去られる熱量
にバランスするようにサーミスタ部分の温度が定まるこ
とが必要であるということである。従って流体の温度、
流量が一定の場合に正確な流量測定を行うには、サーミ
スタ部分が熱平衡の状態にあり、流量によって決定され
る温度を有していることが必要とされる。
【0018】以下数式1に以上の関係を定量的に表現す
る。以下において、Wはサーミスタ自体が発熱する単位
時間当たりの熱量であり、Gはサーミスタ部分を構成す
る材料の熱伝導率であり、Kは流体によって運び去られ
る熱量に関係する熱伝導係数で、流速uの1/2 乗に比例
する。即ちこのKは流速uと比例定数K0 を用いてK=
K0 √uと表される。またTはサーミスタ部分の温度で
あり、T0 は流体の温度である。
【0019】
【数1】
【0020】上記数式1において、K(T−T0 )の項
は単位時間当たりにサーミスタ部分より流体によって奪
われる単位時間当たりの熱量を示す。数式1はサーミス
タ部分におけるエネルギーバランスを示す式であり、数
式1で示されるような熱平衡状態が実現されているなら
ば、流体によってサーミスタ部分から奪われる熱量にバ
ランスするようにサーミスタ部分の温度が決まるという
ことを意味する。ここで重要なことは、もし流量が一定
でサーミスタ部分において数式1で示される熱平衡状態
が実現されているならば、サーミスタ部分の温度は流量
によって一意的に定まるということである。
【0021】ここで、Wはサーミスタ自体の発熱量とし
て予め定めることができる。例えばサーミスタを加熱す
る発熱体に流す電流とサーミスタ部分で発生する熱量と
の関係が分かっていれば、単位時間当たりどれほどの熱
量が発生するかは予め定めることができる。しかし前述
の如く、従来のシリコンを用いた流量検出装置において
は、熱伝導率の低さ、比熱の高さが原因で、Wは正確に
定めることができなかった。即ち発熱体で発熱している
熱量を正確に定めても、サーミスタ部分への熱伝導の悪
さからサーミスタ部分における発熱量を定めることは困
難であった。
【0022】上記数式1で示されるモデルにおいて、実
際に測定されるのはT−T0 である。即ちサーミスタ部
分からの出力よりTを計測し、別に流体自体の温度T0
を測定するのである。ここでサーミスタ部分での発熱量
Wと定数Gとが定まっていれば、数式1よりKが定ま
り、Kが定まればK=K0 √uの関係式より流体の流速
uが定まり、流速が定まれば流量が定まることになる。
【0023】上記のような動作モデルで考えた場合、流
量検出器の感度及び分解能を高める方法としていくつか
の手段が考えられる。ここで感度というのは、どれくら
い少ない流量を計測できるかということであり、分解能
とういうのはどれくらい微小な流量変化を計測できるか
ということである。
【0024】流量が少ないということは、流体がサーミ
スタ部分から運び去られる単位時間当たりの熱量K(T
−T0 )が相対的に少ないということである。また微小
な流量変化というのは、流体がサーミスタ部分から運び
去る熱量K(T−T0 )の変化が微小であるということ
である。
【0025】感度及び分解能を高めるには、サーミスタ
部分の発熱量Wを多くする方法が考えられる。高い感度
及び分解能を得るには、微小な流量変化に対応した忠実
なサーミスタ部分の温度変化が要求される。また温度変
化を検出するには、その変化が大きい程検出し易くな
る。即ち流量の変化に対応してサーミスタ部分の温度T
がなるべく大きく変化した方が高感度、高分解能を得ら
れることになる。以上のような理由により、従来の流量
検出装置においては、サーミスタ部分を加熱し、サーミ
スタ部分の温度Tを流体の温度T0 より高くすることに
より、流体に持ち去られる熱量K(T−T0 )を多く
し、感度を高めていた。
【0026】しかしながら、数式1に示されるような、
流体によってサーミタ部分から運び去られる熱量と、サ
ーミスタ部分が発熱する熱量とがバランスした状態(熱
的な平衡状態)が実現されていることが重要であり、数
式1が成立しない状態(非平衡状態)では、サーミスタ
部分の温度Tが流体の流量を反映した値を示さないの
で、いくらTを大きくしても高感度、高分解能を得るこ
とはできない。
【0027】また数式1より明らかなように、サーミス
タ部分の熱伝導率Gの値が大きいとT−T0 の値を大き
くとれなくなり、感度が落ちることになる。
【0028】しかしながら、サーミスタ部分の熱伝導率
Gの値が大きいと、流体によって奪われる熱量の変化に
従うサーミスタ部分の温度変化が速くなるので、応答速
度は速くなる。ここでサーミスタの応答速度を示すパラ
メータとして、τ=C/(G+K)で与えられる時定数
τを導入する。τはその値が小さければ小さいほど応答
速度が速くなることを意味する。ここでCはサーミスタ
部分の熱容量であり、GとKは前述の定数である。この
式より明らかなように、応答速度を速くするには、Cを
小さくし、Gを大きくすれば良いことが分かる。また流
量が多ければ、流速uが早いので、K=K0 √uの関係
式よりKが大きくなることになり、やはり応答速度が速
くなることが判る。なお従来の流量検出装置において、
サーミスタ部分の熱容量を極力小さくしていたのは、上
記Cを小さくすることにより、応答速度を速くするため
である。
【0029】しかし前述の如くGを大きくすれば感度が
落ちることになる。即ちここに根本的な問題として、高
感度と高速応答速度とは2律背反の関係があり両立させ
ることができない、という問題が説明される。
【0030】また、従来のシリコンのサーミスタを用い
た流量検出装置では大きなダイナミックレンジをとるこ
とができないことも数式1を用いて以下のように説明さ
れる。例えば流量の多い流体を計測しようとする場合、
サーミスタ部分から流体によって運び去られる熱量が多
いので、サーミスタ部分の熱容量が小さいと運び去られ
る熱量に対応できる熱量をサーミスタ部分が保持できな
くなり、数式1が成立しない状態となってしまう。具体
的には、サーミスタ部分の温度が除々に低下し、サーミ
スタ部分の温度Tが流量を正確に反映しなくなってしま
う。しかし応答速度を下げないためにサーミスタ部分の
熱容量Cはむやみに大きくできないという問題がある。
また、サーミスタ部分に熱量を急速に補充するために、
発熱体をサーミスタ部分に近づけ、熱量の急速な補給を
行なう方法が考えられるが、このようにすると流速が速
い場合には、流体によって運び去られる熱量K(T−T
0)と発熱量Wとがバランスするように数式1が成り立
つが、流速が遅く流量が少ない場合には、流体に奪われ
る熱量K(T−T0 )の項が極端に小さくなるので、大
きな値を持つWとバランスしなくなり、結果として数式
1は成立しなくなる。
【0031】逆に流速が小さく、流量が少ない場合に
は、サーミスタ部分から持ち去られる熱量が少ないの
で、サーミスタ部分をなるべく高く加熱し、しかも数式
1の状態が破れない程度の熱量をサーミスタ部分に与え
れるようにすればよい。具体的にはサーミスタ部分と発
熱体との位置関係、さらには両者間における適当な熱ア
イソレーションを微妙に設定することで適当な条件が設
定される。
【0032】そうすれば常に数式1が成立し、しかもT
とT0 の差を大きくできるので、ある程度の微小流量及
びその変化を検知することができる。しかし、流量がい
きなり多くなる方向で変化した場合、K(T−T0)の項
が流量の変化に従い大きくなるので、それに追従するよ
うにサーミスタ部分に熱量が供給されなければ、数式1
は成り立たない。しかし前述のように熱的バランスの設
定は、流量が少ない場合、即ちK(T−T0)の項の値が
小さい場合に適合するように設定してあるので、この場
合サーミスタ層への熱量の供給がK(T−T0)の項の変
化に追従できない。こうして数式1で示される熱平衡状
態が破られ、正確な流量測定ができなくなってしまう。
具体的には、微小流量からいきなり大きな流量に変化
し、その後大きな流量なままで流量が安定したとして
も、サーミスタ部分における熱的バランスが崩れている
ので、時間の経過とともにサーミスタの温度Tが除々に
低下してしまい、サーミスタからは流量が変化している
ように出力がされてしまう。
【0033】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の
熱的流量検出装置における問題は、サーミスタ部分にお
いて数式1が成立する条件が制限されており、流量の変
化に追従して数式1が常に成立しない点である。数式1
が成立しないのは、流体に運び去られる熱量K(T−T
0 )に対応した適切な熱量がサーミスタ部分に供給され
ないからである。
【0034】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、サーミ
スタ部分をダイヤモンド薄膜の表面に形成し、そしてこ
のダイヤモンド薄膜をサーミスタ部分に熱量を供給する
蓄熱層として作用させ、流量が変化した場合でも素早く
数式1が成り立つような熱平衡状態を実現し、流体の流
量を常に反映した値でサーミスタ部分の温度が定まるよ
うにしたことを特徴とする。
【0035】〔第1の発明〕本発明の第1は、ダイヤモ
ンド薄膜を用いた流量検出装置であって、前記ダイヤモ
ンド薄膜はその表面にサーミスタ機能を有する層を有し
ていることを特徴とする流量検出装置、を要旨とするも
のである。
【0036】上記第1の発明において、ダイヤモンド薄
膜としては、気相法で作製されるものを用いるのが適当
である。またダイヤモンド薄膜の導電型は特に限定され
るものではなく、適当なドーピング方法で一導電型化さ
れたものを用いてもよい。サーミスタ機能を有する層と
は、スパッタ法等によって形成される白金、白金と他の
材料の合金、さらには一般にサーミスタ機能を有する材
料で構成されるものを挙げることができる。またダイヤ
モンド薄膜に一導電型を付与する不純物をドーピングす
ることにより、ダイヤモンド薄膜の表面にサーミスタ機
能を有する層を形成し、この層をサーミスタ部分として
利用することもできる。ここでいうサーミスタ機能とい
うのは、温度によって変化する材料の抵抗を測定するこ
とにより、温度及びその変化を検出できる機能をいう。
【0037】本発明において重要なのは、熱的に高速応
答するダイヤモンド薄膜上にサーミスタ機能を有する層
を形成し、ダイヤモンド薄膜に熱的な役割を負わせたこ
とを特長とする。即ち、ダイヤモンド薄膜を介して流体
とサーミスタ部分とが熱量の交換を行なうことが本発明
の原理的な特長である。
【0038】また、第2の発明で規定されているよう
に、ダイヤモンド薄膜の一方の面にサーミスタ機能を有
する層を形成し、他方の面を流量を測定しようとする流
体と接しさせることによって、電気配線等が形成される
サーミスタ機能を有する層側が流体によって腐食された
り、劣化したりすることのない構成を実現できる。特に
ダイヤモンドという最も腐食に強い材料をいわば保護膜
として活用できることは大きな特長である。
【0039】〔第3の発明〕本発明の第3は、真性また
は実質的に真性なダイヤモンド薄膜を用いた流量検出装
置であって、前記ダイヤモンド薄膜はその表面にサーミ
スタ機能を有する層を有し、該層は、ダイヤモンド薄膜
の結晶成長初期面に形成されており、前記ダイヤモンド
薄膜の結晶終期面が流体と接する面として構成されてい
ることを特徴とする流量検出装置、を要旨とするもので
ある。
【0040】上記第3の発明において、ダイヤモンド薄
膜の結晶成長初期面というのは、ダイヤモンド薄膜を結
晶成長させるに当たり、その結晶成長し始める面のこと
をいう。例えば基板上にダイヤモンド薄膜を結晶成長さ
せた場合、基板とダイヤモンド薄膜が接する面が結晶初
期面である。また結晶成長終期面というのは、この逆で
結晶成長が終わった面、即ち成膜後表面に露出している
面のことをいう。この結晶成長終期面は凹凸の多い荒れ
た面を有しており、この面を流体を接しさせることによ
り、熱交換効率を高めることができる。勿論この凹凸は
微少なものであり、流体の流速に影響を与えるようなも
のではない。
【0041】上記第3の発明の構成をとることで、流体
とサーミスタ機能を有する層とが直接接しないという第
2の発明の有用性が得られるのと同時に、流体との熱交
換効率を高めることができ、流量検出の精度を高めるこ
とができるという有用性が得られる。
【0042】〔第4の発明〕本発明の第4は、真性また
は実質的に真性なダイヤモンド薄膜を用いた流量検出装
置であって、前記ダイヤモンド薄膜はその表面にサーミ
スタ機能を有す層を有し、前記ダイヤモンド薄膜は前記
層よりも大きな熱量容量を有していることを特徴とする
流量検出装置、を要旨とするものである。
【0043】上記第4の発明は、ダイヤモンド薄膜を蓄
熱層として機能させ、サーミスタ部分(サーミスタ機能
を有する層が形成されている部分)に熱を高速で必要量
供給するためには必要な事項である。もしダイヤモンド
薄膜の熱容量がサーミスタ部分の熱容量よりも小さい
と、ダイヤモンド薄膜の流体から奪われる熱量に対応し
て定まるダイヤモンド薄膜の温度が、より熱容量の大き
いサーミスタ部分の温度の影響を大きく受けてしまい、
ダイヤモンド薄膜の温度が流量を正確に反映した温度に
はならない。即ち正確な流量測定はできない。勿論ダイ
ヤモンド薄膜の熱容量がサーミスタ部分の熱容量に対し
て大き過ぎるとダイヤモンド薄膜の熱に関する応答性が
低下し、流量を測定する感度は低下してしまう。
【0044】〔第5の発明〕本発明の第5は、ダイヤモ
ンド薄膜を用いた流量検出装置であって、前記ダイヤモ
ンド薄膜はその表面にサーミスタ機能を有する複数の層
と、発熱体とを有し、前記サーミスタ機能を有する複数
の層は、前記発熱体によって前記ダイヤモンド薄膜に形
成される熱勾配を検出する機能を有していることを特徴
とする流量検出装置、を要旨とするものである。
【0045】発熱体の発熱によって、ダイヤモンド薄膜
は一様に加熱されるのではなく、発熱体からの距離や流
体の流れによって、熱平衡の状態(熱的にバランスがと
れた状態という意味、従って熱の移動はある)において
は、ダイヤモンド薄膜の場所によって温度が異なり、こ
の異なる温度の部分間において熱の勾配が存在すること
になる。勿論流量の変化に従いこの熱勾配の状態は変化
する。よってこの熱勾配を検出することによって流量に
関する情報が得られることになる。また熱勾配を検出す
る機能とは、ダイヤモンド薄膜の異なる部分の温度を検
出することにより、この温度差より熱勾配を算出する機
能をいう。
【0046】〔第6の発明〕本発明の第6は、ダイヤモ
ンド薄膜表面上に形成されたサーミスタ機能を有する層
と、発熱体と、を有した流量検出装置を用いた流量検出
方法であって、前記発熱体を交流波形によって加熱し、
前記加熱の結果得られたサーミスタ機能を有する層から
の出力を演算処理することにより、前記ダイヤモンド薄
膜に接して流れる流体の流量を算出する、ことを特徴と
する流量検出方法、を要旨とするものである。
【0047】〔第7の発明〕本発明の第7は、ダイヤモ
ンド薄膜表面上に形成されたサーミスタ機能を有する複
数の層と、発熱体と、を有した流量検出装置を用いた流
量検出方法であって、前記ダイヤモンド薄膜を流体に接
しさせ、前記発熱体によって前記ダイヤモンド薄膜に形
成された熱勾配を測定し、前記熱勾配の大きさから前記
流体の流量を得、前記熱勾配の方向から前記流体の流れ
る方向を得、前記熱勾配の変化の仕方から前記流量の変
化を得ることを特徴とする流量検出方法、を要旨とする
ものとである。
【0048】熱勾配の大きさから前記流体の流量を得る
というのは、流体の流量に従って形成される熱勾配の大
きさから流量を算出することをいう。また熱勾配の方向
から前記流体の流れる方向を得るというのは、流体の流
れる向きによって熱勾配の方向が決まるという作用を利
用したものである。また前記熱勾配の変化の仕方から前
記流量の変化を得るというのは、流量を反映した熱勾配
の変化から、流量の変化を算出することをいう。
【0049】そして以上の発明において、ダイヤモンド
薄膜の一方の表面にサーミスタ機能を有する層を形成
し、他方の面を流体と接しさせる構成とすることは極め
て有用である。これは、ダイヤモンド薄膜の熱的な働き
を利用するのと同時に、サーミスタ機能を有する層側に
形成される配線等が流体によって腐食されたり劣化した
りすることがない構成を実現できるからである。
【0050】本発明は、ダイヤモンドの持つ特徴である
不活性と高熱伝導性(〜20W/cm deg)、さらには低い
比熱(1.8J/cm3deg) を利用したものである。不活性で
あるというのは、数々の腐食性流体に対し安定であると
いうこと、即ち腐食されないということである。
【0051】本発明を利用した基本的な流量検出装置の
一例を図1に示す。図1(A)におけるA−A' の断面
が図1(B)であり、B−B' の断面が図1(C)であ
る。図1において、発熱体(11)と発熱体に電流を供給す
る一対の電極(10)と流量検出器として機能するサーミス
タ層(12)とサーミスタ層(12)からの出力を得るための一
対の金属電極(15)とがダイヤモンド薄膜(13)上の形成さ
れている。なおここでは発熱体(11)とサーミスタ層(12)
とに金属電極を設けているが、発熱体(11)及びサーミス
タ層(12)として金属材料を用いた場合には、それらに直
接配線を行い特に電極を設ける必要はない。
【0052】このサーミスタ層(12)は感度の良い温度計
として機能することが必要である。また図1(A)にお
いて、発熱体(11)とサーミスタ層(12)との間でダイヤモ
ンド薄膜(13)が露出しているが、これは図1(C)で示
すように、発熱体(11)とサーミスタ層(12)とを溝によっ
て分離した構造を有しているからである。この構造は、
発熱体(11)とサーミスタ層(12)とを直接接しさせず、ダ
イヤモンド薄膜(13)を通じて熱的に連結される構成をと
るためのものである。
【0053】ダイヤモンド薄膜(13)はCVD法により形
成された10μm厚程度のものを用いている。そして、そ
の表面にスパッタ法により形成された白金を利用した0.
1 μm厚程度のサーミスタ層(12)が形成されている。ま
た発熱体(11)もサーミスタ層と同じ材料で形成されてい
る。このように図1に示す流量検出装置は、ダイヤモン
ド薄膜(13)の表面に該薄膜の厚さの約1/100 程度の厚さ
を有する白金を利用した薄膜のサーミスタ層(12)と発熱
用ヒータ(11)とを設けた構造になっている。
【0054】流量検出装置の使用される場所は多様であ
り、そのため流体の温度T0 も短時間に変化する場合が
ある。前述のように流量の測定においては、流量検出器
の温度Tと流体の温度T0 との差が重要であるが、環境
の温度が変化することで流体の温度T0 が変化してしま
った場合、T−T0 の値が変化してしまうことになり、
特に微小なT−T0 の値またはその変化を測定しようと
する場合などは、大きな測定誤差や感度の変化が現れる
ことになる。そのため周囲の温度変化に依らない流量検
出の方法が必要になる。
【0055】この問題に対処する方法として、流量検出
器であるサーミスタ部分を交流加熱することを本発明は
特徴とする。この場合サーミスタ部分で消費される熱量
をWexp(iwt)で示されるように周波数ωで変調するの
で、数式1は下記の数式2のように変更される。
【0056】
【数2】
【0057】ここでΔT/Δtはサーミスタ部分の温度
の微小変化であり、Cはサーミスタ部分の熱容量であ
り、Gはサーミスタ部分の熱伝導率であり、Kは流体に
運び去られる熱を示す熱伝導係数である。即ち数式1と
共通な記号は数式1の場合の意味と同じである。この交
流加熱を用いた方法では、ΔTをサーミスタの出力によ
り測定し、それより数式2を用いてKを求め、さらにK
=K0 √uの関係式を用いて流量を算出する。また流量
検出装置で測定されるΔTは、下記の数式3のように表
される。
【0058】
【数3】
【0059】なおτはτ=C/(G+K)で定義される
前述の時定数である。
【0060】
【作用】以下本発明を利用した流量検出器の一例である
図1に示す装置を用いて本発明の構成をとることによっ
て得られる作用を説明する。図1に示すように、本発明
においては流量検出装置の基体である低比熱、高熱伝導
率を有するダイヤモンド薄膜(13)上に白金を利用したサ
ーミスタ層(12)の部分と同じく白金を利用した発熱体(1
1)の部分とを有し、装置の各構成部分間における熱伝導
の均一化及び高速化を計っている。ダイヤモンドはシリ
コンに比較して10倍以上の熱伝導率を有しており、本
発明におけるダイヤモンド薄膜は、サーミスタ層(12)が
形成される単なる基体としてではなく、流体によって奪
われる熱量に敏感に作用する働きを有する。
【0061】図1に示すような流量検出装置において
は、サーミスタ層(12)のみが温度センサー機能を持って
おり、他の部分はある意味で熱の良導体として機能す
る。図1に示す例では、(17)で示される面が流体(16)と
接する構成であり、流体(16)に奪われる発熱体(11)から
の熱の流れはダイヤモンド薄膜(13)のサーミスタ層(12)
や発熱体(11)が設けられてある面とは裏面側の面(矢印
(17)で示される面) を通して行われる。
【0062】実際の動作にあたっては、発熱体(11)によ
って発生した熱がダイヤモンド薄膜(13)の流体(16)に接
する部分(17)で流体(16)によって運び去られ、結果とし
て(1) 式で定まるサーミスタ層(12)の部分の温度Tが定
まることになる。
【0063】また白金はデバイ温度が240 Kと低く比熱
は0.132 J/cm3 K と小さい。よってサーミスタ層(12)
の持つ熱容量は極めて小さい。よって高速応答を得るこ
とができる。
【0064】図1に示すように、ダイヤモンド薄膜(13)
に積層して流量検出器であるサーミスタ層(12)を形成す
ると、0.1 μm厚のサーミスタ層(12)に対し、それに接
するそれより100 倍厚い厚みを持つ10μm厚のダイヤモ
ンド薄膜(13)が蓄熱層として作用する。例えば、サーミ
スタ層から流体によって奪われる熱量K(T−T0 )が
大きく変化した場合、従来においてはその状況変化に対
応できず、数式1が成立しなくなってしまっていたが、
図1のような構成をとった場合、ダイヤモンド薄膜(13)
が熱量K(T−T0 )の変化に素早く対応して熱量をサ
ーミスタ層(12)に供給するので、数式1が素早く成立
し、サーミスタの温度が流量に依存する状況が高速に実
現される。即ち蓄熱層であるダイヤモンド薄膜(13)は、
高速応答する熱源として作用する。前述のようにダイヤ
モンド薄膜は極めて高い熱伝導率(〜20W/cmdeg)と極
めて低い比熱(1.8J/cm3 deg)を有しているので、上記
のダイヤモンド薄膜(13)からサーミスタ層(12)への熱の
流入は急速に行われる。
【0065】このダイヤモンド薄膜(13)で構成される蓄
熱層は、受動的に作用するものであり、状況に応じて熱
量をサーミスタ層(12)に適量供給し、常に数式1で示さ
れる熱平衡状態からのずれを補正するように作用する。
具体的にいうと、流体(16)とサーミスタ層(12)、さらに
は流体(16)と発熱体(11)とは、流体(16)よりはるかに熱
伝導率の高いダイヤモンド薄膜(13)によって熱的に連結
されている。よって発熱体(13)によって加熱が行われる
と、サーミスタ層(12)は蓄熱層であるダイヤモンド薄膜
(13)を介して効率よく加熱される。またサーミスタ層に
比較して約100倍の厚さを有すダイヤモンド薄膜(13)
は、サーミスタ層(12)の持つ熱容量の約100 倍の熱容量
を持っている。よって流体(16)の流量が僅かに増えた場
合でも、大きく増えた場合でも、その流量変化に対応し
て、素早くダイヤモンド薄膜(13)からサーミスタ層(12)
に熱平衡を実現するのに最適な熱量が供給され、数式1
を満足する状況が高速で実現される。
【0066】また流量が急激に減った場合には、サーミ
スタ層(12)の部分の熱容量は極めて小さいので、その流
量変化に従って運び去られる熱量の減少にサーミスタ層
(12)は高速応答する。しかもこの際、受動的に作用する
ダイヤモンド薄膜(13)で構成される蓄熱層は、熱平衡状
態を破るような余計な熱量をサーミスタ層(12)に供給す
ることはない。なぜならば、蓄熱層としての作用は、積
層化して設けられたダイヤモンド薄膜(13)とサーミスタ
層(12)において、熱的平衡状態が成り立つように作用す
ることにあるからである。
【0067】例えばこの場合、サーミスタ層(12)から流
体によって運び去られる熱量が減少すると、熱平衡を保
つためにサーミスタ層(12)が必要とする熱量が減少す
る。ダイヤモンド薄膜(13)はサーミスタ層(12)と熱的に
連結され、サーミスタ層(12)の部分における熱平衡を保
つように作用するのだから、この場合サーミスタ層(12)
が必要とする分だけの最適の熱量がダイヤモンド薄膜(1
3)からサーミスタ層(12)に供給されることになる。
【0068】以上説明したように、ダイヤモンド薄膜(1
3)で構成された蓄熱層の作用で、流量の変化に影響され
ず、常に熱的平衡状態即ち式1が満足されるような状況
が実現されるので、流量の測定において、サーミスタ層
(12)の温度は正確に流体(16)の温度を反映したものとな
り、結果として正確に流量を測定することができる。
【0069】また図1に示した構造を採用した場合にお
ける各構成要素の作用は以下のようにして説明すること
ができる。
【0070】数式1で示したように、流量検出装置の感
度はサーミスタ部分の温度Tと流体の温度T0 の差であ
るT−T0 に比例する。ここで流体(16)によってダイヤ
モンド薄膜(13)の表面(17)から熱が奪われる場合を考え
る。するとダイヤモンド薄膜(13)の表面(17)は流体(16)
によって熱を奪われるので、表面(17)は流体(16)の温度
T0 に近い値となる。このとき流体に奪われる熱量はそ
の量に応じて、蓄熱層であるダイヤモンド薄膜(13)から
急速に補充されるので、ダイヤモンド薄膜(13)のサーミ
スタ(12)に接する部分の温度は大きく変化せず、流体(1
6)に奪われる熱量に依存した温度に素早く安定する。即
ちこの場合、ダイヤモンド薄膜(13)の温度は流体(16)の
流量によって定まる温度に定める。
【0071】またこの時、ダイヤモンド薄膜(13)の表面
(17)からは流体によってどんどん熱が奪われていくの
で、ダイヤモンド薄膜(13)に矢印(18)で示されるような
熱勾配が生じ(矢印の方向に行くに従い温度が高くな
る)、サーミスタ層(12)の温度Tと流体の温度T0 との
差を大きくすることができる。勿論ここで前述のダイヤ
モンド薄膜(13)の作用により、数式1が成立する状況が
成り立っている。
【0072】よって、前述において数式1を用いて議論
したように流量検出装置の感度を実質的に高めることが
できる。すなわち数式1において見かけ上熱伝導率Gが
小さくなったと考えた場合と同じ効果を得ることができ
る。勿論上記の状態は流量の変化に対応して高速で実現
されるので、高感度を実現するとともに高速応答を実現
することができる。
【0073】また本発明においては、サーミスタ部分自
身の熱容量を極めて小さくすることができるので、さら
に高速応答を実現できる。具体的には、流量検出器部分
の熱伝導率としてダイヤモンド自身の物性特性で期待で
きる20W/cmKに十分近い値を得ることができ、同時に
サーミスタ部分の熱容量も20μJ/K程度にすることが
できる。よって前述の応答速度を示すパラメータである
時定数τ=C/(G+K)において、熱伝導率Gを大き
くし、熱容量Cを小さくすることができるので、τを小
さくでき、高速応答させることが可能となる。なおG=
20Wcm/Kであり、C=20μJ/Kとすると、τ≒10-6
秒程度が概算される。
【0074】以上の如く本発明の構成をとることによっ
て、見かけ上熱コンダクタンスが小さくなったと見なし
た場合に得られる高感度を得ることができるのと同時
に、高速応答性をも得ることができ、従来は2律背反で
あった事項を両立することができる。
【0075】以上のような作用は、図1にその一例を示
すように、ダイヤモンド薄膜(13)に流量検出器であるサ
ーミスタ層(12)と発熱体(11)とを形成し、しかもサーミ
スタ層(12)の持つ熱容量に対し、蓄熱層となるダイヤモ
ンド薄膜(13)の持つ熱容量を大きくすることにより可能
となるのである。よって蓄熱層であるダイヤモンド薄膜
(13)の熱容量がサーミスタ層(12)部分の熱容量に比較し
て大きくないと、ダイヤモンド薄膜(13)がサーミスタ層
(12)の温度変化に対応して高速反応をする蓄熱層として
機能せず、所定の効果が得られないことになる。
【0076】また上記の説明においては、蓄熱層となる
ダイヤモンド薄膜の一方の面に発熱体とサーミスタ層が
設けられ、もう一方の別な面である裏面側を流体が流れ
る構成を用いて説明したが、発熱体やサーミスタ層が設
けられた面側を流体が流れる構成であっても、同様な議
論を適用することができ、所定の効果を得ることができ
る。
【0077】またダイヤモンド薄膜の表面に平行な方向
においても熱勾配が形成されるので、この熱勾配を検出
するように複数のサーミスタ部分を形成し、この複数の
サーミスタ部分によりダイヤモンド薄膜に形成される熱
勾配を検知し、この熱勾配に関する情報により、流量や
流量変化、さらには流量の方向を同時に計測することが
できる。この場合、熱勾配の大きさより流量を算出し、
熱勾配の変化より流量変化を算出し、熱勾配の向きより
流体の流れる向きを算出することができる。
【0078】さらに図1の例の場合、ダイヤモンド薄膜
(13)の流体(16)に接する面(17)をCVD法による結晶成
長における荒れた面とすることにより、その表面(17)を
微小な凹凸を有する面として実質的にその表面積を大き
くすることができ、流体(16)に面(17)から効率良く熱が
奪われる構造を実現することができる。このダイヤモン
ド薄膜の荒い面を流体と接する面とする構成は、数式1
において流体によって運び去られる熱量を示す項である
K(T−T0 )の値を大きくすることになるので、流量
検出に当たり実質的に感度を高めることになる。
【0079】これは、ダイヤモンド薄膜を結晶成長させ
る基板(例えばシリコン基板)に接する面が平滑で、反
対側の面、即ちダイヤモンド薄膜の形成の際、露出する
面の側が微小な凹凸(〜100 Å程度)に形成されるとい
う事実を利用するものである。またこの場合、平滑な面
にサーミスタ部分や発熱体、電極、配線等を形成するこ
とになるので、作製のし易さにおいても有用である。
【0080】また数式2で示されるような交流駆動加熱
を用いて、発熱部の変化分に対応して変動する検出器部
分即ちサーミスタ部分の温度変化を測定することによっ
て、測定環境の温度変化に左右されない計測を行うこと
ができる。すなわち流体の温度変化や測定環境の温度変
化を測定しないようにするために、常に交流変化する発
熱をサーミスタ部分で行い、微小時間におけるサーミス
タ部分での温度変化であるΔT/Δtを測定し、この値
より流体によって運び去られる熱量を流体の温度や環境
の温度に影響されずに検出することができる。
【0081】
【実施例】
〔実施例1〕本実施例においては、10μm 厚のダイヤモ
ンド薄膜表面にスパッタ法によって白金を成膜し、この
白金の層をサーミスタ機能を有する層として利用した例
である。
【0082】まずシリコン基板上に真性または実質的に
真性のダイヤモンド薄膜を低圧CVD法により気相合成
させる。このダイヤモンド薄膜は、人為的に窒素、ボロ
ン等の不純物を含まさせずに成膜したものであり、その
比抵抗は1010〜1015Ωcmである。
【0083】気相合成に当たっては磁場を利用したホイ
ッスラーモードCVD法を用いる。成膜条件は、成膜基
板温度 800℃、反応室内圧力0.25Torr、マイクロ波入力
4KWであり、シリコン基板を磁場強度875Gaussの場所
に設置して気相反応を行いダイヤモンド薄膜をシリコン
基板上に成膜する。成膜に用いた原料ガスとしては、メ
タン系ガスと水素の混合ガスをCH3OH:H2=1:4の比率
で混合したものを用いる。成膜時間は24時間とし、膜
厚10μm程度のダイヤモンド薄膜をシリコン基板上に
形成する。
【0084】シリコン基板上に成膜されたダイヤモンド
薄膜は、シリコン基板上から剥離することによりダイヤ
モンド薄膜のみとして得ることができる。この際、機械
的に剥離させる方法、フッ酸等によって基板を溶かす方
法等を用いることによりダイヤモンド薄膜単体を容易に
得ることができる。
【0085】そしてこのダイヤモンド薄膜を5mm×5mm
に裁断し、スパッタ装置中にセットする。このスパッタ
装置はスパッタリングガスを特に使用せず、1.2kV 程度
の印加電圧によってダイヤモンド薄膜表面に白金をスパ
ッタ蒸着するものである。白金の膜厚は、1000Å(0.1μ
m)とした。またこのスパッタの際、ターゲット基板は
500℃に加熱をした。
【0086】本実施例においては、白金金属層をサーミ
スタ層として用いるため、その厚さにより抵抗調整し
た。具体的には、1kΩとした。勿論この値は実施態様
に合わせて設定されることはいうまでもない。
【0087】本実施例で得られた白金のサーミスタは、
サーミスタパラメータとして3000を得ることができた。
サーミスタパラメータとは、温度が1度上昇した時に発
生する抵抗の変化を示すパラメータである。
【0088】このようにして白金の層で構成されるサー
ミスタ層をダイヤモンド薄膜表面に形成した。
【0089】また図1に示すような構成とするには、上
記サーミスタ層を形成するプロセスと同時に、サーミス
タ層を加熱状態に保つための発熱体をサーミスタ層を構
成する白金によって形成する。発熱体は、白金の層の面
積を変化させ、その抵抗を100 Ω程度とすることによっ
て構成される。具体的には、パターニング工程よって、
サーミスタ層と発熱体とを形成し、この時発熱体の抵抗
が100 Ω程度になるようにその面積を定めればよい。
【0090】図1でいうと、(12)の部分がサーミスタ
層、(11)の部分が発熱体層となるように白金の層のパタ
ーニングを行ない、このパターニング工程によってサー
ミスタ部分と発熱体部分とを同時に形成する。
【0091】以上のようにして10μm 厚のダイヤモンド
薄膜表面に0.1 μm 厚程度の白金の層をサーミスタ層と
して形成したものを流量検出装置とした完成した。
【0092】上記白金の層を有するダイヤモンド薄膜を
流量検出装置として図2に示すシステムで機能させた場
合の例を以下に示す。図2において窒素ガス(N2)(42)は
流量計(43)を通して電磁バルブ(44)に導入され、本実施
例の流量検出装置(41)が設置されたボックス(40)に流れ
込む。このボックスには流れ込む方向に沿ってガスの放
出口が設けてあり、このボックス内でのガスの停滞はな
いように設計されている。この場合、被測定流体である
窒素ガスは、サーミスタ層((41) の表面に形成されてい
る)に接して流れることになる。前述のように流量検出
装置(41)は10μm厚のダイヤモンド薄膜表面に0.1 μm
厚の白金の層がサーミスタ層としてが形成されている。
【0093】測定においては、サーミスタ部分である白
金の層は特に加熱せず、電磁バルブ(44)をロックインア
ンプ(48)の発振器から変調器(45)を通して取り出した2
Hzの信号で駆動し、窒素ガスの流れを交流変動させる。
そしてその最の流量変化を流量検出装置(41)により検出
する。流量検出に当たっては、電源(46)から流量検出装
置(41)のダイヤモンド薄膜表面のサーミスタ部分に流さ
れる電流を1MΩの抵抗(47)により電圧として検出し、
ロックインアンプ(48)あるいはオシロスコープ(49)によ
り記録することにより、流量の変化をサーミスタ部分か
らの出力電流の変化として計測する。なお同時に窒素ガ
スの流量は校正された流量計(43)によって正確に計測さ
れる。以上の実験装置により白金の層で構成されるサー
ミスタからの出力(電圧で出力される)と流量との相関
関係を得ることができる。
【0094】図3は図2に示すシステムによって得られ
た窒素ガス流量と出力電圧の相関関係の一例を示すもの
である。図3には流量(N2ガス)の増加に対し直線的に
出力が増大することが示されている。この場合、流量検
出装置(41)は特に加熱されておらず、窒素ガスと同じ温
度に保たれていると考えられるから、ここでの出力はダ
イヤモンド薄膜表面に設けられた白金の層よりなるサー
ミスタ部分が窒素ガスの流れによって僅かに冷却され、
流量に応じたある温度になったことを示していると理解
される。勿論この時、ダイヤモンド薄膜が熱的に大きな
役割を果たしたと考えられる。
【0095】上記実験事実より窒素ガスと同一温度に保
たれたダイヤモンド流量検出装置が正常に流量検出装置
として動作していることが確認される。また図3より得
られたデータを基に、窒素ガスの比熱1.03J/gKを用いて
この際の感度を計算すると、2×10-4cal に達すること
が計算される。これはサーミスタ部分より奪われていく
2×10-4cal 程度の熱量を検知できることを意味する。
この値は25μm の細さのアルメルークロメル熱電対の感
度と同程度であり、発表されているシリコン流量検出装
置と比較しても数百倍の感度を有している。
【0096】従来のシリコンのサーミスタを用いた流量
検出装置においては、全くの加熱なしで本実施例のよう
な高感度を得られた例はなく、このような効果は流量変
化に対応したサーミスタ部分からの熱量の流出に高速応
答するサーミスタ部分と、サーミスタ部分から流体が奪
う熱量の変化に対応して数式1で示される熱量のバラン
ス状況を素早く実現する蓄熱層として作用するダイヤモ
ンド薄膜の作用によるものであると考えられる。
【0097】図4はこの流量測定装置(41)を流体の温度
約300 Kに対して1度から7度加熱した場合におけるサ
ーミスタ部分からの出力を示したものである。なおこの
時、サーミスタ部分の加熱は流量検出装置(41)をヒータ
(図示せず)によって加熱し、その時の流量検出装置(4
1)の温度を測定した。また流量は50sccmに固定して測定
を行った。図4を見ると明らかなように、検出器を加熱
状態に保持することにより出力を増大させ、感度を上げ
れることが理解される。即ち流量検出装置(41)を加熱し
ない場合である図3においては、流量が50sccmの時、出
力が約0.1mV 弱であったものが、図4より明らかなよう
に、流量測定装置の温度を流体の温度(約300 K)に対
して約7℃程度加熱(約307 K)することにより、その
出力を約0.8mV 弱にまで高められることが分かる。即
ち、流体の温度に対し流量検出装置の温度を7度程度高
く加熱することで、この場合は流量検出装置を加熱しな
い場合に比較して、感度を約8倍にできたことが分か
る。
【0098】よってさらに数十度加熱することにより、
数sccm程度の流量を検出可能であることが予想される。
【0099】上記に述べたように僅か数度の加熱によっ
て、流量検出装置としての感度を10倍近く高めることが
できるのは、前述のようにサーミスタ部分に対して熱的
に高速応答する大容量蓄熱層となるダイヤモンド薄膜の
作用によるのと考えられる。即ち数式1に示されるバラ
ンス式が満たされるように、ダイヤモンド薄膜からサー
ミスタ部分である白金の層に熱量が適量供給されるた
め、流量に対応した温度であると同時に流体の温度より
僅か数度高い温度にサーミスタ部分の温度が平衡状態で
保たれるからであると考えられる。
【0100】〔実施例2〕流量検出装置は実際の使用に
際し、高温、低温等種々の環境条件で使用されている。
例えば、エンジンに組み込まれて使用される場合は−2
0℃から100℃を超える範囲にて動作しなくてはなら
ず、このような温度変化に左右されない計測法が必要で
ある。
【0101】そこで本実施例では、流量検出装置に組み
込まれた発熱体を交流駆動し、その変化分に対応して変
動する出力信号のみを取り出すことで、上記問題を低減
するものである。本実施例の測定においては、発熱体部
分が交流で駆動される。また流量の検出に当たってはこ
のサーミスタ層からの出力信号と参照信号の積算機を用
いることによって行う。
【0102】本実施例においては、図1に示した流量検
出装置において、発熱体(11)を交流駆動することによ
り、流体の温度変化に左右されない流量計測を行った場
合の例を示す。なお図1に示す流量検出装置の作製方法
は、実施例1に記載した流量検出装置の作製と基本的に
同一であり、異なるのは白金の層のパターニングにより
サーミスタ層(12)と発熱体(11)とをパーニング工程によ
って作り分けることである。なお、前述のようにサーミ
スタ層(12)の抵抗は1kΩに発熱体(11)の抵抗は100 Ω
になるようにその面積を設定してある。
【0103】以下図6に示す、本実施例における計測装
置の説明をする。被測定流体である窒素ガス(81)は、ダ
イヤモンド薄膜(13)表面にスパッタ法によって形成され
た白金よりなるサーミスタ層(12)と発熱体(11)とを有し
た流量検出装置が設置されたボックス(86)の内部を図の
矢印の向きに流される。窒素ガス流量は図示していない
が別途の流量検出器によって正確に測定し、また窒素ガ
スはサーミスタ層(12)の表面とは反対側の表面を平行に
流される。サーミスタ層(12)が形成された面側は、有機
樹脂によってコーティングし、流体と直接接しないよう
にした。従って、サーミスタ層(12)はダイヤモンド薄膜
(13)を介して流体である窒素ガスに奪われる熱量の影響
を受ける構成となっている。また、流量検出装置は熱伝
導率の低い有機樹脂等によって設置基体より熱的に絶縁
し、熱が流出しないようにすることは重要である。これ
は折角のダイヤモンド薄膜(13)の蓄熱層としての作用を
台無しにしてしまうからである。なお本実施例において
は、流量検出装置を熱的に絶縁する材料としてポリイミ
ドを用いた。
【0104】発熱体(11)には交流電源(85)より、交流電
流が一対の電極(10)を通して供給される。またサーミス
タ層(12)へはバイアス電源(87)よりバイアス電流が加え
られ、サーミスタ層(12)からの出力信号は一対の電極(1
5)より出力され、アンプ(88)によって増幅される。そし
てアンプ(88)によって増幅されたサーミスタ層(12)から
の流量に関する出力信号は、交流電源(85)からの参照信
号と乗算器(89)で乗算され、増幅用積分器(800) により
増幅される。サーミスタ層(12)からの流量に関する出力
信号と交流電源(85)からの参照信号とを乗算器(89)で乗
算し、増幅用積分器(800) で増幅するのは、出力として
発熱体(11)を駆動する駆動波形とサーミスタ層(12)から
の出力との関係を得るためである。
【0105】以下に測定方法と測定結果について説明す
る。図8、図9に示されるのは、発熱体(11)を10s 幅の
矩形波で交流駆動加熱した場合におけるサーミスタ層(1
2)の出力を計測し、横軸を時間、縦軸をサーミスタ層(1
2)の温度を示す出力として、その出力波形を示したもの
である。図8及び図9において、(100),(110) が加熱を
行っている時間を示し、(101),(111) が加熱が行われて
おらず自然冷却されている時間を示す。この図8及び図
9においては、信号を処理することにより、出力がサー
ミスタ層(12)の温度の上昇に従って高くなるようにして
いる。従って、出力が大きい程サーミスタ層(12)の温度
が相対的に高いことを示すものといえる。ここで図8は
窒素ガスを流さない場合のものであり、図9は窒素ガス
を1m/sの流速で流した場合のものである。
【0106】流速ゼロの場合を示す図8と流速1m/s の
場合を示す図9とを比較すると、窒素ガスが流れること
により、サーミスタ部分の温度を示す出力が0.1mV 程低
下することが分かる。即ちサーミスタ層(12)の温度が低
下していることが分かる。また図9より、流量が一定な
らば数式1で示されるようにサーミスタ層(12)の温度は
一定であることが分かる。即ち数式1で示されるような
熱平衡状態が保たれていることが分かる。
【0107】図9はサーミスタ層(12)がある温度になっ
ていることを示しているが、その温度は環境の温度例え
ば流体(16)の温度によって影響される。従って常に環境
の温度が一定であれば、正確な流量の測定ができるので
あるが、環境の温度が流量測定中に変動するとなると、
図9の縦軸で示されるサーミスタ層(12)の出力が変動す
ることになる。しかし図9において、加熱した時間(11
0) と加熱しない時間(111) におけるサーミタス層の出
力の差(112) を考えると、この図9の(112)で示される
出力の差は環境の温度に依存しないはずである。なぜな
らば(111) 及び(110) で表される時間において、サーミ
スタ層からの出力が示すサーミスタ層の温度には、環境
の温度についても出力も含まれているのだから、その出
力の差し引き(112) をとった場合、環境の温度について
も出力は差し引きゼロとなり、(112) の中には含まれな
いからである。
【0108】実際には、図8や図9で示される場合より
も周波数のより高いパルス波形または交流波形で発熱体
(11)を加熱し、図9に対応した波形を得る。流量が変化
せず、環境温度が変化しないのならば、サーミスタ部分
の温度は変化しないのだから、その場合は図9に示され
るような波形が得られる。
【0109】しかし環境温度が変化せず、流量が変化す
ると、時間の経過とともに除々に波形の面積が異なった
ものが得られる。そしてこの波形の面積を計算すること
で、サーミスタ部分の温度が算出され、さらに流量が算
出される。また波形の面積の変化を計算することによ
り、温度の変化が算出され、それを基に流量の変化が算
出される。
【0110】ここで環境温度が変化するとしても、原理
は同じである。即ち図8や図9で示される波形の面積や
その面積の時間に対する変化は、前述のように環境の温
度には依存しないからである。
【0111】以上の如く、測定環境の温度変化があって
も、交流駆動加熱を行なうことで、サーミスタ部分から
流体に運び去られる熱量に従う、サーミスタ部分の温度
及びその変化を正確に測定することができ、ひいては流
量及びその変化を正確に計測できることになる。
【0112】以上の交流駆動加熱によって測定した窒素
ガスの流速とサーミスタ層(12)からの出力電圧の関係を
図7に示す。図7において縦軸は出力電圧であり、横軸
が流速(cm/s)1/2を示すものである。横軸の単位を(cm
/s)1/2としたのは、流速と出力電圧との相関関係を明確
にするためである。
【0113】図7は横軸が流速の1/2 乗であるから、こ
の場合測定される窒素ガス流体の最大流量は、流体の断
面積をSとして概略252 ×S(cm3/s) で示される。また
測定された最小の流量は1×S(cm3/s) 以下であること
が図7より分かるから、ダイナミックレンジとしては、
3桁以上のものが得られたことになる。
【0114】従来のシリコンサーミスタを用いた流量検
出装置においては、交流駆動加熱が有効に作用しなかっ
た。即ち、サーミスタ部分の温度変化に追従して高速で
数式1で示されるような平衡条件を実現する機構が従来
の装置においては存在しなかったので、例えば図9のよ
うな出力波形を得ようとして一定量の流量を流しても、
交流駆動加熱に追従した平衡状態が実現されないので、
サーミスタ部分の出力は流量を反映したものではなく、
従ってサーミスタ部分の出力から流量を正確に検出する
ことはできなかった。
【0115】なおサーミスタ部分での熱平衡が常に保た
れるならば、交流駆動加熱の周波数が高い程測定精度の
向上が見込まれる。しかし、ダイヤモンドも熱に対し全
くの無抵抗という訳ではないので、実際には数式1が常
に成り立つような駆動周波数の上限が存在する。予備実
験及び計算によればその上限として数十Hzを用いるこ
とが可能であると考えられる。しかし従来のシリコンサ
ーミスタを用いた流量検出装置においては、交流駆動加
熱自体が困難であったことを考えるならば、この交流駆
動加熱による環境の温度に左右されない流量測定は非常
に有用である。
【0116】また交流駆動加熱における周波数や波形も
使用形態や測定精度に応じて適時定めることができる。
【0117】〔実施例3〕本実施例は、ダイヤモンド薄
膜表面にサーミスタ機能を利用した4個の流量センサー
を形成した実用的な流量検出装置の例である。この装置
は流体の流れの方向と流量についての情報を同時に得る
ことのできるベクトル流量計として機能する。
【0118】図5に示す流量検出装置は、全体の大きさ
が4mm角であり、その中にサーミスタ層(75)よりなるセ
ンサー部分が4ヶ所設けられている。図5において、(7
7)が流量検出装置の基体となる約10μm厚のダイヤモン
ド薄膜である。また(75)が白金により構成されるサーミ
スタ層であり、(74)がサーミスタ層(75)に流れる電流を
検出する一対の金属電極でありサーミスタ層(75)を2等
辺三角形の底辺で挟むようして配置されている。また(7
6)はサーミスタ層と同時に形成される発熱体である。ま
た(78)が信号を増幅するアンプであり、(701) が入力す
る信号の差を増幅する差動アンプであり、(79)が発熱体
(76)を加熱するための電流を流す電源であり、(700) が
サーミスタ(75)に電極(74)を通じて電流を流すためのバ
イアス電源である。そしてサーミスタ層(75)と発熱体(7
6)は蓄熱層として作用するダイヤモンド薄膜(77)によっ
て連結されている。
【0119】図5において、発熱体(76)となる部分はシ
ート抵抗として10〜100 Ω/cm2 の値をもっている。即
ちこの発熱体(76)は電流を流すことによってジュール熱
を発生するものである。また本実施例においても、ダイ
ヤモンド薄膜の厚さを10μmとして、サーミスタ層の厚
さは0.1 μmとした。またその他の作製方法や作製条件
も実施例1におけるものと同様なものとした。
【0120】実際の使用に当たっては、実施例2で示し
た交流駆動加熱が有用である。また使用に際して、流体
は図5で示される流量検出装置の裏面側のダイヤモンド
薄膜(77)の面を流れるようにする。
【0121】ダイヤモンド薄膜(77)は4ヵ所の発熱体(7
5)によって必要に応じた温度(通常は流体の温度に対し
て2〜3度)に加熱されており、この発熱体によって流
体が流れていない場合であってもその平面方向において
熱勾配が形成されている。ここで流体が図5で示される
装置の裏面側のダイヤモンド薄膜(77)の表面を流れる
と、ダイヤモンド薄膜(77)の表面に形成されている熱勾
配の形が変化する。即ち流体に最初に当たる部分の温度
はより低くなろうとするので、流体の向きや流量に応じ
て熱勾配が再形成される。例えば図5において、紙面右
側から流体が流れていると仮定する。すると、図に示す
ダイヤモンド薄膜(77)の右半分の部分から流体によって
奪われる熱量が左半分の部分から奪われる熱量より多い
ので、ダイヤモンド薄膜(77)において、発熱体(75)によ
って形成される熱勾配の状態がダイヤモンド薄膜(77)の
右部分と左部分とでは、異なることになる。図5の装置
において、ダイヤモンド薄膜(77)に形成される熱勾配の
状態が紙面左右の場所において異なっているということ
は、当然左右方向に配置されているサーミスタ層(75)の
出力に差が出ることになる。
【0122】上記のような状態において、バイアス電源
(700) より電極(74)を通してサーミスタ層(75)に流され
る電流の変化を、アンプ(78)で増幅し、さらにその差動
成分を差動アンプ(701) で増幅する。この各サーミスタ
層(75)の出力の差動成分を計測することにより、ダイヤ
モンド薄膜(77)に形成されている熱勾配の状態を知るこ
とができる。そして熱勾配の状態から流量とその方向が
計測される。また同時に熱勾配の変化を計測することで
流量変化を知ることができる。本実施例においては、4
ヵ所のサーミスタ部分からの出力を2つの差動アンプに
よって検出し、さらにこの2つの作動アンプからの出力
を比較することで、図5の紙面上下左右方向のみなら
ず、360度の方向で熱勾配の状態を知ることができ
る。このダイヤモンド薄膜に形成される熱勾配は、流量
の測定方法、発熱体の設け方、サーミスタ部分の配置数
と配置方法等によって決まるものであり、それらは必要
に応じて適時決めればよい。例えば、さらに熱勾配の状
態を精密に知りたければ、熱勾配が形成される方向に2
つ以上のサーミスタ部分を設ければよい。また必要とす
る方向のみの熱勾配を計測したければ、その方向の線上
にサーミスタ部分を複数形成し、そこからの出力を処理
すればよい。
【0123】以上のようにダイヤモンド薄膜上において
発熱体によって形成される熱勾配の状態を複数のサーミ
スタ部分で計測することにより、流体の方向、流量、流
量変化を同時に知ることができる。勿論以上の動作は、
実施例1並びに2において示したように、高速、高感
度、高ダイナミックレンジでもって行われる。
【0124】また図5に示す装置においては、流体が金
属電極(74)や金属配線(図示せず)が設けられている面
側(即ち紙面手前側の面)を流れるのでなく、その裏面
側であるダイヤモンド薄膜(77)の面を流れるので、最も
安定な材料であるダイヤモンド薄膜を熱交換部分、蓄熱
層、さらには保護層として作用させることができ、腐食
性ガスの流量検出をする場合も金属電極や金属配線の腐
食を心配することなく装置を使用できる。
【0125】また図5に示すような構造を有する流量検
出装置を作製する際に、ダイヤモンオ薄膜の荒れた面側
を流体と接する面とし、平滑な面にサーミスタ層や電
極、さらには発熱体部分を形成することで、装置の作製
のし易さと、感度の向上を同時に計ることができる。
【0126】前述のようにシリコン基板上に成膜された
ダイヤモンド薄膜は、シリコン基板との界面において平
滑な面を有し、またその反対側である露出した表面は荒
い面を有している。このことを用い、シリコン基板から
剥離したダイヤモンド薄膜の平滑な面にサーミスタ層や
電極さらには発熱体等を形成し、その裏の荒い面を流量
と接する面とすることにより、熱交換部分の表面積を大
きくすることができ、流量との間における熱交換効率を
高めた構成とすることができる。
【0127】本実施例は実用的な流量検出装置の例であ
るが、実際の測定環境や測定条件に適応させて、センサ
ー部分であるサーミスタ層の配置やその数、さらには電
極の配置や形状、発熱体の配置や形状を適時選択するこ
とができる。特に以上の説明においては、サーミスタ部
分と発熱体部分とを同一工程で形成したために、サーミ
スタ部分と発熱体部分とが同一面側に形成されている
が、ダイヤモンド薄膜の表裏にサーミスタ部分と発熱体
部分とを分けて形成しても、ダイヤモンド薄膜の蓄熱層
としての作用を得ることができ、高性能な流量検出装置
を得ることができる。また各センサー間の信号処理方法
も本実施例に示す方法に限定されるものでなく、適時実
際の使用に適した方法を用いることができる。
【0128】さらに本発明の実施形態は、以上の実施例
において示した形態に限定されるものではない。例えば
ダイヤモンド薄膜の厚さとサーミスタ層となる部分の厚
さは、以上の実施例においては、約100:1 としその熱容
量の比をおよそ100:1 としたが、それらは形成されるダ
イヤモンド薄膜の物性の違い、あるいは流量検出装置が
使用される環境や測定精度、測定感度、使用方法等に従
い適時定めればよい。またダイヤモンド薄膜の作製方法
や作製条件も実施に当たり適時選択すれば良い。またサ
ーミスタ層の材料や作製方法も実施態様に合わせて選べ
ばよい。
【0129】
【効果】従来の流量検出器においては、高感度を得よう
とすると、応答速度が低下し、応答速度を速くしようと
すると、感度が低下してしまう、という2率背反の問題
があったが、本発明の構成である、蓄熱層となるダイヤ
モンド薄膜表面にサーミスタ機能を有する層を形成する
ことにより、サーミスタを用いた流量検出において重要
な条件となるサーミスタ部分における熱平衡条件を常に
流量の変化に従って高速に実現し、その時々の流量を正
確に高感度、高速応答、高ダイナミックレンジでもって
測定することができる。
【0130】さらに交流駆動加熱を用いることにより、
環境の温度に左右されずに流量を測定できる。
【0131】さらに高熱伝導率、低比熱というダイヤモ
ンド材料の物性を最大限利用した構造を有するので、永
年劣化に強いものを得ることができる。
【0132】また本発明の流量検出装置は、上記の特徴
の他、高安定性という特徴を有し、しかも流体に対し僅
か数度の加熱によって高感度を得ることができるので、
自動車等のガソリン流量の検出器として従来の流量検出
装置に置き換えうるものである。また、種々の腐食性ガ
スに対して耐性があるという利点もある。さらには発火
の危険性などから従来は流量測定が困難であった流体の
流量測定にも非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダイヤモンド薄膜を用いた流量検出装置の概略
断面図と平面図を示す。
【図2】実施例1において用いた装置の配置を示す。
【図3】実施例1における窒素ガスの流量に対する流量
検出装置の出力の相関関係を示す。
【図4】実施例1において、流量検出装置が加熱状態に
ある時の出力と加熱温度との相関関係を示す。
【図5】実施例3の流量検出装置を示す。
【図6】実施例2の流量検出装置を示す。
【図7】実施例2における流量と出力との関係を示す。
【図8】実施例2において交流駆動加熱を行った場合の
流量ゼロにおける出力波形を示す。
【図9】実施例2において交流駆動加熱を行った場合の
流量1m/sec における出力波形を示す。
【符号の説明】
10 電極 11 発熱体 12 サーミスタ層 13 ダイヤモンド薄膜 16 流体 17 流体が接する面 40 ボックス 41 流量検出装置 42 窒素ガス 43 流量計 44 電磁バルブ 45 変調器 46 電源 47 1MΩの抵抗 48 ロックインアンプ 49 オシロスコープ 86 ボックス 85 交流電源 81 窒素ガス 87 バイアス電源 88 アンプ 89 乗算器 800 増幅用積分器 74 電極 75 サーミスタ層 76 発熱体 77 ダイヤモンド薄膜 78 アンプ 79 発熱体用の電源 700 バイアス電源 701 差動アンプ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−252224(JP,A) Sensors Applicati ons for Synthetic Polycrystalline Th in−Film Diamond,Se nsors and Material s,2,6(1991),p329−346 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01F 1/68 - 1/699 G01P 5/12

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ダイヤモンド薄膜を用いた流量検出装置
    であって、 前記ダイヤモンド薄膜の表面にサーミスタ部分を有し、
    前記ダイヤモンド薄膜の裏面は流体と接して配置され、 前記サーミスタ部分において、 【数1】W=K(T−T 0 )+G(T−T 0 )・・・・
    ・・・・・・・・数式1 (式中、Wはサーミスタ部分が発熱する単位時間当りの
    熱量、Kは流体によって運びさられる熱量に関係する熱
    伝導係数、Tはサーミスタ部分の温度、T 0 は流体の温
    度、Gはサーミスタ部分を構成する材料の熱伝導率、を
    表す)が満たされる ことを特徴とする流量検出装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記ダイヤモンド薄
    膜は前記サーミスタ部分よりも大きな熱容量を有するこ
    とを特徴とする流量検出装置。
  3. 【請求項3】 ダイヤモンド薄膜を用いた流量検出装置
    であって、 前記ダイヤモンド薄膜の表面にサーミスタ部分を有し、 前記サーミスタ部分は、ダイヤモンド薄膜の結晶成長初
    期面に形成されており、 前記ダイヤモンド薄膜の結晶成長終期面が流体と接して
    配置され、 前記サーミスタ部分において、 【数1】W=K(T−T 0 )+G(T−T 0 )・・・・
    ・・・・・・・・数式1 (式中、Wはサーミスタ部分が発熱する単位時間当りの
    熱量、Kは流体によって運びさられる熱量に関係する熱
    伝導係数、Tはサーミスタ部分の温度、T 0 は流体の温
    度、Gはサーミスタ部分を構成する材料の熱伝導率、を
    表す)が満たされる ことを特徴とする流量検出装置。
  4. 【請求項4】 ダイヤモンド薄膜を用いた流量検出装置
    であって、 前記ダイヤモンド薄膜の表面に複数のサーミスタ部分
    と、発熱体と、を有し、前記ダイヤモンド薄膜の裏面は流体と接して配置され、 前記複数のサーミスタ部分において、 【数1】W=K(T−T 0 )+G(T−T 0 )・・・・
    ・・・・・・・・数式1 (式中、Wはサーミスタ部分が発熱する単位時間当りの
    熱量、Kは流体によって運びさられる熱量に関係する熱
    伝導係数、Tはサーミスタ部分の温度、T 0 は流体の温
    度、Gはサーミスタ部分を構成する材料の熱伝導率、を
    表す)が満たされ、 前記複数のサーミスタ部分は、前記発熱体によって前記
    ダイヤモド薄膜に形成される熱勾配を検出する機能を有
    していることを特徴とする流量検出装置。
  5. 【請求項5】 ダイヤモンド薄膜表面に形成されたサー
    ミスタ部分と、発熱体と、を有し、 前記ダイヤモンド薄膜の裏面は流体と接して配置され、 前記複数のサーミスタ部分において、 【数1】W=K(T−T 0 )+G(T−T 0 )・・・・
    ・・・・・・・・数式1 (式中、Wはサーミスタ部分が発熱する単位時間当りの
    熱量、Kは流体によって運びさられる熱量に関係する熱
    伝導係数、Tはサーミスタ部分の温度、T 0 は流体の温
    度、Gはサーミスタ部分を構成する材料の熱伝導率、を
    表す)が満たされる、 流量検出装置を用いた流量検出方
    法であって、 前記発熱体を交流波形によって加熱し、 前記加熱の結果得られたサーミスタ部分からの出力を演
    算処理することにより、前記流体の流量を算出すること
    を特徴とする流量検出方法。
  6. 【請求項6】 ダイヤモンド薄膜表面に形成された一導
    電型を有する複数のサーミスタ部分と、発熱体と、を有
    し、 前記ダイヤモンド薄膜の裏面は流体と接して配置され、 前記複数のサーミスタ部分において、 【数1】W=K(T−T 0 )+G(T−T 0 )・・・・
    ・・・・・・・・数式1 (式中、Wはサーミスタ部分が発熱する単位時間当りの
    熱量、Kは流体によって運びさられる熱量に関係する熱
    伝導係数、Tはサーミスタ部分の温度、T 0 は流 体の温
    度、Gはサーミスタ部分を構成する材料の熱伝導率、を
    表す)が満たされる、 流量検出装置を用いた流量検出方
    法であって、 前記発熱体によって前記ダイヤモンド薄膜に形成された
    熱勾配を前記複数のサーミスタ部分によって測定し、 前記熱勾配の大きさから前記流体の流量を得、 前記熱勾配の方向から前記流体の流れる方向を得、 前記熱勾配の変化の仕方から前記流量の変化を得、 ることを特徴とする流量検出方法。
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