JP3147435B2 - ナトリウム−硫黄電池の正極容器用材料及びその製造方法 - Google Patents
ナトリウム−硫黄電池の正極容器用材料及びその製造方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ナトリウム−硫黄電
池において硫黄および多硫化ナトリウムと接する正極容
器用の材料、特に硫黄および多硫化ナトリウムに対し優
れた耐食性を有し、且つ加工性にも優れた正極容器用材
料およびその製造方法に関する。
池において硫黄および多硫化ナトリウムと接する正極容
器用の材料、特に硫黄および多硫化ナトリウムに対し優
れた耐食性を有し、且つ加工性にも優れた正極容器用材
料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ナトリウム−硫黄電池の電池反応は、2
Na+ xS= Na2Sx で表される。放電時には電子を遊離
してイオン化した溶融ナトリウムが固体電解質を通って
正極側に移動し、溶融硫黄と反応して多硫化ナトリウム
となり電子を受け取って中性となる。この過程中に外部
回路に接続しておけば、約2Vの起電力を持って電子が
負極から正極に移動し電池として作動する。なお、溶融
硫黄は電子伝導性を持たないので、正極容器内に多孔質
伝導材を充填して、容器外より流入する電子が正極容器
内部に侵入できるようにする。一方、充電時には放電時
とは逆の反応が起こりナトリウムと硫黄が生成する。即
ち、上記電池の起電力以上の電圧を両極間に印加すと、
正極容器内で多硫化ナトリウムを形成している溶融ナト
リウムはイオン化し、固体電解質を通って負極側に戻り
電子を受け取って中性化する。電池の作動温度は、多硫
化ナトリウムの融点の関係から 300〜350 ℃に選ばれ
る。
Na+ xS= Na2Sx で表される。放電時には電子を遊離
してイオン化した溶融ナトリウムが固体電解質を通って
正極側に移動し、溶融硫黄と反応して多硫化ナトリウム
となり電子を受け取って中性となる。この過程中に外部
回路に接続しておけば、約2Vの起電力を持って電子が
負極から正極に移動し電池として作動する。なお、溶融
硫黄は電子伝導性を持たないので、正極容器内に多孔質
伝導材を充填して、容器外より流入する電子が正極容器
内部に侵入できるようにする。一方、充電時には放電時
とは逆の反応が起こりナトリウムと硫黄が生成する。即
ち、上記電池の起電力以上の電圧を両極間に印加すと、
正極容器内で多硫化ナトリウムを形成している溶融ナト
リウムはイオン化し、固体電解質を通って負極側に戻り
電子を受け取って中性化する。電池の作動温度は、多硫
化ナトリウムの融点の関係から 300〜350 ℃に選ばれ
る。
【0003】正極容器用の材料としては、通常、経済性
を考慮して炭素鋼あるいは低合金鋼が使用されている。
しかし正極容器内の Na2Sx ( 多硫化ナトリウム )およ
びS( 硫黄 )は非常に激しい腐食性の物質であり、炭素
鋼あるいは低合金鋼では甚だしい硫化腐食を生じ、電池
寿命および安全性の上で大きな問題となる。
を考慮して炭素鋼あるいは低合金鋼が使用されている。
しかし正極容器内の Na2Sx ( 多硫化ナトリウム )およ
びS( 硫黄 )は非常に激しい腐食性の物質であり、炭素
鋼あるいは低合金鋼では甚だしい硫化腐食を生じ、電池
寿命および安全性の上で大きな問題となる。
【0004】上記のような正極容器の耐食性を向上させ
る目的で、正極容器内表面にクロム( Cr )めっきを施す
こと (特開平2−142066号公報) およびコバルト( Co )
合金を被覆すること (特開平2−142065号公報) が提案
されている。しかし、これらの方法には次のような問題
点がある。
る目的で、正極容器内表面にクロム( Cr )めっきを施す
こと (特開平2−142066号公報) およびコバルト( Co )
合金を被覆すること (特開平2−142065号公報) が提案
されている。しかし、これらの方法には次のような問題
点がある。
【0005】Crめっきでは母材とめっき被膜との密着力
が弱く、電池の作動温度では母材とめっき被膜との熱膨
張の差に起因する被膜剥離が懸念される。Co合金の被覆
には主にプラズマ溶射法を用いるが、コーティングの際
に空気が侵入して溶射被膜中に気泡ができる。従って、
溶融 Na2Sx がこの気泡を通じて浸透し母材を腐食させ
るおそれがある。
が弱く、電池の作動温度では母材とめっき被膜との熱膨
張の差に起因する被膜剥離が懸念される。Co合金の被覆
には主にプラズマ溶射法を用いるが、コーティングの際
に空気が侵入して溶射被膜中に気泡ができる。従って、
溶融 Na2Sx がこの気泡を通じて浸透し母材を腐食させ
るおそれがある。
【0006】一方、鋼材に高温耐食性を付与する方法と
してクロマイジング処理が知られている。この方法は、
母材の上にめっき層等を載せるのではなく、母材自体に
Crを拡散浸透させて表層部をCrリッチにして耐食性を向
上させるのであるから、皮膜の剥離という問題がない。
そこで、このクロマイジング処理を正極容器用材料の製
造に利用する発明が英国特許第2017389 号明細書に提案
されている。同明細書に示される発明は、炭素鋼を母材
とし、その表面にCrが60%を超えるCr−Fe−C(炭素)
の層を形成させることを主眼とするものであるが、この
層の組成および厚さが適切でないと、後述するように正
極容器用材料として十分な耐食性が得られない。
してクロマイジング処理が知られている。この方法は、
母材の上にめっき層等を載せるのではなく、母材自体に
Crを拡散浸透させて表層部をCrリッチにして耐食性を向
上させるのであるから、皮膜の剥離という問題がない。
そこで、このクロマイジング処理を正極容器用材料の製
造に利用する発明が英国特許第2017389 号明細書に提案
されている。同明細書に示される発明は、炭素鋼を母材
とし、その表面にCrが60%を超えるCr−Fe−C(炭素)
の層を形成させることを主眼とするものであるが、この
層の組成および厚さが適切でないと、後述するように正
極容器用材料として十分な耐食性が得られない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】耐食性の向上を図るた
めに、正極容器の内表面にクロマイジング処理を施すの
は有効であるが、溶融した硫黄と多硫化ナトリウムの混
合体の中で十分な耐食性を持つ被膜組成およびそのよう
な被膜を形成させるための処理条件は不明である。例え
ば、クロマイズド層の厚みが不適切で、使用中にクロマ
イズド層が局部的に破壊された場合、腐食が加速度的に
進行する。
めに、正極容器の内表面にクロマイジング処理を施すの
は有効であるが、溶融した硫黄と多硫化ナトリウムの混
合体の中で十分な耐食性を持つ被膜組成およびそのよう
な被膜を形成させるための処理条件は不明である。例え
ば、クロマイズド層の厚みが不適切で、使用中にクロマ
イズド層が局部的に破壊された場合、腐食が加速度的に
進行する。
【0008】従来、クロマイジング処理鋼材のクロマイ
ズド層の組成と耐食性との関係についての検討はあまり
なされていない。電池を長時間使用した場合のクロマイ
ズド層の溶出などの問題を含めて、適切な処理条件を確
立しなければ、耐久性においても十分な正極容器用材料
は得られない。
ズド層の組成と耐食性との関係についての検討はあまり
なされていない。電池を長時間使用した場合のクロマイ
ズド層の溶出などの問題を含めて、適切な処理条件を確
立しなければ、耐久性においても十分な正極容器用材料
は得られない。
【0009】前述の英国特許第2017389 号明細書に提案
されているクロマイジング処理を施した正極容器用材料
では、正極容器の内表面となる側に耐腐食性に優れてい
るCrを主成分とする表面処理層(クロマイズド層)が形
成されているのであるが、このクロマイズド層は外層が
クロムカーバイド層、内層がクロム合金層からなる二層
構造を示す。この二層構造の皮膜の中、耐食性の向上に
寄与できるのは外層のクロムカーバイド層であるが、こ
の層の厚みはせいぜい10μm 程度であり、しかも内層の
Cr拡散層のCr濃度は高々20重量%程度である。従って、
クロマイズド層の外層が局部的に破壊されると、腐食が
加速度的に広がってしまう。さらに、クロムカーバイド
被膜は、加工性に乏しく僅かな歪により被膜内に割れが
発生する。従って、ナトリウム−硫黄電池の組立の際の
ハンドリングや歪取加工により、クロムカーバイド層に
割れが発生し、その部分の耐食性が著しく低下するとい
う問題がある。
されているクロマイジング処理を施した正極容器用材料
では、正極容器の内表面となる側に耐腐食性に優れてい
るCrを主成分とする表面処理層(クロマイズド層)が形
成されているのであるが、このクロマイズド層は外層が
クロムカーバイド層、内層がクロム合金層からなる二層
構造を示す。この二層構造の皮膜の中、耐食性の向上に
寄与できるのは外層のクロムカーバイド層であるが、こ
の層の厚みはせいぜい10μm 程度であり、しかも内層の
Cr拡散層のCr濃度は高々20重量%程度である。従って、
クロマイズド層の外層が局部的に破壊されると、腐食が
加速度的に広がってしまう。さらに、クロムカーバイド
被膜は、加工性に乏しく僅かな歪により被膜内に割れが
発生する。従って、ナトリウム−硫黄電池の組立の際の
ハンドリングや歪取加工により、クロムカーバイド層に
割れが発生し、その部分の耐食性が著しく低下するとい
う問題がある。
【0010】本発明の課題は、正極容器材料として、硫
黄および多硫化ナトリウムに対する特に高温での耐食性
に優れた材料を提供することであり、具体的な目的は、
十分な耐食性をもつクロマイズド層を備え、しかも加工
性にも優れた正極容器用材料とその製造方法を提供する
ことにある。
黄および多硫化ナトリウムに対する特に高温での耐食性
に優れた材料を提供することであり、具体的な目的は、
十分な耐食性をもつクロマイズド層を備え、しかも加工
性にも優れた正極容器用材料とその製造方法を提供する
ことにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、クロマイジン
グ処理によって正極容器用材料の耐食性改善を行うとい
う点では、前記の従来の技術を基礎とするものである。
しかし、本発明者らは耐食性の一層の向上を目的とし
て、クロマイジング処理の条件および形成されるクロマ
イズド層について詳細に検討し、従来知られていなかっ
た次のような現象を見出した。
グ処理によって正極容器用材料の耐食性改善を行うとい
う点では、前記の従来の技術を基礎とするものである。
しかし、本発明者らは耐食性の一層の向上を目的とし
て、クロマイジング処理の条件および形成されるクロマ
イズド層について詳細に検討し、従来知られていなかっ
た次のような現象を見出した。
【0012】(イ) 鋼中のCr濃度が25%以上であればNa2S
に対して十分な耐食性を示す。従って、クロムカーバイ
ド層を表面に形成させる必要は全くない。
に対して十分な耐食性を示す。従って、クロムカーバイ
ド層を表面に形成させる必要は全くない。
【0013】(ロ) 前記式を満足するようにNbおよびTi
を添加した炭素鋼または低合金鋼のクロマイズド層中に
はクロムカーバイド層が形成されなくなり、Crの拡散層
のみとなる。
を添加した炭素鋼または低合金鋼のクロマイズド層中に
はクロムカーバイド層が形成されなくなり、Crの拡散層
のみとなる。
【0014】(ハ) しかもこのようにして形成される拡散
層のCr濃度は25%以上に保たれ極めて良好な耐食性を有
する。
層のCr濃度は25%以上に保たれ極めて良好な耐食性を有
する。
【0015】(ニ) 上記の拡散層はクロマイジング処理の
ままではσ相であり加工性に乏しい。
ままではσ相であり加工性に乏しい。
【0016】しかし、クロマイジング処理後に適切な後
処理を施すことにより、拡散層中のCr濃度を低下させる
ことなしに、拡散層を加工性に優れたα相に変態させる
ことができる。この層は加工性に富むため、電池組立時
の加工の際にも被膜に割れが生じることがない。
処理を施すことにより、拡散層中のCr濃度を低下させる
ことなしに、拡散層を加工性に優れたα相に変態させる
ことができる。この層は加工性に富むため、電池組立時
の加工の際にも被膜に割れが生じることがない。
【0017】上記の知見を基にする本発明は、次の (1)
の材料と(2)のその製造方法とを要旨とする。
の材料と(2)のその製造方法とを要旨とする。
【0018】(1) 下記式を満足するNbとTiの1種以上
を含有する炭素鋼、または下記式を満足するNbとTiの
1種以上を含有し、且つ5重量%以下のMoと12重量%以
下のCrの1種以上を含有する低合金鋼を母材とし、その
母材の最外表面にCr濃度が25重量%以上のα相からなる
厚さ25μm 以上のCr拡散層を有することを特長とする耐
食性と加工性にすぐれたナトリウム−硫黄電池の正極容
器用材料。
を含有する炭素鋼、または下記式を満足するNbとTiの
1種以上を含有し、且つ5重量%以下のMoと12重量%以
下のCrの1種以上を含有する低合金鋼を母材とし、その
母材の最外表面にCr濃度が25重量%以上のα相からなる
厚さ25μm 以上のCr拡散層を有することを特長とする耐
食性と加工性にすぐれたナトリウム−硫黄電池の正極容
器用材料。
【0019】 C≦(Nb/10) +〔(Ti−4N)/6〕・・・ ただし、元素記号はその元素の含有量(重量%)を示
す。
す。
【0020】(2) 上記式を満足するNbとTiの1種以上
を含有する炭素鋼、または上記式を満足するNbとTiの
1種以上を含有し、且つ5重量%以下のMoと12重量%以
下のCrの1種以上を含有する低合金鋼の母材に、1000〜
1250℃でクロマイジング処理を施して最外表面にCr濃度
が25重量%以上で厚さが25μm 以上のCr拡散層を形成さ
せた後直ちに、または一旦炉冷もしくは放冷してから非
酸化性雰囲気中で1000〜1250℃に再加熱した後、 500℃
までの温度域を50℃/分以上の速度で冷却する後熱処理
を施すことを特長とする上記(1) のナトリウム−硫黄電
池の正極容器用材料の製造方法。
を含有する炭素鋼、または上記式を満足するNbとTiの
1種以上を含有し、且つ5重量%以下のMoと12重量%以
下のCrの1種以上を含有する低合金鋼の母材に、1000〜
1250℃でクロマイジング処理を施して最外表面にCr濃度
が25重量%以上で厚さが25μm 以上のCr拡散層を形成さ
せた後直ちに、または一旦炉冷もしくは放冷してから非
酸化性雰囲気中で1000〜1250℃に再加熱した後、 500℃
までの温度域を50℃/分以上の速度で冷却する後熱処理
を施すことを特長とする上記(1) のナトリウム−硫黄電
池の正極容器用材料の製造方法。
【0021】
【作用】以下、本発明の各構成要件について作用効果と
条件限定の理由を説明する。
条件限定の理由を説明する。
【0022】(I) 正極容器用材料について 母材はNbまたは/およびTiを前記式を満たすように含
有する炭素鋼または低合金鋼である。炭素鋼とは、C含
有量が0.02〜0.15重量%程度で、Si、Mn等の付随的な元
素以外の合金元素が添加されていないものである。低合
金鋼とは5重量%以下のMoと12重量%以下のCrのいずれ
か、または両方を含有する鋼である。これらの合金元素
の外、0.02〜0.15重量%程度のC、0.10〜0.75重量%程
度のSi、0.10〜1.00重量%程度のMn、更に約0.50重量%
以下のNi等を含有していてもよい。なお、CrとMoの含有
量を上記のように限定するのは次の理由からである。
有する炭素鋼または低合金鋼である。炭素鋼とは、C含
有量が0.02〜0.15重量%程度で、Si、Mn等の付随的な元
素以外の合金元素が添加されていないものである。低合
金鋼とは5重量%以下のMoと12重量%以下のCrのいずれ
か、または両方を含有する鋼である。これらの合金元素
の外、0.02〜0.15重量%程度のC、0.10〜0.75重量%程
度のSi、0.10〜1.00重量%程度のMn、更に約0.50重量%
以下のNi等を含有していてもよい。なお、CrとMoの含有
量を上記のように限定するのは次の理由からである。
【0023】鋼中にCrが存在するとクロム拡散層の形成
が容易になる。ただしCrの含有量が12重量%を超えると
その効果は飽和するから、Crを添加する場合はその含有
量を12重量%までとする。また、MoにはSによる鋼の孔
食を防止する作用がある。しかしこの効果も5重量%を
超える量では飽和するから、Moを添加する場合にはその
含有量を5重量%までとする。CrとMoは必ずしも必須で
はない。また、これらは1種もしくは2種併せて添加す
ることができる。
が容易になる。ただしCrの含有量が12重量%を超えると
その効果は飽和するから、Crを添加する場合はその含有
量を12重量%までとする。また、MoにはSによる鋼の孔
食を防止する作用がある。しかしこの効果も5重量%を
超える量では飽和するから、Moを添加する場合にはその
含有量を5重量%までとする。CrとMoは必ずしも必須で
はない。また、これらは1種もしくは2種併せて添加す
ることができる。
【0024】母材となる鋼は、Nbまたは/およびTiを
式を満足する範囲で必ず含有していなければならない。
Nb、Tiは鋼中のCと結合して、クロマイジング処理温度
でも分解しないNbC、TiCの炭化物を形成する。従っ
て、鋼中のフリーのCが減り、クロマイジング処理によ
ってCrが浸透してもCrのカーバイド層が形成されない。
式を満足する範囲で必ず含有していなければならない。
Nb、Tiは鋼中のCと結合して、クロマイジング処理温度
でも分解しないNbC、TiCの炭化物を形成する。従っ
て、鋼中のフリーのCが減り、クロマイジング処理によ
ってCrが浸透してもCrのカーバイド層が形成されない。
【0025】即ち、母材鋼の最外表面には、Crカーバイ
ド層ではなくCr拡散層ができる。この点が前掲の英国特
許第2017389 号に開示されるものとの大きな違いであ
る。
ド層ではなくCr拡散層ができる。この点が前掲の英国特
許第2017389 号に開示されるものとの大きな違いであ
る。
【0026】式を満足しない場合、即ち、C>Nb/10
+ (Ti−4N)/6 であればクロマイジング処理により処理
層の最外表面にクロムカーバイドが生成し、加工性が悪
化する。
+ (Ti−4N)/6 であればクロマイジング処理により処理
層の最外表面にクロムカーバイドが生成し、加工性が悪
化する。
【0027】母材の最外表面のCr拡散層は、25μm 以上
の厚みが必要であり、また、その層のCr濃度は25重量%
以上でなければならない。厚みが25μm より薄い場合、
およびCr濃度が25重量%より低い場合、いずれも硫黄お
よび多硫化ナトリウムに対する耐食性が不十分である。
の厚みが必要であり、また、その層のCr濃度は25重量%
以上でなければならない。厚みが25μm より薄い場合、
およびCr濃度が25重量%より低い場合、いずれも硫黄お
よび多硫化ナトリウムに対する耐食性が不十分である。
【0028】さらに、上記のCr拡散層はα相でなければ
ならない。通常、処理後の冷却が炉冷または放冷である
クロマイジング処理のままのCr拡散層中にはσ相が生成
しており、これはきわめて硬く、加工性が全くない。本
発明では、後述の後熱処理により、これをα相に変えて
加工性を高める。
ならない。通常、処理後の冷却が炉冷または放冷である
クロマイジング処理のままのCr拡散層中にはσ相が生成
しており、これはきわめて硬く、加工性が全くない。本
発明では、後述の後熱処理により、これをα相に変えて
加工性を高める。
【0029】(II) 製造方法について 前記の炭素鋼または低合金鋼を素材とし、所定の形状に
成形した後クロマイジング処理を施す。クロマイジング
処理法としては、粉末パック法、溶融塩法、ガス法のい
ずれも採用できる。正極容器素材となる鋼管の内面処理
においては、金属クロム、塩化アンモニウム、およびア
ルミナの粉末からなる浸透剤を鋼管の内部に充填して処
理する粉末パック法が適当である。このように処理した
後、鋼管を正極容器に必要な長さに切断すればよい。
成形した後クロマイジング処理を施す。クロマイジング
処理法としては、粉末パック法、溶融塩法、ガス法のい
ずれも採用できる。正極容器素材となる鋼管の内面処理
においては、金属クロム、塩化アンモニウム、およびア
ルミナの粉末からなる浸透剤を鋼管の内部に充填して処
理する粉末パック法が適当である。このように処理した
後、鋼管を正極容器に必要な長さに切断すればよい。
【0030】クロマイジング処理の温度は、1000〜1250
℃が適当である。1000℃よりも低いとCrの析出反応が遅
く処理に長時間を要する。また、1250℃よりも高温の処
理では素材の変形が大きくなる。
℃が適当である。1000℃よりも低いとCrの析出反応が遅
く処理に長時間を要する。また、1250℃よりも高温の処
理では素材の変形が大きくなる。
【0031】クロマイジング処理の後に、Cr拡散相をα
相に変える処理を施す。周知のCr−Fe状態図に示されて
いるように、Cr−Fe二元系ではσ相は 815℃以下で存在
する。従って、理論的にはこの温度以上に加熱すればσ
相を消失させることができるが、C、Si、Mn、さらにN
i、Mo等を含有する本発明の素材鋼の場合、σ相の存在
温度が 815℃を超えることを考慮すれば、実際の製造工
程で完全にσ相を無くするためには1000℃以上に加熱す
るのがよい。ただし、1250℃を超える温度では前記のよ
うに素材の変形が大きくなる。従って、この熱処理の加
熱温度としては1000〜1250℃が適当である。
相に変える処理を施す。周知のCr−Fe状態図に示されて
いるように、Cr−Fe二元系ではσ相は 815℃以下で存在
する。従って、理論的にはこの温度以上に加熱すればσ
相を消失させることができるが、C、Si、Mn、さらにN
i、Mo等を含有する本発明の素材鋼の場合、σ相の存在
温度が 815℃を超えることを考慮すれば、実際の製造工
程で完全にσ相を無くするためには1000℃以上に加熱す
るのがよい。ただし、1250℃を超える温度では前記のよ
うに素材の変形が大きくなる。従って、この熱処理の加
熱温度としては1000〜1250℃が適当である。
【0032】この後熱処理の適正温度は前述のクロマイ
ジング処理の温度範囲と同じである。従って、クロマイ
ジング処理の後、直ちに後述の急速冷却を行ってもよ
い。しかし、被処理材が管で、その内部に浸透剤を充填
してクロマイジング処理を行う場合には、浸透剤を詰め
たままでの冷却では所定の冷却速度が得られない。従っ
て、処理後に一旦炉冷または放冷して浸透剤を取り出す
作業などが必要で、その間にσ相が生成してしまう。こ
の場合は、再度1000〜1250℃に加熱してから、以下に述
べる急冷を行う。
ジング処理の温度範囲と同じである。従って、クロマイ
ジング処理の後、直ちに後述の急速冷却を行ってもよ
い。しかし、被処理材が管で、その内部に浸透剤を充填
してクロマイジング処理を行う場合には、浸透剤を詰め
たままでの冷却では所定の冷却速度が得られない。従っ
て、処理後に一旦炉冷または放冷して浸透剤を取り出す
作業などが必要で、その間にσ相が生成してしまう。こ
の場合は、再度1000〜1250℃に加熱してから、以下に述
べる急冷を行う。
【0033】上記のクロマイジング処理または再加熱の
後は、500 ℃までの温度域を50℃/分以上の冷却速度で
冷却する。これは、σ相の生成を抑えるためである。本
発明の素材鋼の場合、σ相が生成する温度は およそ 5
00〜900 ℃の範囲であるから、この温度域を急冷すれば
σ相の生成は防止できる。その急冷の下限温度が50℃/
分である。
後は、500 ℃までの温度域を50℃/分以上の冷却速度で
冷却する。これは、σ相の生成を抑えるためである。本
発明の素材鋼の場合、σ相が生成する温度は およそ 5
00〜900 ℃の範囲であるから、この温度域を急冷すれば
σ相の生成は防止できる。その急冷の下限温度が50℃/
分である。
【0034】再加熱を酸化性の雰囲気、例えば大気中で
実施すると表面に絶縁性のCr2O3 が生成し、蓄電効率が
低下する。従って、熱処理は非酸化性の雰囲気、例えば
真空中、不活性ガス中あるいは還元性ガス中で行う必要
がある。
実施すると表面に絶縁性のCr2O3 が生成し、蓄電効率が
低下する。従って、熱処理は非酸化性の雰囲気、例えば
真空中、不活性ガス中あるいは還元性ガス中で行う必要
がある。
【0035】
【実施例1】表1に示す化学組成の鋼から、厚さ2mm、
幅20mm、長さ20mmの腐食試験片と板状の引張試験片(JI
S-Z2201 13号)を切り出した。これらに下記の条件でク
ロマイジング処理と後熱処理を施した。
幅20mm、長さ20mmの腐食試験片と板状の引張試験片(JI
S-Z2201 13号)を切り出した。これらに下記の条件でク
ロマイジング処理と後熱処理を施した。
【0036】〔処理条件〕金属Cr:70重量%、 Al2O3:
28重量%、 NH4Cl:2重量%の浸透剤を用いる粉末パッ
ク法を採用した。クロマイジング処理は、1050℃で10時
間、水素中で実施し、約60μm のクロマイズド層を形成
させた後放冷した。処理材はその後、窒素中で1000℃で
10分加熱した後、500 ℃まで冷却速度60℃/分で冷却し
た。
28重量%、 NH4Cl:2重量%の浸透剤を用いる粉末パッ
ク法を採用した。クロマイジング処理は、1050℃で10時
間、水素中で実施し、約60μm のクロマイズド層を形成
させた後放冷した。処理材はその後、窒素中で1000℃で
10分加熱した後、500 ℃まで冷却速度60℃/分で冷却し
た。
【0037】表2に、処理後のクロマイズド層の種類、
およびCr濃度が25重量%以上の層の厚さを示す。
およびCr濃度が25重量%以上の層の厚さを示す。
【0038】得られた各試験片を用いて試験を行った。
腐食試験には図1に概略断面を示す装置を用い、その内
部に多硫化ナトリウムを充填してその中に被膜に10重量
%の引張り歪みを付与した前記腐食試験片を浸績し、試
験容器全体をヒーターで加熱して 350℃で 500時間保持
した後、腐食減肉を測定した。また、クロマイジング処
理層の加工性を調べるため前記引張試験片に10%の引張
り歪みを加えて被膜の割れ剥離状況をフェロキシル法で
調査した。試験結果を表2に併記する。
腐食試験には図1に概略断面を示す装置を用い、その内
部に多硫化ナトリウムを充填してその中に被膜に10重量
%の引張り歪みを付与した前記腐食試験片を浸績し、試
験容器全体をヒーターで加熱して 350℃で 500時間保持
した後、腐食減肉を測定した。また、クロマイジング処
理層の加工性を調べるため前記引張試験片に10%の引張
り歪みを加えて被膜の割れ剥離状況をフェロキシル法で
調査した。試験結果を表2に併記する。
【0039】表1のNo.1〜11は母材の化学組成が本発明
で定める範囲にあるもの、No.12 〜19は、 (Nb/10)+
〔(Ti−4N)/6〕−Cがマイナスになるもの、即
ち、前記式を満足しないものである。表2に示すとお
り、No.1〜11の鋼ではクロマイズド層はCr拡散層で、Cr
カーバイドは生成していない。しかもCr拡散層はα相に
なっている。その結果、多硫化ナトリウムに対して極め
て良好な耐食性を示すと共に、加工性にも優れている。
で定める範囲にあるもの、No.12 〜19は、 (Nb/10)+
〔(Ti−4N)/6〕−Cがマイナスになるもの、即
ち、前記式を満足しないものである。表2に示すとお
り、No.1〜11の鋼ではクロマイズド層はCr拡散層で、Cr
カーバイドは生成していない。しかもCr拡散層はα相に
なっている。その結果、多硫化ナトリウムに対して極め
て良好な耐食性を示すと共に、加工性にも優れている。
【0040】一方、No. 12〜19の鋼を素材とした場合に
は、いずれも最外層に厚さが10〜30μm のCrカーバイド
層が生成している。その結果、多硫化ナトリウムに対し
て耐食性が劣るだけでなく加工性の乏しい。
は、いずれも最外層に厚さが10〜30μm のCrカーバイド
層が生成している。その結果、多硫化ナトリウムに対し
て耐食性が劣るだけでなく加工性の乏しい。
【0041】なお、No.1〜11とNo.12 〜19の硫黄に対す
る耐食性も、上記多硫化ナトリウムに対する耐食性と同
様であった。
る耐食性も、上記多硫化ナトリウムに対する耐食性と同
様であった。
【0042】
【実施例2】表3に示す化学組成の鋼 (本発明の条件を
満たす鋼) から、実施例1と同じサイズの腐食試験片を
切り出し、実施例1と同じ条件(但し、クロマイズド層
の厚さ変えるために処理時間のみ表4のように変更)で
クロマイジング処理を行った。その後、真空中で1000℃
で10分加熱した後、500 ℃まで冷却速度100 ℃/分で冷
却した。
満たす鋼) から、実施例1と同じサイズの腐食試験片を
切り出し、実施例1と同じ条件(但し、クロマイズド層
の厚さ変えるために処理時間のみ表4のように変更)で
クロマイジング処理を行った。その後、真空中で1000℃
で10分加熱した後、500 ℃まで冷却速度100 ℃/分で冷
却した。
【0043】腐食試験は実施例1と同じ方法で、3000時
間まで実施した。その結果を表4にまとめて示す。表4
の比較例からわかるように、素材の化学組成が本発明の
条件を満足するものであっても、Cr拡散層の厚さが十分
でないと、長時間での耐食性が不十分である。クロマイ
ズド層の厚さが25μm 以上である本発明例の場合は長時
間の使用でも多硫化ナトリウムに対して極めて良好な耐
食性を示している。
間まで実施した。その結果を表4にまとめて示す。表4
の比較例からわかるように、素材の化学組成が本発明の
条件を満足するものであっても、Cr拡散層の厚さが十分
でないと、長時間での耐食性が不十分である。クロマイ
ズド層の厚さが25μm 以上である本発明例の場合は長時
間の使用でも多硫化ナトリウムに対して極めて良好な耐
食性を示している。
【0044】
【実施例3】前記表3に示す化学組成の鋼 (本発明の条
件を満たす鋼)から、実施例1と同じサイズの引張試験
片を切り出し、実施例1と同じ条件でクロマイジング処
理を行い、その後、アルゴン中で表5に示す条件で後熱
処理を施した。その後、試験片に10%の引張り歪みを加
え、実施例1と同じ方法で試験を行い、クロマイズド層
の割れ状況をフェロキシル法で調べた。結果を表5に併
記する。
件を満たす鋼)から、実施例1と同じサイズの引張試験
片を切り出し、実施例1と同じ条件でクロマイジング処
理を行い、その後、アルゴン中で表5に示す条件で後熱
処理を施した。その後、試験片に10%の引張り歪みを加
え、実施例1と同じ方法で試験を行い、クロマイズド層
の割れ状況をフェロキシル法で調べた。結果を表5に併
記する。
【0045】表5から明らかなように、後熱処理の加熱
温度が低すぎる場合(No.8) および冷却速度が小さすぎ
る場合 (No.9〜11) 、いずれもσ相が生成して加工性が
悪く割れが発生している。しかし、加熱温度と冷却速度
が適切な本発明例には割れは全く見られず、クロマイズ
ド層の加工性が優れている。
温度が低すぎる場合(No.8) および冷却速度が小さすぎ
る場合 (No.9〜11) 、いずれもσ相が生成して加工性が
悪く割れが発生している。しかし、加熱温度と冷却速度
が適切な本発明例には割れは全く見られず、クロマイズ
ド層の加工性が優れている。
【0046】
【表1(1)】
【0047】
【表1(2)】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【発明の効果】本発明の材料は、その表面に特異なCr拡
散層があることによって多硫化ナトリウムおよび硫黄に
対する極めて優れた耐食性をもつ。しかも、加工性にも
優れているから、ハンドリングや成形加工も容易であ
る。この材料は本発明の方法で比較的容易に低コストで
製造することができ、ナトリウム−硫黄電池の正極容器
用材料として、その耐久性の向上に寄与するところ大き
い。
散層があることによって多硫化ナトリウムおよび硫黄に
対する極めて優れた耐食性をもつ。しかも、加工性にも
優れているから、ハンドリングや成形加工も容易であ
る。この材料は本発明の方法で比較的容易に低コストで
製造することができ、ナトリウム−硫黄電池の正極容器
用材料として、その耐久性の向上に寄与するところ大き
い。
【図1】腐食試験装置の概要を示す縦断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−280955(JP,A) 特開 平3−133066(JP,A) 特開 昭59−80965(JP,A) 特開 昭58−152379(JP,A) 特開 昭57−57861(JP,A) 特開 昭56−73868(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 10/39
Claims (2)
- 【請求項1】下記式を満足するNbとTiの1種以上を含
有する炭素鋼、または下記式を満足するNbとTiの1種
以上を含有し、且つ5重量%以下のMoと12重量%以下の
Crの1種以上を含有する低合金鋼を母材とし、その母材
の最外表面にCr濃度が25重量%以上のα相からなる厚さ
25μm 以上のCr拡散層を有することを特長とする耐食性
と加工性にすぐれたナトリウム−硫黄電池の正極容器用
材料。 C≦(Nb/10) +〔(Ti−4N)/6〕・・・ ただし、元素記号はその元素の含有量(重量%)を示
す。 - 【請求項2】下記式を満足するNbとTiの1種以上を含
有する炭素鋼、または下記式を満足するNbとTiの1種
以上を含有し、且つ5重量%以下のMoと12重量%以下の
Crの1種以上を含有する低合金鋼の母材に、1000〜1250
℃でクロマイジング処理を施して最外表面にCr濃度が25
重量%以上で厚さが25μm 以上のCr拡散層を形成させた
後直ちに、または一旦炉冷もしくは放冷してから非酸化
性雰囲気中で1000〜1250℃に再加熱した後、 500℃まで
の温度域を50℃/分以上の速度で冷却する後熱処理を施
すことを特長とする請求項1に記載のナトリウム−硫黄
電池の正極容器用材料の製造方法。 C≦(Nb/10) +〔(Ti−4N)/6〕・・・ ただし、元素記号はその元素の含有量(重量%)を示
す。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP26965791A JP3147435B2 (ja) | 1991-10-17 | 1991-10-17 | ナトリウム−硫黄電池の正極容器用材料及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP26965791A JP3147435B2 (ja) | 1991-10-17 | 1991-10-17 | ナトリウム−硫黄電池の正極容器用材料及びその製造方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH05109430A JPH05109430A (ja) | 1993-04-30 |
| JP3147435B2 true JP3147435B2 (ja) | 2001-03-19 |
Family
ID=17475405
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP26965791A Expired - Fee Related JP3147435B2 (ja) | 1991-10-17 | 1991-10-17 | ナトリウム−硫黄電池の正極容器用材料及びその製造方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3147435B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP5142264B2 (ja) * | 2008-01-23 | 2013-02-13 | 住友電気工業株式会社 | 非水電解質二次電池用の集電体及びその製造方法並びに非水電解質二次電池用の正極及びその製造方法 |
-
1991
- 1991-10-17 JP JP26965791A patent/JP3147435B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH05109430A (ja) | 1993-04-30 |
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| Date | Code | Title | Description |
|---|---|---|---|
| LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |