JP3301825B2 - アルミ系母材への異種材質の肉盛り溶接方法 - Google Patents

アルミ系母材への異種材質の肉盛り溶接方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアルミ系母材の耐摩耗特
性を改善するアルミ系母材への異種材質の肉盛り溶接方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】地球温暖化及びCO2 対策の一環とし
て、車両の軽量化、エンジンの燃費向上技術等が求めら
れている。車両の軽量化に関しては、アルミニウム、チ
タン等の軽量対策材の採用が検討されている。これら軽
量対策材の使用に際し、技術面のネックとなっているの
が、それらが従来の鉄系材料と比べ、耐摩耗特性に劣る
ことである。このため、軽量化材であるアルミニウムの
耐摩耗特性を改善するための研究開発が行われており、
その一環としてアルミニウム又はアルミニウム合金材
(鋳物材含む)の局部表面を他種材質により改質する方
法がある。
【0003】この方法としてメイン電極ワイヤ(例えば
アルミ電極ワイヤ)と耐摩耗特性を有するフィラーワイ
ヤの2本のワイヤを用いた合金化MIG溶接による表面
改質がいくつか提案されている(特開平2-117777号公報
など)。
【0004】このダブルワイヤ溶接法は、メインの電極
ワイヤの他に、例えばメイン電極ワイヤの後行にフィラ
ーワイヤを配置し、メイン電極ワイヤのアークで形成し
た溶融池にフィラーワイヤを挿入して溶融するものであ
り、溶融池にフィラーワイヤを挿入して溶解するため、
溶接時の溶着量を多くし、シングルワイヤ法と比較し
て、肉盛り溶接速度の向上という利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
ダブルワイヤ溶接法では、フィラーワイヤを溶融池に挿
入して溶解するため、メインの電極ワイヤによって形成
される溶融池の温度以下の溶融点を有する材料にフィラ
ーワイヤが限定され、かつその挿入量が溶融池の熱容量
でおのずと制限されてしまうことがある。
【0006】例えば、1本のメインワイヤだけでアルミ
ニウムのMIG溶接を行うと、その溶融池の温度計測例
(アルミニウム合金、熱電対)は、図4に示すようにな
り、フィラー挿入(後行)部位(図示例でAの位置)の
溶融池11の温度は約 900℃となり、溶融点が 900℃を
超えるフィラ材料の肉盛り合金化は不可能となる。
【0007】このため、アルミニウムの溶融温度 660℃
(純Al)とこの溶融池のフィラー挿入部位の温度約 9
00℃との間にて溶融され、かつ、アルミニウムと合金化
した際、硬度アップできる材料としては、アルミニウム
よりも高融点の材料となる。これらの条件にあうフィラ
ー材料として、ストロンチウム((Sr)融点 769
℃),セリウム((Ce)融点 795℃)など種類が少な
い。
【0008】そこで、本発明は、このような事情を考慮
してなされたものであり、その目的は、多種の耐摩耗材
料を肉盛り溶接により付加することができるアルミ系母
材への異種材質の肉盛り溶接方法を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に本発明のアルミ系母材への異種材質の肉盛り溶接方法
は、メインワイヤを後行に、そのメインワイヤより高融
点の耐摩耗特性材料のフィラーワイヤを先行に配置し、
前記メインワイヤを電極とするMIG溶接のアークによ
りアルミ系母材の表面の一部を溶融させて溶融池を形成
した後、前記フィラーワイヤをその溶融池に挿入して溶
解させ、高融点耐摩耗材料を肉盛り溶接により付加する
ものである。
【0010】また、前記メインワイヤがアルミ系材料か
らなると共に、フィラーワイヤが銅系又はチタン系の耐
摩耗特性材料からなることが好ましい。さらに、前記メ
インワイヤが銅系又はニッケル系の材料からなると共
に、フィラーワイヤがチタン系耐摩耗特性材料からなる
ことが好ましい。
【0011】
【作用】メインワイヤを電極とするMIG溶接のアーク
により溶融池を形成すると、メインワイヤより溶接方向
の前方の溶融池の温度が高い。例えば、アルミニウムの
MIG溶接時の溶融池の温度計測例によると、図4に示
すように、メインワイヤ10より前方の溶融池11の温
度はワイヤ10の中央部とほぼ同様に約1600℃を越え、
ワイヤ10より後方に行くに連れて低くなる。
【0012】したがって、メインワイヤを後行に、フィ
ラーワイヤを先行に配置し、フィラーワイヤを溶融池に
挿入することにより、フィラーワイヤは温度が高いとこ
ろで溶解されるので、例えばアルミニウムのMIG溶接
時においてはストロンチウムやセリウムの他に銅系やチ
タン系などの高融点の耐摩耗特性材料をフィラーワイヤ
に用いることができ、多種の耐摩耗材料を肉盛り溶接に
より付加することが可能となる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて
説明する。
【0014】図1において、1はダブルワイヤ溶接機の
トーチのノズルを示し、このノズル1内には、メインワ
イヤ2とフィラーワイヤ3が設けられている。
【0015】メインワイヤ2は、溶接電流が流れる電導
体4に支持されて溶接方向の後行に配置されると共に、
電導体4内を摺動して一定速度で送り出されるようにな
っている。このメインワイヤ2の送り速度は任意に設定
可能にワイヤ供給装置(図示せず)が構成されている。
また、メインワイヤ2の電導体4に溶接電流が流れるこ
とにより、ワイヤ2の先端とアルミ系の母材(例えばア
ルミ合金)5との間にアーク6が発生してその熱でワイ
ヤ2が溶着されると共に、母材5の表面の一部が溶融し
て溶融池7が形成されるようになっている。
【0016】メインワイヤ2は、アルミ系材料(アルミ
又はアルミ合金(アルミ鋳物を含む))、銅系材料、ニ
ッケル系材料などからなる。
【0017】フィラーワイヤ3は、電導体8に支持され
て溶接方向の先行に配置され、電導体8内を摺動して一
定速度で送り出されて、前記溶融池7の前方に挿入され
るようになっている。このフィラーワイヤ3の送り速度
は任意に設定可能にワイヤ供給装置(図示せず)が構成
されている。フィラーワイヤ3は、メインワイヤ2と異
なる材質であって耐摩耗特性を有する材料からなり、例
えば、銅系材料(銅又は銅合金)やチタン系材料などか
らなる。
【0018】ノズル1の内部には、それらワイヤ2,3
の外側に不活性ガス例えばArが供給されるようになっ
ている。
【0019】さて、アルミ系母材例えばアルミ合金5の
表面を改質するには、メインワイヤ2を一定速度でトー
チのノズル1から送給すると共に、メインワイヤ2の電
導体4に所定の溶接電流を流しワイヤ2の先端とアルミ
合金5の表面との間にアーク6を発生させる。これによ
り、アーク6の熱でワイヤ2をアルミ合金5に溶着する
と共に、アルミ合金5の一部を溶融して溶融池7を形成
させる。この際、アーク6は、溶融池7のシールドとし
ては望ましい前進角を有したアークとなるようにノズル
1の位置決めを行うのが好ましい。
【0020】そして、フィラーワイヤ3を一定速度でト
ーチのノズル1から送給して溶融池7の溶接方向の前方
に挿入する。これにより、フィラーワイヤ3が溶融し
て、アルミ合金(母材)5に高融点耐摩耗材料(フィラ
ーワイヤ3)が肉盛り溶接により付加されることにな
る。
【0021】このように、メインワイヤ2を後行に、フ
ィラーワイヤ3を先行に配置し、フィラーワイヤ3を溶
融池7に挿入することにより、フィラーワイヤ3は温度
が高いところで溶解されるので、例えば銅系(純銅の融
点1085℃)やチタン系(純チタンの融点1725℃)などの
高融点の異種材料である耐摩耗特性材料をフィラーワイ
ヤ3に用いることができる。すなわち、メインワイヤ2
を電極とするMIG溶接のアーク6により溶融池7を形
成するため、メインワイヤ2より溶接方向の前方の溶融
池7の温度が高くなる。その溶融池7の温度はメインワ
イヤ2の溶接条件できまり、例えば、メインワイヤだけ
でアルミニウムのMIG溶接を行うと、その溶融池の温
度計測例(アルミニウム合金、熱電対)は、図4に示す
ようになり、メインワイヤ10より前方の溶融池11の
温度がワイヤの中央部とほぼ同様に約1600℃を越える。
このため、図1に示すように、溶融池7の前方にフィラ
ーワイヤ3を挿入することにより、溶融温度が 900℃を
超える材料でもフィラーワイヤ3の材料として用いるこ
とができる。これにより、フィラーワイヤ3の材料に銅
系やチタン系などの高融点の耐摩耗特性材料を用いるこ
とができ、多種の耐摩耗材料を肉盛り溶接により付加す
ることが可能となる。これによって、フィラーワイヤ3
の耐摩耗特性材料とメインワイヤ2の組成との合金化を
図れ、アルミニウム合金(母材)5の表面の耐摩耗特性
を改善することが可能となる。
【0022】また、フィラーワイヤ3を挿入する溶融池
7の温度が約1600℃以上と高温であるため、ワイヤ3の
溶解量を多くすることができる。これは、フィラーワイ
ヤ3として挿入できる量が、フィラーワイヤ3による溶
融池7の温度低下を考慮しなければならず、溶融池7の
温度が高温であるので、ワイヤ3の溶解量を多くするこ
とができるからであり、これにより、耐摩耗特性材料を
約1/3以上の濃度で肉盛り溶接可能となる。
【0023】さらに、溶融池7にフィラーワイヤ3を挿
入して溶解するため、溶融池7の温度がワイヤ3を挿入
しない場合に比して下がるので、凝固までの冷却速度が
遅くなり、溶接割れ危険度が少なくなる。
【0024】次に本発明の具体例を説明する。
【0025】前述のダブルワイヤ溶接機を用いてアルミ
合金に対するAl−Cu合金の肉盛りの状態を調べた。
【0026】母材には、エンジン部品に多く使用されて
いるアルミ合金鋳物AC2B(成分;Si: 5.0〜7.0
%,Cu: 2.0〜4.0 %,Fe: 1.0%以下,Mn:
0.5%以下,残りAl)を用い、5Rの開先を設けた20m
m厚さの試験片を鋳造で作成・使用した。溶接材には、
メインワイヤとして母材と同種のアルミ材A1070
(成分;Si:0.20%,Cu:0.04%,Fe:0.25%,
Mn:0.03%,Al:≧99.70 %)で作成したφ1.2 の
ワイヤを、フィラーワイヤとして合金成分である銅合金
・アームスブロンズ(成分;Mn:0.93%,Fe:2.67
%,Ni:1.02%,Al:7.60%,残りCu)で作成し
たφ1.6 のワイヤをそれぞれ用いた。
【0027】これらワイヤを、メインワイヤを後行にフ
ィラーワイヤを先行になるように前述のダブルワイヤ溶
接機に装着し、その溶接電流(メインワイヤ)、溶接速
度、フィラー送給量を表1に示す条件にして、試験片の
開先部に 100mmのビード・オン・ブレード溶接を行っ
た。
【0028】
【表1】
【0029】このように溶接を行った試験片を、割れ等
の外観チェックを行ったのち溶接部の中央部断面にて溶
着金属の硬さ(Hv),組織観察、及び合金成分である
銅(Cu)の定量分析について調べた。なお、この銅の
定量分析は走査型電子顕微鏡(SEM)に付属のエネル
ギ分散型分析装置(ホリバ製作所製)により、溶接ビー
トの上・中・下の三ケ所について測定、既知Cu量の標
準試料による校正を行った。
【0030】その結果、フィラー送給量とCuの含有
率、及びCuの含有率と溶着金属の硬さとの関係を図2
及び図3に示す。図2及び図3からフィラーの送給量が
少ない場合及び多い場合の両方でCu成分のバラツキが
大きいことが分る。この成分バラツキ発生の要因とし
て、フィラー送給量が少ない場合には、溶融池温度が
高く比重差によって合金成分がビード下部に沈む、フ
ィラー送給量が多い場合には、逆に溶融池温度が上がら
ず凝固が早いため撹拌が不十分となるなどが考えられ
る。
【0031】これによって、均一な組成の溶着金属を得
るには、溶接電流、溶接速度、フィラー送給量の適正な
範囲があり、この試験結果では溶接電流; 260A、溶接
速度;300 mm/min、フィラー送給量;23〜38 g/minの条
件で、Cu含有率20〜36%の範囲の均一な組成のビード
が得られる。と同時に、図3からも分るように、硬さは
ほぼCu含有量に比例すると共に、前記の条件範囲では
Hv 150〜250 の硬さが得られる。
【0032】従って、フィラーワイヤをメインワイヤの
前方に配置し、フィラーワイヤを溶融池に挿入すること
により、融点の異なるアルミと銅による合金化溶接を可
能とすることが確認された。また、適正な条件を設定す
ることにより、Cu含有率が20〜36%という広い範囲で
溶着金属の成分を自由に設定可能であることが分った。
さらに、溶着金属の硬さは、Cu含有率に比例して上昇
することから、フィラー送給量を任意に代えることによ
り必要な硬さに応じた改質層を自由に設定可能である。
【0033】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、アルミ系
母材の表面に、多種の耐摩耗材料を肉盛り溶接により付
加できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するためのダブルワイヤ溶
接機のトーチのノズルの一例を示す概略断面図である。
【図2】フィラー送給量とCuの含有率との関係を示す
図である。
【図3】Cuの含有率と溶着金属の硬さとの関係を示す
図である。
【図4】(a)は1本のメインワイヤだけでMIG溶接
を行った際の距離と温度との関係を示す図、(b)はそ
の断面図である。
【符号の説明】
2 メインワイヤ 3 フィラーワイヤ 5 母材 6 アーク 7 溶融池
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中原 雄治 大阪府大阪市中央区北浜4丁目7番19号 共同酸素株式会社内 (72)発明者 宮内 秀樹 和歌山県和歌山市湊1850番地 共同酸素 株式会社内 審査官 加藤 昌人 (56)参考文献 特開 昭64−62279(JP,A) 特開 昭54−50443(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 9/04

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メインワイヤを後行に、そのメインワイ
    ヤより高融点の耐摩耗特性材料のフィラーワイヤを先行
    に配置し、前記メインワイヤを電極とするMIG溶接の
    アークによりアルミ系母材の表面の一部を溶融させて溶
    融池を形成した後、前記フィラーワイヤをその溶融池に
    挿入して溶解させ、高融点耐摩耗材料を肉盛り溶接によ
    り付加することを特徴とするアルミ系母材への異種材質
    の肉盛り溶接方法。
  2. 【請求項2】 前記メインワイヤがアルミ系材料からな
    ると共に、前記フィラーワイヤが銅系又はチタン系の耐
    摩耗特性材料からなる請求項1記載のアルミ系母材への
    異種材質の肉盛り溶接方法。
  3. 【請求項3】 前記メインワイヤが銅系又はニッケル系
    の材料からなると共に、前記フィラーワイヤがチタン系
    耐摩耗特性材料からなる請求項1記載のアルミ系母材へ
    の異種材質の肉盛り溶接方法。
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JP5242610B2 (ja) * 2010-03-02 2013-07-24 株式会社東芝 構造材の表面改質装置及びその方法
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