JP3557734B2 - 単結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子材料等に使用される単結晶の製造方法に関する。詳しくはフローティングゾーン法を適用した単結晶の製造方法において、チョコラルスキー法において一般的である肩部を形成し、大径の単結晶を製造することを可能とする単結晶の製造方法及び原料棒と種結晶の接合時の酸素濃度を低くし、これらの接合を容易とする単結晶の製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
シリコン,水晶,ダイヤモンド,サファイヤ等の単結晶材料は電子材料やその他の材料として多用されており、その製造技術は各種産業分野において重要なものとなっている。
【0003】
単結晶の製造方法としては、融液法,溶液法,固相法,気相法が挙げられるが、例えば融液法を適用した単結晶の製造方法としては主にチョコラルスキー法(以下、Cz法と称する。)、フローティングゾーン法(以下、FZ法と称する。)が挙げられる。
【0004】
上記Cz法は、るつぼ内の融液に種結晶を接触させ、種結晶或いは種結晶とるつぼの両方を回転させながら単結晶を引き上げる方法である。上記Cz法はメルトと単結晶が融けた場合の組成が同一である一致溶融化合物を対象にした材料の単結晶の製造に使用されている。また、上記Cz法は、製造装置の制御が容易であり、大径の単結晶の製造が可能であることから、量産性が良好である。
【0005】
なお、上記Cz法においては、単結晶中への欠陥の混入を防ぐために、種結晶を融液に接触させた後、比較的小径のネッキング部と称される部分を製造し、単結晶育成方向において次第に大径とされ、種結晶よりも大径とされる肩部と称される部分を形成し、続いて円筒状の直胴部と称される部分を形成するようにして単結晶を製造している。
【0006】
しかしながら、上記Cz法においてはるつぼを使用するため、るつぼ材の融点、材料の融点、双方の反応性を考慮する必要があり、使用可能な材料が限定されるという欠点がある。また、上記Cz法は、一方向の凝固法であるため、組成ずれが生じない系で上述のようにメルトと結晶が融けた場合の組成が同一である一致溶融化合物の材料の単結晶の製造にしか適用できず、このことからも使用可能な材料が限定される。さらに、上記Cz法においては、メルトの蒸散による組成ずれを避けるために低蒸気圧の材料の単結晶の製造にしか適用できず、このことからも使用可能な材料が限定される。
【0007】
一方、上記FZ法は原料棒を両端で鉛直に保持し、その一部を加熱溶融して溶融帯を形成し、これを一端側から他端側へと移動して順次単結晶化する方法である。上記FZ法は、主に高融点材料或いは分解溶融化合物の結晶の製造に使用されている。
【0008】
上記FZ法は、るつぼを使用しないため、るつぼ材による汚染がなく、加熱するヒーター材が限定されないことから、育成可能な温度領域を広くすることが可能である。また、上記FZ法においては、原料棒同士からでも単結晶の製造が可能である上、少量の原料粉からでも単結晶の製造が可能であることから材料探査等に適している。さらに、上記FZ法においては、一致溶融化合物だけでなく分解溶融化合物の単結晶の製造も可能であり、使用可能な材料が比較的限定されない。さらにまた、上記FZ法を適用した製造装置は閉じた装置系となり、単結晶の製造を閉じた系の中で行うこととなるため、雰囲気の制御が容易である。
【0009】
しかしながら、上記FZ法においては、大径の単結晶の製造が困難であり、単結晶の大型化に対応が困難であるといった不都合を有している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにFZ法において大型の単結晶の製造が困難であるのは、以下のような理由による。
【0011】
上記FZ法は、溶融帯を原料棒内で相対的に移動させて順次単結晶化するものであるため、原料棒から送り込んだ分だけ単結晶が晶出され単結晶が育成される。従って、単結晶を大径化するには、原料棒の送り込み速度を単結晶の育成速度よりも相対的に速くする方法が用いられる。
【0012】
ところで、上記FZ法においては、溶融帯は溶融帯自体の表面張力と重力のバランスにより保持されており、表面張力が小さく、密度も大きい材料系においては溶融帯を保持することが難しい。
【0013】
従って、このような材料系を使用した場合において、上記のような方法で単結晶の大径化を行おうとすると、溶融帯を保持することが困難で、溶融帯の垂れが生じ、単結晶の大径化は困難である。
【0014】
また、上記FZ法においては、種結晶上に単結晶を育成するのが一般的であり、種結晶と原料棒を溶融部を介して接合し、上記溶融部を最初の溶融帯として上記のような方法で単結晶の製造を行う。このとき、前述のように上記種結晶及び原料棒が高融点材料であることから、加熱手段として使用される例えば赤外線ランプとしては高出力のものを使用することが望ましい。
【0015】
ところが、上記赤外線ランプとしては、通常、ランニングコストの安価なハロゲンランプが使用されており、大出力のハロゲンランプにおいてはランプのフィラメントが大きくなる傾向があり、その分、集光がブロードになり、集光部の加熱により形成される溶融帯が大きくなってしまう。すなわち、溶融帯の垂れが発生する可能性も高くなり、単結晶の大径化が困難となってしまう。
【0016】
従って、上述のように単結晶の大径化を行うためには、ランプとしてできるだけ小出力のものを使用し、集光度を高めることが好ましく、上記のような種結晶と原料棒の溶融部を介した接合は困難である。
【0017】
そこで、本発明は従来の実情に鑑みて提案されたものであり、FZ法における単結晶の大径化を可能とする単結晶の製造方法及び原料棒と種結晶の接合を容易とする単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために本発明者等が鋭意検討した結果、FZ法においてもCz法において単結晶への欠陥の混入を防止するべく実施されている肩部及び直胴部の形成を行えば、最終的には種結晶よりも大径となる肩部の上にそのままの径を有する直胴部が形成されることから、単結晶の大径化が可能であることを見い出した。そして、このようにして単結晶を製造すれば、FZ法の利点を生かした良質な単結晶が製造される。
【0019】
一般に、Cz法及びTSSG(Top−Seeded Solution Growth)法等における融液成長及び溶液成長の酸化物の単結晶育成では、固体を融かして(溶かして)から種結晶を用いて融液(溶液)の温度を下げながら単結晶を晶出させて単結晶を育成している。
【0020】
近年、上記のような融液成長の分野で、例えば木村茂行により、融液成長による単結晶育成において融液の物性が単結晶育成の制御の重要な因子となっていることが指摘されている。(結晶成長国内会議 特別講演 1992年 7月)
すなわち、融液の結晶成長においては、融液の粘性及び表面張力を下げることが、融液を均一に攪拌できることにつながり、液体である融液から固体である結晶に均一に物質を供給することを可能とするので望ましいとされている。
【0021】
そして、例えば酸化物の融液では原子が規則正しく並んで結合した固体とは異なり、原子はより自由度をもっていると考えられるが、液体表面では酸素原子を介して他の原子と架橋(ダングルボンド)を形成しており、この架橋の結合の力が表面張力に反映していると考えられる。すなわち、酸素原子を介した架橋の力が大きいほど、表面張力は大きいことになる。
【0022】
従って、岡邦彦,伊藤利充 低酸素分圧下における銅酸化物単結晶育成.日本結晶成長学会紙,vol.21(1994) No.3 113に示されるように、酸素の少ない雰囲気、還元雰囲気ほど、この酸素原子による架橋を断ち切ることが可能となり、表面張力を下げることが可能となる。言い換えれば、融液の結晶成長においては雰囲気中の酸素濃度を変化させることにより融液の表面張力を変化させることが可能となると言える。
【0023】
そこで本発明者等は鋭意検討を進めた結果、FZ法においても、雰囲気ガス中の酸素濃度を変化させることにより溶融帯の表面張力を変化させることが可能で、酸素濃度を高くすることにより溶融帯の表面張力を高めれば、溶融帯の垂れが起こり難くなることから上述のような肩部が容易に形成されることを見い出した。
【0024】
また、FZ法においては溶融帯の量がCz法と比較して非常に少ないことから表面張力を上げることにより攪拌効果が弱くなっても不都合は生じないことも見い出した。
【0025】
さらに、本発明者等は鋭意検討の結果、雰囲気ガス中の酸素濃度、言い換えれば雰囲気ガス中の酸素分圧が原料棒及び種結晶の融点を左右することを見い出した。すなわち、相平衡の熱力学によるClausius−Claperonの式によれば、液相と固相が共存する系において、圧力をp、温度をT、潜熱をL、液体の体積をV 、固体の体積をV とすると、これらの関係は下記式1のように表される。
【0026】
dp/dT=L/T/(V −V )・・・(式1)
また、上記式1から下記式2が導き出される。
【0027】
dT=T/L・(V −V )・dp・・・(式2)
従って、雰囲気ガス中の酸素分圧を低くし、dp<0とし、液体の体積が固体の体積よりも大きい材料系を使用している場合、言い換えれば固体よりも液体の密度が小さい場合、すなわち(V −V )>0であると、dT<0となり、この材料系においては酸素分圧を下げると融点が下がることがわかる。また、逆に酸素分圧を上げると融点が上がることになる。水と氷の場合は逆となるが、多くの系においては融点近傍では固体よりも液体の方が密度が小さく、上記のように雰囲気ガス中の酸素分圧を低くすると融点が下がる。
【0028】
すなわち本発明は、所定の雰囲気ガス中において原料棒及び/又は種結晶の先端部に溶融部を形成し、原料棒と種結晶を接合してこれらの間に溶融帯を形成し、この溶融帯を回転させながら前記原料棒内において相対的に移動させることにより順次単結晶化してFz法により単結晶を製造するに際し、原料棒と種結晶の接合後、雰囲気ガス中の酸素濃度を上げて、種単結晶育成方向において次第に大径とされ、種結晶よりも大径とされる肩部を形成するようにしたものである
また、本発明に係る単結晶の製造方法は、肩部を形成した後、雰囲気ガス中の酸素濃度を下げて円筒部の直胴部を形成する
【0029】
本発明に係る単結晶の製造方法は、原料棒と種結晶の接合後から肩部形成までの雰囲気ガス中の酸素濃度をCoとし、肩部形成時の雰囲気ガス中の酸素濃度をCoとし、直胴部形成時の雰囲気ガス中の酸素濃度をCoとした場合に、これらがCo=CoCo <Co 、Co <Co の関係を有することが好ましく、肩部形成時の酸素濃度を高めることにより溶融帯の垂れが起こり難くなることから容易に肩部を形成することができる
されることとなる。
【0030】
また、雰囲気ガス中の酸素濃度Co,Co,Coが、1<Co /Co ≦12.5、1<Co /Co ≦12.5の関係を有することが好ましい。
なお、上記のような酸素濃度の比が1以下であると、肩部形成時の溶融帯の表面張力を高める効果が弱く、上記のような酸素濃度の比が12.5よりも大であると、肩部形成時の融点が高くなりすぎて単結晶の製造が困難となる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施の形態について述べる。先ず、本発明の単結晶の製造方法により単結晶の製造を行うのに使用する単結晶製造装置について述べる。
【0037】
上記単結晶製造装置は、図1に示すように、赤外線集光加熱型育成炉2内に配される原料棒1aと例えば種結晶1bが接する部分に、上記赤外線集光加熱型育成炉2内に配される赤外線ランプ3,4の赤外線を集光照射して溶融帯1cを形成し、上記原料棒1aを所定の速さで図中下方に送り出す上部シャフト5と上記種結晶1bを所定の速さで図中下方に引き下げる下部シャフト6により原料棒1a及び種結晶1bを移動させることにより溶融帯1cを原料棒1aの図中上方に相対的に移動させて、溶融帯1c下端部を順次単結晶化して連続的に単結晶を製造するものである。なお、上記単結晶製造装置においては、種結晶1bの代わりに原料棒を用いても良い。
【0038】
上記赤外線集光加熱型育成炉2は、楕円の一端部を切り欠いた略楕円形の断面の空洞部7a,7bをそれぞれ有する炉体2a,2bが、上記空洞部7a,7bを対向させるようにして突き合わされたものである。そして、上記赤外線集光加熱型育成炉2内には、断面が、2個の楕円の一方の焦点同士を重ねた形状、いわゆる双楕円形の空洞部7が形成され、上記空洞部7の中心は双楕円形の重ねた焦点となる。このとき、炉体2a,2bの空洞部7a,7bの壁面が反射鏡となされているため、空洞部7の壁面は双楕円面鏡となる。
【0039】
また、上記赤外線集光加熱型育成炉2にはその中央を貫通するように図中上下方向に延在する石英管8が設けられており、該石英管8内の図中上下方向には雰囲気ガス流入口9と雰囲気ガス排気口10が設けられている。そして、雰囲気ガスの充填された石英管8内において、原料棒1aは上部シャフト5、種結晶1bは下部シャフト6により保持され、双楕円形の空洞部7の中心、すなわち重ねた焦点上にこれらの接する部分が位置するように配されている。
【0040】
さらに、上記上部シャフト5には駆動装置11が接続され、原料棒1aを回転させながら図中下方に送り出すことが可能とされており、下部シャフト6にも駆動装置12が接続されて、種結晶1bを回転させながら図中下方に引き下げることが可能なようになされている。
【0041】
なお、上部シャフト5の先端部には図示しない例えば白金線のフックが設けられて原料棒1aを保持できるようになされ、下部シャフト6の先端部は図示しない例えばアルミナのチューブで芯出しされて種結晶1bを固定できるようになされているが、上部シャフト5の先端部も同様の構成としても構わない。
【0042】
そして、上記赤外線集光加熱型育成炉2の炉体2a,2bの空洞部7a,7bの他方の焦点、すなわち双楕円形の空洞部7の焦点にそれぞれ位置するように一対の赤外線ランプ3,4が配されている。
【0043】
従って、双楕円形の空洞部7の焦点に位置する一対の赤外線ランプ3,4から照射される赤外線は、空洞部7壁面の双楕円面鏡により反射されて、原料棒1aと種結晶1bの接する部分にあたる空洞部7の重ねた焦点に位置する部分に必ず集光され、この部分が加熱されて溶融帯1cとなる。なお、上記単結晶製造装置においては、赤外線ランプ3,4として、ハロゲンランプを使用しているが、キセノンランプの使用も可能である。
【0044】
また、上記赤外線集光加熱型育成炉2は、炉体2a,2bを図中左右方向に移動させて開閉扉として炉の開閉を可能とし、この開閉部から原料棒の取り付け,取り外し、単結晶の取り出しを可能としている。
【0045】
なお、上記単結晶製造装置においては、赤外線集光加熱型育成炉2内部を観察できるように、該赤外線集光加熱型育成炉2に図示しない観察用の窓が設けられており、さらにこの観察用の窓に向けてレンズ13,フィルター14を介してビデオカメラ15が設けられている。
【0046】
従って、上記単結晶製造装置により本発明の単結晶製造方法に従って単結晶の製造を行う場合には、先ず、所定の雰囲気ガスの充填された石英管8内において、上部シャフト5に原料棒を保持させるとともに、下部シャフト6に種結晶を保持させる。
【0047】
次に、上部シャフト5,下部シャフト6に保持された原料棒及び種結晶を逆方向に回転させ、例えば上部シャフト5に保持される原料棒の先端部に、一対の赤外線ランプ3,4の赤外線を空洞部7の双楕円面鏡により反射させて集光して照射し、上記先端部を加熱して溶融させ、メルトを形成する。
【0048】
続いて、上部シャフト5に保持される原料棒と下部シャフト6に保持される種結晶をメルトを介して接合させる。
【0049】
次に、上記石英管8内に所定の酸素濃度Co の雰囲気ガスを充填し、この中で上記メルトを最初の溶融帯とし、上部シャフト5及び下部シャフト6により上記接合された原料棒と種結晶を所定の速さで逆方向に回転させながら図中下方に引き下げて移動させることにより上記溶融帯1cを上部シャフト5側の原料棒1aの図中上方に相対的に移動させ、溶融帯1cの下端部を順次単結晶化する。
【0050】
そして、上記石英管8内の雰囲気ガスを所定の酸素濃度Co の雰囲気ガスに変える。このとき、上記酸素濃度Co ,Co 間には、Co ≦Co の関係が成り立ち、1≦Co /Co ≦12.5であることが好ましく、1≦Co /Co ≦7.5であることがより好ましい。
【0051】
このように雰囲気ガス中の酸素濃度を上げると、溶融帯1cの表面張力が高まり溶融帯1cの垂れが起こり難くなることから、原料棒の送り込み速度を徐々に速くし結晶径を徐々に大径とすることが可能であり、単結晶育成方向において次第に大径とされ、最終的には種結晶よりも大径とされる肩部を形成することが可能である。
【0052】
なお、上記のように雰囲気ガス中の酸素濃度を上げると、融点が高くなるため、溶融帯1cが固化してくる可能性がある。そこで、上記のように酸素濃度を上げる際には、赤外線ランプ3,4の出力も上げて溶融帯の固化を防止するようにすることが好ましい。
【0053】
また、雰囲気ガス中の酸素濃度Co ,Co の比、Co /Co が1未満であると、肩部形成時の溶融帯の表面張力を高める効果が弱く、上記のような酸素濃度の比が12.5よりも大であると、肩部形成時の融点が高くなりすぎて単結晶の製造が困難となる。
【0054】
さらに、上記のように肩部を形成する前の工程においては、原料棒1aの送り込み速度を遅くし、径の細い単結晶を製造し、いわゆるネッキング部を形成することが好ましく、上記のようなネッキング部を形成した方が肩部の形成が容易となる。
【0055】
また、これに伴い、順次単結晶化される原料棒1aとしては、小径の原料棒と大径の原料棒が徐々に大径となされる原料棒構成材料よりなる接続部を介して接続される原料棒を使用することが好ましく、小径の原料棒により上記ネッキング部を形成し、接続部により肩部を形成するようにすれば、上記のようなネッキング部及び肩部の形成が容易となる。
【0056】
次に、上記石英管8内の雰囲気ガス中の酸素濃度を徐々に下げ、所定の酸素濃度Co まで下げるとともに赤外線ランプ3,4の出力も徐々に下げ、上記肩部の上に肩部の最上部と同等の直径の直胴部を形成する。このとき、上記酸素濃度Co ,Co 間には、Co ≦Co の関係が成り立ち、1≦Co /Co ≦12.5であることが好ましく、1≦Co /Co ≦7.5であることがより好ましい。
【0057】
また、雰囲気ガス中の酸素濃度Co ,Co の比、Co /Co が1未満であると、肩部形成時の溶融帯の表面張力を高める効果が弱く、上記のような酸素濃度の比が12.5よりも大であると、肩部形成時の融点が高くなりすぎて単結晶の製造が困難となる。
【0058】
そして、連続的に単結晶を製造し、最終的には上部シャフト5側の原料棒略全体を単結晶化すれば、種結晶よりも大径となる肩部の上にこれと同径の直胴部が形成されることから大型の単結晶が製造され、単結晶の大型化がなされる。また、このようにして単結晶を製造すればFZ法の利点を生かした良質な単結晶が製造される。
【0059】
さらに、上記のようにして本発明の単結晶の製造方法に従って単結晶を製造する際に、原料棒及び種結晶を融点近傍における液体の密度が固体の密度よりも小さい材料系により形成し、原料棒と種結晶の接合時の雰囲気ガス中の酸素濃度(酸素分圧)を後工程における雰囲気ガス中の酸素濃度(酸素分圧)よりも低くすれば、原料棒と種結晶の接合時のこれらの融点が低くなり、これらの接合が容易となる。また、上記のように接合時の融点を低くすれば、加熱手段である赤外線ランプとしてさほど高出力のものを必要とせず、集光度の高いものを使用できることから、単結晶の大径化の点においても好ましい。
【0060】
なお、このように原料棒と種結晶を接合する際に酸素濃度を低くし、その後工程ではそれ以上とする場合には、酸素濃度を上げると融点が高くなることから酸素濃度を上げた直後において溶融帯が安定するまで原料棒及び種結晶の回転方向を同方向とした方が良い。
【0061】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例について実験結果に基づいて説明する。なお、ここでは、YVO 単結晶を製造する例について述べる。
【0062】
原料棒の作製
先ず、原料棒の作製を行った。最初に、純度4Nの酸化イットリウム試薬(Y )の灼熱減量を空気中で1000℃×10時間で加熱処理して求め、純度4Nの酸化バナジウム試薬(V )の灼熱減量を空気中で500℃×10時間で加熱処理して求めた。そして、上記Y 及びV を1:1のモル比となるように秤量した。
【0063】
次に、これらを分散媒としてエタノールを用いて湿式混合して乾燥させて原料粉を作製した。そして、上記原料粉を直径が5〜8mm程度の袋状の生ゴム(ラバーチューブ)内に充填し、これに静水圧3kg/cm の圧力をかけて成形して原料棒とした。次に、この原料棒を空気中で1300℃で6〜10時間程度焼成し、原料棒サンプル1とした。得られた原料棒サンプル1は、直径が約5mm程度で長さは50〜100mm程度であった。
【0064】
また、上記原料粉を直径が5〜8mm程度の小径部と直径が10mm程度の大径部が長さ5〜10mmの円錐状の接続部を介して接続された袋状の生ゴム(ラバーチューブ)内に充填し、これに静水圧3kg/cm の圧力をかけて成形して原料棒とした。次に、この原料棒を空気中で1300℃で6〜10時間程度焼成し、原料棒サンプル2とした。得られた原料棒サンプル2は、小径部の直径が約5mm程度で大径部の直径が8〜9mm程度で、長さが100mm程度であった。
【0065】
実験例1
本実験例においては、雰囲気ガス中の酸素濃度と原料棒及び種結晶の融点の関係を調査した。すなわち、本実験例においては、雰囲気ガス中の酸素濃度を変化させ、それぞれの条件下で原料棒を赤外線ランプにより加熱し、原料棒が融け出す際の赤外線ランプの出力を調査し、雰囲気ガス中の酸素濃度と赤外線ランプの出力の関係を調査した。
【0066】
前述の構成の単結晶製造装置の赤外線ランプとして100V−1.5kWのランプを使用することとし、種結晶として〈001〉方位のYVO 単結晶の3〜4mm角で長さ20〜30mmのものを使用し、原料棒として上記原料棒サンプル1のうちの長さ50mm程度のものを使用した。
【0067】
なお、赤外線ランプとして1.5kWのものと3.5kWのものを用意し、これらの15V〜20Vの電圧に相当する出力の時の集光領域を紙にあぶりだして確認したところ、1.5kWのものは直径5mmの領域で集光され、3.5kWのものは直径10mmの領域で集光された。集光領域が10mmではメルトの垂れが生じる可能性が高いことから集光領域が5mmの1.5kWのものを使用することとした。
【0068】
先ず、上記原料棒を単結晶製造装置の上部シャフトにフックにより保持させ、種結晶を下部シャフトにアルミナよりなるチューブで芯出しして保持させた。次に、前述の構成の単結晶製造装置の石英管内に所定の雰囲気ガスを充填させた。
【0069】
前述の構成の単結晶製造装置においては、排気装置が設けられていないことから、石英管内の空気を完全に排気して所定の雰囲気ガスに置換することは不可能である。そこで、雰囲気ガス流入口と雰囲気ガス流出口を通じて所定の雰囲気ガスを終夜流通させることにより、置換を行い、充填させることとした。
【0070】
上記雰囲気ガスとしては、窒素ガスを毎分2.5リットルと酸素ガスを毎分0〜0.6リットルの範囲で変化させた酸素濃度0〜20%のガスを使用した。このとき、石英管内は十分に時間をかけて雰囲気ガスにより置換されているため、上記のように流量の割合で酸素濃度を表すものとした。
【0071】
続いて、上記原料棒を6.5rpmの回転速度で回転させ、上記種結晶を6rpmの回転速度で反対方向に回転させ、原料棒の先端に上記赤外線ランプの光を照射した。
【0072】
赤外線ランプの出力制御は電圧制御により行うものとし、1つのプログラム計で2つの赤外線ランプの出力制御を行うものとした。そして、赤外線ランプの出力を原料棒が融け始めると思われる電圧近傍までプログラムを使用して自動的に上げ、次に原料棒が融け始めるまで手動で上げていくこととし、このときの赤外線ランプの出力を調査するとともに溶融帯の固液界面の幅が4mmになったときの赤外線ランプの出力も調査した。酸素濃度と赤外線ランプの出力の関係を表1に示し、原料棒が融け始めた時(融点)の赤外線ランプの出力をPw 、固液界面の幅が4mmになったときの赤外線ランプの出力をPw として示す。また、酸素濃度と赤外線ランプの出力Pw の関係は図2にも示す。
【0073】
【表1】
Figure 0003557734
【0074】
表1及び図2の結果から雰囲気ガス中の酸素濃度が低いほど、原料棒が溶融するとき、溶融帯の固液界面の幅が4mmになったときの赤外線ランプの出力が小さいことがわかる。
【0075】
また、上記赤外線ランプの出力と集光部における温度の関係を図3に示す。図3から赤外線ランプの出力が大きいほど集光部の温度が高くなることがわかる。
【0076】
従って、これらのことから、雰囲気ガス中の酸素濃度を低くすると原料棒の融点が低くなることが確認され、原料棒と種結晶の接合時の雰囲気ガス中の酸素濃度を低くすれば、これらの接合が容易となることもわかった。さらには、接合時の雰囲気ガス中の酸素濃度を低くすることで、このときの赤外線ランプの出力を小さく抑えることが可能であることから、赤外線ランプとしてさほど出力の大きなものは必要なく、単結晶の大径化の点からも好ましいことがわかった。
【0077】
実験例2
本実験例においては、YVO 単結晶の製造例を示す。先ず、前述の構成の単結晶製造装置の石英管内に前述の直径5mm程度の小径部の長さが5〜10mm程度で直径8〜9mm程度の大径部の長さが50mm程度の原料棒サンプル2を上部シャフトの白金線のフックにより保持し、〈100〉方位のYVO 単結晶の3〜4mm角で長さが20〜30mmの種結晶を下部シャフトのアルミナのチューブに芯出しして保持した。
【0078】
そして、石英管内に窒素ガスを毎分2.5リットル近傍で終夜流通させ、石英管内を窒素ガスにより置換し、充填した。
【0079】
次に、原料棒を回転速度6.5rpmで回転させるとともに種結晶を回転速度6rpmで逆方向に回転させ、原料棒の先端部に赤外線ランプの光を集光照射した。なお、上記赤外線ランプとしては100V−1.5kWの赤外線ランプを使用することとし、ランプの出力制御は電圧により行うものとし、1つのプログラム計で2つの赤外線ランプの制御を行うことにした。
【0080】
そして、上記プログラム計により、赤外線ランプの電圧を原料棒が融け始めると思われる出力に対応する電圧に近い60V(1.3kW)まで2時間程度かけて自動的に上げて集光部分の温度を昇温させ、次に手動操作により電圧を上げ、原料棒先端部を溶融させてメルトを形成し、これを溶融帯として介して原料棒と種結晶を接合した。このときの電圧は64V(1.4kW)前後であった。
【0081】
なお、上記のように原料棒と種結晶を接合する際、特願平6−16853号明細書に記載されるように、原料棒と種結晶の接する部分を、酸素を含み、バナジウムとイットリウムの組成比をV/Yとすると、上記V/Yが0.8≦V/Y≦1.25である組成を有し、波長0.4μm以上,1.3μm以下の帯域に吸収を有する黒色物質としても良い。
【0082】
次に、原料棒と種結晶を同方向に回転速度6rpmで回転させ、雰囲気ガス中の酸素濃度Co を0.8%とした。このように酸素濃度を上げると、溶融帯の融点が上がり一部が固化して溶融帯が不安定となる可能性があるため、上記のように原料棒と種結晶を同方向に回転させることとした。続いて、上記溶融帯の固液界面の幅が4mm程度となるまで赤外線ランプの電圧を上げた。このときの電圧は68〜70V(1.5〜1.7kW)程度であった。
【0083】
次に、原料棒を回転速度を6.5rpmとして回転させ、種結晶を回転速度を6rpmとして反対方向に回転させながら原料棒を下部シャフト側に送り出し、溶融帯を原料棒中で相対的に移動させ、溶融帯下端部を順次単結晶化して単結晶を製造した。ただし、このとき、単結晶の育成速度を5.0mm/時とし、原料棒の送り出し速度を3.9mm/時から3.4mm/時まで徐々に遅くして単結晶の径を細くし、いわゆるネッキング部を長さ5〜10mm程度に形成した。
【0084】
次に、石英管内の雰囲気ガス中の酸素濃度を上げながら赤外線ランプの出力も上げて原料棒の送り出し速度を速め、結晶径を徐々に大径とし、単結晶育成方向において次第に大径とされ、最終的には種結晶よりも大径とされる肩部を形成した。単に雰囲気ガス中の酸素濃度を上げると、溶融帯の融点が上がり一部が固化して溶融帯が不安定となる可能性があるため、溶融帯の固液界面の幅を一定に保てるように赤外線ランプの電圧も上げた。酸素濃度は肩部形成工程の8割程度までかけて徐々に上昇させるものとし、最終的な酸素濃度Co は10%とした。すなわち、Co ≦Co であり、Co /Co =12.5である。また、原料棒の送り出し速度は7.5mm/時まで上げた。
【0085】
次に、肩部形成工程の残り2割において、溶融帯の固液界面の幅が一定となるようにランプの電圧を下げながら酸素濃度も除々に下げ、酸素濃度Co が0.8%となるように下げた。そして原料棒の送り込み速度を7.5mm/時とし、上記肩部の上に肩部の最上部と同等の直径の直胴部を形成した。このとき、上記酸素濃度Co ,Co 間には、Co ≦Co の関係が成り立ち、Co /Co =12.5である。得られた直胴部は直径9mm程度で長さが30〜50mm程度のものであった。
【0086】
本実験例においては、酸素濃度Co ,Co を0.8%としているが、これは酸素濃度を比較的低くして融点を下げるためと、バナジウムの蒸気圧が高いのでその蒸散を抑えるためである。
【0087】
そして、このようにして得られた単結晶においては、最終的には種結晶よりも大径となる肩部の上に直胴部を形成することから、単結晶の大径化がなされるとともに、FZ法の利点を生かした良質な特性を有することが確認された。
【0088】
実験例3
この他、本発明者等は原料棒として原料棒サンプル1を使用して酸素濃度を0.8%の一定に保って単結晶の製造を行ってみたが、メルトが垂れないような原料棒の送り出し速度は4mm/時程度であり、肩部の形成は難しいことが確認された。また、得られた単結晶の直径も4〜6mm程度であり、単結晶の大型化には対応困難であることも確認された。
【0089】
さらに、原料棒の径が大きいことから原料棒への赤外線ランプの照射密度が低くなり、メルトの形成が難しく、赤外線ランプの電圧が80V程度となってもメルトが形成されず、84Vと高電圧下で突然メルトが形成されて垂れる等のトラブルが発生した。
【0090】
これらのことから、酸素濃度を変化させずに肩部の形成を行う、或いは原料棒と種結晶の接合を行うのは困難であることが確認された。
【0091】
実験例4
また、本発明者等は、肩部形成時に溶融帯が垂れないための酸素濃度の範囲についても調査した。その結果、3%以上、12%以下、好ましくは6%以下であることがわかった。すなわち、雰囲気ガス中の酸素濃度Co ,Co ,Co が、1≦Co /Co ≦12.5、1≦Co /Co ≦12.5、好ましくは1≦Co /Co ≦7.5、1≦Co /Co ≦7.5であれば、溶融帯の垂れが起こらないことが確認された。
【0092】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明の単結晶の製造方法においては、FZ法により単結晶の製造を行うに際し、最終的には種結晶よりも大径となる肩部の上にそのまま直胴部を形成することから、単結晶の大径化がなされる。そして、このようにして単結晶を製造すれば、FZ法の利点を生かした良質な単結晶が製造される。
【0093】
また、上記製造方法において、肩部形成時の雰囲気ガス中の酸素濃度を高めれば、溶融帯の表面張力が高くなり、溶融帯の垂れが起こり難くなり、肩部が容易に形成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】単結晶製造装置の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】酸素濃度と赤外線ランプの出力Pw の関係を示す特性図である。
【図3】赤外線ランプの出力と集光部における温度の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1a 原料棒
1b 種結晶
1c 溶融帯
2 赤外線集光加熱型育成炉
3,4 赤外線ランプ
5 上部シャフト
6 下部シャフト
7 空洞部

Claims (4)

  1. 所定の雰囲気ガス中において原料棒及び/又は種結晶の先端部に溶融部を形成し、原料棒と種結晶を接合してこれらの間に溶融帯を形成し、この溶融帯を回転させながら前記原料棒内において相対的に移動させることにより順次単結晶化して単結晶を製造する単結晶の製造方法において、
    原料棒と種結晶の接合後、雰囲気ガス中の酸素濃度を上げて、種単結晶育成方向において次第に大径とされ、種結晶よりも大径とされる肩部を形成することを特徴とする単結晶の製造方法。
  2. 前記肩部を形成した後、雰囲気ガス中の酸素濃度を下げて円筒部の直胴部を形成することを特徴とする請求項1記載の単結晶の製造方法。
  3. 原料棒と種結晶の接合後から肩部形成までの雰囲気ガス中の酸素濃度をCoとし、肩部形成時の雰囲気ガス中の酸素濃度をCoとし、直胴部形成時の雰囲気ガス中の酸素濃度をCoとした場合に、これらがCo=CoCo <Co 、Co <Co の関係を有することを特徴とする請求項1記載の単結晶の製造方法。
  4. 雰囲気ガス中の酸素濃度Co,Co,Coが、1<Co /Co ≦12.5、1<Co /Co ≦12.5の関係を有することを特徴とする請求項2記載の単結晶の製造方法。
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