JP3562010B2 - 油脂含有水溶性組成物およびこれを含有する飲食品 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れた油脂含有水溶性組成物およびこれを含有する飲食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
飲食品、特に飲料では、油脂をその飲料に添加配合する場合、様々な添加物を配合し、熱殺菌処理をするため、耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れ、かつ、長期間保存してもクリーミングを生じたり、油脂が分離することなく、均一な乳化もしくは可溶化状態を保つことが望まれている。
このような飲食品を開発するために、これまでに種々の検討がなされてきた。
例えば、ジェランガムを用いてゲル化する方法(特開昭62−125850号公報)、ポリアミンを含むカプセル壁を有するマイクロカプセルを用いる方法(特開昭63−119845号公報)、乳清蛋白質の加水分解物を含有させる方法(特開平2−257838号公報)などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ジェランガムを用いてゲル化する方法は耐酸性に問題があり、ポリアミンを含むカプセル壁を有するマイクロカプセルを用いる方法は耐熱性に問題があり、乳清蛋白質の加水分解物を含有させる方法は耐塩性に問題がある。
このように、いずれも耐酸性、耐塩性、耐熱性ともに優れ、これらの条件下で、安定な乳化もしくは可溶化状態を保つことのできるものはなく、十分に満足し得るものとはいえない。
そのため、耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れ、かつ、長期間保存しても、クリーミングを生じたり、油脂が分離しないで均一な乳化もしくは可溶化状態を保つことができ、種々の食品に広く適応できる油脂含有水溶性組成物を調製することが課題となっている。
本発明の目的は、耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れた油脂含有水溶性組成物を提供することであり、この組成物を配合することにより、耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れ、かつ、長期間保存しても、クリーミングを生じたり、油脂が分離しないで均一な乳化もしくは可溶化状態を保つことができる油脂を含有した飲食品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れた油脂含有水溶性組成物を提供することを目的として鋭意研究した結果、特定の乳化剤を用いて油脂を乳化もしくは可溶化させれば、耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れ、この組成物を配合した飲食品は、長期間保存しても、クリーミングを生じたり、油脂が分離しないで均一な乳化もしくは可溶化状態を保つことができることを見い出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1は重合度10以上のポリグリセリンと炭素数8〜18の脂肪酸とのモノエステルの中から選ばれる少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖と脂肪酸とのモノエステルを90%以上含有するショ糖脂肪酸エステル、および油脂と残部が水とからなり、乳化もしくは可溶化状態であることを特徴とする油脂含有水溶性組成物であり、本発明の第2は前記の油脂含有水溶性組成物を含有する飲食品に関するものである。
【0005】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる油脂はいずれの油脂も使用でき、一般に食用油である動物、植物、微生物を原料とする油脂または合成油である。例えば、豚脂、牛脂、鶏油、鯨油、マグロ油、イワシ油、サバ油、サンマ油、カツオ油、ニシン油、肝油、大豆油、綿実油、サフラワー油、米油、コーン油、ナタネ油、パーム油、シソ油、エゴマ油、カカオ脂、落花生油、ヤシ油などおよび中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの合成トリグリセリドなどを配合した油脂であって、これらを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
本発明における油脂の配合量は、通常0.0005〜70重量%、好ましくは0.001〜60重量%、より好ましくは0.003〜50重量%となるように配合するのが適当である。
油脂の配合量が0.0005重量%以上であれば、実用的な価値を有する油脂含有水溶性組成物を得ることができ、70重量%以下であれば、容易に油脂を安定に乳化もしくは可溶化させることができる。
【0006】
本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、重合度10以上のポリグリセリンと炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノール酸とのモノエステルの中から選ばれる少なくとも1種の化合物を使用する。
炭素数8〜18の脂肪酸の範囲以外の場合は乳化が不安定になる。
本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、通常0.00003〜20重量%、好ましくは0.00005〜15重量%、より好ましくは0.0001〜10重量%である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が0.00003重量%以上であれば、容易に油脂を安定に乳化もしくは可溶化させることができ、20重量%以下であれば、実用的な価値を有する油脂含有水溶性組成物を得ることができる。
【0007】
本発明に用いるショ糖脂肪酸エステルとしては、通常は牛脂硬化脂肪酸等の炭素数12〜18の飽和脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の中から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸とショ糖とのモノエステルを90%以上含有する化合物を使用する。市販品としては、例えば、DKエステルSS(95%モノエステル:第一工業製薬(株)製)がある。
本発明のショ糖脂肪酸エステルの配合量は、通常0.00003〜20重量%、好ましくは0.00005〜15重量%、より好ましくは0.0001〜10重量%である。
ショ糖脂肪酸エステルの配合量が0.00003重量%以上であれば、容易に油脂を安定に乳化もしくは可溶化させることができ、20重量%以下であれば、実用的な価値を有する油脂含有水溶性組成物を得ることができる。
【0008】
本発明では、上記の界面活性剤にその他の界面活性剤を混合して使用することができる。
これらの界面活性剤としては例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびレシチンや天然乳化剤であるサポニン、ステロール、コール酸、デソキシコール酸、ユッカ抽出物などがある。
【0009】
さらに、本発明に安定剤を添加することができる。
本発明に用いる安定剤として例えば、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガムなどやプロピレングリコール、グリセリンや糖アルコール、例えば、マルチトール、還元水あめ、ラクチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどの多価アルコールを単独あるいは2種以上混合することができる。
【0010】
本発明の油脂含有水溶性組成物の乳化もしくは可溶化安定性を高めるために、コロイドミル、高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、ナノマイザーや超音波乳化機などの均質化処理機を使用することができる。
【0011】
さらに、本発明の油脂含有水溶性組成物は、60〜100℃で殺菌処理または必要に応じて100〜150℃の高温殺菌または滅菌処理を行うことができる。
このようにして得られた油脂含有水溶性組成物は、長期間保存しても、クリーミングを生じたり、油脂が分離することなく、均一な乳化もしくは可溶化状態を保つことができる。
【0012】
本発明の目的は、耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れ、かつ、長期間保存しても、クリーミングを生じたり、油脂が分離しないで均一な乳化もしくは可溶化状態を保つことができる油脂を含有した飲食品を提供することであり、各種飲食品の製造に際して本発明の油脂含有水溶性組成物を添加配合することによって達成できる。
上記のようにして得た油脂含有水溶性組成物はそのまま摂取したり、あるいは主に、スポーツ飲料、炭酸飲料、栄養飲料などの飲料やパン、めん、菓子類、乳肉製品、調味料などの食品に油脂を添加するための配合原料として使用することができ、その範囲は、特に制限はなく、あらゆる種類の飲食品に適用することができる。
【0013】
本発明の油脂含有水溶性組成物を含有する食品としては、例えば、パン、ビスケット、キャンディ、ゼリ−などのパン・菓子類やヨ−グルト、ハムなどの乳肉加工食品や味噌、ソース、たれ、ドレッシングなどの調味料や豆腐、麺類などの加工食品やマ−ガリン、ファットスプレッド、ショ−トニングなどの油脂加工食品や粉末飲料、粉末ス−プなどの粉末食品などやカプセル状、タブレット状、粉末状、顆粒状などにした健康食品などを挙げることができる。
【0014】
本発明の油脂含有水溶性組成物を含有する飲料とする場合、食塩などのミネラル、酸味料、甘味料、アルコール、ビタミン、フレーバーおよび果汁の中から少なくとも1種を含む飲料、例えば、スポ−ツ飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、アルコ−ル飲料、ビタミン・ミネラル飲料などのほか、加工乳、豆乳および手術前または手術後などの栄養補給のための濃厚流動食などを挙げることができる。
【0015】
本発明の油脂含有水溶性組成物を飲料に用いた場合には、その飲料は長期間保存しても、クリーミングを生じたり、油脂が分離することなく、均一な乳化もしくは可溶化状態を保つことができる。
本発明の油脂含有水溶性組成物を含有する飲料は、60〜100℃で殺菌処理または必要に応じて100〜150℃高温殺菌または滅菌処理を行うことができる。
【0016】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
50ミリリットル容丸底遠心沈殿管にデカグリセリンモノカプリレート[商品名:SYグリスターMCA−750、阪本薬品工業(株)製]4g、モノエステルを95%含有するショ糖脂肪酸エステル[商品名:DKエステルSS、第一工業製薬(株)製]4g、耐酸性をみるためにクエン酸0.2g、耐塩性をみるためにクエン酸ナトリウム0.2gおよび水9.6gを入れ、完全に溶解させた。その溶解液に中鎖脂肪酸トリグリセリド[商品名:パナセート810、日本油脂(株)製]2gを入れ、プローブ型ソニケーター[型式:SONIFIER 250、BRANSON SONIC POWER COMPANY製]を使用して、1分間乳化処理を行い、均質な油脂含有水溶性組成物を得た。
【0017】
比較例1
実施例1のデカグリセリンモノカプリレートの代わりにヘキサグリセリンモノカプリレート[商品名:SYグリスターMCA−500、阪本薬品工業(株)製]を用いた以外は実施例1と全く同じ操作を行い油脂含有水溶性組成物を得た。
【0018】
比較例2
実施例1のモノエステルを95%含有するショ糖脂肪酸エステルの代わりにモノエステルを70%含有するショ糖脂肪酸エステル[商品名:DKエステルF−160、第一工業製薬(株)製]を用いた以外は実施例1と全く同じ操作を行い油脂含有水溶性組成物を得た。
【0019】
実施例2
3リットル容ステンレス製ビーカーにデカグリセリンモノステアレート[商品名:SYグリスターMS−750、阪本薬品工業(株)製]100g、モノエステルを95%含有するショ糖脂肪酸エステル[商品名:DKエステルSS、第一工業製薬(株)製]100g、耐酸性をみるために酢酸70g、耐塩性をみるために食塩30gおよび水260gを入れ、完全に溶解させた。その溶解液に大豆レシチン[商品名:日清レシチン、日清製油(株)製]40gおよびナタネ油1400gを混合した油相を徐々に混合・攪拌し、次いで、ホモジナイザー[型式:120L/H、三和機械(株)製]により均質化圧300kg/cm2、パス回数3回で均質化処理を行い、均質なマヨネーズ様の油脂含有水溶性組成物を得た。
【0020】
比較例3
実施例2のデカグリセリンモノステアレートの代わりにデカグリセリントリステアレート[商品名:SYグリスターTS−750、阪本薬品工業(株)製]を用いた以外は実施例2と全く同じ操作を行い油脂含有水溶性組成物を得た。
【0021】
比較例4
実施例2のモノエステルを95%含有するショ糖脂肪酸エステルの代わりにモノエステルを75%含有するショ糖脂肪酸エステル[商品名:リョートーシュガーエステルS−1670、三菱化成食品(株)製]を用いた以外は実施例2と全く同じ操作を行い油脂含有水溶性組成物を得た。
【0022】
実施例3
1リットル容ステンレス製ビーカーにデカグリセリンモノオレエート[商品名:サンソフトQ−17S、太陽化学(株)製]15g、モノエステルを95%含有するショ糖脂肪酸エステル[商品名:DKエステルSS、第一工業製薬(株)製]15g、耐酸性をみるためにアスコルビン酸2.5g、耐塩性みるためにアスコルビン酸ナトリウム7.5g、グリセリン[商品名:食添用グリセリン、日本油脂(株)製]150gおよび水90gを入れ、完全に溶解させた。その溶解液にモノグリセリン脂肪酸エステル[商品名:エマルジーMU、理研ビタミン(株)製]15g、レシチン[商品名:サンレシチンW−1、太陽化学(株)製]5g、および精製マグロ油[商品名:サンオメガDHA27、日本油脂(株)製]200gを混合した油相を徐々に混合・攪拌し、次いで、マイクロフルイダイザー[型式:M−110E/H、みずほ工業(株)製]により均質化圧1500kg/cm2、パス回数1回で均質化処理を行い、均質な油脂含有水溶性組成物を得た。
【0023】
比較例5
実施例3のデカグリセリンモノオレエート15gおよびモノエステルを95%含有するショ糖脂肪酸エステル15gの代わりにモノエステルを95%含有するショ糖脂肪酸エステル(DKエステルSS)30gのみを用いた以外は実施例3と全く同じ操作を行い油脂含有水溶性組成物を得た。
【0024】
比較例6
実施例3のデカグリセリンモノオレエート15gおよびモノエステルを95%含有するショ糖脂肪酸エステル(DKエステルSS)15gの代わりにデカグリセリンモノオレエート30gのみを用いた以外は実施例3と全く同じ操作を行い油脂含有水溶性組成物を得た。
【0025】
実施例1〜3の各油脂含有水溶性組成物を表1に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
比較例1〜6の各油脂含有水溶性組成物を表2に示した。
【0028】
【表2】
【0029】
実施例1〜3および比較例1〜6の各油脂含有水溶性組成物を20gを30ミリリットル容ガラス容器に取り、85℃で30分間加熱殺菌した後の乳化安定性を評価した。
また、これらの油脂含有水溶性組成物を15日間60℃恒温槽に保存した時の乳化安定性を評価した。
表3にその評価結果を示した。
【0030】
【表3】
【0031】
表3の結果より、実施例1では耐酸性としてクエン酸、耐塩性としてクエン酸ナトリウムを添加し、実施例2では耐酸性として酢酸、耐塩性として食塩を添加し、実施例3では耐酸性としてアスコルビン酸、耐塩性としてアスコルビン酸ナトリウムを添加したこれら油脂含有水溶性組成物は、85℃で30分間加熱殺菌しても明らかに乳化安定性が良好で、15日間60℃恒温槽に保存した時も分離せず、いずれも耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れ、飲食品の原料もしくは飲食品として使用できる。
実施例1〜3について平均粒径が0.3mμ以下で乳化が安定であり、比較例1〜4では乳化液が分離してしまい測定不能であり、比較例5〜6では平均粒径が1.0mμ以上で大きく乳化状態は安定せず、85℃で30分間加熱殺菌した後では乳化していたが、15日間60℃恒温槽に保存した時は分離した。
【0032】
実施例4
表4の組成で各材料を配合し、攪拌してソースを得た。
このソースの製造直後および10℃に3ヶ月保存した後、乳化安定性を評価したところ、油相の分離はまったく認められず、乳化は安定であった。
【0033】
【表4】
【0034】
比較例7
実施例4において、表2の配合材料中実施例2の油脂含有水溶性組成物を比較例3の油脂含有水溶性組成物に変えた以外は実施例4と同様にして、ソースを得た。
これらのソースの製造直後および10℃に3ヶ月保存した後、乳化安定性を評価したところ、いずれの場合でも油相の分離が認められ、乳化は不安定であり、製品として使用することはできないと判断した。
【0035】
実施例5
表5に示す組成の各材料で飲料を調製し、100ml容ビンに充填し、密封した。この飲料を95℃で15分間加熱殺菌し、飲料を得た。
このようにして得られた飲料を40℃で2ヶ月間保存した後、乳化安定性を評価したところ、油相の分離はまったく認められず、乳化は安定であった。
【0036】
【表5】
【0037】
比較例8
実施例5において、表5の配合材料中実施例3の油脂含有水溶性組成物を比較例6の油脂含有水溶性組成物に変えた以外は実施例5と同様にして飲料を得た。
これらの飲料を実施例5と同様に乳化安定性を評価したところ、いずれの場合でもクリーミングが生じ、乳化は不安定であり、製品として使用することはできなかった。
【0038】
【発明の効果】
本発明の油脂含有水溶性組成物は、耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れた乳化もしくは可溶化した油脂含有水溶性組成物であり、この油脂含有水溶性組成物を各種飲食品の製造に際して添加配合することにより、耐酸、耐塩、耐熱性に優れ、かつ、長期間保存しても、クリーミングを生じたり、油脂が分離しないで均一な乳化もしくは可溶化状態を保つことができる油脂を含有する飲食品を提供することができる。
Claims (2)
- 重合度10以上のポリグリセリンと炭素数8〜18の脂肪酸とのモノエステルの中から選ばれる少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖と脂肪酸とのモノエステルを90%以上含有するショ糖脂肪酸エステル、および油脂と残部が水とからなり、乳化または可溶化状態であることを特徴とする油脂含有水溶性組成物。
- 請求項1記載の油脂含有水溶性組成物を含有する飲食品。
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