JP3597681B2 - 原子炉用燃料スペーサ、その製造方法および燃料集合体 - Google Patents

原子炉用燃料スペーサ、その製造方法および燃料集合体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子炉用燃料スペーサ、その製造方法および燃料集合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
沸騰水型原子炉(BWR)においては、60本の燃料棒と1本の超太型ウォータロッドを集合させて高燃焼度ステップII燃料(高燃焼度8×8燃料)として使用している。燃料集合体は、例えば約4mの長さを有し、長手方向の7個所にスペーサを配置して燃料棒を所定の間隔で真直度保持を行っている。
【0003】
前記スペーサとしては、短尺チューブ形状をなし、その外周面の所定部位をプレス加工することにより内側に窪ませてストッパ部を形成した複数のセルを例えばレーザ溶接により一体化した集合物と、これらのセルの内側にそれぞれ取付けられ、前記ストッパ部と共同して前記燃料棒を保持するためのスプリング部材を備えた構造のものが知られている。
【0004】
前記各セルは、挿入保持される前記燃料棒の相対位置がずれないようにするために前記燃料棒を構成する被覆管と前記ウォータロッドと同材質のジルコニウム合金から作られている。このジルコニウム合金としては、主にジルカロイ−2が使用されているが、96重量%以上のジルコニウムを含む合金で、耐食性が良好な合金であることが不可欠である。前記ジルカロイ−2は、一般的に錫1.20〜1.70重量%、鉄0.07〜0.20重量%、クロム0.05〜0.15重量%、ニッケル0.03〜0.08重量%および残部がジルコニウムの組成を有する。
【0005】
一方、前記スプリング部材は弾性を有するインコネルから作られている。
しかしながら、プレス加工により前記ストッパ部が形成されたセルを複数有するスペーサを組み込んだ原子炉を長期間稼動すると、前記各セルのストッパ部から亀裂が発生するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しょうとする課題】
本発明は、原子炉に組み込んで長期間稼動してもセルのストッパ部からの亀裂発生を抑制ないし防止することが可能な原子炉用燃料スペーサおよびその製造方法を提供しようとするものである。
【0007】
本発明は、原子炉に組み込んで長期間稼動してもセルのストッパ部からの亀裂発生を抑制ないし防止することが可能な原子炉用燃料スペーサを備えた燃料集合体を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる原子炉用燃料スペーサは、短尺チューブ形状で、外周面の所定部位をプレス加工により内側に窪ませてストッパ部を形成したセルを複数有する原子炉用スペーサにおいて、
前記各セルは、ジルコニウム合金からなり、かつ前記スットパ部を含むセルは全て(0001)面が表面と平行に集合した再結晶化組織を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係わる原子炉用燃料スペーサの製造方法は、ジルコニウム合金からなる短尺チューブの外周面の所定部位にプレス加工を施し、内側に窪ませてストッパ部を形成したセルを複数有する原子炉用スペーサの製造方法において、
前記セルにプレス加工を施した後に再結晶化焼鈍を行って前記ストッパ部を含むセルを全て(0001)面が表面と平行に集合した再結晶化組織にすることを特徴とするものである。
【0010】
前記セルにプレス加工を施した後に再結晶化焼鈍を行う工程は、前記セル段階でも、前記複数のセルをレーザ溶接等により集合、一体化した状態で行ってもよい。
本発明に係わる燃料集合体は、前記原子炉用燃料スペーサと、このスペーサの各セルに保持された燃料棒とを具備したことを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる燃料集合体に組み込まれるスペーサを示す概略図、図2は図1のスペーサの要部断面図、図3は図2のIII −III 線に沿う断面図である。
【0012】
スペーサ1は、複数のセル2を有し、これらのセル2は例えば外周面を互いにレーザ溶接することより集合されている。
前記各セル2は、図2および図3に示すように短尺円形チューブ3の外周面の所定部位をプレス加工により内側に窪ませてストッパ部4が形成されている。ストッパ部4は、例えば前記円形チューブ3の円周方向に2つ、前記円形チューブ3の長さ方向に2つ、合計4つ形成されている。細長箱状のスプリング部材5は、隣接する2つのセル2の長さ方向にに亘って開口されたスリット部6を通して前記セル2の内側に配置されている。このスプリング部材5は、前記セル2内に挿入され、被覆管に核燃料ペレットを装荷した構造の燃料棒7を前記4つのストッパ部4と共同して保持するために前記ストッパ部4と前記セル2の中心軸に対して対称的に配置されている。
【0013】
前記各セル2は、ジルコニウム合金からなり、全て再結晶化組織を有する。
前記ジルコニウム合金は、96重量%以上のジルコニウムを含む合金であることが好ましい。このようなジルコニウム合金金としては、例えば錫1.20〜1.70重量%、鉄0.07〜0.20重量%、クロム0.05〜0.15重量%、ニッケル0.03〜0.08重量%および残部がジルコニウムの組成を有するジルカロイ−2またはジルカロイ−4、またはSn1〜2重量%,Fe0.20〜0.35重量%,Ni0.03〜0.16重量%および残部が実質的にジルコニウムからなり、Fe/Niの比が1.88.0の組成のものを用いることが好ましい。
【0014】
前記ジルコニウム合金からなるセル2が全て再結晶化組織とは、(0001)の結晶面が前記ストッパ部3も含むどの箇所でも表面に平行もしくはほぼ平行に揃っていることを意味する。詳述すると、再結晶化組織とは前記セル2を構成する円形チューブ3の長手方向に垂直な面内では表面と垂直な方向から30°傾斜した方向が〔0001〕軸の最多方向であり、円形チューブ3の長手方向に平行な面内では表面と垂直な方向が〔0001〕軸の最多方向であることを意味する。
【0015】
前記スプリング部材5は、例えば弾性を有するインコネルから作られている。
このような構成のスペーサ1は、その構成材である複数セル2内に図2および図3に示すように被覆管に核燃料ペレットを装荷した燃料棒7をそれぞれ挿入すると、前記燃料棒7は前記セル2の内側に配置されたスプリング部材5と前記各セル2に形成されたストッパ部3により所定の間隔で真直度保持される。
【0016】
次に、本発明のスペーサの製造方法を説明する。
まず、ジルコニウム合金からなる短尺素管を作り、これを焼き入れした後、冷間圧延と焼鈍を繰り返して短尺円形チューブを作製する。つづいて、この短尺円形チューブの外周面の所定部位にプレス加工を施すことにより内側に窪ませてストッパ部を形成する。ひきつづき、前記セルをジルコニウム合金の再結晶化温度以上の温度で焼鈍を行った後にこれらセルにスプリング部材を取付けると共、レーザ溶接等によりセル同士を接合し、集合、一体化してスペーサを製造する。
【0017】
前記スペーサの製造において、プレス加工を施した複数の前記セルにスプリング部材を取付けると共、レーザ溶接等によりセル同士を接合し、集合、一体化した後、再結晶焼鈍を行ってよい。このような方法によれば、再結晶化焼鈍が前記セル同士のレーザ溶接による溶接部及び熱影響部の引張歪を減少させて耐食性を向上できる効果も兼ねるため、前述したようにセルの段階で再結晶焼鈍を行う場合に比べて焼鈍操作の有効性をより高めることが可能になる。
【0018】
なお、予め再結晶処理したセルをプレス加工してストッパ部を携帯した後、再度、再結晶処理してセルの全てを再結晶組織にしてもよい。
以上説明した本発明によれば、原子炉に組み込んで長期間稼動してもセルのストッパ部からの亀裂発生を抑制ないし防止することが可能な原子炉用燃料スペーサを提供できる。
【0019】
すなわち、本発明者らはプレス加工により前記ストッパ部が形成されたジルコニウム合金からなるセルを複数有するスペーサを組み込んだ原子炉を長期間稼動した時に、前記各セルのストッパ部から亀裂が発生する原因について種々検討したところ、前記セルのストッパ部に靭性の劣るジルコニウムの水素化物が表面に対して垂直方向、つまりセルの内部側、に徐々に集積し、その水素化物の生成箇所が亀裂の発端になることを究明した。ただし、前記ストッパ部以外のセル部分では水素化物がその表面に平行に並ぶために亀裂の発端にならないことを究明した。
【0020】
このような究明結果に基づいて、本発明者らはセルのストッパ部およびそれ以外の部分の結晶方位をX線回折により測定したところ、前記ストッパ部以外のセル部分では(0001)面が表面に平行もしくはほぼ平行に揃っているのに対し、前記ストッパ部では結晶方位が異なり、短尺チューブ状のセルの肉厚方向に(0001)面が揃っている、つまり(0001)面がチューブの半径方向に平行に揃っていることがわかった。これは、前記ストッパ部がプレス加工により加工組織になったことによるものと考えられる。
【0021】
本発明者らは、前記ストッパ部を有するセルをジルコニウム合金の再結晶温度以上の温度で焼鈍する等の処理を施して前記セルの全て再結晶組織にすることによって、前記ストッパ部を含む全てのセル部分を(0001)面が表面と平行に集合した組織にできることを見出した。
【0022】
このような本発明のストッパ部が形成された複数のセルを有するスペーサを組み込んだ燃料集合体を原子炉に装荷して稼動しても、前記セルに吸収された水素化物は前記ストッパ部を含む全てのセルにおいてその表面に平行に並び、亀裂の発端にならず、長期間の稼動で亀裂が発生するのを防止することができた。
【0023】
また、本発明によればジルコニウム合金からなる短尺チューブの外周面の所定部位にプレス加工を施し、内側に窪ませてストッパ部を形成した後、ジルコニウム合金の再結晶化温度以上の温度で焼鈍を行うことによって、セルの全てが再結晶化組織を有する複数のセルを備えたスペーサを製造できる。このスペーサに既述したように燃料集合体を組み込んで原子炉に装荷することによって、長期間の稼動で前記セルの亀裂発生を防止することができる。
【0024】
【実施例】
(実施例1)
まず、外径16mm、内径14.8mm、長さ30.5mmのジルカロイ−2からなる短尺円形チューブの両端付近を打ち抜いて円周方向にスリットを形成した後、前記スリットと対向する外周面にプレス加工を施し、内側に窪ませてストッパ部を形成することによりセルを作製した。つづいて、このセルを580℃で1時間の真空焼鈍を行った。焼鈍後のセルのストッパ部をX線測定を行ったところ、前記ストッパ部以外のセル部分と同様、表面に(0001)面が集合していることが確認された。
【0025】
次いで、前記セルを複数集合させると共に、隣接するセルのスリットにインコネルからなるスプリング部材をそれぞれ取付けた後、セル同士をレーザ溶接して一体化することにより前述した図1−図3に示す構造を有するスペーサを製造した。
【0026】
得られたスペーサを用いて燃料集合体を組み立て、原子炉中に装荷した。この原子炉を5年間稼動した後、内部のスペーサを調べた。その結果、スペーサの各セルには水素化物が表面に平行に集積し、初期の靭性が保持されていることが確認された。
【0027】
(比較例1)
実施例1と同様なジルカロイ−2からなる短尺円形チューブの両端付近を打ち抜いて円周方向にスリットを形成した後、前記スリットと対向する外周面にプレス加工を施し、内側に窪ませてストッパ部を形成することによりセルを作製した。このセルのストッパ部をX線測定を行ったところ、表面に垂直な方向に(0001)面が集合していることが確認された。
【0028】
次いで、前記セルを真空焼鈍せずに複数集合させると共に、隣接するセルのスリットにインコネルからなるスプリング部材をそれぞれ取付けた後、セル同士をレーザ溶接して一体化することによりスペーサを製造した。
【0029】
得られたスペーサを用いて燃料集合体を組み立て、原子炉中に装荷して稼動させた。その結果、1年間稼動後に内部のスペーサを調べたところ、スペーサの各セルには水素化物が表面に垂直な方向に集積し、何らかの応力が加わると割れの原因になる様相を呈していた。
【0030】
(実施例2)
まず、外径16mm、内径14.8mm、長さ30.5mmで、Fe0.25重量%、Ni0.1重量%,Cr0.1重量%,Sn1.3重量%および残部がジルコニウムからなる短尺円形チューブの両端付近を打ち抜いて円周方向にスリットを形成した後、前記スリットと対向する外周面にプレス加工を施し、内側に窪ませてストッパ部を形成することによりセルを作製した。つづいて、このセルを580℃で1時間の真空焼鈍を行った。焼鈍後のセルのストッパ部をX線測定を行ったところ、前記ストッパ部以外のセル部分と同様、表面に(0001)面が集合していることが確認された。
【0031】
次いで、前記セルを複数集合させると共に、隣接するセルのスリットにインコネルからなるスプリング部材をそれぞれ取付けた後、セル同士をレーザ溶接して一体化することにより前述した図1−図3に示す構造を有するスペーサを製造した。
【0032】
得られたスペーサを用いて燃料集合体を組み立て、原子炉中に装荷した。この原子炉を5年間稼動した後、内部のスペーサを調べた。その結果、スペーサの各セルには水素化物が表面に平行に集積し、初期の靭性が保持されていることが確認された。
【0033】
(実施例3)
まず、外径16mm、内径14.8mm、長さ30.5mmのジルカロイ−2からなる短尺円形チューブの両端付近を打ち抜いて円周方向にスリットを形成した後、前記スリットと対向する外周面にプレス加工を施し、内側に窪ませてストッパ部を形成することによりセルを作製した。つづいて、このセルを複数集合させると共に、隣接するセルのスリットにインコネルからなるスプリング部材をそれぞれ取付けた後、セル同士をレーザ溶接して一体化することにより前述した図1−図3に示す構造を有するスペーサを製造した。このスペーサを580℃で1時間の真空焼鈍を行った。焼鈍後のセルのストッパ部をX線測定を行ったところ、前記ストッパ部以外のセル部分と同様、表面に(0001)面が集合していることが確認された。
【0034】
得られたスペーサを用いて燃料集合体を組み立て、原子炉中に装荷した。この原子炉を5年間稼動した後、内部のスペーサを調べた。その結果、スペーサの各セルには水素化物が表面に平行に集積し、初期の靭性が保持されていることが確認された。
【0035】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、原子炉に組み込んで長期間稼動してもセルのストッパ部からの亀裂発生を抑制ないし防止することが可能な高信頼性、長寿命の原子炉用燃料スペーサおよびその製造方法を提供できる。
【0036】
本発明は、原子炉に組み込んで長期間稼動してもセルのストッパ部からの亀裂発生を抑制ないし防止することが可能な原子炉用燃料スペーサを備えた高信頼性、長寿命の燃料集合体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる燃料集合体に組み込まれるスペーサを示す概略図。
【図2】図1のスペーサの要部断面図。
【図3】図2のIII −III 線に沿う断面図。
【符号の説明】
1・・・ スペーサ、
2・・・ セル、
3短尺円形チューブ、
4・・・ ストッパ部、
5・・・ スプリング部材、
7・・・ 燃料棒。

Claims (3)

  1. 短尺チューブ形状で、外周面の所定部位をプレス加工により内側に窪ませてストッパ部を形成したセルを複数有する原子炉用スペーサにおいて、
    前記各セルは、ジルコニウム合金からなり、かつ前記スットパ部を含むセルは全て(0001)面が表面と平行に集合した再結晶化組織を有することを特徴とする原子炉用燃料スペーサ。
  2. ジルコニウム合金からなる短尺チューブの外周面の所定部位にプレス加工を施し、内側に窪ませてストッパ部を形成したセルを複数有する原子炉用スペーサの製造方法において、
    前記セルにプレス加工を施した後に再結晶化焼鈍を行って前記ストッパ部を含むセルを全て(0001)面が表面と平行に集合した再結晶化組織にすることを特徴とする原子炉用燃料スペーサの製造方法。
  3. 請求項1記載の原子炉用燃料スペーサと、このスペーサの各セルに保持された燃料棒とを具備したことを特徴とする燃料集合体。
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