JP3614545B2 - 異方性焼結磁石の製造方法 - Google Patents

異方性焼結磁石の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムモールドのキャビティーに充填された永久磁石粉末を、磁場印加により配向させるとともに、圧縮成形して永久磁石粉末の圧粉体を成形し、その後、該圧粉体を焼結することにより、異方性焼結磁石を製造する異方性焼結磁石の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
異方性焼結磁石としては、Baフェライト系、Srフェライト系などのフェライト磁石、R−Co系、R−Fe−B系(Rは、Yを含む希土類元素を表す。)などの希土類磁石が広く使用されている。これら異方性焼結磁石は、磁性を担っている各結晶粒の容易磁化方向をある一定の方向に揃えたものであり、そのため、結晶粒の容易磁化方向がばらばらの方向を向いている等方性磁石に比較して、その容易磁化方向に着磁されたときに、残留磁束密度の値が大きく、従って、最大エネルギー積を大きくすることができる。また、樹脂などで結合されたボンディッド磁石と比較して、非磁性物質の存在量が少ないため、残留磁束密度の値が大きくなり、最大エネルギー積を大きくできる。
【0003】
上述した異方性焼結磁石は、一般には、以下のように製造される。
【0004】
ほとんど単結晶になるまで粉砕された永久磁石粉末を、その永久磁石粉末に外部磁場を印加することにより、各々の永久磁石粉末の磁化容易軸を外部磁場の方向と平行な方向に揃えるとともに、圧力をかけて圧縮し成形する。その後、圧縮成形された圧粉体を、所定の条件で焼結して異方性焼結磁石を製造する。材料によっては、焼結後、熱処理を施す。
【0005】
最近、異方性焼結磁石の成形工程において、ゴムモールドを用いることにより、異方性焼結磁石の特性を飛躍的に向上させる技術が開発された(例えば、特開平4−363010号)。この方法は、ゴムモールドのキャビティーに永久磁石粉末を充填した後、パルス磁場発生コイルの中にゴムモールドを配置してパルス磁場を印加することにより、ゴムモールドのキャビティーに充填された永久磁石粉末を配向させるとともに、永久磁石粉末が充填されたゴムモールドにパルス磁場印加方向と平行方向に圧縮圧力を加えることにより、永久磁石粉末が配向された圧粉体の成形を行うものである。上記の圧縮圧力によるゴムモールドの変形で、ゴムモールド内の永久磁石粉末は疑似等方的に成形される。このように疑似等方的にゴムモールド内の永久磁石粉末を成形することにより、成形時の永久磁石粉末の配向が改善され、その結果、残留磁束密度を向上させることが可能となった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特開平4−363010号を用いて、寸法の大きな圧粉体、特に磁場を印加した方向に長い寸法を持つ圧粉体を成形し、該圧粉体を焼結した際には、1つの焼結体の上端部及び下端部の磁気特性が劣化することがあった。例えば、得られた焼結体を、磁場を印加した方向に垂直な面でいくつかに等分に切断し、各々の切断片の磁気特性を測定すると、成形の時に、蓋部や底部に近かった部位から切り出された磁石片の表面の磁束が、磁石片の表と裏とで大きく異なった値になってしまう。このように磁気特性にばらつきがあると、製品の磁気特性の管理が難しくなり、また、製品の歩留りが悪くなる。この問題を解決するために、本出願人は、磁性を有するゴムを、ゴムモールドのキャビティーに充填された永久磁石粉末の上下部に配置することにより、磁気特性劣化を改善する方法を提案した(特願平7−276500号)。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題を、より確実に改善するとともに、磁気特性の向上した異方性焼結磁石の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した目的を達成するために、第1には、蓋部及び底部のキャビティーに充填された永久磁石粉末の上下面と接する部分の少なくとも一部が、ゴムと磁性粒子の複合体である磁性ゴム部で形成されているとともに、側面部が磁性を有しないゴムで形成されたゴムモールドのキャビティーに永久磁石粉末を充填し、次いで、永久磁石粉末が充填された前記ゴムモールドに磁場を印加するとともに、前記ゴムモールドを圧縮することにより永久磁石粉末の圧粉体を成形し、その後、成形された圧粉体を焼結することにより、異方性焼結磁石を製造する異方性焼結磁石の製造方法であって、前記蓋部及び底部の磁性ゴム部の水平断面積の少なくとも一部が、前記ゴムモールドのキャビティーに充填され永久磁石粉末の上下面の面積より小さいことを特徴とするものであり、第2には、蓋部及び底部の磁性ゴム部のキャビティーに充填された永久磁石粉末と接する部分の面積が、共に、前記永久磁石粉末の上下面の面積より小さいことを特徴とするものであり、第3には、蓋部及び底部の磁性ゴム部のキャビティーに充填された永久磁石粉末と接する部分の面積が、共に、前記永久磁石粉末の上下面の面積と等しいか又は大きく、且つ、前記磁性ゴム部の水平断面積の少なくとも一部が、前記永久磁石粉末の上下面の面積より小さいことを特徴とするものである。
【0009】
【実施例】
一般的に磁性体が磁化された時には、磁性体の両端に磁極が現れ、磁性体内部の磁束は、磁性体の中央部では磁束密度が大きく、且つ、その磁束の向きも均一になるものの、磁性体端部では、磁束密度は中央部に比して小さいうえに、磁束の方向も不均一である。特に、磁極の現れる部分には、このような磁束密度の減少と不均一、磁束方向の乱れが顕著である。この様子を模擬的に表すと図1のようになる。このような現象は、ゴムモールドのキャビティーに永久磁石粉末を充填して磁場を印加した場合にも現れ、磁極が発生し、ゴムモールドのキャビティーに充填された永久磁石粉末の磁場分布も図1のようになっているものと考えられる。
【0010】
加えて、永久磁石粉末に磁場を印加するために、ソレノイドコイル内に、永久磁石粉末を配置してソレノイドコイルに磁場を発生させたときには、図2に示すように、発生する磁場自身がコイルcの中央部から上下端に向かって広がるため、磁性体端部の磁束方向の乱れが更に顕著となる。このように磁極が発生し、磁場分布が乱れることにより、永久磁石粉末の容易磁化方向が、乱れた磁場分布の方向を向いてしまい、上述した問題点が生じていたと思われる。
【0011】
本発明により、蓋部及び底部に、その水平断面積の一部が、ゴムモールドのキャビティーに充填され永久磁石粉末の上下面積より小さい断面積を有する磁性ゴムを配置したゴムモールドを用いることにより、配向磁場印加後、ソレノイドコイル上下端での磁場の乱れが改善され、且つ、磁極が、磁性ゴムの永久磁石粉末と接している面の反対側の面に現れ、永久磁石粉末の表面に現れることがなくなる。そのため、磁極付近の磁束密度の減少と不均一及び磁束方向の乱れは、磁性ゴムの部分に集中することになり、永久磁石粉末の部分は、その磁極の影響が緩和され、磁束密度は均一で、また、磁束の方向は平行となり、配向の乱れを抑えることが可能となる。
【0012】
本発明では、ゴムモールドを使用することにより、特開平4−363010号に開示されている作用効果により異方性焼結磁石の配向を高め、更に、ゴムモールドの蓋部及び底部の少なくとも一部に、その水平断面積が、ゴムモールドの永久磁石粉末充填部であるキャビティーに充填された永久磁石粉末の水平断面積より小さな断面積を有する磁性ゴムを配置するとともに、該磁性ゴムを、ゴムモールドのキャビティーに充填された永久磁石粉末と接する位置に配置することにより、蓋部及び底部近傍の磁束の向きを中央部と平行にして、配向のばらつきを抑えようとするものである。この際、製造された異方性焼結磁石を、磁石配向方向に垂直な方向に5等分に輪切りにして磁石片を切り出し、この磁石片の上面と下面の表面の磁束密度を、ホール素子を用いて測定し、下面の表面磁束密度と上面の表面磁束密度の比(下面の表面磁束密度/上面の表面磁束密度)が、1.000±0.035、好ましくは、1.000±0.025の範囲内となるようにすることが望まれる。
【0013】
上述した磁性を有するゴム部分(磁性ゴム部)は、ゴムモールドの一部であるので、当然のことながら、ゴムとしての性質を有していなければならない。そうでない場合には、成形性が非常に悪化し、得られる圧粉体には、割れ、ひび、欠けなどが発生しやすくなる。本発明の磁性ゴムは、磁性粒子と液状ゴムとを混合して型に流し込み、その後、ゴムを硬化させることによって作成される。磁性粒子の飽和磁化4πIsと磁性粒子とゴムとの混合割合を勘案することにより、磁性ゴムの飽和磁化4πIsが調整される。
【0014】
このため、本発明に使用される磁性ゴムの飽和磁化4πIsは、ゴムモールドのキャビティーに充填した永久磁石粉末の磁化に近いほど好ましい。磁性ゴムに使用される磁性粒子は、磁性体であればどのような物質を使用してもよいが、FeCo合金粉末粒子の飽和磁化4πIsは大きいため、所定の飽和磁化4πIsを有する磁性ゴムを作製する際に、FeCo合金粉末粒子の混合割合を減らすことができ、磁性ゴムのゴムとしての性質を損なうことが少ない。更に、FeCo合金粉末粒子は錆びにくく、長期に使用しても酸化することがないので、磁性ゴムの磁気特性の経時変化が少ない。
【0015】
次に、ゴムモールドの垂直断面図である図3及び図4を用いて、本発明の異方性焼結磁石の製造方法に使用される、一例としての蓋部及び底部の少なくとも一部に、磁性ゴムが配置されたゴムモールドについて説明する。なお、図3及び図4において、gは、永久磁石粉末pが充填されるキャビティーg1を有するゴムモールドであり、1は蓋部であり、2は底部であり、3はキャビティーg1の側方を囲むように配置された側面部である。また、1aは、蓋部1に配置された磁性ゴム部であり、2aは、底部2に配置された磁性ゴム部である。
【0016】
図3(a)及び(b)に示されている実施例においては、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの永久磁石粉充填部としてのキャビティーg1に充填された永久磁石粉末pと接する部分の面積が、共に、キャビティーg1に充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積より小さい。そして、図3(a)の蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aは、共に、円柱状などの柱状に形成されており、図3(b)の蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aは、共に、キャビティーg1から離れるに従って、その水平断面積が拡大する逆台形状に形成されている。
【0017】
図4(a)及び(b)においては、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの充填された永久磁石粉末pと接する部分の面積が、キャビティーg1に充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積と等しいか又は大きく、且つ、キャビティーg1から離れるに従って、その水平断面積が縮小して台形状に形成されている。なお、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aのキャビティーg1から最遠部の面積が、共に、永久磁石粉充填部としてのキャビティーg1に充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積より小さい。
【0018】
図3(a)のように、蓋部1の磁性ゴム部1aの全体及び底部2の磁性ゴム部2aの全体が、充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積より小さい場合、また、図3(b)のように、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの充填された永久磁石粉末pと接する部分の面積が、充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積より小さく、そして、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの水平面積が、永久磁石粉末pと接している面から離れるに従い大きくなるような場合には、磁極発生による配向の乱れを抑えることができる。
【0019】
例えば、図5に示されているように、蓋部1の磁性ゴム部1aの全体及び底部2の磁性ゴム部2aの全体が、充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積より大きいと、磁場が印加された際、永久磁石粉充填部としてのキャビティーg1の上下縁部g2,g3を通る磁力線は、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の縁に向かって広がるために、キャビティーg1の上下縁部g2,g3における配向の乱れを抑えることができない。なお、4は、永久磁石粉末pを配向させるためのパルス磁場発生コイルである。
【0020】
図3に示されている実施例においては、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの充填された永久磁石粉末pと接する部分の面積(Sg)が、充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積(Sp)より小さい、即ち、Sp>Sgであり、且つ、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの水平断面積が、永久磁石粉末pと接している面から離れるに従い大きくなるか、或いは、変わらない例が示されている。
【0021】
図4に示されている実施例においては、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの充填された永久磁石粉末pと接する部分の面積(Sg)が、充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積(Sp)と等しいか又は大きい、即ち、Sg≧Spであり、且つ、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの水平断面積が、永久磁石粉末pと接している面から離れるに従い小さくなっている。このように構成することにより、外側に広がろうとする磁束の向きを、充填された永久磁石粉末pの垂直中心軸に沿う方向に矯正することができ、磁束密度及び磁束方向の均一性を向上することができる。
【0022】
蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの寸法は、磁性ゴム部1a、2aの最小水平断面積(例えば、図4に示されている実施例においては、蓋部1の磁性ゴム部1aの上面及び底部2の磁性ゴム部2aの下面が、それぞれ、磁性ゴム部1a、2aの最小水平断面積であり、磁性ゴム部1a、2aの最小水平断面積として、符号Sg’を用いる。)と、充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積(Sp)の比(Sg’/Sp)が、1未満であれば優れた効果を示すが、比(Sg’/Sp)が小さすぎると、磁性ゴムとしての効果が小さくなるので、図3(a)及び(b)のように、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの充填された永久磁石粉末pと接する部分の面積(Sg)が、充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積(Sp)より小さい場合には、上記の比(Sg’/Sp)が0.5〜0.9であることが好ましい。
【0023】
また、図4に示されているように、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの充填された永久磁石粉末pと接する部分の面積(Sg)が、充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積(Sp)と等しいか又は大きく、且つ、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの水平断面積が、永久磁石粉末pと接している面から離れるに従い小さくなっている場合には、蓋部1の磁性ゴム部1a及び底部2の磁性ゴム部2aの最小水平断面積(Sg’)と充填された永久磁石粉末pの上面及び下面の面積(Sp)との比(Sg’/Sp)が0.1〜0.8であることが好ましい。
【0024】
磁性ゴムに使用される磁性粒子の粒径は、0.5〜100μmであることが好ましい。磁性粒子の粒径が0.5μm未満の場合には、磁性粒子が酸化しやすくなり、長期の使用には耐えない。また、磁性粒子の粒径が100μmを越えると、ゴムと混合し、ゴムを硬化させている間に、粒子自体の重さにより沈降してしまい、均一な性質をもった磁性ゴムを作成することが困難である。
【0025】
磁性ゴムに使用されるゴムとしては、シリコーンゴムを使用することが好ましい。シリコーンゴムは、長期間使用しても変形が少なく、また、応力がかかった際の変形量もまた経時変化が少ないため、長期にわたって使用することが可能となるからである。
【0026】
また、蓋部と底部のどちらか一方が磁性ゴムでなく、磁性を示さない通常のゴムからなっている場合には、磁場印加時に、ゴムモールド内の磁場勾配を緩和させることができず、また、磁性ゴムのない方に磁極が発生してしまい、本発明の効果を得ることができないので、蓋部と底部の両方の、少なくとも一部が磁性ゴムからなっていることが本発明では重要なことである。
【0027】
更に、蓋部及び底部に配置される磁性ゴムの厚み或いは高さは、5mm以上あることが好ましい。磁性ゴムの厚みが5mm未満では、パルス磁場印加時に、ゴムモールド内の磁場勾配を緩和させることができず、本発明の効果を得ることができない。なお、磁性ゴムの厚み或いは高さとは、磁性ゴムのダイプレス機などによる圧縮応力印加方向の長さのことを指している。
【0028】
本発明の対象となる異方性焼結磁石としては、Baフェライト、Srフェライトなどのフェライト磁石、R−Co系、R−Fe−B系などの希土類磁石がある。これらの磁石は以下のように製造される。
【0029】
フェライト磁石は、酸化鉄、酸化バリウム、炭酸ストロンチウムなどの原料を、最終組成が、MO・6Fe2 03 (Mは、Ba、Srなど)に近い組成になるように秤量、混合し、900〜1200℃で1〜5時間程度焼成して固相反応を起こさせ、Baフェライト、Srフェライトなどの焼成品を作製する。次いで、得られたフェライトを1μm以下に微粉砕し、配向磁場を印加して圧縮成形し、圧粉体を得る。その際、圧縮により、永久磁石粉末の容易磁化方向を磁場方向に向けるのが困難になる場合もあり、この場合には、フェライト磁石粉末を適当な液体に懸濁させてスラリー状にして磁場成形を行う湿式成形を行うこともある。次いで、1000〜1300℃で1〜5時間程度焼結を行い、フェライト磁石を得る。
【0030】
R−Co系希土類磁石は、RCo5 系、R2 Co17系などがある。R2 Co17系希土類磁石は、通常、重量百分率で、20/28%のR、5〜30%のFe、3〜10%のCu、1〜5%のZr、残部Coからなり、以下のような製造法により製造される。微粉砕されたR2 Co17系合金は、磁場中で圧縮成形され、その後、1100〜1250℃で0.5〜5時間焼結され、次いで、焼結温度よりも0〜50℃低い温度で0.5〜5時間溶体化され、そして、最後に時効処理が施される。時効処理は、通常、初段時効として700〜900℃で一定の時間保持し、その後、連続冷却又は多段時効を行う。
【0031】
R−Fe−B系希土類磁石は、通常、重量百分率で、5〜40%のR、50〜90%のFe、0.2〜8%のBからなる。磁気特性を改善するために、C,Al,Si,Ti,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Hf,Ta,Wなど添加元素を加えることが多い。これら添加物の添加量は、Coの場合には、30重量%以下、その他の元素の場合には、8重量%以下とするのが普通である。これ以上の添加物を加えると、逆に磁気特性を劣化させてしまう。R−Fe−B系希土類磁石の製造方法は以下の通りである。原料金属を秤量して溶解、鋳造し、得られた合金を平均粒径1〜20μmになるまで粉砕する。続いて、この粉砕粉を磁場中で圧縮成形し、1000〜1200℃で0.5〜5時間焼結を行う。最後に400〜1000℃で時効処理を行い、R−Fe−B系希土類磁石を得る。
【0032】
(実施例1、実施例2、比較例1)
原子%でNd13.5Dy1 Fe78B6.5 Al1 の合金を、純度99.9wt%以上の各原料金属を誘導加熱高周波溶解炉を用いてアルゴン雰囲気中で溶解、鋳造し作製した。この合金インゴットを,アルゴン雰囲気中1100℃で24時間の均質化熱処理を行った後、アルゴン雰囲気中でジョークラッシャー、ブラウンミルを用いて粗粉砕し、次いで、窒素ガスを用いたジェットミルで微粉砕を行い、平均粒径5μmのR−Fe−B系永久磁石粉末を作製した。
【0033】
これをゴムモールドのキャビティーに、R−Fe−B系永久磁石粉末を3g/ccの充填密度に充填し、5Tのパルス磁場を印加した後、0.8ton/cm2 の圧力でゴムモールドを圧縮した。パルス磁場印加方向は、円柱状試料の軸方向であり、圧力印加方向も同一方向である。ここで、用いたゴムモールドの側面部はシリコーンゴムのみからなっており、磁性ゴムではない。また、蓋部及び底部に配置される磁性ゴムは、平均粒径10μmのFe50Co50合金粉末粒子をシリコーンゴムに混合して硬化させたもので、飽和磁化4πIsが4000ガウスの磁気特性を有している。なお、ゴムモールドの形状は、外径が60mm、内径が40mm及び高さが70mmの円筒状である。磁性ゴムは、実施例1においては、図3(a)に示されているような、径が、33mm及び高さが10mmの円柱状の形状であり、実施例2においては、図4(a)に示されているような、上径が33mm、下径が40mm及び高さが10mmの円錐台形状である。
【0034】
得られた圧粉体を真空中にて1060℃で90分焼結し、その後、更に、540℃で時効熱処理を行って、円柱状R−Fe−B系焼結磁石を作製した。得られた円柱状焼結磁石を5等分に輪切りにし、磁石片の上面と下面の表面の磁束密度をホール素子を用いて測定し、その結果を、下面の表面磁束密度と上面の表面磁束密度の比(下面/上面)で表し、表1に記した。
【0035】
また、表1には、比較例1として、実施例1のゴムモールドの蓋部と底部に径60mm及び高さ10mmの円柱状の磁性ゴムを配置し、ゴムモールドの側面部を同様にシリコーンゴムとして、実施例1と同じ実験を行い、その結果を記した。なお、表1において、「上」、「上中」、「中央」、「下中」、「下」とは、5等分された円柱状焼結磁石の5つの輪切り片の、ゴムモールドのキャビティーに充填されていた時点における、蓋部から底部方向への位置を示す。従って、「上」は、蓋部に一番近い輪切り片を指し、「中央」は、5等分された円柱状焼結磁石の5つの輪切り片の真ん中に位置する輪切り片を指し、また、「下」は、底部に一番近い輪切り片を指す。以下、表3及び表4においても、同様である。
【0036】
【表1】
Figure 0003614545
【0037】
表1より、蓋部及び底部に、その水平断面積の一部が、ゴムモールドのキャビティーに充填され永久磁石粉末の上下面の面積より小さい断面積を有する磁性ゴムを配置したゴムモールドを用いることにより、蓋部及び底部に近い部分の磁石片の表面と裏面の磁気特性のばらつきが、より効果的に抑えられることが分かる。
【0038】
(実施例3)
シリコーンゴムと平均粒径10μmのFe50Co50の合金粉末を混合し、飽和磁化4πIsが4000ガウスで、寸法の異なる円柱形状の磁性ゴムを作製し、これを実施例1と同様の、外径が60mm、内径が40mm及び高さが70mmの円筒状のゴムモールドの蓋部及び底部の充填された永久磁石粉末と接する位置に配置し、実験を行った。1つの円柱状焼結磁石より切り出した5つの磁石片のうち、上述した表1の「上」の部分の磁石片の上面と下面の表面磁束密度を測定し、表2において、表面磁束密度(下面/上面)として記した。また、表2には、円柱状磁性ゴムの径とゴムモールドのキャビティーに充填された円柱状の永久磁性粉末の径の比が、磁性ゴムの径(磁性ゴム/充填部径)として記されている。
【0039】
【表2】
Figure 0003614545
【0040】
表2より、磁性ゴムの径(磁性ゴム/充填部径)、即ち、円柱状磁性ゴムの径とゴムモールドのキャビティーに充填された円柱状の永久磁性粉末の径の比が、1以下の範囲で、蓋部に近い部分の磁石片の表面と裏面の磁気特性のばらつきが抑えられていることが分かる。また、特に、磁性ゴムの径(磁性ゴム/充填部径)がこの範囲で効果が大きいことが分かる。
【0041】
(実施例4、実施例5、比較例2)
合金組成が重量%でSm26%、Fe14%、Cu5%、Zr3%、残部Coとなるように原料金属を秤量した後、これらを誘導加熱高周波溶解炉を用いてアルゴン雰囲気中で溶解し、鋳造して合金インゴットを作製した。この合金インゴットを、アルゴン雰囲気中でジョークラッシャー、ブラウンミルを用いて粗粉砕し、次いで、窒素ガスを用いたジェットミルで微粉砕を行い、平均粒径5μmのR2 Co17系永久磁石粉末を作製した。
【0042】
実施例4としての磁性ゴムは、実施例1と同様に、図3(a)に示されているような、径が、33mm及び厚さが10mmの円柱状の形状であり、実施例5においては、図4(a)に示されているような、上径が33mm、下径が40mm及び高さが10mmの円錐台形状である。圧縮成形の際の圧力は、1.0ton/cm2 であり、その他の条件は、実施例1と同じである。
【0043】
圧縮成形された圧粉体を、アルゴン雰囲気下で1200℃で焼結し、1180℃で溶体化した。時効熱処理は、先ず、初段時効として850℃で2時間保持した後、1℃/分の冷却速度で400℃まで連続冷却を行い、その後、急冷した。得られたR2Co17系焼結磁石を実施例1と同様に5等分し、1つの焼結体より切り出した5つの磁石片の上面と下面の表面磁束密度を測定し、表面磁束密度の下面/上面の値を記した。その結果を、表3に示す。
【0044】
比較例2として、ゴムモールドの蓋部と底部に、径60mm及び高さ10mmの円柱状の磁性ゴムを配置し、ゴムモールドの側面部をシリコームゴムとし、同様の実験を行い、その結果を合わせて表3に記した。
【0045】
【表3】
Figure 0003614545
【0046】
表3より、R2 Co17系焼結磁石においても、蓋部及び底部に、その水平断面積の一部が、ゴムモールドのキャビティーに充填され永久磁石粉末の上下面の面積より小さい断面積を有する磁性ゴムを配置したゴムモールドを用いることにより、蓋部及び底部に近い部分の磁石片の表面と裏面の磁気特性のばらつきが、より効果的に抑えられることが分かる。
【0047】
(実施例6、実施例7、比較例3)
炭酸ストロンチウム(SrCO3 )及び酸化第2鉄(Fe2 03 )をモル比で1:5.9の割合で混合し、ボールミルで8時間、粉砕、混合した後、1080℃で1時間焼成し、次いで、スタンプミル、ボールミルを用いて粉砕を行い、平均粒径が0.8μmのSrフェライト磁石粉末を作製した。この粉末を、実施例1と同じ方法で、実施例6としての径33mm及び高さ10mmの円柱状及び実施例7としての上径33mm、下径40mm及び高さ10mmの円錐台形状の磁性ゴムを用いたゴムモールド内に充填し、0.8ton/cm2 の圧力でゴムモールドを圧縮し成形を行った。
【0048】
上記のようにして成形された圧粉体を、1250℃で焼結し、Srフェライト焼結磁石を作製した。
【0049】
得られたSrフェライト焼結磁石を、実施例1と同様に5等分し、1つの円柱状焼結体より切り出した5つの磁石片の上面と下面の表面磁束密度を測定し、下面/上面の値を記した。その結果を、表4に示す。
【0050】
比較例3として、ゴムモールドの蓋部と底部に、径60mm及び高さ10mmの円柱状の磁性ゴムを配置するとともに、ゴムモールドの側面部をシリコーンゴムとし、同様の実験を行い、その結果を併せて表4に記した。
【0051】
【表4】
Figure 0003614545
【0052】
表4より、フェライト系焼結磁石においても、蓋部及び底部に、その水平断面積の一部が、ゴムモールドのキャビティーに充填され永久磁石粉末の上下面の面積より小さい断面積を有する磁性ゴムを配置したゴムモールドを用いることにより、蓋部及び底部に近い部分の磁石片の表面と裏面の磁気特性のばらつきが、より効果的に抑えられることが分かる。
【0053】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載する効果を奏することができる。
【0054】
本発明により、残留磁束密度のばらつきの少ない異方性焼結磁石を製造することができ、その結果、製造歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は磁化された磁性体の磁束分布を示す模擬図である。
【図2】図2はコイル内の磁束分布を示す模擬図である。
【図3】図3は本発明の異方性焼結磁石の製造方法に使用される一例としてのゴムモールドの垂直断面図である。
【図4】図4は図3と同様の本発明の異方性焼結磁石の製造方法に使用される一例としてのゴムモールドの垂直断面図である。
【図5】従来の異方性焼結磁石の製造方法に使用されるゴムモールド等の垂直断面図である。
【符号の説明】
g・・・・・ゴムモールド
g1・・・・キャビティー
p・・・・・永久磁石粉末
1・・・・・蓋部
2・・・・・底部
3・・・・・側面部

Claims (3)

  1. 蓋部及び底部のキャビティーに充填された永久磁石粉末の上下面と接する部分の少なくとも一部が、ゴムと磁性粒子の複合体である磁性ゴム部で形成されているとともに、側面部が磁性を有しないゴムで形成されたゴムモールドのキャビティーに永久磁石粉末を充填し、次いで、永久磁石粉末が充填された前記ゴムモールドに磁場を印加するとともに、前記ゴムモールドを圧縮することにより永久磁石粉末の圧粉体を成形し、その後、成形された圧粉体を焼結することにより、異方性焼結磁石を製造する異方性焼結磁石の製造方法であって、前記蓋部及び底部の磁性ゴム部の水平断面積の少なくとも一部が、前記ゴムモールドのキャビティーに充填され永久磁石粉末の上下面の面積より小さいことを特徴とする異方性焼結磁石の製造方法。
  2. 蓋部及び底部の磁性ゴム部のキャビティーに充填された永久磁石粉末と接する部分の面積が、共に、前記永久磁石粉末の上下面の面積より小さいことを特徴とする請求項1に記載の異方性焼結磁石の製造方法。
  3. 蓋部及び底部の磁性ゴム部のキャビティーに充填された永久磁石粉末と接する部分の面積が、共に、前記永久磁石粉末の上下面の面積と等しいか又は大きく、且つ、前記磁性ゴム部の水平断面積の少なくとも一部が、前記永久磁石粉末の上下面の面積より小さいことを特徴とする請求項1に記載の異方性焼結磁石の製造方法。
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