JP3626875B2 - ギヤポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は互いに噛み合う一対のギヤの回転によりポンプ作用をなすギヤポンプに関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来より、ギヤポンプは、簡単な構造でありながら容量を大きくできることから、種々の産業分野に用いられている。
この種のギヤポンプの構造としては、ハウジング内部の空洞に一対のサイドプレートを嵌め合わせてギヤ室を区画し、このギヤ室の内部に互いに噛み合う一対のギヤを収容して、各ギヤの支軸を各サイドプレートに形成した支持孔によって嵌合支持すると共に、上記ギヤ室の内部に両ギヤの噛み合い位置を挟んで作動流体の吸込室および吐出室を形成したタイプのものが一般的である。
【0003】
そして、上記のハウジングやサイドプレートには、加工性および軽量化のためにアルミニウム合金が使用される一方、各歯車には耐摩耗性が要求されるので鋳鉄等の鉄系の材料が使用されることが一般化している。しかしながら、ギヤの支軸をアルミニウム合金製のサイドプレートの支持孔によって直接支持した場合、支持孔の摩耗が激しく耐久性が悪くなる。また、互いに対向するギヤの側面とサイドプレートとの側面との間の直接摺動によって摩耗が発生する。
【0004】
特に、高圧で負荷が大きい場合や低粘度の作動油を用いて潤滑条件が厳しい場合等には不完全であった。例えば、自動車に用いられるギヤポンプでは、作動油として、ガソリンやブレーキフルード等の粘度の低い流体が用いられる場合があり、この場合、始動時の油膜形成が殆ど期待できず、極めて過酷な潤滑条件となり、焼付き等を起こすおそれがある。
【0005】
一方、耐摩耗性の向上のために摺動面に一般のメッキを施す場合、形成されたメッキ被膜は、その膜厚が数μm以上と比較的厚く、しかも母材との間の界面も明確に現れるため、母材から剥がれ易い。また、電気メッキの場合、メッキ被膜が母材の角部で盛り上がる傾向にあり、このため、摺動面間に隙間ができて流体の漏れを生ずるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、過酷な潤滑条件にも耐え得る耐久性に優れた長寿命のギヤポンプを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための課題解決手段として、本発明は、ハウジング内部の空洞に一対のサイドプレートを嵌め合わせてギヤ室を区画し、このギヤ室の内部に互いに噛み合う一対のギヤを収容してギヤの支軸を各サイドプレートにそれぞれ形成した一対の支持孔に嵌合支持すると共に、ギヤ室の内部に両ギヤの噛み合い位置を挟んで作動流体の吸込室および吐出室を形成したギヤポンプにおいて、上記サイドプレート及びこれに摺動する部材の少なくとも一方の表面の少なくとも一部がタンニン酸による化学処理により耐摩耗性を向上する表面改質を施されてなることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、化学処理による表面改質とは、母材の表面に化学処理を施すことにより、母材表面において母材の持つ特性、例えば潤滑性能を改善することを意味する。表面改質により母材の表面に形成された、例えば潤滑性に優れる改質層は母材自身の耐摩耗性の向上に寄与するのみならず、相手方部材との間に改質層が介在するので、相手方部材の表面の耐摩耗性の向上にも役立つ。したがって、例えばアルミニウム系部材と鉄系部材とが摺動する場合において、何れの部材の表面に改質層を設けても、アルミニウム系部材の耐摩耗性の向上に寄与することができる。改質層としては、母材の酸化物、塩化物、リン化合物及び硫化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む層であれば良い。また、化学処理による改質層であれば、メッキ被膜と比較して厚みの薄い層を実現でき、しかも改質層と母材との間にメッキ被膜の場合のような明確な界面が存在しないので、剥がれ等のおそれがない。
【0009】
ンニン酸により化学処理された層に軟質金属が微細に分散されてなる場合には好ましい。
【0010】
請求項5記載の発明の態様は、請求項1において、上記化学処理はリン化合物によりなされる化学処理を含むことを特徴とするものである。
請求項6記載の発明の態様は、請求項1において、上記化学処理は有機硫黄化合物によりなされる化学処理を含むことを特徴とするものである。
請求項7記載の発明の態様は、請求項6において、上記有機硫黄化合物が、メルカプタン類、サルファイド類、硫化オレフィン類、スルホン類、金属ジチオフォスフェート類、及び、金属ジチオカルバメート類からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るギヤポンプの断面図であり、図2は図1のII−II線に沿う断面図であってハッチングを省略してある。また、図3は図1のIII −III 線に沿う断面図であり、図4はIV−IV線に沿う断面図である。
【0012】
図1を参照して、本ギヤポンプは、その中央部を貫通する長円形断面の空洞を有する本体筒10の両側を、これの全面を覆う態様にねじ止めされた一対の蓋板11により塞いで構成されたハウジング1を備えている。このハウジング1の内部には、前記空洞部の両側から嵌挿されたアルミニウム合金製の一対のサイドプレート12同士の間にギヤ室14が区画されており、このギヤ室14内には、互いに対をなす駆動ギヤ3と従動ギヤ4が配置されている。19は、蓋板11の環状溝に収容され、蓋板11とサイドプレート12との間に介在してギヤ室14を密封するためのOリングである。13はサイドプレート12の収容溝に収容され、ギヤ室14内において対向するサイドプレート12と蓋板11との間の空間を低圧側と高圧側とに仕切るシールである。
【0013】
駆動ギヤ3および従動ギヤ4の支軸30,40は、長円形断面を有するギヤ室14の両側の半円部の軸心上にそれぞれ位置し、互いに平行をなして架設されている。すなわち、支軸30,40は各サイドプレート12にそれぞれ一対形成された支持孔31,41により両持ち支持されている。
一対の支持孔31によって支持された一方の支軸30は、一方の蓋板11を貫通して外部に延長され、この延長端に伝達される図示しないモータからの駆動力により回転駆動される駆動軸を構成している。また、支軸30には、ギヤ室14の内部において駆動ギヤ3が一体回転可能に装着されている。支軸30が蓋板11を貫通する部分にはオイルシール17が配置されている。
【0014】
また、一対の支持孔41によって支持された他方の支軸40は、各サイドプレート12の支持孔41内に軸端を有する従動軸を構成している。支軸40には、ギヤ室14の内部において従動ギヤ4が装着されている。従動ギヤ4の支軸40への装着では、軸回りの回転を拘束しても良いし軸回りの回転を許容しても良い。従動ギヤ4は両支軸30,40の軸心を含む平面内において駆動ギヤ3と噛み合い、支軸30により駆動される駆動ギヤ3の回転に伴って、支軸40と共に(或いは支軸40の回転を伴わずに)従動回転するようにしてある。
【0015】
図2には、駆動ギヤ3およびこれに連動する従動ギヤ4の回転方向が矢符により示してあり、両ギヤ3,4の噛み合い位置を挟んだ両側には、前記回転方向側に吸込口室5が、反回転方向側に吐出室6が形成されている。これら吸込室5および吐出室6は、本体筒10の対応位置に開口する吸込口15および吐出口16を介して、ハウジング1外の図示しない吸込先および吐出先にそれぞれ接続されるようにしてある。
【0016】
図3において、サイドプレート12のギヤ側側面12aには、両ギヤ3,4の噛み合い位置から吸込室5側へ延びる逃げ溝63および吐出室6側へ延びる逃げ溝64が形成されている。これらの逃げ溝63,64は、両ギヤ3,4の噛み合い位置で流体が各サイドプレート12と各噛合ギヤ歯とで形成される閉塞領域に閉じ込められる、いわゆる閉じ込みの発生を防止するためのものである。両逃げ溝63,64は両ギヤ3,4の噛み合い中心位置を避けるようにして設けられ、互いの間に所定の距離が確保されている。これは両逃げ溝63,64を連通させてしまうと、吸込室5側と吐出室6側が連通されて、ポンプ機能を果たせなくなるので、これを防止するためである。また、上記ギヤ側側面12aには、各支持孔31,41と吸込室5側とをそれぞれ連通する連通溝65が形成されている。
【0017】
一方、図4において、サイドプレート12の反ギヤ側側面12bには、略W字形形状のシール溝に上記のシール13を収容しており、このシール13を境界として、互いに対向するサイドプレート12と蓋板11との間の空間が、吸込室5側に連通する低圧側空間と吐出室6側に連通する高圧側空間とに仕切られている。このように、サイドプレート12の背面である反ギヤ側側面12bには、シール13で仕切られた状態で、低圧の作動流体および高圧の作動流体が背圧として作用し、これが、サイドプレート12に吐出圧に応じて負荷されるので、サイドプレート12と両ギヤ3,4との間の隙間が高精度で維持される結果、高圧時のポンプ効率を高く維持できる。また、上記反ギヤ側側面12bには、上記低圧側空間において各支持孔31,41と吸込室5側とをそれぞれ連通する各一対の連通溝65が形成されている。
【0018】
このような構成により、吸込口15を経て吸込室5に導入される作動流体は、該吸込室5に臨む駆動ギヤ3および従動ギヤ4の歯間に受け入れられ、両ギヤ3,4の回転により、それぞれの歯間の本体筒10の内周面との間に封止された状態で搬送され、吐出室6に送り出される。吐出室6への送り出しを終えた駆動ギヤ3と従動ギヤ4とは、両ギヤ3,4の噛み合い位置を経て吸込室5側に向き、該吸込室5内の作動流体を再度受け入れて吐出室6側へ送り出す作用をなす。
【0019】
一方、ギヤポンプの要部の一部破断分解斜視図である図5を参照して、支持孔31,41と各支軸30,40との摺動面には、低圧側の吸込室5からの作動流体が循環されるようになっている。すなわち、支持孔31,41の内周面31a,41aには、螺旋状溝31c,41cが形成されていることから、支軸30,40が回転することによって、サイドプレート12の一方の側面12a又は12bに形成された連通溝65を通して、吸込室5側の作動流体が支持孔31,41内に導入され、サイドプレート12の他方の側面12b又は12aに形成された連通溝65を通して、吸込室5に還流されるようになっている。なお、各支持孔31,41の螺旋状溝31c,41cは全て同方向に形成してあり、両ギヤ3,4が互いに逆回転することから、図1および図5において、左上および右下の支持孔1,31内へは、サイドプレート12の反ギヤ側側面12bから作動流体が導入され(図5において黒抜き矢符で示す)、右下および左上の支持孔31,41内へはサイドプレート12のギヤ側側面12aから作動流体が導入される(図5において白抜き矢符で示す)ようになっている。
【0020】
上記ギヤ3,4及び支軸30,40を構成する鉄系の材質は、例えばSCM415、S45C等である。
また、サイドプレート12を構成するアルミニウム合金としては、例えば鋳造性の良いAC2A材やH−4040材、A2014材などがあり、サイドプレート12の表面のうち少なくとも一部、例えば図6に模式的に示すように、支持孔31,41の内周面31a,41aおよびギヤ側側面12aに、化学処理による表面改質が施され、改質層Fが形成されている。すなわち、母材の表面を化学処理することにより、母材の表面に酸化物、塩化物、リン化合物及び硫化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む改質層Fを形成し、特に潤滑性を向上させている。
【0021】
下記の1)〜4)の少なくとも一つの化学処理によって、例えばサイドプレートの表面の要部に、酸化物、塩化物、リン化合物及び硫化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む潤滑性に優れた被膜を構成する改質層が形成されることにより、サイドプレートと鉄材との直接接触が防止され、過酷な潤滑条件であっても、サイドプレートの摩耗と焼付きの発生を防止して耐久性を向上することができる。
【0022】
結果として、摩耗に起因した流体漏れによるポンプ効率の低下を抑制することができる。特に、化学処理であれば、層厚を薄くでき、しかも改質層と母材との間にメッキ被膜の場合のような明確な界面が存在しないので、剥がれ等のおそれがなく、この点からも耐久性を向上することができる。さらに、化学処理であれば、電気メッキの場合のように母材の角部で層厚が厚くなって盛り上がるというようなことがなく、局部的な盛り上がりによる流体漏れの発生を防止することができる。
1)タンニン酸による化学処理
例えば、タンニン酸により化学処理が施され、アルミニウム合金の表面が改質されている場合がある。タンニン酸は特に限定されず、通常、タンニン酸として使用しているものであれば使用することができる。タンニン酸を用いる化学処理は、特に限定されるものではないが、例えばタンニン酸を水等の溶剤に溶解させて生成した溶液に、サイドプレートの所要の部分を浸漬するようにしても良いし、また、溶液を塗布するようにしても良い。
【0023】
溶液中のタンニン酸の濃度は0.1重量%以上が好ましい。また、溶液の温度は特に限定されず、室温であっても良い。化学処理の時間は5〜15分程度が好ましいが、数分程度であっても、潤滑性能の向上に充分に寄与できる。
なお、上記の改質層に軟質金属元素が分散されていても良い。軟質金属は化学処理により形成された改質層の内部及び/又は表面に微細な状態で分散されていても良い。軟質金属元素としては、例えばAu、Ag、Pb、Zn、Al、Sn、Ga等が挙げられる。
【0024】
軟質金属元素を微細な状態で分散させる方法としては、まず、上記タンニン酸による化学処理を行う最に、タンニン酸を含む溶液中に上記軟質金属元素を分散させ、この溶液に対象部品を浸漬等し、上記化学処理と上記軟質金属元素の分散を同時に行う方法がある。また、上記タンニン酸による化学処理が終了した後、上記軟質金属を含む溶液中に対象部品を浸漬する方法もある。上記軟質金属元素を分散させる際には、処理溶液中の上記軟質金属元素の量が0.5〜10重量%になるように添加し、上記浸漬処理等を行う。
【0025】
上記軟質金属元素を含む溶液による浸漬処理等を行うことにより、対象部品の表面に形成された改質層に、軟質金属元素が微細に分散されるため、この軟質金属元素により潤滑状態が安定して維持され、潤滑性が一層向上する。
2)カルボン酸又はその塩による化学処理
本発明で用いるカルボン酸又はその塩とは、R(COOH)n (式中、Rはアルキル基又はアルケニル基を表し、nは1〜10の整数である)で表されるカルボン酸又はその塩からなる化合物であり、Rで表される基中のH原紙を一部Cl(塩素)原子に置換した化合物をいうが、その炭素数が24以下で、Cl原子を1〜10個有していれば、その化合物の種類は特に限定されない。
【0026】
上記カルボン酸塩化物の炭素数が24を超えると、上記化学処理温度を高くしなければならないため、対象部品の組織が変化し易くなり、好ましくない。
上記カルボン酸塩化物としては、例えば、プロピオン酸,酪酸,カプロン酸,カプリル酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,ノナデカン酸,ベヘン酸,安息香酸等のモノカルボン酸;アゼライン酸,セバシン酸,イソフタル酸,テレフタル酸等のジカルボン酸等の塩化物が挙げられる。
【0027】
上記カルボン酸塩化物は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
化学処理の温度は、80〜120°Cが好ましく、処理時間は2〜4時間が好ましい。化学処理の温度が80°C未満であると、改質層が充分に形成されず、一方、化学処理の温度が80°Cを超えると、処理する対象部品の組織の変化に起因する寸方変化等が生じて、対象部品の機能が悪化するおそれがある。
【0028】
また、処理時間が2時間未満では、改質層が十分に形成されず、4時間を超えるような条件では、処理時間が長過ぎるため効率的でない。
上記化学処理の方法としては、例えば、上記カルボン酸若しくはその塩、又は該カルボン酸若しくはその塩を含む溶液を加熱して、その温度を80〜120°Cにし、上記温度の液状物に上記対象部品を浸漬すれば良い。また液状物を塗布し、上記温度条件の雰囲気においても良い。
3)有機硫黄化合物による化学処理
また、有機硫黄化合物により化学処理がなされている場合がある。この有機硫黄化合物による化学処理は、上記の2)の化学処理が施された後、第2の化学処理としてなされていても良い。
【0029】
上記有機硫黄化合物としては、例えばメルカプタン類、サルファイド類、硫化オレフィン類、スルホン類、金属ジチオフォスフェート類、金属ジチオカルバメート類等が挙げられる他、チオアルデヒド類、チオケトン類、チオアセタール類、スルホキシド類、スルホン酸類等が挙げられる。
上記メルカプタン類としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等が挙げられる。
【0030】
上記サルファイド類としては、例えば、ジブチルサルファイド、ジフェニルサルファイド等のモノサルファイド、ジブチルジサルファイド等のジサルファイド、ジフェニルトリサルファイド等のポリサルファイド等が挙げられる。
上記硫化オレフィンとしては、例えば、硫化ペンテン、硫化ブテン、硫化オクテン等が挙げられる。
【0031】
上記スルホン類としては、例えば、ジブチルスルホン、ジドデシルスルホン、ジフェニルスルホン等が挙げられる。
上記金属ジチオフォスフェート類としては、例えば、Znジメチルジチオフォスフェート、Znジブチルジチオフォスフェート、Znブチルイソオクチルジチオフォスフェート等が挙げられる。
【0032】
上記金属ジチオカルバメート類としては、例えば、Znブチルイソオクチルジチオカルバメート、Znジ(テトラプロペニルフェニル)ジチオカルバメート、Zn(エチルフェニル)ジチオカルバメート等が挙げられる。
上記チオアルデヒド類としては、例えば、ヘキサンチアール、シクロヘキサンカルボチアアルデヒド等が挙げられる。
【0033】
上記チオケトン類としては、例えば、4−ヘプタンチオン、2,4−ヘプタンジチオン等が挙げられ、チオアセタール類としては、例えば、1−エトキシ−1−(エチルチオ)ブタン、1,1−ビス(エチルチオ)ペンタン等が挙げられる。
上記スルホキシド類としては、例えば、ジブチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等が挙げられ、上記スルホン酸類としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、フェノール−4−スルホン酸等が挙げられる。
【0034】
上記有機硫黄化合物は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
上記有機硫黄化合物による第2の化学処理の温度は、80〜120°Cが好ましく、処理時間は2〜4時間が好ましい。化学処理の温度が80°C未満であると、改質層が十分に形成されず、一方、化学処理の温度が80°Cを超えると、処理する対象部品の組織の変化に起因する寸方変化等が生じて、対象部品の機能が悪化するおそれがある。
【0035】
また、処理時間が2時間未満では、改質層が十分に形成されず、4時間を超えるような条件では、処理時間が長過ぎるため効率的でない。
上記化学処理の方法としては、例えば上記有機硫黄化合物又は該有機硫黄化合物を含む溶液を加熱して、その温度を80〜120°Cにし、上記温度の液状物に上記カルボン酸塩化物による化学処理が施された対象部品を浸漬すれば良い。また、塗布部材等を用いて、対象部品の全部又は一部にこれらの液を塗布した後、対象部品を上記温度条件の雰囲気においておいても良い。
4)リン化合物による化学処理
上記リン化合物としては、例えばリン酸エステル類、トリデシルアシッドフォスフェート等が挙げられる。上記リン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0036】
上記リン化合物による化学処理の温度は、80〜180°Cが好ましく、処理時間は0.5〜4時間が好ましい。化学処理の温度が80°C未満であると、改質層が十分に形成されず、一方、化学処理の温度が180°Cを超えると、処理する対象部品の組織の変化に起因する寸方変化等が生じて、対象部品の機能が悪化するおそれがある。
【0037】
また、処理時間が0.5時間未満では、改質層が十分に形成されず、4時間を超えるような条件では、処理時間が長過ぎるため効率的でない。
上記化学処理の方法としては、例えば上記リン化合物を含む溶液を加熱して、その温度を80〜180°Cにし、上記温度の液状物に対象部品を浸漬すれば良い。また、塗布部材等を用いて、対象部品の全部又は一部にこれらの液を塗布した後、対象部品を上記温度条件の雰囲気においておいても良い。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更を施すことができる。
【0039】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
まず、アルミニウム合金材としてAC2A材を用いたサイドプレートの表面を改質した下記の実施例1,実施例2及び実施例3と、何らの表面処理も施さない比較例1と、メッキ被膜を形成した比較例2とを作成し、これらを実機のギヤポンプに組み込み、下記の試験条件にてパルス耐久試験を実施し、摩耗量を測定したところ、図7に示す結果を得た。
【0040】
試験条件
油圧負荷:8MPaのオンオフ
回転数:3000rpm
潤滑:ブレーキフルード
負荷サイクル:10000サイクル
実施例1
サイドプレートを25〜35°Cの3%タンニン酸水溶液中に10分浸漬し、タンニン酸による化学処理を施した実施例1を作成した。タンニン酸は、和光純薬工業社製 210−063332であった。
【0041】
実施例2
実施例1で使用したものと同様のサイドプレートを、3%タンニン酸水溶液に更に銅が5%添加された25〜35°Cの溶液中に4時間浸漬した実施例2を作成した。この処理に使用した銅は、みつわ純薬工業社製 特級、粒状銅(純度:99.99%)であった。
【0042】
実施例3
実施例1で使用したものと同様のサイドプレートを、100°Cの塩化ステアリン酸からなる液状物に4時間浸漬した後、洗浄処理を施し、付着した塩化ステアリン酸を除去した。
次に、処理後のサイドプレートを、更に100°Cのポリスルホンからなる液状物に4時間浸漬し、同様に洗浄処理を施した実施例3を作成した。
【0043】
比較例1
何らの表面処理も施していない。
比較例2
実施例1で使用したものと同様のサイドプレートの表面に、10〜20μmの硬質クロムメッキを施した比較例2を作成した。
【0044】
図7に示すように、比較例1及び比較例2については、トルクの増大やポンプ特性の低下等で、ポンプとしての所定の機能を果たせなくなったので、耐久試験を途中で中止した。比較例2については、試験中止の時点で、摩耗量が許容レベルを大幅に超えている。比較例1も摩耗量の許容レベルを大幅に超えている。
これに対して、実施例1、実施例2及び実施例3は、耐久試験の最後までポンプ性能を確保でき、しかも摩耗量が許容レベルよりも格段に少なく、優れた耐久性を実現することができた。
【0045】
【発明の効果】
本発明では、サイドプレート又はこれに摺動する部材の表面の少なくとも一部を化学処理によって改質することにより、両部材間の摺動特性を格段に向上できる。その結果、潤滑性の悪いブレーキフルードやガソリン等の媒体を用いるポンプとしての耐久性を格段に向上できるとともに摩耗に起因した流体漏れによるポンプ効率の低下を抑制することができる。改質層はメッキ層のような明確な界面を持たないので、剥がれ等のおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のギヤポンプの断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図であり、ハッチングを省略してある。
【図3】図1のIII −III 線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】ギヤポンプの要部の一部破断分解斜視図である。
【図6】サイドプレートの断面図である。
【図7】本発明の実施例と比較例を実機に組み込んでの耐久結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
3 駆動ギヤ
4 従動ギヤ
5 吸込室
6 吐出室
12 サイドプレート
12a ギヤ側側面
14 ギヤ室
30,40 支軸
31,41 支持孔
31a,41a 内周面
F 改質層

Claims (2)

  1. ハウジング内部の空洞に一対のサイドプレートを嵌め合わせてギヤ室を区画し、このギヤ室の内部に互いに噛み合う一対のギヤを収容してギヤの支軸を各サイドプレートにそれぞれ形成した一対の支持孔に嵌合支持すると共に、ギヤ室の内部に両ギヤの噛み合い位置を挟んで作動流体の吸込室および吐出室を形成したギヤポンプにおいて、
    上記サイドプレート及びこれに摺動する部材の少なくとも一方の表面の少なくとも一部がタンニン酸による化学処理により耐摩耗性を向上する表面改質を施されてなることを特徴とするギヤポンプ。
  2. タンニン酸により化学処理された層に軟質金属が微細に分散されてなる請求項1記載のギヤポンプ。
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