JP3627273B2 - 透明導電膜付き樹脂基板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、液晶ディスプレイ、タッチパネルなどの表示装置に用いられる透明導電膜付き樹脂基板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置をはじめ、その他の電子ディスプレイデバイス用の透明電極として、透明導電金属酸化物であるITO(Snを含有するIn2 O3 )薄膜が汎用されている。特に近年、液晶表示装置は電子手帳、高機能付き電話機、小型ワープロ、ポータブル情報端末機器等に採用されており、液晶表示素子を用いた製品の小型軽量化に伴い、液晶表示素子自身の小型軽量化と、耐衝撃性に優れた液晶表示素子への要求が高まってきた。その軽量性、耐衝撃性ゆえに、ガラス基板の代わりに透明樹脂基板(以下樹脂基板という)を用いた液晶表示装置やタッチパネルディスプレイが盛んに検討されている。
【0003】
従来の液晶表示装置に用いられる透明導電樹脂基板は、樹脂基板上にスパッタリング法や真空蒸着法等のPVD法によりITO等の透明導電金属酸化物膜(以下透明導電膜という)を形成し、そののちフォトリソグラフィー工程、ウェットエッチング工程によりITO電極の微細加工(以下パターニングという)をして作製される。
【0004】
しかし、樹脂基板と透明導電膜の付着力が充分でなくウェットエッチング工程で透明導電膜が剥離したり、またアンダーカットやサイドエッチングが大きくパターニングが安定しない。この場合、上記の液晶表示素子等の電子ディスプレイデバイスの透明電極として利用する際には、微小なクラック、膜剥離等でも、断線、表示むら、低耐久性などの品質劣化を招くため、生産性を著しく損なうという問題があった。
【0005】
これらの解決方法として、樹脂基板上に有機系または無機系の中間層や、樹脂基板と透明導電膜の間に、RF放電スパッタリング法により中間層としてSiO2 膜を形成する手法が主に採用されている。しかし、活性度の高いRF放電プラズマ、とりわけ酸素プラズマによる樹脂層へのダメージのため、透明導電膜のパターニング特性が安定しない。このため耐久性テスト後に、透明導電膜の剥離が生じるなど、その性能は充分とはいえないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の透明導電樹脂基板の製造方法が有する前述の問題点の解決にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、透明樹脂基板と透明導電金属酸化物薄膜層の間に中間膜を設けた透明導電膜付き樹脂基板において、該中間膜はSiNx からなり、かつ不純物ドープSiターゲットを用いてN 2 および/またはNH 3 を含むガスによりDC放電スパッタリング法で形成されたものであることを特徴とする透明導電膜付き樹脂基板の製造方法を提供する。
【0008】
本発明においては、透明樹脂基板(以下樹脂基板という)、または樹脂基板の保護層上に中間膜を形成する際に、活性度の高いRF放電プラズマ、とりわけ酸素プラズマ、を使用しないで中間膜を形成することが重要である。
【0009】
図1は本発明に係る透明樹脂基板の断面図である。1は樹脂基板を、2は保護層を示す。この保護層2は樹脂基板1の種類により不要となることもある。3は中間膜のSiNx 膜であり、4は透明導電金属酸化物薄膜層(以下透明導電膜という)である。
【0010】
本発明の樹脂基板1としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート等の基板が挙げられ、その特性により用途別に広く用いられる。その他にも、アクリル系、ポリエチレン系、ポリエステル系、ポリイミド系、アラミド系、シリコーン系、フッ素系などの各種樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。ただし、液晶表示素子(LCD)の用途に用いる場合、いずれの樹脂においても、光学異方性の小さい樹脂基板であることが望ましい。
【0011】
本発明における透明導電膜4としてはITO(Sn含有量5〜10wt%)膜、FやSbをドープしたSnO2 膜、Al等をドープしたZnO膜等の透明導電金属酸化物膜が代表例として挙げられるが、その他の透明導電金属酸化物膜でもよい。
【0012】
本発明における保護層2は、樹脂基板1自身が化学的、光学的、機械的に耐久性に欠ける場合や、ガス遮断性能に欠ける場合に必要となる。すなわち、透明導電膜の電極パターニング時に要求される耐酸、耐アルカリ性能や、セル化工程での耐UV、耐溶剤性能、またハンドリング時等に要求される耐擦傷性等に、樹脂基板1の特性が満たない場合、より耐久性に富む安定な有機物または無機物等の保護層2を施すことにより樹脂基板1自身の劣化を防止できる。
【0013】
保護層2としては樹脂基板1との密着性が要求されるため、樹脂基板1の種類により異なるが、一般的にはアクリル系、ポリイミド系、シリコーン系、ウレタン系、およびエポキシ系からなる群から選ばれる少なくとも1種の系の樹脂を主成分とする有機物か、TiO2 、ZrO2 、Al2 O3 、およびSiO2 からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするアルコキシドを焼成・乾燥して得られる無機物、または上記有機物と上記無機物との混合物、または複数層に構成したものなどが代表的な例として挙げられるが、上記耐久性を満足すれば特に限定されない。また、保護層2の膜厚は1〜10μmであることが望ましい。
【0014】
保護層2の形成方法としてはスピンコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法などを用いた湿式法を用いて塗布し、60〜200℃で焼成・乾燥させる。しかし、焼成・乾燥温度は樹脂基板1の耐熱温度により異なるため、樹脂の耐熱温度より10〜20℃程度低い温度で焼成・乾燥を行うことが望ましい。
【0015】
また、保護層2の膜厚を薄くする場合、エタノール等の溶媒で適宜希釈し、塗布液粘度を下げればよい。樹脂基板1に保護層2を形成する際に、上記溶液のぬれ性が悪く、中間層3を形成することが困難な場合、アクリル系樹脂を主成分としたプライマーにて表面処理を行い複数層の構成にするとよい。
【0016】
SiNx からなる中間膜3のターゲットには不純物ドープSiターゲットを用いる。不純物としてはP、B、Fe、Cr、およびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含むものがよく、カラー液晶表示装置の作動を阻害するものでなければ他のIII 族やV族の元素あるいは他の金属元素でも用いうる。特に、比抵抗が104 Ωcm以下になるように不純物をSiにドープしたターゲットを用いると、制御が容易で、成膜速度が速く、膜質の均一性に優れるDC放電スパッタリングが可能となる。
【0017】
ここで不純物Siターゲットの比抵抗値が減少する機構は必ずしも明確ではないが、III 族やV族の元素をSiにドープした場合は禁止帯内にアクセプター準位やドナー準位が形成され比抵抗が下がり、また金属元素をSiにドープさせた場合は金属元素の導電率が高いため全体として比抵抗が下がると考えられる。
【0018】
SiNx からなる中間膜3の形成方法としてはDC放電スパッタリングがもっとも好ましく、スパッタリングに使用するガスはN2 やNH3 だけでもよいが、放電の安定にはAr、He等の希ガスとの混合ガスが好ましい。
【0019】
またSiNx 膜厚は2nm以上50nm以下が好ましい。2nmよりも薄いと充分なガス遮断性能や密着性能が得られない。特に10nm以上であるとガス遮断性能や密着性能において好ましい結果が得られる。また、50nmよりも厚いと膜中の内部応力が大きくなり、クラックなどが生じやすい。
【0020】
SiNx からなる中間膜3の組成比は、ガス遮断性能の観点から、窒素(N)とケイ素(Si)との原子比N/Siは、1.3以上1.36以下が好ましい。また、原子比N/Siが1.3未満ではSiNx 膜が吸収膜となることからも前記範囲が好ましい。特に、原子比N/Siが1.33であるとガス遮断性能や密着性能において好ましい結果が得られる。
【0021】
原子比N/Siは、前記のスパッタリングに使用するガスの組成、またはスパッタリング電力を制御することによって調整可能である。
【0022】
【作用】
本発明におけるSiNx からなる中間膜3は成膜時にO2 ガスを用いていないため、SiO2 膜を形成する際に問題となる反応性に富むO2 プラズマがないこと、さらにSiターゲットの不純物のドープにより導電性を向上させたことによって、活性度の高いプラズマを伴うRFスパッタリングではなく、DCスパッタリングが使用でき、樹脂基板1のプラズマによる劣化を極力抑えうる。
【0023】
また、本発明におけるSiNx からなる中間膜3は、透明導電膜4の成膜の際の樹脂基板1からの有機性ガスを遮断し、透明導電膜4を劣化させないため、付着力が高く透明導電膜4のパターニング性を向上させるという作用を有する。
【0024】
さらに、DC放電スパッタリング法が可能なため、RF放電スパッタリング法よりも制御が容易となり、非常に高価なマッチングボックスが不用で、成膜速度も著しく速く、生産性に優れるという作用も有する。
【0025】
【実施例】
樹脂基板1としては1mm厚のポリカーボネート(レキサン8010C)基板を用いた。その基板表面をアクリル系樹脂によりプライマー処理した後、シリコーン系樹脂(メチルトリメトキシシランなどアルコキシシランを主成分とするもの)とコロイドシリカとを混合し溶媒希釈した溶液中に浸し、基板を取りだした後、115〜125℃で焼成・乾燥して樹脂基板1の両面に保護層2を10μm形成した。
【0026】
その上にPを1ppmドープしたSiターゲット(比抵抗2.9Ω・cm)を用いて、ArガスとN2 ガスを7対3の比で圧力が4×10−3Torrになるように導入し、DCマグネトロンスパッタリング法によりPドープSiNx 膜(以下DC−SiNx という)を膜厚10nmで形成した。さらにその上にITOからなる透明導電膜4をDCマグネトロンスパッタリング法により膜厚が50nmになるように作製した。スパッタリング成膜時の基板温度は70℃であった。
【0027】
上記ITO膜上にフォトリソグラフィー法によりライン状のレジストを形成し、0.2規定の塩酸のエッチング液によりITO膜のパターニングを行った。その結果を表1に示す。
【0028】
なお、比較のために上記保護層2を形成した樹脂基板1に直接ITO透明導電膜4を50nm成膜したもの、また保護層2とITO膜4の間に中間膜3としてRF放電スパッタリングによりSiO2 膜(以下RF−SiO2 )、またはSiNx 膜(以下RF−SiNx )をそれぞれ10nm形成したのち、ITO膜4を50nm成膜し、ITO膜をパターニングしたものも表1に示す。
【0029】
本発明におけるSiNx 膜を中間膜3として用いた場合は、中間膜3を用いない場合や中間膜3をRF−SiO2 膜やRF−SiNx 膜としたものよりもサイドエッチング量が少なく1μm以下であり、パターニング性に優れていた。
【0030】
表1に示した4種類のサンプルと同じ膜構成のものについて、ITO成膜後のシート抵抗値(Ω/□)の測定結果を表2に示す。中間膜としてDC−SiNx 膜を用いると、ITO膜のシート抵抗値は、中間膜としてRF−SiO2 膜やRF−SiNx 膜を用いた場合と同様、中間膜のないものより低くなった。
【0031】
ITOからなる透明導電膜4の耐久性試験については、表2で示されるサンプルについて、恒温恒湿曹内にて温度60℃、湿度90%の雰囲気に保ち240時間放置し、ITO薄膜のシート抵抗値(Ω/□)と表面状態変化を調べた。基板温度が120℃のサンプルについての結果を表3に、また、基板温度が70℃のサンプルについての結果を表4に記す。
【0032】
表3、4より、全てのサンプルにおいて、外観上の表面状態の変化はみられないが、中間膜3としてDC−SiNx 膜を用いると、中間膜としてRF−SiO2 膜やRF−SiNx 膜を用いた場合と同様、ITO膜の抵抗上昇を抑えうることが分かった。
【0033】
前記耐久性試験前後でITOから成る透明導電膜4の表面から基板に届く程度の傷をカッターで1〜2mm□間隔で100個の碁盤の目状につけて、JIS−Z1522(1989)に示す基準を満たすテープにより、テープ剥離テストを行った。この結果、全てのサンプルについて100個中1個もITO薄膜の剥離はみられなかった。
【0034】
本発明の透明導電膜付き樹脂基板において、樹脂基板1と透明導電膜4との付着力、耐久性のもうひとつの尺度として、耐薬品性試験を試みた。耐酸性としては2重量%の塩酸中に浸漬し、耐アルカリ性では0.6重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、そして耐溶剤性は透明導電金属酸化物薄膜成膜側にアセトンを滴下し、それぞれ常温で1時間放置後、その表面状態を観察した。
【0035】
以上の耐薬品性試験を表2で示される基板温度が70℃のサンプル4種について行った結果を表5に示す。なお、表2で示される基板温度が120℃のサンプル4種について行ったところ表5と同じ結果を得た。
【0036】
表5の結果から、中間膜3としてDC−SiNx 膜を用いると、中間膜としてRF−SiO2 膜やRF−SiNx 膜を用いた場合と同様、耐薬品性、耐溶剤性が良くなることが分かった。
【0037】
本発明の透明導電膜付き樹脂基板において、中間膜3のガス遮断性能を調べるため、表2で示される基板温度120℃のサンプル4種について、ITO膜の成膜後に、ITO膜中に取り込まれたC量をC/In比として、SIMSで測定した結果を表6に示す。Cの取り込み量が少ないほど、ITO成膜中に樹脂基板1から出るC系アウトガスの遮断性能が優れることが分かった。
【0038】
表6より中間膜3としてDC−SiNx 膜を用いると、中間膜を用いない場合や、中間膜としてRF−SiO2 膜やRF−SiNx 膜を用いた場合よりも、ITO膜中に取り込まれたC量が少量で、アウトガス遮断性能に優れることが分かった。
【0039】
さらに、本発明の透明導電膜付き樹脂基板について、表1に示される電極パターニング済み基板(中間膜がDC−SiNx のもの)を用いて液晶表示素子の模擬セルを作成し、その耐久性を評価した結果、問題なく作動した。
【0040】
次に、膜厚を変化させ、また、原子比N/Siを変化させた以外は前記と同様にして、DCマグネトロンスパッタリング法によるDC−SiNx 膜とRF放電スパッタリング法によるRF−SiO2 膜とを成膜した。得られた各種サンプルについて、従来のエチレン/ビニルアルコール系(EVA)膜のガス透過度を基準とした相対ガス透過度をそれぞれ測定した。結果を図2に示す。なお、図2において、原子比N/Siが1.3と1.36との結果は、ほぼ同一の結果であったので同じプロットで表している。
【0041】
図2より分かるように、原子比N/Siが1.3以上1.36以下では、広い膜厚範囲で優れたガス遮断性が得られ、特に、膜厚が、30〜50nmでは、従来のRF−SiO2 膜やEVA膜よりも優れたガス遮断性が得られる。さらに、原子比N/Siが1.33の場合では、極めて優れたガス遮断性が得られる。
【0042】
以上の各種DC−SiNx 膜を用いて液晶表示素子の模擬セルを作成し、その耐久性を評価した結果、問題なく作動した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
【発明の効果】
本発明の透明導電膜付き樹脂基板は、樹脂層と透明導電膜の間に不純物ドープSiターゲットを用いてDC放電スパッタリングにより不純物ドープSiNx 膜を設けることで透明導電膜の付着力が向上し、透明導電膜のパターニング性が向上し良好な透明電極パターンが形成できるという効果がある。
【0050】
また、SiNx 膜の作製時に、DC放電スパッタリング法を用いるため、制御が容易で、成膜速度も著しく速いため生産性に優れるという効果も有する。さらに、RF放電を利用しないために、非常に高価なマッチングボックスが不用となり、装置コストの低減がはかれるという経済的効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る透明導電樹脂基板の断面図
【図2】N/Si原子比と相対ガス透過度との関係を示す図
【符号の説明】
1:透明樹脂基板
2:樹脂保護層
3:SiNx からなる中間膜
4:透明導電膜
Claims (1)
- 透明樹脂基板と透明導電金属酸化物薄膜層の間にSiNx からなる中間膜を設けた透明導電膜付き樹脂基板の製造方法において、該中間膜は不純物ドープSiターゲットを用いてN2 および/またはNH3 を含むガスによりDC放電スパッタリング法により形成されることを特徴とする透明導電膜付き樹脂基板の製造方法。
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