JP3633103B2 - 四輪駆動車 - Google Patents
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Description
本発明は、主原動機の回転駆動力を前輪及び後輪に伝達するようにした四輪駆動車に係り、特に駆動力の伝達を流体圧伝動機構で行うようにした四輪駆動車に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の四輪駆動車として、従来は、例えば特開昭63−176734号公報及び特開平1−223030号公報に記載されているように、前輪と連動回転し、回転速度に応じた油圧を発生する例えばベーンポンプで構成される第1の油圧ポンプと、後輪と連動回転し、回転速度に応じた油圧を発生する同様にベーンポンプで構成される第2の油圧ポンプと、前記第1及び第2の油圧ポンプの一方の吐出口と他方の吸込口とを夫々連通する油路とを備えた構成を有するものが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の四輪駆動車にあっては、油圧伝動装置を利用しているので、プロペラシャフトを省略して軽量化、車室内スペースの確保、騒音や振動の低下等を図ることができるが、高速走行時には前後輪が共に高速回転することによって、油圧ポンプの吐出流量が多くなり、これによって配管抵抗が増大し、そのためシステムの引きずり抵抗が増大し圧力損失が増大することにより燃費の悪化を招く他、システムにおける油温の上昇や第2の油圧ポンプの吸入口で作動油の吸込みが追いつかなくなり、圧力が異常に低下することにより気泡が発生するキャビテーションを起こし易くなるという未解決の課題がある。ここで、流量増大時の配管抵抗を低減するには配管を大径化すればよいが、スペースやコスト等を考えるとそれにも限界がある。
【0004】
このような高速走行時の燃費悪化を抑制するために、第2の油圧ポンプを可変容量化し、ある車速以上では流量を頭打ちにさせることが考えられるが、従来例では第2の油圧ポンプとしてベーンポンプを採用している関係で、揺動軸の回転方向によって吸入口と吐出口とが反転することから、第1の油圧ポンプ及び第2の油圧ポンプ間を連通する一対の流路の一方は例えば前進時には高圧側となり、後進時には低圧側となり、他方は前進時に低圧側となり、後進時には高圧側となって車両の進行方向によって低圧側と高圧側とが反転することになるため、可変容量モータの吐出量を差圧によって検圧する場合に、一対の流路の双方に差圧検出手段を設け、これらを車両の進行方向に応じて選択する必要があり、構成が複雑となると共に、前後輪の回転速度が略等しく駆動力を伝達していない無負荷作動時には、高圧側に設けられた差圧検出手段が油圧ポンプの吸込みに対して抵抗となり、キャビテーションを起こし易くなるという新たな課題を生じるととになる。
【0005】
この新たな課題を解決するため、本出願人は、先に特願平6−262639号に記載したように、従動軸側の流体圧駆動手段の流体圧モータとして斜板式可変容量モータを適用し、この斜板式可変容量モータの斜板を、その傾斜角が所定の揺動軸を中心として各ピストンのストローク方向に向けて揺動自在に軸支すると共に、上記揺動軸の設定位置を、シリンダブロックと斜板との対向距離が小さい方向にシリンダブロックの回転軸線からオフセットさせて設定し、さらに斜板の傾斜角が所定の最大傾斜角となったときに斜板に当接可能なストッパを設けた構成とすることにより、斜板を車速に応じて電子制御する必要がなく、しかも斜板の傾斜角を簡単な構造で自動調整し、流体圧モータの構造を簡素化して小型化すると共に、信頼性を向上することができる四輪駆動車を提案している。
【0006】
しかしながら、この先行技術でも、駆動軸側の流体圧ポンプ及び従動軸側の流体圧モータの容量を高精度に設定して製作しないと、前後回転数差に対する従動軸側への伝達トルク特性の個体バラツキが発生し、最適な四輪駆動状態が得られずに、運転者に違和感を与えてしまうという新たな課題がある。
【0007】
そこで、駆動軸側の流体圧ポンプ及び従動軸側の流体圧モータの製作時に、それらポンプ及びモータの容量を高精度に設定することが考えられるが、製作時に各種の性能試験等を行わなければならないので、ポンプ及びモータの高騰化に繋がってしまう。
【0008】
また、駆動軸側の流体圧ポンプ及び従動軸側の流体圧モータの容量を高精度に設定したとしても、駆動輪及び従動輪の一方に異径タイヤを装着すると、前後回転数差に対する伝達トルク特性が変化してしまい、運転者に違和感を与えてしまう。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来例の課題に着目してなされたものであり、簡易な装置構成により前後回転数差に対する従動軸側への伝達トルク特性のバラツキを回避することが可能な四輪駆動車を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る四輪駆動車は、主原動機により駆動される駆動車軸と、該駆動車軸に連動して回転し、作動流体を吐出する流体圧ポンプと、従動車軸に連動して回転する流体圧モータと、前記流体圧ポンプの吐出口と前記流体圧モータの吸入口とを連通する第1の流路と、前記流体圧ポンプの吸入口と前記流体圧モータの吐出口とを連通する第2の流路とを備えた四輪駆動車において、前記第1の流路内の流体圧力を検出する圧力検出手段と、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、前記流体圧モータの容量を変更制御するモータ容量制御処理手段とを備え、前記モータ容量制御処理手段は、前記走行状態検出手段の走行状態検出値に基づいて前記駆動車軸及び従動車軸に回転速度差が発生していないときに制御処理を開始するとともに、前記圧力検出手段の圧力検出値が所定値以上であるときに、一旦、前記流体圧モータの容量が前記最適容量を上回る容量値となるように急激に増大させ、その後、前記最適容量となるように徐々に前記容量値を減少させていき、前記圧力検出手段の圧力検出値が所定値未満であるときに前記流体圧モータの容量を小さくして最適容量となるように変更制御するようにしている。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の四輪駆動車において、前記走行状態検出手段は、車速を検出する車速検出手段で構成され、前記モータ容量制御手段は、前記車速検出手段の車速検出値が所定の低速状態で走行しているときに、前記流体圧モータの容量制御を開始するようにした。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の四輪駆動車において、前記走行状態検出手段は、ステアリング角度を検出する操舵角検出手段を備え、前記モータ容量制御手段は、操舵角検出手段のステアリング角度の検出値が零であるときに、前記流体圧モータの容量制御を開始するようにした。
【0014】
さらに、請求項4記載の発明は、請求項3記載の四輪駆動車において、前記走行状態検出手段は、アクセルペダルを踏み込んでいるか否かを検出するアクセル踏み込み検出手段を備え、前記モータ容量制御手段は、前記アクセル踏み込み検出手段によりアクセルペダルを踏み込んでいないことを判断したときに、前記流体圧モータの容量制御を開始するようにした。
【0015】
【発明の効果】
請求項1の四輪駆動車によると、モータ容量制御処理手段は、走行状態検出手段の走行状態検出値に基づいて駆動車軸及び従動車軸に回転速度差が発生していないときに制御処理を開始するとともに、第1の流路内の圧力を検出している圧力検出手段の圧力検出値が所定値以上であるときに流体圧モータの容量を大きくしていき、圧力検出手段の圧力検出値が所定値未満であるときに流体圧モータの容量を小さくして最適容量となるように変更制御しているので、現在搭載している流体圧モータが高精度にモータ容量設定されていなくても、前記モータ容量制御処理手段によって最適なモータ容量に変更制御される。これにより、車両が有する前後輪の回転数差に対する従動輪側への駆動トルク特性のばらつきが確実に防止され、最適な四輪駆動走行を提供することができる。
【0016】
また、本発明は、流体圧ポンプの容量が高精度に設定されていなくても、前記モータ容量制御処理によって前後輪の回転数差に対する後輪側への駆動トルクの最適な特性を得ることができるので、製作段階における流体圧ポンプ及び流体圧モータの高精度な容量設定が不要となり、流体圧ポンプ及び流体圧モータを低コストで製作することができる。
【0017】
そして、本発明では、第1の流路内の圧力を検出している圧力検出手段の圧力検出値に基づいてモータ容量制御処理の開始時期を判断しているので、装置構成の簡便化を図ることができる。
【0018】
さらに、駆動輪又は従動輪の一方に異径タイヤを装着した場合には、流体圧ポンプ及び流体圧モータの一方の容量が変化するが、前記モータ容量制御処理を行うことによって、前後輪の回転数差に対する後輪側への駆動トルクの特性が常に最適値に補正されるので、正常な四輪駆動走行を得ることができる。
【0019】
さらにまた、本発明では、モータ容量制御処理手段は、前記圧力検出手段の圧力検出値が所定値以上であるときに、一旦、前記流体圧モータの容量が前記最適容量を上回る容量値となるように急激に増大させ、その後、前記最適容量となるように徐々に前記容量値を減少させていくようにしているので、短時間で最適容量に設定することが可能となり、モータ容量制御の安定性を高めることができる。
【0020】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の四輪駆動車の効果を得ることができるとともに、前記モータ容量制御手段は、前記車速検出手段の車速検出値が所定の低速状態で走行しているときに、前記流体圧モータの容量制御を開始するので、車両走行の初期段階において、流体圧モータを最適容量に設定することができる。
【0021】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の四輪駆動車の効果を得ることができるとともに、モータ容量制御手段は、操舵角検出手段のステアリング角度の検出値が零であるとき、即ち、車両が直進走行していることを確認してから前記流体圧モータの容量制御を開始するので、車両旋回時に前後輪に回転速度差が発生し、流体圧ポンプ及び流体圧モータの一方の吐出流量が増大している状態でのモータ容量制御処理を回避することが可能となり、さらに高精度にモータ容量制御処理を行うことができる。
【0022】
さらに、請求項4記載の発明は、請求項3記載の四輪駆動車の効果を得ることができるとともに、モータ容量制御手段は、アクセル踏み込み検出手段によりアクセルペダルを踏み込んでいないことを判断したときに、前記流体圧モータの容量制御を開始するので、流体圧ポンプの吐出流量が増大している状態でのモータ容量制御処理を回避することが可能となり、さらに高精度にモータ容量制御処理を行うことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は本願発明を前輪駆動車をベースとした四輪駆動車に適用した場合の第1の実施形態を示す概略構成図である。図中、1は主原動機としてのエンジンであって、このエンジン1の回転駆動力が変速機2を介して前輪側差動装置3に入力され、この差動装置3の出力側に駆動車軸としての前車軸4を介して前輪5が連結されている。
【0024】
前輪側差動装置3は、ディファレンシャルギアケース3a内に形成されたリングギア3bが、変速機2の出力側に連結したギア2aに噛合して回転駆動する。このディファレンシャルギアケース3a内に形成された一対のピニオンシャフト3cには、ピニオン3dが取り付けられ、これらピニオン3dに一対のサイドギア3eが噛合し、これらサイドギア3eに上記前車軸4が連結されている。
【0025】
また、ディファレンシャルギアケース3aには、リングギア3bと並列に第2のリングギア3fが形成されている。この第2のリングギア3fは、これに噛合するギア3gを介して、駆動側流体圧駆動手段を構成する流体圧ポンプとしての吸入絞り型ピストンポンプ6の回転軸6aに連結されている。
【0026】
この吸入絞り型ピストンポンプ6の吸込口6bは、リザーバタンク7内に配設されたストレーナ7aに連結されていると共に、第2流路としての低圧配管8Lを通じて、前後進切換用の電磁方向切換弁9のタンクポートTに接続されている。また、該吸入絞り型ピストンポンプ6の吐出口6cは、第1の流路としての高圧配管8Hを通じて、前後進切換用の電磁方向切換弁9のポンプポートPに接続されている。
【0027】
また、前記吸入絞り型ピストンポンプ6の吐出口6cに接続する高圧配管8Hには、圧力検出手段としての圧力スイッチ20が介挿されている。この圧力スイッチ20は、高圧配管8Hの圧力が所定の基準圧力Psを越えたときに、後述するコントローラ130の入力インタフェース回路130a1 に対してON信号SPONを出力するようになっている。
【0028】
一方、前述した前後進切換用の電磁方向切換弁9は、入出力ポートAが後述する流体圧モータとしてのフリー斜板式可変容量モータ10の流入ポート10aに接続し、入出力ポートBがフリー斜板式可変容量モータ10の流出ポート10bに接続される。そして、ソレノイド9aが非通電状態であるノーマル位置でポンプポートPを入出力ポートAに、タンクポートTを入出力ポートBに夫々連通され、ソレノイド9aが通電状態であるオフセット位置でポンプポートPを入出力ポートBに、タンクポートTを入出力ポートAに夫々連通される。
【0029】
すなわち、ノーマル位置で高圧配管8Hの高圧油を斜板式可変容量モータ10の流入ポート10aに、低圧配管8Lを流出ポート10bに連通させて回転軸10cを前進走行時の回転方向に回転駆動し、逆にオフセット位置で高圧配管8Hの高圧油を可変容量モータ10の流出ポート10a(前進時は流入ポート)に、低圧配管8Lを流入ポート10b(前進時は流出ポート)に連通させて回転軸10cを後進走行時の回転方向に回転駆動する。
【0030】
なお、上記電磁方向切換弁9は、斜板式可変容量モータ10に内蔵され、出力ポートA,Bがそれぞれ配管を介することなく可変容量モータ10の流出入ポート10a及び10bに連結されている。
【0031】
また、電磁方向切換弁9のソレノイド9aへの通電は、ソレノイド9aが図示しないシフトレバーで後進を選択されたときにのみオン状態となるシフト位置検出スイッチ9bを介して直流電源9cに接続されることにより、前進走行時には非通電状態に、また、後進走行時には通電状態にそれぞれ制御される。
【0032】
さらに、吸入絞り型ピストンポンプ6の吸込口6bと吐出口6cとの間に、トルク制限手段としてのピストンポンプ6の吐出圧の上限を決めるリリーフ弁11が介装されている。また、ピストンポンプ6と電磁切換弁9との間における高圧配管8Hと低圧配管8Lとの間が連通配管12により連通され、この連通配管12に対して、低圧配管8L側から高圧配管8H側への流体の流れを許容する逆止め弁13が介装されていると共に、連通配管12と並列に配設された第2の連通配管14に対して、逆止め弁13と並列関係に固定オリフィス15が接続されている。
【0033】
フリー斜板式可変容量モータ10は、図2及び図3に示すように、ポンプハウジング100に対して回転軸10cが回転自在に支持されている。この回転軸10cのハウジング100内の位置に、円筒状のシリンダブロック101が同軸状にセレーション嵌合されている。このシリンダブロック101内には、このシリンダブロック101の回転方向に沿って奇数個,例えば7個のピストン102が等間隔で配置されている。各ピストン102は、夫々シリンダブロック101にその軸方向と平行な方向に摺動自在に支持されている。
【0034】
また、ハウジング100内のシリンダブロック101の右端面に対向する位置に、斜板103が配設されている。この斜板103は、円板部103aと、その上端から上方に突出する突出部103bとで構成され、その傾斜角が所定揺動軸104を中心として揺動自在となっている。この揺動軸104は、回転軸10cの中心軸105に対して斜板103がシリンダブロック101の対向面に接近する方向即ち図2で上方に所定量εだけオフセットして配設されている。
【0035】
また、斜板103には、その円板部103aのシリンダブロック101と対向する面にピストン102の右端に被冠したシュー108がシューホルダ109によって摺接され、このシューホルダ109がシリンダブロック101の内周面に配設された押圧スプリング110によってニードル111を介して斜板103側に押圧されている。
【0036】
したがって、斜板103にピストン102から外力が伝達されることになるが、斜板103の揺動軸104からみて下側では、ピストンから斜板に伝達される力によって揺動軸回りに作用するモーメントが、揺動軸104と中心軸105とを一致させた場合に比較して、モーメントの腕が偏心量εに応じた分だけ長くなることにより大きな値となり、一方揺動軸104からみて上側では、逆に揺動軸回りに作用するモーメントが、モーメントの腕が偏心量εに応じた分だけ短くなることにより小さな値となり、結局、斜板103は、揺動軸104から上側即ち突出部103側がシリンダブロック101に近づくように傾くことになる。
【0037】
この斜板103の傾転角は、各ピストンによって斜板に伝達される外力が大きくなる程増加し、流体圧モータとしての吐出量が増加する。このピストン102から斜板103に伝達される外力は、ピストンの流体圧室の圧力、即ちモータに供給されるピストンポンプ6の吐出量とモータでの吸込量との差の作動流体圧力に比例するので、この作動流体圧力が上昇することにより、これに応じて自動的に斜板103の傾転角が大きくなる。
【0038】
さらに、斜板103は、付勢機構113によって傾転角が小さくなる方向に付勢されている。この付勢機構113は、斜板103の突出部103bの左端面に当接して、この斜板103の突出部103bを右方向、即ち斜板103の傾転角を小さくする方向に押圧するコントロールピストン113aを有するシリンダ装置と、このシリンダ装置の流体圧室113bに配置され、コントロールピストン113aを斜板103側に付勢するコイルスプリング113cと、流体圧室113bを斜板式可変容量モータ10内の低圧部、例えば低圧配管8L側に接続したり大気に開放する連通管113dと、この連通管113dの途中に介装されたオリフィス113eとから構成されている。
【0039】
一方、斜板103の突出部103bとは反対側の下端側に斜板103の最大傾転角を規制して斜板式可変容量モータ10の容量qM を規制する容量規制手段としての容量規制機構115が配設されている。
【0040】
この容量規制機構115は、ポンプハウジング100に内装された例えばステッピングモータで構成されるステップモータ116と、このステップモータ116の回転軸に連結されたネジ軸117と、このネジ軸117に螺合され且つガイド部材によって回転不能に案内されたボールナット118と、このボールナット118に突出形成されて斜板103の円板部103aの右端側に当接する係止片119と、ボールナット118に当接して大容量位置及び小容量位置を規制するストッパー120L及び120Sとで構成されている。
【0041】
また、シリンダブロック101の左端面にはハウジング100に固定されたバルブプレート121が摺接され、このバルブプレート121と各ピストン102を収容するボア122との間に連通孔123が穿設されている。バルブプレート121には、図3に示すように、連通孔123の移動軌跡に沿って左半部に流入ポート10a(後進時流出ポート)が、右半部に流出ポート10b(後進時流入ポート)が形成されている。
【0042】
ここで、前述したピストンポンプ6は、回転軸6aの回転方向によって吸込口6bと吐出口6cとが入れ替わることがなく、その吐出流量は、図7の実線S1 で示すように車速が“0”から車速V1 に達するまでの間では、車速の増加に比例して比較的大きな増加率で増加し、車速V1 以上では最大吐出流量Qmax で飽和する流量特性を有している。なお、容量規制機構115のボールナット118がストッパー120L側に移動している状態での斜板式可変容量モータ10の固有吐出量は、前記ピストンポンプ6の固有吐出量よりも大きくなるように設定されている。
【0043】
一方、斜板式可変容量モータ10の回転軸10cにギア16が取り付けられ、このギア16に、後輪側差動装置17のディファレンシャルギアケース17aに形成されたリングギア17bが噛合されている。この後輪側差動装置17は、前述した前輪側差動装置3と略同様の構成を有し、ディファレンシャルギアケース17a内に一対のピニオンシャフト17cが形成され、該一対のピニオンシャフト17cに取り付けられたピニオン17dに一対のサイドギア17eが噛合している。これらサイドギア17eには、後車軸18が連結され、この後車軸18に後輪19が連結されている。
【0044】
そして、容量規制機構115のステップモータ116は、コントローラ130によって駆動制御される。
このコントローラ130は、図4に示すように、マイクロコンピュータ130aと、駆動回路130bとで構成されており、マイクロコンピュータ130aは、A/D変換機能を有する入力インタフェース回路130a1 と、所定のプログラムに従ってステップモータ116を制御するための演算処理を行う演算処理装置130a2 と、ROM、RAM等の記憶装置130a3 と、制御信号CSを出力する出力インタフェース回路130a4 とを備えている。
【0045】
そして、入力インタフェース回路130a1 は、前述した圧力スイッチ20、操舵角検出手段としての操舵角センサ22、車速検出手段としての車速センサ24及びアクセル踏み込み検出手段としてのアクセルスイッチ26と接続しており、高圧配管8Hの圧力が基準圧力Psを越えたときに圧力スイッチ20からON信号SPONが入力され、ステアリングホイール(図示せず)を操舵した角度(ステアリング操舵角)αが操舵角センサ22から入力され、従動輪となる後輪側の車輪速を車速とした車速検出値Vが車速センサ24から入力され、アクセルを踏み込んでいるときにアクセルスイッチ26からアクセルON信号SAONが入力される。
【0046】
ここで、圧力スイッチ20の基準圧力Psは、容量を高精度に設定したピストンポンプ6及び斜板式可変容量モータ10を搭載している車両が、ステアリング角度を“0”として直進走行を行い、アクセルペダルの踏み込みを解除して所定の第1基準車速VS1から第2基準車速VS2(VS1<VS2)の範囲の一定速度で惰性走行状態となっているときの高圧配管8H内の圧力値と同一値に設定されている。
【0047】
これにより、圧力スイッチ20がON信号SPONを出力する場合には(圧力スイッチ20がON状態)、現在搭載している斜板式可変容量モータ10の容量が小さいため、或いはピストンポンプ6の容量が大きいために、高圧配管8H内の圧力値が基準圧力Psを越えていると判断することができる。逆に、圧力スイッチ20がON信号SPONを出力していない場合には(圧力スイッチ20がOFF状態)、現在搭載している斜板式可変容量モータ10の容量が大き過ぎるため、或いはピストンポンプ6の容量が小さいために、高圧配管8H内の圧力値が基準圧力Psを下回っていると判断することができる。
【0048】
また、前述した駆動回路130bは、マイクロコンピュータ130aから出力される制御信号CSに応じて正転駆動パルスCSP 、若しくは逆転駆動パルスCSN をステップモータ116に出力する。なお、前記正転駆動パルスCSP がステップモータ116に出力されると、ボールナット118がストッパー120S側に移動して斜板式可変容量モータ10は容量が減少していく。また、前記逆転駆動パルスCSN がステップモータ116に出力されると、ボールナット118がストッパー120L側に移動して斜板式可変容量モータ10は容量が増大していく。
【0049】
次に、上記実施例の動作をコントローラ130の制御処理を示す図5及び図6のフローチャートを伴って説明する。
この制御処理は、エンジン1が回転している状態即ちイグニッションスイッチがオン状態である間に所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ずステップS1において、車速センサ24で検出した車速検出値Vを読み込み、次いでステップS2に移行して、操舵角センサ22で検出した角度(ステアリング操舵角)αを読み込む。
【0050】
次いで、ステップS3に移行して、モータ容量制御処理が完了していることを表す処理完了フラグFCが“1”にリセット(モータ容量制御処理が完了したことを示す。)されているか否かを判定し、この処理完了フラグFCが“1”にリセットされているときには、タイマ割込処理を終了し、他方、処理完了フラグFCが“0”にリセット(モータ容量制御処理が行われていないことを示す。)されているときには、ステップS4に移行する。
【0051】
このステップS4では、車速検出値Vが、第1基準車速VS1を上回っているか否かを判定し、この車速検出値Vが第1基準車速VS1を上回っているときには、ステップS5に移行し、他方、車速検出値Vが第1基準車速VS1以下であるときには、モータ容量制御処理を行う状態ではないと判断してタイマ割込処理を終了する。
【0052】
前記ステップS5では、車速検出値Vが第2基準車速VS2を下回っているか否かを判定し、この車速検出値Vが第2基準車速VS2を下回っているときにはステップS6に移行し、他方、車速検出値Vが第2の基準車速VS2以上ではモータ容量制御処理を行う状態ではないと判断してタイマ割込処理を終了する。
【0053】
前記ステップS6では、ステアリング操舵角αが“0”であるか否かを判定し、このステアリング操舵角αが“0”であるときにはステップS7に移行し、他方、ステアリング操舵角αが“0”以外の値を示しているときにはモータ容量制御処理を行う状態ではないと判断してタイマ割込処理を終了する。
【0054】
前記ステップS7では、アクセルペダルの踏み込みによりアクセルスイッチ26がON状態となっているか否かを判定し、アクセルスイッチ26がON状態となっているときにはモータ容量制御処理を行う状態ではないと判断してタイマ割込処理を終了し、アクセルスイッチ26がOFF状態となっているときにはステップS8に移行する。
【0055】
そして、前記ステップS8では図6で示すモータ容量制御処理を実行し、その後にタイマ割込処理を終了する。
この図6のモータ容量制御処理は、ステップS10において圧力スイッチ20がON状態となっているか否を判定し、ON状態となっているときにはステップS11に移行し、OFF状態となっているときにはステップS12に移行する。
【0056】
前記ステップS11では、モータ容量を所定容量まで減少させたことを表す容量減少処理フラグFSが“1”にリセット(容量減少処理が完了したことを示す。)されているか否かを判定し、この容量減少処理フラグFSが“1”にリセットされているときにはステップS13に移行し、他方、容量減少処理フラグFSが“0”にセット(容量減少処理が行われていないことを示す。)されているときにはステップS14に移行する。
【0057】
前記ステップS13では、ボールナット118をストッパ─120L側に僅かに移動させるために小さな値に設定した第1補正用逆転駆動パルスCSN1を、逆転駆動パルスとしてステップモータ116に出力する。そして、ステップS15に移行し、処理完了フラグFCを“1”にセットしてからタイマ割込処理を終了する。
【0058】
また、容量減少処理フラグFSが“0”にセットされているために前記ステップS14に移行すると、このステップS14では、ボールナット118をストッパ─120L側に大きく移動させるための大きな値に設定した第2補正用逆転駆動パルスCSN2(CSN2≫CSN1)を、逆転駆動パルスとしてステップモータ116に出力する。そして、タイマ割込処理を終了する。
【0059】
一方、ステップS10において圧力スイッチ20がOFF状態となっているときに移行したステップS12では、容量減少処理フラグFSを“1”にセットする。次いで、ステップS16に移行し、ボールナット118をストッパ─120S側に移動させる補正用正転駆動パルスCSP を、正転駆動パルスとして入力し、その後にタイマ割込処理を終了する。
【0060】
ここで、容量規制機構115、コントローラ130、図5及び図6の制御処理が、本発明のモータ容量制御処理手段に相当する。
次に、上記構成に基づいた車両動作について説明する。
【0061】
今、車両が乾燥路面等の高摩擦係数路に停車していて、イグニッションスイッチ(図示せず)がオフ状態にある状態からイグニッションスイッチをオン状態としてエンジンを始動させると、このイグニッションスイッチのオン状態によってコントローラ130に電源が投入され、これによって処理完了フラグFC、容量減少処理フラグFSの両者を“0”にリセットする初期化が行われるとともに、一旦ステップモータ116を駆動してボールナット118をストッパー120L側に近い位置まで移動させる。
【0062】
そして、エンジン1がアイドリング状態にある制動状態から前進走行を開始する場合には、図示しないシフトレバーを前進走行状態に切り換えることにより、発進可能状態とすることができる。このとき、後進走行側のシフト位置検出スイッチ9bはオフ状態を維持するため、前後進切換用電磁方向切換弁9のソレノイド9aは非通電状態を維持して、切換位置が図1に示すノーマル位置を保持する。
【0063】
この状態で、ブレーキペダルを解放してアクセルペダルを踏むことにより、エンジン1の回転力が変速機2を介して前輪側差動装置3に伝達され、この前輪側差動装置3で前輪5を前進方向に回転駆動することにより車両の前進が開始される。
【0064】
そして、吸入絞り型ピストンポンプ6の回転軸6aが回転駆動することにより、このピストンポンプ6から上記回転速度に応じた吐出流量の作動油が吐出される。この吐出された作動油は、高圧配管8H及び前後進切換用電磁方向切換弁9を介して斜板式可変容量モータ10の流入ポート10aに供給されるが、車両の発進により後輪19も前輪5と同方向に且つ同一回転速度で回転駆動されるので、後輪側差動装置17を介して斜板式可変容量モータ10の回転軸10cが回転し、これによって流入ポート10aから作動油が吸入され吐出される。
【0065】
このとき、図5の処理が実行されたときに、初期化によって処理完了フラグFCが“0”にリセットされているのでステップS4に移行するが、車両が発進したばかりなので、ステップS1で読み込んだ車速検出値Vが第1基準車速VS1より小さな値であるか、ステップS4からそのままタイマ割込処理を終了する。
【0066】
このとき、斜板式可変容量モータ10での単位時間当たりの最大吐出量QM は、斜板103が最大傾転角近くになったときの最大固有吐出量をQとし、回転軸10cの回転速度、即ち従動車軸の回転速度をNR とすると、Q×NR で示され、従動車軸の回転速度に比例して大きくなる。
【0067】
一方、ピストンポンプ6からの吐出量、即ち斜板式可変容量モータ10に供給される流入流量QP も、回転軸6aの速度、即ち駆動車軸の回転速度NF に比例した量である。ここで、斜板式可変容量モータ10の固有吐出量QMMAXはピストンポンプ6の固有吐出量QPMAXよりも大きく設定してあるので、上記前輪5と後輪19が略同一回転数で回転している状態では、QP <QM (=V×NR )となる。従って、斜板103は最大傾斜角よりも小さな傾斜角であるため斜板103の右下部がボールナット118に形成した係止片119に当接せず、時計方向及び反時計方向の何れにも揺動自在の状態となっている。
【0068】
従って、斜板103は、供給される作動油の流量に応じた傾きに自動調整されて、該斜板式可変容量モータ10では、ピストンポンプ6から供給された流入流量と略同一量を吐出する。これによって、高圧配管8Hの圧力が上昇することなく略ゼロを維持すると共に、該斜板式可変容量モータ10は、従動車軸18,即ち後輪19に駆動トルクを伝達しない。従って、車両は前輪駆動車(二輪駆動車)と同様な状態で前進走行する。
【0069】
その後、車速を増大させて車速検出値Vが第1基準車速VS1から第1基準車速VS2の範囲になっても、ステアリング操舵角αが“0”以外であるときには、図5の処理のステップS6からタイマ割込処理を終了し、或いは、アクセルペダルを踏み込んでいるときには、ステップS7からタイマ割込処理を終了する。
【0070】
そして、所定時間後にアクセルペダルの踏み込みを解除して惰性走行を維持すした時点で、車速Vが第1基準車速VS1及び第2基準車速VS2の範囲となった時点で、図5の処理のステップS3からステップS4、ステップS5を介してステップS6に移行する。そして、直進走行の維持によりステアリング操舵角αが“0”となっているのでステップS6からステップS7に移行し、アクセルペダルの踏み込みが解除されてアクセルON信号SAONが入力されないので、ステップS8に移行して図6に示したモータ容量制御処理を行う。
【0071】
ここで、図8に示すように、時点t1 において斜板式可変容量モータ10のモータ容量qMLが最適なモータ容量範囲qMBを大きく下回っている場合には、高圧配管8H内の圧力上昇によって圧力スイッチ20がON信号SPONを出力するので、図6の処理のステップS10からステップS11に移行する。そして、容量減少処理フラグFSが“0”にセットされていることから、ステップS14に移行し、第2補正用逆転駆動パルスCSN2をステップモータ116に出力する。これにより、ボールナット118がストッパー120L側に大きく移動するので、斜板式可変容量モータ10の容量が増大していく。
【0072】
その後、図8の時点t2 においてモータ容量qM1が、最適なモータ容量範囲qMBを僅かに上回ると、高圧配管8H内は圧力が上昇せず圧力スイッチ20がOFF状態となるので、図6のステップS10からステップS12に移行し、容量減少処理フラグFSを“1”にセットする。そして、ステップS16に移行し、補正用正転駆動パルスCSP をステップモータ116に出力する。これにより、ボールナット118がストッパー120S側に移動するので、斜板式可変容量モータ10の容量が減少していく。
【0073】
その後、図8の時点t3 においてモータ容量qM2が、最適なモータ容量範囲qMBを僅かに下回ると、高圧配管8H内の圧力上昇によって圧力スイッチ20がON信号SPONを出力するので、図6の処理のステップS10からステップS11に移行する。そして、容量減少処理フラグFSが“1”にセットされていることから、ステップS13に移行し、第1補正用逆転駆動パルスCSN2をステップモータ116に出力する。これにより、ボールナット118がストッパー120L側に僅かに移動するので、斜板式可変容量モータ10の容量が少量だけ増大していく。これにより、図8の時点t4 において斜板式可変容量モータ10のモータ容量は、最適なモータ容量範囲qMB内に設定される。
【0074】
そして、ステップS15に移行して処理完了フラグFCを“1”に設定することにより、図5の処理のステップS3においてステップS4に移行せず、次回以降のモータ容量制御処理は行わない。
【0075】
また、図9に示すように、時点t5 において斜板式可変容量モータ10のモータ容量qMHが最適なモータ容量範囲qMBを大きく上回っている場合には、高圧配管8H内の圧力低下により圧力スイッチ20がOFF状態となるので、図6の処理のステップS10からステップS12に移行し、容量減少処理フラグFSを“1”にセットする。そして、ステップS16に移行し、補正用正転駆動パルスCSP をステップモータ116に出力する。これにより、ボールナット118がストッパー120S側に移動するので、斜板式可変容量モータ10の容量が減少していく。
【0076】
その後、図9の時点t6 において、まだモータ容量qM3が最適なモータ容量範囲qMBを僅かに上回っていると、高圧配管8H内の圧力低下により圧力スイッチ20がOFF状態となるので、図6の処理のステップS10からステップS12を介してステップS16に移行し、補正用正転駆動パルスCSP をステップモータ116に出力することにより、ボールナット118がストッパー120S側に移動させて、斜板式可変容量モータ10の容量を減少させていく。
【0077】
そして、図9の時点t7 において、モータ容量qM4が最適なモータ容量範囲qMBを僅かに下回っていると、高圧配管8H内の圧力上昇によって圧力スイッチ20がON信号SPONを出力するので、図6の処理のステップS10からステップS11に移行する。そして、容量減少処理フラグFSが“1”にセットされていることから、ステップS13に移行し、第1補正用逆転駆動パルスCSN2をステップモータ116に出力する。これにより、ボールナット118がストッパー120L側に僅かに移動するので、斜板式可変容量モータ10の容量が少量だけ増大していく。これにより、図9の時点t8 においてモータ容量は、最適なモータ容量範囲qMB内に設定される。
【0078】
そして、ステップS15に移行して処理完了フラグFCを“1”に設定することにより、図5の処理のステップS3においてステップS4に移行せず、次回以降のモータ容量制御処理は行わない。
【0079】
このように、現在搭載している斜板式可変容量モータ10が高精度に容量設定されておらず、図8に示したように小さなモータ容量、或いは図9に示した大きなモータ容量となっていても、車両が直進走行を維持し、所定時間後にアクセルペダルの踏み込みを解除して惰性走行を行い、車速Vが第1基準車速VS1及び第2基準車速VS2の範囲となった時点で、高圧配管8Hの圧力に基づいて上述したモータ容量制御処理を行うことにより、図7で示す破線S2 で示すように、ピストンポンプ6の流量特性(実線S1 )に追従した最適なモータ容量に設定することができる。
【0080】
そして、凍結路、降雪路等の低摩擦係数路で発進する場合には、上述したよに、先ず前輪5が回転駆動されるが、低摩擦係数路であるために駆動輪である前輪5がスリップすることで、前輪5の回転数NF が後輪19の回転数NR に比べて高い回転数となり、前輪5と後輪19との間に所定の回転数差が生じる。
【0081】
これによって、前輪5の滑りが大きくなるほどピストンポンプ6の単位時間当たりの吐出量が相対的に上昇し、それに追従して最適な容量に設定された斜板式可変容量モータ10側では、同一吐出量を出力するように、斜板103の傾転角が大きくなる方向に自動調整される。
【0082】
すなわち、例えば後輪側車輪速が図7に示す車輪速VR1であるとしたときに、前輪側車輪速VF が後輪側車輪速VR1と一致しているときには、図7の破線S2 の特性で示すように、最適な容量に設定した斜板式可変容量モータ10の吐出流量QM 及びピストンポンプ6から吐出される吐出流量QP が共に吐出流量Q1 で一致しているが、この状態から前輪の滑りによって前輪側車輪速VF が後輪側の車輪速VR1に対して増加すると、これに応じてピストンポンプ6の吐出流量QP が図7の実線S1 で示すように増加する。
【0083】
このようにピストンポンプ6の吐出流量QP が増加すると、斜板式可変容量モータ10の斜板103は最大傾転角側に傾転し、斜板式可変容量モータ10の吐出流量QM は図7の一点鎖線S3 の流量特性となり、車輪速VR1での最大吐出流量QM1まで増加する。そして、最大吐出流量QM1に達すると、斜板式可変容量モータ10の斜板103の右下部がボールナット118の係止片119に当接することにより、斜板式可変容量モータ10の傾転角が最大傾転角近くに固定される。
【0084】
そして、さらに前輪側の滑りによる前輪側車輪速VF が増加して後輪側の最大吐出流量QM1と一致する車輪速VF1を越える例えば車輪速VF2となると、ピストンポンプ6の吐出流量QP2が斜板式可変容量モータ10の吐出流量QM1を越えるので、斜板式可変容量モータ10の抵抗が負荷となって高圧配管8Hの作動油圧が上昇する。
【0085】
このため、斜板式可変容量モータ10は、図7に示すように、高圧配管8Hからの供給圧力に応じて駆動トルクを発生して後輪側差動装置17を介して後輪19に伝達され、車両は四輪駆動車と同様な状態で前進走行する。
【0086】
すなわち、この後輪側に伝達される駆動トルクは、図7の実線L1 で示すように、前後輪に所定の回転数差が生じて始めて発生して前後輪の回転数差の増大と共に急増し、リリーフ弁11によるトルク制限作用によって最大出力トルクTMAX に規制され、運転者に違和感を与えず最適な四輪駆動状態で前進走行することができる。
【0087】
次に、車両を後進させる場合には、シフトレバーを後進位置に切り換えることにより、シフト位置検出スイッチ9bがオン状態となるため、前後進切換用電磁方向切換弁9のソレノイド9aが通電状態となり、切換位置がノーマル位置からオフセット位置に切り換えられ、これによって高圧配管8Hの作動油を斜板式可変容量モータ10の後進時流入ポート10bに供給し、後進時流出ポート10aから吐出される作動油を流路12を通じて低圧配管8L側に戻すことにより、斜板式可変容量モータ10の回転軸10cを前進走行時とは逆転させて、後輪19を逆回転させる。このため、後進時においても、駆動力の伝達については前進時と全く同様であり、前輪5がスリップし前後輪に所定の回転数差が生じたときのみ高圧配管8Hに圧力が発生し、駆動トルクが後輪19に伝達される。
【0088】
したがって、本実施形態の四輪駆動車は、現在搭載している斜板式可変容量モータ10が高精度に容量設定されていなくても、車両走行の初期段階において高圧配管8Hの圧力に基づいてモータ容量制御処理を行うことにより最適なモータ容量に設定することができるので、前後輪の回転数差に対する後輪側への駆動トルクの特性のばらつきを確実に回避し、最適な四輪駆動走行を得ることができる。
【0089】
また、モータ容量制御処理は、モータ容量が小さ過ぎる場合には、図8の時点t1 で示す制御のように、一旦モータ容量を大きな値に設定して時点t2 で示すように最適なモータ容量範囲qMBより僅かに大きな値とし、時点t3 で示す制御のようにモータ容量を最適なモータ容量範囲qMBより僅かに小さくしてから最終容量調整を行うことによって時点t4 のようにモータ容量範囲qMB内に設定し、逆に、モータ容量が大き過ぎる場合には、図9の時点t5 、t6 で示す制御のように徐々にモータ容量を小さくしていき、最適なモータ容量範囲qMBより僅かに小さくなった時点t7 から最終容量調整を行うことにより時点t8 に示すように、モータ容量範囲qMB内に設定しているので、短時間で最適なモータ容量範囲qMBに設定することが可能となり、モータ容量制御の安定性を高めることができる。
【0090】
また、モータ容量制御処理を行う際には、操舵角センサ22から入力されるステアリング操舵角αが“0”となっていること、即ち、車両が直進走行していることを確認してから処理が開始されるので、車両旋回時に前後輪に回転速度差が発生し、ピストンポンプ6及び斜板式可変容量モータ10の一方の吐出流量が増大している状態でのモータ容量制御処理を回避することが可能となり、高精度にモータ容量制御処理を行うことができる。
【0091】
また、ステアリング操舵角αが“0”となっているときに加えて、アクセルスイッチ26からアクセルON信号SAONが入力されていないとき、即ち、アクセルペダルを踏み込んでいないことを確認してからモータ容量制御処理が開始されるので、ピストンポンプ6の吐出流量が増大している状態でのモータ容量制御処理を回避することが可能となり、さらに高精度にモータ容量制御処理を行うことができる。
【0092】
そして、高圧配管8H内の圧力状態を圧力スイッチ20のON・OFF状態によって検出し、この検出結果に基づいてモータ容量制御処理の開始時期を判断しているので、装置構成の簡便化を図ることができる。
【0093】
また、本実施形態では、ピストンポンプ6の容量が高精度に設定されていなくても、モータ容量制御処理によって前後輪の回転数差に対する後輪側への駆動トルクの最適な特性を得ることができるので、生産段階におけるピストンポンプ6及び斜板式可変容量モータ10の高精度な容量設定が不要となり、ピストンポンプ6及び斜板式可変容量モータ10を低コストにより製作することができる。
【0094】
また、前輪又は後輪の一方に異径タイヤを装着した場合にも、ピストンポンプ6及び斜板式可変容量モータ10の一方の容量が変化するが、前述したモータ容量制御処理によって前後輪の回転数差に対する後輪側への駆動トルクの特性が最適値に補正されるので、正常な四輪駆動走行を得ることができる。
【0095】
なお、上記実施形態においては、容量規制機構115のアクチュエータとして、ステップモータ116、ネジ軸117、ボールナット118等を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、アクチュエータとしてポンプハウジング100に固定されたシリンダチューブと、このシリンダチューブ140a内に摺動自在に配設されたピストンと、このピストンに一端が連結され、他端に斜板103の右下端と当接する係止片が形成されたピストンロッドとを有する油圧シリンダを適用し、この油圧シリンダをコントローラ130で制御される3ポート2位置の電磁方向切換弁で制御するようにしてもよい。
【0096】
また、図1に示した四輪駆動車においては、後輪側差動装置17を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、後輪差動装置17を省略し、これに代えて左右後輪19の左右車軸18に個別に可変容量モータを設けるように構成してもよい。
【0097】
さらにまた、上記実施形態においては、前輪駆動車をベースとした実施形態について説明したが、これに限らず後輪駆動車をベースとした場合にも、後輪19を駆動輪として各構成部品を備えることにより、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る四輪駆動車の概略構成図である。
【図2】本発明に係るフリー斜板式可変容量モータを示す断面図である。
【図3】フリー斜板式可変容量モータの機構を示す模式図である。
【図4】本発明に係るコントローラを示すブロック図である。
【図5】図4で示したコントローラの制御処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明のモータ容量制御処理手段の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】ピストンポンプ及び斜板式可変容量モータにおける車速と吐出流量及び最大出力トルクの関係を示す図である。
【図8】斜板式可変容量モータのモータ容量が小さすぎる場合におけるモータ容量制御処理手段の動作説明に供するタイムチャートである。
【図9】斜板式可変容量モータのモータ容量が大きすぎる場合におけるモータ容量制御処理手段の動作説明に供するタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン(主原動機)
4 駆動車軸
6 ピストンポンプ(流体圧ポンプ)
8H 高圧配管(第1の流路)
8L 低圧配管(第2の流路)
10 斜板式可変容量ポンプ(流体圧モータ)
18 従動車軸
20 圧力スイッチ(圧力検出手段)
22 操舵角センサ(操舵角検出手段)
24 車速センサ(車速検出手段)
26 アクセルスイッチ(アクセル踏み込み検出手段)
115 容量規制機構
116 ステップモータ
118 ボールナット
130 コントローラ
CSN1 第1補正用逆転駆動パルス
CSN2 第2補正用逆転駆動パルス
CSP 補正用正転駆動パルス
VS1 第1基準車速
VS2 第2基準車速
α ステアリング角度
Claims (4)
- 主原動機により駆動される駆動車軸と、該駆動車軸に連動して回転し、作動流体を吐出する流体圧ポンプと、従動車軸に連動して回転する流体圧モータと、前記流体圧ポンプの吐出口と前記流体圧モータの吸入口とを連通する第1の流路と、前記流体圧ポンプの吸入口と前記流体圧モータの吐出口とを連通する第2の流路とを備えた四輪駆動車において、
前記第1の流路内の流体圧力を検出する圧力検出手段と、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、前記流体圧モータの容量を変更制御するモータ容量制御処理手段とを備え、
前記モータ容量制御処理手段は、前記走行状態検出手段の走行状態検出値に基づいて前記駆動車軸及び従動車軸に回転速度差が発生していないときに制御処理を開始するとともに、前記圧力検出手段の圧力検出値が所定値以上であるときに、一旦、前記流体圧モータの容量が前記最適容量を上回る容量値となるように急激に増大させ、その後、前記最適容量となるように徐々に前記容量値を減少させていき、前記圧力検出手段の圧力検出値が所定値未満であるときに前記流体圧モータの容量を小さくして最適容量となるように変更制御することを特徴とする四輪駆動車。 - 前記走行状態検出手段は、車速を検出する車速検出手段で構成され、前記モータ容量制御手段は、前記車速検出手段の車速検出値が所定の低速状態で走行しているときに、前記流体圧モータの容量制御を開始することを特徴とする請求項1記載の四輪駆動車。
- 前記走行状態検出手段は、ステアリング角度を検出する操舵角検出手段を備え、前記モータ容量制御手段は、操舵角検出手段のステアリング角度の検出値が零であるときに、前記流体圧モータの容量制御を開始することを特徴とする請求項2記載の四輪駆動車。
- 前記走行状態検出手段は、アクセルペダルを踏み込んでいるか否かを検出するアクセル踏み込み検出手段を備え、前記モータ容量制御手段は、前記アクセル踏み込み検出手段によりアクセルペダルを踏み込んでいないことを判断したときに、前記流体圧モータの容量制御を開始することを特徴とする請求項3記載の四輪駆動車。
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