JP3656802B2 - マグネシウム合金およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば電子機器等の金属製筐体に使用されるマグネシウム合金およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば電子回路や機械駆動部や電源等の内部部品を備える電子機器は、筐体の中に前記内部部品を配置する構造となっている。このような電子機器は、外部から受ける衝撃等より内部回路を保護する必要があるので、筐体には機械的強度が要求されている。さらに電子機器の中でもモバイル機器のように常に人が持ち運びするものは、筐体を構成する材料には前記機械的強度のほかに軽さが要求されている。
【0003】
従来の金属製筐体は、ステンレス、アルミニウム合金のプレス加工品が多く用いられてきたが、近年は軽量かつ高剛性であるマグネシウム合金をプレス加工したものが検討されるようになってきた。
【0004】
プレス加工用のマグネシウム合金は、AZ31が上市されており、その他に特開平9−41066号公報で開示されているようなリチウムを含有するマグネシウム合金(以下、マグネシウムリチウム合金と称する)が開発されている。これらの素材はステンレスやアルミニウム合金と比較すると非常に活性なため耐食性が劣っている。
【0005】
そこで、実務表面技術Vol.35、No6,1988,p299やアルミニウム研究会誌No.9,p121に開示される金属メッキ、特開平10−140369号公報や日本マグネシウム協会‘97マグネシウムマニュアルp54に開示される化成処理や陽極酸化法の何れかの方法で筐体表面に皮膜を作製し、表面の耐食性を向上させることが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、金属メッキ、化成処理、陽極酸化法でマグネシウム合金表面に皮膜を形成しても、充分な耐食性は得ることができなかった。それは上記方法はマグネシウム合金の表面に新たな金属層若しくは金属化合物層からなる皮膜を形成するだけであり、表面の耐食性は向上しているもののマグネシウム合金自体の耐食性は向上していないためである。
【0007】
皮膜は生産性やコスト等により厚さが約数μm〜20μm前後で形成されているが、皮膜とマグネシウム合金は合金化しているわけではなく、また強固に密着していないため、落下衝撃等によって容易にひび割れや剥離を起こしやすく、そしてマグネシウム合金素地が露出し、ひいてはそこに直接大気や水分が接触し、腐食や電食が発生するという問題があった。また、皮膜が途切れたところから水分が侵入すると、そこを起点として周辺の皮膜が徐々に剥離していく恐れがあった。
【0008】
一方、AZ31やマグネシウムリチウム合金は、プレス加工性が良好である反面、例えば鋳造用等の他のマグネシウム合金よりも機械強度が低くなっている。したがって、プレス加工後に何らかの方法で機械強度を向上させ、剛性に優れたマグネシウム合金構造体を得る方法が望まれるが、現在のところそのような方法は見当たらない。
【0009】
本発明は、上記問題を解決し、マグネシウム合金およびその圧延材を用いて作製したプレス加工部品の強化と、落下衝撃等で傷が生じてもその部分から腐食や電食をおこさず耐食性の優れたマグネシウム合金およびその構造体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであって、請求項1記載の発明は、マグネシウムを主成分とする合金の表面に形成された亜鉛層がマグネシウムの結晶粒界および結晶中に拡散した状態で合金化したことを特徴とするマグネシウム合金である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、前記合金の表面に形成された亜鉛層の厚さを0.5μm〜10μmとし、前記合金化した厚さを50μm以上とすることを特徴とする請求項1記載のマグネシウム合金である。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、マグネシウムを主成分とする合金の表面に亜鉛層を形成後に、不活性雰囲気或いは真空中で、200℃〜400℃、30分〜5時間の条件にて加熱処理を行うことを特徴とするマグネシウム合金の製造方法である。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、亜鉛置換処理若しくは亜鉛置換処理後に電気亜鉛メッキを行うことで亜鉛層を形成することを特徴とする請求項3記載のマグネシウム合金の製造方法である。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、前記マグネシウムを主成分とする合金にリチウムを含有する場合、前記亜鉛置換処理前に、不活性雰囲気或いは真空中で、100〜300℃、30分〜3時間の条件にて加熱処理を行い、表層をα相化することを特徴とする請求項4記載のマグネシウム合金の製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図をもとに詳細に説明する。
【0016】
マグネシウム合金に亜鉛置換を施し、合金化させる方法について、マグネシウム合金としてAZ31を用いた場合について、図1のフローチャート図をもとに説明する。
【0017】
AZ31はアルミニウムを3重量%、亜鉛を1重量%、残部がマグネシウムと不純物からなるマグネシウム合金である。
【0018】
まず、全てのサンプルを脱脂した(S1)。脱脂にはキシレンを用い、キシレン浴中で超音波洗浄を行った。その後、アセトン浴中で超音波洗浄することにより油脂分を完全に除去した。
【0019】
次に、酸洗を行い(S2)、表面の酸化膜を除去した。酸洗は濃度が0.5重量%の硝酸と残部が純水からなる浴中で、25℃で約10秒間実施した。
【0020】
次に、亜鉛置換処理を行った(S3)。処理浴は酢酸亜鉛が2.1重量%、ピロリン酸塩が9重量%、弗化物が0.9重量%、カチオン系界面活性剤が88重量%からなり、この浴中に試験片を60℃で40分間浸漬した。そして、回収後に純水で水洗した(S4)。
【0021】
次に、亜鉛置換処理後に電気亜鉛メッキを施すことで、厚さが約5μmの亜鉛層を形成した(S5)。
【0022】
そして、真空度10-4〜10-6torrの真空加熱炉中またはAr、He等の不活性雰囲気中で、後に示す温度条件と時間で加熱処理を行い、亜鉛を拡散させ、合金化した(S6)。
【0023】
加熱処理条件に関しては、温度が200℃以下になると亜鉛の拡散に費やす処理時間が長くなったり拡散が十分に行われない恐れがあり、また400℃以上になるとマグネシウム合金が熱変形を起こしやすくなる。そのため、200〜400℃の範囲で処理を行う。さらに好ましくは270℃〜370℃の範囲で処理を行う。
【0024】
また、加熱処理時間は、処理時間が短くなると亜鉛がマグネシウム合金に十分に拡散しきれず、また5時間以上行うと量産性が悪くなるため、30分〜5時間の範囲で行う。さらに好ましくは1.8時間〜4.5時間の範囲で行う。
【0025】
ここで、ステップS5の電気亜鉛メッキ処理を行わずに、加熱処理を行ったものを実施例1とし、ステップS5の電気亜鉛メッキ処理を行ない、その後加熱処理を行ったものを実施例2とする。
【0026】
次に、マグネシウム合金に亜鉛置換を施し、合金化させる方法について、マグネシウム合金として、マグネシウムリチウム合金のインゴットから所定の圧延工程などを経て得られた板材を用いた場合について、図2のフローチャート図をもとに説明する。
【0027】
マグネシウムリチウム合金はリチウムを8重量%、残部がマグネシウムと不純物からなるマグネシウム合金(以下、L8と称する)である。
【0028】
ここでは、図1のフローチャート図と異なる部分についてのみ説明する。ステップS11のサンプル脱脂の後、ステップS12において、真空度10-5torrの真空炉中または不活性雰囲気中で100〜300℃、30分〜3時間で加熱処理を行い、表層のリチウムを蒸散させて表層をα相化させた。この処理を行わないと後述の亜鉛置換処理を施すことが困難になるためである。その後の処理は図1のフローチャート図と同様であるので、説明を省略する。
【0029】
ここで、ステップS16の電気亜鉛メッキ処理を行わずに、加熱処理を行ったものを実施例3とし、ステップS16の電気亜鉛メッキ処理を行ない、その後加熱処理を行ったものを実施例4とする。
【0030】
上記実施例1〜4に対して、従来の化成処理皮膜、無電解メッキを施したものを比較例とした。
【0031】
比較例1、2はマグネシウム合金として、AZ31を用い、比較例3、4はマグネシウム合金として、マグネシウムリチウム合金のインゴットから所定の圧延工程などを経て得られた板材を用いた。
【0032】
比較例の全てのサンプルに脱脂を行い、比較例1、3については化成処理を施した。この化成処理はダウケミカル社のDow20に準ずる方法で行った。また、比較例2、4については、クロム酸浴中にてエッチングを行ってクロメート皮膜を形成し、その後表面を弗化させ、続いて無電解ニッケルメッキを施した。メッキ膜厚は約17μmとした。
【0033】
さらに、実施例1〜4の比較例として、実施例1〜4の表面亜鉛層を形成後、加熱処理を施さないすなわち合金化処理を行っていない状態のサンプルを比較例5〜8とした。
【0034】
以上の実施例1〜4、比較例1〜8について耐食性を調べる実験を行った。耐食性の評価は、まずサンプルをクロスカット(カッターナイフで×印の切り込みを付与)しておき、続いてそのサンプルを濃度が1%のNaCl水溶液(以下、塩水と称する)中で24時間浸漬しておき、その後の表面状態を観察した。
【0035】
さらに、180°折り曲げ試験と、1.3mの高さからコンクリート床面へ自由落下させる衝撃試験を実施した。
【0036】
上記実施例1〜4および比較例1〜8の表面処理方法、耐食性の評価、180°折り曲げ試験あるい衝撃試験、それらの総合判定を表1に示す。
【0037】
【表1】
Figure 0003656802
【0038】
ここで、塩水浸漬試験の結果について説明する。
【0039】
比較例1、3は化成処理膜が塩水中に溶解し、つづいて素材が塩水によって腐食した。
【0040】
比較例2、4はクロスカット部で著しく電食が発生した。電食は素材を完全に貫通していた。この原因はメッキの主成分であるニッケルと、素材の主成分であるマグネシウムの標準電位差が大きいため、クロスカット部で局部電池が形成されたためであると考えられる。
【0041】
実施例1〜4は亜鉛層が素材に拡散し、表面の耐食性が向上していた。その様子を図3の実施例1の断面図を用いて説明する。ここで1のAZ31に形成した亜鉛層が加熱処理を行うことで2の結晶粒界に亜鉛が拡散して合金化し、マグネシウム−亜鉛の合金化層を形成している。ここで合金化層とは、亜鉛が結晶粒界に入り込んでいる先端までの厚さを示す。この合金化層は明らかに耐食性に優れている。
【0042】
また、合金化した層の強度を把握するために、180°折り曲げ試験と、1.3mの高さからコンクリート床面へ自由落下させる衝撃試験とを実施した結果、実施例1〜4に関しては合金化した層の剥離はみられなかった。しかし、亜鉛層形成後、加熱処理を施していない比較例1〜8に関しては剥離がみられ、曲げや、落下による衝撃については十分とはいえない結果となった。
【0043】
上記の実施例においてはプレス加工用のAZ31やマグネシウムリチウム合金を例にとって説明しているが、例えば鋳造法やダイカスト法やチキソモールディング法や鍛造法に利用されるようなマグネシウム合金素材やその成形品にも適用して耐食性を向上させることが可能である。
【0044】
また、上記の方法で作成したマグネシウム合金およびマグネシウム合金構造体は、そのままの状態で外装部品等に使用することが可能であるが、より外観の質感が要求される場合は、塗装等を施して仕上げると良い。
【0045】
次に、図1のフローチャート図をもとに作製したAZ31マグネシウム合金に上記表面処理を施した筐体の捩り強度の比較を行った。
【0046】
まず、実施例1および2に記載の亜鉛置換、拡散を施したマグネシウム合金AZ31と、マグネシウム合金AZ31素材(未表面処理)を図4に示す筐体形状にプレス加工を行い、実施例5、実施例6、比較例9とした。
【0047】
筐体の大きさは90mm×70mm×10mmであり、板厚を0.6mm、コーナーRを3mm〜12mm、パンチ肩Rを1mmとした。
【0048】
上記作製したの筐体の一端を固定し、もう一端にトルクメーターを取り付け、所定のトルクを負荷した時の捩り角を測定した。その結果を図5に示す。ここでは実施例1の亜鉛置換を施した筐体を実施例5、実施例2の亜鉛置換および電気メッキを施した筐体を実施例6、未表面処理品を比較例9として記載している。
【0049】
図5に示すように亜鉛層を形成し加熱処理を行っている実施例5、6の方が、素地のままである比較例9よりも捩り角が小さく捩り強さが向上していた。捩り強さは合金化層が厚い実施例6の方が強いという結果になった。
【0050】
次にそれらの捩り強度に差が現れる原因と考えられる亜鉛層および、合金化層の厚さを調べるために、上記実施例5および6について筐体の一部分を切り出し、断面の観察を行った。これらの筐体の亜鉛層の厚さと加熱処理によって得られた合金層の厚さを表2に示す。
【0051】
【表2】
Figure 0003656802
【0052】
ここで亜鉛層の厚さとしては実施例1が0.9μm、実施例2が4.8μmであり、亜鉛層の厚さとしては0.5〜10μm程度が適当である。10μmより厚くなると亜鉛層の形成に要する時間が長くなるためコスト的に不利になる。さらに合金化層の厚さ(図3のL1)は、実施例1で95μm、実施例2で247μmであった。したがって、亜鉛層および合金化層が厚い方が捩り強度が大きく、実用的な合金化層の厚さとしては50μm以上とするのが好ましい。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、マグネシウム合金の表面に亜鉛層を形成し、さらに加熱処理を行って亜鉛をマグネシウム合金素材の内部に拡散させ合金化することにより、耐食性と剛性が向上したマグネシウム合金を得ることが可能となり、落下衝撃によって亜鉛層が剥離等を起こす恐れもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マグネシウム合金の表面に亜鉛を合金化させるフローチャート図である。
【図2】マグネシウム合金の表面に亜鉛を合金化させるフローチャート図である。
【図3】AZ31に亜鉛を拡散した後の断面写真を示す図である。
【図4】マグネシウム合金筐体の該略図である。
【図5】亜鉛層の有無による捩り強さの比較図である。
【符号の説明】
1 AZ31
2 粒界内部

Claims (1)

  1. マグネシウムを主成分とする合金の表面に亜鉛置換処理若しくは亜鉛置換処理後に電気亜鉛メッキを行うことで亜鉛層を形成し、その後、不活性雰囲気或いは真空中で、200℃〜400℃、30分〜5時間の条件にて加熱処理を行うマグネシウム合金の製造方法であって、前記マグネシウムを主成分とする合金がリチウムを含有し、前記亜鉛置換処理前に、不活性雰囲気或いは真空中で、100〜300℃、30分〜3時間の条件にて加熱処理を行い、表層をα相化することを特徴とするマグネシウム合金の製造方法。
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