JP3662418B2 - 平版印刷版用支持体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版用支持体に関し、特に電気化学的粗面化処理する際の粗面化効率に優れ、かつ粗面化形状が非常に均一な平版印刷版用支持体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、平版印刷版用支持体としてアルミニウム合金板が用いられている。そして、このアルミニウム合金板は、感光層との密着性及び非画像部の保水性を付与するために粗面化処理が施される。粗面化方法としては、従来から、ボールグレインやブラシグレイン等の機械的粗面化法、塩酸や硝酸等を主体とする電解液を用いてアルミニウム合金板の表面を電解エッチングする電気化学的粗面化法、酸溶液によりアルミニウム合金板の表面をエッチングする化学的粗面化法等が知られているが、近年では、電気化学的粗面化法により得られた粗面はピット(凹凸)が均質で、印刷性能に優れることから、この電気化学的粗面化法と他の粗面化方法とを組合わせて粗面化することが主流になってきている。
【0003】
それに伴い、電気化学的粗面化処理に際して、電解エッチングの効率を上げて粗面化処理コストを低減する試みがなされており、アルミニウム合金板の合金組成に関する検討も行われている。
例えば、特開平9−316582号公報には、Fe:0.2〜0.6wt%、Si:0.03〜0.1wt%及びZn:0.04〜0.10wt%を含み、かつ濃度比(Zn/Fe)が0.2以上であるアルミニウム合金板が、また特開平9−279272号公報には、Fe:0.2〜0.6wt%、Si:0.03〜0.15wt%、Ti:0.005〜0.05wt%及びNi:0.005〜0.20wt%を含み、かつこれら金属とアルミニウムとの金属間化合物が特定量となるアルミニウム合金板が、また特開平9−272937号公報には、Fe:0.2〜0.6wt%、Si:0.03〜0.15wt%、Ti:0.005〜0.05wt%及びNi:0.005〜0.20wt%を含み、更にCu、Zn:0.005〜0.05wt%、In、Sn、Pb:0.001〜0.020wt%含むアルミニウム合金板が、また特開平9−289274号公報には、Fe:0.2〜0.6wt%、Si:0.03〜0.15wt%、Ti:0.005〜0.05wt%,Ni:0.005〜0.20wt%、Ga:0.005〜0.05wt%及びV:0.005〜0.020wt%含み、かつ濃度比(Ti+Ga)/Vが15以下であるアルミニウム合金板が記載されている。
これらの公報に記載されたアルミニウム合金板は、アルミニウムマトリクスと金属間化合物との間の電位差を調整する作用を有する特定の金属(Zn、Ni、In、Sn、Pb、Ti、V、Ga)を添加することにより、短時間の電解エッチングにもかかわらず、均一なピットを形成することを意図したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に挙げたような従来のアルミニウム合金板は、添加される特定金属の必要量が多く(ppm換算で数十〜数千の範囲)、コスト高を招くとともに、他の成分との兼ね合いによってはアルミニウム純度が下がり過ぎて、平版印刷版とした時の印刷機の版胴への装着性や密着性が悪くなる。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、電気化学的粗面化処理における粗面化効率に優れ、かつピットが均一であり、さらに平版印刷版とした時の印刷機への装着性や密着性にも優れた安価な平版印刷版用支持体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の金属はその添加量が極く僅かであっても電気化学的粗面化処理においてアルミニウム合金板の電解エッチングを促進することを見い出し、本発明を完成するに至った。即ち、上記の目的は、本発明の、Fe:0.05〜0.5wt%、Si:0.03〜0.15wt%、Cu:0.006〜0.03wt%、Ti:0.010〜0.040wt%、及びLi,Na,K,Rb,Cs,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,Nb,Ta,Mo,W,Tc,Re,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Pd,Pt,Ag,Au,C,Ge,P,As,S,Se,Te,Poから選ばれる少なくとも1種の元素を1〜100ppm含有し、残部が不可避不純物とAlとからなり、かつAl純度が99.0wt%以上である板材の表面を、電気化学的粗面化を含む粗面化処理を施してなることを特徴とする平版印刷版用支持体により達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版用支持体において、Feは0.05〜0.5wt%が添加される。Feは、アルミニウム合金中で他の元素と結合してAl−Fe系の共晶化合物を形成する元素である。このAl−Fe系の共晶化合物は、再結晶粒を微細化するとともに、均一な電解粗面を形成する効果があるため、Feの含有量が0.05wt%未満ではこの効果が得られず、電解不足によりピットの均一性が低下する。一方、Fe含有量が0.5wt%を越えると、粗大化合物が形成されて電解粗面化面が不均一になる。
また、支持体とした時の強度を重視する場合には、Feの含有量を0.2〜0.4wt%とすることが望ましい。Feは上記の効果の他にアルミニウム合金の機械的強度を高める効果があり、従って含有量が0.2wt%未満では、機械的強度が低く過ぎて平版印刷版として印刷機の版胴に取り付ける際に、版切れを起こしやすくなる。一方、含有量が0.4wt%を越えると、必要以上の高強度となり、平版印刷版として印刷機の版胴に取り付ける際にフィットネス性が劣るようになり、印刷中に版切れを起こしやすくなるので望ましくない。但し、校正刷り用途に使う印刷版の場合は、これらフィットネス性や強度に関する制約は重要でなくなる。
【0008】
Siは原材料であるAl地金に不可避不純物として含有されているため、原材料差によるバラツキを防ぐため、意図的に微量添加されることが多い。その際、含有量が0.15wt%を越えると印刷した際に、非画像部が汚れやすくなるという不具合がある。一方、原材料によっては既に0.03wt%以上の含有量を持つ場合があるため、これ未満の数値は現実的でない。また、SiはAl−Fe−Si系金属化合物を形成して電解粗面を均一化する効果があり、従って含有量が0.03wt%未満では、この効果が得られない。更に、含有量として0.03wt%未満を維持するためには、高価な高純度Al地金を必要とするためこの点からも現実的でない。
従って、Siの含有量は0.03〜0.15wt%、好ましくは0.04〜0.10wt%とする。
【0009】
Cuは電気化学的粗面化を制御する上で非常に重要な元素である。従って、含有量が0.006wt%未満では、電気化学的にピットを形成する際の表面酸化皮膜の抵抗が過小となるため、均一なピットが形成されない。一方、含有量が0.03wt%を越えると、逆にピットを形成する際の表面酸化皮膜の抵抗が過大となるため、粗大なピットが生成されやすくなる。このピット生成の均一さは、優れた印刷適性を得るために不可欠な項目である。
従って、Cuの含有量は0.006〜0.03wt%、好ましくは0.01〜0.02wt%とする。
【0010】
Tiは、従来より鋳造時の結晶組織を微細にするために添加される。本発明では0.010〜0.040wt%、好ましくは0.020〜0.030wt%がAl−Ti合金の形で、あるいはAl−B−Ti合金の形で添加される。添加量が0.040wt%を越える場合には、電気化学的粗面化処理においてピットを形成する際の表面酸化皮膜の抵抗が過小となるため、均一なピットが形成されなくなるという不具合が生じる。一方、添加量が0.010wt%未満では、鋳造組織が微細化されないために、種々の工程を経て0.1〜0.5mmの厚みに仕上げた後も、粗大な鋳造組織の痕跡が残こり、外観に著しい不良を生じるという不具合がある。
【0011】
本発明においては、上記の成分に加えて、Li,Na,K,Rb,Cs,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,Nb,Ta,Mo,W,Tc,Re,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Pd,Pt,Ag,Au,C,Ge,P,As,S,Se,Te,Poから選ばれる少なくとも1種の元素を微量添加することを特徴とする。これらの元素は、電気化学的粗面化処理において、電解エッチングを促進し、ピットの均一性を向上させる効果が有り、しかも極く少量でその効果を発現する。添加量としては、少なくとも1ppm添加すれば十分である。また、必要以上の添加は、経済性の観点から望ましくなく、上限としては100ppm以下である。従って、平版印刷版用支持体として要求される機械的強度や柔軟性等の物理特性に何ら影響を与えることはない。尚、上記添加量は、複数種併用する場合にはそれらの合計である。
また、これらの元素の添加方法としては、Al地金を溶融して所定の合金成分に調合した上で鋳造する際に、原材料として添加する方法、あるいは電気化学的粗面化処理工程での処理液に添加する方法、あるいは電気化学的粗面化処理工程より上流の工程で添加する方法が採用できる。
【0012】
上記に挙げた各成分以外は、不可避不純物とアルミニウムであるが、本発明においてはアルミニウム合金のアルミニウム純度が99.0wt%以上である必要がある。
アルミニウム合金の機械的強度はアルミニウム純度に依存し、通常アルミニウム純度が低いとアルミニウム合金の柔軟性は低くなる。従って、上記に挙げた成分の含有量が高くなり過ぎると、平版印刷版用支持体とした時の印刷機への装着性が悪くなる等の不具合が生じるようになる。
【0013】
上記のアルミニウム合金を板材とするには、例えば下記の方法が採用できる。先ず、所定の合金成分に調整したアルミニウム合金溶湯を常法に従い清浄化処理を施し、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために、フラックス処理、Arガス、Clガス等を使った脱ガス処理や、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ、等のいわゆるリジッドメディアフィルターや、アルミナフレーク、アルミナボール等を濾材とするフィルタや、グラスクロスフィルター等を使ったフィルタリング。あるいは、脱ガスとフィルタリングを組み合わせた処理が行われる。
【0014】
次いで、上記溶湯を鋳造する。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される、固定鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される、駆動鋳型を用いる方法とがあり、何れの方法も可能である。
例えばDC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊が製造できる。その鋳塊は、常法に従い、面削により表層の1〜30mm、望ましくは、1〜10mmが切削される。その後、必要に応じて、均熱化処理が行われる。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化してしまわないように、450〜620℃で1時間以上、48時間以下の熱処理が施される。1時間より短い場合は、均熱化処理の効果が不十分となる。次いで、熱間圧延、冷間圧延を行って、アルミニウム圧延板とする。熱間圧延の開始温度としては、350〜500℃の範囲とする。冷間圧延の、前、または後、またはその途中において中間焼鈍処理を施しても良い。この場合の中間焼鈍条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280℃〜600℃で2〜20時間、望ましくは、350〜500℃で2〜10時間加熱する方法や、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で360秒以下、望ましくは、450〜550℃で120秒以下の加熱処理が採用できる。連続焼鈍炉を使って、10℃/秒以上の昇温速度で加熱すると、結晶組織を細かくすることもできる。
上記の如く所定の厚さ、例えば0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム合金板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善しても良い。また、板巾を所定の巾に加工するため、スリッタラインを通すことも通常行われる。
【0015】
このようにして作られたアルミニウム合金板は、次いで平版印刷版用支持体とするために粗面化処理が施される。上述したように、本発明のアルミニウム合金板は電気化学的粗面化処理に適しており、従って、粗面化処理として電気化学的粗面化処理と、機械的粗面化処理及び/または化学的粗面化処理とを適宜組み合わせることが好ましい。
電気化学的粗面化処理は、アルミニウム合金板の表面に微細な凹凸を付与することが容易であるため、印刷性の優れた平版印刷版を作るのに適している。
この電気化学的粗面化処理は、硝酸または塩酸を主体とする水溶液中で、直流又は交流を用いて行われる。この粗面化により、平均直径約0.5〜20μmのクレーターまたはハニカム状のピットをアルミニウム表面に30〜100%の面積率で生成することが出来る。ここで設けたピットは、印刷版の非画像部の汚れ難さと耐刷力を向上する作用がある。また、電気化学的粗面化処理では、十分なピットを表面に設けるために必要なだけの電気量、即ち電流と通電時間との積が電気化学的粗面化における重要な条件となる。より少ない電気量で十分なピットを形成出来ることは、省エネの観点からも望ましい。
本発明においては、この電気化学的粗面化処理の諸条件は特に限定されるものではなく、一般的な条件で行うことができるが、何れの場合も、所要電気量を大幅に削減することができる。
【0016】
これと組み合わされる機械的粗面化処理は、アルミニウム合金板表面を、一般的には平均表面粗さ0.35〜1.0μmとする目的で行われる。本発明においては、この機械的粗面化処理の諸条件は特に制限されるものではないが、例えば特開平6−135175号公報、特公昭50−40047号公報に記載されている方法に従って行うことができる。
また、化学的粗面化処理も特に制限されるものではなく、公知の方法に従うことができる。
【0017】
上記の粗面化処理に引き続き、通常はアルミニウム合金板の表面の耐磨耗性を高めるために陽極酸化処理が施されるが、本発明においても陽極酸化処理を施すことが好ましい。
この陽極酸化処理に用いられる電解質としては多孔質酸化皮膜を形成するものならば、いかなるものでも使用することができる。一般には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはそれらの混合液が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質によって変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80wt%、液温は5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜300秒の範囲にあれば適当である。
【0018】
また、印刷時の汚れ性能を向上するため、電気化学的粗面化処理及び水洗を行った後、アルカリ溶液で軽度のエッチング処理を行ってから水洗しH2SO4溶液でデスマットを行った後水洗し、引き続きH2SO4溶液中で直流電解を行って陽極酸化皮膜を設けてもよい。
更に、必要に応じて、シリケート等による親水化処理を施してもよい。
【0019】
以上のようにして本発明の平版印刷版用支持体が得られるが、この支持体はピットの均一性が高く、印刷性能に優れた平版印刷版が得られる。平版印刷版とするには、表面に感光材を塗布・乾燥して感光層を形成すればよい。尚、感光材は特に限定されるものではなく、通常、感光性平版印刷版に用いられているものを使用できる。そして、リスフィルムを用いて画像を焼き付け・現像処理、ガム引き処理を行うことで、印刷機に取り付け可能な印刷版とすることができる。また、高感度な感光層を設けると、レーザを使って画像を直接焼き付けることも出来る。
【0020】
【実施例】
表1に示す組成のアルミニウム合金をべースに使い、これに表2に示す如く各種元素を添加して実施例及び比較例のアルミニウム合金板を作成した。そして、各アルミニウム合金板について、以下の粗面化処理を施した。
先ず、NaOH溶液でエッチング処理を行い、水洗後HNO3溶液でデスマット処理を行い、更に水洗後HNO3溶液中で、交流電解を行うことで電気化学的粗面化処理を行った。水洗後、電気化学的粗面化処理で生じたスマットを除去するために、H2SO4溶液でデスマットを行った。
【0021】
ここで各実施例、比較例について全面に均一なピットができるのに要する電気量を調べて評価した。また、その時のピットの均一性も合わせて評価した。ピットが全面に出来る電気量を調べるために、電気量条件を変えて電気化学的粗面化処理を行った後、SEMを使って表面を観察し、ピットが全面に形成できた電気量を決定した。ピットの均一性は粗面をSEM観察して判定した。結果を表2に示した。尚、電気量は比較例−1を1とした相対値である。
【0022】
【表1】
Figure 0003662418
【0023】
【表2】
Figure 0003662418
【0024】
表2に示す通り、実施例のアルミニウム合金板は特定の元素を加えたことで、電気化学的粗面化処理の効率が約1割向上し、かつピットの均一性が一層優れた平版印刷版用支持体にすることが出来る。
【0025】
以上の実施例では、粗面化処理として、電気化学的粗面化処理のみを行った例を示したが、本発明は上記の例には限定されず、例えば機械的粗面化処理や化学的粗面化処理を電気化学的粗面化処理と組み合わせても同様な効果が得られることはいうまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、特定の元素を加えたことで、電気化学的粗面化処理の効率が約1割向上し、かつピットの均一性が一層優れた平版印刷版用支持体が得られる。

Claims (1)

  1. Fe:0.05〜0.5wt%、Si:0.03〜0.15wt%、Cu:0.006〜0.03wt%、Ti:0.010〜0.040wt%、及びLi,Na,K,Rb,Cs,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,Nb,Ta,Mo,W,Tc,Re,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Pd,Pt,Ag,Au,C,Ge,P,As,S,Se,Te,Poから選ばれる少なくとも1種の元素を1〜100ppm含有し、残部が不可避不純物とAlとからなり、かつAl純度が99.0wt%以上である板材の表面を、電気化学的粗面化を含む粗面化処理を施してなることを特徴とする平版印刷版用支持体。
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