JP3663795B2 - 難溶性白金族元素の可溶性化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非鉄金属製錬工程で生成する白金族濃縮物、白金族触媒のスクラップ等から、難溶性白金族元素を分離回収する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
白金族元素の中でも白金(Pt)とパラジウム(Pd)以外の元素、即ちルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)は難溶性白金族元素とも称され、一般に白金族元素の湿式溶解に使用される塩酸及び塩素との反応速度が非常に遅く、特に4価の酸化物の形態では事実上全く溶解しない。
【0003】
これらの難溶性白金族元素を、常法の湿式法で塩酸及び塩素により溶解可能な状態とする可溶性化方法として、かっては酸化剤及びアルカリと融解するか、又は二硫酸塩と融解する方法が広く行われていたが、反応が不完全で繰り返し処理物量が多くなるという欠点があった。このため近年では、下記する塩化処理法、ガス還元法、融解還元法などで可溶性化処理されている。
【0004】
塩化処理法としては、原料を塩素単独、又は還元剤及び塩素、あるいは塩化アルカリ及び塩素と共に加熱して、白金族元素を塩化物又はクロロ錯体として可溶性化する方法や、特公平7−65122号公報に示されているように塩化水素の発生源及び還元剤の混合物と加熱し、生成した白金族元素の塩化物を金属に還元することにより、可溶性化する方法が知られている。
【0005】
しかし、塩素を使用する方法は勿論、特公平7−65122号公報に記載の塩化水素発生源を使用する方法でも、揮発した塩化物が金属だけでなくガラスや石英をも激しく腐食するため、装置の耐久性に問題があった。また、生成する白金族元素の塩化物は不完全に固相と気相に分配するため、完全な回収が困難であるうえ、白金族元素以外にも揮発物が生成し、これらが装置配管内に析出して閉塞をおこす原因となっていた。更に、塩素や塩化物に対して抵抗が高いRuやIrの酸化物に関しては、可溶性化が不完全であった。
【0006】
また、ガス還元法では、白金族元素を含む原料を、水素、又は一酸化炭素と加熱するか、あるいは特公平7−65121号公報に示されているように炭素含有物及び水蒸気と加熱して、生成する水性ガスにより還元し、可溶性化する方法が知られている。
【0007】
しかし、これらの方法では、基本的に白金族元素が金属単体まで還元されるだけであるから、他の可溶性金属が大過剰に共存し、且つ難溶性白金族元素がその中に均一に分散している場合、及び難溶性白金族元素の比表面積が非常に大きい場合に限り有効であって、難溶性白金族元素が単独であるか又は共存元素の存在量が少ない場合、あるいは難溶性白金族元素を含む原料が数μm以上である場合には可溶性化が困難であった。
【0008】
融解還元法としては、原料を白金族元素と合金を形成しうる金属と加熱融解して合金を形成させる方法、又は“Analyst”、 June 1995、Vol.120、No.6、1675〜1680に記載されているように、原料をNiとS及びNa2B4O7等と加熱処理し、白金族元素をNiS塊に吸収させて可溶性化する方法が知られている。
【0009】
しかしながら、これらの融解還元法では、融点の高い白金族元素及び合金化元素を完全に融解する必要があるため、白金族元素含有量が少ない場合でも1050℃、白金族元素含有量が多い場合には1350〜1550℃程度の高温に加熱する必要があった。従って、特殊な高温融解炉がないと実施できないばかりか、そのような高温融解炉を用いても溶融物による炉内壁面の損傷が激しく、短期間で使用不可能になるという問題があった。また、炉内から完全に融体を取り出すことは困難であるため、かなりの量の融体が繰返物として炉壁に残留しやすかった。
【0010】
更に、融解還元法における特に大きな問題として、融体を冷却して得られた融塊は、そのままでは常法に従って湿式浸出できないため、粉砕工程が不可欠な点がある。そのために、付帯設備として粉砕設備が必要になると共に、融魂の組成に関しても粉砕性の良好な元素をわざわざ添加し、且つ融体を急冷するなど、操業上の困難が伴っていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、原料中に含まれる難溶性白金族元素を可溶性化する際に、装置の腐食や白金族元素の不完全な揮発がなく、しかも特別な高温融解炉や湿式浸出前の粉砕が不要であり、イリジウムやルテニウムのような特に難溶性の白金族元素が多く含まれる原料でも可溶性化が可能な方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明が提供する難溶性白金族元素の可溶性化方法は、難溶性白金族元素を含有する固体原料粉末を、白金族元素と合金化しうる鉄族元素粉末と混合し、該難溶性白金族元素及び鉄族元素の融点未満で且つその合金の共融点未満の温度で加熱処理することを特徴とする。
【0013】
本発明の難溶性白金族元素の可溶性化方法において、難溶性白金族元素とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、及びイリジウム(Ir)をいう。また、白金族元素と合金化しうる元素としては鉄族元素、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等を使用することができるが、中でも鉄が好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明では、難溶性白金族元素であっても、これを含む原料を固体粉末の状態として鉄族元素粉末と混合し、各元素の融点及びその合金の共融点よりやや低い温度で加熱することによって、各粉末中の原子が接触面を介して相互に拡散するので、融解を経ることなく、可溶性化した難溶性白金族元素を含む合金が粉末として得られる。
【0015】
得られた合金粉末は、白金族元素が均一に分散して合金化されているので、後の常法による湿式溶解工程において、酸などに溶解する際に原子レベルの極めて微細な白金族元素の粒子が生成し、その比表面積が非常に大きいため可溶性になるものである。尚、難溶性白金族元素を含む原料には可溶性白金族元素が通常含まれるが、この可溶性白金族元素も溶解工程で支障なく溶解される。
【0016】
白金族元素と合金化しうる元素としては、前記のごとく鉄族の元素である鉄、ニッケル、コバルト等が使用可能である。これら以外にも白金族元素と合金化が可能な元素は存在するが、融点が難溶性白金族元素の融点よりも掛け離れて低いと、その融点未満での加熱温度では白金族元素の拡散が不完全になり、また逆に融点が高すぎると鉄族元素の拡散が不完全になるため好ましくない。
【0017】
上記鉄族元素の中でも、価格を配慮すると鉄が最も適している。しかし、鉄は、単独では融点が1535℃と高いため、加熱下での白金族元素の拡散が不完全になる恐れがある。そのため、鉄粉末に炭素粉末を添加して、加熱時に融点1153℃の炭化鉄(Fe3C)を生成させ、且つその融点である1153℃未満の温度で加熱処理することが望ましい。
【0018】
また、固体原料粉末中の難溶性白金族元素が酸化物等の金属単体以外の形態で存在し、且つ使用する鉄族元素に還元力が無い場合には、同時に還元剤を共存させて加熱処理することにより金属の状態にまで還元しなければ、可溶性の合金を形成できない。このような場合、粉末の還元剤を添加するか、水素のような還元性ガス雰囲気中で加熱処理するか、又はこれらを併用することが好ましい。
【0019】
加熱処理の温度は、原料粉末に含まれる白金族元素及び鉄族元素の種類及び含有量により変動するが、各元素の融点及びその合金の共融点を越えない範囲であれば高温であるほど好ましい。また、加熱処理温度が低くなるほど、融点が高い難溶性白金族元素の完全な拡散が困難になるため、好ましくは850℃以上、更に好ましくは950℃以上の温度で加熱処理することが望ましい。
【0020】
また、加熱処理の時間は原料粉末及び合金化粉末の粒子の大きさに依存し、粉末の粒径が大きくなるほど拡散に要する時間が長くなる。例えば、粉末の粒径が200μm程度までの場合には、3時間ほどの処理時間で十分である。一般的には、粒径がほぼ1mm程度以下であれば十分に拡散が進行し、可溶性化された合金粉末を得ることが可能である。尚、加熱処理温度が低いほど、拡散に要する時間も長くなるので、処理時間も長くなる。
【0021】
本発明方法によって、加熱処理による拡散終了後に得られた合金粉末は、塩酸と塩素など、酸化性のハロゲン化水素酸を用いた常法の湿式法に従って、合金中に含有されている難溶性白金族元素を含む全ての白金族元素を溶解し、簡単に効率良く抽出することができる。
【0022】
【実施例】
実施例1
非鉄金属精錬工程から産出した下記表1に示す組成を有し、粒径が45μm以下の固体原料粉末に、粒径45μm以下のFe粉末を全体の20重量%になるように添加混合し、水素気流中において850℃で3時間又は6時間保持する加熱処理を行った。
【0023】
【表1】
【0024】
得られた合金粉末を5N−HCl中に400g/lとなるように懸濁し、90℃まで昇温した後塩素を吹込み、酸化還元電位が最大値に達した後、更にその電位が保たれる程度に塩素を5時間吹込み続けた。
【0025】
このようにして得られた浸出液と残った沈澱とから、各白金族元素の浸出率を算出し、結果を下記表2に示した。比較例として、上記の加熱処理を実施しなかった原料固体粉末を用いて、そのまま上記と同様に浸出した場合についても浸出率を算出し、その結果を表2に併せて示した。
【0026】
【表2】
【0027】
原料中に含まれる白金族元素は、難溶性の白金族元素であっても、本発明の加熱処理を施すことにより可溶化され、常法の湿式法により浸出できることが分かる。ただし、特に難溶性のRuとIrは浸出率が若干劣っている。
【0028】
実施例2
前記表1の組成を有する粒径45μm以下の固体原料粉末を使用し、粒径45μm以下のFe粉末を全体の20重量%になるように添加混合した後、水素気流中において950℃で3時間保持する加熱処理を行った。
【0029】
得られた合金粉末は、実施例1と同様に5N−HCl中に400g/lとなるように懸濁し、90℃まで昇温した後塩素を吹込み、酸化還元電位が最大値に達した後、更にその電位が保たれる程度に塩素を5時間吹込み続けた。このようにして得られた浸出液及び沈澱より各白金族元素の浸出率を算出し、結果を表3に示した。
【0030】
【表3】
【0031】
加熱処理温度を950℃にすることにより、全ての白金族元素の浸出率が約95%又はそれ以上に向上した。
【0032】
実施例3
前記表1の組成を有する粒径45μm以下の固体原料粉末を使用し、粒径45μm以下のFe粉末と、Fe粉末の1/3モル相当のグラファイト粉末を添加混合した後、実施例1と同様に加熱処理及び浸出処理を実施した。
【0033】
このようにして得られた浸出液及び沈澱より各白金族元素の浸出率を算出し、その結果を表4に示した。
【0034】
【表4】
【0035】
固体原料粉末にFe粉末と炭素粉末とを添加し、且つ水素雰囲気中950℃で加熱処理することにより、難溶性白金族元素を含む全ての白金族元素を98%以上の高い浸出率で浸出させることが可能となった。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、難溶性白金族元素を含む固体原料でも、これを粉末の状態で白金族元素と合金化可能な元素粉末と混合し、各粉末の融点及びその合金の共融点未満の温度で加熱処理することにより、融解を経ることなく、難溶性白金族元素を可溶性の状態で含む合金粉末とすることができる。
【0037】
従って、本発明では、特別な高温融解炉などを使用せずに、比較的低い温度で可溶性化処理でき、しかも装置の腐食や白金族元素の不完全な揮発がなく、得られる合金も粉末であるから湿式浸出前の粉砕が不要であって、経済的且つ効率的に難溶性白金族元素を分離回収することが可能である。
Claims (5)
- 難溶性白金族元素を含有する固体原料粉末を、白金族元素と合金化しうる鉄族元素粉末と混合し、該難溶性白金族元素及び鉄族元素の融点未満で且つその合金の共融点未満の温度で加熱処理することを特徴とする難溶性白金族元素の可溶性化方法。
- 鉄族元素粉末が鉄粉末であることを特徴とする、請求項1に記載の難溶性白金族元素の可溶性化方法。
- 鉄粉末と共に炭素粉末を混合することを特徴とする、請求項2に記載の難溶性白金族元素の可溶性化方法。
- 加熱処理を還元性雰囲気中で行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の難溶性白金族元素の可溶性化方法。
- 加熱処理を950℃以上で行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の難溶性白金族元素の可溶性化方法。
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