JP3679366B2 - Ga添加太陽電池用CZシリコン単結晶および太陽電池用シリコン単結晶ウエーハ並びにその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、特に太陽電池の材料として有用なチョクラルスキー法(以下、Czochralski法、CZ法、引上げ法と記することがある。)で製造したシリコン単結晶、その製造方法及びそれを利用したシリコン単結晶太陽電池に関する。
背景技術
始めに太陽電池を構成する基板材料を基に、太陽電池の特性について説明する。太陽電池をその基板材料を基に分類すると、大きく分けて「シリコン結晶系太陽電池」「アモルファス(非晶質)シリコン系太陽電池」「化合物半導体系太陽電池」の3種類が挙げられ、更にシリコン結晶系太陽電池には「単結晶系太陽電池」と「多結晶系太陽電池」がある。この中で太陽電池として最も重要な特性である変換効率が高い太陽電池は「化学物半導体系太陽電池」であり、その変換効率は25%近くに達する。しかし、化合物半導体系太陽電池は、その材料となる化合物半導体を作ることが非常に難しく、太陽電池基板の製造コスト面で一般に普及するには問題があり、その用途限られたものとなっている。
なお、ここで「変換効率」とは、「太陽電池セルに入射した光のエネルギーに対し、太陽電池により電気エネルギーに変換して取り出すことができたエネルギーの割合」を示す値であり百分率(%)で表わされた値を言う。
化合物半導体系太陽電池の次に変換効率の高い太陽電池としては、シリコン単結晶系太陽電池が続き、その発電効率は20%前後と化合物半導体太陽電池に近い変換効率を持ち、太陽電池基板も比較的容易に調達できることから、一般に普及している太陽電池の主力となっている。さらに、変換効率は5〜15%程度と前述の二つの太陽電池にはおよばないものの、太陽電池基板材料の製造コストが安価であると言う点から、シリコン多結晶系太陽電池やアモルファスシリコン系太陽電池等も実用化されている。
次に、一般的なシリコン単結晶系太陽電池の製造方法を簡単に説明する。まず、太陽電池セルの基板となるシリコンウエーハを得るために、チョクラルスキー法或いは浮遊帯域溶融法(以下、FZ法、Floating zone法と記することがある。)により、円柱状のシリコン単結晶のインゴットを作る。更に、このインゴットをスライスして例えば厚さ300μm程度の薄いウエーハに加工し、ウエーハ表面を薬液でエッチングして表面上の加工歪みを取り除くことによって太陽電池となるウエーハ(基板)が得られる。このウエーハに不純物(ドーパント)の拡散処理を施してウエーハの片側にPN接合面を形成した後、両面に電極を付け、最後に太陽光の入射側表面に光の反射による光エネルギーの損失を減らすための反射防止膜を付けることで太陽電池が完成する。
昨今、太陽電池は環境問題を背景に、クリーンエネルギーの一つとして需要は拡大しつつあるが、一般の商用電力と比較してエネルギーコストの高いことがその普及の障害となっている。シリコン結晶太陽電池のコストを下げるのには、基板の製造コストを下げる一方でその変換効率を更に高めることが必要である。このため、単結晶系太陽電池の基板にはいわゆる半導体素子を作製するためのエレクトロニクス用としては適合しない、或いは単結晶棒の中で製品とはならないコーン部分、テール部分等を原料として用いることで基板材料のコストを下げることが行われてきた。しかし、このような原料の調達は不安定で量にも限界があり、今後のシリコン単結晶系太陽電池の需要拡大を考えると、このような方法では、必要とする量の太陽電池基板を安定して生産することは難しい。
また太陽電池においては、より大電流を得るために、より大面積の太陽電池を製造することが重要である。大面積の太陽電池を製造するための基板材料となる大直径シリコンウエーハを得る方法としては、大直径のシリコン単結晶を容易に製造することができ、製造される単結晶の強度にも優れたCZ法が適している。そのため、太陽電池用シリコン結晶の製造はCZ法によるものが主流となっている。
また、その一方で単結晶系太陽電池の基板材料となるシリコンウエーハとしては、その特性の一つである基板ライフタイム(以下、Lifetime、LTと記することがある。)の値が10μs以上でなければ太陽電池基板として利用することはできず、更には、変換効率の高い太陽電池を得るためには基板ライフタイムは好ましくは200μs以上であることが要求されている。
しかし、現在の単結晶棒製造方法の主流であるCZ法で作った単結晶は、太陽電池に加工した際に太陽電池セルに強い光を照射すると太陽電池基板のライフタイムの低下が起こり、光劣化を生じるために十分な変換効率を得ることができず、太陽電池の性能の面でも改善が求められている。
このCZ法シリコン単結晶を用いて太陽電池を作った時に、強い光を太陽電池セルに当てるとライフタイムが低下し光劣化が起こる原因は、単結晶基板中に存在するボロンと酸素による影響であることが知られている。現在、太陽電池として用いられているウエーハの導電型はP型が主流であり、通常このP型ウエーハにはボロンがドーパントとして添加されている。そして、このウエーハの材料となる単結晶棒は、CZ法(MCZ法磁界下引上げ法(以下、Magnetic field applied CZ法と記することがある。)を含む)、あるいはFZ法によって製造することができるが、FZ法では単結晶棒の製造コストがCZ法に比べ高いことに加えて、前述のようにCZ法の方が大直径のシリコン単結晶を製造し易いことから、現在はもっぱら比較的低コストで大直径の単結晶を作ることができるCZ法によって製造されている。
しかし、CZ法によって製造される結晶中には高濃度の酸素が存在し、このためP型CZ法シリコン単結晶中のボロンと酸素によってライフタイム特性に影響を与え光劣化が生じると言う問題点がある。
発明の開示
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、高い酸素濃度を有する単結晶であっても、光劣化を生じることなく光エネルギーの変換効率が非常に高い太陽電池を作製するためのシリコン単結晶およびシリコン単結晶ウエーハ、並びにそれらの製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、上記の目的を達成するために為されたもので、本発明は、Gaを添加したシリコン単結晶であって、抵抗率が5Ω・cm〜0.1Ω・cmであることを特徴とする前記シリコン単結晶である。
あるいは、本発明は、Gaを添加したシリコン単結晶であって、結晶中に含まれるGaの濃度が5×1017atoms/cm3〜3×1015atoms/cm3であることを特徴とする前記シリコン単結晶である。
これは太陽電池の基板としては、低抵抗率でライフタイムの高い基板が望まれるが、基板ウエーハの抵抗率が極度に低いものは、基板内部にオージェ(Auger)再結合による少数キャリアのライフタイム(寿命)の低下が発生し変換効率が低下する。従って、本発明のシリコン単結晶中に含まれるガリウムの量は、抵抗率が0.1Ω・cm以上、より好ましくは0.2Ω・cm以上となるようにするか、あるいは、ガリウムの濃度は5×1017atoms/cm3以下とするのが好ましい。なお、本発明では、基板内で生ずるこのようなキャリアのライフタイムを基板ライフタイム、あるいは単にライフタイムという。
また、その一方で基板抵抗率が高すぎても問題が生じる。基板抵抗率が高くなると、太陽電池とした際に太陽電池セルの内部抵抗により電力が消費され、同様に変換効率が低下するためである。これらの理由により、太陽電池の基板材料として用いるのであれば、抵抗率が5Ω・cm以下、より好ましくは2.0Ω・cm以下となるようにするか、または単結晶棒中のガリウムの濃度は3×1015atoms/cm3以上とするのが良い。
そして、本発明は、Gaを添加したシリコン単結晶であって、単結晶中の格子間酸素濃度が20×1017atoms/cm3(ASTM’79)以下であることを特徴とする前記シリコン単結晶である。
このように、本発明では結晶中に酸素が含まれても、Gaにより光劣化がおこらないので、結晶中に含まれる酸素濃度は通常のCZ法によって単結晶中に取り込まれる量を含有してもよく、特に20×1017atoms/cm3以下といった高濃度にしてもよい。したがって、無理に低酸素とする必要がなく、容易に製造することができるとともに、適度に酸素が含まれるために結晶強度が高いというメリットもある。
次に、本発明は、単結晶の直径が4インチ以上であることを特徴とする前記Ga添加シリコン単結晶である。
特に、基板に用いる単結晶の直径が大きくなると、CZ法或いはMCZ法で作った結晶は高い酸素濃度を示す傾向があるため、変換効率が高い太陽電池を得ようとするのであれば、低酸素とするためにFZ法で単結晶を作るか、MCZ法の小直径単結晶を利用するのが一般的な方法であった。しかし、FZ法では最大で6インチを超える直径を持つ単結晶を作ることは極めて難しく、MCZ法でも直径4インチを越えると低酸素濃度の単結晶を製造するのは難しいことから、変換効率の高い太陽電池を得るためには直径の大きな単結晶は不向きとされてきた。
しかし、本発明のシリコン単結晶は、単結晶中に含まれる酸素濃度が前述のように高いものであっても安定した基板ライフタイムを得ることができるため、また、16インチあるいは20インチといった、現在利用されていないような直径の大きな単結晶棒であっても太陽電池の基板ウエーハとして利用することが可能であり、単結晶棒の直径によらず変換効率の高い太陽電池を容易に作ることがきる。また、現在利用されていないような大直径ウエーハも太陽電池基板として用いることができるため、太陽電池そのものの大型化も可能であり、太陽電池の用途を更に広げることも十分可能である。
また、本発明は、前記Gaを添加したシリコン単結晶をスライスして得られる、チョクラルスキー法で製造したGa添加シリコン単結晶ウエーハである。
このような、Gaをドープしたシリコン単結晶ウエーハを太陽電池の基板材料として用いれば、結晶に含まれる酸素の影響により生じるライフタイムの低下を抑制できるため、たとえ高酸素濃度の単結晶ウエーハであっても、太陽電池として必要とされる高いライフタイムを得ることが可能である。これによって、抵抗率の低いセルであっても適切なライフタイムを得ることができるため、高い酸素濃度の基板ウエーハを用いた太陽電池でも、変換効率を損なうことなく性能の高い太陽電池が製造可能となった。また、適度に酸素が含有されていることにより、ウエーハ強度が高いという使用上のメリットも得られる。
なお、本発明のGa添加シリコン単結晶ウエーハを太陽電池基板とするには、その抵抗率は5Ω・cm〜0.1Ω・cm、より好ましくは2.0Ω・cm〜0.2Ω・cmであるか、あるいはウエーハ基板中に含まれるGa濃度は5×1017atoms/cm3〜3×1015atoms/cm3、より好ましくは1.5×1017atoms/cm3〜7×1015atoms/cm3であるのが好ましい。
ウエーハの抵抗率が5Ω・cmより大きいか、またはウエーハ内のGa濃度が3×1015atmos/cm3より小さいウエーハを太陽電池基板として用いた場合には、ウエーハの抵抗率が必要以上に高くなり、基板を太陽電池に加工しても太陽電池の内部抵抗により電力が消費され、太陽電池の変換効率が低下することがある。また、ウエーハの抵抗率が0.1Ω・cmより小さいか、または基板中のGaの濃度が5×1017atoms/cm3より大きい場合には、基板抵抗率が極端に低下するため基板内部にオージェ再結合による少数キャリアのライフタイムの低下が発生して、同様にセルの変換効率が悪化してしまうことがある。従って、太陽電池基板として用いるウエーハは、抵抗率が5Ω・cm〜0.1Ω・cmのものか、あるいは、その基板中に含まれるガリウムの濃度が5×1017atoms/cm3〜3×1015atoms/cm3の範囲のものを使用するのが良い。
また、本発明のGaを添加したシリコン単結晶ウエーハに含まれる格子間酸素濃度は、20×1017atoms/cm3(ASTM‘79)以下とするのが好ましい。すなわち、Gaをドープした太陽電池基板に含まれる酸素濃度は、通常のCZ法で製造した単結晶と同程度の酸素濃度であれば問題なく、単結晶育成時に結晶中に取り込まれる値、即ちシリコンの融点近くにおける酸素の固溶度以内の酸素濃度を持ったシリコンウエーハであればよい。
そして、酸素濃度が20×1017atoms/cm3を越えるようなシリコン単結晶ウエーハを得るには高酸素濃度のシリコン単結晶棒が必要になるが、必要以上に高い酸素濃度の単結晶棒を得るには、単結晶育成時のルツボ回転を高速にする等、単結晶棒を育成し難い製造条件を選択する必要がある。このような育成条件下では、単結晶の成長途中で単結晶にスリップ転位が生じたり、真っ直ぐに単結晶を引き上げることができず結晶が変形するなどして、太陽電池基板に加工できない結晶ができることもあるため、ウエーハの製造コストが高くなり経済的なメリットを得ることが難しくなる。従って、本発明で用いるウエーハの酸素濃度は、20×1017atoms/cm3以下とするのが好ましい。
このように、本発明のGa添加シリコン単結晶およびGa添加シリコン単結晶ウエーハは、太陽電池用とした場合に特に有用である。
また、このようなGa添加シリコン単結晶あるいはGa添加シリコン単結晶ウエーハから作製されたシリコン単結晶太陽電池は、安価で高いエネルギー変換効率を有するものとすることができる。
すなわち、例えばCZ法により育成したGaドープシリコン単結晶棒を加工して太陽電池用基板とし、そのウエーハから太陽電池を作れば、単結晶育成時に結晶中に取り込まれる酸素に影響されることなく、安定した変換効率を有する太陽電池を作製することができる。Gaドープシリコン単結晶を太陽電池の材料として用いれば、酸素の濃度に影響されることなく基板ライフタイムを安定させられるので、太陽電池セルの抵抗率が低くても変換効率の良い太陽電池が作製できる。
これまでのボロンドープCZ法単結晶は、抵抗率が低くなるとそれに併せてライフタイムが低下してしまい、変換効率が高く抵抗率の低い太陽電池を製造することができなかった。しかし、本発明のGaドープCZ法シリコン単結晶およびシリコン単結晶ウエーハを用いれば、変換効率が高い太陽電池を作ることができる。
この場合、前記シリコン単結晶太陽電池であって、太陽電池セルの面積が100cm2以上であるものとすることができる。
このように、ガリウムをドープしたCZシリコン単結晶を太陽電池基板として用いれば、変換効率が高く光劣化による変換効率の低下も少なく、さらには大面積の太陽電池セルを低製造コストで製造することができるため、さらなる太陽電池コストの低減と需要の増大を見込むことができる。加えて、大面積であれば1つのセルから大電流が得られるので電力用としても有効である。
さらに、前記シリコン単結晶太陽電池であって、変換効率が20%以上であるものとすることができる。
このように、ガリウムをドープしたCZシリコン単結晶を太陽電池基板として用いれば、変換効率が高く光劣化による変換効率の低下も少ない太陽電池を得ることができ、その変換効率は20%以上であるものとすることができる。特に従来はセルの面積が100cm2以上で変換効率が20%以上のものは実用化されていないが、本発明のシリコン太陽電池は、セル面積100cm2以上のものであっても、20%以上の変換効率を達成することができる。
さらに前記シリコン単結晶太陽電池であって、該シリコン単結晶太陽電池は宇宙用であるものとすることができる。
本発明のシリコン単結晶太陽電池は、Gaドープ単結晶から成るために宇宙空間内における種々の放射線の影響が小さく、ボロンドープ結晶のような急激な光劣化は見られない。したがって、本発明のシリコン単結晶太陽電池は宇宙用に適したものである。
また前記シリコン単結晶太陽電池であって、光劣化による変換効率の低下が0.5%以下であるものとすることができる。
このように本発明のシリコン単結晶太陽電池は変換効率が高く、光劣化による変換効率の低下がほとんどないので、電力用等の用途に極めて有効な太陽電池となる。
なお、ここで、光劣化による変換効率の低下とは、ソーラーシミュレータに用いられるハロゲンランプ等の定常光を30時間照射する前の変換効率から照射後の変換効率を引いたものである。
次に、本発明は、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、ルツボ内のシリコン融液にGaを添加した後、該シリコン融液に種結晶を接触させ、これを回転しながら引き上げることによってシリコン単結晶棒を育成することを特徴とするGa添加シリコン単結晶の製造方法である。
こうして、Ga添加シリコン単結晶を製造することができる。
この場合、ルツボ内の融液へのGaの添加は、あらかじめ高濃度のGaを添加したシリコン結晶棒を育成し、この高濃度Gaドープシリコン結晶棒を砕いて作ったドープ剤を用いて、シリコン融液にGaを添加するのが好ましい。
本発明でGaを添加した単結晶を製造する場合のGaをドープする方法として、多結晶シリコンを溶融する前、あるいは溶融したシリコン融液に、ガリウムを直接入れてもよいが、ガリウムを添加した単結晶を工業的に量産するのであれば、上記のように、一旦ドープ剤を調整した後にドープする方がよい。このような方法を用いれば効率良く作業を行なうことができる。これはガリウムの融点は30℃と低融点であり取扱いが難しいからである。従って、直接ガリウムをルツボに入れるよりも、ドープ剤を作製した後にドープする方法を用いることにより、Ga濃度を精度良く容易に調整することが可能であり、正確なドーパント濃度を得ることができる。また、ガリウムを直接シリコン融液に投入する場合と比べて、ドープ剤そのものの取扱いも容易になるので、併せて作業性の向上にもつながるものである。
また、Ga添加単結晶棒を育成する際のルツボ回転数を30rpm以下とすることができる。
すなわち、単結晶育成中のルツボ回転数を変化させることにより石英ルツボ壁から溶出する酸素量を調節し、育成する単結晶に取り込まれる酸素量を制御することができる。しかし、ルツボの回転振動等によるシリコン融液面の波立ち等を考えると、Gaを添加したシリコン単結晶の育成と言えども、ルツボの回転数は最大でも30rpmが上限であり、引き上げる単結晶の目標酸素濃度に併せてこの値以下でルツボ回転速度を調整するのが望ましい。このルツボ回転の上限値は、引き上げる単結晶の直径、ルツボの大きさによらず一定で、所望の酸素濃度に合せてルツボ回転数を30rpm以下の範囲で調整して単結晶を育成すれば、単結晶の育成途中でスリップ転位を生じることなく、効率よく単結晶を成長させることができる。
また、Ga添加シリコン単結晶を育成する際の引上機の炉内圧を10〜500mbarの範囲とするのが好ましい。
シリコン融液表面からは、常に石英ルツボ壁から溶出した酸素がSiOのかたちで蒸発しており、シリコン融液中の酸素濃度を必要とする値に保つためにはチャンバー内の圧力を適切に調節する必要がある。炉内圧が10mbar以下ではシリコン融液からのSiOの蒸発量が極端に多くなり石英ルツボから溶出する酸素の量が増え、石英ルツボ壁の劣化を加速し石英ルツボが長時間の操業に耐えられなくなってしまうため好ましくない。また、500mbar以上では、融液から蒸発したSiOがチャンバー内に付着し易くなり、単結晶の育成を妨げるので必要以上に炉内圧を上げるのも好ましくない。Gaをドープしたシリコン単結晶棒の育成にあたっては、製造する単結晶棒の品質に合せて10〜500mbarの範囲で炉内圧を選択するのが好ましい。
また、Ga添加単結晶を育成する際に引上機の炉内に流す不活性ガスの量を、10〜500l/minの範囲とするのが好ましい。
融液面上方から流す不活性ガスの量が500l/min以上になると、融液表面に流れる不活性ガスにより融液表面から取り去られるSiOの量が増え、結果として石英ルツボ壁の劣化を加速してしまうことになる。また、シリコン融液面へ大量の不活性ガスが高速で当たることにより融液の波立ちも大きくなり単結晶棒の成長を阻害し、単結晶を引き上げることができなくなってしうという問題も生じる得る。また、不活性ガスの量が10l/min以下である場合は、融液面から蒸発するSiOの除去効果が小さくなり、ルツボ上端にシリコンの酸化物が析出する等、単結晶の育成するにあたり有転位化を生じさせるような原因が出てきてしまう。これらの理由により、単結晶育成にあたっては不活性ガスの流量は10〜500l/minの範囲で結晶の品質に併せてその流量を調整するのが好ましいものである。
また、Ga添加単結晶を育成する際に引上機の炉内に流す不活性ガスを、アルゴンとするのが好ましい。
単結晶の引上げにあたり、炉内を満たす不活性ガスとしてArガスを用いれば、Arガスは化学的に安定であり、また育成した単結晶の品質にも影響をおよぼすことが少ないので、単結晶棒を太陽電池に加工した場合でも太陽電池として問題となるような品質の劣化を生じさせることがなく、安定した品質を持つ基板ウエーハを得ることができる。
本発明は、チョクラルスキー法で製造したシリコン単結晶およびシリコン単結晶ウエーハにGaをドープすることによって、たとえ高い酸素濃度を有する単結晶であっても、光劣化を生じることなく光エネルギーの変換効率が非常に高い太陽電池を作製するためのシリコン単結晶およびシリコン単結晶ウエーハとすることができる。また、大直径、低コスト化に寄与するとともに、結晶強度も高く耐久性にも優れたものを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明で使用したCZ法による単結晶引上げ装置の構成例図である。
図2は基板抵抗率と基板ライフタイムの関係を示したグラフである。
図3は低抵抗率における基板抵抗率と基板ライフタイムの関係を示したグラフである。
図4は基板抵抗率とその基板から作製された太陽電池の変換効率との関係を示したグラフである。
図5は基板抵抗率とその基板から作製された大面積太陽電池の変換効率との関係を示したグラフである。
図6はDLTS測定の結果を示した図である。
図7は電子線の照射量に対する太陽電池の電流の減少の割合を示した図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、太陽電池の基板材料として製造が比較的容易で量産可能であり、同時に太陽電池として変換効率の高い基板を得るためにはどのようにすれば良いかにつき鋭意研究、実験を繰り返し検討を加えた結果、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明者らは、従来のボロンをドーパントとして加えたP型のCZ法によるシリコン単結晶から作製される太陽電池では、結晶中に酸素とボロンが同時に存在することで、太陽電池セルのバルク中に酸素とボロンに起因する深いエネルギー準位(deep levelまたはtrap levelとも言う。)が形成され、この深いエネルギー準位に太陽電池内のキャリアが捕獲されるために、基板のライフタイムの低下が起こり光劣化が生ずることから、酸素とボロンが同時に存在する場合にのみ基板ライフタイムの低下が起こり、酸素またはボロン何れか一方のみではライフタイムの変化は起こらず、光劣化を生じない点に着目して本発明を完成した。
太陽電池基板は主にP型シリコン単結晶ウエーハが用いられているが、ボロン以外の元素を用いてP型シリコン単結晶を作ることができれば、例え結晶内に酸素が存在しても基板ライフタイムの低下は起こらず光劣化の小さい太陽電池を製造することができると考え、実験を繰り返した結果、ガリウムをドーパントとして添加してP型シリコン単結晶を引き上げて基板を作製し、これを用いた太陽電池では結晶中に高い濃度の酸素が存在してもライフタイムは常に安定で、光劣化を生じない太陽電池を作ることができることを確認した。
しかし、前述のようにウエーハの抵抗率が5Ω・cmより大きいと、抵抗率が必要以上に高くなり太陽電池の内部抵抗により電力が消費され、太陽電池の変換効率が低下する。また、ウエーハの抵抗率が0.1Ω・cmより小さいと、基板抵抗率が極端に低下するために基板内部にオージェ再結合による少数キャリアのライフタイムの低下が発生して、同様にセルの変換効率が悪化してしまう。従って、太陽電池基板として用いるウエーハは、抵抗率が5Ω・cm〜0.1Ω・cmのもの、より好ましくは2.0Ω・cm〜0.2Ω・cmの範囲のもの、あるいはその基板中に含まれるガリウムの濃度が5×1017atoms/cm3〜3×1015atoms/cm3のもの、より好ましくは1.5×1017atoms/cm3〜7×1015atoms/cm3の範囲のものを使用するのが良いことを確認した。
これによりCZ法で製造したシリコン単結晶で高い酸素濃度を示すものであっても、光劣化を起こすとなく安定した高い変換効率を有する太陽電池を作ることが可能となり、シリコン単結晶太陽電池による発電コストを低減させることができる。その結果、太陽電池用シリコン原料のコスト問題の解決とクリーンエネルギーである太陽光発電の普及に寄与するところが大である。
また、CZ法で作った単結晶であっても酸素濃度に影響されることなく安定した変換効率が得られるため、基板として用いるウエーハの直径も現在のものより大きいものを利用することができる。これまでは、ボロンをドープした結晶直径が大きい単結晶は結晶中に含まれる酸素濃度が高いために、太陽電池基板の光劣化が生じたが、抵抗率が5Ω・cm〜0.1Ω・cmとなるような適量のガリウムを添加した単結晶を用いれば、直径の大きな単結晶基板であっても酸素濃度の影響を受けず高い変換効率が得られるため、今後さらに大型太陽電池セルを開発することも可能となった。しかも、適度に酸素が含有されるため、結晶強度が高くなり、加工性が良好となる上に、出来た太陽電池の耐久性も向上する。
さらに一般に、太陽電池は、長時間にわたって決められた電圧あるいは電流を取り出す必要があることから、実際に使用される場合には、太陽電池素子(セル)を複数個直列、あるいは並列につなぎ合わせてモジュール化し、目的とする電力を取り出せるようにしている。特に大きな電力を取り出すためには、多くの太陽電池素子をつなぎ合わせる必要があることから、太陽電池モジュールの簡略化、小型化、更には製造コストの低減を図る意味で太陽電池セルの面積が大きい方が有利であり、大型で変換効率の高い太陽電池セルを太陽電池モジュールの材料として用いることができれば、更なる太陽電池コストの低減と需要の増大を図ることができる。
しかし、従来は結晶中に含まれる酸素とボロン(ホウ素)の影響により、直径の大きなシリコン単結晶を太陽電池基板として用いたとしても、CZ法シリコン単結晶を使った太陽電池はそもそも太陽電池エネルギーの変換効率が低い上に、光劣化による変換効率の低下もあることから、大直径シリコン単結晶を製造するためのコストに見合った特性を持つ太陽電池を得ることが難しかった。
これに対し、抵抗率が5Ω・cm〜0.1Ω・cmとなるような適量のガリウムをドープしたシリコン単結晶を太陽電池基板として用いれば、光劣化による変換効率の低下が小さく、変換効率の高い太陽電池を得ることができると同時に、結晶直径の大きなシリコン単結晶をCZ法で製造することができる。これにより、面積が100cm2以上といった大型の太陽電池セルであっても、低コストで量産することが可能となり、光劣化が少なく高い変換効率を持つ特性と合わせて、更なる太陽電池コストの低減と需要の増大を見込むことができる。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
まず、本発明で使用するCZ法による単結晶引上げ装置の構成例を図1を参照して示す。
単結晶引上げ装置100は原料を溶融するルツボ102を収容するボトムチャンバー101と、引き上げた単結晶を収容し取り出すトップチャンバー110から構成されている。そしてトップチャンバー110の上部には単結晶を引き上げるためのワイヤー巻き取り機構109が備えつけられており、単結晶の育成に従ってワイヤー1を巻き下ろしたり、巻き上げたりの操作を行っている。そして、このワイヤー1の先端には、シリコン単結晶を引き上げるため種結晶Sが種ホルダ22に取り付けられている。
一方、ボトムチャンバー101内のルツボ102は内側を石英103、外側を黒鉛104で構成されており、このルツボ102の周囲にはルツボ内に仕込まれた多結晶シリコン原料を溶かすためのヒータ105が配置されており、さらにヒータは断熱材106で囲われている。そしてルツボ内部にはヒータで加熱することによって溶解されたシリコンの融液Lが満たされている。そして、このルツボは回転動、上下動することが可能な支持軸107により支持されており、そのための駆動装置108がボトムチャンバー下部に取り付けられている。他に、炉内に導入される不活性ガスを整流するための整流筒2を用いてもよい。
次に、上記装置を用いたシリコン単結晶の製造方法について説明する。まず最初に、多結晶シリコン原料とドープ剤であるGaを石英ルツボ103内に入れ、ヒータ105で加熱して原料を溶融する。本形態ではGaを多結晶原料と一緒に溶融前にルツボに入れたが、量産にあたっては精細な濃度調整が必要となることから、高濃度のGaドープシリコン単結晶を作製し、それを細かく砕いてドープ剤を作製し、これを多結晶シリコンを溶融した後に所望濃度になるよう調整して投入するのが望ましい。
次に、多結晶シリコン原料が全て溶けたら、引上げ機構のワイヤー1先端に単結晶棒を育成するための種結晶Sを取り付け、ワイヤー1を静かに巻き降ろして種結晶先端をシリコン融液Lに接触させる。このときルツボ102と種結晶Sは互いに逆方向に回転しており、また引上機内部は減圧状態にあり炉内上部から流された、例えばアルゴン等の不活性ガスで満たされた状態にある。
種結晶周囲の温度が安定したら、種結晶Sとルツボ102を互いに逆方向に回転させながら静かにワイヤー1を巻き取り種結晶の引き上げを開始する。そして、種結晶に生じているスリップ転位を消滅させるためのネッキングを実施する。ネッキングをスリップ転位が消滅する太さ、長さまで行なったら、徐々に径を拡大して単結晶のコーン部を作製し、所望の直径まで拡径する。所定直径までコーン径が広がったところで、単結晶棒の定径部(直胴部)の作製に移行する。この時、ルツボの回転速度、引上げ速度、チャンバー内の不活性ガス圧力、流量等は、育成する単結晶に含まれる酸素濃度に合わせて適宜調整する。また、結晶直径は、温度と引上げ速度を調整することによって制御される。
単結晶直胴部を所定の長さ引上げたら、今度は結晶直径を縮径しテール部を作製したのち、テール先端をシリコン融液面から切り離し、育成したシリコン単結晶をトップチャンバー110まで巻き上げて、結晶が冷えるのを待つ。単結晶棒が取り出し可能な温度まで冷却されたら、引上機から取り出し、結晶をウエーハに加工する工程に移る。
加工工程では、まずコーン部とテール部を切断し単結晶棒の周囲を円筒研削し、適当な大きさのブロックに切断加工する。そして、この適当な大きさにした単結晶ブロックをスライサーによりスライスして、ウエーハ状にした後、必要に応じて面取り、ラッピング等を施し、さらにエッチングによって加工歪みを取り除き太陽電池基板となるウエーハを作製する。また、この時同時に基板ライフタイム測定用のサンプルウエーハも切り出して、ライフタイムの測定を行なっている。この時のライフタイムの測定方法は、次の通りである。
1.基板ライフタイムの測定方法:
1)測定用基板: 厚み2〜3mm又は厚さ250〜400μmのウエーハ
2)前処理条件: スライスウエーハをHF:HNO3=5%:95%の混酸で処理し、両面のスライス損傷層をエッチング除去した後、洗浄を行い、その後、ウエーハ表面にAM(Air Mass)1.5の条件下で定常光を30時間照射した後で、HFにて表面の自然酸化膜を除去する。引き続き、ヨウ素、エタノール混合溶液を使ったケミカル・パッシベーション(CP)処理を施して、結晶表面のキャリア再結合を低減したものとする。
3)ライフタイム測定方法: マイクロ波−PCD法(光導伝度減衰法)を用いて基板ライフタイムの測定を行う。
更に、上記測定で用いた同じ結晶から複数枚のウエーハを切り出して高変換効率セルであるRP−PERC(Random Pyramid − Passivated Emitter and Rear Cell)型太陽電池セルを作製し、太陽電池の変換効率の測定を行なった。変換効率の測定方法は、次の通りである。
2.太陽電池の変換効率の測定方法:
1)セル形状: RP−PERC型セル
2)測定方法: 25℃に温度調節された測定台に太陽電池セルをのせ、ハロゲンランプを光源としたソーラーシミュレータでAM(エアマス)1.5の条件下で定常光をセルに照射し、セルから取り出すことができた電圧と電流を測定して、太陽電池の変換効率を算出した。なお、本発明による変換効率とは、下式で定義された値を言う。
[変換効率]=[セル単位面積当たりから取り出すことができた電力]/[セル単位面積あたりに照射された光エネルギー]×100(%)
3.抵抗率の測定方法:
また、抵抗率の測定は単結晶から所定のサンプルを切り出して、窒素雰囲気下650℃、20分のドナー消滅熱処理を行なった後に四探針法を用いて測定を行なった。
以下、本発明の具体的な実施の形態を実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
まず、チョクラルスキー法によりGaを添加したシリコン単結晶棒の製造を行った。
まず、Ga=0.167gを計量し、原料となる多結晶シリコンと一緒に石英ルツボに仕込んだ。この時、ルツボに仕込んだ多結晶シリコン原料は20kgであった。その後、ヒータを昇温して原料を溶融し、全ての原料が融けおわったところで種結晶を融液表面に接触させて、これを回転しながら引き上げることで直径4インチのP型単結晶棒を製造した。なお、この時使用した石英ルツボの口径(直径)は、12インチのものを使用した。
この時の単結晶棒の主な製造条件は、以下のようにした。
引上げ速度: 1.5〜0.9mm/minまで徐々に低下させていった。
ルツボ回転速度: 9〜21rpmの範囲で変化させた。
炉内雰囲気ガス: アルゴンガスを20l/minチャンバー上部から融液面方向に流した。
炉内圧: チャンバー内の圧力は、20mbarとした。
上記のような製造方法、および製造条件により、結晶直径4インチ、引上げ重量18kg、導電型P型、結晶方位<100>のGa添加シリコン単結晶棒を製造することができた。
同一条件で3本の結晶を引き上げて、その酸素濃度、抵抗率、基板ライフタイムを測定したところ、酸素濃度は、15〜16×1017atmos/cm3と高酸素であった。また、抵抗率/基板ライフタイムは、図2に示す通りとなった(黒丸プロット)。尚、3本の結晶の内1本は石英ルツボへのGa添加量を0.167gとしたが、他の2本はGa添加量を変え、3本の結晶で約20Ω・cm〜0.5Ω・cmの抵抗率範囲となるように引上げた。
この図2からもわかるように、Gaを添加した基板では結晶中の酸素濃度が高いにも関わらず、また抵抗率が下がっても基板ライフタイムの低下はほとんど見られず、安定した特性を示していることを確認した。
次に、上記で用いた試料の中で抵抗率の低いものを選んで2cm×2cm角、厚さ250μmの太陽電池セルを作製し、その変換効率を測定したところ、表1のような結果が得られた。
表1に示したように、酸素濃度の高いウエーハを用いたにも係らず、変換効率は21.1%と高い値を示しており、効率よく光エネルギーを電気エネルギーに変換していることがわかる。また、太陽電池セルに30時間以上光を照射した後の変換効率も殆ど変化することなく初期値と同じ21.1%と安定した変換効率を示しており、Gaドープ基板を用いた太陽電池は、基板酸素濃度が高くともFZ法或いはMCZ法で製造した低酸素濃度基板太陽電池と同じ良好な特性が得られることを確認した。
(実施例2)
次に実際にGaをドープしたシリコン単結晶基板を用いて、実用可能な大型太陽電池セルを作ることができるかを確認するため、口径18インチの石英ルツボを用いてGaをドープした直径6インチのCZシリコン単結晶を育成し、この単結晶をもとに太陽電池となる基板を作製した。
そして、この基板からシリコン単結晶太陽電池セルとしては大型の、10cm×10cm角(セル面積100cm2)、厚さ250μmの太陽電池セルを作製し、その変換効率を測定した。測定結果は、表1に併記した。
表1に示したように、Gaドープシリコン単結晶を用いた太陽電池では、定常光を30時間照射する前と照射した後での変換効率にほとんど差はなく、光劣化を生じ難いことがわかる。また、変換効率も20.2%と非常に良好な値を示しており、高効率で大型の太陽電池セルが得られたことを確認した。
(実施例3)
実施例2と同様にGaをドープした直径6インチのCZシリコン単結晶を複数本育成した。Ga濃度が高く基板抵抗率が1.3Ω・cm以下の部分から複数枚のウエーハを切り出して、基板ライフタイムを測定した。その結果を図3に示す。
図3からわかるようにガリウムドープ結晶では低抵抗率でもライフタイムの低下が少ない
また、基板抵抗率が0.08Ω・cm〜10Ω・cmの部分から複数枚のウエーハ(厚さ380μm)を切り出して2cm×2cm角の太陽電池を作製し、その変換効率を測定した。その結果を図4に示す。
図4からわかるようにGaドープ基板で0.1Ω・cm〜5Ω・cmの抵抗率範囲のものから作製された太陽電池は比較的高い変換効率を示す。特に0.2Ω・cm〜2Ω・cmではほぼ20%以上と高い変換効率が得られた。
さらに、基板抵抗率が0.5Ω・cmから1.3Ω・cmの部分から厚さ380μmのウエーハを複数枚切り出して10cm×10cm角の太陽電池を作製し、その変換効率を測定した。その結果を図5に示すが、大面積の太陽電池でも20%以上の高い変換効率が得られた。尚、これらの太陽電池は定常光を30時間照射しても変換効率の低下が見られなかった。
(実施例4)
実施例1で用いたガリウムドープCZ結晶の抵抗率が1Ω・cm程度の部分からウエーハを切り出して、ウエーハに1MeVの電子線を3×1016cm2照射した後に、DLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)測定を行った。
DLTS測定の結果を図6に示す。図6からわかるように、ガリウムドープ結晶(実線で示す)では100〜110K近くにピークとして表われるドナーの発生はほとんど検出されない。またガリウムドープ結晶では175K近くにピークとして表われるライフタイムを低下させる再結合中心がごくわずかしか検出されなかった。ガリウムドープ結晶では、電子線照射によるライフタイムの低下が極めて小さいことが確認された。
また、DLTSを測定した結晶に近い部位から切り出したウエーハ(厚さ250μm、2×2cm角)から太陽電池を製作し、1MeVの電子線を照射し、電子線の照射量に対する電流の減少の割合を調査した。その結果を図7に示す。
図7からわかるように、ガリウムドープ結晶では電流の減少の割合が小さく、照射量が1×1018/cm2でも20%程度の電流の減少が見られた程度であった。ガリウムドープ結晶から製造された太陽電池は電子線照射による劣化が少なく、宇宙用太陽電池として適していることが確認された。
次に、上記の実施例と比較を行なうために、FZ法、MCZ法、CZ法のそれぞれの製造方法で作製した一般的な太陽電池の材料であるボロンドープ基板を用いて太陽電池を作り、Gaドープ基板を用いた太陽電池との比較を行なった。
(比較例1) CZ法で製造したボロン添加シリコン単結晶
通常のCZ法で、低酸素濃度となる条件で、直径4インチの単結晶棒を抵抗率の範囲が約20Ω・cm〜約0.8Ω.cmとなるように6本引き上げて、その酸素濃度、抵抗率、基板ライフタイムを測定したところ、酸素濃度は、10〜15×1017atmos/cm3の範囲であった。また、抵抗率/基板ライフタイムは、図2に示す通りとなった(白丸プロット)。
この中で酸素濃度と抵抗率が最も低い基板ウエーハから2cm×2cm角、厚さ250μmの太陽電池を作製し、光照射前後の変換効率を測定した。測定結果は、表1に併記した。
表1から明らかであるように、CZ法で製造したボロンドープ基板を用いた太陽電池では、低酸素としているにもかかわらず、光劣化により発電効率が1.8%程度も低下しており、変換効率の高い性能の安定した太陽電池を造るのが難しいことがわかる。
(比較例2) MCZ法で製造したボロン添加シリコン単結晶
MCZ法で、きわめて低酸素濃度となる条件で、直径4インチの単結晶棒を3本引き上げて、その酸素濃度、抵抗率、基板ライフタイムを測定したところ、酸素濃度は、1.0〜1.8×1017atmos/cm3と極低酸素であった。また、抵抗率/基板ライフタイムは、図2に示す通りとなった(白角プロット)。
この中で酸素濃度と抵抗率が最も低い基板ウエーハから2cm×2cm角、厚さ250μmの太陽電池を作製し、光照射前後の変換効率を測定した。測定結果は、表1に併記した。
表1から明らかであるように、MCZ法で製造したボロンドープ基板を用いた太陽電池では、極低酸素としているため、光劣化はほとんど生じない。ただし、MCZ法で極低酸素としているため、極めて高コストである。また、MCZ法であっても、高酸素にすれば光劣化が生じることが確認された。
(比較例3) FZ法で製造したボロン添加シリコン単結晶
FZ法で、直径4インチの単結晶棒を2本引き上げて、その酸素濃度、抵抗率、基板ライフタイムを測定したところ、酸素濃度は、0.1×1017atmos/cm3以下とほとんど含有されていなかった。また、抵抗率/基板ライフタイムは、図2に示す通りとなった(三角プロット)。
この中の1本を用いて、2cm×2cm角、厚さ250μmの太陽電池を作製し、光照射前後の変換効率を測定した。測定結果は、表1に併記した。
表1から明らかであるように、FZ法で製造したボロンドープ基板を用いた太陽電池では、ほとんど酸素が含有されていないため、光劣化はほとんど生じない。ただし、極めて高コストであり、大直径のものを得ることが難しい。また、結晶強度が低く、耐久性に問題があった。
(比較例4) ボロン添加CZシリコン単結晶から製造された大型セル
Gaの代わりにボロンをドープした他は実施例2と同様に、通常のCZ法で直径6インチのシリコン単結晶を製造し、このシリコン単結晶から10cm×10cm角、厚さ250μmの大型太陽電池セルを作製し、その変換効率を測定した。測定結果は、表1に併記した。
表1から明らかであるように、CZ法で製造したボロンドープ基板を用いて大型のセルを作製した太陽電池の変換効率は、光劣化前では19.8%と比較的高い変換効率を示していたが、30時間の定常光照射後は光劣化により17.9%まで変換効率が低下してしまい、安定して20%を超えるような変換効率を得ることができなかった。
(比較例5)
実施例4の比較として、比較例1で用いたボロンドープCZ結晶からウエーハを切り出して1MeVの電子線を3×1016cm2照射した後に、DLTSの測定を行った。
DLTS測定の結果を図6に併記した。図6からわかるように、ボロンドープ結晶(破線で示す)では100〜110K近くにドナーの発生が見られた。またボロンドープ結晶では175K近くにライフタイムを低下させる再結合中心が高密度に発生していた。ボロンドープ結晶では電子線照射によりライフタイムが大幅に低下することがわかる。
また、DLTSを測定した結晶に近い部位から切り出したウエーハ(厚さ250μm、2×2cm角)からの太陽電池を製作し、1MeVの電子線を照射し、電子線の照射量に対する電流の減少の割合を調査した。その結果を図7に併記した。
図7からわかるように、ボロンドープ結晶では照射量の増加とともに電流が減少し、照射量が5×1016cm2では急激な電流の減少が見られ発電が停止した。ボロンドープ結晶ではキャリアの再結合中心となる深い準位形成に伴ってライフタイムが低下するとともに、酸素とボロンの欠陥がドナーの発生を誘起し、ドナー濃度の増加とともに本来p型である結晶がn型に反転してしまうために発電が停止したものと考えられる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、上記説明においては、主に通常のチョクラルスキー法によってGa添加シリコン単結晶を製造する場合につき説明したが、本発明はMCZ法にも適用できるものであり、本発明の特許請求の範囲に記載したチョクラルスキー法には、このMCZ法も含まれるものである。すなわち、MCZ法においても、大直径、高酸素のシリコン単結晶を得る場合には、本発明でGaをドープするのが有効であることは言うまでもない。
Claims (16)
- チョクラルスキー法で製造したドープ剤としてGa(ガリウム)を添加したシリコン単結晶であって、抵抗率が5Ω・cm〜0.1Ω・cmであり、直径が4インチ以上であり、太陽電池用であることを特徴とする太陽電池用シリコン単結晶。
- チョクラルスキー法で製造したドープ剤としてGaを添加したシリコン単結晶であって、結晶中に含まれるGaの濃度が5×1017atoms/cm3〜3×1015atoms/cm3であり、直径が4インチ以上であり、太陽電池用であることを特徴とする太陽電池用シリコン単結晶。
- 前記Gaを添加したシリコン単結晶であって、単結晶中の格子間酸素濃度が20×1017atoms/cm3(ASTM’79)以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池用シリコン単結晶。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のシリコン単結晶をスライスして得られる、チョクラルスキー法で製造したGa添加太陽電池用シリコン単結晶ウエーハ。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のGa添加太陽電池用シリコン単結晶から作製されたシリコン単結晶太陽電池。
- 請求項4に記載のGa添加太陽電池用シリコン単結晶ウエーハから作製されたシリコン単結晶太陽電池。
- 請求項5または請求項6に記載のシリコン単結晶太陽電池であって、太陽電池セルの面積が100cm2以上であることを特徴とするシリコン単結晶太陽電池。
- 請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載のシリコン単結晶太陽電池であって、変換効率が20%以上であることを特徴とするシリコン単結晶太陽電池。
- 請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載のシリコン単結晶太陽電池であって、該シリコン単結晶太陽電池は宇宙用であることを特徴とするシリコン単結晶太陽電池。
- 請求項5ないし請求項9のいずれか1項に記載のシリコン単結晶太陽電池であって、光劣化による変換効率の低下が0.5%以下であることを特徴とするシリコン単結晶太陽電池。
- チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、ルツボ内のシリコン融液にGaを添加した後、該シリコン融液に種結晶を接触させ、これを回転しながら引き上げることによって、抵抗率が5Ω・cm〜0.1Ω・cmであるか、または結晶中に含まれるGaの濃度が5×10 17 atoms/cm 3 〜3×10 15 atoms/cm 3 であり、直径4インチ以上で太陽電池用のシリコン単結晶棒を育成することを特徴とするGa添加太陽電池用シリコン単結晶の製造方法。
- 前記ルツボ内の融液へのGaの添加は、あらかじめ高濃度のGaを添加したシリコン結晶棒を育成し、この高濃度Gaドープシリコン結晶棒を砕いて作ったドープ剤を用いて、シリコン融液にGaを添加することを特徴とする請求項11に記載のGa添加太陽電池用シリコン単結晶の製造方法。
- 単結晶棒を育成する際のルツボ回転数を30rpm以下とすることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のGa添加太陽電池用シリコン単結晶の製造方法。
- 単結晶を育成する際の引上機の炉内圧を10〜500mbarの範囲とすることを特徴とする請求項11ないし請求項13のいずれか1項に記載のGa添加太陽電池用シリコン単結晶の製造方法。
- 単結晶を育成する際に引上機の炉内に流す不活性ガスの量を、10〜500l/minの範囲とすることを特徴とする請求項11ないし請求項14のいずれか1項に記載のGa添加太陽電池用シリコン単結晶の製造方法。
- 単結晶を育成する際に引上機の炉内に流す不活性ガスを、アルゴンとすることを特徴とする請求項11ないし請求項15のいずれか1項に記載のGa添加太陽電池用シリコン単結晶の製造方法。
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