JP3845721B2 - レーザーアブレーションによる複合酸化物ナノ微結晶薄膜の製造方法 - Google Patents

レーザーアブレーションによる複合酸化物ナノ微結晶薄膜の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス、金属、セラミックス、ポリマー等の各種基板材料の表面にナノメートルオーダーの微結晶から構成される複合酸化物薄膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ABO3の化学組成で示されるペロブスカイト型構造を有する酸化物(A:希土類元素やアルカリ土類金属元素、B:遷移金属元素)は特異な機能性を有している。たとえばLaFeO3は高感度ガスセンサー材料として環境計測・自動車廃棄ガス検出用センサーに実際に応用されている機能材料である。一方、BaTiO3は強誘電特性をもっているため強誘電メモリ、あるいは低屈折率であるため光導波路等に応用されている有望な電子・光学材料である。この酸化物の微結晶に関しては、満足できる製法によっては、未だ得られていない。
ペロブスカイト型酸化物の機能特性の向上や電子デバイス化をするためには薄膜化が非常に重要である。ペロブスカイト型構造を有する酸化物の機能性は、主としてその独特な結晶構造に起因するため結晶性を有する薄膜を調製することが非常に必要である。また、構成される結晶のサイズをナノメートルオーダーにすることによって薄膜化して得られる各種機能材料の特性を更に向上させることが出来ると考えられる。
ところで、酸化物の薄膜の製法では、基板と基板上に形成しようとする材料を真空容器内に入れ、レーザ光を材料に照射して蒸発させ基板上に真空蒸着を行うことが行われてきた(特開昭62−222058号)。
レーザの照射では、レーザー蒸着法、特に、レーザーアブレーション法が用いられる。これは、大きなレーザー密度を有するレーザーパルスを一定の周期によって、ターゲットに照射することによりターゲット材料を蒸発させて、基板上にターゲット組成に近い組成を有する薄膜を形成することができる。
この製法によって薄膜化して得られる各種機能材料の特性を更に向上させることが出来る。
この製法では、セラミック化合物薄膜の金属比と同一組成又は同じ組成のターゲットに高いエネルギーのレーザービームを照射することが行われ、この場合でもレーザー蒸着法、特に、レーザーアブレーション法が用いられる。これは、大きなレーザー密度を有するレーザーパルスをターゲットに照射することによりターゲット材料を蒸発させて、基板上にターゲット組成に近い組成を有する薄膜を形成することができる。そして、このような方法では、基板上にセラミック化合物薄膜を形成する際に、ターゲットの表面に蒸着雰囲気ガスを吹き付けることが行われている(特開平5−270830号)。
単結晶薄膜或いは超伝導薄膜の製造に関し、基材の主表面にターゲットの主表面が鋭角をなすように、基材から隔離した位置にターゲット主表面が鋭角をなすようにすることが好ましいとするものである(特開2001−31497号、特開2001−31492号)。
また、雰囲気ガスの圧力と、基板とターゲット材の間の距離を調整しながら、ターゲット材にビーム光を照射し、基板上に薄膜を形成する方法なども知られている(特開2000−144387号)。
従来、ゾル−ゲル法や気相法としてスパッタ法やレーザーアブレーション法により薄膜化はされているが、これをさらに結晶化するためには、高温での熱処理や薄膜調製時での基板加熱が必要不可欠であるとされてきた。
中でもレーザーアブレーション法によるペロブスカイト型構造を有する酸化物薄膜作製法に関しては、通常数Paから数十Pa程度の酸素雰囲気中で、基板を300℃から1000℃程度に加熱して作成されており(たとえば電気化学会レーザーアブレーションとその産業応用調査専門委員会編 コロナ社発行 「レーザーアブレーションとその応用」,p.248-263)、この様な加熱を行うことが薄膜の結晶化のために必要不可欠であるとされてきたが、このような加熱を行うと結晶が成長してそのサイズが大きくなり、必ずしも好ましいことではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、基板を格別に加熱することなく、ペロブスカイト型構造を有する酸化物薄膜のナノメートルオーダーの微結晶を基板表面上に形成する方法を提供することである。そして、その製造方法は、非常に簡単な工程の組み合わせからなり、高収率で目的生成物を得る事ができるものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題について鋭意検討し、以下の事柄を見出した。
ABO3の化学組成で示されるペロブスカイト型構造を有する酸化物(A:希土類元素やアルカリ土類金属元素、B:遷移金属元素)と同じ組成比からなるターゲットに、アルゴンガスを存在させ、レーザーアブレーション法によりレーザー光を照射して、ターゲット表面に対して垂直であり、off-axisの配置をとる基板上に、ペロブスカイト型構造を有する酸化物の微結晶を製造することができることを見出した。とくに、その際の条件として、50Paから200Paの圧力条件下行うこと、及びターゲット表面に対して垂直であり、off-axisの配置をとる基板を用いることが重要であること、そしてこれらの条件を組み合わせることが重要であることを見出した。
【0005】
本発明によれば、以下の方法が提供される。
(1)ABO3の化学組成で示されるペロブスカイト型構造を有する酸化物(A:希土類元素やアルカリ土類金属元素、B:遷移金属元素)からなるターゲットに、アルゴンガスを存在させ、50Paから200Paの圧力条件、レーザーアブレーション法によりレーザー光を照射して、ターゲット表面に対して垂直であり、off-axisの配置をとる基板上に、ペロブスカイト型構造を有する酸化物の微結晶薄膜を製造することを特徴とするペロブスカイト型構造を有する酸化物からなる微結晶薄膜の製造方法。
(2)ペロブスカイト型構造を有する酸化物がLaFeO3であることを特徴とする(1)記載のペロブスカイト型構造を有する酸化物からなる微結晶薄膜の製造方法。
(3)ペロブスカイト型構造を有する酸化物がBaTiO3であることを特徴とする(1)記載のペロブスカイト型構造を有する酸化物からなる微結晶薄膜の製造方法。
【0006】
削除
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の目的生成物は以下のABO3の化学組成で示されるペロブスカイト型構造を有する酸化物(A:希土類元素やアルカリ土類金属元素、B:遷移金属元素)である。これら希土類元素、アルカリ土類金属元素、及び遷移金属元素は周期律表に属する元素を用いることができることを示しているが、この中では、現在各分野で注目されている、LaFeO3 BaTiO3などを挙げることができる。
【0008】
本発明の原料物質は、目的物質とほぼ同じ組成のLaFeO3 BaTiO3をターゲットにする。
LaFeO3ターゲットは一般に通常の方法で粉末を製造し、これを成型し焼成したものが用いられる。具体的には、LaFeO3粉末を原料とし、これを一軸成型し1000℃で焼結したものが用いられる。
同じく、BaTiO3ターゲットは、一般に通常の方法で粉末を製造し、これを成型し、焼結して得られる焼結体が利用される。例えば、原料として通常の固相反応法で作製したフルウチ化学株式会社製のターゲットを用いることができる。
ターゲット材となる酸化物は、金属ドーピングしたもの及び置換されたペロブスカイト型酸化物も使用することができる。
【0009】
本発明では、前記ターゲットにレーザーアブレーション法によりレーザー光を照射し、基板の上に、ペロブスカイト型構造を有する酸化物を蓄積させるものである。
得られた薄膜の結晶構造は、薄膜X線回折(理学電機社製X線回折装置 RAD-C)により同定する。また、薄膜を構成する結晶子のサイズはScherrer式を用いて見積もった結果を示すものである。また、薄膜中の金属原子の量論比をX線光電子分光(PHI社製X線光電子分光装置 5600ci)分析により求めた。
【0010】
本発明では、図1に示す反応器を用いる。前記のターゲットを構成する材料4は、回転軸6の上に載置される台の上に置かれている(図2)。
レーザ発生装置11から出るレーザ光は、窓10を通って、反応室2内に注がれ、集光レンズを通り、ターゲット上に照射される。レーザアブレーションを行うために、エキシマレーザが好ましく用いられる。エキシマレーザとしては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)及びArFエキシマレーザ(波長193nm)が用いられる。
レーザアブレーションは、高いエネルギー密度(パルスエネルギー:1.01J/cm2程度またはそれ以上)のレーザー光をターゲット材に照射して、ターゲット材の溶融・脱離を行わせしめるものである。
本発明では、ArFエキシマレーザーを用い、通常行う繰り返し周波数は10Hz程度、パルス幅は17ns、パルス数は2,000程度の条件を使用して行った結果である。これらの条件については、適宜変更することができる。
【0011】
反応室では、内部を超高真空排気系で高真空とした後、Arガス導入を行い、希ガスによる圧力を、1Pa〜200Paの間で広範囲に変化させることができるものである。そして、その圧力は、この範囲内において一定に保たれる。
【0012】
ナノ微結晶薄膜を得るためには基板配置が非常に重要である。本発明では、ターゲット表面に対して基板を垂直に立てたoff-axisの配置をとる。この位置を取ることにより、薄膜微結晶を得ることができる。
基板全体がターゲット上にあるレーザの照射スポット位置より50mmの距離以内に入る必要がある。このような基板配置をとることによって析出する粒子サイズの均一性が改善されると共に薄膜の付着効率をあげることが出来る。
また、基板を回転させることによって膜厚の均一性を大幅に改善することも出来る。基板の回転速度は、10〜100 r.p.m.の範囲にある。回転数がこの範囲を外れると、得られ膜は均一ではなくなる場合がある。
【0013】
レーザーアブレーションにより得られるナノ微粒子の形態は雰囲気圧力に強く依存することが実験により確認された。
LaFeO3ターゲットは、LaFeO3粉末からなる原料粉末を、140 MPaの圧力で直径20mm、厚さ5mmのペレットに一軸成型して、空気中1000℃で3時間焼結して得たものである。これは前記の組成のものであった。前記条件で得られた組成物をターゲットにして、以下の圧力条件下レーザーアブレーションを行った。
1〜10Paの圧力範囲では結晶化した微粒子はほとんど認められず薄膜は非晶質であった。次に、50〜200Pa範囲ではLaFeO3ナノ微結晶に基づく回折ピークが観測された。
50Paおよび100Paで作製した薄膜の結晶サイズを見積もるとそれぞれ6.8nm、7.2nmであり、10nm以下の大きさのナノ微結晶から構成される膜が形成されていることが明らかとなった。
また、50Pa以上の圧力では圧力増加にともない結晶サイズが大きくなる傾向も認められた。
以上の結果、図3に示した。図3は、異なるアルゴンの圧力下に200mJ/パルス条件下に堆積させたL aFeO 3 薄膜の X 線回折図である
アルゴンの圧力の変化により得られるLaFeO3薄膜のX線回折の結果は変化することが示されている
以上の結果から、50Paから200Paの圧力範囲が好ましい範囲であるということができる。
【0014】
図4異なるアルゴンの圧力下に200mJ/パルス条件下に堆積させたL aFeO 3 薄膜に関し、薄膜中の La Fe 原子比とアルゴン圧力の関係を示した図である。
1Paで調製した非晶質の試料はLa/Fe原子比は約1.6であり、LaFeO3ペロブスカイトの量論比1よりも大きかった。
更に、圧力が高くなると図に示した通り薄膜中のLaFe原子比は約1になった。
したがって、50Pa〜200Paの圧力で作製した薄膜は10nm以下のサイズの結晶から構成されるLaFeO3ペロブスカイトのナノ微結晶薄膜であることが明らかとなった。
以上の結果から、LaFeO3ペロブスカイトのナノ微結晶薄膜の製造方法は、50Pa〜200Paの圧力条件下行うことが有効であるということができる。
【0015】
次に、BaTiO3ペロブスカイト薄膜の場合の結果を述べる。
BaTiO3粉体を原料として、150〜200 MPaの圧力で加圧形成後、空気中で1100℃で2時間焼結して作成されたフルウチ化学株式会社製のターゲット(純度99.9%、密度55%)を用いた。
種々の圧力条件下に、BaTiO3ペロブスカイト薄膜を製造した。
得られた薄膜の結晶構造は薄膜X線回折(理学電機社製X線回折装置RAD-C)により同定したものを用いたものである。
圧力が1Paでは連続膜が得られたものの、BaTiO3ペロブスカイトに基づく回折ピークは非常に小さかった、これはおそらく薄膜中にナノ微結晶がほとんど含まれていないか、あるいは析出した薄膜が非常に薄い膜であるものと考えられた。
次に、圧力が10Pa以上の圧力範囲では多数の回折ピークが観測され、結晶性の薄膜が析出していた。とくに、10Paで作製した薄膜では見積もったBaTiO3ペロブスカイトの結晶子サイズは7.2nmであり、大きさが10nm以下のBaTiO3ペロブスカイトナノ微結晶薄膜中に形成されていることが明らかとなった。
50〜200Paの圧力範囲では圧力の増加にともないBaTiO3ペロブスカイトの結晶子のサイズは大きくなる傾向も認められた。しかしながら、これらの圧力範囲ではX線光電子分光分析で求めた薄膜中のBa/Ti原子比が1であるにもかかわらず、薄膜のBaTiO3以外にBaCO3の回折ピークが同時に観測された。ターゲット中には炭素成分はないことから、BaCO3は成膜の後、反応室から試料を出した際に空気中の炭酸ガスと薄膜中のペロブスカイト中のBa成分が反応したことによって形成されたということができる。
以上の結果から、BaTiO3ペロブスカイト薄膜の製造では、50〜200Paの圧力範囲で行うことが重要であるということができる。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、基板を格別に加熱することなく、ペロブスカイト型構造を有する酸化物薄膜のナノメートルオーダーの微結晶を基板表面上に形成することができる。そして、その製造方法は、非常に簡単な工程の組み合わせからなり、高収率で目的生成物を得る事ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いられる装置を示す図
【図2】 本発明のターゲットと基板の関係を示す図
【図3】 アルゴン圧力が変化したときのL aFeO 3 薄膜の X 線回折図
【図4】 薄膜中の La Fe 原子比とアルゴン圧力の関係を示す図
符号の説明
1 製造装置
2 反応室
3 基材
4 ターゲット材料
5 台
6 軸
7 モータ
8 真空ポンプ
9 パイプ
10 窓
11 レーザー
12 レンズ
13 レーザー光

Claims (3)

  1. ABO3の化学組成で示されるペロブスカイト型構造を有する酸化物(A:希土類元素やアルカリ土類金属元素、B:遷移金属元素)からなるターゲットに、アルゴンガスを存在させ、50Paから200Paの圧力条件、レーザーアブレーション法によりレーザー光を照射して、ターゲット表面に対して垂直であり、off-axisの配置をとる基板上に、ペロブスカイト型構造を有する酸化物の微結晶薄膜を製造することを特徴とするペロブスカイト型構造を有する酸化物からなる微結晶薄膜の製造方法。
  2. ペロブスカイト型構造を有する酸化物がLaFeO3であることを特徴とする請求項1記載のペロブスカイト型構造を有する酸化物からなる微結晶薄膜の製造方法。
  3. ペロブスカイト型構造を有する酸化物がBaTiO3であることを特徴とする請求項1記載のペロブスカイト型構造を有する酸化物からなる微結晶薄膜の製造方法。
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