JP3967540B2 - クロルヒドリンの製造方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロルヒドリンの新規な製造方法及び装置に関する。詳しくは、水溶媒中で塩素及びオレフィンを原料として、クロルヒドリンを高選択率で製造するための方法及び装置を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
エチレンクロルヒドリン、プロピレンクロルヒドリン、プロピレンジクロルヒドリン等のクロルヒドリンは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物の製造原料等として重要な化合物である。
【0003】
上記クロルヒドリンは、一般に、オレフィンと塩素とを水中で反応させることによって製造される。
【0004】
但し、上記反応においては、塩素がオレフィンの二重結合に付加してオレフィンジクロライドを生成したり、逐次反応によるエーテル類が生成する等の副反応を防止するため、反応系における塩素濃度を低くして反応を行う反応条件が一般に採用されている。(MM.P.Ferreoら、Industrie Chmique Beige 19巻 113頁 1954年)。
【0005】
従来、上記反応条件は、所謂、クロルヒドリン塔と呼ばれる反応器を使用することにより実現されていた。即ち、上部が連通したU字管の反応器の下方より、原料であるオレフィンを供給し、その気泡によるガスリフトを主な駆動力として大量の水を循環させながら、下降流の領域において塩素を少量ずつ供給することによって、塩素およびクロルヒドリン濃度を低く抑えながらクロルヒドリンを製造する方法が広く実施されている。(日刊工業新聞社発行;日刊工業技術選書14プロピレン系石油化学106〜110頁等)。
【0006】
また、流路に塩素ガスの供給口とオレフィンの供給口とを順次有し、該供給口の下流位置にそれぞれ静止型混合器を設けた管型反応器と気液分離器とよりなり、該管型反応器の後端開口部を気液分離器に連結し、該気液分離器で分離された反応液を、循環ポンプを介して管型反応器の前端開口部に供給することにより循環系を形成した反応装置を使用し、水を補給しながら、上記気液分離器の液相の一部を取り出し、クロルヒドリン水溶液を得る方法も提案されている。(中華人民共和国公開特許1232011号明細書)。
【0007】
上述した方法のうち、クロルヒドリン塔を使用する方法は、構造が簡単であるという利点より、従来から工業的に広く実施されている方法である。しかしながら、副生するオレフィンジクロライド類の生成を抑制するために大量の水を使用し、これにより大量の反応液を循環する必要があるため、生成するクロルヒドリンに対して過大な反応装置とガス供給用のポンプを必要とし、装置の容積効率が小さいという問題を有していた。また、目的物のクロルヒドリン選択性についても未だ改良の余地があった。
【0008】
一方、管型反応器を使用して循環系を形成する方法は、反応器の容積効率は高いものの、前記クロルヒドリン塔を使用する方法と同様、目的物のクロルヒドリン選択性は必ずしも満足できるものではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、塩素とオレフィンとを水中で反応せしめてクロルヒドリンを製造する方法において、クロルヒドリンの選択性を高めて、クロルヒドリンを工業的に有利に製造する方法及び装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために研究を重ねた結果、管型反応器の流路に塩素溶解水溶液を流通せしめ、上記流路において静止型混合器により塩素水溶液の流れにオレフィンを混合する操作を少なくとも1回以上直列に行い、得られる反応液を循環させることなく取り出し、クロルヒドリン水溶液を回収することにより、高いクロルヒドリン濃度の反応液を得る場合でも、前記した従来の循環方式を採用する技術よりも高い選択率でクロルヒドリンを製造し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、管型反応器の流路に塩素溶解水溶液を流通せしめ、該流路において、塩素溶解水溶液にオレフィンガスを供給して静止型混合器で混合する操作を少なくとも1回以上行い、得られたクロルヒドリン水溶液を循環することなく取り出すことを特徴とするクロルヒドリンの製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明によれば、上記方法を実施するための好適な装置として、管型反応器の前端に水の供給口を有し、該管型反応器は、流路に被混合ガスを供給するためのガス供給口を有する静止型混合器を少なくとも2個設けてなるユニットを1以上有し、該ユニットの上流側に位置する静止型混合器のガス供給口に塩素ガスを、下流側に位置する静止型混合器のガス供給口にオレフィンガスをそれぞれ供給するように成し、管型反応器の後端にクロルヒドリン水溶液を回収する取出口を有し、且つ、該取出口から回収されるクロルヒドリン水溶液の循環経路を持たないことを特徴とするクロルヒドリンの製造装置が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、水媒体中での塩素とオレフィンとの反応は、管型反応器を使用して行われる。即ち、本発明の方法は、塩素溶解水溶液の流路にオレフィンガスを1回又は数回に分けて順次供給し、該オレフィンガス混合後の液が前の液と混合する現象を防止しながら、該流路内の生成物であるクロルヒドリン濃度を段階的に上昇せしめ、得られる反応液を循環することなく取り出すものであり、管型反応器を使用することが必須である。
【0014】
従って、管型反応器は、循環流路を持たない管状の流路を構成するものであれば特に制限されない。
【0015】
また、本発明において、上記管型反応器において、流路を流れる水溶液中にガスをオレフィンガス、或いは必要に応じて塩素ガスを混合するために設ける混合器は、静止型混合器を使用することが、これらガスの水溶液への迅速な溶解を促進し、選択性よく目的物を得ることができるようにするため重要である。
【0016】
上記静止型混合器としては、公知の市販のものが何ら制限されることなく使用可能である。具体的には、エジェクター、板状またはカップ状の衝突板型の静止型混合器、およびKenics型、Sulzer型、Etoflo型、Tray Hi-mixer型、Bran & Lubbe型、N-form型、Komax型、Lightnin型、Ross ISG型、Prematechnik PMR型の静止型混合器等を挙げることができるが、塩素ガス又はオレフィンのガスを水溶液中に微細気泡として分散し、下流配管でのガスの溶解を早めることができるため、気液分散性能の良いものが好ましい。このような混合器として、エジェクター、板状またはカップ状の衝突板型の静止型混合器、Kenics型、Sulzer型等の静止型混合器が挙げられる。
【0017】
更に、静止型混合器としては、混合後における流体の流動状態が気泡流となり易いものを選択するのが好ましく、エジェクター、板状またはカップ状の衝突板型の静止型混合器、Sulzer型等の静止型混合器が特に好ましい。
【0018】
また、塩素およびオレフィンの供給圧力を低くするために、入口と出口の差圧が小さいものが好ましい。
【0019】
本発明において、上記管型反応器の流路に流通せしめる塩素溶解水溶液は、オレフィンとの反応において必要な濃度に調整されていれば、その調製方法は特に制限されない。例えば、管型反応器に供給される前に、溶解槽を設け、該槽中で水に塩素を吹き込んで調製しても良いが、工業的には、上記管型反応器に水を供給すると共に、塩素を供給し、静止型混合器により混合して調製する方法が好ましい。
【0020】
また、調製された塩素溶解水溶液は、管型反応器内を流通する間に、供給されたオレフィンとの反応により塩素濃度が減少するが、かかる塩素は、管型反応器の流路の途中で補給し、塩素溶解水溶液中の塩素濃度を調整することができる。この場合も、塩素ガスを供給後、静止型混合器を設けて混合することにより、該塩素溶解水溶液中に塩素を効率的に溶解することができるため好ましい。
【0021】
本発明において、塩素ガスは一旦液化して気化させたガス状の精製塩素でもよいが、電解によって生ずる、酸素や水分を含む純度99%程度の未精製ガス状塩素を使用することが経済的であり好ましい。
【0022】
塩素ガスの供給圧は流路内を流れる液の圧力に打ち勝ち、塩素ガスを供給できるだけの圧力があれば十分である。通常、1Kパスカルゲージ〜700Kパスカルゲージの範囲である。
【0023】
塩素ガスの供給量は、圧力、温度で決まる塩素の溶解度以下であれば特に制限されないが、あまりに多いと副生成物が多くなる傾向にあり、あまりに少ないと、目的濃度とするための時間が増大し、反応器の大型化のみならず、副反応を誘発する傾向がある。
【0024】
従って、通常、溶解後の塩素濃度が500〜20000ppmwの範囲、特に4000〜15000ppmwの範囲となるように塩素ガスを供給するのが好ましい。
【0025】
塩素ガスの供給は、静止型混合器がエジェクターである場合を除いて静止型混合器の上流で行われるが、静止型混合器がエジェクターの場合は、水がエジェクターを通過する際に発生する負圧で塩素ガスを供給するため、エジェクター内部に供給口を設ける必要がある。このことは、後述するオレフィンガスを静止型混合器のガス供給口に供給する場合も同様である。
【0026】
本発明において、最も重要な要件は、上記塩酸溶解水溶液の流路において、該塩素溶解水溶液にオレフィンガスを供給して静止型混合器で混合する操作を少なくとも1回以上行い、得られたクロルヒドリン水溶液を循環することなく取り出すことにある。
【0027】
即ち、従来のクロルヒドリンの製造方法にあっては、或る濃度のクロルヒドリン水溶液を得ようとする場合、塩素溶解水溶液を反応器と循環槽との間で循環しながらオレフィンを供給し、目的の濃度となった反応液を循環タンクより取り出す方法が採用されていた。
【0028】
即ち、塩素が二重結合に付加することによって生じる副生物の生成を防ぐことを目的に溶解後の塩素濃度を低くするため、反応液を循環使用して、オレフィンと反応させる前の塩素の溶解量を低く抑える方式を採用していた。例えば、比較的塩素濃度の高い前記後者の技術の場合においても最大で4000ppmの塩素を溶解させているに過ぎなかった。
【0029】
そのため、取出濃度に近い濃度のクロルヒドリンを含む塩素溶解水溶液が、反応系に常に存在することとなり、クロルヒドリンと塩素との副反応が起こる確率が増大し、さらにクロルヒドリンを生成する際の中間体と生成したクロルヒドリンとの反応によるエーテル類の生成確率も増大することにより、クロルヒドリンの選択率を低減させていた。
【0030】
これに対して、本発明の方法は、該オレフィンガス混合後の液が前の液と混合する現象を防止しながら、該流路内の生成物であるクロルヒドリン濃度を連続して上昇せしめ、得られる反応液を循環することなく取り出すことにより、クロルヒドリンと塩素との副反応が起こる確率を大幅に低減することを可能とし、さらにクロルヒドリンを生成する際の中間体と生成したクロルヒドリンとの反応が起こる確率も低減することが可能となるため、クロルヒドリンを高選択率で得ることができる。
【0031】
因みに、本発明の方法によれば、1重量%の濃度のクロルヒドリン水溶液を得る場合、循環による従来の方法に比べ、選択率を1%以上も上昇させることが可能であり、マスプロ製品であるクロルヒドリンの工業的製造においては、極めて有利な方法であるといえる。
【0032】
本発明の方法は、特に、目的とするクロルヒドリンの濃度が高い程、循環方式による従来の技術に比べて本発明の前記効果が特に顕著である。通常、目的とするクロルヒドリン濃度が0.4〜7重量%、特に、0.6〜5重量%の範囲のクロルヒドリン水溶液を得る場合、効果が顕著である。
【0033】
上記のように、目的とするクロルヒドリンの濃度が高い場合、塩素溶解水溶液の流路において、オレフィンガスの供給を複数回行うと共に、必要に応じて塩素ガスの供給を行う方法が好ましい。そして、管型反応器の後端部より目的とする濃度のクロルヒドリン水溶液を、循環することなく取り出すことにより、高選択率でクロルヒドリンを製造することができる。
【0034】
本発明において、使用されるオレフィンは特に制限されるものではないが、C2〜C4のオレフィンが一般に使用される。そのうち、特にエチレン、プロピレン、アリルクロライドが好ましい。
【0035】
また、その純度は工業的に容易に入手可能なもので良く、一般に、95%〜96%程度の純度のものが使用される。
【0036】
上記オレフィンガスの供給圧は、管型反応器を流れる流体の圧力に打ち勝ってオレフィンガスを供給できるだけの圧力があれば十分である。通常、1Kパスカルゲージ〜700Kパスカルゲージの範囲である。
【0037】
また、オレフィンガスの供給量は、あまりに多いと未反応物が多くなり、あまりに少ないと副生成物が多くなる傾向にあるため、通常、前段で供給した塩素のモル数1モルに対して0.9〜1.2の範囲、特に1〜1.1の範囲が推奨される。
【0038】
オレフィンガスの供給位置は、流路において塩素ガスを供給する場合、供給した塩素ガスが十分溶解した位置とすることが好ましい。かかる位置は、予め実験によって決定すればよいが、通常、塩素の完全溶解を確保するために塩素を混合後、4秒以上の滞在時間を確保することが好ましい。
【0039】
また、オレフィンガスを混合後、塩素ガスを供給する場合、或いはクロルヒドリン水溶液を取り出す場合、溶解した塩素とオレフィンの反応率を完全なものとするため、10秒以上の滞在時間を確保することが好ましい。
【0040】
こうして、オレフィンガスは静止型混合器で塩素溶解水溶液に混合され、反応に必要な滞在時間を経て、管型反応器の後端部から、高選択率で、クロルヒドリン水溶液として取り出される。
【0041】
尚、上記オレフィンガス及び塩素ガスの供給は、該ガスを希釈することなく行うことが好ましいが、必要に応じて、プロパン、エタン、窒素、アルゴン等の不活性ガスにより希釈して供給することも可能である。
【0042】
本発明において、最も好ましい態様は、管型反応器に水を供給し、その流路において、塩素ガスを供給して塩素溶解水溶液を調製した後、オレフィンガスを供給、混合してクロルヒドリンを生成せしめる操作と、塩素ガスを供給、混合して、反応により減少した塩素を捕捉する操作とを繰り返し行うことにより、流路内で順次クロルヒドリンの濃度を上昇させ、管型反応器の後端開口部より、高濃度のクロルヒドリンを取り出すことよりなる態様である。
【0043】
本発明において、管型反応器は、1つの管型反応器中に上述した塩素ガス及びオレフィンガスの供給、混合箇所を複数組設けて構成しても良いし、塩素ガス及びオレフィンガスの供給、混合箇所を単数で有する管型反応器の複数本を直列に接続して構成しても良い。
【0044】
尚、管型反応器の複数本を直列に接続する場合、該接続部にポンプを設けて液の供給圧を回復させても何等差し支えない。
【0045】
また、管型反応器を設置する方向は、水平、傾斜、鉛直方向いずれも採用可能であるが、水平または傾斜させて設置すると層状流、波状流となりやすくガス吸収効率が悪くなり、静止型混合器の下流に設置したガス吸収用配管の長さが長くなる傾向にあるため、静止型混合器で水に微分散した塩素またはオレフィンの気泡よりなる流体の流動状態が気泡流、プラグ流、またはスラグ流のいずれか、特に気泡流となることが好ましく、可能な限り鉛直方向で下降流となるように設置することが、気泡流となる範囲が広く、装置全体の長さが短くでき、スケールアップも容易であることから特に好ましい。
【0046】
本発明において、反応温度としては、あまりに高いと目的物であるクロルヒドリンの選択性が低くなる傾向にあるため、クロルヒドリン水溶液の温度を80℃以下に調整することが好ましい。かかる調整方法は特に制限されないが、管型反応器に供給する水又は塩素溶解水溶液の温度を調整する方法が好ましい。即ち、管型反応器に供給する水又は塩素溶解水溶液の温度は、クロルヒドリンの生成反応熱を勘案して70℃以下であることが好ましく、特に、0〜60℃の範囲であることが好ましい。
【0047】
本発明において、管型反応器に供給する水又は塩素溶解水溶液の供給圧は特に制限されるものではないが、液の通液を保証するため、高低差による圧力の回復と後述する静止型混合器の圧力損失の合計が大気圧以上あればよく、通常1Kパスカルゲージ〜500Kパスカルゲージの範囲であることが好ましい。
【0048】
また、静止型混合器がエジェクターの場合、エジェクターの駆動力として供給水圧を利用しており、完全なガス吸収を保証するためエジェクターの駆動に必要な圧力以上であることが好ましい。
【0049】
本発明において、管型反応器に供給する水又は塩素溶解水溶液の流速は、静止型混合器によるガス混合性能を十分に引き出し、かつ、ガス混合後における流体の流動状態が気泡流、プラグ流、またはスラグ流のいずれか、特に気泡流となるように調整することが好ましい。
【0050】
上記好適な流速は、一概に限定できないが、通常、静止型混合器に導入される液の流速が0.3〜4m/秒、好ましくは0.7〜3m/秒の範囲である。
【0051】
かかる流速の調整は、一般には、管型反応器に供給する水又は塩素溶解水溶液の流量と配管の直径とによって行うことができる(化学工学便覧 第5版 272〜276頁 化学工学会編)。
【0052】
本発明において、管型反応器の流路を流れる塩素溶解水溶液にpHが7以上とならない範囲でアルカリを添加する態様は、得られるクロルヒドリンのさらに高い選択率を達成するために好ましい態様である。
【0053】
上記アルカリの添加により、クロルヒドリンの選択率が更に向上する理由については、次のように推定される。
【0054】
即ち、塩素を水に溶解させると、塩素が水と反応して次亜塩素酸と塩酸とを発生する可逆反応が起こる。本発明の方法において、水に溶解した塩素にアルカリが供給されるために、生成した塩酸はその解離乗数の大きさ(次亜塩素酸4×10-8、塩酸1×10-1)から選択的に中和され、塩が生成する。その結果前記可逆反応は次亜塩素酸が生成する反応が促進され、塩素濃度が極めて低く、次亜塩素酸濃度の高い水溶液を得ることができる。本発明では、こうした溶液流にオレフィンを供給する形態となっているため、塩素が二重結合に付加することによって生じる副生物の生成をも抑えることが可能となり、目的物であるクロルヒドリン選択率がさらに高くなるものと思われる。
【0055】
上記pH調整のために供給されるアルカリの種類は特に制限されないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩などが好適であり、入手の容易さから、水酸化カルシウムが特に好ましい。
【0056】
また、アルカリの添加量は、前記したように塩素溶解水溶液のpHが7を超えない範囲で行うことが好ましく、特に、pH3〜6の範囲になるようにアルカリの供給量を制御することが、塩素濃度が低く次亜塩素酸濃度の高い溶液を得ることができるために好適である。
【0057】
即ち、pHが7以上になると、次亜塩素酸が中和を受けたり、供給したアルカリが残留し、オレフィンと接触し、オレフィンオキサイドやオレフィンジオール、エーテル化合物等を生成する副反応が生じる可能性があるため好ましくない。
【0058】
上記アルカリの供給方法は特に制限を受けないが、通常、1〜40重量%の水溶液またはスラリーとして連続的に供給するのが好ましい。その際、管型反応器内の流体のpH検出部とその信号に基づきアルカリ流量を調節するバルブで構成されるpH制御装置を使用してpH制御することが好ましい。
【0059】
また、アルカリの添加は、前記ガスと同様な静止型混合器を使用して行うことが好ましい。
【0060】
こうして得られた塩素濃度が低く次亜塩素酸濃度の高い溶液は、オレフィンガス混合用の静止型混合器において、オレフィンガスと混合され、効率よくクロルヒドリンを生成することができる。
【0061】
また、アルカリの添加により、塩素は極めて短時間で水に溶解するため、前記塩素ガス混合後の好適な滞在時間を短縮することが可能であり、通常、かかる滞在時間は、2秒以上で十分となる。
【0062】
本発明の方法は、特に、クロルヒドリン濃度がゼロ又は極めて低い塩素溶解水溶液より比較的高濃度のクロルヒドリン水溶液を製造する場合に有利であるが、本発明の方法によって得られたクロルヒドリン水溶液の濃度を更に上昇させるため、従来より工業的に使用されているクロルヒドリン塔に本発明の方法で得られたクロルヒドリン水溶液を供給することも、何ら制限なく実施することができる。
【0063】
本発明の方法によって得られたクロルヒドリン水溶液はプロピレンオキサイド製造用原料としてそのまま使用することが可能である。
【0064】
本発明の方法を実施するための装置は、前述した製造上件を満足するものであれば、特に制限されないが、好適な装置として、以下に示す装置を挙げることができる。
【0065】
即ち、本発明によれば、管型反応器の前端に水の供給口を有し、該管型反応器は、流路に被混合ガスを供給するためのガス供給口を有する静止型混合器を少なくとも2個設けてなるユニットを1以上有し、該ユニットの上流側に位置する静止型混合器のガス供給口に塩素ガスを、下流側に位置する静止型混合器のガス供給口にオレフィンガスをそれぞれ供給するように成し、管型反応器の後端にクロルヒドリン水溶液を回収する取出口を有することを特徴とするクロルヒドリンの製造装置を提供される。
【0066】
以下に、上記装置の代表的な態様を、図1〜2に従って説明する。
【0067】
図1に示す装置は、静止型混合器を少なくとも2個設けてなるユニットを3つ有する態様を示す。即ち、図1に示す装置の態様は、管型反応器1の前端に水Cの供給口2を有し、1〜3のユニットの上流側に位置する静止型混合器13、23、33のガス供給口12、22、32に塩素ガスAを、下流側に位置する静止型混合器16、26、36のガス供給口15、25、35にオレフィンガスBをそれぞれ供給するように成し、管型反応器の後端にクロルヒドリン水溶液を回収する取出口3を有する。
【0068】
図1において、水Cは供給口2より装置内に供給され、ガス供給口12より供給された塩素ガスと静止型混合器13にて混合され、塩素が微細気泡として水に分散される。
【0069】
次いで、上記塩素ガスAを混合された水は、管型反応器の流路14において塩素ガスの溶解が進み、オレフィン供給口15に到達するまでに溶解が完了して塩素溶解水溶液が調製される。
【0070】
その後、オレフィンガスBがオレフィン供給口15から流路に供給され、該流路を通過する塩素溶解水溶液に供給される。
【0071】
そして、供給されたオレフィンガスは、静止型混合器16にて塩素溶解水溶液と混合され、オレフィンガスが微細気泡として塩素溶解水溶液に分散される。
【0072】
該静止型反応器に続く流路17では、オレフィン、塩素および水の反応が進行し、クロルヒドリンおよび塩化水素の生成が進行する。
【0073】
生成したクロルヒドリンを含む塩素溶解水溶液は、そのまま取り出すことも可能であるが、図1に示す態様においては、上記操作を行うユニットを更に2ユニット有しており、これにより、高濃度のクロルヒドリン水溶液を管型反応器1の取出口3より取り出すことができる。
【0074】
一方、図2に示す装置は、図1の装置において、塩素溶解水溶液のpHをアルカリの添加により調整するための態様を示すものである。
【0075】
即ち、図2の装置は、塩素溶解水溶液を調製する流路14の直後の流路にアルカリ水溶液EをpHの制御を行いながら添加するための、制御バルブ41を有するアルカリ供給口42を設け、その下流側に、静止型混合器43、pH検出部45、およびpH検出部45の信号を制御バルブ41を制御するための信号に変換する演算部44を設けてなる。
【0076】
生成したクロルヒドリンを含む塩素溶解水溶液は、そのまま取り出すことも可能であるが、図2に示す態様においては、図1のユニットを更に2ユニット有しており、これにより、さらに高いクロルヒドリンの選択率を確保して、高濃度のクロルヒドリン水溶液を管型反応器1の取出口3より取り出すことができる。
【0077】
尚、上記各装置において、ガス或いは液を流路に供給した後に設けられる静止型混合器の個数は特に制限されるものではなく、1個でも良いし、2個以上を直列に配置しても良い。
【0078】
また、図には示されていないが、オレフィンを供給し反応後、塩素溶解水溶液中の溶解塩素が十分残存する場合は、塩素供給口を設けることなく、続けてオレフィン供給口と静止型混合器を流路に設ける態様も可能である。
【0079】
本発明の装置を形成させる材料は、塩素供給口のノズル部を除いて、腐食などの問題が生じなければ特に制限されるものではない。例えば、PTFE等の高分子材料によるライニングによるもの、Ti等の耐食金属材料等を例示することができる。塩素供給口のノズル部はTiを用いると塩素と反応するため、PTFE等の高分子材料であることが好ましい。
【0080】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明によれば、高いクロルヒドリンの選択率を確保して、クロルヒドリンを工業的に有利に製造することが可能である。
【0081】
特に、クロルヒドリン濃度が比較的高い目的物を得る場合、従来技術よりも高いクロルヒドリンの選択率を発揮する効果が顕著である。
【0082】
従って、本発明の工業的価値は極めて高いものである。
【0083】
【実施例】
以下、本発明を更に具体的に説明するため実施例を示すが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0084】
実施例1
静止型混合器を2個設けてなるユニットを1つ有する装置、即ち、塩素供給口およびプロピレン供給口を備え、塩素およびプロピレン混合用としてKenics型静止型混合器を備え、前端部および後端部を有する内径9.6mmのテフロン製配管を使用し、塩素混合器からプロピレン供給口までの距離を6mとし、プロピレン混合器から配管の後端部までの距離を10mとした管型反応器を使用した。
【0085】
21℃の水を配管の前端部より0.12m3/Hrの速度で供給し、塩素を0.12m3/Hrの速度で供給し、プロピレンを0.18m3/Hrの速度で供給してクロルヒドリン化反応を行った。
【0086】
配管の後端部よりクロルヒドリン水溶液を取り出し分析したところ、プロピレンクロルヒドリン濃度は0.41%であり、塩素転化率は100%、プロピレンクロルヒドリン選択率は97.9%であった。
【0087】
また、プロピレン供給口直前の位置でサンプリングして塩素濃度を測定したところ3145ppmwであり、供給した塩素は完全に溶解していた。(表1〜3および図3参照)。
【0088】
実施例2〜4
表1に示す装置および表2に示す反応条件を用いてクロルヒドリン化反応を行った。その結果を表3および図3に示す。
【0089】
実施例5
表1の静止型混合器を2個設けてなるユニットを3つ有する装置、即ち、図1の装置を使用し、各塩素供給口から1.00m3/Hrの速度の速度で塩素を供給し、各プロピレン供給口から1.10m3/Hrの速度でプロピレンを供給し、表2に示す反応条件を用いてクロルヒドリン化反応を行った。その結果を表3および図3に示す。
【0090】
実施例6〜8
表1の静止型混合器を2個設けてなるユニットを1つ有する装置に、塩素溶解水溶液のpHをアルカリの添加により調整するための装置を付加した装置に、アルカリとして17%石灰乳を使用してアルカリ供給口より供給してpH制御を行い、表2に示す反応条件を用いてクロルヒドリン化反応を行った。その結果を表3および図3に示す。
【0091】
実施例9〜10
表1の静止型混合器を2個設けてなるユニットを1つ有する装置に、塩素溶解水溶液のpHをアルカリの添加により調整するための装置を付加したもの1ユニットに、pH調整を行う装置を持たないもの2ユニットを直列に配列した装置、即ち、図2に示す装置に、各塩素供給口から1.00m3/Hrの速度の速度で塩素を供給し、アルカリとして17%石灰乳を使用してアルカリ供給口より供給してpH制御を行い、各プロピレン供給口から1.10m3/Hrの速度でプロピレンを供給し、表2に示す反応条件を用いてクロルヒドリン化反応を行った。その結果を表3および図3に示す。
【0092】
比較例1〜2
装置の後端部に気液分離器を連結し、液相をポンプを使用して装置の前端部に循環使用し、一部はクロルヒドリン水溶液を抜出せるようにし、残りは供給水と合流させるようにした装置を用い、供給水の流量と同じだけクロルヒドリン水溶液を抜出したこと以外は表1〜2に示す通りの条件で行った。その結果を表3および図3に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法に使用する代表的な装置の態様を示す概念図
【図2】本発明方法に使用する他の代表的な装置の態様を示す概念図
【図3】実施例及び比較例における、クロルヒドリン濃度とクロルヒドリン選択率の関係を示すグラフ
【符号の説明】
1 管型反応器
2 水供給口
3 取出口
12、22、32 塩素供給口
13、23、33 塩素混合用の静止型混合器
14、24、34 塩素溶解のための流路
15、25、35 オレフィン供給口
16、26、36 オレフィン混合用の静止型混合器
17、27、37 反応のための流路
41 制御バルブ
42 アルカリ供給口
43 アルカリ混合用の静止型混合器
44 演算部
45 pH検出部
Claims (7)
- 管型反応器の流路に塩素溶解水溶液を流通せしめ、該流路において、塩素溶解水溶液にオレフィンガスを供給して静止型混合器で混合する操作を少なくとも1回以上行い、得られたクロルヒドリン水溶液を循環することなく取り出すことを特徴とするクロルヒドリンの製造方法。
- 塩素溶解水溶液中の塩素濃度を、流路に塩素ガスを供給し、静止型混合器で混合する操作により調整する請求項1記載のクロルヒドリンの製造方法。
- 流路内の塩素溶解水溶液のpHが7以上とならない範囲でアルカリを添加する請求項1記載のクロルヒドリンの製造方法。
- ガスを混合後の流路内液が気泡流、プラグ流またはスラグ流のいずれかを形成する請求項1〜3のいずれかに記載のクロルヒドリンの製造方法。
- 管型反応器の前端に水の供給口を有し、該管型反応器は、流路に被混合ガスを供給するためのガス供給口を有する静止型混合器を少なくとも2個設けてなるユニットを1以上有し、該ユニットの上流側に位置する静止型混合器のガス供給口に塩素ガスを、下流側に位置する静止型混合器のガス供給口にオレフィンガスをそれぞれ供給するように成し、管型反応器の後端にクロルヒドリン水溶液を回収する取出口を有し、且つ、該取出口から回収されるクロルヒドリン水溶液の循環経路を持たないことを特徴とするクロルヒドリンの製造装置。
- オレフィンガスを供給する被混合ガス供給口の前にアルカリ供給口を設けた請求項5記載のクロルヒドリンの製造装置。
- ユニットを2以上有する請求項5または6記載のクロルヒドリンの製造装置。
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