JP4076263B2 - 透明シリカガラスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は集合気泡を含まない透明シリカガラスの製造方法に関し、大型サイズのガラス物品の製造に特に有効である。特に半導体製造用の耐熱治具、反応管構成部品などに主として利用できる。
【0002】
【従来の技術】
結晶質石英(水晶)粉末を耐熱容器に充填し、電気加熱により真空溶融してシリカガラスを製造する方法は従来から知られている。しかし、この方法には、粉末充填体サイズが大型化した場合、中央付近に集合気泡が残存するという課題があった。その理由は、表面からガラス化が進行し、ガラス殻が形成され、閉じ込められた内部空隙が消滅し難くなるからである。その対策として、例えば、特公昭34-6986 には、水晶粉末をその溶融温度以下の温度で真空加熱し、含有水分を充分放出せしめつつ焼結させ、密質なインゴットとした後これを溶融させる製造方法が開示されている。また、特公昭46-42913、特開平9-202631などには、粉末充填体を一方向から順次溶融する方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は特公昭34-6986 に記載された方法を、真空溶融に一般に適用される40〜400 μm の水晶粉末を用い、検証した。水晶粉末を溶融温度以下で保持し、焼結させる方法では、10vol%以上体積収縮した比較的緻密な焼結体を得ることは困難であった。従って、ガラス体に残存する集合気泡の消滅に対しても、効果不十分であることが判った。また、特公昭46-42913、特開平9-202631などに記載された粉末充填体を一方向から順次溶融する方法は、効果あると推定されるが、加熱装置が複雑、かつ高価となる。
【0004】
従って、本願発明の目的は、結晶質石英粉末を真空溶融して透明シリカガラスを製造するにあたって、集合気泡を含まない大型物品を特殊な移動機構など設けない汎用電気炉で製造する方法を提供し、品質的に満足され、また経済性にも優れた製品を得ることができる。半導体製造用のシリカガラス治具、反応管構成部品などに使用でき、特に12インチウエハー処理用など大型製品に有用であるシリカガラスの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するため、結晶質石英粉末が溶融し、ガラス化に至る過程を詳細に検討した。その結果、結晶質石英が徐々に溶融・ガラス化することにより、緻密化が緩やかに進行する温度領域が存在することを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、結晶質石英粉末を耐熱容器に充填し、加熱して透明シリカガラスを製造する方法において、粉末を1650℃以上、クリストバライト溶融温度以下の温度範囲に1時間以上滞在させ、結晶質石英を少なくとも60wt.%以上ガラスとし、粉末充填体体積を15vol.% 以上収縮させ、その後クリストバライト溶融温度以上に加熱することを特徴とするシリカガラスの製造方法であり、さらにもう一つは、結晶質石英粉末を1650℃以上、クリストバライト溶融温度以下の温度範囲に2時間以上滞在させ、結晶質石英から転換したガラスをさらにクリストバライトへと結晶化し、その結晶分率を少なくとも全体の20wt%以上となるようにし、その後クリストバライト溶融温度以上で溶融する製造方法である。
【0006】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、結晶質石英粉末を耐熱容器に充填し、加熱して透明シリカガラスとする製造方法に関わるものである。通常、加熱は、黒鉛抵抗加熱、高周波誘導加熱などの電気加熱方式で行われ、また、雰囲気は、真空減圧下とする。被加熱体である粉末は、静置状態にあり、外部から加熱されることを前提としている。耐熱容器としては、黒鉛、Mo,Wなどの高融点金属などが使用可能であるが、熱塩素処理により不純物を極力減らした高純度黒鉛が特に好ましい。原料である結晶質石英粉末は、半導体製造用治具などの用途を念頭においた場合、高純度であることが好ましい。特に、Li,Na,K,Ca,Fe,Cuの各不純物は、1ppm以下がよい。粒度は、30〜500 μm の範囲の粒子からなる、平均粒度として200 μm 程度のものが充填性、流動性などの観点からよい。
【0007】
このような粉末は、容器に充填した場合、嵩密度50〜60vol.% の充填率を与える。
【0008】
本発明の特徴は、このような結晶質石英粉末充填体を結晶溶解させながら緻密化する加熱ステップとして、1650℃以上、クリストバライト溶融温度以下の温度範囲に1 時間以上滞在させる方式を採用することにある。ここで、クリストバライト溶融温度は文献等から1713℃と定義される。結晶質石英は1650℃以下では溶融せず、1713℃以上では極めて短時間で急速に溶融する。この温度範囲で、最も好ましい温度は1700℃である。1650℃〜1713℃の温度範囲が選ばれる理由は、結晶質石英の溶融温度がこの範囲にわたって分布しており、ガラスへの転換を順次緩やかに進行させ得るからである。溶融温度に幅ができるのは、個々の石英結晶に含まれる微量不純物の差、並びに粒径差によると推定される。ガラスへの順次緩やかな転換は、得られるガラスの内部に集合気泡を残さないという効果を示す。特に、ガラス物品サイズが大型化した場合、例えば、縦,横がともに80mm以上になる円柱、角柱などのバルク体などの場合、特に顕著な効果を示す。その理由は、図1に示される通りであり、1650℃〜1713℃の温度範囲に1時間以上滞在させることにより、結晶質石英からガラスへの緩やかな転換が起こり、結晶質石英とガラスが混在した状態が表層から内部へと形成されていく。それに反して、1650℃〜1713℃の温度範囲を1時間以下で通過させた場合、表層付近にのみガラスの殻が形成され、内部は熱伝達の遅れのため結晶質石英のまま残る。その後、加熱により内部結晶質石英もガラス化するが、ガラス殻が収縮の妨げとなるため、集合気泡が残存しやすい状態となる。
【0009】
1650℃以上、クリストバライト溶融温度以下の温度範囲に1 時間以上滞在させたとき、結晶質石英粉末充填体は、石英溶解によるガラス形成と、それに伴う緻密化を示す。その指標は、ガラス化率と体積収縮率で表現できる。本発明の方法が効果を発現するためには、ガラス化率60wt.%以上、体積収縮率15vol.% 以上になるまで少なくとも滞在させる必要がある。これを満足する滞在時間は、主として粉末充填体サイズに依存する。例えば、リング形状で幅50mm、高さ70mm程度では2 〜4時間でよいが、幅100mm 、高さ150mm 程度では5 〜10時間を必要とする。
【0010】
なお、ガラス化率は、粉末X線回折法より決定される。あらかじめ、シリカガラスと結晶質石英(水晶)を各所定量混合した粉末を用い、ガラスの極大回折線強度Igと結晶質石英回折線強度I(d=3.34A )の比と重量比から検量線を作成し、サンプルの強度比をプロットして求める。通常サンプルの表面と内部ではガラス化率に差ができるが、最もガラス化率の低い部分の値を採用する。
【0011】
本発明のもう一つの特徴は、1650℃以上、クリストバライト溶融温度以下の温度範囲に滞在させることにより、結晶質石英を溶解したガラスをさらにクリストバライト結晶に転換させ、それをクリストバライト溶融温度以上でもう一度ガラスに溶解することにある。
【0012】
クリストバライト結晶への転換速度は、粉末に含まれる微量不純物、特にNa、Fe 総量のごく僅かの差に影響されるが、Na,Fe 各0。5ppm程度では、2〜4時間、 Na,Fe各0。1ppm程度では5時間以上、1700℃に滞在させねば20wt。%以上転換できない。クリストバライト結晶に転換させる理由は、得られたガラスの内部集合気泡の除去により一層の効果が得られるためと高温粘性に若干の向上が得られるためである。これらの効果を引き出すためには、少なくとも20wt。%以上のクリストバライト化率が必要であり、より好ましくは、50wt。% 以上とする必要がある。
なお、クリストバライト化率は、ガラス化率同様、X線回折法より求められる。この場合、シリカガラスとクリストバライトの混合粉末から検量線を作成する。クリストバライト回折線強度I(d=4.04A)を用いる。
【0013】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等限定されるものではない。
【0014】
用いた結晶質石英粉末A,Bの特性を表1. に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
実施例1及び比較例1
粉末A,Bをそれぞれ高純度黒鉛からなる容器に充填し、抵抗加熱式電気炉に入れ、真空減圧しながら1700℃まで、300 ℃/hrで加熱した。1700℃での滞在時間を0 〜10hr。 の範囲で所定し、その後放冷した。得られたサンプルは円柱で概ね外径φ240 mm高さ50mmであった。体積収縮率を正確なサイズ測定から、次式により求めた。
【0017】
体積収縮率(vol.%) =[ 1―( サンプル体積/粉末充填体体積)]X100
また、各サンプルの表面付近、 並びに内部中央部のガラス化率を既述の方法で求めた。
【0018】
このようにして、 表2.に示す体積収縮率とガラス化率の関係を得た。なお、粉末の嵩密度は60 vol.%であり、体積収縮率40 vol.%は完全に緻密化したことを表す。
【0019】
次に、上記と全く同様のサンプルを用意し、1700℃での滞在後、1850℃まで300 ℃/hrで昇温し、
0。5hr 保持し、ガラス化を完全に終了させた。得られたガラスの中央部集合気泡の有無を判定した。
【0020】
結果を表2.に付す。
【0021】
【表2】
【0022】
【実施例2】
実施例1と同様の試料を用い、1700℃での滞在時間を延長させ、結晶質石英が溶融したガラスをさらにクリストバライトへと結晶化させる操作を行った。得られたサンプルのクリストバライト化率と体積収縮率を求めた。
【0023】
次に、上記と全く同様のサンプルを用意し、1700℃での滞在後、1850℃まで300 ℃/hrで昇温し、0。5hr 保持し、ガラス化を完全に終了させた。得られたガラスの中央部集合気泡の有無を判定した。結果を表3に付す。
【0024】
【表3】
【0025】
実施例3及び比較例2
粉末Aをリング状空間を有する黒鉛容器に充填し、抵抗加熱電気炉に入れ、真空減圧雰囲気で1700℃まで300 ℃/hrで加熱し、4 時間保持した後、300 ℃/hrでさらに加熱、1825℃で0.5hr 保持し、減圧解除、窒素導入し、0.1hr 保持後、放冷した。このようにして得られた外径φ540 、内径420 、高さ150 の大型リングには、内部集合気泡がまったく観察されなかった。1700℃で4 時間保持を行なわず、300 ℃/hrで1825℃まで昇温した比較試料には、内部集合気泡が存在した。
【0026】
【発明の効果】
本発明の透明シリカガラス製造方法によれば、集合気泡を含まない大型透明シリカガラス物品を特殊な移動機構など設けない汎用電気炉で製造することができ、従って、品質的に満足され、また経済性にも優れた透明シリカガラス製品を得ることができる。この透明シリカガラスは、半導体製造用のシリカガラス治具、反応管構成部品などに使用でき、特に12インチウエハー処理用など大型製品に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明によれば、中央部に集合気泡が生じない機構を示す図である。
【符号の説明】
○:結晶質石英粒子
□:ガラス部分
●:中央部集合気泡
A:結晶質石英粉末充填体1650℃以下
B:結晶質石英粒子とガラスが混在した状態(1650 〜1713℃に1 時間以上滞在させた場合)
C:ガラス殻と内部結晶質石英粒子が2相になった状態(1650〜1713℃を1 時間以下で通過させた場合)
D:Bを1713℃以上で完全に溶融したガラス
E:Cを1713℃以上で溶融した、集合気泡の残存したガラス
Claims (5)
- 結晶質石英粉末を耐熱容器に充填し、加熱してシリカガラスを製造する方法において、炉内で耐熱容器全体を加熱し、加熱条件として、結晶質石英粉末を1650℃以上、クリストバライト溶融温度(1713℃)以下の温度範囲で1時間以上加熱し、当該結晶質石英粉末の少なくとも60wt.%以上、100wt%未満をガラスとし、粉末充填体体積を15vol.%以上収縮させ、その後クリストバライト溶融温度以上に加熱し、ガラス化していない残存結晶質石英粉末を溶融することを特徴とする透明シリカガラスの製造方法。
- 請求項1に記載の透明シリカガラスの製造方法において、結晶質石英粉末を1650℃以上、クリストバライト溶融温度以下の温度範囲で2時間以上加熱し、結晶質石英粉末から転換したガラスをさらにクリストバライトへと結晶化し、その結晶分率を少なくとも全体の20wt.%以上となるようにし、その後クリストバライト溶融温度以上で溶融することを特徴とする透明シリカガラスの製造方法。
- 請求項1又は請求2に記載の透明シリカガラスの製造方法において、炉として、加熱源が電気加熱である汎用電気炉を使用し、加熱雰囲気が、10torr以下の真空であることを特徴とする透明シリカガラスの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の透明シリカガラスの製造方法において、結晶質石英粉末として、Li,Na,K,Ca,Fe,Cuの各不純物が1ppm以下であり、30〜500μmの粒度をもつ粉末を用いることを特徴とする透明シリカガラスの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかの請求項に記載の透明シリカガラスの製造方法において、製造される透明シリカガラスが中央部に局在集合気泡を含まない透明シリカガラス物品であることを特徴とする透明シリカガラスの製造方法。
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