JP4100652B2 - SiCショットキーダイオード - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化珪素(以下SiCと記す)と金属との界面のバリアによる整流作用を利用するSiCショットキーダイオードとその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
高周波、大電力の制御を目的として、シリコン(以下Siと記す)を用いた電力用半導体素子(以下パワーデバイスと称する)では、各種の工夫により高性能化が進められている。しかし、パワーデバイスは高温や放射線等の存在下で使用されることもあり、そのような条件下ではSiのパワーデバイスは使用できないことがある。また、Siのパワーデバイスより更に高性能のパワーデバイスを求める要求に対して、新しい材料の適用が検討されている。本発明でとりあげるSiCは広い禁制帯幅(4H型で3.26eV、6H型で3.02eV)をもつため、高温での電気伝導度の制御性や耐放射線性に優れ、またSiより約1桁高い絶縁破壊電圧をもつため、高耐圧素子への適用が可能である。さらに、SiCはSiの約2倍の電子飽和ドリフト速度をもつので、高周波大電力制御にも適する。
【0003】
耐圧素子の一つとして、半導体と金属との界面のバリアによる整流作用を利用するショットキーダイオードがある。
逆方向電圧印加時のもれ電流と順方向の電圧降下(以下オン電圧と称する)はショットキーダイオードを特徴づける重要な指標である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
逆方向電圧印加時のもれ電流は、印加電圧がダイオードの仕様耐圧に達するまで充分小さいことが望まれる。もれ電流の低減方法としてはショットキー電極材料の選択、電極と半導体の界面の制御や耐圧構造の採用等がある。電極材料の選択では障壁高さの制御が、界面の制御では不純物汚染、反応生成物の制御が、構造による対策では、電界集中の緩和がもれ電流低減の鍵となる。
【0005】
2つめの指標にあげた順方向のオン電圧を小さくするためには、仕事関数の小さな金属をショットキー電極として用いる方法がある。これまでさまざまな金属を用いたショットキーダイオードの報告があり、例えば、 D.Alokらはチタン(以下Tiと記す)を用いたショットキーダイオードで、100Acm -2で約1.5V のオン電圧を得ている〔D.Alok et al., "Effect of Surface Preparation and Thermal Anneal on Electrical Characteristics of 4H-SiC Schottky Barrier Diodes", Materials Science Forum vols. 264-268, pp.929-932, 1998〕。彼らはTi/SiCを熱処理する方法で、もれ電流を低減している。熱処理をおこなうとTi/SiC界面で相互拡散が起き、密着性の向上や反応生成物による障壁高さの変化が予想される。順方向のオン電圧を左右するものとしては、オーミツク電極の接触抵抗もある。
【0006】
市販されているSiC基板の不純物濃度はたかだかn型では1.1×1019cm-3、p型では1.9×1018cm-3であり、Siデバイスのように素子作製の最終工程で金属膜を形成するだけではショットキー性を示し、或いは小さな接触抵抗をもつオーミック電極を得ることはできない。
【0007】
これまでのSiCデバイスにおいてオーミック電極を得る際には、工程の初めにNi,Ti等の薄膜を形成し、1000℃程度の高温下で熱処理する方法が採られている〔例えば、 Crofton, J., Porter, L.M. ,and Williams, J.R., Phys. Stat. Sol. vol.(b)202, No.1, (1997) pp.581-603, 参照〕。しかしながら初期の段階でこのような金属層を形成してしまうと、ショットキー電極を形成する直前の表面処理方法が限定される等、その後の工程の自由度が大きく損なわれる。
そこでSiのように最終工程で金属層を形成し、熱処理無しでオーミック電極を得ることができればデバイス作製の簡便化や特性改善に寄与できると思われる。
【0008】
これを実現する手段としてオーミック電極形成部の不純物濃度を大きくする方法が挙げられる。SiCにおいてドナー不純物となるのは周期表のV族元素である窒素、燐等である。これらの元素のイオン注入により(0001)Si面にオーミック電極を形成した例が幾つか知られている。〔例えば、 Alok, Dev, Baliga, B.J. and Malarty, P. K.,IEDM Technical Digest,(1993) pp.691-694 等参照〕。
【0009】
この他の高濃度層を形成する方法として拡散や液層エピタキシャル成長による方法も試みられているが、SiC中では不純物の拡散係数が小さいためと、エピタキシャル成長法では任意の場所だけの濃度制御が困難なため、デバイスプロセスとして適当でない。また金属膜形成前の表面処理を工夫し、熱処理なしでオーミック電極を形成した例もあるが、実際の工程に用いるのはやはり難しいと思われる。
【0010】
このような状況に鑑み本発明の目的は、ダイオード特性が良好で、順方向のオン電圧が小さいSiCショットキーダイオードおよびその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題解決のため本発明のn型の半導体SiCを用いたSiCショットキーダイオードは、ショットキー電極とオーミック電極のうちの少なくともショットキー電極が、SiC側からTi/Ni/Auなる三層構造であるものとする。
【0012】
一般に半導体デバイスを作製する際には、半導体と接触するコンタクト金属(上記のD.Alokの例ではTi)と金(以下Auと記す)等の配線用金属とを密着性よくつなぐ必要がある。このためショットキー電極やオーミック電極にコンタクト金属/密着用金属/配線用金属といった層構造の金属薄膜が用いられる。SiデバイスではTiとAuを接続するためにニッケル(以下Niと記す)を用いる例があり、発明者らのグループではSiCショットキーダイオードにこの金属構成を適用した。
【0013】
Tiのショツトキーバリアは、従来用いられたNiのそれより小さく、同じ電流密度でのオン電圧を低減できる。但し、外部との電気的接続をとるための配線用電極としては適当でなく、中間にNiを挟んで配線用電極を設けるのが良い。
【0014】
そしてTi、Ni、AuをSiC上に積層後、D.Alokらの報告と同様の条件で加熱処理したところ、加熱しない場合と比べてもれ電流は減少することを見いだした。
特にTi層の厚さが500〜1000nmの範囲にあるときは、境界面へのNiの拡散が抑えられ、均一なショットキーバリアが形成される。
【0015】
更に、オーミック電極の接触する表面に高不純物濃度層が形成されているものとすれば、接触抵抗が低減される。
高不純物濃度層の不純物が燐であり、平均不純物濃度が1〜3×1020cm-3の範囲にあることが重要である。
【0016】
SiCでは、燐と窒素が形成するドナー準位はそれぞれ80と110meV (6H-SiC)でほぼ同じ値である〔 Troffer, T., Peppermuller,C., Pensl,G., Rottner,K. and Schoner,A., J. Appl. Phys. vol.80(7),(1996) pp.3739-3743 参照〕。高濃度層を形成する元素としては、原子半径がSiに近い燐の方が適当と考えられる。1×1020cm-3未満では、接触抵抗低減の効果が小さく、一方、3×1020cm-3を越す濃度としても、活性化率が低下するので無効分が増すだけである。
【0017】
上記のようなSiCショットキーダイオードの製造方法としては、ショットキー電極を形成する前にSiC表面を水素終端処理し、熱処理後直ちにショットキー電極を形成するものとする。
【0018】
特に、水素終端処理後の熱処理条件としては、温度700〜800℃とし、1×10-4Pa以下の減圧下または常圧の不活性ガス雰囲気中でおこなうのがよい。
そのようにしたとき、逆方向漏れ電流が小さく、良好なダイオード特性が得られること見いだした。水素終端処理により、清浄な表面が得られ、熱処理により水素が脱離した後、直ちにショットキー電極を形成できるためと考えられる。
【0019】
オーミック電極の形成方法としては、(000-1) C面に燐イオンを注入し、1400〜1600℃の熱処理により活性化して高濃度不純物層を形成すると良い。
そのようにすれば、通常のエピタキシャルウェハのサブストレートより高不純物濃度の層を形成できる。1400℃未満の温度では、注入した燐の活性化が不十分であり、1700℃とすると表面が荒れ始める。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
参考例1〕
図2は、本参考例1のショットキーダイオードの断面図である。ショットキーダイオードはSiC基板1とショットキー電極2、オーミック電極3とからなる。
以下に参考例1のショットキーダイオードの作製方法と評価方法について述べる。
【0021】
SiC基板1としては、高濃度のn型不純物を含む4H型のSiC単結晶のn+ サブストレート11上にnエピタキシャル層12を成長したエピタキシャルウェハを用いた。そのn+ サブストレート11、nエピタキシャル層12の厚さはそれぞれ300μm 、10μm であり、不純物濃度はそれぞれ1.1×1019cm-3、1×1016cm-3である。なお本実施例のエピタキシャルウェハは、(0001)Si面から<11-20> 方向に8度傾けた面にnエピタキシャル層12を成長してある。
【0022】
先ず、ダイサーにより6mm角に切り分けたSiC基板1の前処理として、有機溶剤と酸による有機物除去、および熱酸化とフッ酸浸漬による表面不完全層除去をおこなった。熱酸化は、パイロジェニック法により1100℃で5時間おこなった。このときエピタキシャル層表面に形成される酸化膜厚は約50nmである。
【0023】
次にこのSiC基板1の表面を水素終端処理する。SiC基板1をCVD(化学気相成長)用横形反応炉に入れ、水素雰囲気中で加熱した。具体的には以下のようにした。これはSiC表面のダングリングボンドに水素を結合させ他元素、例えば酸素の付着を防止するためである。
【0024】
SiC基板1を(0001)Si面を上にしてカーボンサセプターに載せ、水冷ジャケット付き石英反応管の中に挿入する。反応管を一旦1×10-4Paまで真空引きした後、高純度水素を3Lmin -1 流す。SiC基板1の加熱はカーボンサセプターを高周波誘導加熱しておこなった。加熱は1000℃で30分間おこない、昇温、降温速度はともに100℃min -1とした。この処理方法としては土田らにより報告があり〔H.Tsuchida et al., "FTIR-ATR Analysis of SiC(0001) and SiC(000-1) Surfaces", Materials Science Forum vols.264-268, pp.351-354, 1998 〕、本参考例でも同じ方法を採った。
【0025】
続いて、上の水素終端処理をしたSiC基板1の(0001)Si面にショットキー電極2を形成する。先ず電極形成に先立ってスパッタ装置の試料加熱用チャンバにおいてSiC基板1を真空中で加熱して、表面を終端している水素原子を脱離させた。加熱初期の真空度を1×10-4Pa、加熱温度を600〜900℃とした。処理時間は30分間である。
【0026】
このあとSiC基板1をスパッタ用のチャンバへ真空内搬送しショットキー電極2としてNiを成膜した。厚さは200nmとした。薄膜形成後、フォトリソグラフィ法で電極をパターニングした。その大きさは直径200μm である。続いてオーミック電極3を形成するため上記と同じチャンバ内で(000-1) C面にNiをやはり200nmの厚さに成膜した。
最後に両電極とSiCの密着性を向上させるため、SiC基板1を真空中(1×10-4Pa)で加熱した。条件は200℃、5分間である。
【0027】
このようにして製作したショットキーダイオードについて、水素終端後のスパッタ装置内での加熱の効果を調べるため、電流−電圧(I−V)特性評価とショットキー電極2とnエピタキシャル層12の界面を含めた断面の観察をおこなった。
【0028】
図1はI−V特性における漏れ電流と、後述のn値の熱処理温度依存性を示した特性図である。横軸はショットキー電極形成前の熱処理温度、縦軸は逆方向に500V 印加したときのもれ電流と順方向特性から算出したn値である。図中の上下を止めた線は、測定値の最大最小値を示す。
【0029】
n値はダイオード特性の良否の程度をあらわす指標のひとつで、順方向のI−V特性から得られる。具体的には印加電圧Vと、順方向電流Iを規格化した電流密度Jとの関係を表す次の式に含まれる。
【0030】
J = JS [exp(qV/nkT)-1] (1)
ダイオード特性が理想的な場合n=1となり、1からのずれが大きくなるほど(一般にはn>1)その特性が悪いとみなされる。なお式(1) 中のJs 、q、k、Tは、それぞれ飽和電流密度、素電荷量、ボルツマン定数、絶対温度である。
【0031】
図1から、熱処理温度700℃以上で、もれ電流、n値ともにばらつきが小さくなることがわかる。さらにn値は700、800℃でほぼ1となっており、また、漏れ電流もμA オーダーと小さく、良好なダイオード特性が得られていることが分かる。
断面の評価としてはTEM(透過電子顕微鏡)観察をおこない、800℃で加熱処理した試料ではSiC基板に対してNiの配向性が向上していることがわかった。
【0032】
別に、水素終端処理をおこなったSiC基板を分析装置内で加熱し、水素の脱離状況を測定した。その結果700〜800℃でほとんどの水素が脱離することがわかった。
【0033】
以上の結果を総合すると、SiC表面を水素終端処理し、真空中で700〜800℃に加熱した後、ショットキー電極を形成することによって、理想的なダイオード特性が得られることがわかる。これは水素終端処理によりSiC表面が原子レベルで平坦化されるとともに、酸素等の付着原子の汚染に対して不活性となり、電極形成直前に水素を脱離させることによって、急峻な金属−半導体界面を実現できたためと考えられる。
【0034】
なお、界面を制御する方法としてSiCを水素ガス中で加熱し、その表面のダングリングボンドを水素終端する方法は知られている[ 原他、"水素ガス処理による金属/6H-SiC界面形成",第58回応用物理学会学術講演会講演予稿集, No.1, pp.300, 1997] 。しかし水素ガス処理を利用してショットキーダイオードの特性を向上したという報告はない。
【0035】
〔実施例
図3は、本発明第の実施例のショットキーダイオードの断面図である。
【0036】
このSBDと参考例1のショットキーダイオードとの違いは、ショットキー電極4が、バリア金属41、密着用金属42、配線用金属43からなっている点である。
【0037】
次にこのダイオードの作製方法を述べる。
用いたSiC基板と熱酸化、ふっ酸洗浄による表面不完全層除去、水素終端処理、およびその後の熱処理までの処理は参考例1と同じである。熱処理は700℃でおこなった。
【0038】
その処理の後、nエピタキシャル層12上にショットキー電極4を形成した。バリア金属41にはTiを用い、その厚さを300〜600nmとした。続いて密着用金属42としてNiを300nm、配線用金属43としてAuを2000nm成膜した。成膜法はいずれもスパッタ法である。
ショットキー電極4形成後、フォトリソグラフィ法でパターニングした。電極径は200μm である。
【0039】
次にSiC基板1のショットキー電極に対向する面上にオーミック電極3を形成した。これにはスパッタ法による200nm厚さのNiを用いた。
最後にバリア金属41とnエピタキシャル層12とをわずかに反応させるため1×10-4Paの減圧下で200℃、5分間加熱した。
【0040】
Tiのバリア金属41の厚さの影響を調べるため、ショットキーダイオードのI−V特性評価と、ショットキー電極4とSiC基板との界面付近の厚さ方向の元素分析をオージェ電子分光(AES)法によりおこなった。
【0041】
図4は、I−V特性における漏れ電流と、前述のn値のTi膜厚依存性を示した特性図である。横軸はバリア金属41であるTiの厚さ、縦軸は500V の逆方向電圧を印加した時のもれ電流とn値である。
【0042】
Tiの厚さが400nm以下では、もれ電流、n値ともに値が大きいだけでなく、ばらつきも大きく良好なダイオード特性は得られていない。一方500、600nmでは、もれ電流が小さく、n値はほぼ1となっており、しかももれ電流、n値ともばらつきは小さくなって、ダイオード特性が向上している。特にTi層の厚さが500〜1000 nm の範囲にあるときは、境界面へのNiの拡散が抑えられ、均一なショットキーバリアが形成される。
【0043】
図5と6は、オージェ電子分光法(AES法)により得られた元素プロファイルである。横軸はショットキー電極表面からの深さである。図5はTiの厚さを300nmとした場合、図6は500nmとした場合である。
【0044】
図5の分析結果では、バリア金属41とnエピタキシャル層12の界面付近にはSi,C,Tiに加えてNiが拡散してきている。一方図6においては、Ti/SiC界面付近にあるのはSi、C、Tiであり、Niは拡散してきていない。
【0045】
以上の結果から図4で見られたダイオード特性のばらつきは、バリア金属41とnエピタキシャル層12界面へのNiの拡散によるものと言える。そして、Tiの厚さを500nm以上とすることにより、良好なTi/SiC界面が得られることがわかる。
【0046】
〔実施例
まずSiC基板の(000-1) C面に燐をイオン注入しオーミック電極を形成した場合の接触抵抗を調査した予備実験について記す。予備実験の試料の作製方法は、次の通りである。
【0047】
〔予備実験1〕
SiC基板としてはn型の4H型SiC単結晶ウェハを用いた。ウェハの不純物濃度は8×1018cm-3、厚さは300μm である。このウェハをダイサーにより6mm角のSiC基板に切り分けた。基板の前処理として有機溶剤と酸による有機物除去および熱酸化とフッ酸浸漬による表面不完全層除去をおこなった。なお本予備実験のウェハは(0001)Si面から<11-20> 方向に8度傾けて鏡面研磨されている。
【0048】
このSiC基板の(000-1) C面と(0001)Si面に燐イオンを注入した。注入条件は、加速電圧が35〜150keV 、総ドーズ量が3×1015cm-2となる多段注入である。注入したイオンを活性化するため、基板を常圧のAr雰囲気中で1300〜1700℃で30分間加熱した。
【0049】
イオン注入した面にTi膜をスパッタ法で形成し、4端子法測定のためのパターンをフォトリソグラフィ法で形成した。各電極の径は200μm 、電極間隔は800μm とした。
【0050】
図7は、イオン注入した後の活性化熱処理による接触抵抗の変化を示した特性図である。なお金属膜形成後の熱処理はしていない。
(000-1) C面にイオン注入した場合(○印)、1300℃の熱処理によりオーミック性を示し始め、1500℃以上の熱処理温度では、約0.35m Ωcm2 の安定した値を示した。
【0051】
例えば1m Ωcm2 の接触抵抗があれば、100Acm -2で0.1V のオン電圧の増加になるので、大電流の通電時のオン電圧には大きく影響する。なお1700℃で活性化した場合には、基板の表面荒れが発生した。従って、注入イオンの熱処理温度としては、1500〜1600℃が適当である。
【0052】
比較のため(0001)Si面に注入した場合の結果も示した(◇印)。(0001)Si面でも1500℃以上の熱処理温度では、(000-1) C面とほぼ同じ安定した値を示した。なお1700℃で活性化した場合には、基板の表面荒れが発生した。この結果は、試料作製法や測定法が異なるため単純に比較できないが後掲の文献に報告されている傾向と同様である。
【0053】
〔予備実験2〕
次にコンタクト金属Tiの厚さと接触抵抗の関係を調べるため4端子法による評価をおこなった。
この試料作成方法を述べる。SiC基板としては予備実験1と同じ4H型SiCウェハを用いた。ウェハはダイサーにより6mm角に切り分けた。基板の有機溶剤と酸による有機物除去および熱酸化とフッ酸浸漬による表面不完全層除去から熱処理までの工程は参考例1と同じである。
【0054】
この処理の後、このSiC基板の(000-1) C面と(0001)Si面とに燐イオンを注入した。注入条件は、加速電圧が35〜150keV 、総ドーズ量が3×1015cm-2の多段注入である。熱処理は、1500℃でおこなった。
【0055】
SIMS分析により濃度が2×1020cm-3で、深さ方向に0.2μm まで階段状に分布していることを確認した。この熱処理により注入された燐イオンは約25% 活性化したことになる。オーミック電極の接触する表面に高不純物濃度層が形成されているものとすれば、接触抵抗が低減される。高不純物濃度層の不純物が燐であり、平均不純物濃度が1〜3×10 20 cm -3 の範囲にあることが重要である。SiCでは、燐と窒素が形成するドナー準位はそれぞれ80と110 meV (6 H-SiC )でほぼ同じ値である。高濃度層を形成する元素としては、原子半径がSiに近い燐の方が適当と考えられる。1×10 20 cm -3 未満では、接触抵抗低減の効果が小さく、一方、3×10 20 cm -3 を越す濃度としても、活性化率が低下するので無効分が増すだけである。
【0056】
活性化熱処理後、表面の欠陥層を除去する目的で再度基板を熱酸化、ふっ酸洗浄した。(000-1) C面に注入した試料はウェット雰囲気下1100℃で30分加熱し、また(0001)Si面に注入したものは5時間加熱して酸化膜を形成した。この酸化条件では、いずれも約50nmの酸化膜が形成される。
【0057】
酸化膜をフッ酸で除去し、注入層の表面にオーミック電極を形成する。コンタクト金属にはTiを用い、その厚さを300〜600nmとした。成膜法はスパッタ法である。続いて密着用金属としてNiを300nm、配線用金属としてAuを2000nmを成膜した。これら金属薄膜を形成した後、フォトリソグラフィ法で電極をパターニングした。電極径は200μm で、800μm 間隔で格子状に配列した。最後にコンタクト金属と注入層をわずかに反応させるため1×10-4Paの減圧下で200℃、5分間加熱した。
【0058】
図8は、コンタクト金属としたTiの厚さと接触抵抗の関係を示す特性図である。横軸はTiの厚さ、縦軸は接触抵抗である。また図中の上下を止めた線は測定値の最大最小値を示す。
【0059】
この図からTiの膜厚が500、600nmのとき、接触抵抗の平均値が約1桁小さくなり、ばらつきも減少することが分かる。数m Ωcm2 の接触抵抗の低減は、0.数V のオン電圧低減を意味している。
【0060】
この結果は、実施例で述べたコンタクト金属41のTiと密着用金属42のNiの相互拡散を反映していると考えられる。すなわちTiの膜厚が400nm以下のときは熱処理によりNiがTi/SiC界面に到達して接触抵抗を大きくしている。Ti膜厚が500nm以上の場合はNiが界面まで拡散しないためTi/SiCの急峻な界面が実現されて接触抵抗の平均値、ばらつきが小さくなるのである。
【0061】
[実施例]
図9は、本発明第の実施例のSiCショットキーダイオードの断面図である。本実施例のダイオードは、SiC基板1と、Tiのコンタクト金属41、Niの密着用金属42、Auの配線用金属43からなるショットキー電極4が設けられ、SiC下地板11の裏面に燐イオンを高濃度注入した注入層5を有し、その表面に接触して、同じくTiのコンタクト金属61、Niの密着用金属62、Auの配線用金属63からなるオーミック電極6が設けられている。以下、本実施例のSiCショットキーダイオードの製造方法を説明する。
【0062】
SiC基板1は、参考例1と同じ4H型SiC単結晶エピウェハを用いた。基板の前処理として有機溶剤と酸による有機物除去および熱酸化とフッ酸浸漬による表面不完全層除去をおこなった。
SiC下地板11の裏面に燐イオンを注入した。注入条件、アニールは、予備実験2と同じである。
【0063】
フッ酸処理およびRCA洗浄をおこなった後、基板の表面層を除去するため酸化をおこなった。ウェット雰囲気下で1100℃×30分間加熱し、酸化膜を形成した。この酸化で生じる酸化膜は、(000-1) C面で約50nmであり、(0001)Si面では、約15nmである。
【0064】
酸化膜をフッ酸で除去し、(0001)Si面すなわちエピタキシャル層表面にショットキー電極4を形成した。コンタクト金属41にはTiを用い、その厚さを500nmとした。続いて密着用金属42としてNiを200nm、配線用金属43としてAuを2000nmを成膜した。成膜法はスパッタ法である。これら金属薄膜を形成した後、フォトリソグラフィ法で電極をパターニングした。電極径は200μm である。
【0065】
その後、燐イオンの注入により形成した注入層5の表面にTi、Ni、Auをそれぞれ厚さが500、200、150nmとなるようにスパッタ法で形成して三層のオーミック電極6とした。
【0066】
比較例として、従来の一般的な製造方法によるSiCショットキーダイオードも作製した。SiC基板は、同じエピタキシャルウェハから切り出したものを用い、まず(000-1) C面にNiを500nm蒸着し、これを常圧のAr雰囲気下で1000℃、10分間加熱してオーミック電極とした。その後、基板1をフッ酸洗浄し、(0001)Si面上に同じくTi薄膜を形成し、パターニングしてショットキー電極とした。なおこの場合は、ショットキー電極のパターニング前に(000-1) C面にオーミック電極を形成しているため、ショットキー電極のパターニングの際は、エッチング液からオーミック電極を保護するための手段をとらねばならない。
【0067】
このように作製した2種類のダイオードを比較するため、それらの電流−電圧(I−V)測定をおこなった。図10は、電流−電圧特性の比較図である。縦軸は500V の逆方向電圧を印加した時のもれ電流と、電流密度100Acm -2における順方向のオン電圧である。図中の上下を止めた線は測定値の最大最小値を示す。
【0068】
この図から、比較例のショットキーダイオードに比べ、本実施例3のダイオードでは、逆方向もれ電流の平均値が1桁小さくなり、かつそのばらつきも小さくなっていることがわかる。またオン電圧では平均値が1.35Vから1.30Vと約0.05V低くなり、ばらつきも小さくなっている。
【0069】
なお、窒素、燐等の元素のイオン注入によりオーミック電極を形成した例には、Dev Alokらがショットキーダイオードのオーミック電極形成部に窒素をイオン注入したもの〔 Alok, Dev, Baliga, B. J. and Malarty, P. K.,IEDM Technical Digest,(1993) pp.691-694〕や、 Khemka,V.らがp型エピタキシャル層のSi面に燐イオンを注入してpnダイオードを作製した例がある〔 Khemka, V., Patel, R., Ramungul,N., Chow, T.P., Ghezzo,M. and Kretchmer,J.,J. Electronic Materials, vol.28(3),(1999) pp.167-174 〕。前者では表面近傍の窒素濃度が1×1020cm-3となるようイオン注入し、1250℃で熱処理、活性化して2×10-5Ωcm-2の接触抵抗値を得ている。後者では4×10-5Ωcm-2程度の接触抵抗値と、160Ω/□のシート抵抗値を得ているが、いずれも(0001)Si面のみへの適用であり、(000-1) C面への適用は報告されていない。
【0070】
〔実施例
実施例の1100℃×30分間の犠牲酸化後、更に、水素終端処理をおこなった。方法は参考例1と同じで、加熱は1000℃で30分おこなった。更に、スパッタ装置の試料加熱用チャンバにおいて初期真空度1×10-4Paの真空下で700℃×30分間の熱処理をおこない、表面を終端している水素原子を脱離させた。
【0071】
その後SiC基板をスパッタ用のチャンバへ真空内搬送し、実施例と同じようにして(0001)Si面にTi/Ni/Au三層のショットキー電極を、燐イオンを注入した高濃度層表面にやはりTi/Ni/Au三層のオーミック電極を形成した。Ti、Ni、Auの厚さはそれぞれ500、200、2000nm、500、200、150nmとした。パターニングしたショットキー電極の大きさは直径200μm であり、1試料あたり20個のショットキー電極を形成した。最後に両電極とSiCの密着性をあげるためチップを真空中(1×10-4Pa)で加熱した。条件は200℃、5分である。
【0072】
このように作製した実施例のショットキーダイオードの電流電圧特性を測定した。その結果も図10に示した。
【0073】
本実施例のショットキーダイオードは、比較例は勿論のこと実施例のものにくらべても、逆方向もれ電流が、更に2桁小さくなり、かつそのばらつきも小さくなっている。また、オン電圧は、実施例とほぼ同じである。これは参考例1の項において説明したように、水素終端処理によりSiC表面が原子レベルで平坦化されるとともに、酸素等の付着原子の汚染に対して不活性となり、電極形成直前に水素を脱離させることによって、急峻な金属−半導体界面を実現できたためと考えられる。
【0074】
このような簡便な方法によって、優れた特性のSiCショットキーダイオードを作製できることが分かった。以上の実施例では4H−SiCの(0001)Si面上にショットキー電極を形成した例を述べたが、本発明の方法は4H−SiCの(000-1) C面や6H−SiCの(0001)Si、(000-1) C面にも適用できることを確認した。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、n型の半導体SiCを用いたショットキーダイオードのショットキー電極とオーミック電極のうちの少なくともショットキー電極を、SiC側からTi/Ni/Auなる三層構造とすることによって、SiCショットキーダイオードの通電時のオン電圧を低減することができ、しかもTi膜厚に適値が存在することを示した。
【0076】
また、燐等のイオン注入により高不純物濃度層を形成し、金属電極を設けることによっても、更にオン電圧の低減が可能である。製造方法としては、表面を水素終端処理し、温度700〜800℃の熱処理後直ちにショットキー電極を形成することにより、特にもれ電流が改善される。よって本発明は、低耐圧のダイオードの損失低減に極めて有効な発明であり、ショットキーダイオードの普及、発展に貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例1のショットキーダイオードの漏れ電流、n値の熱処理温度依存性を示す特性図
【図2】 参考例1のショットキーダイオードの断面図
【図3】 実施例のショットキーダイオードの断面図
【図4】 実施例のショットキーダイオードのTi膜の厚さと漏れ電流、n値との関係を示す特性図
【図5】 実施例のショットキーダイオードのショットキー電極周辺の元素分布図(コンタクト金属の厚みが300nmの場合)
【図6】 実施例のショットキーダイオードのショットキー電極周辺の元素分布図(コンタクト金属の厚みが500nmの場合)
【図7】 燐イオン注入を用いて形成したオーミック電極の接触抵抗を示す図
【図8】 Ti膜の厚さと接触抵抗の関係を示す特性図
【図9】 実施例のショットキーダイオードの断面図
【図10】 実施例2、3のショットキーダイオードと比較例との特性比較図
【符号の説明】
1 SiC基板
11 n型SiC下地板
12 nエピタキシャル層
2 ショットキー電極
3 オーミック電極
4 ショットキー電極
41 コンタクト金属
42 密着用金属
43 配線用金属
5 高濃度層
6 オーミック電極
61 コンタクト金属
62 密着用金属
63 配線用金属

Claims (2)

  1. n型の半導体SiCの表面にショットキーバリアを生ずるショットキー電極と、オーミック電極とが設けられたSiCショットキーダイオードにおいて、ショットキー電極とオーミック電極のうちの少なくともショットキー電極が、SiC側からチタン/ニッケル/金なる三層構造であり、オーミック電極の接触する表面に高不純物濃度層が形成され、高不純物濃度層の不純物が燐であり、平均不純物濃度が1〜3×10 20 cm -3 の範囲にあることを特徴とするSiCショットキーダイオード。
  2. チタン層の厚さが500〜1000nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のSiCショットキーダイオード。
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