JP4134876B2 - 車両用ホイール、およびその鋳造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、サイドゲートを含む複数のゲートを有する低圧鋳造装置により鋳造され、全体がアルミニウム合金等の軽合金で形成された車両用ホイール、およびその鋳造装置に関する。
自動車(乗用車等)に装着されている車両用ホイールとしては、車体を軽量化するために、例えば低圧鋳造の手法により全体がアルミニウム合金で形成されたアルミホイールが使用されている。アルミホイールは、タイヤが装着されるリム部と車軸に装着されるディスク部と両者が交差する部位を形成するクロス部から構成されている。このアルミホイールの鋳造方法としては、種々の方法が実用化されているが、最近は、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されているサイドゲートを含むマルチゲートから注湯する鋳造方法が注目されている。この鋳造方法によれば、リム部成形キャビティに設けたサイドゲートとディスク部成形キャビティに設けたセンターゲートから注湯することによりリム部、ディスク部およびクロス部を有するホイール素材を鋳造し、この素材からサイドゲートを含む非製品部を除去することにより、アルミホイールが製造される。この鋳造方法によれば、ディスク部を薄くしかつリム部からディスク部に向う指向性凝固を行うので、軽量化したホイールが得られるという利点がある。またアルミホイールを含めて車両用ホイールは、軽量であることに加えて、所定の安全基準を満足することが必要とされるので、衝撃試験や回転曲げ試験を行って所定の機械的強度を具備することを確認した上で出荷される。しかしてこれらの試験に合格しても、ホイール内部に微細な鋳造欠陥があるような場合には、それが検出されないことも考えられ、さらに高い安全性を保証するために、ホイールの各部の鋳造組織を検討して、それが特定の関係を満たすような鋳造方案を採用することが行われている。例えば、特許文献3には、鋳物のミクロ組織の大きさの示度として、デンドライトアームスペーシング(以下DASIIという)に注目し、DASIIが小さい程微細な組織になり、機械的強度が高くなるといった知見に基づいて、(1)リム胴部のDASII>リム先端部のDASII、(2)ディスク中心部のDASII>ディスク支承部のDASII、(3)リム胴部及びリム支承部のDASIIは同一かまたはリム胴部のDASII>リム支承部のDASIIとすることにより、車両の保安上、安全を満たすアルミホイールが得られることが記載されている。
特開2000−254766号公報(第3−5頁、図1) 特開2001−287014号公報(第2−3頁、図1) 特許第2817925号公報(第3−5頁、図1)
アルミホイールもその口径は多岐にわたっており、口径によって鋳造方案(金型形状・構造)が異なる。すなわち、口径が17インチ以上の大型のホイールを鋳造する場合は、小口径のホイールを鋳造する場合と同じ鋳造方案では薄肉で軽量な鋳造品が得られずまた鋳造欠陥が発生するので、湯流れや凝固形態を検討して金型形状や冷却構造が決定される。しかして金型形状や冷却構造が変更されると、アルミホイールの鋳造組織も変化するので、全ての口径のホイールについて例えば特許文献3に記載された関係を満足しても安全性が保障されるとは限らない。大口径ホイールの強度を確保するためには、ディスク面の冷却速度を早くする必要があり、特にスポーク部での強度が高いことが必要とされるので、下型温度を下げるなどして下型での冷却速度を最適化することが重要となる。しかしながら単純に下型温度を下げただけでは、鋳造欠陥が発生し易く改良の余地が有った。
従って本発明の目的は、サイドゲートを用いた大口径で軽量かつ機械的強度が高い車両用ホイールを提供することである。
大口径ホイールの強度を確保するためには、ディスク面となる部分の冷却速度を速くする必要があることは前述した通りであるが、リム部の窓部に臨む部分では成形空間の容積が少ないためにスポーク部などのディスク部の他の部分よりも冷却速度が速まる。その結果窓部に臨む部分にあるリム部よりも円周方向に沿ってサイドゲートから遠ざかる部分にあるリム部の冷却速度が遅くなり、リムの円周方向に沿った指向性凝固が行われず、引け巣などの鋳造欠陥が発生することが判明した。この現象はサイドゲートから離れるにしたがって顕著になる。
そこで、本発明者らは、最適な指向性凝固を実現するための鋳造方案を鋭意検討した結果、クロス部での凝固を一部遅らせることにより、サイドゲートに向かう指向性凝固を実現できることが知見され、本発明に想到した。
すなわち本発明は、タイヤが装着されるリム部と車軸に装着されるディスク部と両者が交差する部位を形成するクロス部からなり、少なくとも一対のサイドゲートに連なる成形空間で鋳造される車両用ホイールにおいて、前記車両用ホイールはサイドゲートから円周方向に沿って左右各々に10°〜60°の範囲にわたってクロス部の肩部側から保温する構造を持つ鋳造装置によって製造され、前記クロス部の外周側のDASII(D)は内周側のDASII(D)と同等かまたはそれより大きい値を有し、かつ、前記リム部において前記サイドゲートの位置と前記サイドゲート同士から最も離れた位置の中間位置におけるDとDの差は、前記サイドゲートの位置でのDとDの差よりも大きいことを特徴とするものである。
上記各DASIIはホイールの中心軸に対して45°傾いた直線に沿って等間隔で3箇所以上の位置で測定された数値であり、図4に示すディスク部の窓部に沿った断面図で説明すれば、Dが最外周側かつクロス部の肩部のほぼ中央部の測定値、DがDから45°傾いた方向に沿って測定した最内周側(窓部の鋳肌表面から0.5mm深さ)での測定値である。図3に示すディスク部のスポーク部に沿った断面図で説明すれば、内周側のDASII(D)は窓部の外周円に沿った部位で測定された値である。但し、中心軸に対して30〜60°の範囲で傾いた直線に沿って測定をしても同様の傾向は観察可能である。このように、ホイールの中心軸に対して所定角度(例えば45°)だけ傾いた直線上で測定されたDASIIは、サイドゲートを用いた鋳造方案では鋳造欠陥が発生し易い部位であるクロス部の肩部の健全性の程度を表示した数値であり、中心軸に向かって斜めに指向性凝固が行われたことを示す指標となる。本発明においては、サイドゲートの位置(図2中H1)ではDはDとほぼ同等であり、例えばDとDの差が10μm未満である。サイドゲートの位置とサイドゲート同士から最も離れた位置の中間位置(H)におけるDとDの差は、サイドゲートの位置(H)でのDとDの差よりも大なる値を有することが好ましい。さらにはサイドゲート同士から最も離れた位置(H)でのDとDの差は、サイドゲートの位置(H)でのDとDの差よりも大なる値を有するとともに、前記中間位置(H)でのDとDの差よりも小なる値を有することが好ましく、例えばこの中間位置(H)でのDとDの差は10μm以上である。またクロス部のDASIIは外周側に行くに従い増加する傾向にあることが好ましい。
本発明の車両用ホイールを製造するためには、サイドゲートを基準に円周方向に沿って左右に10°〜60°の範囲にわたってクロス部の肩部側から保温する構造の鋳造方案を適用することが好ましい。保温する範囲が10°未満であると、リム部の円周方向への指向性凝固が不十分となり、上記DAS分布が得られず、一方保温する範囲が60°を超えると、凝固時間が長くなり、鋳造サイクルタイムが増大するので、いずれも不都合である。
本発明において、DASIIの値は、α−Alデンドライト相を主体とするアルミニウム合金組織中の主軸の両側に存在する複数個の2次アームの間隔を測定し、その平均値(単位:μm)で示したものである。
本発明によれば、タイヤが装着されるリム部と車軸に装着されるディスク部とが交差する部位を形成するクロス部のDASIIが、外周側が内周側と同等かまたはそれより大きい値を示すホイールの組織形態とすることで、ディスク面のDASIIを小さく保った上でサイドゲートから遠ざかる部位の品質も確保することができ、結果として大口径でかつ肉厚の薄い軽量な車両用ホイールを得ることができる。また、サイドゲートを基準に円周方向に沿って左右に10°〜60°の範囲にわたってクロス部の肩部側から保温する構造の鋳造方案を適用したため、リム部の円周方向への指向性凝固を実現できる。
以下本発明の詳細を添付図面により説明する。図1は本発明で使用される金型装置の断面図、図2は図1のA−A線断面図、図3及び図4はアルミホイールの要部を模式的に示す断面図、図5はクロス部のDASII分布を示す図である。
図1において、1は低圧鋳造用金型であり、ホイールデザインに応じた表面形状を有する下型11、上型12、これらと嵌合して成形キャビティ14を形成する横型13a、13bと、下型11を固定するベース15aと、上型12を支持するベース15bとを備えている。キャビティ14は、ディスク部キャビティ14a及びリム部キャビティ14bを含み、各キャビティはゲート(湯口)を介して溶湯の供給部に連通している。すなわちリム部キャビティ14bはサイドゲート16a、16bを介して溶湯保持炉(不図示)に連なるストーク18a、18bに連通している。サイドゲート16a、16bは、ホイールの軸心を挟んで対称位置に存在するように配置されている(図2参照)。またディスク部キャビティ14aは、センターゲート17を介して保持炉(不図示)に連なるストーク18cに連通している。図示しないが、リム部の円周方向への指向性凝固を実現するために、金型1の内部にリム部キャビティ14a、14bのうちクロス部となる部分の凝固を遅らせる手段が設けられている。クロス部上方を保温してその部分の凝固を遅らせるためには、例えば横型13a、13bの一部に保温手段または加熱手段を設ける、あるいはリム部キャビティ14a、14bをクロス部の上部に余肉部を付加した形状とすればよい。
上記金型装置1によれば、次のようにして低圧鋳造が行われる。保持炉内の溶湯を加圧して、ストーク18a、18bを上昇した溶湯はサイドゲート16a、16bから成形キャビティ14内に注入され、次いでリム部キャビティ14bに充填され、また保持炉(不図示)に連なるストーク18cを介して上昇した溶湯はセンターゲート17からディスク部キャビティ14aに充填される。所定時間経過後、加圧を解除することにより、ストーク17a、17b、17c内に残留する溶湯は保持炉内に戻される。キャビティ14内に注入された溶湯は、インナーフランジ側(リム部の上端部)からアウターフランジ側(リム部の下端部)に向かう指向性凝固が行われ、次いでアウターフランジ部の円周方向に沿って凝固が行われてディスク部が形成される。この鋳造過程で、凝固完了後型開きを行い、図2に示す鋳造品(ホイール素材)が取り出される。このホイール素材から非製品部(サイドゲート部16a、16b)が除去された後、デザイン面の加工、気密検査、表面処理(塗装)が施されて図3及び図4に示す形状を有するアルミホイールが得られる。図3はスポーク部中央に沿った縦断面図、図4は窓部中央に沿った縦断面図である。このアルミホイール20は、車軸(不図示)に取り付けられる円板状のディスク部21と、タイヤ(不図示)が装着されるリム部22と、その上端部側に形成されたインナーフランジ部23と、リム部22の下端部に形成されたアウターフランジ部24と、ディスク部21とリム部22とが交差する部位となるクロス部25からなる。クロス部の肩部26とはクロス部の外周面に形成される意匠面とほぼ平行な面の部分である。
Al−Si−Mg系合金(JIS H 5202で規定されたAC4CH材相当)の溶湯(約450℃)を図1に示す金型(約450℃)に注入し、所定の圧力(0.049〜0.063MPa)で鋳造することにより、図2に示すホイール素材を作製した。ここで使用した金型は、横型13a、13bにクロス部の外周側に近接する保温手段を設けると共に、その保温手段はサイドゲート16a、16bの両側に円周方向に沿って45°の範囲に位置する構成とした。上記のホイール素材からサイドゲートを含む非製品部を除去して、ディスク部21に円周方向に等間隔に配置された5本のスポークS〜Sを有するアルミホイール20(図2参照、18インチ用)を作製した。このアルミホイール20について、円周方向に沿ってサイドゲート16aの直下とそこから半時計方向に90°離間した位置までの5箇所(H〜H、等角度間隔)において、ディスク部21とリム部22とが交差する部位にあるクロス部25の内周側から外周側までの5箇所(C〜C、中心軸に対してθ=45°だけ傾いた方向)についてDASIIを測定した。その結果を図5に示す。図5において、各曲線は等DASII線を示し、曲線Dの下側の領域がDASII=30〜35μm、曲線Dと曲線Dとの間の領域がDASII=35〜40μm、曲線Dと曲線Dの間の領域がDASII=40〜45μm、曲線Dの外側の領域がDASII=45〜50μmとなる。
図5から、クロス部25のDASIIは、サイドゲートの位置(H)では外周側(C)と内周側(C)とで同等の値(両者の差は10μm未満)を示し、サイドゲートから最も離れた位置(H)ではその差が大きくなり、また、これらの中間位置(H)では、DASIIの値は内周側(C)と外周側(C)の差がかなり大きくなる(両者の差は10μm以上)ことがわかる。また全ての円周方向の位置(H〜H)において、DASIIは内周側(C)から外周側(C)に行くにしたがって増大している。このようなDASIIの分布は、インナーフランジ側(リム部22の上端部)からアウターフランジ側(リム部22の下端部)に向かう指向性凝固が行われ、次いでアウターフランジ部の円周方向に沿って指向性凝固が行われてディスク部21が形成されることによると推察される。このような2段階の指向性凝固が行われた場合、当然の結果として、リム部22のDASIIは、リム下端部の値よりもリム上端部の値が小さくなり、かつリム下端部では、サイドゲートの近傍とそこから遠ざかる位置とでDASIIの値に大きな差異はないが、リム上端部においてはサイドゲートから遠ざかるに従ってDASIIの値が小さくなる傾向になる。
図1に示す金型によりアルミホイールを鋳造する場合、特定部分の凝固を遅らせる手段が設けられた冷却構造を採用することにより、上記の2段階の指向性凝固が行われるため、鋳造欠陥が発生しても、図2及び図3に示すようにスポークS2とリム部22が交差するクロス部25の外周側の領域Bよりも鋳肌寄りに存在するようになる。従って本発明のDASII分布を備えることにより、鋳造後の加工により鋳造欠陥を容易に除去することができる。一方、従来の鋳造法で実施されていたように、例えばセンターゲートのみから注湯すると、製品部となるリム部22の下端部でその内周側の領域(図2にAで示す)に鋳造欠陥が発生するので、リム部の肉厚を厚くしておき、鋳造後の加工で鋳造欠陥を除去する必要があり、鋳造歩留が低下するという難点を伴う。
本発明で使用される鋳造用金型装置の一例を示す断面図である。 図1のA−A線断面図である。 アルミホイールの要部を模式的に示す断面である。 アルミホイールの要部を模式的に示す断面である。 クロス部のDASII分布を示す図である。
符号の説明
1:低圧鋳造用金型、11:下型、12:上型、13a、13b:横型、14:キャビティ、14a:ディスク部キャビティ、14b:リム部キャビティ、15a、15b:ベース、16a、16b:サイドゲート、17:センターゲート、18a、18b、18c:ストーク
20:アルミホイール、21:ディスク部、22:リム部、23:インナーフランジ部、
24:アウターフランジ部、25:クロス部、26:肩部

Claims (5)

  1. タイヤが装着されるリム部と車軸に装着されるディスク部と両者が交差する部位を形成するクロス部からなり、少なくとも一対のサイドゲートに連なる成形空間で鋳造される車両用ホイールにおいて、前記車両用ホイールはサイドゲートから円周方向に沿って左右各々に10°〜60°の範囲にわたってクロス部の肩部側から保温する構造を持つ鋳造装置によって製造され、前記クロス部の外周側のDASII(D)は内周側のDASII(D)と同等かまたはそれより大きい値を有し、かつ、前記リム部において前記サイドゲートの位置と前記サイドゲート同士から最も離れた位置の中間位置におけるD とD の差は、前記サイドゲートの位置でのD とD の差よりも大きいことを特徴とする車両用ホイール。
  2. 前記リム部において、前記サイドゲート同士から最も離れた位置でのDとDの差は、前記サイドゲートの位置でのDとDの差よりも大なる値を有するとともに、前記中間位置でのDとDの差よりも小さいことを特徴とする請求項に記載の車両用ホイール。
  3. 前記リム部において、前記サイドゲートの位置ではDとDの差が10μm未満であり、かつ前記中間位置ではDとDとの差は10μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ホイール。
  4. 前記DASIIは、前記クロス部の3箇所以上で測定されかつ内周側から外周側に向かって増加することを特徴とする請求項1記載の車両用ホイール。
  5. 車両用ホイールの鋳造装置であって、リム部とディスク部と両者が交差する部位を形成するクロス部を成形するためのキャビティを有し、前記リム部を成形するキャビティに設けた少なくとも一対のサイドゲートを備え、かつ、前記サイドゲートから円周方向に沿って左右各々に10°〜60°の範囲にわたってクロス部の肩部側から保温する手段が備えられた鋳造装置。
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