JP4137546B2 - 炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はメタンガス等の炭化水素系ガスの分解ガスにおける水素の測定に使用される炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサに関し、例えば、浸炭処理に使用される濃淡型水素センサに利用できる。
【0002】
【従来の技術】
浸炭処理を例にとって説明する。浸炭処理として、炭化水素系ガスを分解させた分解ガスを浸炭ガスとして用いる技術が知られている。このものによれば、炭化水素系ガスを分解させて分解ガスを生成する。この分解ガスは炭素と水素とを主要成分とする。そして浸炭ガスである分解ガスに含まれている炭素を、高温に加熱した鉄系の処理材の表面層に吸着させて表面層の内部に浸透させて浸炭処理する。浸炭処理では、大気圧未満の炉内で、分解ガスと処理材とを接触させる真空浸炭処理がある。
【0003】
上記した浸炭処理では、近年、炭化水素系ガスの分解ガスにおける水素ガスの水素分圧(水素濃度)を濃淡電池型水素センサで測定し、水素分圧(水素濃度)に基づいて浸炭ガスの炭素ポテンシャルを求める試みがなされている。上記した水素センサは、プロトン導電性をもつ固体電解質と、固体電解質の片面側に配置された基準物質が接触する第1電極と、固体電解質の他の片面側に配置され炭化水素系ガスの分解ガスが接触する第2電極とを有する。第1電極及び第2電極は共に白金で形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記した水素センサによれば、炭化水素系ガスを分解させて形成した分解ガスにおける水素分圧(水素濃度)を測定するにあたり、測定精度の向上には限界があった。このため浸炭ガスの炭素ポテンシャルの把握には限界があり、浸炭処理の炭素ポテンシャルの制御には限界があった。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、炭化水素系ガスを分解させて形成した分解ガスにおける水素を測定するにあたり、水素ガスの測定精度の向上を図り得る炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサを提供することを課題とするにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記した課題のもとに炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサについて鋭意開発を進めている。そして、プロトン導電性をもつ固体電解質と、固体電解質の片面側に配置された基準物質が接触する第1電極と、固体電解質の他の片面側に配置され炭化水素系ガスの分解ガスが接触する炭素を基材とする第2電極とを有する水素ガスセンサとすれば、水素ガスの測定精度の向上を図り得ることを知見した。その理由としては、次のように推察される。即ち、上記した水素センサにおいて、炭化水素系ガスを分解させて形成した分解ガスにおける水素濃度の測定精度の向上には限界があった原因としては、分解ガス側に配置される第2電極の材質が白金系であったため、炭化水素系ガスの分解ガスが平衡状態以上に過剰に分解されてしまい、分解ガスにおける水素ガスの測定精度の向上には限界があるものと推察される。そこで炭化水素系ガスの分解ガス側に配置される第2電極の基材を炭素系とすれば、上記したように炭化水素系ガスの分解ガスが平衡状態を過剰に越えて分解し過ぎることを抑え得、分解ガスにおける水素ガスの測定精度を向上させ得ることを知見し、本発明に係る炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型の水素センサを開発した。
【0007】
即ち、本発明に係る炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサは、炭化水素系ガスの分解ガスにおける水素ガスの測定に使用される濃淡電池型水素センサであって、アルカリ土類金属の酸化物がドープされたαアルミナを基材とすると共にプロトン導電性をもつ固体電解質と、固体電解質の片面側に配置された基準物質が接触する第1電極と、固体電解質の他の片面側に配置され炭化水素系ガスの分解ガスが接触する炭素を基材と第2電極とを有することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
水素センサを構成する固体電解質としては、アルカリ土類金属の酸化物がドープされているαアルミナを基材とする。このようなαアルミナを基材とする固体電解質は、高温領域において、水素が弱いO−H結合を形成してαアルミナに溶解し、プロトン導電性を示すことができる。このプロトン導電性により、αアルミナを基材とする固体電解質をもつ水素センサは高温領域において動作することができる。従って高温領域(一般的には700〜1200℃)において生成した起電力に基づいて、測定対象物である炭化水素系ガスの分解ガスの水素分圧(水素濃度)を測定することができる。従って、水素センサを構成する固体電解質として、アルカリ土類金属の酸化物がドープされているαアルミナを基材とする場合には、水素センサにおいて従来より使用されているSrCeO3またはCaZrO3を母体とするペロブスカイト型のプロトン導電性の固体電解質を基材として用いた場合よりも、強還元雰囲気での水素濃度の測定に適することができる。
【0009】
好ましい実施形態について説明を加える。プロトン導電性をもつ固体電解質は、アルカリ土類金属の酸化物がドープされているαアルミナを基材とする。即ち、固体電解質は、αアルミナと、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raの少なくとも1種)の酸化物とを含むことができる。アルカリ土類金属の酸化物の含有量は、一般的には0.01〜2.0mol%、0.01〜1.0mol%とすることができ、殊に0.02〜0.9mol%、0.03〜0.8mol%、0.03〜0.6mol%とすることができるが、これらに限定されるものではない。従ってアルカリ土類金属の酸化物の含有量の上限値としては、2.0mol%、1.5mol%、1.0mol%、0.5mol%等を例示でき、上限値と対応する下限値としては0.02mol%、0.03mol%、0.04mol%、0.05mol%等を例示できる。なおドープは公知のドープ形態を採用することができ、自然的な含有も含むことができる。
【0010】
固体電解質の製造方法の例として、プロトン導電性をもつ固体電解質は、アルカリ土類金属の酸化物が所定量(一般的には0.01〜2.0mol%,または0.01〜1.0mol%)含まれているαアルミナを、プレス成形して圧粉体とした後に、圧粉体を燒結し、その後、高温領域(一般的には700〜1300℃、殊に1200〜1300℃)に、水素雰囲気あるいは水蒸気雰囲気中において当該αアルミナを加熱して熱処理することで形成することができる。アルカリ土類金属、または、これの酸化物がαアルミナに固溶する固溶量が一層安定化するためと推察される。
【0011】
固体電解質の製造方法の他の例として、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)からなる群から選択された少なくとも1種の元素の粉末をドープし、空気中などの酸化雰囲気中で燒結しても良い。酸化雰囲気中でアルカリ土類金属が酸化され、アルカリ土類金属の酸化物がαアルミナにドープされたことと実質的に等価になるからである。
【0012】
上記した熱処理の時間は一般的にαアルミナの純度に依存する。本発明者らの実験によれば、αアルミナの純度がモル比で99.6%のとき、熱処理時間は10〜40hr、殊に20〜35hr、なかでも21hrとすることができる。αアルミナの純度が99%以下になると、熱処理時間は100hr以上とすることができる。熱処理時間が長いと、生産コスト的に不利となる。上記した熱処理は水素センサの高精度化に有効である。但し、水素センサの高精度化があまり要請されないときには、上記した熱処理を廃止したり短時間にできる。従って上記した熱処理の時間としては一般的に5hr未満、1hr未満とすることができるが、これに限定されるものではない。なお、ドープされるアルカリ土類金属の酸化物が酸化マグネシウムである場合には、特に水素センサとしての感度が高いことも本発明者らの実験で明らかになった。
【0013】
第1電極は導電性を有し、一般的には金属で形成されている。第1電極は、Ni、Pt、Au、Pd等の少なくとも1種を主要成分とすることができる。第1電極はガス透過性を有するように多孔質であることが好ましい。好ましい水素センサにおいては、プロトン導電性を示す固体電解質の表面にNi、Pt、Au、Pd等の少なくとも1種を主要成分とする膜を形成し、この膜を第1電極とすることができる。第1電極としては、通常の塗布法、PVD法、CVD法でも形成できる。また第1電極は、Ni、Pt、Au、Pd等の少なくとも1種を主要成分とするペーストを固体電解質の表面に塗布し、還元性雰囲気中で高温(例えば800℃以上)で焼き付けて電極を設ける方法(ペースト塗布法)で形成することもできる。この場合には、電極が多孔質膜になって第1電極への水素の侵入が容易になるので望ましい。なお、PtやAuのように酸化しにくい金属の場合は空気中で焼き付けてもよい。なお、場合によっては第1電極は炭素系とすることもできる。
【0014】
第2電極は第1電極の相手電極であり、固体電解質の他の片面側に配置されており、炭化水素系ガスの分解ガスが接触する炭素を基材とするものであり、導電性を有している。第2電極は、ガス透過性を有するように多孔質であることが好ましい。第2電極としては、炭素粉末または炭素繊維を基材として形成することができる。具体的には、炭素系の塊体を擦り付けて形成しても良いし、あるいは、炭素粉末及び炭素繊維のうちの双方または一方と有機系または無機系のバインダとを含む混合材を塗布して形成しても良いし、あるいは、炭素繊維を基材とするシートを貼り付けて形成しても良い。炭素は黒鉛、活性炭も含む。
【0015】
固体電解質の第1電極及び第2電極が設けられている水素センサで水素含有ガスの水素濃度を測定するとき、第2電極に、高温(例えば700℃以上)の水素含有ガス(炭化水素系ガスの分解ガス)が接触すると、水素がプロトンになり電子を発生する。このため、前記プロトンは固体電解質の中を移動し、前記第2電極と背向する第1電極に達することができる。一方、電子は、第1電極と第2電極とをつなぐリード線を通り、第1電極に達する。第1電極に達したプロトンと電子とが結合して水素が生成される。この一連の反応で第2電極側から第1電極側に電子が移動し、移動に必要なエネルギーが水素ガス分圧に基本的には比例するので、リード線に起電力測定手段(電圧計等)を繋いで起電力を測定することにより、測定対象物である炭化水素系ガスの分解ガス(水素含有ガス)における水素ガス分圧、すなわち水素濃度を検出することができる。従って本発明に係る水素センサは、第1電極と第2電極との間で発生した起電力を測定する起電力測定手段が設けられていることが好ましい
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図1〜図4を参照して説明する。本実施例は真空浸炭処理に適用した場合である。図1は真空浸炭処理のシステムの全体構成を示す。図1において、100は炉室101をもつ真空浸炭処理用の熱処理炉、110は炉室101を吸引させて炉室101の真空度を維持する真空ポンプ、120は炭化水素系ガスである原料ガスを炉室101に導入させるガス導入路、130は炉室10の圧力を測定する圧力計、140は熱処理炉100を加熱するヒータ、1は炉室10の水素ガス濃度を測定する水素センサを示す。炉室101には、浸炭焼入可能な炭素鋼系の処理材150が収容されている。
【0017】
本実施例に係る水素センサ1は図2に示されている。図2に示すように、水素センサ1は、一端が閉鎖された有底円筒形状をなす空洞11xを有する保護管形状のプロトン導電性をもつ固体電解質11と、その固体電解質11の空洞11xを区画する内面に形成された第1電極12と、固体電解質11の外面に第1電極12に背向するように形成された第2電極13と、一端がリード線15で第1電極12に他端がリード線14で第2電極13に接続された起電力測定手段16と、第1電極12側の水素分圧の一定化を図るための蓋部材19と、蓋部材19に固定されている吸気管17及び排気管18とからなる。吸気管17及び排気管18は水素センサに設けられており、基準物質を固体電解質11の第1電極12側に供給する供給手段として機能することができる。
【0018】
固体電解質11は、アルカリ土類金属の酸化物が含まれているαアルミナ(約0.15モル%のMgO)を焼結して焼結体を得る工程と、焼結体を水素または水蒸気の存在下(体積比で2%H2O+1%H2の大気雰囲気)において700〜1300℃で0.05〜5時間熱処理をする工程を経て形成されている。なお場合によっては、水素センサの種類によっては、製造コストを考慮し、当該熱処理を無くすこともできる。固体電解質11の厚みは0.3mm〜3mm、殊に0.5mm〜2mmを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
第1電極12は多孔質膜状の白金で形成されており、厚みは0.1〜20マイクロメートル程度とされており、導電性及びガス透過性を有する。第1電極12を多孔質電極とするため、この固体電解質11の内面にPtペーストを塗布した後、1300℃の酸化雰囲気で焼き付けることにより、第1電極12は形成されている。相手電極である第2電極13は、炭素系の板状体を固体電解質11の外面に炭素系の塊体を擦り付けることにより形成されており、厚みは0.1〜20マイクロメートル程度とされており、導電性及びガス透過性を有する。導電経路として機能できるリード線14,15は共にPt線(白金)である。リード線14の一端14aは半田ペーストで第2電極13に接続されている。リード線15の一端15aは第1電極12に接続されている。リード線14,15の他端14c,15cは、起電力測定手段16としての電圧計に接続されている。電圧計は第1電極12と第2電極13との間の起電力を測定する。吸気管17、排気管18及び蓋部材19はセラミックス材で形成されている。
【0020】
図2に示すように、水素センサ1を構成する固体電解質11の先端は、測定ガスとしての炭化水素系ガスの分解ガスが流れる熱処理炉100の炉室101に挿入されている。水素センサ1は、熱処理炉100に図略の取り付け具により固着されている。吸気管17の上端から、図示しないマスフローコントローラと水蒸気飽和装置で制御された基準ガス17aが空洞11x内に一定量供給され、そして、排気管18から排気ガス18aとして排気される。基準ガス17aは、濃淡電池の基準物質として機能できるものであり、一定の水素分圧をもつH2と水蒸気(H2O)からなる。
【0021】
浸炭処理の際には、熱処理炉100の真空ポンプ110により炉室101の真空度(10〜5000Pa)が高く維持されると共に、炉室101の温度はA1変態点以上の高温領域(例えば約900〜1000℃)に維持される。炭化水素系ガスで形成された原料ガスがガス導入路120からこの炉室101に導入される。炭化水素系ガスは、メタンを主成分(体積比で80%以上)とすると共に、エタン、プロパン、ブタンなどを含んでいる。炭化水素系ガスは炉室101内で速やかに分解されて分解ガスとなる。メタンの分解は次式で示される。CH4 →[C]+2H2
このように分解ガスは炭素と水素とを主要成分とする。そして浸炭ガスである分解ガスに含まれている炭素は、高温に加熱した処理材150(低炭素鋼系,900〜1000℃)の表面層に吸着され、表面層の内部に浸透し、これにより浸炭処理が行われる。浸炭処理が行われた処理材150は、A1変態点以上の温度から焼入れ媒体(一般的には油または水、場合によっては急冷用ガス)に接触され、焼入れ処理が行われる。
【0022】
図3は真空浸炭処理の代表的な条件を示す。図3において特性線A10は炉室101の炉内温度を示す。特性線A20は炉室101の炉内圧力を示す。特性線A10に示すように、昇温工程、浸炭工程、拡散工程、焼入れ工程が順に実行される。昇温工程では、炉内温度を室温から約930℃まで昇温させる。これにより処理材150も同様に昇温する。浸炭工程では、浸炭温度(A1変態点以上,約930度)に炉内温度を維持しつつ、分解ガスに含まれている炭素を処理材150の表面層に浸透させる。拡散工程では、炉内温度を約930℃を維持することにより、浸透させた炭素を処理材150の内部に更に拡散させる。焼入れ工程では、浸炭後の処理材150を焼入れ媒体に接触させることにより80℃(A1変態点未満)まで急冷させる。図3の特性線A20に示すように、昇温工程の実施に伴い炉室101内の真空度が高められる(約10Pa)。浸炭工程においては、炭化水素系の原料ガスの導入と真空引きとが交互に繰り返される。炭化水素系のガスが炉室101内に導入されると、炉内圧力は3000Pa程度となる。真空引きが行われると、炉内圧力は10Pa程度となる。拡散工程では、炉内圧力が約13kPaまで次第に増加される。なお昇温工程、浸炭工程、拡散工程はそれぞれ1時間ずつ実施しているが、各工程における必要時間は処理材150の材質やサイズ等に応じて変更され、上記した値に限定されるものではない。図4は浸炭工程において熱処理炉100の炉室101の水素分圧を示す。M1は原料ガスの導入を示す。図4に示すように、炭化水素系の原料ガスは間欠的に炉室101内に導入される。原料ガスが導入されると、M2に示すように分解により水素ガスが発生するため、水素ガスの分圧が増加する。
【0023】
以上説明したように本実施例によれば、炉室101内に供給された炭化水素系の原料ガスが分解した分解ガスにおける水素分圧(水素濃度)を水素センサ1により精度良く測定することができる。その理由としては、炭化水素系の原料ガスが分解した分解ガスに接触する第2電極13は、触媒活性に富む白金で形成されているのではなく、炭素系材料で形成されているため、触媒活性が過剰でなく、第2電極13側の炭化水素系ガスが平衡以上に過剰に分解しにくいたためであると推察される。殊に本実施例によれば、水素センサ1の固体電解質11がアルカリ土類金属の酸化物がドープされたαアルミナを基材とするため、水素センサにおいて従来より使用されているSrCeO3またはCaZrO3を母体とするペロブスカイト型のプロトン導電性の固体電解質を用いた場合に比較して、浸炭温度領域(一般的には750〜1100℃,殊に850〜1000℃)での使用に適する。
【0024】
(試験例)
本発明者らは、酸化マグネシウムを含むαアルミナ(0.3mol%MgO)で形成された固体電解質11に白金系の第1電極12を形成すると共に、炭素系の第2電極13を形成し、第1実施例に基づく水素センサを作成した。そしてこの水素センサを用いて、炭化水素系の原料ガスが分解した分解ガスにおける水素分圧(水素濃度)を測定した。空洞11xに供給する基準ガスとしては、体積比で1.02%の水素ガスを含むアルゴンガスとした。そして、約3000Paに維持した炉室101(930℃)に炭化水素系ガスを100cc/分間の割合で導入した。炉室101には処理材は配置しなかった。試験結果を図5に示す。図5の横軸は時間を示し、右側の縦軸は水素分圧[atm]を示し、左側の縦軸は炉内圧力[Pa]を示す。特性線B1は炉内圧力を示し、特性線B2は炭化水素系の原料ガスが分解した分解ガス水素分圧を示す。図5の特性線B2に示すように、測定開始から1000秒近く経過すると、特性線B2には平坦部が発現され、分解ガスの水素分圧(水素濃度)を良好に測定することができた。
【0025】
更に、比較例に係る水素センサについても同様に試験を行った。比較例に係る水素センサは、上記した試験例に係る水素センサと同様であり、但し第1電極及び第2電極の双方が白金で形成されている。比較例に係る水素センサに係る特性線は、極大値を示し、水素濃度を測定する精度としては充分ではなかった。
【0026】
更に本発明者らは、上記した酸化マグネシウムを含むαアルミナについてプロトン導電性を調べるべく、酸化マグネシウムを含むαアルミナについてIR分析を行った。同様に、酸化ストロンチウムを含むαアルミナ(0.1mol%SrO)を形成した。そして、酸化ストロンチウムを含むαアルミナ、酸化マグネシウムがドープされていないαアルミナについてもIR分析した。図6はその試験結果を示す。図6の縦軸は赤外線の透過率(transmittance(%))を示す。図6の横軸は赤外線の波数(Wave Number)を示す。図6において、特性線C1は、酸化マグネシウムをドープしていないαアルミナの試験結果を示す。特性線C2は、酸化マグネシウムをドープしたαアルミナ(0.3mol%MgO)の試験結果を示す。特性線C3は、酸化ストロンチウムをドープしたαアルミナ(0.1mol%SrO)の試験結果を示す。波数(Wave Number)が3000付近で、特性線C2は大きく下降している。これは、プロトン導電性が発現されることを意味する。また波数(Wave Number)が3000付近で、特性線C3の下降は認められるため、酸化ストロンチウムをドープしたαアルミナ(0.1mol%SrO)においても、プロトン導電性が発現されることを意味する。酸化マグネシウムのドープ量、酸化ストロンチウムのドープ量を変化させたときにも、プロトン導電性が発現された。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではない。プロトン導電性をもつ固体電解質の形状は有底円筒形状をなすものに限定されるものではなく、板状でも良い等、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【0027】
(付記)
上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
(付記項1)炉内温度を昇温させる昇温工程、炭化水素系の原料ガスの導入と真空引きとが繰り返されると共に、炭化水素系ガスが分解した分解ガスに含まれている炭素を炉内の処理材の表面層に浸透させる浸炭工程、浸炭後の処理材を焼入れ媒体に接触させて急冷させる焼入れ工程が順に実行される浸炭焼入れ方法であって、プロトン導電性をもつ固体電解質と、固体電解質の片面側に配置された基準物質が接触する第1電極と、固体電解質の他の片面側に配置され炭化水素系ガスの分解ガスが接触する炭素を基材とする第2電極とを有する炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサを用い、当該水素センサにより、炉内の炭化水素系ガスが分解した分解ガスの水素分圧を測定しつつ行うことを特徴とする浸炭焼入れ方法。この場合、炭化水素系ガスを分解させて形成した分解ガスにおける水素分圧(水素濃度)を測定するにあたり、水素ガスの測定精度の向上を図り得る。
[付記項2]付記項1において、濃淡電池型水素センサの固体電解質は、アルカリ土類金属の酸化物がドープされたαアルミナを基材とすることを特徴とする浸炭焼入れ方法。固体電解質がアルカリ土類金属の酸化物がドープされたαアルミナを基材としているため濃淡電池型水素センサは浸炭温度領域(一般的には750〜1100℃,殊に850〜1000℃)での使用に適し、浸炭温度領域において水素分圧(水素濃度)を良好に測定することができる。
[付記項3]浸炭処理に使用される炭化水素系ガスの分解ガスにおける水素ガスの測定に使用される濃淡電池型水素センサであって、プロトン導電性をもつ固体電解質と、固体電解質の片面側に配置された基準物質が接触する第1電極と、固体電解質の他の片面側に配置され炭化水素系ガスの分解ガスが接触する炭素を基材とする第2電極とを有する浸炭処理用の濃淡電池型水素センサ。第2電極が炭素系であるため、浸炭処理に使用される炭化水素系ガスの分解ガスにおける水素ガスの濃度,分圧を良好に測定することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、炭化水素系ガスを分解させて形成した分解ガスにおける水素濃度を測定するにあたり、水素ガスの測定精度の向上を図り得る濃淡電池型水素センサを提供することができる。殊に固体電解質がアルカリ土類金属の酸化物がドープされたαアルミナを基材としており、浸炭温度領域(一般的には750〜1100℃,殊に850〜1000℃)での使用に適する濃淡電池型水素センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】真空浸炭処理で用いる熱処理炉の全体システムを示すシステム図である。
【図2】真空浸炭処理で用いる水素センサを模式的に示す断面図である。
【図3】真空浸炭処理の過程を示すグラフである。
【図4】真空浸炭処理における時間と炉内の水素分圧との関係を示すグラフである。
【図5】本実施例に係る水素センサを用いて測定した時間と水素分圧との関係を示すグラフである。
【図6】酸化マグネシウム、酸化ストロンチウムを含むαアルミナのIR分析結果、ドープされていないαアルミナのIR分析結果を示すグラフである。
【符号の説明】
図中、100は熱処理炉、101は炉室、150は処理材、1は水素センサ、11は固体電解質、12は第1電極、13は第2電極、16は起電力測定手段を示す。
Claims (10)
- 炭化水素系ガスの分解ガスにおける水素ガスの測定に使用される濃淡電池型水素センサであって、アルカリ土類金属の酸化物がドープされたαアルミナを基材とすると共にプロトン導電性をもつ固体電解質と、固体電解質の片面側に配置された基準物質が接触する第1電極と、固体電解質の他の片面側に配置され炭化水素系ガスの分解ガスが接触する炭素を基材とする第2電極とを有する炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサ。
- 浸炭処理に使用される浸炭用の炭化水素系ガスの分解ガスにおける水素ガスの測定に使用される濃淡電池型水素センサであって、アルカリ土類金属の酸化物がドープされたαアルミナを基材とすると共にプロトン導電性をもつ固体電解質と、固体電解質の片面側に配置された基準物質が接触する第1電極と、固体電解質の他の片面側に配置され炭化水素系ガスの分解ガスが接触する炭素を基材とする第2電極とを有する炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサ。
- 請求項1または請求項2において、固体電解質は、アルカリ土類金属の酸化物を0.01〜2.0mol%含むαアルミナを基材とすることを特徴とする炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサ。
- 請求項1〜請求項3のいずれか一項において、固体電解質は、アルカリ土類金属の酸化物を含むαアルミナを焼結して焼結体を得る工程と、前記焼結体を水素または水蒸気の存在下において700〜1300℃の温度領域において加熱して熱処理をする工程とを経て形成されていることを特徴とする炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサ。
- 請求項2〜請求項4のいずれか一項において、前記アルカリ土類金属の酸化物は酸化マグネシウムであることを特徴とする炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサ。
- 請求項1〜請求項5のいずれか一項において、第1電極と第2電極との間で発生した起電力を測定する起電力測定手段が設けられていることを特徴とする炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサ。
- 請求項1〜6のうちの一項において、前記第2電極は炭素を基材として形成され白金を含まないことを特徴とする炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサ。
- 請求項1〜7のうちの一項において、前記第2電極は、炭素粉末または炭素繊維で基材として形成されていることを特徴とする炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサ。
- 請求項1〜7のうちの一項において、前記第2電極は、炭素系の塊体を前記固体電解質の外面に擦り付けることにより形成されることを特徴とする炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサ。
- 請求項1〜9のうちの一項において、前記第1電極は、ニッケル、白金、金、パラジウム、炭素のうちの少なくとも1種を基材とすることを特徴とする炭化水素系分解ガス用の濃淡電池型水素センサ。
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