JP4143251B2 - 栄養強化食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂質として少なくとも多価不飽和脂肪酸を含有し、さらに少なくとも酸化を誘導するミネラルを含有しているにもかかわらず、多価不飽和脂肪酸の酸化劣化が抑制され保存性が向上した栄養強化食品及びその製造法に関する。
本発明の栄養強化食品は、多価不飽和脂肪酸及び酸化を誘導するミネラルを安定に含有しており、その他、脂質、タンパク質、糖質、ビタミン、ミネラルなどの栄養成分を含有する乳化食品であって、液状、固体状、粉末状などの種々の形態で用いられる。
【0002】
【従来の技術】
第6次改定日本人の栄養所要量には、ビタミン及びミネラルについて、国際的により多くの項目の設定がなされていることや、最新の科学的知見を踏まえて新たな項目が追加された。ミネラルについては、それまで設定されていたカルシウムと鉄に加えて、新たに、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、亜鉛、クロム、モリブデンが追加された。これらのミネラルは、ヒトが生命を維持していくために必須であり、乳幼児から高齢者にいたるまで、あるいは男女を問わず必要性が高い半面、不足しがちな成分でもある。したがって、これらの成分を毎日飲食する食品から摂取することが望ましいことは言うまでもなく、これらのミネラルを食品に強化していくことは、健康を維持していく上で重要なことである。
【0003】
一方、ドコサヘキサエン酸(DHA)に代表される多価不飽和脂肪酸を脂質成分として食品に強化することが盛んに行われている。DHA は、乳幼児の神経系の発達に必要不可欠であり、プロスタグランジンなどの前駆物質として恒常性の維持に重要な働きをするが、酸化劣化しやすいという欠点がある。
【0004】
例えば、脂質として多価不飽和脂肪酸を含有する食品に、鉄、銅、亜鉛などの酸化を誘導するミネラルを強化すると、これらのミネラルによって多価不飽和脂肪酸の酸化劣化が誘導され、食品の風味を損ない、なおかつ保存性をも低下させる。このような食品の代表として、乳化食品である乳児用調製粉乳を挙げることができる。乳児用調製粉乳は、鉄、銅、亜鉛などの酸化を誘導するミネラルを豊富に含有しているために、含有する多価不飽和脂肪酸が酸化劣化し、魚臭の発生、過酸化脂質の増加などの問題が生じる。
【0005】
乳化食品に添加したミネラルによる脂質の酸化誘導は、まず脂肪球界面にミネラルが吸着することから始まる。脂肪球界面領域には中性領域で負に荷電した物質が多く局在していて、乳化状態を安定に保っているために、正電荷を持つミネラルは脂肪球界面に吸着しやすくなる。一方、原料油脂中に存在していた過酸化脂質や乳化時にわずかに生じた過酸化脂質は、その極性の大きさから脂肪球界面領域に局在してくることとなるが、この過酸化脂質とミネラルの反応により、新たな過酸化脂質が生成してくる。そして、最終的に連鎖反応を繰り返しながら、脂肪球内部にまで酸化が進行することになる。
【0006】
乳児用調製粉乳における脂質酸化の抑制のために、従来はトコフェロ−ルやビタミンC、レシチンなどの様々な抗酸化剤を利用して、脂質の連鎖反応を抑制する措置がとられてきた(特開平4-346749号公報、特開平9-263784号公報など)。また一方では、ミネラルの触媒能を低減化する目的でクエン酸やリン酸などのキレ−ト剤、アミノ酸も利用されてきた(抗酸化剤の理論と実際、三しゅう書房(1984)、越智ら、日本栄養食糧学会誌、50(3) 、231(1997) など) 。しかし、このような努力によっても未だ十分な安定化は図られていない。
【0007】
一方、第一級アミノ基を2つ以上持つ脂肪族炭化水素であるポリアミンは、細胞増殖・分化促進作用、腸管成熟促進作用などの生理機能を発揮することが知られており(Dufour, C. et al.,Gastroenterology,95,112,(1988)、Buts J.P. et al, Digestive Diseases and Science, 38, 1091,(1993)など)、ポリミアンを添加してその生理機能を賦与した栄養組成物や医薬品などが提案されている(特開昭 58-131914号公報、特開昭 59-98015 号公報、特開平 6-305956 号公報など)。
【0008】
しかし、これらの栄養組成物や医薬品については、ポリアミンの生理機能にのみ着目しており、栄養組成物や医薬品に含まれる脂質の酸化劣化についての検討は全くなされていない上に、ポリアミンの正電荷を利用して、ミネラルが脂肪球界面に近づくことを防止することにより、食品の脂質酸化、品質劣化を効率的に抑制する試みは、全くなされていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、脂質として少なくとも多価不飽和脂肪酸を含有し、さらに少なくとも酸化を誘導するミネラルを含有するにもかかわらず、酸化を誘導するミネラルによる多価不飽和脂肪酸の酸化及び品質劣化を抑制した栄養強化食品を提供することを課題とする。また、本発明は、このような栄養強化食品の製造法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、脂質として少なくとも多価不飽和脂肪酸を含有し、さらに少なくとも酸化を誘導するミネラルを含有する栄養強化食品を製造するに際して、酸化を誘導するミネラルを含まない成分に、ポリアミンを添加して乳化した後に、酸化を誘導するミネラルを添加することで、多価不飽和脂肪酸の酸化が抑制され、保存性が向上した栄養強化食品を提供することができることを見出した。さらに、この乳化を、レシチン、酵素分解レシチン、グリセリン脂肪酸エステルあるいはそれらの誘導体及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種以上を乳化剤として添加して行うことで、多価不飽和脂肪酸の酸化をさらに抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、脂質として少なくとも多価不飽和脂肪酸を含有し、さらに少なくとも酸化を誘導するミネラルを含有する栄養強化食品であって、酸化を誘導するミネラルを含まない成分に、ポリアミンを添加して乳化した後に、酸化を誘導するミネラルを添加することにより得ることのできる、多価不飽和脂肪酸の酸化劣化が抑制され保存性が向上した栄養強化食品に関する。
本発明における前記乳化は、レシチン、酵素分解レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、あるいはそれらの誘導体及びショ糖脂肪酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上の乳化剤を添加して行うとよい。
また、本発明は、脂質として少なくとも多価不飽和脂肪酸を含有し、さらに少なくとも酸化を誘導するミネラルを含有する栄養強化食品の製造法において、まず酸化を誘導するミネラルを含まない成分にポリアミンを添加して乳化した後に、酸化を誘導するミネラルを添加して、多価不飽和脂肪酸の酸化劣化を抑制し保存性を向上させることよりなる栄養強化食品の製造法に関する。
【0012】
本発明は、正の電荷を持つポリアミンを添加して乳化物を調製することで、脂肪球に局所的な正電荷を帯びさせて、後から添加する酸化を誘導するミネラルの脂肪球界面への吸着を抑制することにより、多価不飽和脂肪酸の酸化劣化を抑制している。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の栄養強化食品は、タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルを主成分とするものである。このような栄養強化食品としては、具体的には、乳児用調製粉乳、フォロ−アップミルク、アレルギ−治療乳、アレルギ−予防乳などの乳幼児向け栄養組成物、液状乳、ドリンク類、ヨ−グルト類、栄養強化用錠剤などがある。
【0014】
タンパク質としては、カゼイン、乳清タンパク質濃縮物(WPC) 、乳清タンパク質分離物(WPI) 、β−カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリンなどの乳由来のタンパク質、卵由来のタンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質、魚肉タンパク質などを使用することができる。また、これらのタンパク質を加水分解したペプチドも使用することができる。さらには、特定の生理効果を付与する目的でタウリンやアルギニン、シスチン、グルタミンなどのアミノ酸を強化してもよい。タンパク質は、0〜90重量%の範囲で配合することが可能である。乳化剤を添加しない場合は、乳化力の強い乳由来のタンパク質や卵由来のタンパク質を使用することが望ましい。
【0015】
脂質としては、乳脂肪、ラード、牛脂、魚肉などの動物性油脂、大豆油、菜種油、えごま油、アマニ油、月見草油などの植物性油脂、カビなどの微生物などから抽出した多価不飽和脂肪酸高含有油脂などを使用することができ、二重結合が3個以上の多価不飽和脂肪酸を含有するように調製すればよい。脂質は 0.5〜95重量%の範囲で配合することが可能である。
【0016】
糖質としては、蔗糖、人工甘味料などの甘味成分、デキストリン、乳糖、オリゴ糖、糖アルコールなどを使用することができる。また、乳化特性を持つでん粉なども使用することもできる。糖質は0〜95重量%の範囲で配合することが可能である。
【0017】
酸化を誘導するミネラルとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガンが知られており、鉄剤としては硫酸鉄、クエン酸鉄、炭酸鉄、塩化鉄、乳酸鉄など、銅剤としては、硫酸銅、クエン酸銅、炭酸銅、グルコン酸銅、銅酵母など、亜鉛剤としては、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛など、マンガン剤としては、硫酸マンガンなどを使用することができる。
これらの酸化を誘導するミネラルは、水に溶解しておき、酸化を誘導するミネラルを含まない成分にポリアミンを添加し、乳化して得られた乳化物に添加すればよい。
【0018】
酸化を誘導するミネラル以外のミネラルやビタミンとしては、「日本国際酪農連盟発行、乳幼児食品を含む特殊用途食品の CODEX規格及び関連衛生作業規則、CAC/VOL.IX−第1版及びSupplement 1,2,3,4(1993)」、「CODEX ALIMENTARIUS, Vol. 4. Foods for special uses(including foods for infants and children),2nd edition, Joint FAO/WHO Food Standard Programme CODEX ALIMENTARIUS COMMISSION(1994) 」、食品衛生法に基づく指定添加物 (施行規則別表第2に収載の添加物)及び既存添加物(既存添加物名簿に記載の添加物)記載のビタミン、ミネラルを使用することができる。具体的には、ビタミンA, B, C, D, E, K、葉酸、パントテン酸、β−カロチン、ビオチン、イノシトール、さらにはカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リンなどを挙げることができる。
これらのミネラル及びビタミンについては、乳化の前に添加してもよいし、酸化を誘導するミネラルと一緒に添加してもよい。
【0019】
ミネラルおよびビタミンの所要量は、種類によって異なるので、1 日あたりの摂取量を考慮した上で配合すればよい。ミネラルは過剰に摂取すると毒性を発現する場合があるので、その配合量には注意する必要がある。
【0020】
ボリアミンについては、白子から調製したポリアミン高含有素材、あるいは酵母や牛乳を原料にしたポリアミン含量を高めた素材を使用することができる。これら素材の調製方法としては、特開平8-238094号公報、特開平10-52291号公報などに記載の方法を利用することができる。
ポリアミンの添加量については、脂質に含まれる多価不飽和脂肪酸の割合及び種類、ミネラルの添加量および種類により必要量が変わってくるため、栄養強化食品に含有する脂質やミネラルに応じて適宜決定すればよい。
ポリアミンの添加方法としては、ポリアミンを水に溶解・分散した後、乳化時に添加するか、あるいはポリアミンを油脂中に溶解・分散させてから乳化する方法のいずれでも良いが、油脂中に溶解・分散する方が望ましい。
【0021】
さらに、ポリアミンの種類としては、プトレッシン、カダベリンなどのジアミン類、スペルミジンなどのトリアミン類、テルミン、スペルミンなどのテトラアミン類、さらにはペンタアミン類、ヘキサアミン類が利用できる。
【0022】
本発明の栄養強化食品は、乳化剤を配合することにより、ポリアミンの抗酸化効果をより高めることができるため、乳化剤を配合することが好ましい。
乳化剤としては、レシチン(大豆レシチン、卵黄レシチン、菜種レシチン、アマニレシチン、乳レシチンなど)、またはそれらの酵素分解物(酵素分解レシチン)、さらにはグリセリン脂肪酸エステルあるいはそれらの誘導体(モノグリセリド、ジグリセリド、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸などを持つ有機酸モノグリセリド、モノグリセリドを重合させたポリグリセリドなど)、ショ糖脂肪酸エステルなどを使用することができる。乳化剤を利用することで、ポリアミンが脂肪球界面に配位しやすくなり、脂質の酸化が相乗的に抑制されるようになる。乳化剤の添加量は、食品の種類あるいは形態によって異なるが、クリーム分離や脂肪分離を抑制するために油脂 100g に対して 0.1〜10g が望ましい。
その他、安定剤なども目的とする食品の形態によって適宜使用することができる。
【0023】
以下、試験例および実施例によって本発明を説明する。
【試験例1】
(酸化を誘導するミネラルの添加時期による保存性の違い)
酸カゼイン 50kg 、WPC 250kg 、乳糖 550kgを溶解混合し、これに水溶性ビタミン1kg と脂溶性ビタミン 2kg、スペルミン濃縮物 1kg、レシチン 2kgを分散・溶解した調製脂肪 250kgを混合し、高圧ホモゲナイザー (三和機械社製、H20-H2) で50℃にて乳化した。常法により殺菌、濃縮後、銅、鉄、亜鉛を含むミネラル溶液を添加し、噴霧乾燥して乳児用調製粉乳1を製造した。対照として、全く同一組成で、乳化前にミネラル溶液を添加した乳児用調製粉乳2を製造した。なお、これらの粉乳 100g 中には、それぞれ 300μg 、6.2mg 、3 mgの銅、鉄、亜鉛が含まれていた。
これらの粉乳について、開缶状態で35℃にて放置し、経時的にサンプリングして粉乳の過酸化物価(POV) を測定した。その結果を表1に示す。
表1によると、乳化前にミネラルを添加した場合に比べて、乳化後にミネラルを添加することで、脂質の酸化劣化の指標であるPOV の上昇がいちじるしく抑制された。
【0024】
【表1】
【0025】
【試験例2】
(ポリアミンの種類による抗酸化効果の相違)
5%カゼイン溶液 200mlにスペルミン、スペルミジン、カダベリン、プトレッシン (何れも Sigma社製) 1mg 及び市販の精製カツオ油 (植田製油社製、DHA 含量20重量%、活性炭処理によりトコフェロールは除去) 10g を添加し、高圧ホモゲナイザー (エスエムデー社製、GM-1) で50℃にて乳化した。得られた乳化液に硫酸銅(CuSO4・5H2O (国産化学社製))を 1mg (Cu量としては 250μg)添加した後、水で全量が 1kgになるよう調整し、40℃のオーブン中で酸化を誘導し、経時的にDHA の減少量をガスクロマトグラフィー (日本HP社製、HP-5890)で分析した。対照としてポリアミン無添加のものを同様にして調製し、分析した。その結果を図1に示す。
【0026】
これによると、ポリアミンの種類により差はあるものの、ポリアミン添加群ではいずれもDHA の減少が抑制された。ポリアミンには、トコフェロールの再生効果があることが知られている (日本油化学会誌、46(1),3,1997) が、本試験例ではトコフェロールをあらかじめ除去しているため、DHA の減少抑制効果は、銅による酸化誘導を抑制したことによるものと考えられる。
【0027】
【試験例3】
(ポリアミンの添加量による抗酸化効果の相違)
5重量%WPC 溶液 200mlにスペルミン (Sigma 社製) 0.001〜1000mg及び市販の精製カツオ油 (植田製油社製、DHA 含量20重量%) と大豆油 (植田製油社製) の混合物 (カツオ油: 大豆油=1:9 、活性炭処理によりトコフェロールは除去) 10g を添加し、高圧ホモゲナイザー (エスエムテー社製、GM-1) で、50℃にて乳化した。得られた乳化液に硫酸鉄 (国産化学社製) を 1.35mg(鉄量としては500 μg ) 添加した後、水で1kg に調整し、40℃のオーブン中で酸化を誘導し、2日後の POVを測定した。その結果を図2に示す。
これによると、油脂1g当りのスペルミンが 0.5μg から抗酸化効果が現れ、5 mgより多くてもその効果は変わらなかった。このことはポリアミンの添加量に効果的な範囲が存在するということを示している。
【0028】
【試験例4】
(クリームに吸着した鉄量の分析)
試験例2で得られた乳化物30mlを4℃で遠心分離 (30,000×g 、30分間) し、クリームを分取した。クリームは全量灰化した後、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP) 法 (Leeman Labs 社製、PS3000UV) にて鉄量を測定し、クリームへの鉄の吸着率を求めた。その結果を図2に示す。
これによると、クリームに吸着した鉄量は、スペルミンの添加量に依存して少なくなっており、鉄の乳化状態にある脂質への吸着を防止することによって、脂質に含まれる多価不飽和脂肪酸の酸化を防止していることが示唆された。
【0029】
【試験例5】
(ポリアミンと乳化剤の相乗効果)
10重量%カゼイン溶液 100mlにスペルミジン(Sigma社製) 10mgを溶解し、市販の精製マグロ油 (植田製油社製、DHA 含量27重量%、活性炭処理によりトコフェロールを除去)20g に乳化剤として大豆レシチン (太陽化学社製) 0.2g、2gをそれぞれ添加したものを添加し、高圧ホモゲナイザー (エスエムテー社製、GM-1) で 50 ℃にて乳化した。得られた乳化液に硫酸銅(CuSO4・5H2O)2mg (銅量としては 500μg) を添加した後、水で全量が1kg となるように調整し、表2に示す3種類の乳化物を得た。また、対照としてスペルミジン、大豆レシチンともに添加していない乳化物を調製した。これらの乳化物について、45℃のオーブン中で酸化を誘導し、経時的にサンプリングしてPOV を測定した。その結果を表2に示す。
これによると、スペルミジン単独に比べて、レシチンを併用した場合には POVの上昇が抑制されており、この効果は、ポリアミンと乳化剤が共存するとポリアミンが脂肪球界面領域に局在しやすくなり、ミネラルによる脂質の酸化誘導が顕著に抑制されるためと考えられる。
【0030】
【表2】
【0031】
【実施例1】
(乳児用調製粉乳の製造)
脱脂乳 192kg、WPC6kg、乳糖35kgを溶解混合し、これに水溶性ビタミン (ビタミンB1、B2、B12 、C 、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、コリン及びイノシトール) 0.8kg 、脂溶性ビタミン (ビタミン A、 D、 E、K 及びβ−カロチン) 0.5kg 、スペルミン10g 及び大豆レシチン 0.3kgを分散・溶解した調製脂肪 (大豆油、やし油、精製カツオ油、月見草油、パーム油) 19kgを混合し、高圧ホモゲナイザー (三和機械社製、H20-H2) で50℃にて乳化した。得られた乳化液を常法により殺菌、濃縮後、銅、鉄、亜鉛を含むミネラル溶液を添加し、噴霧乾燥して、本発明の乳児用調製粉乳を製造した。なお、この粉乳 100g 中には、スペルミン12.5mg、銅、鉄、亜鉛はそれぞれ 312μg 、 6mg、2.6mg 含まれていた。
このようにして得られた本発明品は、37℃で1ヶ月保存しても、不快な魚臭の発生は認められなかった。
【0032】
【実施例2】
(ドリンクの製造)
魚油と菜種油の混合油脂 1kgにビタミンA、E、大豆レシチン、有機酸モノグリセリドを溶解し、5gのスペルミジンを水に溶解した溶解液10kgに添加して、高圧ホモゲナイザー (エスエムテー社製、GM-1) で50℃にて乳化した。この乳化液に70% D- ソルビット 3kg、蜂蜜 4kg、オレンジジュース20kgおよび硫酸鉄を添加し、全量が100kg になるよう水で調整した後、加熱殺菌して、本発明のドリンクを製造した。なお、このドリンクには、鉄 3mg、大豆レシチン50mg、有機酸モノグリセリド25mgが含まれていた。
このようにして得られた本発明品は、室温で3ヶ月間以上保存しても、不快な魚臭の発生は認められなかった。
【0033】
【実施例3】
(飲むヨーグルトの製造)
加熱殺菌して42℃に冷却した脱脂乳95重量部に、乳酸菌スターターを5重量部添加し、4時間発酵させた。この培養物70重量部に、別に加熱殺菌して調製しておいた0.4 重量部のハイメトキシルペクチン、スペルミンを分散させた1重量部の魚油、0.1 重量部の乳レシチン、安定剤28.5重量部を添加し、乳化した。これに硫酸銅と硫酸鉄を添加し、本発明の飲むヨーグルトを製造した。なお、このヨーグルト100g中には、スペルミン 2.5mg、銅10μg 、鉄 1mgが含まれていた。
このようにして得られた本発明品は、10℃で1 カ月保存しても、不快な魚臭の発生は認められなかった。
【0034】
【実施例4】
(栄養剤の製造)
マグロ油1重量部、ポリアミン 0.002重量部、カゼイン 2重量部、モノグリセリド及びリゾレシチン0.03重量部を水に溶解してから乳化し、さらにデキストリン10重量部、乳糖10重量部、硫酸鉄0.027 重量部 (鉄として0.01重量部) を加えて噴霧乾燥を行った。噴霧乾燥物10重量部に香料0.5 重量部、でん粉10重量部、残りを乳糖で100 重量部に調整し、常法により打錠して本発明の栄養剤タブレットを製造した。
このようにして得られた本発明品は、常温で 1年間保存しても、不快な魚臭の発生は認められなかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の栄養強化食品は、脂質として少なくとも多価不飽和脂肪酸を含有し、さらに少なくとも酸化を誘導するミネラルを含有しているにもかかわらず、多価不飽和脂肪酸の酸化劣化が抑制され、長期間安定に保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ポリアミンの種類による抗酸化効果の相違を示す。
【図2】ポリアミンの添加量による抗酸化効果及びクリームへの鉄の吸着率の相違を示す。
Claims (3)
- 脂質として少なくとも多価不飽和脂肪酸を含有し、さらに少なくとも酸化を誘導するミネラルを含有する栄養強化食品であって、酸化を誘導するミネラルを含まない成分にポリアミンを添加して乳化した後に、酸化を誘導するミネラルを添加することにより得ることのできる、多価不飽和脂肪酸の酸化劣化が抑制され保存性が向上した栄養強化食品。
- 乳化を、レシチン、酵素分解レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、あるいはそれらの誘導体及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種以上の乳化剤を添加して行う請求項1の栄養強化食品。
- 脂質として少なくとも多価不飽和脂肪酸を含有し、さらに少なくとも酸化を誘導するミネラルを含有する栄養強化食品の製造法において、まず酸化を誘導するミネラルを含まない成分にポリアミンを添加して乳化した後、酸化を誘導するミネラルを添加して、多価不飽和脂肪酸の酸化劣化を抑制し保存性を向上させることを特徴とする栄養強化食品の製造法。
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