JP4190663B2 - ゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムとの接着性が改善され、強力および耐疲労性にも優れたゴム補強用ポリエステル繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、またはこれらを主体とするポリエステル繊維は優れた物理的、化学的性質を有し、各分野で多用されている極めて有用な繊維であり、ゴムの補強材料としても非常に好適な素材である。しかしながら、ポリエステル繊維はゴムとの接着性が良好でないといった欠点を有しているため、タイヤ、ベルトなどの補強材用途では、これまでポリエステル繊維とゴムとの接着性を改良するため、エポキシ化合物などの接着性向上剤や、その硬化剤を付着させた繊維が提案されている。
【0003】
例えば、紡出した糸条にエポキシ化合物の硬化剤として脂肪族アミンアルキレンオキサイド化合物を含有させた紡糸油剤を付与し、熱延伸後、エポキシ化合物と該硬化剤とを含有させた仕上油剤で処理した繊維(特開平8−218228号公報)、また、紡糸油剤はこれと同様のものを使用し、仕上油剤としてさらにゴムとの接着性を上げるため、エポキシ化合物と該硬化剤に加え、ブロックドイソシアネート化合物およびシランカップリング剤を配合した仕上油剤で処理した繊維(特開平9−158053号公報)が提案されており、これらの繊維を撚糸してコードとし、RFL処理を行うことによりゴムとの接着性に優れたゴム補強材が得られるとされている。
【0004】
しかし、上記の硬化剤はエポキシ化合物との反応性が低いため、十分なゴムとの接着性を得ようとすれば、該硬化剤の付着量を多くする必要があり、その結果上記のポリエステル繊維は非常に硬いものしか得られない。さらにこのポリエステル繊維をコードとし、RFL処理することによって、該コードはより硬くなり、処理前と比較して強力が著しく低下しており、これをゴム中に埋め込み疲労性を測定したところ耐疲労性も劣っているといった問題がある。かかる問題に対して、該硬化剤の付着量を減らすことにより、RFL処理後のコードが硬くなるのを抑制し、強力やゴム中の耐疲労性が低下をある程度抑えることができるものの、ゴムとの接着性が不十分となり、両方を同時に満足するものが得られない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解決し、RFL処理を行うだけで、ゴムとの接着性が改善され、かつ、強力とゴム中での耐疲労性にも優れたゴム補強用繊維が得られるポリエステル繊維の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリエチレンイミンとエポキシ化合物とを併用して付着させた繊維は、ポリエチレンイミンが極少量でもエポキシ硬化剤として優れた性能を発揮し、RFL処理を行うだけで優れたゴムとの接着性を示し、かつ、従来使用されている硬化剤とエポキシ化合物とを併用して付着させたものと比較してRFL処理後のコードは硬くなく、強力およびゴム中での耐疲労性も著しく改善されていることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0007】
かくして本発明では、ポリエステル繊維を溶融紡糸するに際し、ポリエチレンイミンをあらかじめ有機酸にてpH5〜6に中和して紡糸油剤に添加し、該紡糸油剤を用いて紡出した糸条に該繊維重量に対して、0.0001〜0.030重量%となるようにポリエチレンイミンを付与し、熱延伸した後、該繊維重量に対して0.05〜0.40重量%のエポキシ化合物を付与することを特徴とするゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法が提案される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明においてポリエステル繊維とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびこれらを主体とするポリエステルからなるマルチフィラメントであり、分子量、デニール、フィラメント数、断面形状、糸質物性、微細構造、添加剤含有の有無、ポリマー性状(末端カルボキシ基濃度)は特に限定されない。
【0009】
本発明においては、上記のポリエステル繊維の表面に、ポリエチレンイミンおよびエポキシ化合物の両方が、それぞれ後述する付着量で併用して付着されていることが、RFL処理して、ゴムとの接着性、強度およびゴム中での耐疲労性に優れたコードを得る上で肝要である。
【0010】
上記のポリエステル繊維においては、ポリエチレンイミンが極少量でエポキシ化合物の硬化剤として優れた性能を発揮し、該繊維表面に強固にエポキシ化合物を固着でき、その結果該繊維とゴムとの接着性を著しく向上させることができる。また、ポリエチレンイミンを後述する量付着させた繊維は、従来使用されている硬化剤をエポキシ化合物と併用して付着させた繊維と比べて硬くなく、さらに該繊維をコードとし、これをRFL処理した後のコードを比較しても従来の硬化剤を用いたもののように硬くならないため、強度およびゴム中での耐疲労性を著しく改善することができるのである。
【0011】
本発明で使用するポリエチレンイミンは分子量が高いものが耐熱性に優れていおり、例えば、ポリエチレンイミンを紡糸工程で付与するような場合は、続いて行われる延伸工程で、延伸ローラや熱処理ローラなどにポリエチレンイミンの熱分解物がほとんど付着しないため特に好ましい。このため、ポリエチレンイミンの分子量は30万以上が好ましく、特に好ましくは40万以上である。
【0012】
ポリエチレンイミンの付着量は、繊維重量に対して0.0001〜0.030重量%、好ましくは0.0005〜0.020重量%とする必要がある。該付着量が0.0001重量%未満では、エポキシ化合物の硬化剤としての効果が低く、結果としてゴムとの接着性が不十分となる。逆に、該付着量が0.030重量%を越えると、RFL処理の際コードがアミン分解によって劣化し、また、該処理後のコードも硬くなり、その結果、強度が低下し耐疲労性も十分なものが得られない。
【0013】
また、本発明で使用するエポキシ化合物としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、へキサントリオール、ソルビトールトリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリンなどの脂肪族多価アルコール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのフェノール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物などのグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキシルメチル3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレートなどの過酢酸などで不飽和結合部を酸化して得られるエポキシ化合物などを挙げることができる。
【0014】
かかるエポキシ化合物のうち市販されているものの具体例として、例えば、グリセロールポリグリシジルエーテル(「デナコールEX−313」、「デナコールEX−314」)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(「デナコールEX−512」)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(「デナコールEX−421」)、レゾルシンジググリシジルエーテル(「デナコールEX−201」)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(「デナコールEX−611」、「デナコールEX−614」)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(「デナコールEX−811」)などが挙げられる(かっこ内はナガセ化成工業社から市販されている製品の商品名を示す)。
【0015】
エポキシ化合物の付着量は、繊維重量に対して0.05〜0.40重量%、好ましくは0.10〜0.30重量%とする必要がある。該付着量が0.05重量%未満では、ゴムとの接着性が不十分であり、逆に、0.40重量を越えるとRFL処理後のコードが硬くなり、強度およびゴム中での耐疲労性が低下する。
【0016】
上記のポリエチレンイミンおよびエポキシ化合物をポリエステル繊維の表面に付着させるには、従来公知の方法によって行うことができるが、延伸ローラや熱処理ローラなどの汚れの付着低減や、付与する剤の調製のし易さ・安定性などの観点から、紡出した糸条にポリエチレンイミンを付与し、熱延伸した後、エポキシ化合物を付与する方法が特に好ましい。
【0017】
上記方法を採用する場合、ポリエチレンイミンの付与は、例えばポリエチレンイミンを平滑剤、乳化剤などと共に水エマルジョンとした紡糸油剤を紡出した糸条に付与する方法により行なえば良い。また、ポリエチレンイミンと共に紡糸油剤に配合しうる成分としては、鉱物油、脂肪酸エステル類などの平滑剤、高級アルコール類またはエチレンオキサイド(EO)付加物などの乳化剤、アニオン系、カチオン系の界面活性剤などの帯電防止剤などが挙げられる。この紡糸油剤の調製する際、ポリエチレンイミンは塩基性が非常に高く、紡糸油剤にそのまま添加すると塩析効果により沈殿物が生ずる場合があるため、ポリエチレンイミンを予め酢酸などの有機酸でpHを5〜6に中和して紡糸油剤に添加することが特に好ましい。
【0018】
また、エポキシ化合物の付与は、ストレートか、あるいは、前述の平滑剤、界面活性剤などと共に水エマルジョンの形で付与すれば良い。
【0019】
なお、上記の紡糸油剤、エポキシ化合物あるいはエポキシ化合物を配合したエマルジョンの付与は、公知の方法によって行うことができ、特にローラ式給油法やノズル式給油法が好ましく採用される。
【0020】
なお、上記方法によらず、ポリエチレンイミンを紡糸油剤に含有せず、エポキシ化合物と共にエマルジョンとして熱延伸後の糸条に付与しても良い。また、ポリエチレンイミンを含有した紡糸油剤を付与し、さらに上記と同様に熱延伸後にもエポキシ化合物と共にポリエチレンイミンを再度付与してもかまわない。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により発明を詳細に説明する。なお、実施例における性能評価は、次の方法によって行った。
【0022】
(1)コードの強力
引張荷重測定器(島津製、オートグラフ)を用い、JIS L−1074−64に従って測定した。
【0023】
(2)製糸性
延伸ローラーおよび熱処理ローラーに熱分解物が堆積し、延伸困難となり、清掃を行う必要となるまでの時間により3段階で評価した。
○:2日以上、△:8時間〜2日、×:8時間未満
(3)コード硬さ
ガーレ式硬さ測定機(テスター産業製)を用い、JIS L−1096−6.20に従って測定し、相対評価:○=良好、△=やや不良、×=不良でもって示した。
【0024】
(4)接着性評価
JIS L1017の接着力−A法(Tテスト)に準じて評価した。
【0025】
(5)疲労性評価
未加硫ゴムに接着処理コード1本を埋め込み150℃、30分、50kg/cm2の条件で加硫すると同時にゴムに接着させた試験片を用い、JIS L−1017のディスク疲労(グッドリッチ法)に従って、伸張率:+6.0%、圧縮率:−12.6、疲労回数:100万回、室温下の条件で行った時の疲労前後の強力維持率を評価した。
【0026】
[実施例1〜6,比較例1〜6]
(a)紡糸油剤A〜F
表1に示す組成においてポリエチレンイミンを除いた油剤組成分を50℃に加温し、50℃の軟化水中に添加しながら攪拌した。さらに表1の組成となるように秤取ったポリエチレンイミンを酢酸で中和したものをこれに添加し攪拌した後、室温に冷却し10%エマルジョンとした。
【0027】
(b)紡糸油剤G〜H
表1に示す組成の油剤成分を50℃に加温し、50℃の軟化水中に添加しながら攪拌後、室温に冷却し10%エマルジョンとした。
【0028】
【表1】
【0029】
(c)ポリエステル繊維の製造
固有粘度(35℃オルソクロロフェノール溶媒にて測定)0.97のポリエチレンテレフタレートチップより溶融紡糸方法により下記要領で1000d/192fのヤーン得た。紡糸口金より紡出され、冷却固化した192fの未延伸糸条に、上記の方法で調整した紡糸油剤を繊維100重量部に対して油剤付着分0.4重量部となるようにローラ給油法で付与した後、60℃の第1ローラで引取り、第1ローラと第2ローラとの間で3.5倍に第1段延伸し、さらに、第2ローラと220℃の第3ローラとの間で合計延伸倍率が6.1倍になるように第2段延伸し、引き続き第3ローラと第4ローラとの間で3%のリラックスを与えるとともに仕上油剤であるエポキシ化合物(デナコールEX−313)を繊維100重量部に対して油剤付着分が所定量となるように計量ノズル式給油法で付与し、3000m/分の速度で巻取った。
【0030】
(d)コードの処理
上記の方法で得られた1000d/192fのヤーン2本を下撚490回/m、上撚490回/mの撚数で撚糸してコードとした。このコードをRFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着液)に浸透し、100℃で2分間乾燥した後、230℃で2分間熱処理した。
【0031】
以上より得られたRFL処理後のコードのゴムとの接着性、強力およびゴム中での疲労性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】
以上のように本発明のポリエステル繊維からは、RFL処理を行うだけで、ゴムとの接着性が良好であり、かつ、強力およびゴム中での耐疲労性が著しく改善された補強用繊維を得ることができ、該繊維はタイヤ、ベルト、ホースなどの補強材料として極めて優れた性能を発揮する。また、該ポリエステルの製造方法として、紡出した糸条にポリエチレンイミンを付与し、熱延伸後エポキシ化合物を付与する方法を採用すれば、延伸ローラや熱処理ローラなどに汚れが発生し難く、安定した生産が可能となるといった効果を奏するものである。
Claims (3)
- ポリエステル繊維を溶融紡糸するに際し、ポリエチレンイミンをあらかじめ有機酸にてpH5〜6に中和して紡糸油剤に添加し、該紡糸油剤を用いて紡出した糸条に該繊維重量に対して、0.0001〜0.030重量%となるようにポリエチレンイミンを付与し、熱延伸した後、該繊維重量に対して0.05〜0.40重量%のエポキシ化合物を付与することを特徴とするゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法。
- ポリエチレンイミンの分子量が30万以上である請求項1記載のゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法。
- 有機酸が酢酸である請求項1または2記載のゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法。
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