JP4267713B2 - 電力ケーブルの劣化診断方法 - Google Patents

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Description

技術分野
この発明は、試験用の電源設備として格別の高調波対策を行うことなく精度の良い劣化診断を行うことができるゴム・プラスチック絶縁電力ケーブルの劣化診断方法に関する。
背景技術
従来、ゴム・プラスチック絶縁電力ケーブル(以下、ケーブルという)に商用周波交流電圧を印加して、その接地線電流中に含まれる損失電流成分を測定して劣化診断を行う方法が採られていた。この場合、特に損失電流波形に含まれる第3高調波成分に着目して劣化診断を行う場合が殆どであった。
上記した従来の劣化診断方法には次のような問題があった。
(1)従来技術の第3高調波による劣化診断は、印加電圧波形に含まれる高調波が非常に抑制された場合には、高感度の測定が可能である。しかし、印加波形に高調波、特に第3高調波が重畳している場合、これが損失電流波形にノイズとして作用することがわかってきた。印加波形中に含まれる高調波によって生じる損失電流中の高調波信号は、印加波形中における基本波に対する比率に対して、その高調波次数の2乗で強調されるため、第3高調波は9倍になって損失電流波形にノイズとして混入することになる。これにより、劣化状態の正確な診断が妨げられる。
その対策としては、高調波を十分に抑制した電源を用いれば良いわけであるが、一般に高調波含有比率を低減した電源を実現するためには試験回路の高圧部にフィルタを接続したり、高調波が発生しにくいように内部構造に工夫を与えたトランスを用いるとか、或いは元電源として高調波含有比率が抑制された正弦波発電機を使用する必要があり、その実現にはコストがかかると同時に、試験設備の大きさとしてもかなり大きなものとなって、試験の実施が容易でなくなる問題点があった。
(2)従来より交流電圧を印加して行う種々の非活線化診断技術が提案されているが、従来から提案されているいずれの技術も、診断対象ケーブルが使用される対地電圧における測定を行うものであった。これらの従来技術では、交流電圧印加のために試験用変圧器を使用して、電圧印加を行うのが通例であった。
対地電圧は、例えば33kV線路の場合は19.1kV、66kV線路の場合は、38.1kVであるため、このような電圧を実線路に布設されたケーブルに印加するためには、大容量のトランスが必要となる。このようなトランスは発生電圧がそれほど高いものではないにもかかわらず、印加対象線路の静電容量が大きいために、設備重量が非常に大きくなってしまう問題点がある。
例えば、線路の静電容量が2.5μFの線路に19.1kVの印加が可能な20kVトランスを設計してみると、総重量が5tを越えてしまう。
一般に電力ケーブル線路は過密な都市部の地下に建設されるケースが多いため、こういつた大型設備を試験のために持ち込むのは極めて困難なケースも存在する。
また、これら地下送電線にケーブルが使われる場合、ケーブルの終端接続部はガス絶縁開閉器(GIS)に直結された構造のものがよく用いられる。これは高圧部分が絶縁性に優れる六弗化硫黄(SF6)ガス絶縁されたケース内に収納される。
このため、ビルの地下などに設置された変電所の室内には、通常高圧露出部が存在せず、絶縁離隔距離を考えずに機器を設置することができ、変電所自身を小さくすることが可能になつている。
しかし、このことが逆に、ケーブル線路の劣化診断のために電圧を外部から印加することを妨げているのも事実である。高圧露出部がないために、ケーブルの終端接続部に電圧を印加しようとする場合、GIS内部のSF6ガスを一旦回収し、試験用の電圧印加用アダプタを取付て再びSF6ガスを充填して測定を行い、試験終了後には改めてガス回収を行つて電圧印加用アダプタを取り外し、GISを復帰する、という、極めて煩雑な手続きを要する。
これは単に時間のみならずコストもかかるものである。一般的に、劣化診断を1回行うのに百万円程度の費用が必要であるが、GISの前記ガス処理にもほぼ同等の金額を要する。すなわち、本来の測定に要する費用と同額の付帯費用が発生してしまうために、経済性か極めて悪いという事態を生んでいる。
以上の問題を解決するには、測定時にケーブルに印加する電圧を低くすればよい。これにより、トランスの容量を小さくでき、トランスの小型化を達成することができる。しかしながら、測定電圧を低くすることで得られる劣化信号は小さくなるため、信号検出感度が悪化する問題点があった。
このように、従来技術においては、試験用変圧器が大型となり、都市内での使用が不自由でその運用に莫大なコストがかかること及び、GIS線路に電圧を印加するため必要なガス処理のコストがかかることが問題であった。これを、測定電圧の低電圧化によって設備を小型化すると劣化信号の検出感度が悪くなり、実用性を失ってしまう。
本発明は上記(1)(2)に記した事情に鑑みなされたものであって、本発明の第1の目的は、試験用の電源設備として格別の高調波対策を行うことなく、精度の良い劣化診断を行えるようにした電力ケーブルの劣化診断方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、信号の検出感度を実用的なレベルで維持しつつ、劣化診断に要するトータルコストを大幅に減らすことができる電力ケーブルの劣化診断方法を提供することである。
発明の開示
本発明は上記課題を次のようにして解決する。
(1)電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1を印加した後に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、その電流波形およびその中に含まれる周波数成分を調べ、次いで、前記第1の電圧を同じ値に保ったままで、周波数f1の2倍の周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2)を更に重畳印加した場合の損失電流成分を測定し、損失電流中に含まれる周波数成分の内、f2+2×f1又は|f2−2×f1|の周波数成分に着目して劣化診断を行う。
電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1を印加した後に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、その電流波形およびその中に含まれる周波数成分を調べ、
次いで、前記第1の電圧を同じ値に保ったままで、周波数f1のn分1倍(nは3以上の整数)の周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2)を更に重畳印加した場合の損失電流成分を測定し
損失電流中に含まれる周波数成分の内、f2+2×f1又は|f2−2×f1|の周波数成分に着目して劣化診断を行う。
)電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1を印加した場合に電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流成分を測定し、次いで、上記容量性成分を除去する操作をそのままに静置した状態で、周波数f1を持つ第1の電圧V1に変えて、周波数f1を持つ第1の電圧と同一の電圧に周波数f1の2倍である周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2)を合成した電圧波形を印加した場合の損失電流成分を測定し、損失電流中に含まれる周波数成分の内、f2+2×f1又は|f2−2×f1|の周波数成分に着目して劣化診断を行う。
電力ケーブルに、周波数f1を持第1の電圧V1を印加した場合に電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流成分を測定し、
次いで、上記容量性成分を除去する操作をそのままに静置した状態で、周波数f1を持つ第1の電圧V1に変えて、周波数f1を持つ第1の電圧と同一の電圧に周波数f1のn分1倍(nは3以上の整数)の周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2)を合成した電圧波形を印加した場合の損失電流成分を測定し、
損失電流中に含まれる周波数成分の内、f2+2×f1又は|f2−2×f1|の周波数成分に着目して行う。
)電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1と、第1の電圧の2倍の周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2)を重畳印加した場合に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、損失電流中に含まれる周波数成分の内、第1の電圧の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分を測定することにより、電力ケーブルの劣化診断をする方法であって、
上記第1の電圧V1の2倍の周波数を持つ上記第2の電圧V2の、第1の電圧V1に対する位相を変化させ、上記第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分の大きさの変化の大小を測定することによってケーブルの劣化程度を診断する
ことを特徴とする電力ケーブルの劣化診断方法。
)電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1と、第1の電圧の2倍の周波数f2を持つ第2の電圧をV2(但しV1≧V2)を重畳印加した場合に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、損失電流中に含まれる周波数成分の内、第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分を測定することにより、電力ケーブルの劣化診断をする方法であって、第2の電圧V2の第1の電圧V1に対する重畳位相θv2と、測定される損失電流中の上記第4高調波電流成分の第1の電圧V1に対する重畳位相θ4との関係から、電力ケーブルの劣化程度を診断する。
)上記()において、第2の電圧V2の第1の電圧V1に対する重畳位相θv2と、損失電流中の上記第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分の第1の電圧V1に対する重畳位相θ4の関係が、一定の傾きの劣化程度に応じて定まる直線で近似されることを利用して、ある電圧重畳状態下において測定された上記第4高調波電流成分の重畳位相θ4と、そのときの第2の電圧V2の重畳位相θv2とから電力ケーブルの劣化程度を診断する。
)電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1と、第1の電圧の2倍の周波数f2を持つ第2の電圧をV2(但しV1≧V2)を重畳印加した場合に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、損失電流中に含まれる周波数成分の内、第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分を測定することにより、電力ケーブルの劣化診断をする方法であって、損失電流中の上記第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分の大きさI4と、この第4高調波電流成分の第1の電圧V1に対する重畳位相θ4の両者を合わせて評価することにより、ケーブルの劣化程度を診断する。
)電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1と、第1の電圧の2倍の周波数f2を持つ第2の電圧をV2(但しV1≧V2)を重畳印加した場合に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、損失電流中に含まれる周波数成分の内、第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分を測定することにより、電力ケーブルの劣化診断をする方法であって、第1の電圧V1と第2の電圧V2の比率を同じに保ったまま、少なくとも2種類の電圧値における測定を行い、得られた第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分の大きさI4と、この第4高調波電流成分の第1の電圧V1に対する重畳位相θ4の電圧特性を評価することにより、ケーブルの劣化程度を診断する。
(10)上記(1)〜()において、第1の電圧V1を商用周波電圧とする。
以上のように、電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1と、周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2とする)を重畳印加した場合に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数成分fの容量性成分を除去することで得られる損失電流成分を測定し、その電流成分及びその中に含まれる周波数成分を調べ、それに含まれる周波数f1,f2の成分及びそれらの第3高調波成分以外の周波数成分により劣化診断を行うことにより、電源中の高調波の影響を受けることなく、正確なケーブルの劣化診断を行うことができる。また、上記周波数f1,f2を選定することにより、大容量の電源設備を用いることなく、精度の高い劣化診断が可能となる。
さらに、必要十分な信号検出感度を維持し、かつ汎用的に可搬型の試験設備を用いて劣化診断ができるようになるため、現場運用性に富む、機動性の良い劣化診断方法を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、f1、f2と劣化信号の周波数を示す図である。
第2図は、高調波含有率を抑制した50Hz/12.7kV交流電圧の周波数分析結果を示す図である。
第3図は、従来の劣化診断方法における損失電流測定回路の一例である。
第4図は、高調波含有率を抑制した50Hz/12.7kV交流電圧を劣化ケーブルに印加した際に測定された損失電流の周波数分析結果を示す図である。
第5図は高調波含有率を抑制した50Hz/12.7kV交流電圧を新品ケーブルに印加した際に測定された損失電流の周波数分析結果を示す図である。
第6図は、高調波含有率の抑制を特段考慮していない50Hz/12.7kV交流電圧の周波数分析結果を示す図である。
第7図は、高調波含有率の抑制を特段考慮していない50Hz/12.7kV交流電圧を劣化ケーブルに印加した際に観測された損失電流の周波数分析結果を示す図である。
第8図は、高調波含有率の抑制を特段考慮していない50Hz/12.7kV交流電圧を新品ケーブルに印加した際に観測された損失電流の周波数分析結果を示す図である。
第9図は、本実施例の方法により2種類の電圧を印加する場合の損失電流の測定回路の一例を示す図である。
第10図は、本実施例の方法により2種類の電圧を印加する場合の損失電流の測定回路の他の例を示す図である。
第11図は、高調波含有率の抑制を特段考慮していない30Hz/3.8kV交流電圧の周波数分析結果を示す図である。
第12図は、高調波含有率の抑制を特段考慮していない50Hz/12.7kV交流電圧と30Hz/3.8kV交流電圧を重畳させた場合の周波数分析結果を示す図である。
第13図は、高調波含有率の抑制を特段考慮していない50Hz/12.7kV交流電圧と30Hz/3.8kV交流電圧を重畳させて劣化ケーブルに印加した際の周波数分析結果を示す図である。
第14図は、高調波含有率の抑制を特段考慮していない50Hz/12.7kV交流電圧と30Hz/3.8kV交流電圧を重畳させて新品ケーブルに印加した際の周波数分析結果を示す図である。
第15図は、50Hz/12.7kVと50Hzでない3.8kVの電圧を劣化ケーブルに重畳印加した場合に観測された損失電流波形に含まれる周波数成分(印加電圧の第3高調波成分以外)を示す図である。
第16図は、60Hz/12.7kVと60Hzでない3.8kVの電圧を劣化ケーブルに重畳印加した場合に観測された損失電流波形に含まれる周波数成分(印加電圧の第3高調波成分以外)を示す図である。
第17図は、超低周波による測定の離散数値高速フーリエ変換結果を示す図である。
第18図は、高調波含有率の抑制を特段考慮していない100Hz/3.8kVの交流電圧の周波数分析結果を示す図である。
第19図は、高調波含有率の抑制を特段考慮していない50Hz/12.7kV交流電圧と100Hz/3.8kV交流電圧を重畳させて新品ケーブルに印加した際の周波数分析結果を示す図である。
第20図は、高調波含有率の抑制を特段考慮していない50Hz/12.7kV交流電圧と100Hz/3.8kV交流電圧を重畳させて劣化品ケーブルに印加した際の周波数分析結果を示す図である。
第21図は、V1,V2重畳電圧下の損失電流中に発生した劣化信号の測定結果を示す図である。
第22図は、第2高調波電圧重畳位相に対する第4高調波電流の変化の様子を示すデータの一例を示す図である。
第23図は、高調波含有率が抑制された測定用電源の周波数解析を行った結果を示す図である。
第24図は、高調波含有率が抑制された電源による従来方法による測定結果を示す図である。
第25図は、高調波含有率が抑制された測定用電源により新品ケーブルについて測定を行った、第2高調波電圧重畳位相に対する第4高調波電流の変化の様子を示す図である。
第26図は、高調波含有率が抑制された測定用電源により軽劣化品ケーブルにおいて測定を行った、第2高調波電圧重畳位相に対する第4高調波電流の変化の様子を示す図である。
第27図は、高調波含有率が抑制された測定用電源により重劣化品ケーブルにおいて測定を行った、第2高調波電圧重畳位相に対する第4高調波電流の変化の様子を示す図である。
第28図は、高調波含有率が抑制されていない測定用電源の周波数解析を行った結果を示す図である。
第29図は、高調波含有率が抑制されていない電源による従来方法による測定結果を示す図である。
第30図は、高調波含有率が抑制されていない測定用電源により新品ケーブルにおいて測定を行った、第2高調波電圧重畳位相に対する第4高調波電流の変化の様子を示す図である。
第31図は、高調波合有率が抑制されていない測定用電源により軽劣化品ケーブルにおいて測定を行った、第2高調波電圧重畳位相に対する第4高調波電流の変化の様子を示す図である。
第32図は、高調波合有率が抑制されていない測定用電源により重劣化品ケーブルにおいて測定を行った、第2高調波電圧重畳位相に対する第4高調波電流の変化の様子を示す図である。
第33図は、基本波電圧と重畳電圧の重畳位相θv2と、この重畳電圧下において測定される損失電流中の第4高調波電流の重畳位相θ4の関係を示す図である。
第34図は、高調波成分をほとんど含まない周波数50Hzの基本波電圧の高調波含有状況を示す図である。
第35図は、高調波をほとんど含まない印加電圧を用いた場合の従来方法による測定結果を示す図である。
第36図は、高調波成分をほとんど含まない周波数50Hzの基本波電圧を用いて本発明による方法を実施して得られた結果を示す図である。
第37図は、高調波成分を含んだ周波数50Hzの基本波電圧の高調波含有状況を示す図である。
第38図は、高調波を含む印加電圧を用いた場合の従来方法による測定結果を示す図である。
第39図は、高調波成分を含んだ周波数50Hzの基本波電圧を用いて本発明による方法を実施して得られた結果を示す図である。
第40図は、電圧重畳位相θv2を一定値(0°)に固定した測定により得られたθ4と破壊電圧の関係を示す図である。
第41図は、電圧重畳位相θv2を所定の値に固定せずに実施した測定により得られたθ4と破壊電圧の関係を示す図である。
第42図は、電圧重畳位相θv2を特に所定の値に固定することはせずに実施した測定結果を示す図である。
第43図は、電圧重畳位相θv2を所定の値に固定せずに実施した測定により得られた測定結果を補正した後に得られたθ4と破壊電圧の関係を示す図(θv2=0°相当値に補正)である。
第44図は、電圧重畳位相θv2を特に所定の値に固定することはせずに実施した測定結果を補正した後の結果を示す図である。
第45図は、第4高調波電流の大きさI4とケーブルの破壊電圧の関係を示す図である。
第46図は、第4高調波電流の重畳位相θ4とケーブルの破壊電圧の関係を示す図である。
第47図は、第4高調波電流の大きさI4と重畳位相θ4を合わせて評価するための図である。
第48図は、試料Aと試料Bの測定値を示す図である。
第49図は、第4高調波電流の大きさI4の電圧特性を示す図である。
第50図は、第4高調波電流の重畳位相θ4の電圧特性を示す図である。
第51図は、商用周波交流電圧のみを印加して損失電流中の第3高調波を測定した場合に使用した測定回路を示す図である。
第52図は、商用周波交流電圧と、その2倍の周波数の電圧を印加して、損失電流中の第4高調波を測定した場合に使用した測定回路を示す図である。
第53図は、測定例1の測定結果(第3高調波あるいは第4高調波)を示す図である。
第54図は、種々の測定電圧における第4高調波電流を示す図である。
第55図は、試験用変圧器の重量試算結果を示す図(最大容量3μF)である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態を説明する。
A.実施例1:電圧V1(周波数f1)と電圧V2(周波数f2)を電力ケーブルに重畳印加することによる劣化診断
単一周波数を回路に与えた場合に発生する高調波は、一般的には、第3、第5、第7,…,といった奇数次の高調波である。
これは回路が完全な線形系ではなく、僅かながら非線形な要素を持ち合わせているために現れるものと解釈できる。損失電流中に含まれる高調波も基本的な原理はこれと同じと考えられ、ケーブル絶縁体が劣化するとその電圧−電流特性の持つ非線形性が大きくなるために、奇数次の高調波がケーブル絶縁体の劣化によって発生し、その中でも次数の低い第3高調波が大きく現れると解釈され、この現象を利用したものである。
従って、単一周波数を用いて高調波による診断を行う限りは、比較的明瞭に現れる信号は奇数次の高調波であるので、これに着目した診断を行わざるを得ず、前述の課題を回避することは困難である。
そこで、従来の測定で行っていたような単一周波数(周波数をf1とする)での損失電流測定に加え、元の単一周波数とは別の周波数f2を持つ電圧を印加することで、f1の第3高調波以外の周波数成分を発生させて、これによる劣化診断を行う方法を検討した。
しかし、周波数f2の電圧を印加した場合、f2による奇数次高調波が発生することはもちろんであるため、単にf2に対する第3高調波を調べるだけでは、正確な診断を行うことは期待できない。
また、周波数f2の電圧(以下、第2の電圧と称す)を発生させる電源装置においても、十分な高調波抑制対策を施す必要があり、周波数f1の電圧(以下、第1の電圧と称す)を発生させる装置と同様な入念な対策が必要となり、実用上の意味は殆どないと言える。
さて、前述の通り、ケーブル絶縁体の劣化によって、電圧−電流特性に非線形性が現れてくるが、その特性をテーラー展開近似により表すと、通常のオームの法則に従う電圧と電流が比例する項に加えて、電圧の3乗に比例した電流成分が発生することが実験的に確認された。
このように特性を表すことができる非線形系に、周波数f1及びf2の2つの周波数を持つ入力信号を与えると、発生する周波数成分として、f1、f2(入力周波数)、3×f1、3×f2(入力周波数の第3高調波)の他に、f2+2×f1、|f2−2×f1|、f1+2×f2、|f1−2×f2|なる周波数成分が出力されることが、理論的計算によって明らかになった。
ここで、周波数f1の電圧値をV1、周波数f2の電圧値をV2とし、V2≦V1なる関係が成り立つ場合には、入力周波数及びそれらの第3高調波以外では、f2+2×f1及び|f2−2×f1|の2つの周波数成分が大きく出力されることが見いだされた。従って、これらの周波数成分の両方が入力信号の第3高調波にならないように周波数f1,f2を選択し、これらを劣化信号として取り出すことができれば、電源高調波の影響を受けずに感度良く正確に劣化診断が可能となる。
例えば、f1=50Hz、f2=70Hzとすると、前記2つの周波数成分は30Hz、170Hzとなり、周波数f1、f2の第3高調波である50×3=150Hz、70×3=210Hzのいずれでもないことがわかる。
このような周波数成分を観測するためには、通常の損失電流測定と同様に、ケーブルから流れてくる接地線電流に含まれる容量性成分を除去することが必要である。この操作を行う場合、まず第1の電圧のみを印加した状態で通常の損失電流測定を行うのと同じ操作をして、第1の電圧による容量性電流成分を除去する。次いで、第1の電圧による容量性電流成分を除去させた測定回路の状態を維持して第2の電圧を印加させると、前述した劣化信号に対応する周波数成分が現れてきて、これにより劣化信号を観測することが可能となる。
これによって、元電源に含まれる高調波の影響を受けることなく、ケーブルの劣化を検出できる事となるため、電源高調波含有率の大きい電源を用いても、正確な劣化診断が可能となる。
周波数f1とf2の選択の仕方については、上述したようにf2+2×f1又は|f2−2×f1|がf1及びf2いずれの第3高調波成分にも該当しないものであれば、いかなるf1,f2の組み合わせであっても、本実施例の効果は理論上同様に発揮される。ただし、ケーブル布設現場における実際上の測定を考えると、印加電圧の大きさの関係がV1≧V2である場合、f2をf1の2倍もしくはn分の1倍(ただし、nは3以上の整数)とし、さらにf1を商用周波数とするのが最も合理的なf1及びf2の組み合わせである。
これは次に示す理由からである。第1にf1及びf2のいずれも商用周波数以外とすると、それぞれの周波数を発生させる装置(周波数変換電源装置)が2台必要となるが、周波数f1である第1の電圧V1を商用周波数とすることで用意すべき周波数変換電源装置が1台で済み、かつ周波数変換電源装置の容量もf2を商用周波数とするよりも小さいもので良くなる。
第2にf2をf1に同期した周波数とすることで、損失電流波形取得の際にアベレージング処理を行えるので、より精度の高い測定が可能となる。
この2つの理由からf1が商用周波数でf2がf1の整数倍もしくは整数分の1倍であることが好ましいことになる。また、ケーブルが容量性負荷であり印加する電圧が同じ場合には、その周波数に比例して用意する電源装置容量が大型化することを考えれば、f2の上限としてはf1(商用周波数)の2倍が実用上限界である。
仮にf2としてf1の3倍の周波数を用いた場合は、本発明の原理で発生する劣化信号の周波数(f2十2×f1=5×f1、|f2−2×f1|=f1)が印加電圧そのもの、および、その第5次高調波成分に該当するため、ノイズの影響を受けない周波数成分に劣化信号を移行させるという本実施例の目的に反する結果となる。また、f2としてf1の4倍の周波数を用いた場合には、診断精度に関してはf1の2倍の周波数を用いたものと同じ効果を得られるが、同じ電圧を印加する場合、電源装置容量が2倍となってしまい実用上の優位性はない。
さらに、電圧V1及びV2の重畳電圧下で劣化に起因して発生する周波数成分f2+2×f1又は|f2−2×f1|がf1、f2及びそれらの第3高調波成分や第3高調波成分の次にノイズ成分として現れる影響の大きい第5高調波成分に該当しない周波数を選択すると第1図に示すようになる。なお、第1図において、点線で囲まれた部分が劣化信号が印加電圧の第3もしくは第5高調波と同一のものである。
第1図から明らかなように、f2がf1の整数分の1となる周波数では2分の1の場合を除けば、劣化信号が印加電圧の高調波成分の影響を受けない周波数成分に発生することがわかる。
以上より、周波数f2をf1の2倍もしくはn分の1倍(ただし、nは3以上の整数)とし、さらにf1を商用周波数とするのが実用上最も効果が大きい組み合わせであると分かる。
以上のようにして電力ケーブルの劣化診断を行うことにより、電源中の高調波の影響を受けることなく、正確なケーブルの劣化診断を行うことができる。また、上記周波数f1,f2を選定することにより、大容量の電源設備を用いることなく、精度の高い劣化診断が可能となる。
次に、具体的実施例により説明する。本発明においては、以下のような実験を行い、従来方法と比較してその効果を検証した。
(1)供試試料
実験では、水トリー劣化している22kCVケーブル1×150mm2(絶縁厚6mm)を測定に供試した。このケーブルをサンプリング調査して、絶縁体中の水トリー発生状況を観察したところ、最大で2mm程度の外導水トリーが発生しており、平均的に0.5mm〜1.5mm程度のものが比較的多く発生していることが確認された。また、そのAC破壊電圧を調査したところ、50〜100kV程度に分布していることがわかり、絶縁性能的にも劣化していることがわかった。また、比較対象として、同じサイズの新品CVケーブルも用いた。いずれの種類のケーブルにおいても、測定時の有効電極長は20mとした。
(2)従来の方法による測定〔その1〕
まず、従来方法による測定を、高調波含有率の低い理想的な電源により実施した。ここでは一例として、周波数は50Hz、測定電圧は22kVケーブルの対地運転電圧である12.7kVとした。前記劣化ケーブルと新品ケーブルに対して測定し、比較を行うこととした。
電源波形の周波数分析を行った結果を第2図に示す。同図において、横軸は周波数、縦軸は基本波(50Hz)を100としたときの高調波含有率(対数目盛り)である(以下の図面においても同じ)。また、測定は第3図に示す回路により行い、ケーブルから流れてくる全充電電流から容量性電流成分を除去することで、損失電流成分も抽出する。このような電流検出にはブリッジを用いるが第3図(a)(b)に示すようなブリッジの接続方法が考えられる。
第3図(a)は損失電流の検出を高圧導体側で行う場合を示しており、損失電流測定ブリッジ3を高圧導体側に接続し、損失電流測定ブリッジ3の一方の端子に標準コンデンサ5を接続するとともに、他方の端子を電力ケーブル4に接続する。そして、電源1(周波数f1)から損失電流測定ブリッジ3に電圧を印加して、標準コンデンサ5により電源電圧に対して90°位相が進んだ成分を除去して損失電流成分を抽出する。損失電流測定ブリッジ3の出力は、光ファイバ6を介して波形測定器7に導かれ、波形解析装置8により波形が解析される。この損失電流波形解析は、スペクトラムアナライザなどの測定器を用いて行う。
測定回路を上記構成とすることにより、遮蔽層が多点接地されていてもクロスボンドされていても、ケーブル絶縁体から流れてくる充電電流を全て1箇所に集中させて検出することが可能になり、多点接地系及びクロスボンド接地系のケーブル線路においても劣化信号の検出が可能となる。
第3図(b)はケーブル線路の遮蔽層と接地間に損失電流測定ブリッジを接続し、損失電流を検出する場合を示しており、電力ケーブル4と並列に標準コンデンサ5を接続し、電源1(周波数f1)から電圧を印加して、電力ケーブル4の絶縁体中に流れる電流および標準コンデンサ5に流れる電流を損失電流測定ブリッジ3に入力し、絶縁体中に流れる電流から第1の電圧V1に対して90°位相が進んだ成分を除去して損失電流を抽出する。損失電流測定ブリッジ3の出力は、波形測定器7に導かれ、スペクトラムアナライザ等の波形解析装置8により波形が解析される。
上記の測定回路で得られた電流波形の周波数分析をスペクトラムアナライザにより行った結果を第4図(劣化品)、第5図(新品)に示す。
まず、第2図であるが、高調波の含有比率は非常に低いことがわかる。問題となる第3高調波は基本波に対して約0.2%であり、損失電流にこれがノイズとして作用しても、基本波に対して0.2×9=1.8%に過ぎない。
一方、第4図を見ると明らかに150Hz成分が1μA以上測定されており、基本波に対する比率が15%以上になっているのに対し、第5図では150Hz成分は小さく劣化品のような現象は確認されていない。従って、電圧の印加に用いた電源波形に含まれる高調波が抑制されている場合には、従来方法でも精度の良い診断が行えることがわかる。
(3)従来の方法による測定〔その2〕
次いで、従来方法による測定を、高調波含有率を特段抑制していない一般的な電源により実施した。
ここでも一例として周波数は50Hz、測定電圧は22kVケーブルの対地運転電圧である12.7kVとした。
また、(2)と同様に劣化ケーブルと新品ケーブルに対して測定し、比較を行うこととした。
電源波形の周波数分析を行った結果を第6図に示す。また、測定した損失電流波形の周波数分析を行った結果を第7図(劣化品)、第8図(新品)に示す。
まず第5図であるが、高調波の含有の比率は特に抑制さておらず、第3高調波含有率は基本波に対して約2.7パーセント含まれている。よって、損失電流にこれがノイズとして作用すると、基本波に対して計算上2.7×9=24パーセントにも達する。
第7図を見ると、第6図より150Hz成分がやや大きくなっているのに対し、第8図の150Hz成分も第7図で測定された値に比較的近く、基本波に対する含有率も同程度の値になっている。よって、高調波が抑制された電源を用いた場合ほどの有意差は現れておらずケーブルが劣化状態にあるのかないのかを明確に区別することが困難である。すなわち、印加電圧に第3高調波が含まれている場合には、従来方法では正確な劣化診断が不可能であることを示している。
(4)本実施例による方法〔その1〕
次に、本実施例による測定を試みた。(3)において用いたのと同じ高調波含有率を特段抑制していない−般的な電源を第1の電圧として用いることにより実施した。従って同様に、第1の電圧の周波数は50Hz、測定電圧は22kVケーブルの対地運転電圧である12.7kVをここでは選択した。ケーブルは前記劣化ケーブルと新品ケーブルに対して行い、両者を比較した。
今回の電源波形を周波数分析した結果は、第6図に示したものと同一である。そしてまず、(3)と同様に第1の電圧のみを印加した状態で測定を行った。当然であるが測定された結果は第7図、第8図と殆ど同様となり、新品と劣化品の判別は困難な状態であった。
続いて測定器ブリッジのバランス状態を同一に保ったままで、第2の電圧を重畳することにした。
この場合の測定回路例を第9図(a)(b)、第10図に示す。
第9図(a)は損失電流測定を高圧導体側で行う場合を示しており、損失電流測定ブリッジ3を高圧導体に接続し、損失電流測定ブリッジ3の一方の端子に標準コンデンサ5を接続するとともに、他方の端子をケーブル4に接続する。
測定回路を第9図(a)の構成とすることにより、遮蔽層が多点接地されていてもクロスボンドされていても、ケーブル絶縁体から流れてくる充電電流を全て一か所に集中させて検出することが可能となり、多点接地系、クロスボンド接地系のケーブル線路でも劣化信号の測定が可能となる。
第9(b)図はケーブル4の遮蔽層と接地間に損失電流測定ブリッジ3を接続した場合を示しており、電源1から周波数f1の電圧を印加して損失電流測定ブリッジ3をバランス状態とした後、上記と同様、電源2から周波数f2の電圧を重畳印加して、第4高調波電流を測定する。
測定回路を第9図(b)の構成とすれば、第9図(a)のように損失電流測定ブリッジ3が高圧側に接続されないので、測定系の構造をより簡便にできて好ましく、接地点を1点にできる場合に用いるとよい。
また、第10図は、ケーブル4と電源1間に電流検出器CT9を取り付け、電流検出器CT9の出力を損失電流測定ブリッジ3に接続する場合を示しており、上記と同様、電源1から周波数f1の電圧を印加して損失電流測定ブリッジ3をバランス状態とした後、電源2から周波数f2の電圧を重畳印加して、第4高調波電流を測定する。
測定回路を第10図の構成にすることにより、損失電流測定ブリッジ3を低圧側に接続することができるとともに、第9図(a)と同様、多点接地系、クロスボンド接地系のケーブル線路でも劣化信号の測定が可能となる。
上記したように測定回路は、前記第3図(a)(b)と比べ、格別相違なく、電源1(周波数f1)の第1の電圧V1に加えて電源2(周波数f2)の第2の電圧V2を直列に付加したものとなっている。また、第2の電圧として、ここでは一例としてf2=30Hzを選択し、第2の電圧V2の値も同様に一例として第1の電圧V1の30%の値となる3.8kVを重畳した。この第2の電圧波形を周波数分析した結果を第11図に示す。
これについても特段の高調波対策をとっていないため、高調波含有率は決して低いものではない。また、第1、第2の電圧を合わせて周波数分析した結果を第12図に示す。
さて、このような電圧を重畳印加して測定された損失電流波形を周波数分析した。第13図に劣化ケーブルにおいて、第13図に新品ケーブルにおいて、それぞれ測定された損失電流の周波数分析結果を表す。
第13図と第14図において、印加したf1=50Hz及びf2=30Hzの高調波発生状況はいずれも同じ様なレベルにあることがわかる。これは、第1、第2の印加電圧波形ともに特段の高調波抑制策を講じていないものであるため、当然の結果である。
しかし、第13図に示す解析結果を詳細に検討すると、70Hz、130Hzといった、50Hz及び30Hzの整数倍ではない周波数成分の発生が劣化品には大きく観察されていることがわかる。これは、第14図においても発生はしているものの、新品における発生の程度は劣化品のそれよりも著しく小さいことがわかる。
更に、劣化品における第2の電圧重畳前後の測定結果である、前記第7図と第13図を比較してわかるように、前者では70Hz、130Hzという特徴的な周波数成分が観測されていないのに、後者ではこのような成分が現れており、重畳させた前後の周波数成分を調べることで劣化の有無を判別できる可能性が示されたことになる。これらの周波数成分は30+2×50=130Hz、および、|30−2×50|=70Hzとなり、2つの周波数を印加した場合に劣化信号として得られる周波数であることが確認された。
よって、50Hzに30Hzを重畳させた場合に、損失電流波形に含まれる70Hz及び130Hzの成分の大きさを調べることによって劣化診断を行えると言える。しかも、これらの周波数は印加電圧の高調波成分ではないため、その含有率が大きい「あまりきれいでない」波形を用いても耐ノイズの高い測定をすることができる。
(5)本実施例による方法〔その2〕
そこで次に、(4)において第1の電圧(f1=50Hz、V1=12.7kV)に重畳した第2の電圧の周波数f2を10Hzから150Hzの範囲で変化させてV2=3.8kVを印加した場合に損失電流波形に比較的大きく発生する、第1、第2の電圧の第3高調波成分以外の周波数成分にどのようなものがあるかを調べてみた。
その結果を第15図に示す。測定は前記劣化ケーブルに対してのみ行った。これを見ると発生する周波数はf2+100Hzと|f2−100|Hzであることがわかる。
(6)本実施例による方法〔その3〕
同様に(5)において第1の電圧(f1=60Hz、V1=12.7kV)に重畳した第2の電圧の周波数f2を10Hzから150Hzの範囲で変化させてV2=3.8kVを印加した場合に損失電流波形に比較的大きく発生する、第1、第2の電圧の第3高調波以外の周波数成分にどのようなものがあるかを調べてみた。その結果を第16図に示す。測定は前記劣化ケーブルに対してのみ行った。
これを見ると発生する周波数はf2+120Hzと|f2−120|Hzであることがわかる。
以上の結果より、2つの周波数を重畳する事で劣化ケーブルに発生する周波数成分はf2+2×f1Hzと|f2−f2|Hzであることが確認された。よって、これらの関係式によって与えられる周波数成分の発生を調べることにより、診断対象のケーブルが劣化を起こしているか否かを明瞭に判別することが可能となる。
(7)本実施例による方法〔その4〕
以上の実施例は、いわゆる商用周波領域の電圧を第1の電圧に用いた場合であった。当然の事ながら、本実施例では第1の電圧としてケーブル線路に実用的に印加できるものであれば、商用周波領域に限定されるべきものではない。そこで、ケーブル線路に試験を行う場合、課電設備容量を低減させる目的からよく使われる低周波領域の電圧を第1の電圧に用いて同様の測定を試みた。
使用したケーブルは前記(5)(6)で用いたものと同一で、第1の電圧の周波数f1=0.1Hz、V1=20kVの超低周波電圧とし、第2の電圧の周波数をf2=0.15Hz、0.2Hz、0.25Hzと変化させてV2=5kVとした時に損失電流波形に含まれる周波数成分を求めてみた。
この測定の場合、分析対象の周波数が非常に低いため、上記(1)〜(6)で用いたスペクトラムアナライザによる解析が行えない。そこで、まず、デジタルオッシロスコープで波形観測を行い、その波形1周期分を数値データとして取り出し、離散値高速フーリエ変換を行うことにより、周波数分析を行った。その結果を第17図に示す。
この結果を見ると、印加した電圧の周波数およびその第3高調波に対応する部分は電流が大きく観測されているが、それ以外の周波数の所にも電流が大きく観測されているものがある。
これが第17図において、「特徴的に発生した周波数」として明示した部分である。これらの周波数もすべて、f2×2×f1Hzと|f2−2×f1|Hzになっていることがわかる。
このことより、第1の電圧の周波数として商用周波数以外の周波数領域を選択した場合においても本発明は同等の効果を発揮することが確認された。
また、周波数f2についても周波数f1と同じにならない限り、任意の値を選定可能である。但しその場合、2種類の電圧の重畳印加によって特徴的に発生する周波数が、印加電圧の奇数次高調波、特に第3高調波にならないような周波数を選定することが賢明である。
更に、測定時における第1、第2の電圧値についても、測定を行いやすい任意の値を選択することができるのは言うまでもない。
(8)本実施例による方法〔その5〕
次いで、周波数f1を商用周波数とし、周波数f2を周波数f1(商用周波数)の2倍に選定し測定を行った。
印加電圧としては、第1の電圧V1として従来法の測定で用いたものと同じである商用周波数(f1=50Hz)の電圧12.7kVとした。この印加電圧の高調波成分の含有状況は第6図と同様である。また第2の電圧V2としては、商用周波数の2倍の周波数(f2=100Hz)の電圧3.8kVとした。
この第2の電圧V2の高調波成分含有率は第18図に示すように、第2、第4次高調波といった偶数次高調波はほとんど含まれておらず(0.2%以下)、第3,第5次高調波といた奇数次高調波が多く含まれるもので、第6図に示したV1の特性と同じような特性をもつものである。
本実施例の測定は、前記したように前記第9図(a)(b)に示した測定回路を用いてケーブルに第1の電圧V1と第2の電圧V2を重畳印加して行った。
測定ではまず、新品、劣化品とも第1の電圧V1のみをケーブルに印加して損失電流を測定し、続いてこの時の測定ブリッジのバランス状態を保ったまま、第2の電圧V2を重畳印加した時に測定ブリッジから出力される電流(重畳下における損失電流相当)を測定した。
第1の電圧V1のみでの測定(従来方法に相当)では、当然のことながら損失電流の周波数分析結果は第7図、第8図とほとんど変わらぬものとなった。これに対し、第2の電圧を重畳した測定での損失電流測定結果の周波数分析結果では新品と劣化品で明らかに有意差の出る周波数成分が存在する。この周波数分析結果を新品及び劣化品それぞれについて第19図、第20図に示す。
これら2つの結果を比較すれば明らかなように、200Hz成分は新品の場合が損失電流の基本波成分に対して2.1%程度であるのに対して、劣化品の場合ではこれが14%程度も発生している。
その他の周波数成分が新品と劣化品とでほとんど変わらないことから、この200Hz成分(f2+2×f1)が劣化に起因して発生するものであることが確認できる。ここで、新品で観測された2.1%の200Hz成分は印加電圧V1、V2にもともと含まれていた200Hz成分の影響により現れたものと解釈できるが、印加電圧に含まれる第2、第4次高調波成分といった偶数次高調波成分は、通常は奇数次高調波成分に比べて非常に小さく、それらが従来方法で問題となったような誤差要因とは一般的になり得ない。
(9)本実施例による測定〔その6]
上記(8)の実施例は周波数f2がf1(商用周波数)の2倍の場合であるが、周波数f2がf1のn分の1(nは3以上の整数)の場合にも同じ効果が得られる。さらに、周波数f2が商用周波数より低い場合は用意する電源設備のサイズが小型で済むようになり、この面での効果も大きい。
そこで、周波数f2がf1のn分の1の場合について効果を確認した。
使用した試料、測定回路、測定結果の解析方法、及び第1の印加電圧V1の電圧値(12.7kV)と周波数(50Hz)は上記(8)の実施例と同様であるが、第2の電圧V2については、電圧値は3.8kVで共通であるが、周波数f2としては商用周波数の2分の1(25Hz)、3分の1(16.7Hz)、4分の1(12.5Hz)、5分の1(10Hz)の4通りを検討した。
上記4通りのf1、f2の組合わせの測定において、f2+2×f1、|f2−2×f1|の周波数成分に新品と劣化品で明確な有意差が得られれば、本実施例の効果があると言える。
これら4通りの損失電流の周波数分析結果を新品と劣化品とを比較して第21図に示す。ここで表中に示す以外の周波数成分については新品と劣化品の差は明確ではなかった。
第21図からわかるように、周波数f2として、商用周波数の2分の1とした測定結果では劣化信号として発生が期待される75Hzと125Hzの周波数成分に新品と劣化品の有意差は認められず、また、周波数f2として商用周波数の3分の1とした測定結果においても劣化信号として発生が期待される成分の1つである83.3Hzの周波数成分に新品と劣化品の有意差は認められなかった。
この原因は、これら周波数f2の第3もしくは第5次高調波に該当するためである。しかし、これらの事例を除けば本発明が劣化信号として定義するところの周波数成分f2+2×f1、|f2一2×f1|を用いれば新品と劣化品の区別が可能であることが分かった。
上記(8)(9)の実施例では、第1の電圧V1の周波数f1として50Hzである場合について検討したが、これは当然60Hzであっても本発明の効果が失われることはない。また、V1及びV2の電圧値についてもこの上記実施例と同一の電圧値である必要はなく、対象となるケーブル線路や測定上の制約を考慮して決定してよい。
B.実施例2:第2の電圧V2の重畳位相を変化させ4fの周波数を持つ電流成分を測定することによる劣化診断
前記したように、基本波に対してその2倍の周波数を持つ電圧(以下、これを第2高調波電圧という)を重畳印加させると、損失電流中に基本波の4倍の周波数を持つ電流成分(以下、第4高調波電流という)が劣化信号として得られる。
水トリーは非線形な電圧一電流特性を有し、このような非線形な系に基本波とその第2高調波の電圧を同時に与えると第4高調波電流が発生するが、劣化していない系、すなわち電圧一電流特性が線形な系に同様のことを行っても、第4高調波電流の発生はみられない。
そこで、本発明者らがさらに検討したところ、劣化診断を行う上で、この第4高調波電流を用いることが可能なことが明らかになった。
すなわち、第4高調波電流は、第2高調波電圧を基本波電圧に重畳印加することで発生するものであり、第2高調波電圧を基本波に重畳させる場合のタイミング、すなわち重畳位相を変化させると、それに伴って第4高調波電流にも変化が起きる。この特性を種々の劣化程度を持つケーブルによって検証した結果、次のような興味深い現象の見られることがわかった。
基本波の電圧をV1 sin(ωt)、第2高調波電圧V2 sin{2(ωt+θv2)}と表すとき、第2高調波電圧の基本波電圧に対する重畳位相はθV2であるが、これは−90°≦θV2≦90°の値を取り得る。
そこで、絶縁体が劣化を起こした試料において、θv2を−90°から90°まで変化させて重畳させたときの第4高調波電流の値を調べてみた。その結果、第22図に示すように、第4高調波電流は−90°≦θv2≦90°において、一定の振幅で2周期振動するように変化することが明らかになった。
この第4高調波のθv2に対する変化の仕方がケーブルの劣化程度によってどのように変化するかを調べてみた結果、劣化程度が進んでいる場合の第4高調波電流は、θv2の変化による値の変化幅が大きくなり、劣化が余り進行していない場合はその変化幅が比較的小さい、ということがわかってきた。
従って、θv2に対する第4高調波電流の変化特性を調べることによって、ケーブルの劣化程度を診断できることになる。
上記方法により、一般には含有率が低い偶数次の高調波である第4高調波を用いて劣化状態の検出を行うことができるため、測定に用いる商用周波電圧に含まれる第3高調波成分に影響を受けず、損失電流測定による電力ケーブルの劣化診断が可能になる。
次に、具体的実施例により説明する。本実施例においては、以下に説明する実験を行い、従来方法と比較してその効果を検証した。
(1)供試試料
本発明の実施例では、水トリー劣化している22kVCVケーブル1×150mm2(絶縁厚さ6mm)2種類、および、同一サイズの新品ケーブルを測定に供試した。
水トリー劣化ケーブルをサンプリング調査して、絶縁体中の水トリー発生状況を観察したところ、それぞれ、最大で3mm程度の外導トリーが発生している比較的劣化が進行しているもの(重劣化品という)と、最大で1mm程度の外導トリーが発生している劣化が余り進んでいないもの(軽劣化品という)であることが確認された。また、そのAC破壊を調査したところ、前者は40〜80kV程度に、後者は120〜200kV程度にそれぞれ分布していることがわかった。いずれの種類のケーブルにおいても、測定時の有効電極長は20mとした。
(2)測定方法
前記ケーブルにおける損失電流測定手順は以下の通りとした。
〔1〕50Hzの商用周波電圧6kVをケーブルの導体〜遮蔽層間に印加する。〔2〕損失電流測定ブリッジにより、ケーブルの遮蔽層から大地に流れてくる電流中に含まれる容量性電流成分を除去して、第2高調波電圧を重畳印加する前の損失電流測定を行う。
〔3〕上記損失電流測定ブリッジのバランス状態を固定させる。
〔4〕第2高調波電圧として100Hz/2kVをケーブルの導体〜遮蔽層間に印加する。このときの重畳位相θv2を測定しておく。
〔5〕このときの損失電流中に含まれる第4高調波電流を測定する。
〔6〕以上〔1〕〜〔5〕の測定を−90°≦θv2≦90°なる複数のθv2に対して実施する。この場合、前記範囲で第4高調波が2周期振動する様子がわかる程度の測定点数にすることが好ましい。
上記損失電流を測定する回路として、前記第9図、第10図に示した回路を用い、まず、電源1から基本波電圧である周波数f1(=50Hz)の電圧(=6kV)をケーブル4の導体〜遮蔽層間に印加して、標準コンデンサ5により電源電圧に対して90°位相が進んだ成分を除去して損失電流を測定する。
次に、この状態で損失電流測定ブリッジ3のバランス状態を固定して、電源2から第2高調波電圧である周波数f2(=100Hz)の電圧(=2kV)をケーブル4の導体〜遮蔽層間に重畳印加し、損失電流中に含まれる第4高調波電流を測定する。損失電流測定ブリッジ3の出力は光ファイバ6を介して波形測定器7に導かれ、スペクトルアナライザ等の波形解析装置8により波形が解析される。
以上の測定を電源2の位相を変化させ、−90°≦θv2≦90°なる複数のθv2に対して実施し、第4高調波電流の大きさを測定する。
(3)測定例(その1)
まず初めの実験では、理想的な状態として高調波含有率が抑制された電源による測定を実施した。
測定に用いた電源の周波数分析結果は、第23図に示すとおりであった。従来方法で問題となる可能性のある第3高調波成分の含有率の低いことがわかる。
この電圧により、前記した新品、軽劣化品及び重劣化品の3種類について損失電流の測定を行った。
まず、従来方法の基本波電圧のみを印加して得られる第3高調波電流の測定結果を第24図に示す。
この結果を見ると、新品<軽劣化品<重劣化品の順序で第3高調波電流が大きいことがわかる。これは、電源高調波が抑制されている場合には、従来法でも劣化程度の判別が可能な場合もあることを示すものである。
次に、本実施例の方法に基づいて、第2高調波電圧を印加して第4高調波電流の測定を行った。測定結果を第25図(新品)、第26図(軽劣化品)及び第27図(重劣化品)に示す。
まず、第25図に示すように新品ケーブルで測定された第4高調波電流は、第2高調波電圧の重畳位相を変えても殆ど変わらない。これは、ノイズレベルの信号しか発生していないことを示す。すなわち、第2高調波電圧を重畳しても新品ケーブルでは第4高調波電流は発生していないことがわかった。
次に軽劣化品で測定された第4高調波電流は、第26図に示すように第2高調波電圧の重畳位相θv2に対する依存性が僅かながら見られ−90°≦θv2≦90°の範囲で2周期変動していることがわかる。周期変動する値の平均値に対する変動幅を計算すると約13%である。
その次に重劣化品で測定された第4高調波電流を第27図に示すが、第2高調波電圧の重畳位相θv2に対する依存性は軽劣化品において見られたものよりも非常に大きなもので、−90°≦θv2≦90°の範囲で同様に2周期分変動していることがわかる。周期変動する値の平均値に対する変動を計算すると約28%である。
以上述べたように、本実施例の方法によれば、第2高調波の重畳位相を変化させた時の第4高調波の変化の大きさを測定することによって、ケーブルの劣化状態判別を容易に行えることが確認できた。これは従来方法の理想的な測定電源を用いた場合の第3高調波とも良い対応を示していることより確認試験として従来方法とのクロスチェックも同時に行えたことになる。
(4)測定例(その2)
その次の実験では、一般的な高調波含有率が抑制されていない電源による測定を実施した。測定に用いた電源の周波数分析結果は、第28図に示すとおりであった。従来方法で問題となる可能性のある第3高調波成分の含有率がやや高いことがわかる。
この電圧により、前記した新品、軽劣化品及び重劣化品の3種類について損失電流の測定を行った。
まず従来方法の基本波電圧のみを印加して得られる第3高調波電流の測定結果を第29図に示す。
この結果を見ると、新品、軽劣化品、および重劣化品いずれにおいても、第3高調電流が殆ど同じであることがわかる。これは、電源高調波が抑制されていない場合には、従来法では電源に含まれる第3高調波が測定結果に大きく影響を与えるため、劣化状態の正確な判別が不可能になることを示すものである。
次に、本実施例の方法に基づいて、第2高調波電圧を印加して第4高調波電流の測定を行った。測定結果を第30図(新品)、第31図(軽劣化品)及び第32図(重劣化品)に示す。
まず、新品ケーブルで測定された第4高調波電流は、第30図に示すように第2高調波電圧の重畳位相が変化しても殆ど変わらないことがわかる。これは測定例(その1)と同じ理由によるものである。
次に軽劣化品で測定された第4高調波電流は、第31図に示すように第2高調波の重畳位相θv2に対する依存性が僅かながら見られ、−90°≦θv2≦90°の範囲で2周期分変動していることがわかる。周期変動する値の平均値に対する変動幅を計算すると、約14%である。
その次に重劣化品で測定された第4高調波電流を第32図に示すが、測定例(その1)と同様に、第2高調波電圧の重畳位相θv2に対する依存性は軽劣化品において見られたものよりも非常に大きなもので、−90°≦θv2≦90°の範囲で2周期分変動していることがわかる。周期変動する値の平均値に対する変動幅を計算すると、約31%である。また、変動の状態などは第28図と比較して殆ど同レベルである。
以上の実験により、測定電圧に含まれる高調波成分が大きい場合であっても、第2高調波電圧の重畳位相を変化させた時の第4高調波の変化の大きさを測定することによって、ケーブルの劣化状態の判別を容易に行えることが確認できた。これに対し、従来方法では測定電源に含まれる高調波の影響によって、新品と劣化品及び劣化品の劣化程度の判別が全くできない状態になつていることがわかる。
このことは、本発明による方法が、高調波を比較的多く含有する一般的な電源による測定においても効果を発揮することを示すものである。
C.実施例3:第1の電圧V1に対する第2の電圧の重畳位相と、損失電流中の第4高調波成分の第1の電圧に対する重畳位相の関係に基づく劣化診断(その1)
例えば前記した第9図に示すような回路により、ケーブルに周波数f(基本周波数)を持つ第1の電圧(基本波電圧)V1を印加して損失電流を測定する操作を行い、次いで前記第1の電圧V1及び損失電流測定回路のバランス状態を保持した状態で、基本波電圧の2倍の周波数2fを持つ第2の電圧V2(重畳電圧)を重畳印加した場合に測定される損失電流を測定すると、この電流中に含まれる基本周波数の4倍の周波数4fの電流成分(基本周波数に対する第4高調波電流)が現れてくる。
この第4高調波電流成分の大きさは電力ケーブルの劣化が進むに従い大きくなるので、上記第4高調波電流成分を用いて電力ケーブルの劣化程度を評価することができる。
この方法で劣化信号としている第4高調波成分の電流は、水トリーの非線形電気特性に起因して発生するという点では、従来方法の第3高調波成分の発生と同一である。しかし、2種類の周波数の電圧が水トリーの非線形性の下で相互に作用して、前記印加電圧の奇数次高調波に相当しない周波数の劣化信号が発生する現象を利用しているので、印加電圧中に含まれる第3高調波成分の影響を受けることなく、劣化診断を行うことができる。
そこで、ケーブルの劣化程度と発生する第4高調波電流との関係を検討した結果、第3高調波成分の場合と同様に、第4高調波の重畳位相が電力ケーブルの劣化程度に応じて変化することが明らかになった。
しかし、第4高調波電流は周波数fの基本波電圧V1とその2倍の周波数2fの電圧V2をケーブルに重畳印加することで、この2種類の周波数の電圧が水トリーの非線形の下で相互に作用することにより発生するものであるから、基本波電圧V1と重畳位相V2の重畳状態すなわち両者の重畳位相差(これをθv2で表す)に対応して、損失電流中に発生する第4高調波成分の重畳位相(基本波電圧に対する位相差としてθ4で表す)も当然変化することになり、単に第4高調波成分の重畳位相θ4を求めるだけでは充分でない。
そこで、本実施例では、更に、上記第1の電圧V1に対する第2の電圧V2の重畳位相差θv2と、損失電流中の第4高調波成分の重畳位相θ4の関係を利用して劣化診断を行うこととした。
そのため、上記重畳位相差θv2と重畳位相θ4との関係を調べた。
その結果、上記基本波電圧V1と重畳電圧V2の重畳位相差θv2と、損失電流中の第4高調波成分の重畳位相θ4の間には、ケーブルの劣化に伴って第33図に示すように推移することが判明した。
ここで、基本波電圧をV1sinωt、重畳電圧をV2sin(2(ωt+θv2))、第4高調波電流をI4 sin(4(ωt+θ4))とすると、同図に示すように、二種の電圧の重畳位相θv2と第4高調波電流の重畳位相θ4の取り得る範囲はそれぞれ、−90°≦θv2≦90°及び−45°≦θ4≦45°となる。
これによると、重畳電圧発生器側で、予め重畳位相差θv2を設定し、ケーブルの損失電流中の第4高調波成分の重畳位相θ4を測定すれば、ケーブルの劣化程度が進行するに伴い、前記重畳位相θ4がマイナス側からプラス側に移動し、ケーブルの劣化程度を診断することができる。
また、電圧の重畳位相差θv2と、損失電流中の第4高調波成分の重畳位相θ4の関係が、第33図に示すように一定の傾きの劣化程度に応じて定まる直線で近似されることを利用することにより、重畳電圧発生装置側で予め重畳位相差θv2を設定しておかず、ある電圧重畳状態下において測定された第4高調波成分の重畳位相と、そのときの第2の電圧の重畳位相から電力ケーブルの劣化程度を診断することもでき、診断がより容易となる。
すなわち、二種の電圧の重畳位相θv2と第4高調波電流の重畳位相θ4の関係は、いかなる劣化程度のケーブルにおいても第33図に示すように同じ傾きの直線で近似され、劣化程度の違いはその直線の描かれる位置に対応している。そして、劣化が進行するにつれて、この直線の位置は.θv2の負の方向(θ4の正の方向)へ移行する。
このことから、ある重畳位相状態下(重畳位相差θv2)で測定を実施して第4高調波成分の重畳位相θ4と重畳位相差θv2の両者の値を求めることで、劣化を診断することができ、これにより、複数の電圧重畳位相差θv2における測定は必要ない(適当な1条件の測定で充分である)こととなる。
つまり、二種の電圧の重畳位相θv2と第4高調波電流の重畳位相θ4の関係を1条件について求めるだけで、ケーブルの劣化を診断することができる。
以下、印加電圧中の高調波成分のために従来方法では劣化診断が不可能な場合であっても、これに影響されることなく診断が可能であること、および、複数の重畳位相での測定を行わずに劣化診断を行う方法について測定例を用いて説明する。
(1)測定例1:印加電圧中に高調波成分が含まれている場合と含まれていない場合について、本発明方法と従来方法による劣化診断の比較
供試試料としては、水トリー劣化した22kCVケーブル150mm2(絶縁厚さ6mm)2種類と、比較用として同サイズの新品CVケーブルを用意した。
用意した2種類の劣化ケーブルは軽劣化品と重劣化品であり、劣化程度が異なるものである。これらの劣化ケーブルの劣化状況は同種の他試料の調査より、軽劣化品は最大で1mm程度の外導水トリーが発生してAC破壊電圧が120〜200kVに分布していること、また重劣化品は最大で3mm程度の外導水トリーが発生してAC破壊電圧が40〜80kVに分布していることが確認されている。以下に示す実施例における測定では、いずれのケーブルにおいても、測定有効電極長は20mで統一した。
測定は前記した第9図(b)に示す回路を用いて行った。同図に示すように、電力ケーブル4に並列に標準コンデンサ5を接続し、標準コンデンサ5を損失測定ブリッジ3の一方の端子に接続し、また、損失電流測定ブリッジ3の他方の端子をケーブル4の遮蔽層に接続する。
そして、まず、電源1から周波数50Hzの商用周波電圧6kVをケーブル4の中心導体と遮蔽導体間に印加して、損失電流測定ブリッジ3により、ケーブル絶縁体中を流れる電流中から容量性電流を除去することで損失電流を測定する。次いで、この印加電圧及び損失電流測定ブリッジ3のバランス状態を保持した状態で、電源2の周波数100Hz、2kVの電圧を重畳印加して損失電流を測定する。
得られた損失電流を離散数値データとしてコンピュータ等から構成される波形解析装置8内に取り込み、離散数値高速フーリエ変換処理を行って基本波成分と各高調波成分に分離し、第3高調波電流や第4高調波電流の大きさや重畳位相の値を得た。
また同時に、印加電圧についても図示しない分圧器を介して波形解析装置8内に取り込み、その高調波含有状況と基本波電圧と重畳電圧の重畳位相θv2の値を確認した。
2種類の周波数の電圧の重畳電圧下における損失電流の測定は、重畳位相θv2を−90°〜90°の範囲における複数点において実施した。
周波数100Hzの重畳電圧の発生には出力周波数を任意に設定可能な交流安定化電源の出力電圧を重畳用変圧器で昇圧することで得ている。また、基本波電圧は商用電源からの電圧を変圧器にて昇圧している。商用電源の周波数は東日本では公称値として50Hzとされているが、電力系統の負荷状況などによりこの公称値から±0.数Hz程度の偏差を持ち、その偏差も時間的に変動するのがごく一般的である。
このため、本発明を実施するにあたり、厳密な意味において重畳電圧の周波数が寸分の狂いもなく基本波電圧の周波数の2倍とならず、本発明の効果が十分に発揮されないということが懸念されるが、以下に示すようにそのような問題は生じない。
いま、基本波電圧の周波数が(50±ε)Hz(ここで、εは商用周波数公称値からの偏差)であったとすると、原理的に劣化信号は損失電流中の(200±2ε)Hzに現れることになる。商用周波数公称値からの偏差εは最大で0.3を見ておけば十分であり、この場合劣化信号は199.4〜200.6Hzの周波数範囲に現れることになる。この損失電流を、基本周波数を50Hzとしてフーリエ級数展開して200Hz成分を抽出したとしても、その値は基本波電圧の周波数が正確に50Hzであり、かつ重畳電圧の周波数が正確に100Hzである場合に得られる200Hz成分の値と比較して最大で1%も違わない。つまり、上記のように基本波電圧の周波数に商用周波数公称値からの偏差が存在しようとも本発明の効果が著しく低下するというようなことはなく、むしろほとんど影響は現れないというべきである。
上記測定回路を用い、印加電圧中に高調波成分がほとんど含まれていない場合、および、印加電圧中に高調波成分が含まれている場合のそれぞれについて、従来方法による測定、および本発明による測定を実施した。
(a)印加電圧に高調波成分がほとんど含まれていない場合
第34図に示した高調波成分含有状況である周波数50Hzの印加電圧(基本波電圧)を用いて、従来方法及び本発明による方法で新品、軽劣化品、重劣化品の測定を実施した。従来方法において影響が心配される印加電圧中の第3高調波成分(150Hz)は第34図に示すように基本波成分に対して0.2%程度である。
従来方法は基本波電圧のみを印加して得られる損失電流中の第3高調波電流の大きさや重畳位相を用いて劣化診断を行うものである。
今回の実施例において得られたこれらの値を第35図に示す。
第35図から明らかなように、劣化の進行に伴って第3高調波電流の大きさが増加し、同時に第3高調波電流の重畳位相が正の方向に移行しており、印加電圧中の第3高調波成分が0.2%程度であれば従来方法においても問題なくケーブルの劣化診断が可能であることを示すものである。
次いで、上記基本波電圧に周波数100Hz、2kVの電圧を重畳印加して本発明による測定を行った。
その結果、損失電流中の第4高調波電流の重畳位相θ4と、印加した2種類の周波数(50Hzと100Hz)の重畳電圧の重畳位相θv2の関係は第36図に示すようになった。
第36図からわかるように、θv2とθ4の関係を示す直線が試料の劣化程度に対応して推移しており、この関係を用いてケーブルの劣化診断が可能であることが確認できる。
以上より、当然ながら高調波成分をほとんど含まない理想的な印加電圧であるならば、従来方法においてもケーブルの劣化診断が可能なことが確認されたと同時に、本発明による方法も同様に劣化診断として有効であることが確認された。
(b)印加電圧に高調波成分が含まれている場合
続いて、周波数50Hzの印加電圧(基本波電圧)として第37図に示す高調波含有状況のものを用いた場合における、従来方法及び本発明による方法で新品、軽劣化品、重劣化品の測定を実施した。
第37図より、従来方法において影響が心配される印加電圧中の第3高調波成分は2.7%程度と比較的高いものとなっている。
前記実施例と同様に行った従来方法による測定結果を第38図に示す。
第38図から明らかなように、従来方法の場合には、第3高調波電流の大きさ及び重畳位相とも劣化程度の違いによらず、ほとんど変わらない値を示しており、劣化程度に対応した値が得られていない。このことは、印加電圧中の第3高調波成分による影響として損失電流中に現れる第3高調波電流の大きさが、劣化により発生する第3高調波電流の大きさを上回っていることを示すものであり、従来方法では正確な劣化診断を行うことが不可能であることを示すものである。
次いで、上記基本波電圧に周波数100Hz、2kVの電圧を重畳印加して本発明による測定を行った。
その結果、損失電流中の第4高調波電流の重畳位相θ4と、印加した2種類の周波数の重畳電圧の重畳位相θv2の関係は第39図に示すようになった。
第39図からわかるように、本発明による方法ではθv2とθ4の関係を示す直線が試料の劣化程度に対応して推移しており、また第36図に示した高調波成分をほとんど含まない印加電圧にて得られたθv2とθ4の関係とほとんど同じものが得られることが確認できた。
つまり、本発明による方法によれば、印加電圧中に高調波成分(特に第3高調波成分)が含まれている、含まれていないに関わらず、正確にケーブルの劣化診断が行えることが確認された。
(2)測定例2:複数の重畳位相での測定を行わない劣化診断
上記の測定例においては、2種類の周波数の電圧の重畳位相θv4とこの重畳電圧下で測定される損失電流中の第4高調波電流の重畳位相θ4の関係を把握するため、複数の重畳位相θv4における測定を実施した。
しかし、これまでの測定結果を見て明らかなように、両者の関係が直線で表される比例関係にあり、その傾きは常に一定(θ4/θv4=1/2)であることを考慮すれば、複数の重畳位相θv2における測定を実施する必要はなく、重畳位相θv2に関してある一条件の測定のみを実施するだけでも劣化診断を行うことが可能である。この方法について実施例を用いて以下に説明する。
(a)まず一つの方法は、周波数50Hzの基本波電圧に対する周波数100Hzの重畳電圧の重畳位相θv2を常にある一定値に固定して測定を実施する方法である。
第40図は重畳位相θv2を0°で固定した条件下での測定で得られた重畳位相θ4(横軸)とその試料の破壊電圧(縦軸)との関係を示すものである。これに供試した試料はこれまでの実施例で用いたケーブルと同種のものであり、また基本波電圧と重畳電圧の電圧値および測定の手順もこれまでの実施例と同一である。
第40図より、試料の破壊電圧が低下する、つまり劣化が進行するにしたがって、θ4の値がプラスの方向へ非常に相関よく移行していることが認められる。このように、周波数50Hzの基本波電圧と周波数100Hzの重畳電圧の重畳位相θv2を固定して得られた損失電流中の第4高調波の重畳位相θ4の値はそのままケーブルの劣化程度に対応したものとして扱えることがわかる。また、重畳位相θv2の値はこの実施例にあげた0°に限定されるものではなく、いかなる値であってもそれが測定時に統一されていれば、θ4と劣化程度の関係は良く対応する。
(b)もう一つの方法は、上記のように周波数50Hzの基本波電圧と周波数100Hzの重畳電圧の重畳位相θv2を所定の値に固定せずに測定を実施し、θv2とθ4の関係が常に一定の傾き(θ4/θv2=1/2)を持つ直線で表されるという関係を利用して、各測定時の電圧重畳位相θv2からθ4の値を補正する方法である。
つまり、θv2とθ4の関係は次式(1)のように表すことができるため、測定により得られたθv2及びθ4を(1)式に代入すれば未知数kを求めることができ、第33図、第35図、第37図に示したようなその試料の劣化程度を示す直線を決定することができる。
θ4=θv2/2+k (kは定数) (1)
したがって、この関係式を利用すれば任意の電圧重畳位相θv2におけるθ4を求めることができる。つまり、各測定結果に対してこの補正を行い、ある一定の重畳位相θv2におけるθ4を求めれば、統一された電圧重畳条件下におけるデータとして評価することが可能となる。
前記の実施例と同様の試料を用い、印加電圧及び測定手順も同一の条件であるが、電圧重畳位相θv2については特に所定の値に固定するということはせずに測定を実施した場合の測定結果を第41図に示す。
また、得られたθ4と破壊電圧との関係を第42図に示す。このように、電圧重畳位相θv2が統一されていないために、得られたθ4と破壊電圧、つまり劣化程度との相関は全く認められない。
そこで、(1)式の関係を用いて各試料の測定結果からθv2=0におけるθ4(これは(1)式中のkと同一である)を求めた。その結果を第43図に示す。
また、得られたθ4と破壊電圧との関係を第44図に示す。同図に示すように、θv2とθ4の関係が常に一定の傾きをもつという関係を利用して測定結果を整理することにより、劣化の進行に応じてθ4の値がプラスの方向へ移行していることが認められるようになる。
このように電圧重畳位相θv2を所定の値に固定せず測定を実施した場合であつても、θv2とθ4の関係を利用して、各測定結果の値から統一した電圧重畳位相θv2からθ4を求めることにより、ケーブルの劣化程度と相関の良い結果が得られることがわかる。
以上より、複数の重畳位相θv2における測定を実施することは必ずしも必要でなく、重畳位相θv2に関してある一条件の測定のみを実施するだけでも充分に劣化を診断することが可能であることが確認された。
なお、ここに挙げた実施例では基本波電圧の周波数として50Hzである場合についての例を示したが、これは当然60Hzであっても本発明の効果が失われることなく、また、その他の周波数であっても良い。
また、基本波電圧及び重畳電圧の電圧値についても、この実施例と同一の電圧値である必要はなく、対象ケーブル線路や測定上の制約を考慮して決定してよい。
D.実施例4:第1の電圧V1に対する第2の電圧の重畳位相と、損失電流中の第4高調波成分の第1の電圧に対する重畳位相の関係に基づく劣化診断(その2)
本実施例においては、第3の実施例と同様、第9図(b)に示す回路により、ケーブルに周波数f(基本周波数)を持つ第1の電圧(基本波電圧)を印加して、損失電流を測定する操作を行い、次いで前記第1の電圧及び損失電流測定回略のバランス状態を保持した状態で、基本周波数の2倍の周波数2fを持つ第2の電圧(重畳電圧)を重畳印加した場合に測定される損失電流を測定した。
そして、ケーブル印加電圧をV1sin(ωt)+V2sin{2(ωt+θv2)}、その際に測定された損失電流中の第4高調波電流をI4sin{4(ωt+θ4)}と表現し(ここで、V1:周波数fの電圧(基本波電圧)の振幅、V2:周波数2fの電圧(重畳電圧)の振幅、I4:損失電流中の第4高調波成分の振幅、θv2:周波数2fの電圧の重畳位相、θ4:第4高調波電流の重畳位相、ω=2πf)、I4及びθ4を評価してケーブルの劣化程度を診断した。ここで、特にθ4はθv2に依存してある一定の関係で変化することが確認されており、この点に着目して実際の測定においてはθv2を所定の値に固定して条件を統一するか、もしくは測定されたθ4を統一した所定のθv2条件の値に補正することが必要である。
損失電流中の第4高調波成分の電流I4はケーブルの劣化進行つまり水トリーの成長にともなって値が増加していくため、この値を評価することでケーブルの劣化程度を診断することができる。
また、第4高調波電流の重畳位相θ4についても特定の値の周波数2fの電圧の重畳位相θv2で統一された条件下ではケーブルの劣化程度に対応した値を示すことから、これを用いてケーブルの劣化程度を診断することができる。
このように上記I4とθ4はともにケーブルの劣化程度を反映したものであり、それぞれ単独でその値を評価してもケーブルの劣化程度を診断することが可能であるが次のような不都合が生じる場合もある。
すなわち、第4高調波成分の電流I4は前記したように水トリーの成長に対応した変化を示すと同時にケーブル中の水トリー発生量にも依存するため、例えば特定ケーブルを定期的に測定して得られた結果を評価する場合には不都合は生じないが、水トリーの発生量が異なるようなケーブルでの測定結果を評価する場合などでは、判断を誤る場合がある。
一方、第4高調波電流の重畳位相θ4は逆に水トリーの発生量に関する情報が含まれていないため、水トリーの成長度合いを診断するには都合が良いが、その劣化がケーブル全体に渡って生じているものであるのか、ある一部分のものであるのかの明確な区別がつかない。
このようにI4及びθ4はどちらもケーブルの劣化に対応したものであるが、両者は各々ケーブルの劣化状態の異なる側面を色濃く反映したものである。したがって、この両者を合わせて評価することでケーブルの劣化状態をさらに詳細に診断することが以下の理由により可能となる。
また、ケーブルに印加する周波数fの第1の電圧V1と周波数2fの電圧V2の電圧の比率を同じに保つたまま、少なくとも2種類の電圧値における測定を行い、得られた第4高調波電流の大きさI4と、第1の電圧V1に対するこの第4高調波電流の重畳位相θ4の電圧特性を評価することで、ケーブルの劣化状態をさらに正確に把握することができる。
第4高調波電流は水トリーが示す電圧一電流特性の非線形性に起因して発生するものであり、この非線形性は水トリーの成長とともにその程度が増していく。したがって、水トリー劣化の進んだケーブルほど、劣化信号である第4高調波電流の電圧特性が顕著に現れる。
この特徴を用いれば、例えば複数のケーブルで、ある印加電圧条件でのI4もしくはθ4の値として同程度のものが得られた場合や、劣化程度に関するさらに詳しい評価が必要な場合には、異なる印加電圧条件での測定を実施してI4もしくはθ4の電圧特性を比較し、電圧特性の顕著なもの(電圧に対するI4もしくはθ4の増加率の大きいもの)をより劣化程度の進んだものとして判断できる。
以下、具体的な測定例を用いて本発明の効果を説明する。
供試試料には、水トリー劣化した22kvCVケーブル150mm2(絶縁厚さ6mm)2種類と、比較用として同サイズの新品CVケーブルをそれぞれ複数用意した。
用意した2種類の劣化ケーブルは軽劣化品と重劣化品であり、劣化程度が異なるものである。
これらの劣化ケーブルの劣化状況は同種の他試料の調査により、軽劣化品は最大で1mm程度の外導水トリーが発生してAC破壊電圧が120〜200kVに分布していること、また重劣化品は最大で3mm程度の外導水トリーが発生してAC破壊電圧が40〜80kVに分布していることが確認されている。
以下に示す測定では、いずれのケーブルにおいても、測定有効電極長は20mで統一した。
測定方法は前記第9図(b)に示す回路にて、まず周波数50Hzの商用周波電圧6kVをケーブルの中心導体と遮蔽導体間に印加して、ケーブルと並列に接続した標準コンデンサに流れる電流を用いて、損失電流測定ブリッジにてケーブル絶縁体中に流れる電流中から容量性電流を除去するバランス操作を行う。
その後、この印加電圧及び損失電流測定ブリッジのバランス状態を保持した状態で、周波数100Hzの電圧2kVを重畳印加して損失電流を測定する。得られた損失電流は離散数値データとしてコンピュータ内に取り込み、離散数値高速フーリエ変換処理を行って基本波成分と各高調波成分に分離し、第4高調波電流の大きさI4と重畳位相θ4の値を得た。
なお、ここではケーブルに印加する基本波電圧と重畳電圧の重畳位相θv2の値として、常に、θv2=0°での条件で測定を実施した。また、電圧特性を評価する測定では50Hzの電圧9kVに100Hzの電圧3kVを重畳する組み合わせと、50Hzの電圧12kVと100Hzの電圧4kVを重畳する組み合わせにおいて、同様の手順で測定を実施した。
(1)第4高調波電流の大きさI4と重畳位相θv4を合わせて評価する方法
各試料において測定された第4高調波電流の大きさI4とそれぞれの試料の破壊電圧の関係を第45図に示す。
また、第4高調波電流の重畳位相θ4とそれぞれの試料の破壊電圧の関係を第46図に示す。
これらの図中で破壊電圧が300kV以上のものは○印、100〜300kVのものは口印、100kV以下のものは◇印でブロツトしている。
まず、第4高調波電流の大きさI4については、試料の破壊電圧の低下、つまり劣化の進行に伴うI4の増加傾向が若干認められるが、ばらつきが大きい。
これは同一長の試料であつても発生している水トリー発生量がそれぞれ異なるためであり、I4が水トリーの発生量を反映することを示すものである。
一方、第46図に示す通り第4高調波電流の重畳位相θ4と破壊電圧の関係は非常に相関良く対応する。
劣化したケーブルの破壊では発生している水トリーのうち最長のものがその破壊を引き起こすことから、θ4はケーブルに発生した水トリーの長さ、特に最長の水トリーの情報を反映し、水トリーの発生量には影響されにくいものであることを第46図は示している。
劣化診断にはその時点におけるケーブルの劣化程度を評価すると同時にそれ以後の余寿命を予測することも期待されるものである。ある時点以降の劣化進行を予測する場合、その時点における水トリーの発生量は重要な情報である。つまり、ケーブルの性能を低下させる因子である水トリーの数が多いほど、その後、急速に成長する水トリーの存在する確率が高いと考えられるためである。
したがって、その時点の劣化進行状況及びそれ以後の劣化進行の可能性を評価する意味では、その時点における水トリーの成長の程度と水トリーの発生量の両方を合わせて評価する必要がある。
第47図はθ4を横軸にI4を縦軸にしてそれぞれの試料の測定結果をプロツトしたものである。このようにθ4とI4を合わせて同一平面上で劣化状態の評価を試みると、例えば破線で区切られた領域で示すような余寿命を考慮した診断が可能になる。
(2)I4及びθ4の電圧特性で劣化を評価する方法
上記の実施例中のデータには、少なからずI4及びθ4の傾向とケーブルの劣化程度(破壊電圧)の傾向が一致しないものがある。そのようなケーブルにおけるI4びθ4の電圧特性を評価するとさらに詳しく劣化程度を診断することが可能になる。
例えば、第45図及び第46図の図中に示した試料Aと試料BのI4及びθ4の測定値は第48図の通りであり、I4及びθ4とも試料Aの方が試料Bよりも劣化している傾向を示す値となっているが、それぞれの破壊電圧は試料Aが70kVで試料Bが45kVであるから、この場合の測定結果は両者の劣化程度に対応していない。
ただし、試料A,BにおけるI4及びθ4の電圧特性は、第49図及び第50図に示すものであり、I4及びθ4いずれにおいても試料6の方が電圧の増加に伴う測定値の増加の割合が大きく、電圧特性が顕著に現れている。
したがって、試料Bの方が試料Aよりも水トリーの非線形性が大きく、劣化がより進んでいると評価できる。このように、単一の印加電圧条件での測定結果で評価が判然としない場合には、複数の電圧値における測定を実施してその電圧特性を評価することでさらに詳しく試料の劣化状態を評価することが可能となり、より精度の高い劣化診断を実現できる。
以上説明したように、周波数fの第1の電圧V1に周波数2fの第2の電圧V2を重畳印加した際に測定される損失電流中の周波数4fの電流成分(第4高調波電流)の大きさI4と電流位相θ4を合わせて評価する本実施例は、その時点におけるケーブルの劣化程度を診断すると同時にそれ以後の余寿命を予測するにも適した診断方法である。
また、I4とθ4の電圧特性を評価して診断する方法によれば、単一の印加電圧条件での測定結果で評価が判然としない場合に、さらに詳しく試料の劣化状態を評価することが可能となり、より精度の高い劣化診断を実現できる。
なお、上記実施例2〜実施例4では、基本波に対してその2倍の周波数を持つ電圧を重畳印加して、損失電流中にあらわれる第4高調波電流の大きさあるいは、第4高調波成分の第1の電圧に対する重畳位相に基づき劣化診断を行う場合について説明したが、前記したように、基本波のn分の1の周波数を持つ電圧を重畳印加して劣化診断を行ってもよい。
E.実施例5:劣化診断に要するトータルコストの大幅な削減
前記したように、電力ケーブルの劣化診断には、大容量のトランスを必要とし、特に、GIS線路の場合にはガス処理にもコストがかかるといった問題があり、トータルコストの削減が強く望まれていた。
試験に要するトータルコストを低減させるためには、測定電圧を大幅に低減して設備を小型軽量化することが基本である。そして、GIS終端線路において、ガス処理なしに電圧を印加する方法を実現することが必要である。
このために種々検討した結果、いわゆるメガー測定等の際に用いられる接地端子と呼ばれる端子がケーブル終端部の導体引き出し棒からGISのガスケース外部に取り付けられているが、これを使うことでガス処理を行わずにスイッチ操作のみでケーブル導体への電圧印加部分として利用することが可能であることがわかった。
この部分の絶縁性能は直流電圧で概ね10kV以下であることが調査により明らかとなった。従って、この接地端子を利用して電圧印加を行う場合、これよりも低い電圧であれば可能であることがわかる。
この電圧値は、22kVケーブルの対地運転電圧である12.7kVよりも低いため、このような電圧で劣化診断を有効に行うには、どのような診断法でも適用可能であるというわけではない。
測定電圧が低いということは、劣化信号の検出感度が低くなることにつながるが、これはノイズレベルが劣化信号に対して相対的に大きくなることにより生じる現象である。
交流電圧による劣化診断法で問題となるノイズは、直流性ノイズ、印加電圧と同じ周波数成分のノイズ及び印加電圧の周波数の奇数次高調波ノイズ、特に第3高調波ノイズである。
一方、たいていの劣化診断法においては、劣化信号は直流、印加電圧と同じ周波数帯、印加電圧の奇数次高調波帯に現れるのが通例であるため、測定電圧を低下させると劣化信号がノイズに埋もれてしまい、有効な診断ができなくなる場合が多い。
しかし、ケーブルへの印加電圧として交流電圧成分として周波数fを持つ第1の電圧と、第1の電圧よりも低い電圧値である交流電圧成分として周波数2fを持つ第2の電圧を重畳印加し、ケーブルから流れる全充電電流から第1の電圧の交流電圧成分に対して90°進み成分である周波数fなる容量性電流成分を除去して得られる損失電流を観測すると、劣化信号として4fなる周波数成分を持つ信号の得られることが明らかになった。
この方法であれば、4fなる周波数成分はケーブルに印加した2つの周波数成分いずれに対しても偶数次の高調波となるため、元々ノイズレベルの値い領域に劣化信号を発生させることが可能となり、信号レベルが小さくなっても必要な検出感度を確保できることがわかった。
但し、この場合でもいくらでも電圧を低下させて良いわけではなく、必要最低限のレベルは存在する。種々実験を行った結果、線路状況にもよるが、概ね実効値で0.1kV/mm以上の電界を与えれば最低限有効な測定を行えることが明らかになった。
以上のようにすれば、測定電圧を低下させて試験用変圧器の設備規模を小型化してこの取り扱いを容易にし、運用コストの低減を図ることができる。
また、測定電圧を低下させることができるため、GIS接地端子からの電圧印加が可能となり、GIS部におけるガス処理を省略してこれに要するコストを削減することができる。同時に劣化診断測定として上述した方法を採用することで測定電圧の低減による感度低下を防止することができ、低コストで一定レベルの精度が得られる劣化診断万法を得ることが可能となった。
次に、具体例により本実施例を説明する。
(1)供試試料
実験における供試試料として、以下の2種類のケーブルを用いた。
・経年使用水トリー劣化ケーブル
浸水した環境下で25年使用されて撤去された、絶縁厚6mmの22kVCVT3×150mm2を用いた。湿式架橋方式により製造され、内導は押し出し、外導はテープのいわゆるE一Tタイプである。
撤去後の調査で交流破壊電圧を調査したところ40〜70kV程度であり、このクラスの製造当時の実力では150kV以上が期待されるため、絶縁性能的には、当時の1/2以下に低下している。サンプリングにより水トリー調査を行ったところ、ボウタイトリーが内導で約1000〜2000μm、外周水トリーで約3000〜4000μm程度まで伸びていることがわかった。
・比較用新品ケーブル
劣化していないケーブルとして、新品の絶縁厚6mmのCVT3×150mm2を用いた。破壊電圧は350kV以上あり、現在の製造レベルのケーブルとしては十分な特性を有しているものである。
(2)測定例1
以上のケーブルを用いて、印加電圧を下げた場合における劣化信号の測定結果を、商用周波交流電圧のみを印加して損失電流中の第3高調波を測定したケースと、商用周波交流電圧にその2倍の交流電圧を重畳印加して損失電流中の商用周波の第4高調波を測定したケースの2つについて比較してみた。
今回の実験では、測定電圧を運転電圧である12.7kVよりもかなり低くして、以下の3つのケースについて測定した。
〔1〕50Hzの商用周波交流電圧のみ3kVを印加して損失電流中の第3高調波を測定した場合。
〔2〕50Hz商用周波交流電圧を2kV、その2倍の周波数の100Hzの電圧を0.6kV印加して、損失電流の第4高調波(200Hz)を測定した場合。
〔3〕50Hz商用周波交流電圧を1kV、その2倍の周波数の100Hzの電圧を0.3kV印加して、損失電流中の第4高調波(200Hz)を測定した場合。
実験ではケーブルの長さを50mにして、測定を行った。
ケーブルへの電圧印加は、〔1〕の場合は第51図に示す回路にて試験用トランスを用いた。
すなわち、同図に示すように、電力ケーブル4と並列に標準コンデンサ5を接続し、電源1(周波数f1)から試験用トランス10を介して電圧を印加し、電力ケーブル4の絶縁体中に流れる電流および標準コンデンサ5に流れる電流を損失電流測定ブリッジ3に入力し、絶縁体中に流れる電流から第1の電圧V1に対して90°位相が進んだ成分を除去して損失電流を抽出した。そして、損失電流測定ブリッジ3の出力を、オシロスコープ7に導き、コンピュータ8により波形が解析した。
また、〔2〕,〔3〕の場合は、第52図に示す回路にて試験用トランスを用いた。すなわち、同図に示すように電力ケーブル4と並列に標準コンデンサ5を接続し、電源1(周波数50Hz)と電源2(周波数100Hz)から試験用変圧器10,11を介して電圧を印加して、電力ケーブル4の絶縁体中に流れる電流および標準コンデンサ5に流れる電流を損失電流測定ブリッジ3に入力し、絶縁体中に流れる電流から第1の電圧V1に対して90°位相が進んだ成分を除去して損失電流を抽出した。そして、損失電流測定ブリッジ3の出力を、オシロスコープ7に導き、コンピュータ8により波形が解析した。
電源は〔1〕ではある程度、高調波、特に第3高調波の影響をある程度抑制することに注意を払ったものを用いた結果、印加電圧中の第3高調波含有率は約0.4%程度にすることができた。
一方、〔2〕,〔3〕では、100Hzを重畳する際に50Hzの電圧のAsin(ωt)+Bsin(2ωt)となるようなゼロクロスの一致させ方とし、かつ印加電圧中に発生する高調波については特段の配慮を行わなずに実験を行った。実験データの取り扱いとして、まず測定される電流の大きさについて整理した結果を第53図に示す。
これをみると明らかなように、〔1〕のケースでは経年ケーブル、新品ケーブルいずれも測定結果も同じ様な値を示しており、劣化進行の有無を判別することができない。
これに対して、〔2〕〔3〕のケースでは経年ケーブル、新品ケーブルいずれに対しても測定される劣化信号の大きさに明瞭な違いが見られる。〔1〕では測定時の印加電圧に高調波が入らないように考慮しているにもかかわらず、劣化進行の有無を区別できないのに対して、〔2〕〔3〕では同様の高調波対策を行っていなくても劣化進行の有無を判別できるといったように、両者には際立った違いが見られる。
このように、単一の周波数を持つ電圧印加により、印加電圧第3高調波により劣化診断を行う場合、測定電圧を低くすると有効な劣化診断が行えないのに対して、ある周波数を持つ基本波電圧と、その2倍の周波数を持つ電圧を重畳印加して、基本波電圧の第4高調波により劣化診断を行う方法の有効性が基本的に確認されたことになる。
(3)測定例2
次に、本発明の手法で有効な劣化診断が行える下限電界がどの程度になるかを調査した。実験では前述の経年ケーブル及び新品ケーブルに対して、50Hz電圧を変化させながら、その電圧の30%に相当する100Hz電圧を重畳印加し、その時に観測される第4高調波電流を測定した。
その結果を第54図に示す。
これをみると、新品ケーブルで観測された第4高調波電流は印加電圧を変化させても大きな変化がない。これは測定される電流がほぼノイズであることを意味する。
これに対し、経年ケーブルで観測された第4高調波電流は印加電圧の低下に伴って次第に低下してくることがわかる。
これより、ある基本周波数にその2倍の周波数を持つ電圧を重畳印加して、基本周波数の第4高調波電流を測定して劣化診断を行う方法においても、測定電圧をむやみに低下させることで劣化診断の有効性が損なわれることがわかる。そこで、低下させても良い下限値を検討してみた。
ここで一つ基準となるのが、劣化信号として得られた電流値がノイズレベルの2倍以上あるかどうかという点である。いわゆるS/N比であるが、これが2を越えるレベルにあれば、ノイズと信号の弁別が可能となる。この観点で第54図のデータを見ると、測定時の基本電圧が0.6kVを越えていれば、満足することがわかる。
今回の供試試料は絶縁厚が6mmであるので、ケーブルの平均ストレスは、0.1kV/mmとなる。よって、少なくともこの程度のストレスを印加すれば、S/N比が十分大きい測定が可能になることがわかった。
(4)検討
一方、劣化信号を大きく測定するためには、印加電圧を大きくすれば良いが、現場における測定という性格上、現場測定に用いる試験用変圧器は小さい事が必要となる。変圧器の大きさ及び重量は印加電圧及び印加するケーブル線路の静電容量で定まる。
劣化診断を行おうとするケーブル線路の静電容量を調査したところ、概ね3μF程度を上限としておけば、90%以上の線路をカバーできることがわかった。
そこで、最大静電容量3μF、基本電圧周波数を50Hz、重畳印加する電圧の周波数を100Hzとして、その最大電圧値を基本電圧の30%とした条件にて、種々の最高発生電圧における試験用変圧器の重量を試算した。これには、電圧調整器、補償用リアクトル、制御盤等の付帯機器一切を含む課電システムとしての設備を含むものである。その結果を第55図に示す。
劣化診断の機動性、という面からは試験設備を汎用的に現場に持ち込める条件を満たすことが必要となる。この意味からは、普通運転免許で運転可能な4t車に積載可能なことが望ましい。この観点より考えると、最高出力電圧10kVとした場合が上限になることがわかる。これより小さい出力電圧であれば、大型車運転免許等、必ずしも汎用的でない免許なしに試験装置を現場に持ち込むことができる。
(5)まとめ
以上の実験及び検討の結果、以下の条件を満たす測定を行えば、十分な測定感度にて劣化状態の判別が可能となり、かつ現場での測定を考えた上で機動性、汎用性のある試験装置による測定か可能となることがわかった。
〔1〕測定方法として、印加電圧として第1の交流電圧成分として周波数fを持つ電圧と、第1の電圧成分よりも低い電圧値である第2の交流電圧成分として周波数2fを持つ電圧を重畳印加し、ケーブルから流れる全充電電流のうちの周波数fの電流成分より、第1の交流電圧成分に対して90°進み成分である周波数fなる容量性電流成分を除去して得られる損失電流中の第4高調波成分に着目して劣化程度を診断する方法を採用する。
〔2〕測定時の第1の交流成分電圧の印加ストレスとして少なくとも0.1kV/mm以上であること。
〔3〕測定時の第1の交流成分電圧の最大値が10kV以下であること。
F.その他の実施例
以上説明した実施例1〜5では、損失電流成分を測定する方法として、電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1を印加した後に電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流成分を測定し、その電流波形及びその中に含まれる周波数成分を調べ、次いで、前記第1の電圧を同じに保ったままで、周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2とする)を更に重畳印加する方法を用いる場合について説明したが、損失電流を測定する方法は上記方法に限られるものではなく、例えば、次の方法を用いることもできる。
すなわち、電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1を印加した場合に電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流成分を測定し、次いで、上記容量性成分を除去する操作をそのままに静置した状態で、周波数f1を持つ第1の電圧V1に変えて、周波数f1を持つ第1の電圧と同一の電圧に周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2)を合成した電圧波形を印加した場合の損失電流成分を測定する方法である。
具体的には、まず電圧V1を印加して損失電流を測定するためのブリッジ操作を行って、そのバランス状態を固定したままで一旦電圧V1をオフにする。その後、電圧V1と電圧V2が予め合成された波形を直接ケーブルに印加して、ブリッジの出力を観測する方法である。
この方法の場合には、50Hzと100Hzの2つの電源を個別に用意する必要はなく、任意の合成波形を発生できる発振器+電力増幅器+トランスがあれば、電源は1台で済む。
産業上の利用分野
以上説明したように、本発明においては、測定のために用いる電圧に含まれる高調波が大きく、損失電流中に含まれる第3高調波による診断が正確にできない場合であつても、電源中の高調波の影響を受けることなく、電力ケーブルの正確な劣化診断を行うことが可能となる。
このため、フィールドでの測定のように測定電流の高調波除去が困難な場合や、そのための対策に要するコストが高くなるような電力ケーブルの劣化診断に、非常に大きなメリットとなる。
また、必要十分な信号検出感度を維持し、かつ汎用的に可搬型の試験設備を用いて劣化診断ができるようになるため、現場運用性に富む、機動性の良い劣化診断方法を実現することが可能になる。

Claims (10)

  1. 電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1を印加した後に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、その電流波形およびその中に含まれる周波数成分を調べ、
    次いで、前記第1の電圧を同じ値に保ったままで、周彼数f1の2倍の周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2)を更に重畳印加した場合の損失電流成分を測定し、
    損失電流中に含まれる周波数成分の内、f2+2×f1又は|f2ー2×f1|の周波数成分に着目して劣化診断を行う
    ことを特徴とする電力ケーブルの劣化診断方法。
  2. 電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧を印加した後に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、その電流波形およびその中に含まれる周波数成分を調べ、
    次いで、前記第1の電圧を同じ値に保ったままで、周波数f1のn分の1倍(nは3以上の整数)の周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2)を更に重畳印加した場合の損失電流成分を測定し、
    損失電流中に含まれる周波数成分の内、f2+2×f1又は|f2−2×f1|の周波数成分に着目して劣化診断を行う
    ことを特徴とする電力ケーブルの劣化診断方法。
  3. 電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1を印加した場合に電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流成分を測定し、
    次いで、上記容量性成分を除去する操作をそのままに静置した状態で、周波数f1を持つ第1の電圧V1に変えて、周波数f1を持つ第1の電圧と同一の電圧に周波数f1の2倍である周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2)を合成した電圧波形を印加した場合の損失電流成分を測定し、
    損失電流中に含まれる周波数成分の内、f2+2×f1又は|f2−2×f1|の周波数成分に着目して劣化診断を行う
    ことを特徴とする電力ケーブルの劣化診断方法。
  4. 電力ケーブルに周波数f1を持つ第1の電圧V1を印加した場合に電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流成分を測定し、
    次いで、上記容量性成分を除去する操作をそのままに静置した状態で、周波数f1を持つ第1の電圧V1に変えて、周波数f1を持つ第1の電圧と同一の電圧に周波数f1のn分の1倍(nは3以上の整数)の周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2)を合成した電圧波形を印加した場合の損失電流成分を測定し、
    損失電流中に含まれる周波数成分の内、f2+2×f1又は|f2−2×f1|の周波数成分に着目して劣化診断を行う
    ことを特徴とする電力ケーブルの劣化診断方法。
  5. 電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1と、第1の電圧の2倍の周波数f2を持つ第2の電圧V2(但しV1≧V2)を重畳印加した場合に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、損失電流中に含まれる周波数成分の内、第1の電圧の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分を測定することにより、電力ケーブルの劣化診断をする方法であって、
    上記第1の電圧V1の2倍の周波数を持つ上記第2の電圧V2の、第1の電圧V1に対する位相を変化させ、上記第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分の大きさの変化の大小を測定することによってケーブルの劣化程度を診断する
    ことを特徴とする電力ケーブルの劣化診断方法。
  6. 電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1と、第1の電圧の2倍の周波数f2を持つ第2の電圧をV2(但しV1≧V2)を重畳印加した場合に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、損失電流中に含まれる周波数成分の内、第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分を測定することにより、電力ケーブルの劣化診断をする方法であって、
    第2の電圧V2の第1の電圧V1に対する重畳位相θv2と、測定される損失電流中の上記第4高調波電流成分の第1の電圧V1に対する重畳位相θ4との関係から、電力ケーブルの劣化程度を診断する
    ことを特徴とする電力ケーブルの劣化診断方法。
  7. 請求項記載の電力ケーブルの劣化診断方法であり、
    第2の電圧V2の第1の電圧V1に対する重畳位相θv2と、損失電流中の上記第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分の第1の電圧V1に対する重畳位相θ4の関係が、一定の傾きの劣化程度に応じて定まる直線で近似されることを利用して、ある電圧重畳状態下において測定された上記第4高調波電流成分の重畳位相θ4と、そのときの第2の電圧V2の重畳位相θv2とから電力ケーブルの劣化程度を診断する
    ことを特徴とする電力ケーブルの劣化診断方法。
  8. 電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1と、第1の電圧の2倍の周波数f2を持つ第2の電圧をV2(但しV1≧V2)を重畳印加した場合に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、損失電流中に含まれる周波数成分の内、第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分を測定することにより、電力ケーブルの劣化診断をする方法であって、
    損失電流中の上記第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分の大きさI4と、この第4高調波電流成分の第1の電圧V1に対する重畳位相θ4の両者を合わせて評価することにより、ケーブルの劣化程度を診断する
    ことを特徴とする電力ケーブルの劣化診断方法。
  9. 電力ケーブルに、周波数f1を持つ第1の電圧V1と、第1の電圧の2倍の周波数f2を持つ第2の電圧をV2(但しV1≧V2)を重畳印加した場合に、電力ケーブルの絶縁体中に流れる電流に含まれる周波数f1の容量成分を除去することで得られる損失電流を測定し、損失電流中に含まれる周波数成分の内、第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分を測定することにより、電力ケーブルの劣化診断をする方法であって、
    第1の電圧V1と第2の電圧V2の比率を同じに保ったまま、少なくとも2種類の電圧値における測定を行い、得られた第1の電圧V1の4倍の周波数を持つ第4高調波電流成分の大きさI4と、この第4高調波電流成分の第1の電圧V1に対する重畳位相θ4の電圧特性を評価することにより、ケーブルの劣化程度を診断する
    ことを特徴とする電力ケーブルの劣化診断方法。
  10. 請求項1,2,3,4,5,6,7,8または請求項記載の電力ケーブルの劣化診断方法であって、
    第1の電圧V1を商用周波電圧とすることを特徴とする電力ケーブルの劣化診断方法。
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