JP4304384B2 - 電解コンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解コンデンサ、特に中高圧用の電解コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサは、小型、大容量、安価で整流出力の平滑化などに優れた特性を示し、各種電気、電子機器の重要な構成要素の一つである。
【0003】
一般に、電解コンデンサは、アルミニウム、タンタルなどのいわゆる弁金属の酸化皮膜を誘電体層として形成したものを陽極側電極として使用する。そして、この陽極側電極に対向させて陰極側電極を配置し、陽極側電極と陰極側電極間にセパレータを介在させ、このセパレータに電解液を保持させている。
【0004】
陽極側電極となる化成箔は、高純度の弁金属からなる箔を表面積拡大のためにエッチング処理した後、化成液中で電圧印加して酸化皮膜を形成することによって作成される。この化成処理時の印加電圧によって誘電体である酸化皮膜の耐電圧が決定される。また、陰極側電極となる陰極箔は、エッチング処理を施した高純度の箔からなる。
【0005】
そして、セパレータは、陽極箔と陰極箔がショートするのを防止し、併せてこの電解液を保持するものであり、クラフト紙、マニラ紙等の薄く低密度の紙が用いられている。
【0006】
そして、電極引出し端子を接合した陽極箔と陰極箔をセパレータを介して重ね合わせ、巻回してコンデンサ素子を作成し、このコンデンサ素子に電解液を含浸し、ケースに入れて封口し、再化成して、電解コンデンサが形成される。
【0007】
電解コンデンサ用電解液は、前述のように誘電体層に直接に接触し、真の陰極として作用する。即ち、電解液は電解コンデンサの誘電体と集電陰極との間に介在して、電解液の抵抗分が電解コンデンサに直列に挿入されていることになる。したがって、電解液の電導度はコンデンサの誘電損失の大きさに影響する。また、電解液中でアルミニウム箔に電圧を印加した際にショートする電圧を電解液の火花電圧といい、電解液の酸化皮膜形成性をあらわす。
【0008】
そして、従来では、中高圧用の電解液として、火花電圧が比較的高く得られることから、ほう酸や、セバシン酸、アゼライン酸等の有機ジカルボン酸が用いられてきた。さらに、高火花電圧、高電導度を有する、ブチルオクタン二酸(特公昭60−13296号公報)を溶質として用いる例や、最近では1,7−オクタンジカルボン酸(特開平2−224217)を用いた例がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、スイッチング電源を使用した電子機器が一般家庭で汎用されるようになり、電解コンデンサの安全性に対する幅広い要求が、高まってきている。すなわち、この電子機器に使用されるスイッチング電源には、電解コンデンサが用いられているが、供給電力が不安定な使用環境では、この電解コンデンサに過電圧が印加される場合があり、このような過電圧に耐えることができる安全性の高い電解コンデンサへの要求が高まっている。ところが、前記電解液を用いた電解コンデンサではこの要求に答えることができず、さらに高い耐電圧及び過電圧特性を有する電解コンデンサが求められている。
【0010】
また、インバーター等の電子機器においては、効率向上が求められ、そのために、これらの動作速度の高周波化が進んできている。そして、この電子機器の高周波化には対応するためには、電解コンデンサの高周波対応を図らねばならず、この要求にも、前記電解液を用いた電解コンデンサでは答えることができず、さらに損失の低い電解コンデンサへの要求が高まっている。
【0011】
そこで、本発明の第一の目的は、中高圧用の電解コンデンサにおいて、さらに高耐圧特性及び高過電圧特性を有する電解コンデンサを提供することであり、第二の目的は、同じく中高圧用の電解コンデンサにおいて、さらに低損失特性を有する電解コンデンサを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記第一の課題を解決するための、本発明の電解コンデンサは、ポリビニルアルコール溶液を塗布し、乾燥してポリビニルアルコールを付着したセパレータを介して、陰極箔および表面に形成されたピットの径が0.1μm以上の陽極箔を巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子がエチレングリコールと側鎖を有するジカルボン酸またはその誘導体、またはそれらの塩と、ほう酸を含む電解コンデンサ用の電解液に接触するとともに、電解液がゲル化したことを特徴としている。
【0013】
また、この電解コンデンサに用いる電解液に含まれる、側鎖を有するジカルボン酸またはその誘導体、またはそれらの塩の含有率が、0.1〜35wt%であることを特徴としている。
【0014】
さらに、側鎖を有するジカルボン酸またはその誘導体、またはそれらの塩の含有率が、0.5〜3wt%であり、ほう酸の含有率が5〜40wt%であることを特徴としている。
【0015】
また、側鎖を有するジカルボン酸またはその誘導体、またはそれらの塩の含有率が、5〜25wt%であり、ほう酸の含有率が0.1〜5wt%であることを特徴としている。
【0016】
次に、第二の課題を解決するための本発明の電解コンデンサは、ポリビニルアルコール溶液を塗布し、乾燥してポリビニルアルコールを付着したセパレータを介して、陰極箔および表面に形成されたピットの径が0.1μm以上の陽極箔を巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子がエチレングリコールと炭素数が6〜10の直鎖脂肪族飽和ジカルボン酸、または芳香族モノカルボン酸、またはこれらの塩と、ほう酸を含む電解コンデンサ用の電解液に接触するとともに、電解液がゲル化したことを特徴としている。
【0017】
また、この電解コンデンサに用いる電解液に含まれる、炭素数が6〜10の直鎖脂肪族飽和ジカルボン酸、または芳香族モノカルボン酸、またはこれらの塩の含有率が、0.1〜35wt%であることを特徴としている。
【0018】
そして、本発明の第一及び第二の課題を解決する電解コンデンサに用いる電解液に含まれる、ほう酸の含有率が0.1〜40wt%であることを特徴としている。
【0019】
さらに、本発明の第一及び第二の課題を解決する電解コンデンサに用いるポリビニルアルコールが付着したセパレータは、セパレータにポリビニルアルコール溶液を塗布、乾燥して形成したことを特徴としている。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の電解コンデンサに用いるセパレータには、ポリビニルアルコール(PVA)が付着している。付着する方法は、PVA溶液をセパレータに塗布し、乾燥して付着させる方法、または、PVA粉末をセパレータに混抄する方法等があるが、PVA溶液をセパレータに塗布し、乾燥して付着させる方法が、より良好な特性を得ることができる。
【0021】
PVA溶液をセパレータに塗布する方法としては、コンマリバース方式の塗工機(コーティング機)等を用いて、電解コンデンサ用セパレータにPVA溶液を塗布し、乾燥する。PVA溶液は塗布後、セパレータに浸透し、乾燥後にはPVAがセパレータの繊維間に、繊維に付着した状態になる。
【0022】
セパレータには、不織布、マニラ紙、クラフト紙、セルロース紙等が使用され、また、ガラス、合成高分子の繊維を用いたセパレータを使用することもできる。セパレータの密度は、0.15〜0.9g/cm3 であり、好ましくは、0.15〜0.65g/cm3 である。この範囲未満ではセパレータの強度が不十分であり、この範囲を越えると、コンデンサのtanδが大きくなる。また、セパレータの厚みは、20〜150μmであり、好ましくは20〜80μmである。この範囲未満では、強度が不十分であり、この範囲を越えると、tanδが大きくなる。
【0023】
セパレータに付着させるPVAは、市販のPVAを用いることができ、重合度は、200〜3500のものを用いることができる。けん化度については、70mol%の部分けん化したものから、99.5mol%以上の完全けん化したものを用いることができるが、90%以上のものが好ましい。
【0024】
また、陽極箔は以下のように作成したものを用いる。電解コンデンサ用の金属箔を酸性溶液中で、通電処理して、金属箔の表面にピットを生成させ、その後に、高温の酸性溶液中での化学溶解によってピットの径を拡大させて表面積を拡大するエッチングを行う。次いで、このエッチング箔を前処理し、ほう酸、りん酸等の酸あるいはこれらの塩の水溶液中で、所定の電圧にいたるまで電圧を印加し、所定の電圧に達してからはこの電圧を一定時間保持し、その後に減極処理を行い、再度電圧を印加して、金属箔に誘電体酸化皮膜を形成する。この際には、エッチングによって拡大された金属箔の表面に酸化皮膜が形成されるので、ピット内部にも酸化皮膜が形成される。したがって、酸化皮膜形成後の陽極箔のピットの径は、エッチング後の金属箔のピットの径よりも小さくなる。本発明においては、この陽極箔の酸化皮膜が形成された後のピットの径が、0.1μm以上のものを用いる。
【0025】
本発明に用いる陰極箔は通常の電解コンデンサに使用するアルミニウム等の金属箔であればよい。
【0026】
そして、以上のセパレータ、陽極箔、陰極箔を用い、セパレータを陽極箔、陰極箔の間に挟んで巻回し、コンデンサ素子を作成する。次いで、このコンデンサ素子に電解液を含浸させ、ケース内に入れて、封口材でシールする。
【0027】
次いで、電解液について説明する。
【0028】
本発明の第一の電解コンデンサに用いる電解液は、側鎖を有するジカルボン酸またはその誘導体、またはそれらの塩と、ほう酸を含有してなるものであるが、側鎖を有するジカルボン酸としては、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、2,4,7,6−テトラメチル−1,10−デカンジカルボン酸、2,4,7,9−テトラメチル−1,6−デカンジカルボン酸、2,4,7,6−テトラメチル−5,6−デカンジカルボン酸、7−メチル−7−メトキシカルボニル−1,9−デカンジカルボン酸等を、その誘導体としては、7,9−ジメチル−7,9−ジメトキシカルボニル−1,11−ドデカンジカルボン酸、7,8−ジメチル−7,8−ジメトキシカルボニル−1,14−テトラデカンジカルボン酸、等を挙げることができる。
【0029】
そして、側鎖を有するジカルボン酸またはその誘導体、またはそれらの塩(以下、側鎖を有するジカルボン酸類)とほう酸の電解液中の含有率は、側鎖を有するジカルボン酸類については0.1〜35wt%が好ましい。また、ほう酸については、0.1〜40wt%が好ましい。
【0030】
さらに好ましくは、側鎖を有するジカルボン酸類の含有率が0.5〜3wt%で、かつ、ほう酸の含有率は5〜40wt%である。この場合、側鎖を有するジカルボン酸類の含有率が、この範囲外では耐電圧が低下しする。また、ほう酸の含有率が、この範囲未満では耐電圧が低下し、この範囲を越えるとtanδ(誘電損失)が上昇する。
【0031】
また、好ましくは、側鎖を有するジカルボン酸類の含有率が5〜25wt%で、かつ、ほう酸の含有率は0.1〜5wt%である。この場合、側鎖を有するジカルボン酸類の含有率が、この範囲未満ではtanδが上昇し、この範囲を越えると耐電圧が低下する。また、ほう酸の含有率が、この範囲未満では耐電圧が低下し、この範囲を越えるとtanδが上昇する。
【0032】
次に、本発明の第二の電解コンデンサに用いる電解液は、炭素数が6〜10の直鎖脂肪族ジカルボン酸、または芳香族モノカルボン酸、またはそれらの塩と、ほう酸を含有してなるものであるが、炭素数が6〜10の直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等を、芳香族モノカルボン酸としては、安息香酸、トルイル酸等を挙げることができる。
【0033】
ここで、直鎖脂肪族ジカルボン酸において、炭素数が6未満の場合は、耐電圧が低下する。また、炭素数が11以上では、tanδが上昇する。また、芳香族ジカルボン酸の場合は、耐電圧が低下する。
【0034】
そして、炭素数が6〜10の直鎖脂肪族ジカルボン酸、または芳香族モノカルボン酸、またはそれらの塩(以下、直鎖脂肪族ジカルボン酸類)とほう酸の電解液中の含有率は、炭素数が6〜10の直鎖脂肪族ジカルボン酸類については0.1〜35wt%が好ましい。0.1wt%未満ではtanδが上昇し、35wt%を越えると耐電圧が低下する。
【0035】
また、ほう酸については、0.1〜40wt%が好ましい。0.1wt%以下では耐電圧が低下し、40wt%を越えるとtanδが上昇する。
【0036】
そして、これらの塩としては、アンモニウム塩、アミン塩、四級アンモニウム塩および環状アミジン化合物の四級塩が挙げられる。アミン塩を構成するアミンとしては一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等)、二級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン等)、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8─ジアザビシクロ(5,4,0)─ウンデセン─7等)が挙げられる。第四級アンモニウム塩を構成する第四級アンモニウムとしてはテトラアルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等)、ピリジウム(1─メチルピリジウム、1─エチルピリジウム、1,3─ジエチルピリジウム等)が挙げられる。また、環状アミジン化合物の四級塩を構成するカチオンとしては、以下の化合物を四級化したカチオンが挙げられる。すなわち、イミダゾール単環化合物(1─メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4─ジメチル─2─エチルイミダゾール、1─フェニルイミダゾール等のイミダゾール同族体、1−メチル−2−オキシメチルイミダゾール、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾール等のオキシアルキル誘導体、1−メチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5(4)−アミノイミダゾール等のニトロおよびアミノ誘導体)、ベンゾイミダゾール(1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール等)、2−イミダゾリン環を有する化合物(1─メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−フェニルイミダゾリン等)、テトラヒドロピリミジン環を有する化合物(1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5等)等である。
【0037】
溶媒としては、プロトン性の有機極性溶媒として、一価アルコール類(エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類およびオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール等)などが挙げられる。また、非プロトン性の有機極性溶媒としては、アミド系(N−メチルホルムアミド、N,N─ジメチルホルムアミド、N─エチルホルムアミド、N,N─ジエチルホルムアミド、N─メチルアセトアミド、N,N─ジメチルアセトアミド、N─エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、ラクトン類(γ─ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン等)、環状アミド系(N─メチル─2─ピロリドン、エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、イソブチレンカーボネイト等)、ニトリル系(アセトニトリル等)、オキシド系(ジメチルスルホキシド等)、2−イミダゾリジノン系〔1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ(n−プロピル)−2−イミダゾリジノン等)、1,3,4−トリアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン等)〕などが代表として挙げられる。
【0038】
また、本発明の電解コンデンサ用電解液に、ほう酸系化合物、例えばほう酸、ほう酸と多糖類(マンニット、ソルビットなど)との錯化合物、ほう酸と多価アルコール(エチレングリコール、グリセリンなど)との錯化合物等、界面活性剤、コロイダルシリカ等を添加することによって、さらに、耐電圧の向上をはかることができる。ただし、本発明においては、PVAの添加は行わない。
【0039】
また、漏れ電流の低減や水素ガス吸収等の目的で種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、芳香族ニトロ化合物、(p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノールなど)、リン系化合物(リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、酸性リン酸エステル化合物)、オキシカルボン酸化合物等を挙げることができる。
【0040】
本発明では、陽極箔のピットに含浸した電解液に、セパレータに付着させたPVAが接触して、PVAと電解液中のエチレングリコールとほう酸によりゲル化する。この際に、陽極箔の表面のピットの径が0.1μm以上に形成されているので、ゲルがピット内部まで進行するのに十分な空隙が存在し、ピットの内部にまでPVAが浸透して誘電体皮膜との密着性の良いゲルを形成する。したがって、PVAが電解液にゲル状態になって均一に混合することによって、火花電圧の高い電解質が得られて、コンデンサの耐電圧が向上し、誘電体と密着面積が広く、かつ、密着性の良好な電解質が形成されるので、損失特性が低下することがない。
【0041】
このゲル化の挙動は以下のように推察される。本発明によるコンデンサ素子を電解液に接触させることによって、まず、電解液が、陽極箔のピットに含浸する。そして、その後に、含浸した電解液にセパレータに付着させたPVAが接触して、電解液中のエチレングリコールとほう酸とPVAによるゲル化が進行し、誘電体皮膜との密着性の良いゲル状電解質が得られる。この場合、ピットの径が0.1μm以上の場合にピット内部に良好なゲルが形成される。このことによって、火花電圧が高く、誘電体との密着性の良い電解質が得られるので、高耐電圧を有し、低誘電損失を維持した電解コンデンサが得られる。
【0042】
また、この方法によれば、前記のように、電解液とPVAとのゲル化が良好な状態で進行するので、PVAが電解質中に均一に分散した状態となり、このPVAの作用によるものと思われるが、過電圧特性が向上する。
【0043】
さらに、セパレータの、電解液に溶解、反応したPVAの残留分が、主体繊維に付着した状態で、主体繊維間に存在し、このように主体繊維にPVAが付着したセパレータに電解液が保持された全体の状態が、高電導度を維持しているものと思われる。ここで、PVAのケン化度が90モル%以上のものを用いた場合、さらに耐電圧は高くなる。
【0044】
ここで、PVAを付着させる方法としては、PVA溶液をセパレータに塗布し、乾燥して付着させる方法、または、PVA粉末をセパレータに混抄する方法等があるが、PVA溶液をセパレータに塗布し、乾燥して付着させる方法が、より高い過電圧特性を得ることができる。理由は以下のようであると考えられる。PVA粉末をセパレータに混抄する場合は、セパレータの繊維とPVAの比重の差によって、抄紙前の混合溶液が均一混合にならず、抄紙後のセパレータのPVAに分布ができるので、電解コンデンサを作成して電解液をゲル化した後に、電解液のゲル化の状態に分布ができる。これに比べて、PVA溶液を塗布、乾燥する方法では、PVA溶液を塗布した後にセパレータに浸透し、乾燥後にPVAがセパレータの繊維間に均一に付着した状態となり、このことによって良好な過電圧特性が得られるものと考えられる。
【0045】
ここで、PVAを添加した電解液を作成し、この電解液を巻回したコンデンサ素子に含浸し、ケースに封入した後に、加熱して電解液をゲル化させても、耐電圧特性、過電圧特性共、さほどの向上は見られず、誘電損失も上昇する。これは、電解質のゲル化が良好ではなく、さらに、ゲル化した電解質が誘電体皮膜へ良好な状態で密着していないことが原因であると思われる。
【0046】
さらに、第一の発明では、高火花電圧、高電導度を有する、側鎖を有するジカルボン酸類と、ほう酸を含む駆動用電解液を用いているので、誘電損失特性を損なうことなく、高い耐電圧を有する電解コンデンサを得ることができる。
【0047】
以上のように、第一の発明においては、セパレータと陽極箔と電解液の相乗効果によって、誘電損失特性を損なうことなく、高耐圧、高過電圧特性を有する電解コンデンサを得ることができる。
【0048】
また、第二の発明においては、電導度の高い、直鎖脂肪族ジカルボン酸類と、ほう酸を含有した電解液を用いているので、さらに低損失を有する、高圧用の電解コンデンサを得ることができる。
【0049】
以上のように、第二の発明においては、セパレータと陽極箔と電解液の相乗効果によって、中高圧領域に適用できる耐電圧を有し、さらに、低誘電損失特性を有する電解コンデンサを得ることができる。
【0050】
【実施例】
以下に実施例をあげて、本発明を更に具体的に説明する。
【0051】
(実施例1)セパレータ(クラフト紙、密度0.75g/cm3 、厚み50μm)に、PVA(けん化度96mol%、重合度1700)を20%溶解した水溶液を、コンマリバース方式の塗工機にて塗布し、加熱乾燥させて、PVAが付着したセパレータを得た。PVAの付着量は、5g/m2 であった。このセパレータを陰極箔、表面に形成されたピットの径が0.1μm以上である陽極箔の間に挟み、巻回して、500V−10μFのコンデンサ素子を作成した。また、エチレングリコール100部、1,7−オクタンジカルボン酸アンモニウム15部、ほう酸3.5部の電解液を作成した。そして、この電解液をコンデンサ素子に含浸し、アルミニウムケースに入れてゴム封口し、次いで、加熱して、550V印加し、再化成するとともに、電解液をゲル化して、アルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0052】
(実施例2)実施例1において、エチレングリコール100部、1,6−デカンジカルボン酸アンモニウム15部、ほう酸3.5部の電解液を用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0053】
(実施例3)実施例1において、エチレングリコール100部、1,6−デカンジカルボン酸アンモニウム1部、ほう酸15部の電解液を用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0054】
(実施例4)クラフトのパルプに離解、除塵、脱水処理を施し、これを叩解する。このクラフトにPVA(ケン化度98モル%、重合度1700)粉末を80:20の割合で混合する。そしてこの混合原料を円網抄紙機で抄造して、電解コンデンサ用セパレータを形成した。そして、このセパレータを用いて、実施例1と同様にして、アルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0055】
(実施例5)実施例1において、400V−10μFの素子を用い、エチレングリコール100部、アジピン酸アンモニウム10部、ほう酸3部の電解液を用い、450V印加で再化成して、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0056】
(実施例6)クラフトのパルプに離解、除塵、脱水処理を施し、これを叩解する。このクラフトにPVA(ケン化度98モル%、重合度1700)粉末を80:20の割合で混合する。そしてこの混合原料を円網抄紙機で抄造して、電解コンデンサ用セパレータを形成した。そして、このセパレータを用いて、実施例5と同様にして、アルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0057】
(実施例7)実施例1において、450V−10μFの素子を用い、エチレングリコール100部、安息香酸アンモニウム10部、ほう酸3部の電解液を用い、500V印加で再化成して、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0058】
(比較例1)実施例1において、エチレングリコール100部、セバシン酸アンモニウム8部、ほう酸5部の電解液を用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0059】
(比較例2)実施例1において、エチレングリコール100部、1,7−オクタンジカルボン酸アンモニウム15部の電解液を用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0060】
(比較例3)実施例1において、エチレングリコール100部、ほう酸30部の電解液を用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0061】
(比較例4)実施例1において、通常のセパレータを用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0062】
(比較例5)実施例5において、エチレングリコール100部、グルタル酸アンモニウム10部、ほう酸3部の電解液を用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0063】
(比較例6)実施例5において、エチレングリコール100部、アジピン酸アンモニウム10部の電解液を用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0064】
(比較例7)実施例5において、通常のセパレータを用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0065】
(比較例8)実施例7において、通常のセパレータを用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0066】
(従来例1)実施例1において、通常のセパレータを用い、エチレングリコール100部、1,6−デカンジカルボン酸アンモニウム15部、ほう酸3.5部、PVA3部の電解液を用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0067】
(従来例2)実施例5において、通常のセパレータを用い、エチレングリコール100部、1,7−オクタンジカルボン酸アンモニウム15部、ほう酸3.5部、PVA3部の電解液を用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0068】
(従来例3)実施例7において、通常のセパレータを用い、エチレングリコール100部、1,6−デカンジカルボン酸アンモニウム15部、ほう酸10部、PVA3部の電解液を用いて、同様にアルミニウム電解コンデンサを作成した。
【0069】
実施例1〜4、比較例1〜4、従来例1のアルミニウム電解コンデンサに500Vを印加し、105℃で2000時間の高温負荷試験を行った。その試験結果を(表1)に示した。試験数は20個として、特性は20個のコンデンサの平均値で示した。
【0070】
【表1】
【0071】
(表1)から明らかなように、実施例1〜4は、初期特性、高温負荷試験共に、良好な結果を得ており、定格500Vの高圧用電解コンデンサが実現されている。
【0072】
これらに比較して、側鎖を有しないジカルボン酸であるセバシン酸を含む電解液を用いた比較例1、ほう酸を含まない電解液を用いた比較例2、通常のセパレータを用いた比較例4、及び、従来の高圧用の電解コンデンサである従来例1では、再化成中にショートが発生している。すなわち、本発明の、側鎖を有するジカルボン酸とほう酸を含んだ電解液、及びセパレータを用いない電解コンデンサにおいては、高耐電圧特性が得られない。また、高耐電圧特性を得るためにほう酸を主溶質として用いた比較例3では、再化成、高温負荷試験においてショートの発生はないものの、tanδが高く、使用可能範囲を越えている。
【0073】
次に、実施例1〜4のアルミニウム電解コンデンサに、550Vおよび600Vを印加し、105℃で50時間の過電圧試験を行った。その試験結果を(表2)に示した。試験数は20個として、ショートが発生した個数を表中に示した。
【0074】
【表2】
【0075】
(表2)から明らかなように、実施例1〜4では、550Vの過電圧試験において、ショートの発生はなく、良好な過電圧特性を示している。さらに、PVA粉末を混抄したセパレータを用いた実施例4では、600Vの過電圧試験でショートの発生があるものの、PVA溶液をセパレータに塗布、乾燥して形成したセパレータを用いた実施例1〜3においては、ショートの発生はなく、さらに良好な過電圧特性を示している。
【0076】
次いで、実施例5、6、比較例5〜7、従来例2のアルミニウム電解コンデンサに400Vを印加し、また、実施例7、比較例8、従来例3のアルミニウム電解コンデンサには450Vを印加し、105℃で2000時間の高温負荷試験を行った。それぞれの試験結果を(表3)及び(表4)に示した。試験数は20個として、特性は20個のコンデンサの平均値で示した。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
(表3)から明らかなように、実施例5、6では、初期特性、高温負荷特性の双方において、tanδが従来例2の約1/2になっており、低損失特性を有する、400V用の電解コンデンサを得ている。
【0080】
これらに比較して、炭素数が5のグルタル酸を含む電解液を用いた比較例5、ほう酸を含まない電解液を用いた比較例6、通常のセパレータを用いた比較例7では、再化成中にショートが発生している。すなわち、本発明の、炭素数が6〜10の直鎖脂肪族飽和ジカルボン酸とほう酸を含む電解液、及びセパレータを用いない電解コンデンサにおいては、耐電圧が不十分であることがわかる。
【0081】
また、(表4)から明らかなように、450Vの電解コンデンサにおいても、実施例7は、初期特性、高温負荷特性の双方において、tanδが従来例3の1/2以下になっており、低損失特性を有する電解コンデンサとなっている。また、通常のセパレータを用いた比較例8では、再化成中にショートが発生しており、本発明のセパレータの効果がわかる。
【0082】
次に、実施例5、6、従来例2のアルミニウム電解コンデンサに、450Vおよび500Vを印加し、105℃で50時間の過電圧試験を行った。また、実施例7、従来例3のアルミニウム電解コンデンサに、500Vおよび550Vを印加し、105℃で50時間の過電圧試験を行った。それぞれの試験結果を(表5)、(表6)に示した。試験数は20個として、ショートが発生した個数を表中に示した。
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
(表5)から明らかなように、400Vの本発明の電解コンデンサである、実施例5、6では、450Vの過電圧試験において、ショートの発生はなく、ショートの発生している従来例2より、過電圧特性が向上している。さらに、PVA粉末を混抄したセパレータを用いた実施例6では、500Vの過電圧試験でショートの発生があるものの、PVA溶液をセパレータに塗布、乾燥して形成したセパレータを用いた実施例5においては、ショートの発生はなく、さらに良好な過電圧特性を有することがわかる。
【0086】
また、(表6)から明らかなように、450Vの本発明の電解コンデンサにおいても、500V、550Vの過電圧試験において、従来例3ではショートが発生しているのに比べて、実施例7ショートの発生がなく、過電圧特性が向上している。
【0087】
【発明の効果】
以上のように、本発明による第一の電解コンデンサは、ポリビニルアルコール溶液を塗布し、乾燥してポリビニルアルコールを付着したセパレータを介して、陰極箔および表面に形成されたピットの径が0.1μm以上の陽極箔を巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子がエチレングリコールと側鎖を有するジカルボン酸類と、ほう酸を含む電解コンデンサ用の電解液に接触するとともに、電解液がゲル化しているので、陽極箔のピットの内部まで、誘電体皮膜との密着性の良い、PVAが均一に分散したゲル状電解質が得られて、耐電圧特性が向上し、また、火花電圧の高い、側鎖を有するジカルボン酸類とほう酸を含む電解液を用いているので、これらの相乗作用により、高耐電圧特性を有する高圧用の電解コンデンサが得られる。
【0088】
また、本発明の第二の電解コンデンサは、第一の電解コンデンサと同じセパレータと陽極箔、陰極箔を用いたコンデンサ素子を用い、このコンデンサ素子がエチレングリコールと直鎖脂肪族飽和ジカルボン酸類と、ほう酸を含む電解コンデンサ用の電解液に接触するとともに、電解液がゲル化しているので、第一の電解コンデンサと同様の作用により耐電圧特性が向上し、また、電導度の高い、直鎖脂肪族飽和ジカルボン酸類とほう酸を含む電解液を用いているので、これらの相乗作用により、低誘電損失特性を有する中高圧用の電解コンデンサが得られる。
Claims (8)
- ポリビニルアルコール溶液を塗布し、乾燥してポリビニルアルコールを付着したセパレータを介して、陰極箔および表面に形成されたピットの径が0.1μm以上の陽極箔を巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子がエチレングリコールと側鎖を有するジカルボン酸またはその誘導体、またはそれらの塩と、ほう酸を含む電解コンデンサ用の電解液に接触するとともに、電解液がゲル化した電解コンデンサ。
- 側鎖を有するジカルボン酸またはその誘導体、またはそれらの塩の含有率が、0.1〜35wt%である、請求項1記載の電解コンデンサ。
- 側鎖を有するジカルボン酸またはその誘導体、またはそれらの塩の含有率が、0.5〜3wt%であり、ほう酸の含有率が5〜40wt%である、請求項1記載の電解コンデンサ。
- 側鎖を有するジカルボン酸またはその誘導体、またはそれらの塩の含有率が、5〜25wt%であり、ほう酸の含有率が0.1〜5wt%である、請求項1記載の電解コンデンサ。
- ポリビニルアルコール溶液を塗布し、乾燥してポリビニルアルコールを付着したセパレータを介して、陰極箔および表面に形成されたピットの径が0.1μm以上の陽極箔を巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子がエチレングリコールと炭素数が6〜10の直鎖脂肪族飽和ジカルボン酸、または芳香族モノカルボン酸、またはこれらの塩と、ほう酸を含む電解コンデンサ用の電解液に接触するとともに、電解液がゲル化した電解コンデンサ。
- 炭素数が6〜10の直鎖脂肪族飽和ジカルボン酸、または芳香族モノカルボン酸、またはこれらの塩の含有率が、0.1〜35wt%である、請求項6記載の電解コンデンサ。
- ほう酸の含有率が0.1〜40wt%である、請求項1または6記載の電解コンデンサ。
- ポリビニルアルコールが付着したセパレータは、セパレータにポリビニルアルコール溶液を塗布、乾燥して形成した、請求項1または6記載の電解コンデンサ。
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