JP4327353B2 - ジイソプロピル−フルオロホスファターゼ、ならびにその使用および製造 - Google Patents

ジイソプロピル−フルオロホスファターゼ、ならびにその使用および製造 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、Loligo vulgarisからのジイソプロピル-フルオロホスファターゼ(酵素分類EC 3.1.8.2.、以下「DFPアーゼ」という。)、該酵素をコードする塩基配列、該酵素の使用、および形質転換細胞におけるその製造方法に関する。
【0002】
用語「DFPアーゼ」は、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP)およびその他の同様の構造を有する有機リン化合物を加水分解することができる酵素の一群を示す広い範囲の意味を有する。これらの有機リン化合物のグループは、以下の基本構造の化合物ということができる。
【0003】
【化6】
Figure 0004327353
上記式中、Zは酸素または硫黄を表し、Yは、H-Y化合物としたときに酸性の性質を有し得る基を表す。これは特に、無水物基(脱プロトン化された酸基)(特にFまたはCN基)またはエステル基、例えばチオエステル、エノールエステルまたはp-ニトロフェニルエステル基である。X1およびX2は1〜15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルコキシ、アルキル、アリール、アルキルアミノまたはジアルキルアミノ基であり得る。多数のそのような化合物が殺虫剤として使用されており、あるいは使用されていた。その他の化合物は、いわゆる神経ガスの用語に含まれるものである。この群の化合物の神経ガスとしては、特にDFP、タブン、ソマン、サリン、エチルサリンおよびシクロサリンが挙げられる。
【0004】
これらの非常に有毒な化合物の世界中のストックを減らすことは拡大しつつある問題である。さらに環境のすでに汚染された地域の汚染を除去するための環境的に許容される方法を見出すことが必要である。
【0005】
大量のこれらの物質を破壊するためのこれまで最も重要な方法としては高温での焼却がある。
【0006】
さらに、例えば米国特許第4,666,696号は溶融アルミニウムでの還元による神経ガスおよびその他のコリンエステラーゼ阻害剤の破壊を扱っている。
【0007】
この問題を解決する別の方法として、例えば物理的な方法が挙げられる。すなわち、例えば米国特許第5,550,311号は水流中での毒性化合物(神経ガス)の熱分解を記載している。別の方法が米国特許第5,648,591号に記載されており、これは、例えばサリンのような化学兵器を機械的ミルでの活性化により分解するものである。これらの方法はいずれも経済的効率およびその用途の限られた範囲に関する重大な欠点を有する。すなわち、例えばこれらのいずれの方法においても適当な有毒物質を特別な装置に供給する必要があり、これは例えばこの分野での使用を不可能ではないにしても困難にしている。
【0008】
大量に生産できる微生物または酵素による化学兵器のストックの生物学的処理および汚染除去は、これらの問題の解決の簡略化あるいはそのためのより効果的な方法を提供する可能性がある。
【0009】
従って本発明は、上記の汚染除去方法と対照をなし、Aldrigeによる1953年というかなり以前の知見の上になされたものである。Aldridgeは種々の生物からの様々な組織がコリンエステラーゼ阻害剤であるパラオクソンを加水分解する酵素を含んでいることを見出した。その後の1966年の研究においてHoskinおよび共同研究者はイカLoligo pealiiがDFP分解酵素を含むことを示した。多くの観察がこの領域で今日まで続いてなされたが、組換タンパク質を配列決定することあるいは単離することさえ可能となっていない。Hoskinが調査した酵素はその分子量に関して正確に特性化され得なかった。Hoskinは26,600 Daの分子量を推定したが、その他の研究グループ、例えばKopec-Smythら(1993)は、おそらく26.6 kDaタンパク質は非常に不安定な42 kDaタンパク質の断片にすぎないとした。このDFPアーゼのペプチド断片の短いアミノ酸配列は1993年にWardおよびDeschampsによって発表された。それに記載される配列部分は本発明の特許請求されるアミノ酸配列には見られず、これによりLoligo pealiiからのDFPアーゼは明確に本発明のDFPアーゼとは異なると推定されるべきである。
【0010】
類似したタンパク質がLoligo pealii以外の多様な生物で同定されている。すなわち、それらは特に好熱菌あるいは好塩菌、E. coli、Proteus vulgaris、Saccharomyces cerevisiae、Pseudomonas diminuta、Flavobacteriumおよび真核単細胞生物Tetrahymena thermophilia、ならびに昆虫および無脊椎動物において見出されている。マウス、ラット、ウサギ、ブタおよびヒトのような哺乳類においても検出可能である。本発明のLoligo vulgarisからのDFPアーゼにその特異性において類似している酵素に関する多くの研究グループの努力にもかかわらず、いずれのグループも本発明に対応する酵素のアミノ酸配列およびその基礎となる塩基配列を不完全に解明することにも成功しておらず、ベクターを使用して対応する塩基配列を宿主細胞に形質転換し、それにより優れた純度での工業的な生産を可能とすることにおいても成功していない。Dierl(1995, 論文、Johann Wolfgang Goethe University, Frankfurt/Main)はその研究活動においてLoligo vulgarisからのDFPアーゼの部分配列を解明したが、この研究においてはアミノ酸配列および塩基配列についての詳細は見られない。Dierlにより与えられた部分的な情報は不完全なものであり、そこに示された結果を再現することは、単にその研究が基づいたcDNA遺伝子バンクは公衆がアクセスできないものであり、公衆が利用できないという理由により不可能である。
【0011】
本発明の1つの目的は、Loligo vulgarisからの完全で機能するDFP-開裂酵素および該酵素をコードする塩基配列を提供し、遺伝子工学的なものを工業的に製造することを可能とすることである。別の目的は、分画硫酸アンモニウム沈殿により安定性を損なうことなく工業的規模で単離することができ、約7.5の中性のpHおよび室温(約25℃)でその至適活性を有するDFPアーゼを提供することである。これにより、特に神経ガスと殺虫剤の環境にやさしい、エネルギー節減型の処理という目的を達成することを意図するものである。達成されるべきさらに別の目的は、貯蔵安定性および溶媒安定性を有するDFPアーゼを提供することである。すなわち、例えば濃縮溶液が4℃で活性の無視できる程度の損失のみで長期間にわたり安定であることを意図するものである。また、種々の溶媒または溶媒含有水性媒体(例えば10%強度の水性エタノール溶液)が酵素の活性に影響しないことを意図するものである。達成されるべきさらに別の目的は、多様なバッファー系において活性であるDFPアーゼを提供することである。該DFPアーゼを提供することにより、DFPアーゼの基質となるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の汚染を除去し、脱毒し、さらには検出することを可能とすることを意図するものである。そのような酵素の提供は、適当な神経ガスまたは殺虫剤の工業的な分解を可能とするばかりではなく、汚染された環境(土壌、水路等)の汚染を除去する可能性を提供することも意図するものである。これにより植物におけるクローニングも可能である。また、ヒトまたは動物の解毒あるいは治療のための医薬品を製造するために酵素を使用することも考えられる。これは例えばスキンクリームの形態で局所的に、溶液、点滴もしくは吸入剤の形態で非経口的に、または経口的に前記酵素を使用することを含み得る。
【0012】
前記目的は下記のアミノ酸配列のDFPアーゼを提供することによって達成されている。
【0013】
【化7】
Figure 0004327353
本発明のジイソプロピル-フルオロホスファターゼは、この点において、DFPアーゼ活性が保持される限り、上記の配列から1以上のアミノ酸の欠失、挿入および/または置換によって得ることができるアミノ配列も包含する。いうまでもなくこれはアミノおよび/またはカルボキシ末端側の末端切断を包含するものである。
【0014】
本発明のこのアミノ酸配列はその基盤として、Loligo vulgarisからのDFPアーゼをコードし、好ましい実施形態においては下記の塩基配列を含むDNA配列を含む本発明のDNA配列を有する。
【0015】
【化8】
Figure 0004327353
塩基配列を修飾することにより、例えば、酵素の基質特異性、溶解度および/または安定性を対処すべき問題に適応させることができる。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、本発明のDNA配列の少なくとも1つのコピーを含むベクターを提供することである。このベクターは、本発明のDNA配列が存在する任意の原核生物ベクターあるいは真核生物ベクターであってよく、好ましくは発現シグナルの制御下にあるものである。発現シグナルとしては特に、プロモーター、オペレーターおよびエンハンサーが挙げられる。プロモーターは、例えばT7プロモーターまたはlac、tac、lacUV5もしくはPLプロモーターとすることができる。適当な原核生物ベクターとしては、例えば染色体ベクター、例えばバクテリオファージ(例えばバクテリオファージλ)、染色体外ベクター、例えばプラスミドが挙げられ、この場合環状プラスミドベクターが好ましい。また一方で、本発明のベクターは真核生物ベクター、例えば酵母ベクター、または高等生物細胞に適するベクター、例えばプラスミドベクターもしくはウイルスベクターとすることができる。示したタイプのベクターは分子生物学の分野の技術者にはよく知られたものであり、これについてさらに詳細な説明は要しないであろう。好ましい実施形態においては、DFPアーゼとシグナルペプチドとの融合タンパク質を発現することを可能とするいわゆる分泌ベクターをそのようなベクターとして使用することができる。シグナルペプチドはタンパク質が細胞を通過するのに必要であり、分泌時にDFPアーゼからシグナルペプチダーゼによって正確に切り離される。適当なシグナルペプチドとしては、例えばpelB、αあるいはPH01シグナルペプチドが挙げられる。そのようなシグナルペプチドへのDFPアーゼの結合は、封入小体、すなわち細胞内でのDFPアーゼの凝集の形成を防ぎ、細胞周辺腔または培地にタンパク質をより多量に通過させるために有利である。
【0017】
本発明はさらに、本発明のDNA配列または本発明のベクターによって形質転換された細胞に関する。この細胞は例えば、原核細胞、好ましくはグラム陰性の原核細胞、特に好ましくは真正細菌細胞である。ある実施形態においてはこの細胞は大腸菌(E. coli)細胞である。外来核酸配列による原核細胞の形質転換は分子生物学の分野の技術者によく知られている。しかし本発明の細胞は真核生物細胞、例えば真菌細胞(例えば酵母)、動物または植物細胞であってもよい。好ましい真核生物発現系は、例えばPichia pastorisまたはSaccharomyces cerevisiaeである。外来核酸配列による真核細胞の形質転換またはトランスフェクションは分子生物学の分野の技術者によく知られており、従ってさらに説明することは要しないであろう。
【0018】
上記タンパク質、DNA配列、ベクターおよび形質転換細胞が提供されることにより、DFPアーゼ活性を有する酵素の工業的生産が可能となる。これは簡略で経済的で環境に適合する方法で多量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を分解することを初めて可能としたものである。
【0019】
このことは、DFPアーゼが、組換えDNA技術によって、例えば大腸菌中での発現により、宿主生物抽出物の1成分としてまたは単離され精製された形態で得られることを意味する。本発明によるそのようなDFPアーゼの使用は、P-F結合または前記基本式に対応しP-Y結合を含むアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を分解することを含む。この目的のために、例えば、酵素反応器中でのP-Y結合を含むアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(基本式に対応する)の工業的な分解のために精製され単離されたDFPアーゼを使用することが可能であり好ましい。そのような反応器における酵素の固定は当業者によく知られており、ここで詳述する必要はないであろう。特にDFPアーゼをポリウレタンフォームのような発泡体(foam)に重合することが考えられる。前記使用の別の実施形態は、例えば天然のままの微生物中におけるDFPアーゼの使用であり、これは例えば屋外土壌の汚染除去に使用することができ、この場合、形質転換された土壌菌を好ましく使用することができる。本発明の別の使用は、本発明のDFPアーゼを発泡体中で使用することを含み、この場合、発泡体が担体および/または湿潤材料として作用する。このタイプの発泡体は表面活性発泡体(surfactant foam)とすることができ、これは特に土壌、表面、高価な装置等の汚染除去に使用することができる。ある場合においては、単なる噴霧、すなわちエアロゾルとして適用するだけでも十分である。その場合、発泡体の形態で使用することは必ずしも必須ではない。静置した状態で操業する方法および例えば反応器を使用する方法においてDFPアーゼを使用すること、設備あるいは屋外の広い領域の汚染除去のために移動可能な方法においてDFPアーゼを使用することも考えられる。従って、DFPアーゼの使用の本発明の別の実施形態は、汚染された水路または飲料水の解毒も含み得る。反応器における静止相として使用することによる酵素の固定は、例えば酵素を固体担体に共有結合させることにより行うことができる。
【0020】
コードcDNAは結合した「Hisタグ」を有するものとし得、これにより修飾DFPアーゼを製造することが可能となる。この修飾DFPアーゼは、ニッケルNTAで修飾された担体材料に結合することができる。ニッケルNTAで修飾された担体材料を分離カラムの充填材料とすれば、この方法をDFPアーゼを精製するために使用することができる。
【0021】
さらに共有結合または非共有結合性の結合によって織物に前記酵素を含浸させ、保護布とすることができる。
【0022】
本発明による1つの使用は、新しい検出方法、例えばバイオセンサーを使用するものとすることもできる。この場合、DFPアーゼは変換器上に固定された受容体として作用する。検出されるべき分析対象物、すなわち上記の基質がDFPアーゼにより切断されると、生物学的信号が対応する測定可能な電気シグナルに変換され、これは電子装置により増幅される。最終的なシグナルは一般的には分析対象物の量および/または性質に関連する。DFPアーゼはこの場合、受容体として純粋な単離された形態で、またはそれを発現する細胞中に存在し得る。適当な変換器は、バイオセンサーの分野の技術者に公知の変圧器装置である。
【0023】
本発明のさらに別の使用は、活性成分としてのDFPアーゼを含み、従ってP-Y結合を含むアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に被毒したヒトまたは動物を解毒しあるいは治療するのに貢献し得る医薬製品を提供することである。局所投与以外に非経口あるいは経口投与もこれに適している。
【0024】
本発明はさらに、DFPアーゼの製造方法であって、DFPアーゼが本発明の細胞により生成される方法に関する。すなわちこの方法はDFPアーゼの完全な化学的合成とは異なるものである。形質転換細胞による本発明のDFPアーゼの製造方法においては、発現ベクターによる形質転換は以下のステップにより行う。
(1) Loligo vulgarisの頭部神経節からのmRNAの単離。神経節は屠殺の直後に摘出し液体窒素で直ちに急速冷凍しなければならない。
(2) オリゴ-(dR)-セルロースカラム上でのアフィニティクロマトグラフィーによる前記mRNAの精製。
(3) 前記mRNAのcDNAへの翻訳。
(4) λファージへの前記cDNAのクローニング。
(5) ポリメラーゼ連鎖反応を使用した縮重プローブによるDFPアーゼの遺伝情報を含むλファージの探索。
(6) ポリメラーゼ連鎖反応による前記遺伝情報の増幅。
(7) 前記遺伝情報の発現ベクターへの導入。
【0025】
この方法においては、遺伝子工学の分野の技術者が利用可能な標準的な技術によっては解決できない種々の困難を克服する必要があった。すなわち、例えば、Loligo vulgarisの頭部神経節からのmRNAは屠殺したばかりの動物から単離することは必須であり、頭部神経節はその摘出の後直ちに液体窒素中で保存する必要があるが、このことは自明ではなかった。この手順を使用しないとDFPアーゼの完全長mRNAを単離することは実質的に不可能である。さらにDFPアーゼをコードするmRNAが少数であるために、PCR法を使用することが絶対に必要である。cDNAバンクにおいて遺伝情報を見出すために、さらにLoligo vulgarisからのcDNAと長い領域において一致しなければならない高度に特異的なプローブを開発する必要があった。そのようなプローブの合成は、本発明の時点においては、高度に特異的なプローブを合成することを可能とするLoligo vulgarisからのDFPアーゼの比較的長いタンパク質配列は知られていなかったという事実により妨げられた。分子生物学の分野における技術者であれば、本発明により提供される配列情報のみに基づいて簡単な方法でそのようなプローブを合成できる。
【0026】
以下の実施例は本発明を例示することを意図するものである。
【0027】
実施例
Loligo vulgaris からの頭部神経節の単離およびその後の大腸菌中での組換えタンパク質の発現
(1) 頭部神経節を単離するため、イカの頭部を内臓嚢から切り離し、触手を除去する。口腔から頭部裏側まで切開するため表皮を少し持ち上げる。頭部皮膜および眼球を露出する。全ての神経索を除去した後、脳組織を取り出す。単離の直後に脳組織を液体窒素中に移し、RNAを調製するまで-196℃で保存する。
全てのガラス器具は250℃で4時間乾燥させる。全ての溶液は可能な限りピロ炭酸ジエチルで処理する。脳組織を液体窒素を入れた乳鉢に入れ、均一なペーストにすりつぶす。その後組織をチオシアン酸グアニジニウム、β-メルカプトエタノールおよびN-ラウロイルサルコシンを含むクエン酸バッファー中に移す。ガラス製Potterホモジナイザーを使用して、得られた細胞溶解物に依然として存在する小細胞断片を破壊する。超遠心分離を行う前に、依然として存在する組織粒子を遠心分離によってホモジネートから除去する。塩化セシウム勾配による超遠心分離を行い、その他の細胞成分からRNAを取り出す。遠心分離で得られたペレットをエタノールで洗浄し、水に溶解した後フェノール/クロロホルムで数回抽出する。通常の試験を行ってRNAの質と量をチェックする。
【0028】
(2) mRNAをオリゴ-(dT)-セルロース上のアフィニティクロマトグラフィーにより濃縮する。この目的のために、アフィニティークロマトグラフィーカラムを準備した後、完全なRNAを加熱し、その後氷浴で冷却する。二次構造を破壊した後、完全なRNAを高塩濃度のオリゴ-(dT)-セルロースカラムに負荷する。このことは、ポリ-(A+) RNAが担体材料に特異的に結合することを意味する。mRNAの収量を増やすために、溶出液を回収し、再度変性し、再度負荷することが有利である。ポリ-(A+) RNAが結合したカラムを負荷バッファーおよび洗浄バッファーで洗浄する。低塩濃度の溶液により負荷されたオリゴ-(dT)-セルロースからポリ-(A+) RNAを溶出させ、適当な分画を分光光度法によって決定する。
【0029】
(3) 第1のcDNA鎖は、結合に必要なポリ-(dT)配列の他にXhoI切断部位と「GAGA」配列を含むオリゴ(dT)プライマーを使用して合成する。ハイブリッドの形成の後、mRNAに相補的なDNA鎖を逆転写酵素によって合成する。この反応に使用される逆転写酵素はモロニーマウス白血病ウィルス(M-MuL VRT)からのものであり、これは比較的低いRNアーゼH活性、高プロセシビティ、ポリ-(A-) RNAによる阻害の低い可能性を有することによるものである。合成において制限酵素消化から保護するため、dATP、dGTP、dTTPおよび5-メチル-dCTPの混合物を第1の鎖に使用する。合成の後、遺伝的マーカーmcrA-およびmcrB-を担持する大腸菌株PKL-F’を使用して最初の回の複製を行う。
第1のcDNA鎖の合成に続いて、第2の鎖はGublerおよびHoffmanの方法によって合成する。最初に、エンドリボヌクレアーゼであるRNアーゼHを使用してRNA:DNA二本鎖のRNAを切断する。これにより5’-リン酸末端および3’-ヒドロキシ末端を有するオリゴリボヌクレオチドが得られ、これらはDNAポリメラーゼIにより認識され、DNA合成のための出発物質として使用される。
得られたDNA二本鎖を適当なベクター中にクローニングすることができるようにするために、最初のステップでDNA鎖の突出端をT4 DNAポリメラーゼによる処理で充填する。その後T4 DNAリガーゼを使用してcDNA末端にEcoRIアダプターを付与する。これは、リン酸化9量体および脱リン酸化13量体オリゴデオキシリボヌクレオチドの混合物を使用することを必要とする。リガーゼを熱失活させた後、突出5’末端をT4ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化し、その後DNA二本鎖を制限酵素XhoIにより切断する。適当なベクターへのクローニングは、cDNA末端の2つの異なる制限酵素切断部位を使用することにより行うことができる。
【0030】
(4) 得られたcDNAをバクテリオファージλのベクターアームにクローン化する。先に調製したファージ頭部へのin vitroパッケージングおよびファージ変異体の種々の細胞抽出物とのインキュベーションにより、生育可能なバクテリオファージが得られる。異なる数の組換えベクター分子を含む2つのcDNAバンクを構築し、以降の研究の出発点とする。
【0031】
(5) ジイソプロピル-フルオロホスファターゼの遺伝情報について2つのcDNAバンクをスクリーニングするために、該タンパク質のアミノ酸配列についてのこれまでに解明されている部分的な情報とその他の技術を使用し、該タンパク質のcDNA配列と可能な最大限の一致を示すようにしたオリゴデオキシリボヌクレオチドを設計する。非常にストリンジェントな条件下での、配列5’-TTC-CAA-TTC-CCI-AAT-GGI-ATT-GCT-GT-3’を有する配列特異的オリゴデオキシリボヌクレオチドを使用するポリメラーゼ連鎖反応により、生成物を作製することができる。2つのオリゴデオキシリボヌクレオチドをPCR実験において使用して、Loligo vulgarisからのジイソプロピル-フルオロホスファターゼを同定する。第1のオリゴデオキシリボヌクレオチドは、クローン化されたcDNA配列に結合されたバクテリオファージλの配列からなる。第2のオリゴデオキシリボヌクレオチドは、いずれかの位置にイノシンを含み、解明されたタンパク質配列から得られたものであり、従ってLoligo vulgarisからのジイソプロピル-フルオロホスファターゼに特異的なものである。
cDNAバンクにおいて550 bp長の生成物を検出することができる。ポリメラーゼチェーンリアションの生成物を単離精製した後、配列決定により含まれるDNA情報を解読することができる。cDNA挿入物の両方のDNA鎖は、既に公知のDNA配列から得られたオリゴデオキシリボヌクレオチドを使用して配列決定することができる。DNA配列決定から決定されたリーディングフレームをこれまでに決定されているタンパク質配列と比較することにより、調べた550 bp断片が所望のLoligo vulgarisからのジイソプロピル-フルオロホスファターゼの部分配列であることが示される。
前記酵素のこの部分配列から出発して、1210 bpの全長を有するジイソプロピル-フルオロホスファターゼの完全なcDNA配列を解明することができる。このDNA配列は、約210 bp長の領域を有し、5’末端にコードDNA配列を含まないことを特徴とする。オープンリーディングフレームは942 bpからなり、314アミノ酸を有し約35 kDaの分子量を有するタンパク質をコードする。
【0032】
(6) 発現系を組み立てるために、前記酵素のオープンリーディングフレームを隣接オリゴデオキシリボヌクレオチド配列を使用したポリメラーゼ連鎖反応により増幅する。このオリゴデオキシリボヌクレオチドは前記タンパク質配列特異的情報に加えて発現系へのクローン化を容易にする制限酵素切断部位を含む。Nco I切断部位を情報の5’側に導入し、Hind III切断部位をDNAの3’側に挿入する。ポリメラーゼ連鎖反応の生成物をPfu Tapポリメラーゼを使用して「平滑末端化」し、アガロースゲル上で精製し、単離し、開環ベクターpCR-Script SK(+)中に形質転換する。
【0033】
(7) 所望の遺伝情報を含むプラスミドを選択した後、これをNco I/Hind IIIで切り出し、trcプロモーター系を有する発現ベクター中に形質転換する。この系での発現により、培地1リットルあたり150〜200 mgの生物学的に活性な組換えジイソプロピル-フルオロホスファターゼを得ることができる。

Claims (17)

  1. 下記アミノ酸配列:
    Figure 0004327353
    または1以上のアミノ酸の削除、挿入および/もしくは置換によって得ることができる配列を特徴とするジイソプロピル-フルオロホスファターゼ。
  2. DFPアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列を含むDNAであって、コードされるポリペプチドが下記アミノ酸配列:
    Figure 0004327353
    または1以上のアミノ酸の削除、挿入および/もしくは置換によって得ることができる配列を有する前記DNA。
  3. 下記塩基配列:
    Figure 0004327353
    を含む請求項2に記載のDNA。
  4. 請求項2または3に記載のDNAの少なくとも1のコピーを含むことを特徴とするベクター。
  5. 請求項2もしくは3に記載のDNAまたは請求項4に記載のベクターにより形質転換されたものであることを特徴とする細胞。
  6. 形質転換大腸菌細胞である請求項5に記載の細胞。
  7. 土壌菌または真核生物細胞系である請求項5に記載の細胞。
  8. 請求項1に記載のDFPアーゼを製造する方法であって、DFPアーゼを請求項5、6または7に記載の細胞により製造する前記方法。
  9. P-Y結合を有し、下記の基本構造:
    Figure 0004327353
    (上記中、Zは酸素または硫黄を表し、Yは無水物基(脱プロトン化された酸基)、特にFまたはCN基を表し、またはエステル基、特にチオエステル、エノールエステルもしくはp-ニトロフェニルエステル基を表し、X1およびX2は1〜15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルコキシ、アルキル、アリール、アルキルアミノまたはジアルキルアミノ基を表し、X1およびX2は同一であってもよく異なっていてもよい)を有するアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の分解のための請求項1に記載のDFPアーゼの使用。
  10. DFPアーゼが担体材料上または担体材料中に固定されている請求項9に記載の使用。
  11. DFPアーゼを酵素反応器中で使用する請求項9または10に記載の使用。
  12. DFPアーゼが、そのままあるいはDFPアーゼを生産する固定された形質転換微生物中に存在しており、DFPアーゼがバイオセンサーアセンブリーの受容体として作用する請求項10に記載の使用。
  13. DFPアーゼが、汚染除去用のエアロゾル形成スプレー液体の形態で使用される請求項9に記載の使用。
  14. DFPアーゼが、汚染除去用の表面活性発泡体中に使用される請求項9に記載の使用。
  15. 土壌または設備を汚染除去する請求項13または14に記載の使用。
  16. 飲料水または水路を汚染除去する請求項9に記載の使用。
  17. 担体材料が織物材料である請求項10に記載の使用。
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