JP4359384B2 - 平版印刷版用支持体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版用支持体およびその製造方法に関し、特に、低コストの原材料から製造される平版印刷版用支持体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、平版印刷版用支持体は、アルミニウム合金板の片面あるいは両面に粗面化処理を施した後、印刷時の耐磨耗性を向上させるため、陽極酸化処理を施して製造される。この平版印刷版用支持体に感光層を設けて平版印刷版原版が製造される。また、製版時の真空密着時間を短くするために、前記感光層の表面には、マット層といわれる微小な凹凸が設けられることもある。
【0003】
このようにして製造された平版印刷版原版は、画像露光、現像、水洗等の製版処理を経て平版印刷版とされる。画像露光の方法としては、画像を焼き付けたリスフィルムを密着させて光を当てることで画像部と非画像部との違いをつける方法や、レーザを用いる方法もしくは画像を投影する方法により直接画像部もしくは非画像部を書き込むことによって画像部と非画像部との違いをつける方法、等が挙げられる。画像露光後に施される現像処理の際、未溶解の感光層は、インク受容体として画像部を形成している。現像によりこの感光層が溶解除去された部分は、その下のアルミニウム合金もしくは陽極酸化被膜が露出し、水受容体として非画像部を形成する。現像後必要に応じて親水化処理、ガム引き、さらにバーニング処理等が施されることもある。
【0004】
この平版印刷版は印刷機の円筒状の版胴に取り付けられて、インキと湿し水とを版胴に供給することで親油性の画像部にはインキが付着し、親水性の非画像部には水が付着し、画像部のインキをブランケット胴に転写したうえで、ブランケット胴から紙に画像を印刷する。しかし、時として非画像部に点状あるいは円環状にインキが付着し、結果的に紙面に点状あるいは円環状の汚れを発生させる不具合(過酷インキ汚れ)が起こる問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、多くの提案が開示されている。具体的には使用するアルミニウム合金板に含まれる合金成分を限定する方法が挙げられる。合金成分を限定する方法としては、例えば、Mg、Mn、Si、Ga、Ti、Cu等の合金成分を限定する方法(特開平5−309964号公報、特開平3−177528号公報等);FeとSiとの比を限定する方法(特開平4−254545号公報、特開平7−197162号公報等);Feの固溶量を限定する方法(特開平4−165041号公報等);単体Si量を限定する方法(特許第2544215号、特許第2031725号等);金属間化合物の量、大きさ、分布を限定する方法(特開平4−165041号公報、特開平3−234594号公報、特許第2544215号、特開平4−254545号公報等);種々の組成を有するアルミニウム合金表面に形成された陽極酸化被膜の特徴を限定する方法(特開平7−197393号公報、特開平7−26393号公報等);等が提案されている。しかし、これらは何れも使用される材料の組成に制約を加えるものであるため、材料選択の自由度を低下させてしまうという新たな問題が生じてしまう。
【0006】
それに対し、本発明者らは、アルカリ処理と酸処理とによってアルミニウム合金表面から不要な金属間化合物を除去することで、耐過酷インキ汚れ性の優れた平版印刷版用支持体を製造する方法を先に提案した(特願2000−084856号)。
【0007】
一方、平版印刷版用支持体として使用されるアルミニウム合金としては、JIS1050材、JIS1100材、JIS1070材、Al−Mg系合金、Al−Mn系合金、Al−Mn−Mg系合金、Al−Zr系合金、Al−Mg−Si系合金等が挙げられる。しかし、何れの場合も、平版印刷版用支持体として必要な性能を確保するためには、合金成分を厳密に制御する必要があり、これまでに多くの提案がなされている。
【0008】
JIS1050材に関しては、本発明者らによって、特開昭59−153861号公報、特開昭61−51395号公報、特開昭62−146694号公報、特開昭60−215725号公報、特開昭60−215726号公報、特開昭60−215727号公報、特開昭60−215728号公報、特開昭61−272357号公報、特開昭58−11759号公報、特開昭58−42493号公報、特開昭58−221254号公報、特開昭62−148295号公報、特開平4−254545号公報、特開平4−165041号公報、特公平3−68939号公報、特開平3−234594号公報、特公平1−47545号公報、特開昭62−140894号公報、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に記載されている技術が開示されている。
【0009】
またJIS1070材に関しては、本発明者らによって、特開平7−81264号公報、特開平7−305133号公報、特開平8−49034号公報、特開平8−73974号公報、特開平8−108659号公報および特開平8−92679号公報に記載されている技術が開示されている。
【0010】
Al−Mg系合金に関しては、本発明者らによって、特公昭62−5080号公報、特公昭63−60823号公報、特公平3−61753号公報、特開昭60−203496号公報、特開昭60−203497号公報、特公平3−11635号公報、特開昭61−274993号公報、特開昭62−23794号公報、特開昭63−47347号公報、特開昭63−47348号公報、特開昭63−47349号公報、特開昭64−61293号公報、特開昭63−135294号公報、特開昭63−87288号公報、特公平4−73392号公報、特公平7−100844号公報、特開昭62−149856号公報、特公平4−73394号公報、特開昭62−181191号公報、特公平5−76530号公報、特開昭63−30294号公報、特公平6−37116号公報に記載されている技術が開示されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等に記載の技術も知られている。
【0011】
Al−Mn系合金に関しては、本発明者らによって、特開昭60−230951号公報、特開平1−306288号公報、特開平2−293189号公報に記載されている技術が開示されている。また、特公昭54−42284号公報、特公平4−19290号公報、特公平4−19291号公報、特公平4−19292号公報、特開昭61−35995号公報、特開昭64−51992号公報、US5009722、US5028276、特開平4−226394号公報等に記載された技術も知られている。
【0012】
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本発明者らによって、特開昭62−86143号公報、特開平3−222796号公報に記載されている技術が開示されている。また、特公昭63−60824号公報、特開昭60−63346号公報、特開昭60−63347号公報、EP223737、特開平1−283350号公報、US4818300、BR1222777等に記載された技術も知られている。
【0013】
Al−Zr系合金に関しては、本発明者らによって、特公昭63−15978号公報、特開昭61−51395号公報に記載されている技術が開示されている。また、特開昭63−143234号公報、特開昭63−143235号公報等に記載された技術も知られている。Al−Mg−Si系合金に関しては、BR1421710等に記載された技術も知られている。
【0014】
上述した各種合金は、通常、アルミニウムを主とする原材料を溶解し、それに所定の金属を加えて所定の合金成分を有するアルミニウム合金溶湯とし、引き続きそのアルミニウム合金溶湯に清浄化処理を施し鋳造して製造される。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要なガスを除去するために、フラックス処理;アルゴンガスや塩素ガス等を使った脱ガス処理;セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルターや、アルミナフレーク、アルミナボール等を濾材とするフィルタや、グラスクロスフィルター等を使ったフィルタリング;脱ガス処理とフィルタリングとを組み合わせた処理;等が行われる。このような清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物や酸化物等の異物による欠陥、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが多い。
【0015】
鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固定鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法とがある。DC鋳造法による場合、冷却速度は1〜300℃/秒の範囲で設定される。この過程で、先述の合金成分元素の一部はアルミニウム中に固溶するが、アルミニウム中に固溶しきれない成分が種々の金属間化合物を生成し、鋳塊中に存在することになる。DC鋳造法では、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊は、常法に従い面削が施され、表層から1〜30mm、好ましくは、1〜10mm切削される。その後、必要に応じて、均熱化処理が行われる。均熱化処理を行うことで、生成した金属間化合物のうち、不安定化合物を安定な化合物に変化させたり、またその一部をアルミニウム中に固溶させることができる。
【0016】
しかし、残留した金属間化合物は、その後の熱間圧延、冷間圧延を行う過程で、その径が細かくなったり分散したりはするが、その種類や量は殆ど変化しない。つまり、そのままの状態で平版印刷版用支持体中に残ることになる。また、冷間圧延処理の前後、または、その途中において焼鈍と呼ばれる熱処理を施すこともある。この場合、焼鈍の熱処理温度によってはアルミニウム中に固溶していた一部の元素が金属間化合物、または、元素単体の析出物として析出することがある。この場合もその析出物は平版印刷版用支持体中に残ることになる。冷間圧延によって所定の厚さ(0.1〜0.5mm)に仕上げられたアルミニウム合金板は、平面性を改善するために、ローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって、平面性が改善される。
【0017】
ここで原材料として使用されるアルミニウム原料には、所定の合金成分とするため、通常、新地金と呼ばれる純度99.7%以上のアルミニウム塊が使用されたり、アルミニウム製造工場内で発生した合金成分のわかっているアルミニウム屑が使用されたりする。また必要に応じて、所定の金属を含む母合金と呼ばれるアルミニウム合金を添加したり、所定の元素からなる金属塊を添加して、所望の合金成分を有するアルミニウム合金材料が製造される。
【0018】
しかし、新地金や所定の金属を含むアルミニウム合金材料は、それ自体のコストが高いというデメリットを抱えている。またアルミニウム製造工場内で発生した合金成分のわかっているアルミニウム屑を使用する場合は、原材料の得率が向上する点でメリットはあるが、原材料としては決して低コストなものではない。
【0019】
このような原材料コストが高いという問題に対し、本発明者らは、特開平7−81260号公報にて、99.7%以上のアルミニウム塊のみを使用し、所定の元素を含む母合金や金属塊の添加を不要とする方法を提案した。また、本発明者らは、特開平7−205534号公報において、使用済みの平版印刷版や製造途中で不良となった平版印刷版をアルミニウム原材料として再利用する方法を提案した。
【0020】
しかしこれらの方法でも、純度99.7%以上のアルミニウム塊自体がそれほど安価なわけではなく、使用済みの平版印刷版を安定した原材料として確保することが難しいため、大きな効果は得られなかった。
【0021】
低コスト化を実現させるためには、原材料として、合金成分を制御していない材料、即ち、各種の不純物を含むスクラップ材、あるいは、新地金に比較して市場価格が安く、多くの不純物金属を含む二次地金あるいは再生地金と呼ばれる地金を使用することが考えられる。しかしこれらの材料は、合金成分の制御が殆ど行われていないので、高品質の表面処理外観や印刷性能が要求される平版印刷版の原材料にはまったく使用することができなかった。特に、不純物によって、種々の金属間化合物や析出物が生成しているため、陽極酸化被膜の欠陥が生じやすく過酷インキ汚れが大幅に劣ることに加えて、粗面化した表面の至る所に金属間化合物や析出物が存在することによるブランケット汚れ等の印刷性能不良が発生しやすいという問題があった。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、原材料として、合金成分をほとんど制御していない材料からなるアルミニウム合金板から、表面に金属間化合物が存在しない平版印刷版用支持体を製造する方法および該方法により得られる平版印刷版用支持体を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明らは、アルミニウム含有率が95〜97wt%であって、種々の不純物を含むアルミニウム合金板に粗面化処理、陽極酸化処理を施すと、表面の金属間化合物が少ない平版印刷版用支持体を低コストで製造できることを見出し、本発明に想到した。すなわち、本発明は、
【0024】
<1> 少なくとも、Fe、Si、Cu、Mg、Mn、Zn、Cr、Tiのうち5種以上の不純物金属をそれぞれ以下に示す範囲内で含み、アルミニウム含有率が95〜97wt%であるアルミニウム合金板に、少なくとも、粗面化処理、陽極酸化処理を施し、前記粗面化処理が、少なくとも、アルカリエッチング処理工程と、電解粗面化処理工程と、複数のデスマット処理工程と、からなり、該複数のデスマット処理工程のうち陽極酸化処理に先立つデスマット処理工程が、少なくとも、アルカリ処理工程と、硫酸濃度が300〜500g/Lで、かつ70〜80℃の硫酸を用い、処理時間が4〜6秒間である酸処理工程と、からなることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
Fe:0.3〜1.0wt%
Si:0.15〜1.0wt%
Cu:0.1〜1.0wt%
Mg:0.1〜1.5wt%
Mn:0.1〜1.5wt%
Zn:0.1〜0.5wt%
Cr:0.01〜0.1wt%
Ti:0.03〜0.5wt%
【0025】
<2> <1>に記載の平版印刷版用支持体の製造方法により製造される平版印刷版用支持体であって、粗面化された表面の一部に、金属間化合物の脱落によって生じる直径0.1μm以上の局所的ピットが重畳され、かつ、陽極酸化処理により形成される陽極酸化被膜がその内部に形成されており、前記局所的ピットの存在率が1000〜35000個/mm2であることを特徴とする平版印刷版用支持体である。
【0026】
【発明の実施の形態】
少なくとも、Fe、Si、Cu、Mg、Mn、Zn、Cr、Tiのうち5種以上の不純物金属をそれぞれ以下に示す範囲内で含み、アルミニウム含有率が95〜97wt%であるアルミニウム合金板に、少なくとも、粗面化処理、陽極酸化処理を施し、前記粗面化処理が、少なくとも、アルカリエッチング処理工程と、電解粗面化処理工程と、複数のデスマット処理工程と、からなり、該複数のデスマット処理工程のうち陽極酸化処理に先立つデスマット処理工程が、少なくとも、アルカリ処理工程と、硫酸濃度が300〜500g/Lで、かつ70〜80℃の硫酸を用い、処理時間が4〜6秒間である酸処理工程と、からなることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
Fe:0.3〜1.0wt%
Si:0.15〜1.0wt%
Cu:0.1〜1.0wt%
Mg:0.1〜1.5wt%
Mn:0.1〜1.5wt%
Zn:0.1〜0.5wt%
Cr:0.01〜0.1wt%
Ti:0.03〜0.5wt%
【0027】
以下、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法および該製造方法により得られる平版印刷版用支持体について詳細に説明する。
【0028】
≪1.平版印刷版用支持体の製造方法≫
本発明の平版印刷版用支持体は、例えば、アルミニウム合金からなるウエブ状のアルミニウム合金板(以下、これを「アルミニウム帯状体」と称する。)を準備し、これに少なくとも、粗面化処理、陽極酸化処理を施すことにより製造される。具体的には、例えば、前記粗面化処理は、(1)機械的粗面化処理工程およびアルカリエッチング処理工程、(2)電解粗面化処理工程、(3)デスマット処理工程、からなる。粗面化処理後に、(4)陽極酸化処理(陽極酸化処理工程)が施されて最終的に平版印刷版用支持体が製造される。上記(1)、(2)の工程における粗面化処理は、機械的粗面化処理と電解粗面化処理との両方を行ってもよく、いずれか一方を行ってもよい。
【0029】
実際には、常法でアルミニウムを鋳造し、適宜圧延や熱処理を行って、厚さ0.1〜0.7mmのアルミニウム合金板を作り、必要に応じて平面性矯正を行って作製した平版印刷版用のアルミニウム合金板をアルミニウム帯状体とし、上記(1)〜(4)の各処理工程により連続的に処理され、コイル状に巻き取られ、平版印刷版用支持体が製造される。
【0030】
ここで、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法に使用できるアルミニウム合金としては、新地金と呼ばれる純度99.7%以上のアルミニウム塊ではなく、これまで、平版印刷版としては、使用が困難とされていたスクラップアルミニウム材、2次地金、再生地金等のような純度の低いアルミニウム塊等が挙げられる。純度の低いアルミニウム塊を原材料とすることで、平版印刷版用支持体を従来の方法より低コストで製造することができる。
【0031】
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法には、少なくとも、Fe、Si、Cu、Mg、Mn、Zn、Cr、Tiのうち5種以上の不純物金属を含み、アルミニウム含有率(純度)が95〜97wt%であるアルミニウム合金板を使用する。純度が97wt%より高いと不純物の許容量が少なくなり、コスト削減効果が減少してしまう。95wt%より低いと不純物を多く含むことで圧延中に割れなどの不具合が発生してしまう。
【0032】
Feの含有率は0.3〜1.0wt%であるのが好ましい。Feは新地金においても0.1〜0.2wt%前後含有される元素で、アルミニウム中に固溶する量は少なく、殆どが金属間化合物として残存する。1.0wt%より多いと圧延途中に割れが発生しやすくなり、0.3wt%より少ないとコスト削減効果が減少するため好ましくない。より好ましいFeの含有率は0.5〜1.0wt%である。
【0033】
Siの含有率は0.15〜1.0wt%であるのが好ましい。SiはJIS2000系、4000系、6000系材料のスクラップに多く含まれる元素である。また、新地金においても0.03〜0.1wt%前後含有される元素で、アルミニウム中に固溶した状態、または、金属間化合物として存在する。平版印刷版用支持体の製造過程で加熱されると、固溶していたSiが単体Siとして析出することがある。単体SiとFeSi系の金属間化合物は過酷インキ汚れ性に悪影響を与えることが知られている。Siが1.0wt%より多いと、例えば後述する硫酸による酸処理(デスマット処理工程)でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.15wt%より少ないと、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいSiの含有率は0.3〜1.0wt%である。
【0034】
Cuの含有率は0.1〜1.0wt%であるのが好ましい。CuはJIS2000系、4000系材料のスクラップに多く含まれる元素である。比較的アルミニウムに中に固溶しやすい。Cuが1.0wt%より多いと、例えば後述する硫酸による酸処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.1wt%より少ないと、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいCuの含有率は0.3〜1.0wt%である。
【0035】
Mgの含有率は0.1〜1.5wt%であるのが好ましい。MgはJIS2000系、3000系、5000系、7000系材料のスクラップに多く含まれる元素である。特にcan end材に多く含まれるため、スクラップ材に含まれる主要な不純物金属の1つである。Mgも比較的アルミニウム中に固溶しやすく、Siと金属間化合物を形成する。Mgが1.5wt%より多いと、例えば後述する硫酸による酸処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.1wt%より少ないと、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいMgの含有率は0.5〜1.5wt%で、さらに好ましくは1.0〜1.5wt%である。
【0036】
Mnの含有率は0.1〜1.5wt%であるのが好ましい。MnはJIS3000系材料のスクラップに多く含まれる元素である。特にcan body材に多く含まれるため、スクラップ材に含まれる主要な不純物金属の1つである。Mnも比較的アルミニウム中に固溶しやすく、AlFeSiと金属間化合物を形成する。Mnが1.5wt%より多いと、例えば後述する硫酸による酸処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.1wt%より少ないと、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいMnの含有率は0.5〜1.5wt%、更に好ましくは1.0〜1.5wt%である。
【0037】
Znの含有率は0.1〜0.5wt%であるのが好ましい。Znは特にJIS7000系のスクラップに多く含まれる元素である。比較的アルミニウム中に固溶しやすい。Znが0.5wt%より多いと、例えば後述する硫酸による酸処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.1wt%より少ないと、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいZnの含有率は0.3〜0.5wt%である。
【0038】
Crの含有率は0.01〜0.1wt%であるのが好ましい。CrはJIS5000系、6000系、7000系のスクラップに少量含まれる不純物金属である。Crが0.1wt%より多いと、例えば後述する硫酸による酸処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.01wt%より少ないと、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいCrの含有率は0.05〜0.1wt%である。
【0039】
Tiの含有率は0.03〜0.5wt%であるのが好ましい。Tiは通常結晶微細化材として0.01〜0.04wt%添加される元素である。JIS5000系、6000系、7000系のスクラップには不純物金属として比較的多めに含まれる。Tiが0.5wt%より多いと、例えば後述する硫酸による酸処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.03wt%より少ないと、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいTiの含有率は0.05〜0.3wt%である。
【0040】
以下、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における各処理工程について、順を追って説明する。ただし、以下の各処理工程は例示であり、本発明は、以下の各工程の内容に限定されるものではない。
【0041】
<1.機械的粗面化処理工程およびアルカリエッチング処理工程>
まず、パミストン懸濁液を使用したブラシグレインでアルミニウム帯状体の機械的粗面化処理を行う(機械的粗面化処理工程)。その後、アルミニウム帯状体は、表面の凹凸形状をなだらかとするとともに、表面に残った研磨材粒子を除去するために、アルカリ剤の水溶液でアルカリエッチング処理が施される(アルカリエッチング処理工程)。アルカリエッチング処理に使用するアルカリ剤としては、苛性ソーダ、苛性カリ、メタ珪酸ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、グルコン酸ソーダ等が好ましい。水溶液中のアルカリ剤の濃度としては0.01〜30wt%が好ましく、処理温度としては、生産性を高めるため、60〜80℃とするのが好ましい。アルミニウム帯状体のエッチング量としては、0.1〜15g/m2とするのが好ましい。また処理時間は、エッチング量に対応して2秒〜5分の範囲とするのが好ましく、生産性向上のためには2〜10秒とするのがより好ましい。
【0042】
なお、前記機械的粗面化処理工程は、任意の工程であり、かかる処理を施さずにアルカリエッチング処理後、直接アルミニウム帯状体に電解粗面化処理を施して、後の処理を行ってもよい。また、アルカリエッチング処理後にアルミニウム帯状体表面に形成されるスマットを除去するため、硝酸によるデスマット処理(硝酸処理)を行ってもよい。
【0043】
<2.電解粗面化処理工程>
近年、アルミニウム帯状体から平版印刷版用支持体を製造する製造工程では、平版印刷版に形成される画像部における感光層と、アルミニウム帯状体表面との密着性を向上させたり、また非画像部における保水性を向上させるために、塩酸や硝酸を主体とする電解液を使用して、アルミニウム帯状体に対する電解粗面化処理が行われることが多い。この電解粗面化処理は、前述のブラシグレイン等の機械的粗面化処理で得られたアルミニウム帯状体の表面に重畳して行うことも、あるいはアルミニウム帯状体の表面にアルカリ洗浄等の前処理を行った後に直接行うこともできる。
【0044】
ここで、本明細書において、「主体とする」とは、酸またはアルカリ溶液において、主体となる酸またはアルカリが、酸性またはアルカリ成分全体に対して、30重量%以上、好ましくは50重量%以上含まれていることをいう。
【0045】
アルミニウム帯状体に対する電解粗面化処理は、塩酸または硝酸を主体とする電解液中で交流電流を電解電流として、エッチングすることにより行われる。交流電解電流の周波数の範囲としては、0.1〜100Hzと設定するのが好ましく、10〜60Hzとするのがより好ましい。電解液としては、塩酸および硝酸の何れを主体とする場合も、液濃度を3〜150g/リットルとするのが好ましく、5〜50g/リットルとするのがより好ましい。
【0046】
電解槽内でのアルミニウムの溶解量としては50g/リットル以下とするのが好ましく、2〜20g/リットルとするのがより好ましい。必要に応じて各種の添加剤を電解液へ添加してもよいが、このような添加剤はアルミニウム帯状体を大量生産する場合は、電解液の液濃度制御等を難しくするため、適宜選択する必要がある。
【0047】
また、電流密度は5〜100A/dm2とするのが好ましく、10〜80A/dm2とするのがより好ましい。さらに、電解電流の波形としては、要求される品質、使用されるアルミニウム帯状体の成分等によって適宜選択されるが、特公昭56−19280号公報、特公昭55−19191号公報に開示されている特殊交流波形を用いることが好ましい。このような電解電流の波形や電解液の条件は、アルミニウム帯状体の単位面積当たりの供給電気量とともに、要求される品質、使用されるアルミニウム帯状体の成分等に応じて適宜選択される。
【0048】
<3.デスマット処理工程>
上記のようにして電解粗面化されたアルミニウム帯状体表面には、スマットや金属間化合物が存在する。そこで、本発明では、該スマットや金属間化合物を除去するため、少なくとも、アルカリ溶液を使用したアルカリ処理(アルカリ処理工程)を行った後、酸性溶液を使用した酸処理(酸処理工程)を行う、2段階のデスマット処理(デスマット処理工程)を行う。
【0049】
まず、アルカリ処理として、アルカリ溶液でアルミニウム帯状体を処理しスマットを溶解する。アルカリ溶液としては、苛性ソーダ等各種のものがあるが、pHが10以上で,液温25〜80℃とされたアルカリ溶液でアルミニウム帯状体を処理するのが好ましい。このとき、生産性向上の点からは、アルカリ溶液の液温を60〜80℃とするのがより好ましい。液温を60〜80℃とすることで、アルミニウム帯状体に対するアルカリ処理を1〜10秒という極めて短い時間で完了できる。このアルカリ溶液によるアルカリ処理には、浸漬方式、シャワー法、あるいは、アルカリ溶液をアルミニウム帯状体へ塗布する方法等が採用できる。
【0050】
次に、酸性溶液によりアルミニウム帯状体を酸処理する。酸性溶液としては、硫酸である。また、処理設備としては、特願2000−123805号に記載の設備を使用するのが好ましい。液濃度(酸濃度)としては300〜500g/リットルとするのが好ましい。酸濃度が300g/リットル未満だとスマットについてはある程度除去できるものの、金属間化合物粒子ついては十分な除去効果が得られない。一方、500g/リットルより高いと、設備材料が限定されコストアップになるため好ましくない。なお、酸濃度が低い場合、金属間化合物粒子ついては高い除去効果が得られにくい。
【0051】
酸性溶液の液温は70〜80℃であり、70℃未満では金属間化合物粒子に対して十分な除去効果が得られない可能性があり、80℃より高いと酸の揮散が激しくなり、環境面で種々の問題が生じる可能性があるため好ましくない。酸性溶液による酸処理には、一般的には、浸漬方式、シャワー法、溶液をアルミニウム帯状体へ塗布する方法等が採用できる。
【0052】
<4.陽極酸化処理工程>
上記のようにアルカリ溶液および酸性溶液によりデスマット処理を行ったアルミニウム帯状体に対し、陽極酸化処理を施す(陽極酸化処理工程)。これにより表層部に陽極酸化被膜が形成される。形成される陽極酸化被膜の量は0.1〜10g/m2が好ましく、0.3〜5g/m2がより好ましい。また陽極酸化処理の他の条件は、使用される電解液(硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸等)によって設定を変更する必要があるので一概には言えないが、一般的には、電解液の濃度(酸濃度)は1〜80wt%、液温は5〜70℃、電流密度は0.5〜60A/dm2、電圧は1〜100V、電解時間は1秒〜5分とするのが好ましい。
【0053】
以上の各処理工程を経たアルミニウム帯状体は、コイル状に巻き取られ、平版印刷版用支持体が製造される。
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法によれば、上記陽極酸化処理に先立ち、デスマット処理として所定のアルカリ処理および酸処理を順次行うことで、アルミニウム帯状体の表面における有害な金属間化合物(粒子)およびスマットを除去できるとともに、アルミニウム帯状体の表面を適度に粗面化できるので、その後の陽極酸化処理では、陽極酸化被膜にスマットおよび金属間化合物に起因する欠陥が生じない。
【0054】
アルミニウム帯状体に形成される陽極酸化被膜は、それ自体安定で十分高い親水性を有していることから、その陽極酸化被膜表面には、直ちに感光性材料を塗布して感光層を形成することも可能であり、また必要に応じて表面処理を施すこともできる。該表面処理としては、例えば、アルミニウム帯状体の表面にアルカリ金属珪酸塩によるシリケート層、あるいは、親水性高分子化合物等よりなる下塗層を設けることが挙げられる。このとき、シリケート層、あるいは、下塗層の塗布量としては、1〜150mg/m2とするのが好ましい。
【0055】
このようにして必要に応じて下塗層が設けられた平版印刷版用支持体表面に感光層を設けて、平版印刷版原版が製造される。また、感光層の塗布乾燥後にマット層を塗布により設けることもできる。
このようにして得られた平版印刷版原版は、画像露光、現像等の工程を経て、平版印刷版とされ、印刷機にセットされる。
【0056】
以上のように、本発明の製造方法によれば、原材料としてのアルミニウム原料の合金組成や製造工程を厳密に管理することなく、アルミニウムスクラップ材等の低純度アルミニウム原料から平版印刷版用支持体を製造することができる。このような平版印刷版用支持体から平版印刷版を製造して使用すれば、印刷時の非画像部における過酷インキ汚れを効果的に防止することができる。
【0057】
≪2.平版印刷版用支持体≫
本発明の平版印刷版用支持体は、上述した製造方法により製造される。特に粗面化された表面の一部には、金属間化合物の脱落によって生じる直径0.1μm以上の局所的ピットが重畳され、かつ、陽極酸化処理により形成される陽極酸化被膜がその内部に形成されており、局所的ピットの存在率が1000〜35000個/mm2となっているのが好ましい。局所的ピットの直径は、0.3〜2.0μmであるのがより好ましい。また、局所的ピットの存在率が1000〜35000個/mm2の範囲にあると、表面の保水性が向上するため、ブランケット汚れが発生しなくなるという効果が得られる。局所的ピットの存在率は、SEM(走査型電子顕微鏡)等で粗面化された表面を観察し、例えば、5ヶ所(n=5)について、60μm×50μmの範囲で、局所的ピットをカウントし、1mm2に当たりに換算することで容易に算出することができる。
【0058】
【実施例】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
(実施例1〜3、参考例4〜6、比較例1〜6)
表1に示す組成A、Bの2種類の合金成分を有するアルミニウム合金溶湯から、アルミニウム合金板を以下のようにして作製した。
【0060】
【表1】
【0061】
まず、組成A、Bのそれぞれのアルミニウム合金溶湯に脱ガスと濾過とからなる溶湯処理を施し、DC鋳造法で、厚さ500mmの鋳塊を作製した。鋳塊表面を10mm面削した後、該鋳塊を加熱し均熱化処理を行わずに、400℃で熱間圧延を行った。熱間圧延により板厚が4mmになるまで圧延した後、冷間圧延で板厚1.5mmとし、中間焼鈍を行って、再度冷間圧延で板厚0.24mmに仕上げ、平面性を矯正して、組成A、Bを有するアルミニウム合金板A’、B’を作製した。
【0062】
アルミニウム合金板A’は、アルミニウム純度と全ての不純物金属の含有率が本発明に規定する範囲内にある。一方、アルミニウム合金板B’は、アルミニウム純度が99.7wt%以上のアルミニウム新地金を溶解し、所定の成分になるよう母合金を添加してJIS1050材の平版印刷版として一般的な組成にしたもので、本発明に適用される材料の範囲外である。
【0063】
アルミニウム合金板A’、B’について、原料コストの比較を行った。結果を表3に示す。表3より、アルミニウム合金板A’は原料コストが35%まで減少し、大きな原料のコストダウン効果が得られた。なお、原料コストの比較は、以下のようにして行った。
【0064】
原料コストの比較:
原料コストは、主に、アルミニウム地金のコストと、該アルミニウム地金を板状に加工するための加工コストと、からなる。製造方法が同じであれば加工コストは同じとなるため、ここでは、アルミニウム地金のコストについて比較した。アルミニウム地金のコストは、アルミニウム地金相当分のコスト(g当たりの金額)を算出し、アルミニウム合金板B’を作製するのに要したコスト(アルミニウム地金相当分のコスト)を100として、アルミニウム合金板A’を作製するのに要したコストを相対値で評価した。
【0065】
上記アルミニウム合金板A’、B’から、平版印刷版用支持体を以下のようにして作製した。
まず、パミストン懸濁液を使用したブラシグレイン(8号ブラシ×3本)により、各々のアルミニウム合金板A’、B’について粗面化処理を行った(機械的粗面化処理工程)。水洗後、75℃にて25%のNaOH溶液により8g/m2までアルカリエッチングした(アルカリエッチング処理工程)。水洗後、40℃にて9g/リットルの硝酸により4秒間デスマット処理を行った後、電解粗面化処理を行った(電解粗面化処理工程)。電解粗面化処理は、9g/リットルの硝酸を電解液とし、50℃で電気量を180C/dm2として行った。
【0066】
その後、デスマット処理として、シャワー法により、25wt%のNaOH溶液を使用したアルカリ処理(アルカリ処理工程)を行った。使用したNaOH溶液は、pHが13、液温が75℃であった。また、アルカリ処理時間は4秒とし、エッチング量は1g/m2とした。アルカリ処理後、水洗して、表2に示す条件で、シャワー法により、各々のアルミニウム合金板について硫酸による酸処理(酸処理工程)を行った(以上、デスマット処理工程)。
【0067】
【表2】
【0068】
表2に示すように、組成Aのアルミニウム合金板A’に対し、酸処理温度を70〜80℃、酸濃度を300または500g/リットル、酸処理時間を4秒または6秒として酸処理を行ったものを実施例1〜3とし、組成Bのアルミニウム合金板B’に対し、酸処理温度を30〜80℃、酸濃度を170または500g/リットル、酸処理時間を4秒または6秒として酸処理を行ったものを比較例1〜6とした。
【0069】
デスマット処理後、酸濃度170g/リットル、30℃の硫酸溶液中で直流電解を行う陽極酸化処理(平均電流密度は15A/dm2とし、形成される陽極酸化被膜の量は2.4g/m2)を行って、平版印刷版用支持体を作製した。
【0070】
次に、陽極酸化処理後の各々の平版印刷版用支持体に対し、下記の組成を有する感光液を乾燥後の塗布重量が2.5g/m2になるように塗布して感光層を設け感光性平版印刷版原版を作製した。
【0071】
感光液組成:
ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール、アセトン樹脂とのエステル化合物(米国特許第3,635,709号 明細書 実施例1に記載のもの)・・・0.75g、
クレゾールノボラック樹脂・・・2.00g、
オイルブルー#603(オリエント化学製)・・・0.04g、
エチレンジクロライド・・・16g、
2−メトキシエチルアセテート・・・12g
【0072】
このようにして作製された各々の感光性平版印刷版原版を、真空焼枠中で透明ポジティブフイルムを通して1mの距離から3kWのメタルハライドランプにより50秒間露光を行った後、SiO2とNa2Oとのモル比(SiO2/Na2O)が1.74の珪酸ナトリウムの5.26%水溶液(pH=12.7)を使用して現像して平版印刷版を作製した。かかる平版印刷版を版胴に取り付けて印刷テストを行った。印刷機は、ハマダ900CDXを使用した。最初に過酷インキ汚れ性を評価するため、まず常法で1000枚印刷した後、印刷機上で版面を放置乾燥させた後、再度印刷と放置乾燥を繰り返すことで、強制的に非画像部に汚れが発生しやすい状況を作って、非画像部の汚れ発生を評価した。評価は目視により9段階で行い、9点が最良(過酷インキ汚れが少ない状態)、5点が許容下限、とした。
【0073】
次に、ブランケット汚れを評価した。ブランケット汚れの評価は、常法で5000枚印刷した後に、印刷機を停止し、非画像部に対応するブランケット胴上のインキ付着程度を評価する方法により行った。この評価方法は、印刷紙上に発生する汚れを早期に予測し把握する方法として有効である。評価は目視により9段階で行い、9点が最良、5点が許容下限とした。評価結果を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
表3に示すように、実施例1〜3は何れも過酷インキ汚れ性とブランケット汚れが7点以上で優れていることがわかる。また、比較例5および6も過酷インキ汚れ性とブランケット汚れが7点以上で優れていたが、原材料コストが実施例1〜3より高かった。
【0076】
実施例1〜3および比較例1〜6で感光層を塗布して作製した感光性平版印刷版原版について、溶剤(MEK:メチルエチルケトン)を用いて感光層を脱膜した。脱膜後の表面をSEM(走査型電子顕微鏡:日本電子製のT220Aを使用)で観察し、金属間化合物の脱落によって生じる直径0.1μm以上の局所的ピットの発生頻度(存在率)を各々測定した。観察は、写真倍率にして1500倍、3750倍の2通りで行い、5ヶ所(n=5)について、60μm×50μmの範囲で、観察を行って算出した。観察結果を表4に示す。なお、局所的ピットの内部をFESEM(高分解能電子顕微鏡:日立製S900を使用)で観察すると、陽極酸化被膜が形成されていることが確認された。
【0077】
【表4】
【0078】
表4に示すように、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法によれば、表面の不要な金属間化合物を除去したうえで、陽極酸化被膜を全面に設けることができるので、陽極酸化被膜の欠陥が発生しにくく、過酷インキ汚れの基点が発生しにくい平版印刷版用支持体を製造することができる。また、インキがひっかかるような起点自身も減少し、それとともに微小な局所的ピットを1000〜35000個/mm2の密度で付与できるので、保水性が向上し、より一層のブランケット汚れを良好なものとすることができる。
【0079】
さらに、所定の温度における硫酸処理による酸処理(表2参照)を施すことで、局所的ピットの発生頻度を増加させることができる。同様な効果が、比較例1と3との比較からもわかる。
【0080】
【発明の効果】
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法によれば、使用するアルミニウム原料を、少なくとも、Fe:0.3〜1.0wt%、Si:0.15〜1.0wt%、Cu:0.1〜1.0wt%、Mg:0.1〜1.5wt%、Mn:0.1〜1.5wt%、Zn:0.1〜0.5wt%、Cr:0.01〜0.1wt%、Ti:0.03〜0.5wt%、のうち5種以上の不純物金属を含み、アルミニウム純度が95〜97wt%となるように規定しているので、合金成分の制御がほとんどなされていない材料、即ち、種々の不純物を含むスクラップ材、あるいは新地金に比較して市場価格が安く、多くの不純物金属を含む2次地金あるいは再生地金と呼ばれる地金を、原材料とすることが可能でコスト削減を図ることできる。
【0081】
また、不純物金属を再結晶の基点に利用できるため、結晶微細化材を多用しなくても極めて微細な結晶組織にすることができ、結果として、エッチング処理後の外観、および粗面化処理等の表面処理後の外観をより優れたものにすることができる。
【0082】
さらに、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法によれば、アルミニウム合金板に粗面化処理を行い、陽極酸化処理を行う前に、濃度が300〜500g/リットル、温度が70〜80℃の硫酸を用いて、4〜6秒間表面処理することで、表層の不要な金属間化合物を除去することができる。また、過酷インキ汚れ性の優れた平版印刷版用支持体を作製することができる。さらに、不純物金属が少なく結果的に金属間化合物の発生も少ないJIS1050材を原材料として使用した場合と同様に、ブランケット汚れをも改善することができる。
Claims (1)
- 少なくとも、Fe、Si、Cu、Mg、Mn、Zn、Cr、Tiのうち5種以上の不純物金属をそれぞれ以下に示す範囲内で含み、アルミニウム含有率が95〜97wt%であるアルミニウム合金板に、少なくとも、粗面化処理、陽極酸化処理を施し、前記粗面化処理が、少なくとも、アルカリエッチング処理工程と、電解粗面化処理工程と、複数のデスマット処理工程と、からなり、該複数のデスマット処理工程のうち陽極酸化処理に先立つデスマット処理工程が、少なくとも、アルカリ処理工程と、硫酸濃度が300〜500g/Lで、かつ70〜80℃の硫酸を用い、処理時間が4〜6秒間である酸処理工程と、からなることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
Fe:0.3〜1.0wt%
Si:0.15〜1.0wt%
Cu:0.1〜1.0wt%
Mg:0.1〜1.5wt%
Mn:0.1〜1.5wt%
Zn:0.1〜0.5wt%
Cr:0.01〜0.1wt%
Ti:0.03〜0.5wt%
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