JP4610029B2 - 電子ビーム照射装置の静電偏向器 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビーム露光装置や電子顕微鏡などの電子ビームを照射する電子ビーム照射装置で使用される静電偏向器に関する。
電子ビームは断面を数十nmにまで絞ることができ、電子顕微鏡や電子ビーム露光装置などの電子ビームを照射する装置が実用化されている。このような電子ビーム照射装置では、試料上に収束される電子ビームの照射位置を変えるために偏向器が使用される。偏向器としては、偏向範囲は大きいが比較的応答速度の低い電磁偏向器又は偏向範囲は狭いが応答速度の高い静電偏向器、又はこれらを組み合わせたものが使用される。本発明は、この静電偏向器に係わる。なお、以下の説明では電子ビーム露光装置の静電偏向器を例として説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子ビーム照射装置で使用される静電偏向器であれば、どのようなものにも適用可能である。
【0002】
【従来の技術】
近年、集積回路の微細化及び高密度化が進み、長年微細パターン形成の主流であったフォトリソグラフィ技術ではこれ以上の微細化が難しくなってきた。そこで、フォトリソグラフィ技術に代わって、電子ビームやイオンビーム等の荷電粒子ビームを用いた露光法、或いはX線を用いる新しい露光法が検討され、実現化されてきている。このうち、電子ビームを用いてパターンを形成する電子ビーム露光は、0.1μm以下の微細なパターンを形成することが可能なため、脚光を浴びている。これに伴い電子ビーム露光装置にも、半導体量産装置として安定した稼働、高いスループット、更なる微細加工性が要求されてきている。
【0003】
従来の典型的な電子ビーム露光装置では、電磁偏向器と静電偏向器を組み合わせた偏向手段が使用され、電磁偏向器は主偏向器と、静電偏向器は副偏向器と呼ばれる。電磁偏向器の偏向範囲(主偏向範囲)を、静電偏向器の偏向範囲より少し小さな幾つかの領域(副偏向範囲)に分割し、電磁偏向器による偏向位置を各副偏向範囲の中心に位置させた上で、静電偏向器により各副偏向範囲を偏向するのが一般的である。電子ビーム露光装置のコラムには、適当に断面が成形された電子ビームをウエハ上に照射するための投影レンズが内蔵されているが、上述した電磁偏向器と静電偏向器はこの投影レンズとほぼ一体的に、具体的には電磁偏向器内に静電偏向器が収容される形で配置されている。
【0004】
従って、静電偏向器(副偏向器)及びその周辺の部品に、加工性や精度は良好であるが導電性の高い金属を使用すると、渦電流の影響により電磁偏向器(主偏向器)の応答速度が遅くなるといった不都合が生じる。これは、高スループットを要求されている電子ビーム露光装置にとって非常に問題となる。
渦電流を小さくするため、筒状の不導体材料(例えばアルミナ)の内側にめっき(例えば下地はNiP、表面はAu)を施して静電偏向器を形成することも行われたが、加工精度やメッキなどの問題があるため、現在は比抵抗の値がほぼ理想的なAlTiC(アルミナと炭化チタンの化合物)セラミックを研削加工したものに白金めっきを行って静電偏向電極とし、この電極を絶縁性のアルミナセラミックの中空円筒に固定して静電偏向器を構成している。
【0005】
図1は、電子ビーム露光装置の静電偏向器の従来例を示す図であり、(a)は静電偏向器の外観構成を、(b)は(a)におけるA−A’線から見た上面図を、(c)は(b)におけるB−B’線に沿った断面図をそれぞれ示している。
図示の静電偏向器10は、主偏向器(図示せず)として電磁偏向器を用いた電子ビーム露光装置において、電磁偏向器の内部に配置され、副偏向器として用いられる。図示のように、静電偏向器10は、電極群11と、電極群11が内部に固定される中空円筒状の保持部材12とから構成されている。
【0006】
電極群11は、8個のAlTiC セラミックの電極材E1 〜E8 によって構成され、各電極材Ei (i=1〜8)は、外筒12の内部で軸対称に配置固定されている(図1(b)参照)。各電極材Ei は、研削加工によってそれぞれ同一形状に形成され、表面には金属皮膜が形成されている。この金属皮膜は、例えばルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)などの白金族の金属であり、電解めっきにより各導電性セラミックの表面に直接形成されている。
【0007】
一方、保持部材12は、各電極材Ei を相互に絶縁する必要があり、不導体材料で形成されている。この保持部材12には、図示のように開口部31が設けられている。これら開口部は、電極群11(8個の電極材E1 〜E8 )を内部に配置固定する際に用いられるもので、各電極材Ei 毎に2個(合計16個)の開口部が設けられる。
【0008】
各電極材Ei の開口部に対応する部分には、接合用金属パッドが形成されており、各電極材Ei を保持部材12に位置決めした状態ではんだなどの接合用金属を開口部に注入して各電極材Ei を保持部材12に固定する。
電子ビームは電子の流れであり、不導体材料に衝突すれば不導体材料の表面に電荷が蓄積される。蓄積された電荷は周囲の電界に影響を与える。静電偏向器は、各電極材Ei に電圧を印加して電極群11の内部に電界を発生させて、入射した電子ビームを電界の力で偏向するものである。そのため、周囲の保持部材12の表面に電荷が蓄積して電界を乱すと、所望の偏向量が得られなくなるという問題が生じる。そこで、図1に示した従来例の静電偏向器では、各電極材Ei の横断面をクランク状にして筒の中心軸から保持部材12の内側表面が直接見えないような形状にしている。このような形状にすることで、筒の内部を通過する電子ビームが散乱しても、散乱した電子はいずれかの電極材Ei に衝突して、保持部材12の内側表面には到達しないようにしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際に使用すると、図1のような構造にしているのもかかわらず、保持部材12の表面に電荷が蓄積(チャージアップ)して電界を乱すという問題が発生した。この問題を図2を参照して説明する。
電子ビーム露光装置では、静電偏向器10は、電磁偏向器9の内部に収容され、試料(ウエハ)1にもっとも近い部分に配置される。試料1の表面にはレジスト層2が形成されており、それに電子ビーム3が照射される。レジスト層2に照射された電子ビームはレジスト層2に吸収されてレジスト層2を感光させるが、一部はレジスト層2の表面で反射して静電偏向器10の方に戻る。また、レジスト層2内で散乱したり、一旦吸収された後レジスト層2から放出された2次電子の一部も、やはり静電偏向器10の方に戻る。このような反射電子や2次電子は、保持部材12の端に近い部分に蓄積される。また、電子ビーム3は、静電偏向器10や電磁偏向器9を通過する間に偏向されて試料1に入射するが、偏向量が大きいと電極材Ei の表面を延長した面に近い位置で試料に入射することになる。このような位置からの反射電子や2次電子は、たとえ電極材Ei が上記のようなクランク状であっても、より保持部材12の表面に到達しやすくなる。以上のような理由で、保持部材12は特に試料1に近い側で電荷が蓄積(チャージアップ)しやすく、電子ビームの露光位置に誤差が生じるという問題が発生していた。
【0010】
また、チャージアップは他の原因によっても発生する。電子ビーム露光装置では、コラムの内部及び該コラムに結合された露光処理のためのチャンバの内部は通常高真空状態となっているが、実際には露光するレジスト等の蒸発などがあり、これに電子ビームが照射されると、焼きついて炭素等を主成分とする化合物(つまり汚れ)が発生する。この汚れは良導体ではないため、電極表面にチャージアップが発生し、電界を乱して電子ビームの露光位置に誤差を生じさせるといった問題が発生する。特に、レジストが塗布されたウエハの近傍に位置する静電偏向器(副偏向器)については、この問題は一層顕著に現れる。
【0011】
従来の技術では、チャージアップ量がある程度以上になると、静電偏向器それ自体を新品と交換していたが、この交換作業を行うためには、コラム及びチャンバの内部の高真空状態をいったん解除する(つまり大気リークさせる)必要があった。このため、交換作業を行った後再び露光装置の立ち上げ(例えば各偏向器に与える偏向データの初期設定等)を行う間、装置は停止しており、スループットの低下を招いていた。これに対処するため、コラム及びチャンバの内部を大気リークさせることなく汚れを取り去る“in-situ" クリーニング法と呼ばれる方法が用いられている。これは、酸素を主成分とするガスを装置内にごく微量導入し、この希薄ガス雰囲気にて静電偏向電極に高周波電力を印加することにより酸素プラズマを発生させ、アッシング(灰化処理)によって汚れを取り去る方法である。しかしながら、この“in-situ" クリーニング法を行うことにより、電極表面の金属皮膜を形成する導体物質や、電極の表面を汚染している物質などがスパッタされて、不導体の保持部材12の表面に付着し、電極間の絶縁抵抗を低下させたり、予期せぬチャージアップの原因となり、結果的に露光の位置精度を低下させていた。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためのもので、露光位置精度の低下の原因となる不導体の保持部材のチャージアップを低減して、露光の位置精度を低下を防止することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
図3は、本発明の電子ビーム照射装置の静電偏向器の基本構成を示す図であり、(a)が第1の態様の基本構成を、(b)が第2の態様の基本構成を、(c)が第3の態様の基本構成を示す。
本発明の電子ビーム照射装置の静電偏向器は、不導体材料で作られた筒状の保持部材22と、保持部材の内側の周方向に互いに分離して固定される少なくとも表面の一部が導電性である複数の電極11とを備える静電偏向器であって、このような静電偏向器において、本発明の第1の態様では図3の(a)に示すように、保持部材22が隣接する電極の間に面する部分に筒の軸方向と平行な方向に延びる開口部30を有し、本発明の第2の態様では図3の(b)に示すように、複数の電極11が保持部材22より電子ビームの出射方向に伸びており、本発明の第3の態様では図3の(c)に示すように、保持部材は、独立した複数の保持ユニット22a,22bを備え、複数の保持ユニットの長さの合計は電極11の長さより十分に短いことを特徴とする。
【0014】
保持部材の内側には複数の電極11が固定されており、筒の内側に直接面しているのは隣接する電極の間であり、この電極の間の部分に電荷が蓄積し筒内部の電界に影響を与える。また、電極間の絶縁抵抗は保持部材22の電極の間の部分の表面抵抗に影響される。本発明の第1の態様によれば、この電極の間の部分に筒の軸方向と平行な方向に延びる開口部30が設けられているため、保持部材22の電極の間に位置する部分の面積が少なくなる。従って、従来例に比べて蓄積する電荷の量も減少するので電界に与える影響も低減される。更に、保持部材12の電極の間の面積(幅)も小さくなるので、表面抵抗は大きくなる。従って、電極間の絶縁抵抗は増大し、たとえその部分に導体物質や汚染物質が付着しても、影響を低減できる。
【0015】
前述のように、保持部材のチャージアップや保持部材への導体物質や汚染物質の付着が問題になるのは主として試料に近い側である。本発明の第2の態様によれば、複数の電極11が保持部材22より電子ビームの出射方向に伸びており、保持部材は試料から離れた位置にあるので、チャージアップや導体物質や汚染物質の付着が生じにくくなる。なお、保持部材は試料から電極の長さの1/3以上離れていることが望ましい。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1の態様と同様に、保持部材22の電極の間の部分の面積を低減するものである。第1及び第2の態様では、保持部材22は所定の形状を有しており、複数の電極11は保持部材22に固定することにより所定の位置関係に配置される。これに対して、第3の態様では、保持部材は、独立した複数の保持ユニットに分かれており、そのままでは相互の位置関係が決まらない。そこで、第3の態様では、複数の電極と複数の保持ユニットを位置決めした状態で固定することにより、複数の電極の位置関係を規定している。すなわち、複数の電極も位置関係を規定する構造体として働く。
【0017】
なお、以上説明した第1から第3の態様を組み合わせた構造とすることも可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
図4は、本発明の第1実施例の静電偏向器の構成を示す斜視図である。また、図5は電極群を構成する電極材Ei と電極材Ei を保持部材に固定した時の断面図を示す。第1実施例の静電偏向器は、第1及び第2の態様を組み合わせた構成を有する。第1実施例の静電偏向器は、保持部材22のみが図1に示した従来例と異なり、8個の電極材で構成される電極群11は図1の従来例の電極群と同じである。
【0019】
第1実施例の静電偏向器の電極群11を構成する電極材Ei は、従来例と同様に、AlTiC セラミックを研削加工し、表面に白金メッキが施されており、同一形状の電極材が8個使用される。電極材Ei を製作するには、まず研削加工により同一形状に加工される。次に、各電極材Ei には、ドライバから電圧を印加する部分として、メタライズ法によりチタン(Ti)を主成分とする導通用金属パッド23を形成する。更に、保持部材22に固定する部分の任意の2箇所に、メタライズ法によりTiを主成分とする接合用金属パッド24及び25を形成する。なお、各金属パッド23〜25の大きさは最小限となるようにする。次に、各電極材Ei の表面を洗浄した後、白金(Pt)を電解めっきにより各電極材Ei の表面に直接形成する。この際、めっきの厚さは2μm以下とした。
【0020】
保持部材22は、不導体材料としてアルミナを使用し、電極材Ei の長さの2/3以下の長さの円筒形状で、隣接する電極材の隙間に対応する部分に、筒の軸と平行に延びる8個の長穴30が形成されている。更に、各電極材Ei を内部に配置固定する際に各電極材Ei の接合用金属パッド24及び25がそれぞれ当接する位置に16個の穴31が形成され、各穴31の内壁部分には、メタライズ法によりTi或いはモリブデン−マンガン(Mo−Mn)を主成分とする接合用金属パッド26及び27が形成される。
【0021】
次に、組立治具により、各電極材Ei を高精度に位置決めした状態で保持部材22内に挿入し、保持部材22に形成された穴31にろう材又ははんだ材28を微量注入し(図5(b)参照)、加熱する。これによって、各電極材Ei に形成した接合用金属パッド24及び25と、保持部材22に形成した接合用金属パッド26及び27とが互いに固定される。つまり、各電極材Ei が保持部材22に所定の位置関係で堅固に固定される。
【0022】
以上のようにして、第1実施例の静電偏向器が実現される。
図6は、本発明の第2実施例の静電偏向器の構成を示す斜視図である。図示のように、第2実施例の静電偏向器では、保持部材22が2つの短い保持ユニット22aと22bに分けられている。保持ユニット22aと22bは、例えば長さが電極材Ei の長さの1/10以下の円筒で、8個の穴23が設けられている。他は、すべて第1実施例と同じである。言い換えれば、図4の第1実施例の静電偏向器の保持部材22において、長穴30の長さに相当する部分をすべてなくして保持部材を2つの部分に分けたものである。従って、下側の保持ユニット22bは、電極群21の下端から電極の長さの1/3以上離れた位置に配置されている。
【0023】
第2実施例の静電偏向器は、保持部材が2つの保持ユニット22aと22bに分かれているため、第1実施例と同じようには組み立てられない。組み立ては、組み立て治具により、8個の電極材Ei と2個の保持ユニット22aと22bを高精度に位置決めした状態で、穴31にろう材又ははんだ材を注入して固定する。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る静電偏向器によれば、電極を保持する保持部材のチャージアップ及び汚染物質などの付着が低減され、静電偏向器の電界の乱れが低減されるので、露光位置精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例の電子ビーム露光装置の静電偏向器の外観及び内部構成を模式的に示した図である。
【図2】試料に近い側でチャージアップ及び汚染物質の付着を説明する図である。
【図3】本発明の静電偏向器の基本構成を示す図である。
【図4】第1実施例の静電偏向器の構成を示す斜視図である。
【図5】第1実施例の電極材及び電極材を保持部材に固定した時の状態を示す図である。
【図6】第2実施例の静電偏向器の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
10…静電偏向器
11…電極群
22…保持部材
23…導通用金属パッド
24〜27…接合用金属パッド
28…接合金属(はんだ等)
30…開口部(長穴)
31…開口部
1 〜E8 …電極材

Claims (3)

  1. 不導体材料で作られた筒状の保持部材と、該保持部材の内側の周方向に互いに分離して固定される少なくとも表面の一部が導電性である複数の電極とを備える電子ビーム照射装置の静電偏向器において、
    前記保持部材は、隣接する前記電極の間に面する部分に、筒の軸方向と平行な方向に延びる開口部を有することを特徴とする電子ビーム照射装置の静電偏向器。
  2. 請求項1に記載の電子ビーム照射装置の静電偏向器であって、
    前記複数の電極は、前記保持部材より電子ビームの出射方向に伸びている電子ビーム照射装置の静電偏向器。
  3. 請求項2に記載の電子ビーム照射装置の静電偏向器であって、
    前記複数の電極が前記保持部材より電子ビームの出射方向に伸びている長さは、前記電極の長さの1/3以上である電子ビーム照射装置の静電偏向器。
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