JP4715077B2 - 磁石用粉末のプレス成形装置および磁石用粉末成形体の製造方法 - Google Patents
磁石用粉末のプレス成形装置および磁石用粉末成形体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁石用粉末のプレス成形装置および磁石用粉末成形体の製造方法に関し、特に、磁石用粉末にパルス磁界を印加することができるプレス成形装置およびそのようなプレス装置を用いた磁石用粉末成形体の製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書において、「磁石用粉末」とは、焼結磁石の製造に用いられる合金粉末(例えば希土類合金粉末)だけでなく、ボンド磁石の製造に用いられる合金粉末と樹脂粉末との混合粉末などを含むものとする。
【0003】
【従来の技術】
以下、希土類焼結磁石を例に従来の製造方法を説明する。
【0004】
現在、希土類焼結磁石として、希土類・コバルト系磁石と希土類・鉄・ボロン系磁石の二種類が各分野で広く用いられている。なかでも希土類・鉄・ボロン系磁石(以下、「R−T−(M)−B系磁石」と称する。RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoおよび/またはNiとの混合物、Mは添加元素(例えば、Al、Ti、Cu、V、Cr、Ni、Ga、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、Ta、Wの少なくとも1種)、Bはボロンまたはボロンと炭素との混合物である。)は、種々の磁石の中で最も高い最大磁気エネルギー積を示し、価格も比較的安いため、各種電子機器へ積極的に採用されている。
【0005】
希土類合金を用いた焼結磁石は、例えば、以下の工程を経て製造されている。
【0006】
(1)原料金属を高温で溶解し、所定の組成の希土類合金塊を得る。
【0007】
(2)この合金塊を粉砕して、磁石用粉末としての微小な希土類合金粉末を得る。
【0008】
(3)得られた磁石用粉末を磁界中でプレス成形することによって所定の形状の成形体を得る。
【0009】
(4)この成形体を高温(例えば約1000℃以上)で焼結し、焼結磁石を得る。
【0010】
(5)得られた焼結磁石の磁気特性を高めるために、さらに時効処理と呼ばれる熱処理を行う。
【0011】
(6)この焼結磁石の表面を研磨し、寸法と形状を整える。
【0012】
特性に優れた焼結磁石(特に異方性磁石)を製造するためには、成形体を形成する過程において、磁石用粉末を高度に配向させることが望まれる。
【0013】
磁石用粉末の配向度を向上させるために、磁石用粉末の表面に潤滑剤を付与したり、配向磁界の強度を高くするなどの試みがなされている。
【0014】
しかしながら、潤滑剤の付与による配向度の向上には限界があり、十分な配向度を得るに至っていない。また、潤滑剤の量を多くすると、最終的な焼結磁石中に残存する炭素量が増加し、磁気特性が低下するという問題がある。また、印加する静磁界の強度を強くすると、磁界発生用コイルの発熱量が増大し、生産性が低下する。
【0015】
そこで、磁石用粉末の配向度を向上するために、従来の静磁界に代えて、パルス磁界を利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0016】
【特許文献1】
特開平5−234789号公報
【特許文献2】
特開平7−283057号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、パルス磁界を印加すると、渦電流の問題が発生し、生産性の向上を阻害する。
【0018】
一般に、プレス成形中に配向磁界を印加する工程を採用する場合、キャビティ(成形空間)内の磁石用粉末に印加される配向磁界の方向や強度が、ダイスやパンチによって影響されないように、透磁率が1.01未満の非磁性金属材料(例えば、SUS304や高マンガン鋼)を用いて形成されている。これらの非磁性金属材料は、導電性(例えば、SUS304や高マンガン鋼の比抵抗は約70μΩ・cm程度)を有しているので、パルス磁界が印加されると、渦電流が発生する。なお、金型を絶縁性セラミックスで形成することも考えられる(例えば、特許文献2)が、セラミックスは加工性が乏しいので、金型(ダイスやパンチ)の材料として好ましくない。
【0019】
また、磁石用粉末をプレス装置のキャビティ(成形空間)内に供給する方法としては、フィーダボックス(給粉箱またはフィーダカップ)をキャビティ上にスライドさせ、フィーダボックス内の粉末の自重を利用してキャビティ内に落下させる方法(自然充填法と呼ばれることもある)や、さらにフィーダボックスに設けたアジテータなどによって粉末を加圧しながらキャビティ内に充填する方法(例えば、特開2000−248301号公報参照)が好適に用いられる。
【0020】
フィーダボックスを用いた充填法によれば、粉末をキャビティ内に確実に充填でき、さらに、フィーダボックスの底部等による「摺り切り」によって充填粉末の体積をほぼ一定に制御できるという利点がある。さらに、このような充填方法を用いることによって、磁界配向が可能な程度の低密度充填を実現することができる。
【0021】
上述したフィーダボックス等を用いて、キャビティの体積に応じた磁石用粉末を計量しながら充填する方法(「摺り切り法」ということもある。)を採用する場合、キャビティの上端部開口部を含む面上を磁石用粉末が収容されたフィーダボックスが移動する。すなわち、ダイスの上端部を内包する開口部を有するダイプレートが、その上面がダイスの上端面と実質的に同一面を形成するように配置され、フィーダボックスは、ダイプレートの上面およびダイスの上端面の上を移動する。
【0022】
このダイプレートも従来は、SUS304(以下、単にSUSということもある。)や高マンガン鋼などの非磁性金属材料を用いて形成されていたため、プレス成形工程においてパルス磁界を利用すると、ダイプレートにも渦電流が発生し、温度が上昇する。ダイプレートの温度が上昇すると、希土類合金粉末が酸化され磁気特性が低下するという問題が発生したり、ひどい場合には、発火する危険すらあるため、ダイプレートの温度が低下するまで、プレス工程を中断する必要が生じ、製造効率の低下を招いていた。
【0023】
また、渦電流による逆磁界によって、ダイプレートおよび/またはダイスが急激に振動し、騒音を発生することもあり、作業環境を悪化させるという問題もある。
【0024】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、パルス磁界を用いて従来よりも効率良く磁石用粉末成形体を製造する方法およびそのような製造方法に好適に用いられるプレス成形装置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するために手段】
本発明のプレス成形装置は、キャビティを形成するための貫通孔を有するダイスと、前記ダイスの少なくとも上端部を内包する開口部を有し、前記ダイスの上端面と実質的に同一面を形成する上面を有するダイプレートであって、絶縁体で形成されており、前記上面が平滑面であるダイプレートと、前記キャビティ内に充填された磁石用粉末をプレスするための上パンチおよび下パンチと、前記キャビティ内の前記磁石用粉末に対してパルス磁界を印加するための磁界発生装置とを有し、そのことによって上記目的が達成される。
【0026】
前記ダイプレートの前記上面のビッカース硬度は450超であることが好ましい。
【0027】
前記ダイプレートは、セラミックまたはガラスから形成されていることが好ましい。ある好ましい実施形態において、前記ダイプレートは結晶化ガラスから形成されている。
【0028】
前記ダイプレートの厚さは10mm以下であることが好ましく、強度の観点から、2mm以上であることが好ましい。
【0029】
前記ダイプレートは、前記ダイスの端部から少なくとも20mm以上の領域を占めていることが好ましい。
【0030】
前記ダイプレートは、前記磁界発生装置が有するコイル部に実質的に接するように設けられていることが好ましい。
【0031】
前記ダイスは円筒形であり、前記ダイプレートの前記開口部は円形であり、前記ダイスと前記ダイプレートとの間のクリアランスは0.2mm以下であることが好ましい。
【0032】
本発明による磁石用粉末成形体の製造方法は、上記のいずれかの磁石用粉末のプレス成形装置を用意する工程と、前記ダイプレート上を移動する給粉装置を用いて、前記磁石用粉末を摺り切り法で、前記キャビティ内に前記磁石用粉末を充填する工程と、前記上パンチおよび下パンチを用いて前記キャビティ内の前記磁石用粉末をプレスする工程と、前記プレス工程において、前記磁石用粉末が所定の密度にプレスされた状態で、前記パルス磁界を印加する工程とを包含し、そのことによって上記目的を達成することができる。
【0033】
前記パルス磁界は、交番減衰磁界であることが好ましい。ある好ましい実施形態において、前記パルス磁界は、0.5msec以上10msec以下の時間で最高磁界強度に到達する。前記パルス磁界の最高磁界強度は、前記キャビティの中心において2T以上10T以下であることが好ましい。
【0034】
ある好ましい実施形態において、前記磁石用粉末は希土類合金粉末であって、前記所定の密度は、3.6g/cm3以上4.0g/cm3以下である。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態による磁石用粉末のプレス成形装置の構成および動作ならびにそれを用いた磁石用粉末成形体の製造方法を説明する。以下では、磁石用粉末として、希土類合金粉末を用いた例を説明するが、本発明はこれに限られない。
【0036】
実施形態によるプレス成形装置100の構造を模式的に図1に示す。プレス成形装置100は、キャビティを形成するための貫通孔を有するダイス20と、ダイス20の少なくとも上端部を内包する開口部30aを有し、ダイス20の上端面と実質的に同一面を形成するように配置されたダイプレート30と、キャビティ内に充填された磁石用粉末をプレスするための上パンチ10Aおよび下パンチ10Bと、キャビティ内の磁石用粉末に対してパルス磁界を印加するための磁界発生装置40と有する。なお、ダイス20は、ベース54に例えばねじによって固定されている。
【0037】
プレス装置100が有するダイプレート30は、絶縁体で形成されており、上面が平滑面である。ダイプレート30が絶縁体で形成されているので、磁界発生装置40のコイル部40bによってパルス磁界が印加されても、ダイプレート30に渦電流が発生しないので、温度の上昇や、振動の発生が起こらない。ダイプレート30の大きさは、フィーダボックス80内の粉末が接触する部分よりも大きい。
【0038】
ダイプレート30はパルス磁界によって渦電流が発生しない程度、あるいは、渦電流が発生してもダイプレート30の温度が上昇しない程度の絶縁性を有していればよく、比抵抗は、1×Ω・cm以上であることが好ましい。勿論、配向磁界の大きさや方向に影響を与えないように透磁率は1.01未満であることが好ましく、1.001未満であることがさらに好ましい。
【0039】
ダイプレート30の上面は、平滑面であるので、フィーダボックス80が移動しても、磁石用粉末である希土類合金粉末が上面に残留し難く、酸化された希土類合金粉末が成形体中に混入することが抑制される。このような利点を得るためには、ダイプレート30の上面の平滑度は、平均粗さRaが1.0以下であることが好ましい。さらに、フィーダボックス80の底部80aなどとの摩擦によって平滑度が低下しないように、ダイプレートの上面のビッカース硬度Hvは450超であることが好ましく、700以上であることがさらに好ましい。
【0040】
また、ダイプレート30は、その上面の上をフィーダボック80が移動しても変形しない程度の弾性率を有していることが好ましい。
【0041】
これらの条件を満足する材料として、セラミックやガラスを挙げることができる。特に、結晶化ガラス(例えば、日本電気硝子社製のN−11)を好適に用いることができる。日本電気硝子社製のN−11は、ビッカース硬度Hv:800、ヤング率:90、000N/mm2、比抵抗:12.7Ω・cm(室温)、透磁率:1.001未満の物性値を有している。
【0042】
また、単一の材料で上記特性を満足できない場合は、材料を複合化あるいは積層して用いても良い。また、所望の硬度や平滑性を実現するために、表面に被膜を形成しても良い。平滑性に優れ、且つ、耐磨耗性に優れる被膜として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を例示することができる。
【0043】
なお、フィーダボックス80は、ダイプレート30上だけでなく、フィーダプレート60上も移動する。フィーダプレート60はダイプレート30と一体に形成しても良いし、パルス磁界の影響を受けない位置に配置される場合には、従来と同様に、SUSなどの金属材料を用いて形成してもよい。
【0044】
ダイス20および上パンチ10Aおよび下パンチ10Bは、公知の材料で形成されている。従来技術の説明で述べたように、これらの材料は、透磁率が1.01以下の非磁性材料で形成されることが好ましい。また、場合によっては、絶縁性の材料で形成することもできる(上記特許文献2)。また、パンチの内部に冷却水等を用いて冷却する機構を設けても良い(例えば、特開2000−223336号公報)。さらに、ダイス20と下パンチ10Bとの間にかみこまれた粉末を除去するため、および/またはダイス20と下パンチ10Bとの摺動面を冷却するために、特許第3193912号公報に記載されているように、ダイス20と下パンチ10Bとの間にガスを噴出する機構を設けても良い。噴出するガスは、空気または不活性ガス(例えば窒素ガス)であり、また、このガスに潤滑剤を混合してもよい。
【0045】
次に、図2(a)〜(d)を参照しながら、本発明の実施形態による希土類合金粉末の成形体の製造方法を説明する。ここで、円筒状の成形体14bを製造する例を説明する。
【0046】
ダイス20は、コア部20aと円筒部20bとを有している。コア部20aと円筒部20bとの間隙に、キャビティが規定される。上パンチ10Aおよび下パンチ10Bは、このキャビティ内を上下に移動し、キャビティ内に充填された希土類合金粉末をプレスする。ここでは、ダイス20、上パンチ10Aおよび下パンチ10Bとして、高マンガン鋼(比透磁率:1.001未満、比抵抗:約70μΩ・cm)を用いて作製されたものを用いた。円筒部20bの内径は約20mm、コア部の直径は約10mmで、高さが約40mmの円筒形の成形体を作製する。
【0047】
ダイプレート30には、上述の結晶化ガラスN−11を用いて形成されたものを用いた。ダイプレート30は円形の開口部30aを有し、ダイス20の円筒部20bの上端部を内嵌するように配置され、且つ、その上面はダイス20の上端面と実質的に面一となるように配置されている。なお、ダイプレート30の開口部30aとダイス20とのクリアランスは、0.1mm(少なくとも0.2mm以下)に設定してある。これは、フィーダボックス80を用いて摺り切り法によって、希土類合金粉末をキャビティ内に充填する過程で、希土類合金粉末がこのクリアランス部に侵入しないためである。ダイス20の外形を円筒形にし、開口部30aを円形にすると、ダイス20とダイプレート30とが一点のみで接触するようにできるので、クリアランスを小さく設定することができる。
【0048】
なお、必要に応じて、このクリアランスに侵入した希土類合金粉末をガス圧等を用いて除去するための機構を設けてもてもよい(例えば、上記特許第3193912号公報参照)。
【0049】
また、磁界発生装置40で発生した熱をダイプレート30に伝えないために、磁界発生装置40の支持板40aの上面とダイプレート30の下面との間に1μm以上のクリアランスを設けることが好ましい。
【0050】
希土類合金粉末12としては、R−Fe−B系希土類合金が好適に用いられる。希土類合金の組成および製造方法は、例えば、米国特許第4,770,723号および米国特許第4,792,368号に記載されている。R−Fe−B系希土類合金の典型的な組成では、RとしてNdまたはPrが主に用いられ、Feは部分的に遷移元素(例えばCo)に部分的に置換されてもよく、BはCによって置換されてもよい。ここでは、急冷法で作製したNd−Fe−B系凝固合金(密度7.5g/cm3)をジェットミルで粉砕することによって得られた平均粒径(FSSS粒径)1.5μm〜8μmの範囲内の粉末を用いる。合金粉末の表面は、例えば、ステアリン酸亜鉛などの潤滑剤で被覆しておくことが好ましい。
【0051】
まず、図2(a)に示すように、希土類合金粉末12が収容されたフィーダボックス80をダイプレート30の上面上を移動させ、図2(b)に示すように、キャビティを覆うように配置する。この後、希土類合金粉末12の自重を利用し、あるいは、フィーダボックス80に設けられたアジテータ(不図示)を用いて加圧しながら、希土類合金粉末12をキャビティ内に充填する。摺り切り法を用いると、キャビティ内に適当な見掛け密度(例えば2.0g/cm3〜2.5g/cm3)で合金粉末を充填することができる。
【0052】
続いて、上パンチ10Aおよび/または下パンチ10Bを昇降させることによって、キャビティ内の希土類合金粉末を一軸プレスする。典型的には上パンチ10Aを下降させるが、上パンチ10Aを下降させるとともに下パンチ10Bを上昇させてもよい。
【0053】
ここで、希土類合金粉末(最終的な成形体が得られる前の合金粉末を「仮成形体」ということもある。仮成形体はキャビティから取り出した状態で形状を維持できないものも含む。)14aが所定の密度に到達した時点で、磁界発生装置40によってパルス磁界を印加する。希土類合金粉末14aの密度が低い時点でパルス磁界を印加しても配向の効果が低い。希土類合金粉末14aの密度が3.6g/cm3以上4.0g/cm3以下の時点、パルス磁界を印加する。
【0054】
希土類合金粉末の密度が所定の範囲にある時点でパルス磁界を印加するという動作を確実に実行するためには、上パンチ10Aおよび/または下パンチ10Bのストロークを制御し、仮成形体の密度が所定密度に到達した時点で一旦上パンチ10Aおよび/または下パンチ10Bのストロークを停止することが好ましい。この停止期間にパルス磁界を印加し、その後、最終的な成形体を得るためのプレス工程を再開すればよい。
【0055】
パルス磁界としては、0.5msec以上10msec以下の時間で最高磁界強度に到達する磁界を用いることが好ましい。例えば、図3(a)に示すようなプロファイルを有する交番減衰磁界(例えば、最高磁界強度:5T、減衰率80%、パルス幅:0.002秒)を好適に用いることができる。パルス磁界を用いると短時間で配向することが可能で、交番減衰磁界を用いることによって成形体の残磁を低減することができる。パルス磁界の強度は、用いる材料の保磁力に依存するが、2T以上10T以下の範囲にあることが好ましい。なお、交番減衰磁界に代えて、図3(b)に示すような単調減衰磁界を用いてもよい。また、パルスピーク強度が変化しない交番磁界を用いてもよい。また、パルス磁界は複数回印加してもよいし、パルス磁界の印加後に静磁界を印加してもよい。なお、減衰磁界を用いない場合は、脱磁磁界をさらに印加することが好ましい。成形体の残磁が大きいと、成形体の表面に粉末が付着したり、あるいは成形体同士が密着したりするので、ハンドリングしにくくなる。
【0056】
本実施形態のプレス装置100は、結晶化ガラスから形成されたダイプレート30を有しているので、パルス磁界を印加しても、渦電流を発生せず、温度が上昇しない。非接触温度計を用いて、従来のSUS製ダイプレートを用いた場合の温度上昇の違いを説明する。
【0057】
パルス磁界(最高磁界強度:5T、減衰率80%、パルス幅:0.002秒)を3回連続印加し、その後1分間休止するというサイクルを繰り返しながら、ダイプレート30の表面温度の変化を調べた(室温23℃)。従来のSUS製を用いた場合、1サイクル目から温度上昇が認められ、5サイクルで約10℃上昇し、10サイクル後には45℃付近まで上昇した。これに対し、結晶化ガラスから形成されたダイプレートを用いた場合には、僅かな温度上昇(ダイスの温度上昇に起因すると思われる)が認められたが、10サイクル後も約27℃であり、実質的に問題のないレベルであった。
【0058】
このように、本発明によるプレス成形装置100を用いると、パルス磁界を印加しても、希土類合金粉末が接触する部分のうち渦電流が発生する部分の面積を小さくすることができるので、温度上昇を抑制でき、成形サイクルタイムを短くすることができる。ダイプレート30は、ダイス20の端部から少なくとも20mm以上の領域を占めていることが好ましい。
【0059】
なお、所定の強度で所定の方向(ここではプレス方向に平行)のパルス磁界を希土類合金粉末に均一に印加するためには、図2(c)に示したように、希土類合金粉末14aは磁界発生装置40のコイル部40bの中心に位置することが好ましい。一方、下パンチ10Bのストロークは装置によって固定されている。従って、種々の大きさの成形体をプレス成形するためのマージンを確保するためには、ダイプレート30の厚さは薄いことが好ましく、10mm以下であることが好ましい。但し、あまり薄いと強度が低下するので厚さは2mm以上あることが好ましい。また、あまり薄いとコイル部40bで発生した熱を十分に絶縁(断熱)できず、粉末に熱が伝達されることがあるので、ダイプレート30の厚さは2mm以上あることが好ましい。
【0060】
磁界発生装置40は、一般に、図1に示したように、コイル部40bを支持するための支持板40aを有している。この支持板40aは樹脂材料で形成されていることが多いが、この支持板40aを上述した結晶化ガラスなどを用いて形成することによって、支持板40aをダイプレート30として用いることができる。このような構成を採用すると、ダイプレート30が磁界発生装置40のコイル部40bと実質的に接するように配置されるので、成形マージンを大きくできる利点が得られる。なお、コイル部40bにおける発熱が激しい場合には、ダイプレート30とコイル部40bとの間に断熱材を介在させてもよい。
【0061】
パルス磁界を印加した後、最終的な成形体の密度が、例えば4.0g/cm3〜4.5g/cm3となるように再度加圧し、成形体14bを得る。図2(d)に示すように、例えば、ダイス20を降下させることによって、成形体14bを取り出す。
【0062】
得られた成形体14bは、公知の方法で焼結される。Nd−Fe−B系焼結合金は、例えば、成形体14bをAr雰囲気中で約1050℃で5.5時間の焼結処理を行い、その後Ar雰囲気中で約500℃で3時間の時効処理を行うことによって得られる。
【0063】
上記の実施形態では、本発明を希土類合金粉末のプレス成形に適用した例を示したが、希土類合金粉末と樹脂粉末とを混合したボンド磁石用粉末のプレス成形にも適用することができる。
【0064】
【発明の効果】
上述したように、本発明によると、パルス磁界を用いて従来よりも効率良く磁石用粉末成形体を製造する方法およびそのような製造方法に好適に用いられるプレス成形装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態によるプレス成形装置100の構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の実施形態による希土類磁石用粉末成形体の製造方法における工程を説明するための模式的な断面図である。
【図3】(a)および(b)は、本発明の実施形態による希土類磁石用粉末成形体の製造方法において好適に用いられるパルス磁界のプロファイルを示す図である。
【符号の説明】
10A 上パンチ
10B 下パンチ
20 ダイス
20a コア部
20b 円筒部
30 ダイプレート
30a ダイプレートの開口部
40 磁界発生装置
40a 支持板
40b コイル部
52 支柱
54 ベースプレート
60 フィーダプレート
80 フィーダボックス
80a フィーダボックスの底部
Claims (11)
- キャビティを形成するための貫通孔を有するダイスと、
前記ダイスの少なくとも上端部を内包する開口部を有し、前記ダイスの上端面と実質的に同一面を形成する上面を有するダイプレートであって、絶縁体で形成されており、前記上面が平滑面であるダイプレートと、
前記キャビティ内に充填された磁石用粉末をプレスするための上パンチおよび下パンチと、
前記キャビティ内の前記磁石用粉末に対してパルス磁界を印加するための磁界発生装置と、
を有し、
前記ダイス、上パンチおよび下パンチは非磁性金属材料から形成されており、前記ダイプレートは結晶化ガラスから形成されている磁石用粉末のプレス成形装置。 - 前記ダイプレートの前記上面のビッカース硬度は450超である、請求項1に記載の磁石用粉末のプレス装置。
- 前記ダイプレートの厚さは10mm以下である、請求項1または2に記載の磁石用粉末のプレス成形装置。
- 前記ダイプレートは、前記ダイスの端部から少なくとも20mm以上の領域を占めている、請求項1から3のいずれかに記載の磁石用粉末のプレス成形装置。
- 前記ダイプレートは、前記磁界発生装置が有するコイル部に実質的に接するように設けられている、請求項1から4のいずれかに記載の磁石用粉末のプレス成形装置。
- 前記ダイスは円筒形であり、前記ダイプレートの前記開口部は円形であり、前記ダイスと前記ダイプレートとの間のクリアランスは0.2mm以下である、請求項1から5のいずれかに記載の磁石用粉末のプレス成形装置。
- 請求項1から6のいずれかに記載の磁石用粉末のプレス成形装置を用意する工程と、
前記ダイプレート上を移動する給粉装置を用いて、前記磁石用粉末を摺り切り法で、前記キャビティ内に前記磁石用粉末を充填する工程と、
前記上パンチおよび下パンチを用いて前記キャビティ内の前記磁石用粉末をプレスする工程と、
前記プレス工程において、前記磁石用粉末が所定の密度にプレスされた状態で、前記パルス磁界を印加する工程と、
を包含する、磁石用粉末成形体の製造方法。 - 前記パルス磁界は、交番減衰磁界である請求項7に記載の磁石用粉末成形体の製造方法。
- 前記パルス磁界は、0.5msec以上10msec以下の時間で最高磁界強度に到達する、請求項8に記載の磁石用粉末成形体の製造方法。
- 前記パルス磁界の最高磁界強度は、前記キャビティの中心において2T以上10T以下である、請求項8または9に記載の磁石用粉末成形体の製造方法。
- 前記磁石用粉末は希土類合金粉末であって、前記所定の密度は、3.6g/cm3以上4.0g/cm3以下である、請求項7から10のいずれかに記載の磁石用粉末成形体の製造方法。
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