JP4802500B2 - ポリアリーレンスルフィド積層シート - Google Patents

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Description

本発明は、電気絶縁用ポリアリーレンスルフィド積層シートに関するものであり、さらに詳しくは、モーター中の電気絶縁材料であるスロットもしくはウェッジに用いた際、折り曲げ加工においてフィルム割れが少ないポリアリーレンスルフィド積層シートに関する。
近年、モーターの電気絶縁材には、高温における耐熱性および耐加水分解性を有することが要求されるようになってきた。例えば、冷蔵庫やエアコンディショナーなどに用いられるモーターの電気絶縁材料としては、環境上の問題から、特定フロン全廃に関連した新代替冷媒が提案されているが、該冷媒およびそれに対応する潤滑油は水分を吸着し易く、耐熱性に加えて、耐加水分解性が要求されている。また、ハイブリッド自動車に使用されているモーターの電気絶縁材料としては、耐熱性に加え、使用環境下においてモーター内に水分が侵入するため耐加水分解性が要求されている。
これらの要求に応えうるものとして種々の高分子フィルムが提案され、その中でも、優れた耐熱性、耐加水分解性、耐薬品性、電気絶縁性および低吸湿性などの特性を有した二軸配向されたポリフェニレンスルフィド(以下PPSということがある)フィルムが注目されている。
近年、その電気絶縁性や低吸湿性の高さを活かし、電気絶縁材料へのポリフェニレンスルフィドフィルムの適用が進められており、例えば、(1)二軸配向したPPSフィルムを電気絶縁材料として用いることが知られている(特許文献1参照)。しかし、得られた二軸配向PPSフィルムは破断伸度が低く、加工適性に優れたものではなかった。また、(2)無配向のPPS層に二軸配向PPS層が接着剤を介することなく積層されている積層体が知られている(特許文献2および3参照)。これは、基層部に無配向のPPSを積層することで、積層フィルムの引き裂き強度が増加するものであるが、表層の二軸配向PPSフィルムの破断伸度が低く、また、層間接着強度が十分でないために、スロット加工における曲げ工程において、表層二軸配向PPSフィルムの破れが生じ、スロットカフス部の割れが発生していた。
特開平6−1863号公報 特開平2−45144号公報 特開平3−227624号公報
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、スロット、ウェッジなどのモーター加工に適したポリアリーレンスルフィド積層シートを提供することにあり、さらに詳しくは、高伸度化した二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを積層し、無配向ポリアリーレンスルフィドとの層間接着性を向上させたポリアリーレンスルフィド積層シートによって、モーター加工におけるフィルム割れの発生を抑制することにある。
本発明は上記課題を解決するため以下の構成を有する。すなわち、本発明は少なくとも2以上の層構成を有し、最外層がともに少なくとも一方向の破断伸度が120%以上180%以下である二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムであり、各層の層間接着力が1kg/cm2以上50kg/cm2以下であり、少なくとも一方向の破断伸度が120%以上180%以下であるポリアリーレンスルフィド積層シートを特徴とする。
本発明によれば、層間接着性および耐衝撃性に優れかつ高伸度化したポリアリーレンスルフィド積層シートを得ることができ、スロットやウェッジなどのモーター加工におけるフィルムの割れを低減せしめることができる。
以下、本発明について、望ましい実施の形態を例にとって詳細に説明する。
本発明のポリアリーレンスルフィドとは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するホモポリマあるいはコポリマであることが好ましい。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などを用いることができる。
Figure 0004802500
(R1、R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィドの繰り返し単位としては、上記の式(A)で表される構造式が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、フィルム物性と経済性の観点から、ポリフェニレンスルフィド(PPS)が好ましく例示され、ポリマの主要構成単位として下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む樹脂である。かかるp−フェニレンスルフィド成分が80モル%未満では、ポリマの結晶性や熱転移温度などが低く、PPSの特徴である耐熱性、寸法安定性、機械特性および誘電特性などを損なうことがある。
Figure 0004802500
繰り返し単位中、好ましくは20モル%未満であれば共重合可能なスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。このような繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基等の置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位、カーボネート単位などが具体例としてあげられ、このうち1つまたは2つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれの形態でも差し支えない。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度は、温度300℃、せん断速度200sec−1のもとで700〜20000ポイズの範囲がシートの成形性の点で好ましい。
本発明で用いる二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムとは、例えばp−フェニレンスルフィドなどのポリアリーレンスルフィドを90重量%以上含む樹脂組成物を、溶融成形してシート状とし、二軸延伸、熱処理してなるフィルムである。p−フェニレンスルフィドなどのポリアリーレンスルフィドの含有量が90重量%未満では、組成物としての結晶性が低下し、フィルムの耐熱性、熱寸法安定性、耐加水分解性などが損なわれる場合がある。ポリアリーレンスルフィドとしてp−フェニレンスルフィドを用いる場合、該組成物中の10重量%未満はp−フェニレンスルフィド以外のポリマを含むことができる。p−フェニレンスルフィド以外のポリマは、例えば、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトンなどの各種ポリマおよびこれらのポリマの少なくとも1種を含むブレンド物を挙げることができる。また,無機または有機フィラー、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、相溶化剤などの添加剤を含むこともできる。
本発明の場合、上記二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを積層シートの最外層に配し、少なくとも2以上の層構成とすることにより、所定の破断伸度を実現することが容易となる。また、スロットおよびウェッジ折り曲げ加工性を向上させるうえでも重要である。さらには、ポリアリーレンスルフィドの耐熱性を向上させる点でも重要な役割を担っている。
本発明の場合、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの少なくとも一方向の破断伸度は、120%以上180%以下である。さらに好ましくは140%以上160%以下である。少なくとも一方向の破断伸度が120%未満の場合、スロットの折り曲げの加工工程において、フィルム割れが発生することがあり、破断伸度が180%を超えるとフィルム強度が低下し、スロットおよびウェッジの加工工程において挫屈欠点が発生する場合がある。
本発明のポリアリーレンスルフィド積層シートの最外層に配したポリアリーレンスルフィドフィルムの二軸配向性については、例えば、FT−IR、レーザーラマン分光法などの分光学的手法により配向性を調べることができる。レーザーラマン分光法の場合、Jqbin Yvon社製 Ramaonor T−64000を用いて、3050cm−1付近のラマンバンドと1,570cm−1付近のラマンバンドとの相対強度を用いて配向パラメータを算出する。3,050cm−1付近のラマンバンドはベンゼン環のCH伸縮振動モードに帰属されるものであり、1,570cm−1付近のラマンバンドはベンゼン環の伸縮振動モードに帰属される。本発明の場合、配向パラメータが0.25以上である場合配向性を有するため好ましく用いられる。
本発明においては、無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの層をポリアリーレンスルフィド積層シートに含有することが積層シートの耐衝撃性を向上させるために好ましい。
本発明で用いる無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムとは、溶融成形してなる厚さ1mm以下のフィルム、シート、板の総称で、実質的に無配向のものをいう。
本発明の場合、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムと無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムとの間に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を積層することが、後述する層間接着性を得るために好ましく用いられる。
積層する共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂は、特に限定されないが、無配向共重合ポリアリーレンスルフィドでも、二軸配向共重合ポリアリーレンスルフィドでもかまわない。二軸配向共重合ポリアリーレンスルフィドが積層シートの破断伸度を得るために好ましく用いられる。二軸配向共重合ポリアリーレンスルフィドを積層する方法としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂の少なくとも片面に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を共押し出しして積層し、これらを共延伸する方法、あるいは、ポリアリーレンスルフィド樹脂の両面に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を共押しして積層し、無配向積層シートとする方法を用いることができる。本発明の場合、ポリアリーレンスルフィド樹脂の少なくとも片面に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を共押し出しして積層し、これらを共延伸する方法が層間接着力が向上できるため好ましいがこれに限定されるものではない。
積層する共重合ポリアリーレンスルフィドフィルムの厚みは、総積層シート厚みの3〜30%であることが好ましい。より好ましくは、5〜25%であり、さらに好ましくは、10〜20%である。共重合ポリフェニレンスルフィドフィルムの厚みが3%未満の場合、層間接着性が十分高められない場合があり、30%を超えるとフィルムの耐熱性が十分高められない場合がある。
本発明のポリアリーレンスルフィド積層シートの積層方法は特に限定されないが、接着剤を介さずに、熱融着によって固着させた熱ラミネート法が層間接着性を向上させる点で好ましく用いられる。
本発明のポリアリーレンスルフィド積層シートは、積層に先駆けて、無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムに熱処理や酸化架橋処理が行われてもよい。また、無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムおよび二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムにコロナ放電処理やプラズマ処理を施すことは好ましく用いられる。
また、本発明の場合、上記無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムが共重合ポリアリーレンスルフィドを含んでいてもよい。この場合、無配向ポリアリーレンスルフィドフィルム中には、共重合ポリアリーレンスルフィドを10〜100重量%含有することが好ましい。より好ましくは、30〜100重量%であり、さらに好ましくは、50〜100重量%である。共重合ポリアリーレンスルフィドが10重量%未満であると、層間接着性が乏しくなる場合があり、その結果、フィルムの破断伸度が低下する場合があり、スロットおよびウェッジの折り曲げ加工工程においてフィルム割れが発生する場合がある。
本発明で用いられる共重合ポリアリーレンスルフィドとしては、繰り返し単位の50モル%以上95モル%未満、好ましくは70モル%以上92モル%未満がp−フェニレンスルフィドユニットで構成されていることが好ましい。かかる構成割合が50モル%未満では、フィルムの耐熱性低下が著しくなる場合があり、95モル%以上では、層間接着性を十分高められない場合がある。
共重合単位としては、下記式に示すm−フェニレンスルフィド単位、
Figure 0004802500
Figure 0004802500
Figure 0004802500
(ここでXは、アルキレン、CO、SO2単位を示す。)
Figure 0004802500
Figure 0004802500
(ここでRはアルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、これらの複合の単位が存在してもかまわない。好ましい共重合単位は、m−フェニレンスルフィド単位である。これらの単位の共重合量は、3モル%以上50モル%以下が好ましく、より好ましくは5モル%以上30モル%以下である。かかる共重合成分が3モル%未満では、層間接着性を十分高められない場合があり、その結果フィルムの破断伸度が低下し、耐衝撃性改良効果が乏しくなる場合がある。50モル%を超えると、耐熱性の低下が著しくなる場合がある。
本発明で用いられる共重合ポリアリーレンスルフィドの上記成分と共重合成分との共重合の態様は、特に限定はないが、ランダムコポリマーであることが好ましい。
本発明においては、共重合ポリアリーレンスルフィドを構成する共重合体の繰り返し単位の残りの部分においては、さらに他の共重合可能な構成単位で構成されてもよいが、例えば、下記式に代表される3官能性フェニルスルフィドは、共重合体全体の1モル%以下であることが好ましい。
Figure 0004802500
本発明に用いられる共重合ポリアリーレンスルフィドの融点は、180℃以上260℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以上250℃以下であり、さらに好ましくは220℃以上240℃以下である。融点が180℃未満の場合、耐熱性低下が著しくなる場合があり、260℃を超えると層間接着性が十分でない場合がある。
本発明のポリアリーレンスルフィド積層シートの無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの層厚みは、積層シートの総厚みの3%以上40%以下であることが、積層シートの破断伸度、層間接着性、耐衝撃性、スロット加工における割れ低減のバランスの点で好ましい。より好ましくは5%以上30%以下であり、さらに好ましくは10%以上20%以下である。無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの層厚み比が3%未満の場合、積層シートの耐衝撃性が低下しフィルム割れが発生する場合があり、厚み比が40%を超えると積層シートの破断伸度が低下し、スロット加工におけるフィルム割れ発生が増加する場合がある。
本発明のポリアリーレンスルフィド積層シートの厚みは、125μm以上450μm以下であることが好ましい。より好ましくは、200μm以上350μm以下であり、さらに好ましくは、250μm以上300μm以下である。該フィルム厚さが125μm未満である場合フィルムの電気絶縁性が低下する場合がある。また、450μmを超えるとスロットやウェッジの加工性が極めて低下する場合があり、製膜性が低下することがある。上記の厚み範囲とすることにより、モータスロット用電機絶縁フィルムとして好適に用いることが可能となる。
本発明のポリアリーレンスルフィド積層シートの破断伸度は、120%以上180%以下であることが本発明の効果を得るために重要である。さらに好ましくは140%以上160%以下である。積層シートの破断伸度を上記範囲とすることで、スロットの折り曲げ加工工程におけるフィルム割れを抑制することができる。破断伸度が120%未満の場合、スロットの折り曲げ加工工程で割れが発生することがあり、破断伸度が180%を超えるとフィルムの強度が低下するため、スロット、ウェッジなどの加工工程において挫屈欠点が発生する場合がある。本発明のポリアリーレンスルフィド積層シートの破断伸度を上記範囲とするためには、積層する二軸配向ポリアリーレンスルフィドの破断伸度を上記記述の範囲とすること、および、二軸配向ポリアリーレンスルフィドと無配向ポリアリーレンスルフィドとの層間接着力を後述する範囲とすることによって得ることができる。
本発明の積層シートの層間接着力は、1kg/cm2以上、50kg/cm2以下であることが本発明の積層シートの破断伸度を得るため、および、スロットの折り曲げ加工工程においてフィルム割れを抑制するため必要である。より好ましくは、5kg/cm2以上、40kg/cm2以下であり、さらに好ましくは、10kg/cm2以上、30kg/cm2以下である。層間接着力が、1kg/cm2未満であると、積層シートの破断伸度が低下する場合があり、また、スロット折り曲げ加工工程においてフィルム割れを発生する場合がある。また、層間接着力が50kg/cm2を超えるためには、熱ラミネート温度を使用するポリアリーレンスルフィドの融点近傍まで上昇させる必要があり、二軸配向ポリアリーレンスルフィドの熱収縮のため安定した熱ラミネートが行えない場合がある。
上記層間接着力とは、積層シートを構成する各層間における層間接着力をいい、隣り合う少なくとも2層間が上記範囲内にあればよいが、好ましくは、全ての層間で上記範囲の層間接着力を有していることが好ましい。
上記層間接着力評価は、引張り試験法によるせん断剥離によって行う。
本発明のポリアリーレンスルフィド積層シートの耐衝撃強度は、3N/μm以上10N/μm以下であることがスロットおよびウェッジの加工工程でフィルムの割れ発生を抑制するために好ましく、より好ましくは、4N/μm以上10N/μm以下であり、さらに好ましくは、5N/μm以上10N/μm以下である。耐衝撃強度が3N/μm未満の場合、スロットおよびウェッジの加工工程においてフィルムの割れを発生する場合がある。また、耐衝撃強度の上限は特に設けないが、10N/μmを超えるとフィルムの腰が低下し、スロットおよびウェッジの加工性が低下する場合がある。
本発明のポリアリーレンスルフィド積層シートを製造する方法について、ポリアリーレンスルフィド樹脂としてポリフェニレンスルフィドを用いた場合を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
p−PPS樹脂の重合法は、例えば、次のような方法がある。硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中に高温高圧化で反応させる。必要によって、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることもできる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマを冷却し、ポリマを水スラリーとしてフィルタで濾過後、粒状ポリマを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄、乾燥してPPS粒状ポリマを得る。得られた粒状ポリマを、酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、副生塩、重合助剤、未反応モノマ等を分離する。上記に得られたポリマに必要に応じて、無機または有機の添加剤等を本発明の目的に支障を与えない程度添加し、p−PPS樹脂を得る。
共重合PPSの重合法は、例えば、次のような方法がある。硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンおよび副成分モノマを所定の比率で配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で重合助剤の存在下、高温高圧化で反応させる。副成分モノマとしては、
Figure 0004802500
Figure 0004802500
Figure 0004802500
(ここでXは、アルキレン、CO、SO2単位を示す。)
Figure 0004802500
Figure 0004802500
(ここでRは、アルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、これらの複数の副成分モノマが存在しても構わない。好ましい副成分モノマは、
Figure 0004802500
である。
こうして得られたPPS樹脂に、必要に応じて、無機または有機の添加剤を加え、無配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを作成する。
無配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造方法は、上記で得られたPPS樹脂組成物を十分に乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で樹脂組成物の融点以上の温度に加熱された溶融押出機に供給し、口金より押し出し、公知の密着手段である静電印加法、エアーチャンバー法、エアーナイフ法、プレスロール法などでドラムなどの表面温度が樹脂組成物のガラス転移点以下のキャスティングドラム上で密着冷却固化させ、無配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを作成する。また、溶融押出機中で異物や変質ポリマを除去するために各種フィルタ、例えば、燒結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルタを用いることが好ましい。
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造方法は、上記で得られた共重合PPSポリマおよびPPSポリマそれぞれ180℃にて3時間、1mmHgの減圧下で乾燥後、必要に応じて無機または有機の添加剤を加え、別々のエクストルーダーに供給し、無配向ポリフェニレンスルフィドフィルムと同様にして無配向シートを作成する。ついで、得られた無配向シートを種々の方法で二軸延伸、熱処理する。
延伸は、長手方向に90℃〜120℃で3.0〜4.0倍の範囲で行うことが好ましい。本発明の場合、より好ましい延伸倍率は、3.0〜3.7であり、さらに好ましくは、3.0〜3.5倍である。本発明において、延伸倍率が3.0倍未満の場合、十分なフィルム平面性を有したポリフェニレンスルフィドフィルムを得られない場合があり、延伸倍率が4.0倍を超えると本発明の破断伸度を得られない場合がある。ついで、幅方向に90℃〜120℃で2.5〜3.5倍に延伸することが好ましい。より好ましくは、2.7〜3.3倍であり、さらに好ましくは、2.8〜3.0倍である。本発明において、延伸倍率が2.5倍未満の場合、十分なフィルム平面性を有したポリフェニレンスルフィドフィルムを得られない場合があり、延伸倍率が3.5倍を超えると本発明の破断伸度を得られない場合がある。
熱処理は、180℃〜(PPS積層シートの融点−15℃)の範囲で、定長または15%以下の制限収縮下に1〜60秒間行うことが好ましい。本発明の場合、破断伸度を本発明の範囲とするために、熱処理温度は、200℃〜(PPS積層シートの融点−25℃)がより好ましく、220℃〜(PPS積層シートの融点−35℃)がさらに好ましい。
次に無配向ポリフェニレンスルフィドフィルムと二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを積層する方法は、高温高圧下で両者を熱圧着する方法を用いることができる。熱圧着の条件は、温度180℃〜270℃、圧力1〜20kg/cmの条件であることが好ましい。温度が180℃未満であると接着力が十分に高められない場合があり、270℃を超えると、積層シートの平面性が急激に悪化し、機械特性が悪化する場合がある。一方、圧力が1kg/cm未満では熱圧着の温度を上げても接着性に乏しく、逆に圧力が20kg/cmを超えると、積層シートの平面性が悪化したり、無配向ポリフェニレンスルフィドが破断したりする場合がある。接着性、機械特性の観点からより好ましい熱圧着温度は、200℃〜250℃の範囲であり、さらに好ましくは220℃〜240℃範囲である。一方、より好ましい熱圧着圧力は、3〜15kg/cmの範囲であり、さらに好ましくは、5〜10kg/cmの範囲であるがこれらに限定されるものではない。
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明で用いた特性値の測定法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)層間接着力
インストロンタイプの引張試験機(オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”)を用いて、幅30mm、試長間100mm、引張り速度50mm/分の条件で引っ張る。
(2)破断伸度
ASTM−D882に規定された次の方法に従って、インストロンタイプの引張試験機(オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”)を用いて測定した。幅10mmの試料フィルムを、試長間100mm、引張り速度200mm/分の条件で引っ張る。測定は25℃、65%RHの雰囲気下で行う。
(3)スロット加工性
モータスロット加工機(小田原エンジニアリング社製)を用い、250μm厚みの試料を、幅24mm、長さ39mmのスロットに加工速度2ヶ/秒で加工し、目視でフィルム割れの発生したものを不良品とし、不良品発生率を次の基準で評価した。なお、加工個数は各試料100個ずつとする。
◎:不良率が0%
○:不良率が0%を超え5%以下
△:不良率が5%を超え20%
×:不良率が20%を超える
(4)耐衝撃強度
ASTM−D−256に規定された方法に従って、25℃の雰囲気下で測定を行った。
(実施例1)
(1)共重合PPSポリマの調製
オートクレーブに、100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの水酸化ナトリウムおよび25リットルのN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPという)を仕込み、攪拌しながら徐々に220℃まで昇温して含有されている水分を蒸留により除去した。
脱水の終了した系内へ主成分モノマとして86モル%のp−ジクロルベンゼン、副成分モノマとして15モル%のm−ジクロルベンゼン、および0.2モル%の1,2,4−トリクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃で窒素を3kg/cm2加圧封入後、昇温し、260℃にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマを採取した。
このポリマを90℃の蒸留水により5回洗浄した後、減圧下120℃にて乾燥して融点が240℃の白色粒子状の共重合PPSポリマを得た。
(2)p−PPSポリマの調製
主成分モノマとしてp−ジクロルベンゼンを用いること以外はすべて(1)の共重合PPSポリマの製造と同様にしてp−PPSポリマを製造した。なお、該p−PPSポリマの融点は285℃であった。
(3)無配向ポリフェニレンスルフィドフィルム(シート)の調製
上記(2)で得られたp−PPSポリマをそれぞれ180℃にて3時間、1mmHgの減圧下で乾燥後エクストルーダーに供給し、310℃で溶融させ、金属繊維を用いた95%カット孔径10μmフィルタで濾過したのち、400mm幅、間隔1.0mmの直線上リップを有するTダイ型口金より吐出させた。このようにして押し出した溶融シートを、静電印加法により表面を25℃に保った金属ドラム上で冷却密着固化させ、厚み50μmの無配向ポリフェニレンスルフィドシートを得た。
(4)二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム(シート)の調製
上記(1)および(2)で得られた共重合PPSポリマおよびp−PPSポリマそれぞれ180℃にて3時間、1mmHgの減圧下で乾燥後、平均粒径0.7μmのシリカ微粒子粉末0.1wt%、ステアリン酸カルシウム0.05wt%を(2)中に添加したのち、別々のエクストルーダーに供給し、310℃で溶融させ、金属繊維を用いた95%カット孔径10μmフィルタで濾過し、口金上部にある積層装置でp−PPSポリマ/共重合PPS(890μm/160μm)の2層積層となるように吐出量を調整し、無配向ポリフェニレンスルフィドシートの製造と同様にして厚み1,050μmの無配向PPSシートを得る。ついで、加熱ロール群からなる長手方向延伸機に供給し、フィルム温度102℃で3.5倍に延伸し、続いてテンターを用いて幅方向に103℃で3.0倍延伸し、さらに240℃で10秒間熱処理して、p−PPSポリマ/共重合PPS(85μm/15μm)の厚さ100μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートを得た。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートのフィルム長手方向および幅方向の破断伸度は100%/150%であった。
(5)積層体の作成
(3)で得られた無配向ポリフェニレンスルフィドシートと(4)で得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートを温度240℃、圧力10kg/cmのプレスロールで二軸配向ポリフェニレンスルフィド/共重合ポリフェニレンスルフィド/無配向ポリフェニレンスルフィド/共重合ポリフェニレンスルフィド/二軸配向ポリフェニレンスルフィドの構成になるように重ね合わせてラミネートした。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートは層間接着性に優れ、スロット加工におけるフィルム割れのないものであった。
(実施例2)
実施例1で用いた二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートの延伸倍率を3.5×3.3倍(長手方向×幅方向)と変更する以外は実施例1と同様にしてポリフェニレンスルフィド積層シートを作成した。二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートのフィルム長手方向および幅方向の破断伸度は100%/130%であった。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートは層間接着性に優れ、スロット加工におけるフィルム割れの少ないものであった。
(比較例4)
実施例1で用いた二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートの延伸倍率を3.5×3.5倍(長手方向×幅方向)と変更する以外は実施例1と同様にしてポリフェニレンスルフィド積層シートを作成した。二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートのフィルム長手方向および幅方向の破断伸度は100%/100%であった。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートは層間接着性に優れ、スロット加工におけるフィルム割れの少ないものであった。
(実施例3)
実施例1で用いた二軸配向ポリフェニレンスルフィドを共重合PPS/PPSポリマ(10μm/90μm)とする以外は実施例1と同様にしてポリフェニレンスルフィド積層シートを作成した。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートはスロット加工におけるフィルム割れの少ないものであった。
(実施例4)
実施例1で用いた二軸配向ポリフェニレンスルフィドを共重合PPS/p−PPSポリマ(5μm/95μm)とする以外は実施例1と同様にしてポリフェニレンスルフィド積層シートを作成した。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートはスロット加工におけるフィルム割れの少ないものであった。
(実施例5)
上記(1)および(2)で得られた共重合PPSポリマおよびp−PPSポリマそれぞれ180℃にて3時間、1mmHgの減圧下で乾燥後、別々のエクストルーダーに供給し、310℃で溶融させ、金属繊維を用いた95%カット孔径10μmフィルタで濾過したのち、口金上部にある積層装置で共重合PPS/p−PPSポリマ/共重合PPS(15μm/20μm/15μm)の3層積層とするように吐出量を調整し、400mm幅、間隔1.0mmの直線上リップを有するTダイ型口金より吐出させた。このようにして押し出した溶融シートは、静電印加法により表面を25℃に保った金属ドラム上で冷却密着固化させ、厚み50μmの無配向ポリフェニレンスルフィドシートを得た。
ついで、上記(2)で得られたp−PPSポリマのみを用いる以外は実施例1と同様にして厚み100μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートを得た。
上記で得られた無配向ポリフェニレンスルフィドシートと二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートを実施例1と同様にラミネートしてポリフェニレンスルフィド積層シートを作成した。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートはスロット加工におけるフィルム割れの少ないものであった。
(比較例5)
実施例5で得られた無配向ポリフェニレンスルフィドシートを共重合PPS/p−PPSポリマ/共重合PPS(10μm/30μm/10μm)とする以外は実施例5と同様にしてポリフェニレンスルフィド積層シートを作成した。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートはスロット加工におけるフィルム割れの少ないものであった。
(比較例6)
実施例5で得られた無配向ポリフェニレンスルフィドシートを共重合PPS/p−PPSポリマ/共重合PPS(5μm/40μm/5μm)とする以外は実施例5と同様にしてポリフェニレンスルフィド積層シートを作成した。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートはスロット加工におけるフィルム割れの少ないものであった。
(比較例7)
上記(1)および(2)で得られた共重合PPSポリマおよびp−PPSポリマをそれぞれ180℃にて3時間、1mmHgの減圧下で乾燥後、共重合PPSポリマ60wt%、p−PPSポリマ40wt%を40mm孔径の押出機に供給し、310℃で溶融させ、金属繊維を用いた95%カット孔径10μmフィルタで濾過したのち、400mm幅、間隔1.0mmの直線上リップを有するTダイ型口金より吐出させた。このようにして押し出した溶融シートは、静電印加法により表面を25℃に保った金属ドラム上で冷却密着固化させ、厚み50μmの無配向ポリフェニレンスルフィドシートを得た。
ついで、上記で得られた無配向ポリフェニレンスルフィドシートを用いる以外は実施例5と同様にしてポリフェニレンスルフィド積層シートを作成した。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートはスロット加工におけるフィルム割れの少ないものであった。
(実施例6)
実施例1で用いた共重合PPSポリマのp−ジクロルベンゼンおよびm−ジクロルベンゼンの添加量を、p−ジクロルベンゼン91モル%、m−ジクロルベンゼン10モル%とする以外は実施例1と同様にしてポリフェニレンスルフィド積層シートを作成した。得られた共重合PPSポリマの融点は253℃であった。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートはスロット加工におけるフィルム割れの少ないものであった。
(比較例1)
実施例1で用いた二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートの延伸倍率を4.0×3.8倍(長手方向×幅方向)と変更する以外は実施例1と同様にしてポリフェニレンスルフィド積層シートを作成した。二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートの破断伸度は50%であった。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートは層間接着性に優れているが、積層シートの破断伸度が低く、スロット加工においてフィルム割れが多発した。
(比較例2)
実施例1でp−PPSポリマのみを用いる以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリフェニレンスルフィドシートを作成し、実施例1と同様にしてポリフェニレンスルフィド積層シートを作成した。
得られたポリフェニレンスルフィド積層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートは層間接着性に乏しく、破断伸度測定中に層間剥離が起こり、スロット加工においてフィルム割れが多発した。
(比較例3)
実施例1と同様にして250μmの無配向ポリフェニレンスルフィド単膜シートを作成した。
得られた無配向ポリフェニレンスルフィドシートの構成や特性ついての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このシートは破断伸度が低く、スロット加工において、シートの腰がないため、スロット挿入加工で挫屈し、スロット加工性の評価ができなかった。
Figure 0004802500

Claims (7)

  1. 少なくとも2層以上の構成層を有し、最外層がともに少なくとも一方向の破断伸度が120%以上180%以下である二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムであり、各層の層間接着力が1kg/cm2以上50kg/cm2以下であり、少なくとも一方向の破断伸度が120%以上180%以下であるポリアリーレンスルフィド積層シート。
  2. ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドである、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド積層シート。
  3. 無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの層を有している、請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィド積層シート。
  4. 無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの厚みが総シート厚みの3%以上40%以下である、請求項3に記載のポリアリーレンスルフィド積層シート。
  5. 無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの両面に共重合ポリアリーレンスルフィドフィルムを積層してなる、請求項3または4に記載のポリアリーレンスルフィド積層シート。
  6. 無配向ポリアリーレンスルフィドフィルムが共重合ポリアリーレンスルフィドを含有している、請求項3〜5のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド積層シート。
  7. 共重合ポリアリーレンスルフィドの融点が180℃以上260℃以下である、請求項5または6に記載のポリアリーレンスルフィド積層シート。
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