JP4876355B2 - フッ素化ジシアノベンゼンの製造方法 - Google Patents

フッ素化ジシアノベンゼンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬・農薬類及びポリマー製造のための中間体・原料として有用なフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法に関するものである。特に、テトラフルオロテレフタロニトリルは、農薬中間体として重要である。
【0002】
【従来の技術】
下記式(2)、
【化3】
Figure 0004876355
(式中、mは1〜4の整数を、nは0または1〜3の整数を表し、m+n=4である。)で示されるフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法としては、置換ジシアノベンゼン類をフッ素化剤と反応させて製造する方法が知られている。
【0003】
例えば、特公昭44−28493号公報及びBull.Chem.Soc.Jpn,40,688(1971)にはテトラクロロテレフタロニトリルをフッ化カリウムと無溶媒下反応させてテトラフルオロテレフタロニトリルを製造する方法が記載されている。しかしながら、この方法は反応温度が300℃と極めて高く、反応装置の腐食性に難点がある。また、生成物の単離方法が煩雑な上、収率が80%以下と低く工業的に優れた方法とは言い難い。
【0004】
特開昭60−112751号公報にはベンゾニトリル溶媒中でテトラクロロフタロニトリルをフッ素化剤と反応させテトラフルオロフタロニトリルを製造する方法が開示されている。収率は90〜92%程度と高いが、反応温度が300℃前後と高く、反応装置の腐食性に難点がある。しかも反応完結するのに10時間以上必要であり、工業的に有利な方法とは言い難い。
【0005】
一方、特開昭51−6940号公報及び米国特許第3975424号では含水率0.2%以下の極性溶媒存在下、テトラクロロテレフタロニトリルをフッ化カリウムと反応させてテトラフルオロテレフタロニトリルを得る方法が開示されている。この方法は反応温度が130℃と低く、しかも5時間と短時間で反応が終了する優れた特徴がある。しかしながら、この方法は、収率が最高でも81%と低く、溶媒量が原料であるテトラクロロテレフタロニトリルに対して7.7質量倍以上使用しているため工業的に実施する場合、生産性が低く多量の廃棄物が排出されることが予想される。また、反応に用いる溶媒の回収方法や工業的に実施する際に適用される反応装置については何ら規定されていない。
【0006】
このように、従来のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法は、工業的に実施するには、収率が低いことおよび産業廃棄物が多いこと等、まだ改善の余地があるといわなければならない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、式(1)、
【化4】
Figure 0004876355
で示されるテトラクロロジシアノベンゼンを原料とする式(2)、
【化5】
Figure 0004876355
(式中、mは1〜4の整数を、nは0または1〜3の整数を表し、m+n=4である。)で示されるフッ素化ジシアノベンゼンの工業的に実施し得る製造方法を提供することを課題の一つとする。詳しくは、テトラクロロジシアノベンゼンとフッ素化剤を反応させフッ素化ジシアノベンゼンを製造する方法において従来の方法では達成できなかった低温でしかも短時間に反応させる高収率のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法を提供することを課題の一つとする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、反応に非プロトン性極性溶媒を用いてテトラクロロジシアノベンゼンとフッ素化剤を反応させ、非プロトン性極性溶媒の量が反応速度やフッ素化ジシアノベンゼンの収率にどの様な影響を与えるかを検討した。
【0009】
その結果、非プロトン性極性溶媒の量をテトラクロロジシアノベンゼンに対して3質量倍以下に削減すると、驚くべきことに3質量倍より多く用いた場合より反応速度が向上するばかりでなく高収率、高純度でフッ素化ジシアノベンゼンを製造できることを知見した。
【0010】
これまで、テトラクロロジシアノベンゼンに対し、溶媒量を減らすとフッ素化ジシアノベンゼンの収率が低下する場合があった。本発明者らは、非プロトン性極性溶媒の量をテトラクロロジシアノベンゼンに対して3質量倍以下に削減すると、反応混合物が液状ではなく湿った粉体状あるいはクリーム状となるので、通常の攪拌機付の反応容器では反応混合物中に塊状固形分が生成したり、反応容器壁面に塊状固形分が付着し、これらの量が増加すると、目的のフッ素化ジシアノベンゼンの収率が低下することを発見した。本発明者らは、これらの塊状固形分を解砕あるいは除去しつつ反応を行えば、好ましくフッ素化ジシアノベンゼンを製造できることを知見した。
【0011】
本発明者らは、上記の検討および知見を基に、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の事項からなる。
【0013】
[1] 下記式(1)、
【化6】
Figure 0004876355
で示されるテトラクロロジシアノベンゼンを、テトラクロロジシアノベンゼンに対して0.1〜3質量倍の非プロトン性極性溶媒の存在下、フッ素化剤と反応させることによる式(2)、
【化7】
Figure 0004876355
(式中、mは1〜4の整数、nは0または1〜3の整数を表し、m+n=4である。)で示されるフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0014】
[2] 非プロトン性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む有機溶媒である[1]のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0015】
[3] 非プロトン性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである[1]のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0016】
[4] フッ素化剤が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物である[1]〜[3]のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0017】
[5] フッ素化剤が、フッ化カリウムである[4]のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0018】
[6] フッ化カリウムがスプレードライ法で製造されたものである[5]のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0019】
[7] フッ化カリウムの平均嵩比重が0.1〜0.7g/mlである[5]のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0020】
[8] 式(2)で示されるフッ素化ジシアノベンゼンが、テトラフルオロフタロニトリル、テトラフルオロイソフタロニトリルまたはテトラフルオロテレフタロニトリルである[1]〜[7]のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0021】
[9] 式(2)で示されるフッ素化ジシアノベンゼンが、テトラフルオロテレフタロニトリルである[8]のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0022】
[10] 反応混合物中の塊状固形分を解砕しつつ、および/または、反応容器内壁に付着した塊状固形分を除去しつつ、反応を行うことを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0023】
[11] 反応混合物中の塊状固形分を解砕しつつ、および/または、反応容器内壁に付着した塊状固形分を除去しつつ、反応を行うに際して、リボン形状および/またはスクリュー形状の攪拌機が具備されている混合機を使用することを特徴とする[10]に記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0024】
[12] 反応混合物中の塊状固形分を解砕しつつ、および/または、反応容器内壁に付着した塊状固形分を除去しつつ、反応を行うに際して、ニーダーミキサー、インターナルミキサー、ミュラーミキサー、クラッチャー、リボン型ミキサー、垂直スクリュー型(遊星運動型)ミキサーおよびローターミキサーから選ばれるいずれかの装置を使用することを特徴とする[10]に記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0025】
[13] 塊状固形分を、反応混合物の全量に対して10質量%以下で反応を行う[1]〜[12]のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0026】
[14] 反応温度が、80℃〜200℃である[1]〜[13]のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0027】
[15] [1]〜[14]に記載のいずれかの方法によるフッ素化反応の後、反応液を60℃以下に冷却し、水を加えて式(2)で示されるフッ素化ジシアノベンゼンを晶析させることを特徴とするフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、更に本発明を詳しく説明する。
【0029】
本発明の原料に使用される下記式(1)、
【化8】
Figure 0004876355
で示されるテトラクロロジシアノベンゼンは、具体的にはテトラクロロテレフタロニトリル、テトラクロロイソフタロニトリルおよびテトラクロロオルトフタロニトリルである。
【0030】
本発明の反応方法は、テトラクロロジシアノベンゼン、テトラクロロジシアノベンゼンに対して0.1〜3質量倍の非プロトン性極性溶媒、およびフッ素化剤を反応容器に仕込み所定の温度に加熱し攪拌することにより実施される。反応後、晶析、乾燥する等して高純度のフッ素化ジシアノベンゼンを高収率で得ることができる。
【0031】
本発明の生成物であるフッ素化ジシアノベンゼンは、下記式(2)、
【化9】
Figure 0004876355
(式中、mは1〜4の整数を、nは0または1〜3の整数を表し、m+n=4である。)で示される化合物であり、例えば、トリクロロフルオロフタロニトリル、トリクロロフルオロイソフタロニトリル、トリクロロフルオロテレフタロニトリル、ジクロロジフルオロフタロニトリル、ジクロロジフルオロイソフタロニトリル、ジクロロジフルオロテレフタロニトリル、クロロトリフルオロフタロニトリル、クロロトリフルオロイソフタロニトリル、クロロトリフルオロテレフタロニトリル、テトラフルオロフタロニトリル、テトラフルオロイソフタロニトリル、テトラフルオロテレフタロニトリル等が挙げられる。好ましくは、テトラフルオロフタロニトリル、テトラフルオロイソフタロニトリル、クロロトリフルオロイソフタロニトリル、テトラフルオロテレフタロニトリルが挙げられる。更に好ましくはテトラフルオロテレフタロニトリルが挙げられる。
【0032】
本発明の生成物であるフッ素化ジシアノベンゼンは、反応に用いるフッ素化剤の量を調整することにより、モノフッ素置換体、ジフッ素置換体、トリフッ素置換体およびテトラフッ素置換体のフッ素化ジシアノベンゼンを得ることができる。
【0033】
本発明で使用されるフッ素化剤としてはアルカリ金属フッ素化物あるいはアルカリ土類金属フッ素化物等が使用される。例えばアルカリ金属フッ素化物としてはフッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化ルビジウム、フッ化リチウム等が挙げられアルカリ土類金属フッ素化物としてはフッ化バリウム、フッ化カルシウム等が挙げられる。中でも商業的に入手が容易なフッ化カリウムが特に好ましい。特にスプレードライ法で得たフッ化カリウムが好ましい。さらにその中でも平均嵩比重0.1〜0.7g/mlのフッ化カリウムが反応性が高く有効である。
【0034】
本発明で使用される溶媒は非プロトン性極性溶媒であれば特に制限がなく、単一で使用しても他の溶媒と混合して使用しても構わない。例えば適当な溶媒の例としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO2)、スルホラン、2−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルアセトアミド、ベンゾニトリル等が挙げられる。中でもN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン等が好ましい。
【0035】
本発明の反応には、基質であるテトラクロロジシアノベンゼンに対して0.1〜3質量倍の非プロトン性極性溶媒、好ましくは0.1〜2質量倍を用いる。非プロトン性極性溶媒が0.1質量倍より低い場合は、反応速度が遅い。3質量倍より高い場合は得られるフッ素化ジシアノベンゼンの収率が低くなる。
【0036】
本発明の反応は、クリーム状あるいは湿った粉体状を呈する本反応混合物中に塊状固形分を生成しない程度に十分攪拌して実施する。本発明の反応を実施中、反応混合物中に塊状固形分が生成したり反応容器壁面に塊状固形分が生成付着する場合は、これらの塊状固形分を解砕あるいは除去しつつ反応を行うことが好ましい。本発明の反応は反応混合物中の塊状固形分や反応容器壁面に付着した塊状固形分の量が少なければ少ないほどよい。
【0037】
本明細書中に用いる用語「塊状固形分」とは、反応後の液を反応器から抜き出した後、反応器内壁に付着したり、または抜き出されずに残った大きい固形分を意味する。反応容器壁面に付着した塊状固形分を「除去する」とは、塊状固形分を壁面に固定された状態では無いようにすることを意味し、例えば、付着面から離す、剥がす、掻き取る、解砕すること等である。より具体的には、「撹拌翼等により掻き取る」「力を加えて除く」様な操作が例示できる。
【0038】
本発明の反応器として用いられる混合機は、クリーム状あるいは湿った粉体状を呈する本反応混合物中に塊状固形分を生成しない程度に十分攪拌できる機能を有するかまたは生成した塊状固形分や反応容器壁面に付着した塊状固形分を解砕あるいは除去する機能を有する混合機であって加熱機構をもつ混合機であれば特に制限はない。
【0039】
本発明の反応器は上記のように塊状固形分を解砕あるいは除去する機能を有していれば制限はないのであるが、この様な目的のために、例えばリボン形状および/またはスクリュー形状のらせん翼の撹拌機を具備した装置が好ましい。
【0040】
また、本発明の反応方法に適する加熱機構をもつ混合機としては、例えば粘調な物質の混合装置や塊状固形分をも混合できる装置等も有効である。
【0041】
一例としては壁面と攪拌翼の隙間が小さくなるように設計された混合装置や壁面付近をスクリューが公転しつつ自転を行いながら混合する装置などが挙げられる。具体的な例を挙げるとニーダーミキサー、インターナルミキサー、ミュラーミキサー、クラッチャー、リボン型ミキサー、垂直スクリュー型(遊星運動型)ミキサー[ナウターミキサー(細川ミクロン(株)登録商標)等]、ローターミキサー等の種類が挙げられる。
【0042】
この様な混合機が、本発明の反応に有効であるということは、本発明の反応では、通常の反応のように撹拌速度を高くし、反応系全体を均一にする必要はないことを意味している。塊状固形分を解砕または除去することにより、塊状固形分を大量に生成させない様に混合さえすれば、反応が進行することを意味している。すなわち、反応系は部分的に流動すればよく、全体が均一になる必要は無いということであり、通常の反応では固液反応でも全体が均一になるように撹拌するのが一般的であり、本発明の様な条件での反応は、考えにくい反応条件である。
【0043】
本発明の反応混合物中に生成した塊状固形分や反応容器壁面に付着した塊状固形分の量は、好ましくは反応混合物全体に対して10質量%以下である。10質量%より多い場合、反応速度が低下し、フッ素化ジシアノベンゼンの収率や純度が低下する。
【0044】
また、反応を同一反応器で連続実施する場合、反応混合物中に生成する塊状固形分や反応容器壁面に付着した塊状固形分が、反応混合物全体に対して10質量%以下であれば、反応器内部に残存させたまま実施しても特に問題ない。
【0045】
本発明の反応混合物中に水の量が多いと反応速度が低下する問題と収率が低下する問題があるので、反応混合物中の水は、少なければ少ないほど良い。従って、フッ素化剤、溶媒、テトラクロロジシアノベンゼン等原料中の水の量は少ないほど好ましい。また原料仕込み時に吸湿を避けるなどの装置上の工夫や原料を仕込んだ後に溶媒を一部留去し脱水したり、また場合によっては水と共沸する他の成分を加えて留去し脱水することも有効である。
【0046】
本発明で、溶媒量を原料のテトラクロロジシアノベンゼンの3質量倍以下とすることにより、収率が増加する要因の一つとして、使用する溶媒量を減らすことにより、反応系内に混入する水分を抑制しやすいということも考えられる。
【0047】
本発明の反応温度は、室温〜200℃以下で実施される。好ましくは80℃〜200℃である。
【0048】
反応時間は反応温度や目的とするフッ素化ジシアノベンゼンの種類によって異なるが、通常10時間以下でよい。
【0049】
本発明において相間移動触媒を共存させて反応を実施しても構わない。相間移動触媒としては例えば第四級ホスホニウム塩、第四級アンモニウム塩、クラウンエーテル、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0050】
本発明の生成物であるフッ素化ジシアノベンゼンは、例えば晶析、蒸留、抽出、2相分離、昇華などの方法によって単離することが可能である。その中でも反応後、反応混合物中に水を加えることによる晶析は有効である。但し、水を加えて晶析を実施する場合、反応液の温度が高いと生成物であるフッ素化ジシアノベンゼンが分解し、収率及び製品の純度を低下させるので水を加える前に反応混合物を60℃以下に冷却することが好ましい。例えばN,N−ジメチルホルムアミド溶媒存在下テトラクロロテレフタロニトリル及びフッ化カリウムからテトラフルオロテレフタロニトリルを製造する場合、反応後の液を60℃以下に冷却した後、使用した溶媒に対して約2.1質量倍の水を加え晶析、濾過、得られた結晶の乾燥を実施することにより純度97%以上の高純度テトラフルオロテレフタロニトリルを容易に単離することができる。
【0051】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を説明する。
<分析条件>
本実施例で用いた液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーの分析条件は下記の通りである。
【0052】
(液体クロマトグラフィー分析条件)
・装置 :島津LC−10
・カラム :Shodex ODSpak F−511
(粒子径 5μm、サイズ 4.6mm(直径)×150mm(長さ))
・溶離液 :アセトニトリル/水=40/60
・流量 :1ml/min
・検出器 :UV(242nm)
・カラム温度:50℃
・インジェクション:5μL
【0053】
(ガスクロマトグラフィー分析条件)
・装置 :Agilent 6890
・カラム :Agilent J&W DB−1
(サイズ 30m(長さ)×0.53mm(直径)×1.5μm(膜厚))
・キャリア:ヘリウム、5.6mL/minコンスタントフロー
・インジェクション:スプリット(10:1)、1μL、インレット300℃
Figure 0004876355
・検出器 :FID300℃
・内部標準物質:o−ジクロロベンゼン
・希釈溶媒:アセトン
【0054】
<実施例1>
1Lの円筒型フラスコに純度98.35%のテトラクロロテレフタロニトリル210g、スプレードライ法で製造した平均嵩比重0.5g/mlのフッ化カリウム205g、溶媒として含水量が100ppmであるN,N−ジメチルホルムアミドを475g仕込み大型のリボン翼攪拌機により窒素雰囲気下で、攪拌を行いながら130℃に加熱したオイルバスにより昇温した。内温が115℃に到達してから4.5時間反応を継続させた。その後反応液を60℃まで冷却し、2Lの丸底フラスコへ反応液を移し変えた。反応中に反応器壁面に付着し移液後も残存した塊状固形分の質量を測定したところ42.75gであった(総反応液質量の4.8%に相当する。)。反応液を全量移液後、攪拌下1018gの水を40分かけて投入したところ、析出していた塩化カリウムがほとんど溶解するとともにテトラフルオロテレフタロニトリルの結晶が析出した。結晶をヌッチェによって分離した後、40℃の水400gで洗浄した。濾別された濾液及び洗浄液中のテトラフルオロテレフタロニトリルの量は液体クロマトグラフィーで分析し計算したところ合わせて0.21g存在していた(テトラクロロテレフタロニトリル基準収率0.14%に相当する。)。得られた結晶を60℃の真空乾燥機で乾燥させたところ、146.2gの乾燥した結晶が得られた。さらにガスクロマトグラフィーにて分析したところ純度99.1%のテトラフルオロテレフタロニトリルであることがわかった。テトラクロロテレフタロニトリル基準の収率は93.2%であった。
【0055】
<実施例2>
使用したN,N−ジメチルホルムアミドの量を420gに変更した以外は実施例1と同様に実施した。その結果純度99.0%のテトラフルオロテレフタロニトリルの乾燥結晶が147.1g得られた。テトラクロロテレフタロニトリル基準収率は93.7%であった。
【0056】
<実施例3>
使用したN,N−ジメチルホルムアミドの量を630gに変更した以外は実施例1と同様に実施した。その結果純度99.0%のテトラフルオロテレフタロニトリルの乾燥結晶が143.2g得られた。テトラクロロテレフタロニトリル基準収率は91.2%であった。
【0057】
<実施例4>
20Lのガラス反応器に純度98.35%のテトラクロロテレフタロニトリル2.40kg、スプレードライ法で製造した平均嵩比重0.5g/mlのフッ化カリウム2.34kg、溶媒として含水量が100ppmであるN,N−ジメチルホルムアミドを5.43kg仕込みタービン翼の攪拌装置でオイルバスにより昇温した。反応中反応器壁面に塊状固形物が付着したため、時折攪拌回転数を変化させながら極力塊状固形物が付着しないように注意しながら反応を行った。内温が115℃に到達してから4.5時間反応を継続させた後、反応液を60℃まで冷却し、20L容器へ移し替えた。反応中反応器壁面に付着し、移液後も残存していた塊状固形分の質量は、移し替えた反応液質量から概算して約1.01kg存在していたと考えられた(総反応液質量の9.9%に相当する。)。反応液を全量移液後、11.63kgの水を攪拌下40分かけて投入したところ、析出していた塩化カリウムはほとんど溶解するとともにテトラフルオロテレフタロニトリルの結晶が析出した。析出した結晶をヌッチェによって分離した後、40℃の水2.28kgで洗浄した。濾別された濾液及び洗浄液中のテトラフルオロテレフタロニトリルの量を液体クロマトグラフィーで分析し計算したところ合わせて0.002kg存在していた(テトラクロロテレフタロニトリル基準収率0.11%に相当する。)。得られた結晶を60℃の真空乾燥機で乾燥させたところ1.56kgの乾燥した結晶が得られた。さらにガスクロマトグラフィーにて分析したところ純度98.8%のテトラフルオロテレフタロニトリルであることがわかった。テトラクロロテレフタロニトリル基準の収率は86.8%であった。
【0058】
<実施例5>
2.5m3の垂直スクリュー型(遊星運動型)ミキサーに純度98.35%のテトラクロロテレフタロニトリル420kg、スプレードライ法で製造した平均嵩比重0.5g/mlのフッ化カリウム410kg、溶媒として含水量が100ppmであるN,N−ジメチルホルムアミドを950kg仕込み窒素雰囲気下で自転60回転/分、公転0.8回転/分の攪拌を行いながらジャケットに3kg/cm2スチームを流し昇温した。内温が115℃に到達してから4.5時間反応を継続させた。その後反応液を60℃まで冷却し、スラリーポンプを使用し3.5m2の晶析槽へ反応液を移液した。移液後直ちに2036kgの水を40分かけて投入したところ析出していた塩化カリウムがほとんど溶解するとともにテトラフルオロテレフタロニトリルの結晶が析出した。結晶を遠心濾過器によって分離した後、40℃の水400kgで洗浄した。その後コニカルドライヤーで乾燥させたところ292.3kgの乾燥した結晶が得られた。ガスクロマトグラフィーにて分析したところ純度99.0%のテトラフルオロテレフタロニトリルであることがわかった。テトラクロロテレフタロニトリル基準の収率は93.1%であった。
【0059】
<実施例6>
使用したN,N−ジメチルホルムアミドの量を760kgに変更した以外は実施例5と同様に実施した。その結果テトラフルオロテレフタロニトリル純度99.0%の乾燥結晶が296.1kg得られた。テトラクロロテレフタロニトリル基準収率は94.3%であった。
【0060】
<比較例1>
20Lのガラス反応器に純度98.35%のテトラクロロテレフタロニトリル2.03kg、スプレードライ法で製造した平均嵩比重0.5g/mlのフッ化カリウム2.62kg、溶媒として含水量が100ppmであるN,N−ジメチルホルムアミドを14.16kg仕込み、タービン翼の攪拌装置で攪拌下オイルバスにより昇温した。内温が130℃に到達してから5時間反応を継続させた。その後反応液を氷水33.05kgが入った50L容器の中へ攪拌下投入した。析出していた塩化カリウムはほとんど溶解するとともにテトラフルオロテレフタロニトリルの結晶が析出した。結晶をヌッチェによって分離した後、40℃の水1.73kgで洗浄した。濾別された濾液及び洗浄液中のテトラフルオロテレフタロニトリルの量を液体クロマトグラフィーで分析し計算したところ合わせて0.005kg存在していた(テトラクロロテレフタロニトリル基準収率0.3%に相当する。)。得られた結晶を60℃の真空乾燥機で乾燥させたところ1.22kgの乾燥した結晶が得られた。さらにガスクロマトグラフィーにて分析したところ純度99.0%のテトラフルオロテレフタロニトリルであることがわかった。テトラクロロテレフタロニトリル基準の収率は80.4%であった。
【0061】
【発明の効果】
本発明により、医薬・農薬類及びポリマー製造のための中間体・原料として有用なフッ素化ジシアノベンゼンを工業的に有利な方法により、高純度かつ高収率で製造することができる。

Claims (13)

  1. 下記式(1)、
    Figure 0004876355
    で示されるテトラクロロジシアノベンゼンを、テトラクロロジシアノベンゼンに対して0.1〜3質量倍の、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒の存在下、反応温度が、80〜200℃でフッ素化剤と反応させることによる式(2)、
    Figure 0004876355
    (式中、mは1〜4の整数を、nは0または1〜3の整数を表し、m+n=4である。)で示されるフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  2. 非プロトン性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである請求項1に記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  3. フッ素化剤が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物である請求項1または2に記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  4. フッ素化剤が、フッ化カリウムである請求項に記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  5. フッ化カリウムがスプレードライ法で製造されたものである請求項に記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  6. フッ化カリウムの平均嵩比重が0.1〜0.7g/mlである請求項またはに記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  7. 式(2)で示されるフッ素化ジシアノベンゼンが、テトラフルオロフタロニトリル、テトラフルオロイソフタロニトリルまたはテトラフルオロテレフタロニトリルである請求項1乃至のいずれかに記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  8. 式(2)で示されるフッ素化ジシアノベンゼンが、テトラフルオロテレフタロニトリルである請求項に記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  9. 反応混合物中の塊状固形分を解砕しつつ、および/または、反応容器内壁に付着した塊状固形分を除去しつつ、反応を行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  10. 反応混合物中の塊状固形分を解砕しつつ、および/または、反応容器内壁に付着した塊状固形分を除去しつつ、反応を行うに際して、リボン形状および/またはスクリュー形状の攪拌機が具備されている混合機を使用することを特徴とする請求項に記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  11. 反応混合物中の塊状固形分を解砕しつつ、および/または、反応容器内壁に付着した塊状固形分を除去しつつ、反応を行うに際して、ニーダーミキサー、インターナルミキサー、ミュラーミキサー、クラッチャー、リボン型ミキサー、垂直スクリュー型(遊星運動型)ミキサーおよびローターミキサーから選ばれるいずれかの装置を使用することを特徴とする請求項に記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  12. 塊状固形分を、反応混合物の全量に対して10質量%以下で反応を行う請求項1乃至11のいずれかに記載のフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
  13. 請求項1乃至12に記載のいずれかの方法によるフッ素化反応の後、反応液を60℃以下に冷却し、水を加えて式(2)で示されるフッ素化ジシアノベンゼンを晶析させることを特徴とするフッ素化ジシアノベンゼンの製造方法。
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