JP4902964B2 - 薬物の代謝阻害剤とその使用 - Google Patents
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一方、薬物の吸収を改善させるための方法として、薬物の小腸通過を該薬物の吸収が起こるに十分な時間遅らせるために有効な量の脂質を含む組成物を投与すること、該脂質として、オレイン酸などの脂肪酸を用いることが知られている(特許文献1)。
また、鼻粘膜など経粘膜での薬物の吸収促進剤として、多価不飽和脂肪酸を薬物に含有させることも知られている(特許文献2、特許文献3)。
しかしながら、DHAなどの多価不飽和脂肪酸が小腸における薬物の代謝を阻害する作用を有することは知られていない。
さらに、本発明者は、DHAなどの多価不飽和脂肪酸によると薬物代謝が一定時間抑制されるが、一定時間経過後はその抑制能がなくなることを発見し、よって、多価不飽和脂肪酸を有効成分と共に用いた医薬品では、その有効時間をコントロールできることも見出した。さらにまた、多価不飽和脂肪酸によると薬物代謝が一定時間抑制されるので、医薬品の吸収部位への到達時間と代謝抑制時間とを合致させることによって、有効なバイオアベイラビリティーを達成することができる。このような不飽和多価脂肪酸による一定時間の代謝抑制機能は経口投与用の医薬品において特に顕著な有用性を発揮できる。
従来、グレープフルーツジュースがシトクロームP450 3A(CYP3A)の代謝を阻害することで経口投与薬の吸収性を向上させることはよく知られている。しかし、グレープフルーツジュースによるCYP3A代謝阻害は、CYP3Aの酵素活性の完全な失活によるものであって、本来、CYP3Aにより代謝すべきものまですべて吸収させることになってしまうし、代謝阻害が強くなりすぎるという危険性を伴うのに対して、本発明のDHAなどの多価不飽和脂肪酸による代謝阻害能は、上記のように一定時間有効であるので、このような危険性はない。
(1)多価不飽和脂肪酸からなる薬物の代謝阻害剤。
(2)多価不飽和脂肪酸がドコサヘキサエン酸(DHA)からなる上記(1)記載の代謝阻害剤。
(3)薬物が経口投与用である上記(1)又は(2)に記載の代謝阻害剤。
(4)小腸におけるシトクロームP450 3A(CYP3A)による代謝を阻害する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の代謝阻害剤。
(5)薬物の有効成分がシクロスポリン又はサキナビルである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の代謝阻害剤。
(6)薬物の有効成分と代謝阻害剤としての多価不飽和脂肪酸とを含有することを特徴とする医薬品組成物。
(7)多価不飽和脂肪酸がドコサヘキサエン酸(DHA)からなる上記(6)記載の医薬組成物。
(8)医薬品組成物が経口投与用である上記(6)又は(7)記載の組成物。
(9)シクロスポリンあるいはサキナビルと代謝阻害剤としての多価不飽和脂肪酸とを含有する医薬組成物。
(10)多価不飽和脂肪酸がドコサヘキサエン酸(DHA)である上記(9)記載の医薬組成物。
(11)薬物の代謝阻害剤としての多価不飽和脂肪酸の使用。
(12)薬物の代謝阻害剤としてのドコサヘキサエン酸(DHA)の使用。
本発明の代謝阻害剤は、ドコサヘキサエン酸(DHA)、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、レチオニック酸などの多価不飽和脂肪酸であるが、DHAが最も好ましい。
実施例で用いた試薬等は、以下のとおりである。
シクロスポリンA(CyA):ノバルディスファーマ株式会社
コーン油(Wako)
cis−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸(DHA):SigmaD−2534
ポリエチレングリコール200:Wako
麻酔薬エンフルラン:ダイナポット
シクロスポリン測定キットTDXFLXTM:Abbott
P−糖タンパク質阻害剤PSC833:ノバルディスファーマ株式会社
テストステロン:Wako208−08341
6β−水酸化テストステロン:SigmaH−2898
17α−メチルテストステロン:SigmaM−7252
ヒト肝臓ミクロソーム:Gentest452161
アルブミン:Bovine SigmaA−4503
ラットにCyAを投与し、血中シクロスポリン濃度に対するDHAの影響を調べた。
(試薬調製)
経口投与の場合、CyAはコーン油に溶解する。DHAはコーン油に添加した(最終濃度 5,10,20wt/vol%)。
静脈内投与の場合、CyAをエタノールで溶解した後、ポリエチレングリコール200に溶解した(エタノールの最終濃度10vol/vol%)。
220〜250gのWister系雄性ラット(日本医科学動物)を24時間絶食させ、エンフルラン麻酔下(導入5%、維持2%)で左後肢大腿動脈および大腿静脈にカニューレを施した。覚醒後、CyAを投与し、Bolmanケージにラットを固定した。
経口投与の場合、CyAをコーン油に溶解して経口ゾンデで投与した。投与量は、5mg/mLのCyA溶液を、ラット1kg当たり5mg投与した。DHAを添加する場合、最終濃度5,10,20wt/vol%でコーン油に添加した。
静脈投与の場合、投与3時間前に1ml/kgのコーン油(DHAを含む場合あり)を経口投与し、CyAの10vol/vol%エタノール溶液の静脈内投与を行なった。DHAを添加する場合、コーン油に最終濃度5,10,20wt/vol%で添加した。
CyA投与後、経時的にヘパリン採血を行なった。経口投与の場合、投与後1,2,3,4,6,9,12,24時間後に、静脈内投与の場合、投与後0.167,0.5,1,2,4,8,12,24時間後に、採血を行なった。
血液中のCyA量をシクロスポリン測定キットTDXFLXTM(Abbott社)で行なった。
コーン油(基材)に溶解したCyAを経口投与したラット(個体数6〜7)の血中CyA濃度(平均値:mean)を表1と図1に示した。なお、表1には、標準偏差(SD)も併記した。CyAを経口投与したラットの血中CyA濃度は、既報の文献(Biochemical Pharmacology 63(4): 777-783 (2002) Yokogawa K, Shimada T, Higashi Y, Itoh Y, Masue T, Ishizaki J, Asahi M, Miyamoto K., Modulation of mdr1a and CYP3A gene expression in the intestine and liver as possible cause of changes in the cyclosporin A disposition kinetics by dexamethasone)と同等の結果を示した。基材にDHAを添加した群では投与2時間目からDHAの添加量に応じて血中CyA濃度が上昇し、10および20wt/vol%のDHAを添加した群では有意に上昇した。
また、図1から明らかなように、DHA添加による血中CyA濃度の上昇は、一過性である。
この実施例では、DHAを予め投与したときのCyA血中濃度に対する影響を調べた。
ラットにCyAを経口投与する3時間前に20wt/vol%DHAを投与した以外は、実施例1と同様の試験を行なった。
結果を図3に示す。DHAを予め投与した場合と、投与しない場合(コントロール)でCyA血中濃度に殆ど差異がない。
この結果から、予めDHAを投与したときには、CyAの経口投与においても、DHA同時投与のような影響が現れないことが分かった。このことは、DHAの影響がグレープフルーツジュースのような持続性のものではなく、危険性が少ないことを示す。
実施例1と同様の方法でラットにCyAを投与し、投与後の薬物動態パラメータを測定した。
経口投与の場合、DHA添加によりAUC(薬物血中濃度−時間曲線下面積:area under the blood concentration time curve)の値は添加用量に応じて高くなり、10および20重量%のDHAを添加した群では有意であった。全身クリアランスCltot/F、分布容積Vdss/Fの値はDHAの添加用量に応じて低くなり、10および20重量%のDHAを添加した群では有意であった。半減期T1/2に違いはなかった(図4)。なお、AUCは、直線台形法によるものでソフトウエアWin Nonlin(Pharsight Corp)を用いて処理した。
静脈投与の場合には、予めDHAを経口投与した場合にもAUC、Cltot/F、Vdss/FおよびT1/2に有意差はなかった(図5)。
この結果から、CyAの経口投与の場合には、DHAの添加で薬物動態パラメータに有利な影響が現れるのに対して、静脈投与の場合には、DHAを添加しても影響がないことが分かった。
(肝ミクロソーム代謝実験)
ヒト及びラットの肝臓ミクロソーム(Gentest社)によりテストステロン(15,30,100,300μM)を試験管内で37℃、10分間代謝させ、代謝物(6-β水酸化テストステロン)をHPLCで分離し溶出した。代謝反応時にDHA(10,20,30μM)を添加した。
以下の式にSAAMII(Saam Institudeのソフトウエア)を用いて、Vmax、Km、Kiを求めた。
A液 水:アセトニトリル:メタノール=58:2:40
B液 水:アセトニトリル:メタノール=28:32:40
A、B液を用いてグラジエント溶出を行なう。
内部標準:17α−メチルテストステロン
カラム:Super−ODS(TOSOH)
温度:42℃
流速:1mL/min
P−糖タンパク質を発現しているCaco−2細胞を用いて透過性の試験(Caco−2細胞を用いたトランスポートアッセイ)を行なった。
(細胞)
用いたCaco−2細胞は、久光製薬株式会社から入手したATCC由来細胞であり、一週間に一度以上継代培養を行なう。継代は、直径100mmの培養用ディッシュ(IWAKI 3020−100)に培養しているCaco−2細胞をPBS(−)で2回洗い、trypsin−EDTAで反応させディッシュからはがし回収した。遠心して細胞を濃縮した後、細胞数を数えた。最後に新しいディッシュ1枚あたり106個の細胞を播種した。トランスポートアッセイ用にTranswell(costar3402、ポアサイズ3.0μm、直径12mm)へCaco−2細胞を1well当たり63000個播種した。培養1週間後から2〜3日に一度培養液の交換を行い、培養三週間前後にトランスポートアッセイを行なった。
3週間培養したCaco−2細胞を用いて[3H]−CyAのトランスポートアッセイを行なった。トランスポート開始後30、60、90および120分後にtranswellよりバッファーを一部採取して、液体シンチレーションカウンターで放射活性を測定した。
トランスポートアッセイ条件は次のとおりである。
Transwell(costar3402):ポアサイズ3.0μm、直径12mm
トランスポート用バッファー:Hanks balanced solt solution(pH7.4)
0.1%BSA存在下
CyA濃度:50nM(3Ci/mmol)
PSC833濃度:10μM
DHA濃度:100μM
以上から、薬物の吸収率を高めるためのDHAを用いたdrug delivery system(DDS)の可能性が明らかになった。
DHAが生体に対して毒性を有さないことも考え合わせると、DHAの使用は臨床的に有効である。
DHA以外も含む多価不飽和脂肪酸について、代謝阻害能を試験した。対照として、飽和脂肪酸、1価の不飽和脂肪酸についての試験も行なった。
実施例4と同様にしてラット肝ミクロソームを用いてテストステロンの代謝を行い、代謝物(6-β水酸化テストステロン)濃度を測定した。脂肪酸濃度50μM、テストステロン濃度15μM、温度37℃で、10分間代謝を行なった。
表5には、それぞれの脂肪酸を阻害剤として用いるときの、6-β水酸化テストステロン(6βOHT)濃度を、脂肪酸を添加しないときの6-β水酸化テストステロン(6βOHT)濃度に対する比で示した。
以下の実施例では、CyAに代えてサキナビル(HIVプロテアーゼ阻害剤)について試験した結果を示す。
実施例1と同様にして、ラットにサキナビルを投与し、血中サキナビル濃度に対するDHAの影響を調べた。
図8には、サキナビルを50mg/kg経口投与したラット(個体数4〜7)のサキナビル血中濃度を示した。DHAを添加した群では投与2時間目からDHAの添加量に応じて血中サキナビル濃度が上昇し、10%wt/vol%のDHAを添加した群では有意に上昇した。図8から明らかなように、DHA添加による血中サキナビル濃度の上昇は、一過性であった。
一方、図9には、サキナビルを10mg/kg静脈内投与したラット(個体数5)のサキナビル血中濃度を示した。DHAを予め経口投与した場合にも影響は認められなかった。
この結果から、サキナビルについても、CyAと同様、経口投与の場合には、DHA添加で血中濃度が有意に増加したのに対して、静脈内投与の場合には、DHAを添加しても影響がないことが分かった。
この実施例では、DHAを予め投与したときのサキナビル血中濃度に対する影響を調べた。
3匹のラットにサキナビル(50mg/kg)を経口投与する3時間前に10wt/vol%DHAを投与した以外は、実施例1と同様の試験を行なった。
結果を図10に示す。図10には3匹のラットの平均値と標準偏差とを示した。DHAを予め投与した場合と、投与しない場合(コントロール)でサキナビル(SQV)血中濃度に殆ど差異がない。
この結果から、予めDHAを投与したときには、サキナビル経口投与によるときでも、DHA同時投与のときのような影響が現れないことが分かった。このことは、実施例2と同様に、DHAの影響がグレープフルーツジュースのような持続性のものではなく、危険性が少ないことを示す。
実施例1と同様の方法でラットにサキナビルを投与し、投与後の薬物動態パラメータを測定し、結果を表6に示した。
静脈投与の場合には、予めDHAを経口投与した場合にもAUC、Cltot/F、Vdss/FおよびT1/2に有意差はなかった。
この結果から、サキナビルの経口投与の場合には、DHAの添加で薬物動態パラメータに有利な影響が現れるのに対して、静脈投与の場合には、DHAを添加しても影響がないことが分かった。
実施例3と同様にラットの肝臓ミクロソーム(Gentest社)によりサキナビル(1.95,6.3,13μM/L)を試験管内で37℃、10分間代謝させ、代謝物をHPLCで分離し溶出した。代謝反応時にDHA(10,50,100,200,500μM)を添加した。CYP3A4の代表的阻害剤として知られているケトコナゾル(Ketoconazol)を陽性対照として用いた。結果を図9に示した。図11において縦軸はサキナビル代謝物の量であり、値が低いほど代謝が阻害されていることを示す。図11からDHAの添加によってサキナビルの代謝が濃度依存的に阻害されることが分かった。500μM のDHAは、1μMのケトコナゾルとほぼ同じ阻害活性を示し、DHAは比較的強力なCYP3A4代謝阻害活性を示すことが分かった。
Claims (7)
- ドコサヘキサエン酸(DHA)からなる薬物の代謝阻害剤。
- 薬物が経口投与用である請求項1に記載の代謝阻害剤。
- 小腸におけるシトクロームP450 3A(CYP3A)による代謝を阻害する請求項1または2に記載の代謝阻害剤。
- 薬物の有効成分がシクロスポリン又はサキナビルである請求項1〜3のいずれかに記載の代謝阻害剤。
- 薬物の有効成分と代謝阻害剤としてのドコサヘキサエン酸(DHA)とを含有することを特徴とする医薬品組成物。
- 医薬品組成物が経口投与用である請求項5に記載の組成物。
- シクロスポリンあるいはサキナビルと代謝阻害剤としてのドコサヘキサエン酸(DHA)とを含有する医薬組成物。
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