JP5007005B2 - 広い地上エリアをカバーする通信アンテナ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静止衛星上に実装して、広大なテリトリに通信を中継するための通信アンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】
送信アンテナと受信アンテナを搭載する静止衛星(geosynchronous satellite)は、広大なテリトリ、例えば北アメリカの大きさの領域に通信を提供するために使用され、それぞれのアンテナは、多数の放射要素またはソースを連結した反射器を備えている。通信リソース、特に周波数サブバンドの再使用を可能にするために、カバーする領域はいくつかのエリアに分割され、リソースは様々なエリアに割り当てられて、1つのエリアにあるリソースが割り当てられると、隣接するエリアには異なるリソースが割り当てられるようにする。
【0003】
各エリアは、例えば数百キロメートルのオーダの直径を有し、その範囲では、エリア中でアンテナから高利得で十分に均質な放射を提供するためには、各エリアを複数の放射要素でカバーしなくてはならない。
【0004】
図1は静止衛星に搭載されたアンテナでカバーされる領域10とn個のエリア12、12、...、12を示す。この例では4つの周波数サブバンドf1、f2、f3、f4が使用されている。
【0005】
エリア12は、いくつかのサブエリア、14、14などに分割される。各サブエリアは、アンテナの一つの放射要素に対応する。図1は、ある放射要素、例えばエリア12の中心の放射要素14は、ただ一つの周波数サブバンドf4に対応するのに対して、例えばエリア12周辺の放射要素のような他の放射要素は、複数のサブバンドすなわち隣接エリアに割り当てられたサブバンドに連結されていることを示す。
【0006】
図2は、前述の種類の通信システムための従来技術による受信アンテナを示す。
【0007】
アンテナは反射器20と反射器の焦点面の近くに複数の放射要素22、...、22を備える。各放射要素、例えば放射要素22が受信する信号は、特に(高電力)送信周波数を消去することを意図して、最初にフィルタ24を通過させ、次いで低雑音増幅器26を通過させられる。低雑音増幅器26の出力における信号は、分波器30でいくつかのパートに分割されて、場合によっては各パートごとに違う係数がつけられる。このように分波することの目的は、1つの放射要素で複数のビームの形成に寄与できるようにすることである。したがって、分波器30の出力32はエリア34に割り当てられ、スプリッタ30の別の出力32は別のエリア34に割り当てられる。
【0008】
エリアを画定するための分波器30、...、30および加算器34、...、34は、ビームまたはペンシルビーム形成ネットワークと呼ばれる装置40の部分である。
【0009】
図2のビーム形成ネットワーク40には、各分割器30の各出力について、移相器42と減衰器44が組み合わせられている。移相器42と減衰器44は、衛星が望まない変位を生じたときの修正のため、または地上のエリア分布を変更するために、放射ダイアグラムを変更する。
【0010】
また、各低雑音増幅器26には、故障時に代用するために、同じ型の増幅器26’が連結されている。この目的で、2つのスイッチ46、48を設けて、そのような代用ができるようにしている。したがって、故障を検出する遠隔計測手段(図示せず)と交換を実行するための遠隔制御手段(図示せず)を備える必要がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
図2に示したタイプのアンテナシステムには、多数の低雑音増幅器、移相器、減衰器が含まれる。構成要素が多数になることは、その重量ゆえに衛星にとっては問題である。また、多数の移相器42と減衰器44は、信頼性の問題を提起する。
【0012】
本発明は、低雑音増幅器、移相器、減衰器の数を大幅に低減する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この目的で、本発明による受信アンテナは、
マトリックスの各入力が1つの放射要素からの信号を受信し、各出力が1つの移相器と直列に、好ましくは減衰器とも直列に低雑音増幅器に連結されている、少なくとも1つの第1バトラー(Butler)マトリックスと、
第1のバトラーマトリックスの逆行列であって、第1バトラーマトリックスの出力数と同数の入力を有し、かつ第1バトラーマトリックスの入力数と同数の出力を有し、出力がエリアビームを形成するために組み合わされている、第2バトラーマトリックスと、
移相器を制御するための制御手段と、適用可能なところでは、ビームを修正または変更するための減衰器を含む。
【0014】
3dBカプラからなるバトラーマトリックスでは、各出力の信号は、すべての入力信号の組み合わせであるが、様々な入力からの信号は、各入力ごとに異なる特有の位相を有しており、したがって入力信号は、逆バトラーマトリックスを通過し、次いで増幅、移相、適用可能な場合は減衰の処理の後で、一体的に再構成できる。
【0015】
第1バトラーマトリックスの出力数は、入力数に等しいことが好ましい。この場合には、低雑音増幅器の数は放射要素の数と等しくなるが、従来技術では、図2に示すように、低雑音増幅器の数は放射要素の数の2倍である。さらに、移相器の数も放射要素の数に等しいのに対して、従来技術では、放射要素の出力信号が分波され、ビーム形成ネットワークチャネルのそれぞれに移相処理と減衰処理42、44が適用されるために、移相器と減衰器の数は大幅に大きい。
【0016】
移相器を低雑音増幅器と直列に制御して、ビームの修正と変更を行うことは、本発明による受信アンテナでは、特に簡単である。
【0017】
バトラーマトリックスを用いているために、1つの低雑音増幅器が故障すると、すべての出力で信号が均一に減少する。
【0018】
増幅器が故障したときの出力信号に与える影響を緩和するために、一実施形態では、第1バトラーマトリックスの各出力に連結した低雑音増幅器には、複数の(例えば1対の)増幅器を並列に、例えばカプラによって相互接続して設ける。この場合には、増幅器対の1つだけが故障することによる劣化は、単一の増幅器が各出力に連結されている場合の劣化の半分またはそれより少なくなる。
【0019】
8次のバトラーマトリックスを、その各出力に1対の増幅器を並列に連結して用いると、劣化は−0.56dBに等しいことを示すことができる。16次バトラーマトリックスを、第1バトラーマトリックスの各出力に1対の増幅器を連結させる場合には、劣化は−0.28dBとなる。
【0020】
一実施形態では、連結された複数の2次元マトリックス、例えば異なる面にあるマトリックスを用いることにより、各2次元マトリックスの次数をnとすると、放射要素から受信された各信号はn×n個の低雑音増幅器に分配されるようになる。1例としてn=8とすると、この場合には1つの放射要素が受信するそれぞれの信号は、64の低雑音増幅器に分配される。この例では、ただ1つの増幅器が各出力に連結されているとすると、1つの増幅器の故障がもたらす損失は、わずか−0.14dBである。
【0021】
本発明は、同様の構造を有する送信アンテナにも同等に適合する。この場合には、第1バトラーマトリックスの入力は送信すべき信号を受信し、第2バトラーマトリックスの出力は放射要素に接続される。もちろん、送信アンテナには、低雑音増幅器の代わりに電力増幅器を用いる。
【0022】
送信および受信に適合する一実施形態では、バトラーマトリックスの1つとビーム形成ネットワークが単一のデバイスを構成する。
【0023】
送信パワーをすべてのパワー増幅器に分配するために送信アンテナに2つのバトラーマトリックスを有する構造を使うことは、すでに従来技術において知られているが、これらの従来技術のアンテナでは、ビームは図2を参照して受信アンテナについて説明した方法で修正または再構成される。したがって、送信アンテナについては、本発明は移相器の数と、適用可能な場合は、減衰器の数を低減するとともに、これらの制御を簡単にする。さらに、受信アンテナについては、前述したように、本発明は低雑音増幅器の数を低減する(従来技術の受信アンテナと比較して)。
【0024】
1対のバトラーマトリックスはそれぞれ、数エリアに対応するのが好ましい。すべてのエリアに単一のバトラーマトリックスを提供することも可能ではある。しかし、製造を簡単にするには、複数のバトラーマトリックスを用いるのが好ましい。この場合には、いくつかの放射要素を2つの異なるバトラーマトリックスに割り当てることができる。この場合、バトラーマトリックス対の一方に連結された増幅器が故障すると、対応するバトラーマトリックスに連結されたすべてのビームの信号が劣化する。これに反して、同じバトラーマトリックス対について増幅器が故障しない場合には、第2マトリックス対のサブエリアについては減衰がないが、第1マトリックス対に対応するサブエリアは減衰を受けることになる。
【0025】
この欠点を改善する目的で、発明の一実施形態では、送信および受信パワーを均質化するために、少なくとも1つの増幅器が故障したマトリックスに隣接するバトラーマトリックスに連結されている減衰器を制御する。
【0026】
したがって、本発明は、いくつかのエリアに分割された領域をカバーする通信システム用の静止衛星搭載の受信(または送信)アンテナであって、各エリアのためのビームを、反射器の焦点面の近くに配置された複数の放射要素またはリソースで画定し、エリアの位置を変更したり、指向誤りを修正したりするように適合化されているアンテナに関する。
【0027】
アンテナの特徴は、少なくとも1つの第1バトラーマトリックスを含み、マトリックスの各入力(または出力)が1つの放射要素に接続されており、かつマトリックスの各出力(または入力)が増幅器と移相器を介して逆バトラーマトリックスの対応する入力に接続されていること、逆バトラーマトリックスの出力(または入力)がビーム形成ネットワークに連結し、さらにエリアを転位させたり、指向誤りを修正するために移相器を制御するとともに、第1マトリックスと逆バトラーマトリックスが、各放射要素から受信したエネルギーをすべての増幅器に分配し、1つの増幅器の故障がすべての出力信号に均一に分布するようにすることである。
【0028】
各増幅器および各移相器と直列に、増幅器の利得を等化するための減衰器を備えることが好ましい。
【0029】
一実施形態では、アンテナが、入力(または出力)が放射要素に接続された少なくとも2つのバトラーマトリックスを含むとともに、少なくとも1つの放射要素を、第1バトラーマトリックスの入力の1つと第2バトラーマトリックスの入力の1つに接続する。
【0030】
この場合は、2つのバトラーマトリックスに連結された放射要素は、3dBカプラを介して2つのマトリックスの入力(または出力)に接続されるとともに、対応する逆バトラ−マトリックスの出力(または入力)に1つのアナログカプラを設けるのが好ましい。
【0031】
各増幅器と移相器と直列に1つの減衰器を設けることもできる。この場合は、マトリックスに対応する1つの増幅器が故障すれば、2つのマトリックスの出力信号を均質化するために、減衰器が他のバトラーマトリックスの出力信号を減衰させる。
【0032】
一実施形態では、第1バトラーマトリックスの各出力(または入力)と逆バトラーマトリックスの対応する各入力(または出力)との間に、増幅器を並列に設け、例えば90°カプラで連結される。
【0033】
角度誤差を修正するとともに、すべてのビームを同時に指向しなおすために、移相器は、第1バトラーマトリックスの出力信号の位相前面の勾配を変更するのが好ましい。
【0034】
逆バトラーマトリックスとビーム形成ネットワークは、単一のシステムを構成するのが有利である。
【0035】
減衰器が各増幅器と直列に設けられるときは、増幅器は3dB未満のダイナミックレンジを有することが好ましい。
【0036】
バトラーマトリックスは、例えば8次または16次のマトリックスである。
【0037】
一実施形態では、アンテナは、平行な面内に配置された第1バトラーマトリックスの第1のシリーズと、第1シリーズとは異なる方向、例えばそれに直交する別の平行な面内に配置された第1バトラーマトリックスの第2のシリーズを含むことにより、2つの異なる方向において、したがってアンテナによってカバーされるエリアのすべての方向において、エリアの変位、または指向誤りの修正を可能にする。
【0038】
本発明のその他の特徴と利点は、添付の図面を参照して示した、以下の発明の実施形態から明らかになるであろう。
【0039】
【発明の実施の形態】
図2に示すアンテナのように、図3に示す受信アンテナは、1つの反射器(図3に示さず)と反射器の焦点エリア付近に配置された複数の放射要素22、...、22を備える。
【0040】
図3の例では、受信アンテナは複数のバトラーマトリックス50、...、50、...、50を備える。マトリックスはすべて同一であり、同数の入力と出力を有する。
【0041】
各入力は1つの放射要素から信号を受け取る。したがってバトラーマトリックス50jには、52から52まで8つの入力があり、入力52は放射要素22k+1から信号を受信する。入力52は、放射要素22k+8から信号を受信する。一実施形態では、放射要素22k+1から22k+8は、1つのエリアすなわち1つのビームに割り当てられる。しかし、前述したように、これらの放射要素のいくつかは、隣接するエリアでの他のビームの形成にも関わっている。
【0042】
バトラ−マトリックス50の各出力は、フィルタと低雑音増幅器を介して逆バトラーマトリックス54の対応する入力に接続されている。図3は、マトリックス50の第1出力56k+1とマトリックス50の最後の出力56k+ に対応する低雑音増幅器とフィルタのみを示している。したがって、マトリックス50の出力56k+1は、フィルタ60k+1と低雑音増幅器62k+1とを直列に経由して、マトリックス54の入力58k+1に接続されている。フィルタ60k+1の機能は、送信信号を消去することである。フィルタは、特にマトリックスが導波路技術で実装された場合には、マトリックス50の一部になることもある。
【0043】
バトラーマトリックス54の伝達関数はマトリックス50の伝達関数の逆関数である。マトリックス54は、マトリックス50の出力数に等しい入力数を有し、マトリック50の入力数に等しい出力数を有する。
【0044】
様々な逆バトラーマトリックス54の出力は、ビーム形成ネットワーク66を介してビーム64、...、64の出力に接続されている。
【0045】
バトラーマトリックスは、後に説明するように、3dBカプラからなり、入力に入った信号は、Mを出力の数とすると、1出力ごとに2π/Mだけ位相をずらせて、すべての出力に分配される。マトリック54が、マトリックス50の逆関数を有するので、マトリックス50の特定の入力からの信号は、フィルタリングおよび増幅を行った後、マトリックス54の対応する出力で、見い出すことができる。
【0046】
マトリックス50の各出力56は、同じマトリックスのすべての入力信号を表す信号を配信する。この場合には、低雑音増幅器62の1つまたは複数が故障すると、対応するエリアについてビームの均質性の欠陥をもたらすことはないが、そのかわり放射要素22k+1から22k+8に対応するすべてのエリアの均質な電力低減をもたらす。
【0047】
1つの増幅器が故障すると、マトリックス54のすべての出力における信号が、20log(1−1/M)dBだけ減少することを示すことができる。但し、ここでMはバトラーマトリックスの次数、つまりこの例ではM=8である。しかし、マトリックス54の負荷の損失は無視できるので、アンテナのG/Tパラメータの劣化は、この値の半分、すなわち101og(1−1/M)となる。この理由は、支配的なノイズが低雑音増幅器の出力で拾われたノイズであり、故障した増幅器は、ノイズの原因となることはなくなり、全ノイズパワーがファクタ(1−1/M)だけ低減されるためである。
【0048】
このような条件下では(8次のマトリックスについては)、1つの低雑音増幅器が故障すると、G/T比の劣化は−0.56dB、またはM=6の場合の劣化は−0.28dBとなる。前記の数字は、図5を参照して以下に説明するように、各増幅器が1対の増幅器からなり、「増幅器の故障」という表現が1対の増幅器の1つだけを指すという仮説に対応するものである。
【0049】
1つの低雑音増幅器が故障すると、出力信号間の分離も劣化する。したがって、故障前に入力信号が完全に分離されている、そして出力信号も完全に分離されている場合には、1つの増幅器の故障後は、2つの出力間の分離は20log(M−1)dB、すなわちG=8ならば17dB、G=16ならば23.5dBとなる。
【0050】
前記の値は、従来手法の計算を用いて得た理論値である。しかし、適切な技術、例えばコンパクトな導波路分配器を用いれば、損失および誤りは低く、実際に得られる結果は計算に一致する。
【0051】
一実施形態では、逆マトリックス54とビーム形成ネットワーク66が単一の多層回路を構成する。これが可能なのは、逆マトリックスとネットワーク66は同じ技術を用いたプレーナ多層回路で構築するのが好ましく、したがって同一パッケージにできるからである。低雑音増幅器より下流の回路に起因する損失は、上流で生じた損失よりも重要性は低く、導波路回路のかわりにマイクロストリップまたはトリプレート回路を使用することができる。マイクロストリップおよびトリプレート回路はより小型であるが、導波路回路よりもわずかに大きい損失がある。しかし、これは前述のように重要な問題ではない。
【0052】
図4は、バトラーマトリックスを用いてビームの修正または変更の制御を簡単化した本発明の第3の実施形態を示す。図では、アンテナに対して正常な放射方向70を鎖線で、例えば衛星の不安定性が原因でアンテナから見て誤った発射方向72を破線で示してある。
【0053】
放射方向70におけるエネルギーは実線図74に対応し、放射方向72のエネルギーが破線図76に対応する。したがって、アンテナの方向が正しくないと、焦点面の放射をシフトさせ、所与の方向から最大のエネルギーを取り込むことを狙いとする放射要素は、強く減衰されたエネルギーを受信する。したがって、このシフトによって、ゲインは大幅に減少し、分離が低化する。
【0054】
図2を参照して示したアンテナの再指向、すなわちその方向の修正のために、従来技術の解決策では、各放射要素に移相器42と減衰器44を割り当て、移相器42を個々に制御する。また、減衰器が高いダイナミックレンジを有するのは、いくつかのソースを「切」にしたり「入」にしたりできなくてはならないためである。この制約が理由で、低雑音増幅器の利得は高くなくてはならない。また、1つのエリアに割り当てられた放射要素(ソース)の数は、サブエリアの数よりも大きくなくてはならない。例えば、7つの放射要素が公称ダイアグラムを構成すると、再指向を可能にするのにこれらの放射要素で形成されるセプテット(7個組)のまわりに少なくとも1つのリングが必要となる。したがって、1つのエリアへのアクセスごとに19のソース(7つではなく)を備える必要がある。エリアが正方メッシュを形成し、かつ各エリアについて4つのアクティブソースが備えられると、1つのエリアに対するアクセス数は16となる。
【0055】
図2に示した解決方法と比較して、本発明は指向の修正と、地上のエリアの変位を簡略化する。本発明はバトラーマトリックス50があることを活用する。出発点は、マトリックス50の出力において、位相前面80k+1は、簡単に所望の位相前面82k+1に傾けることが出来るという事実である。これは、各ビームの信号が、対応するマトリックス50のすべての出力にわたって、所与の位相勾配で配分されているためである。各入力に対応する勾配は、ある固定値、すなわち与えられた次数のマトリックスによって決まる定数によって分離される。この場合には、再指向、すなわち要求された修正を成し遂げるには、マトリックス50の各出力対応に1つの移相器を備えて、勾配を伸ばすだけで十分である。
【0056】
図4において、直線セグメント80k+1と82k+1は、放射要素22k+1からの信号に対する出力56k+1から56k+8までの位相の分布を表している。直線セグメント80k+3および82k+3は、放射要素22k+3からの信号に対する出力の位相の分布に対応しており、直線セグメント80k+7および82k+7は放射要素22k+7によって供給される信号に対するすべての出力についての位相と対応している。これらの図では、慣例によって、出力56k+1と、直線セグメント82k+1と出力56k+1につながる直線セグメントDk+1との交点Pk+1との間の距離が、放射要素22k+1からくる信号の出力の位相を表している。同様に、直線セグメント82k+1と対応する直線セグメントDk+2他との交点は、やはり放射要素22k+1に対応する信号についての出力における信号の位相を表す。
【0057】
したがって、出力56k+1について、例えば、放射要素22からくる信号の位相前面を、80から82まで修正するためには、位相修正dk+1、dk+2、...、dk+8を適用する必要がある。しかし、dk+1、dk+2、dk+3などの値は同一であることがわかる。したがって、共通の値dk+1、dk+2などを修正するのには、単一の移相器84k+1で十分である。
【0058】
バトラーマトリックス50によってもたらされる修正は、図中に示した単一の面においてのみ有効である。実際の修正をもたらすためには、バトラーマトリックスは、別の面、例えば図6で示し、以下で説明予定の直角の面にも備えなくてはならない。
【0059】
本実施例では、この種の移相器84は、低雑音増幅器52の下流に設けられる。したがって、図4の移相器84k+1は、減衰器86k+1を介して増幅器62k+1の出力に接続されており、移相器84k+1の出力は逆マトリックス54の対応する入力に接続されている。
【0060】
この実施形態では、可変減衰器86を用いて増幅器62の利得を等化する。これらの減衰器は、後に説明するように、マトリックス50に結合されたマトリックスに接続されている1つまたは複数の低雑音増幅器が故障したときの補償を提供する。
【0061】
この実施例においては、送信周波数が受信周波数と干渉するのを防ぐために、バトラーマトリックス50中に高域通過フィルタを設ける。このフィルタは、例えばカットオフ周波数が受信バンドと送信バンドの間にある導波路である。
【0062】
この実施例では、図3を参照して述べたように、逆バトラーマトリックス54を、ビーム形成ネットワーク66に統合することも可能である。
【0063】
図5に示す変形形態では、低雑音増幅器62は90°カプラを用いて連結して1対にする。より正確には、増幅器62k+1が増幅器62k+2と連結されて、90°カプラ88が増幅器の入力同士を接続し、別の90°カプラが増幅器の出力を相互接続する。したがって、1つの増幅器が故障したときには、8次のバトラーマトリックスを用いると損失は0.28dBであり、これは図5に示す特徴には含まれていないが、バトラーマトリックスが16次マトリックスである場合と同じ損失である。この理由は、バトラーマトリックスの出力と連結する各増幅器2つを1対にして実装することで、増幅器対の1方が故障したとき、他方の増幅器がまだ作動しているために、パワー損失は半分になるためである。言い換えると、これはバトラーマトリックスの次数を倍にするのと同じ効果がある。
【0064】
より一般的には、やはり増幅器の故障の影響を低減する目的において、それぞれの出力を複数の増幅器と並列に連結してもよい。この場合、再組み合わせを伴う分波を容易にするために、各出力に対応する増幅器の数は2の累乗となる。
【0065】
これまで記述した実施例においては、複数のマトリックス50を用いたが、単一のM次のバトラーマトリックスを備えることも可能であり、この場合Mは放射要素の数である。しかし、衛星に搭載するためのスペースの制約から、放射要素の数が多いときには、この種のバトラーマトリックスを単一面に搭載することが出来ない。この場合、図6に示すような、2次元配置のバトラーマトリックスを用いる必要があり、このマトリックスは、第1レイヤが8つのバトラーマトリックス90から90からなり、第2レイヤがマトリックス90と直交配置されたバトラーマトリックス92から92からなる、64次のマトリックスである。
【0066】
この種の2次元マトリックスの実装は複雑であり、またこのマトリックスはアンテナの雑音温度を含む損失を発生する可能性がある。しかし、この種の2次元マトリックスは、2つの直交面において同時に再指向することが可能であり、より多数の低雑音増幅器を相互接続することで故障の影響を軽減することができる。
【0067】
一般的に、2つの異なる面において修正を行うことができるためには、マトリックス90と92が、2つの直交する面にあることは絶対条件ではない。2つの面が十分離れて異なる方向にあるだけで十分である。1つの例では、隣接するソースの中心が正3角形を形成する配列への接続を容易に行うために、方向が60°ずれている。
【0068】
8次および16次のバトラーマトリックスは4次のバトラーマトリックスから構築される。
【0069】
図7は4次のバトラーマトリックスを示し、これには2つの入力カプラ94、96、および2つの出力カプラ102、104、および2つの中間カプラ98、100を有する、6つの3dBカプラが含まれる。ここで示さない変形形態では、中間カプラ98と100の代わりに、クロスオーバが用いられるが、クロスオーバは導波路技術では実装が困難である。
【0070】
3dBカプラ、例えば入力カプラ104は、2つの入力104と104、および2つの出力104と104を有する。1つの入力に適用される信号、例えば入力番号104のパワーは、2つの出力104、104に分配され、この2つの出力信号間にπ/2の位相シフトを生じる。したがって、図7に示すように、入力104の信号Sが、出力104で信号S/√2となり、出力104で信号−jS/√2となる。入力104のシグナルS’は、出力104の信号S’/√2と出力104での信号−jS/√2に対応する。
【0071】
入力104での信号は、4次バトラーマトリックスの4つの出力、すなわちカプラ94と96のそれぞれの出力94、94、および96、96で取得される。信号jS/2は出力94で取得され、信号−S/2は出力94で、信号−jSe−jψ/2は出力96で、信号Se−jψ/2は出力96で取得される。カプラ98と100の間には、移相器105によって一定位相fが導入される。移相器は、中心チャネルと外側チャネルのガイド長の差を補償するように設定される。したがって、マトリックスは、出力における信号の位相を、正規の勾配にする。
【0072】
4次のバトラーマトリックスでは、出力信号の位相は、増分90°で変化する。8次のバトラーマトリックスでは、増分は45°である。
【0073】
8次のバトラーマトリックス120または130(図8)は、2つの4次のマトリックス122および124から構築され、2つの4次マトリックスの出力は、4つの3dBカプラ126、126、126、126によって組み合わせられる。
【0074】
16次のバトラーマトリックス(図8)は、2つの8次マトリックス120と130から構築され、マトリックス120、130の出力は、8つの3dBカプラ132から132によって組み合わせられる。
【0075】
図8に示す16次マトリックスの行のクロスオーバは、図7の4次マトリクスのカプラ98および100と同様の先頭と最後のカプラによって置き換え可能であることを留意されたい。このことは当技術分野で知られている。
【0076】
この実施例では、バトラーマトリックス50は、「小型導波路分配器」の技術を利用する。この場合、フィルタリングをマトリックス中に統合して、低雑音増幅器が帯域外の干渉信号によって非線形化されるのを防ぐことが可能である。これは特に、非常に高い送信パワーのために、近くの受信アンテナに必然的に再入力される送信周波数を排除するためのフィルタリングに関係する。
【0077】
各バトラーマトリックス50が、1つまたは複数のエリアに対応し、その他のマトリックスは、バトラーマトリックス50が連結されたエリアでは動作しないことが好ましい。しかし、それぞれのソースが一般に複数の隣接エリアの形成に寄与するために、この条件を満足することはいつも可能とは限らない。この場合、ソース22(図9)は、2つの隣接マトリックス50、50と連結されなくてはならず、マトリックス50と50のそれぞれの入力140と140に3dBカプラ142を介して接続される。同一のカプラ144が、逆マトリックス50’と50’の対応する出力を組み合わせる。
【0078】
カプラ142、144もまた、マトリックス50、50’またはマトリックス50、50’のどちらかに連結された低雑音増幅器の1つが故障した場合に、2つのマトリックスが共有するソースからくる信号の劣化を制限する。この理由は、そのようなソースに拾い上げられた信号は、2つのマトリックスに等しく分波されるからである。したがって、故障によって影響を受ける部分だけが動作する。
【0079】
これらのカプラは、マトリックス中の故障によって生じる不均衡を低減(半減)するが、故障時に残される不均衡は一般に許容できるものではない。これが、1つのマトリックス、例えばマトリックス番号50に連結された1つの低雑音増幅器が故障した場合に、カプラ142、144の代わりに、またはそれに加えて、図4に示す減衰器86を用いて、もう一方のマトリックス50の出力信号を、マトリックス50と50の出力信号がバランスする量だけ、減衰させることの理由である。この減衰量は、3dBカプラなしの入力または出力に対しては20log(1−1/M)dB、または3dBカプラ144に接続された出力に対しては10log(1−1/M)dBでなくてはならない。
【0080】
減衰処理は、故障が検出された後に自動的に適用される。低雑音増幅器の故障は、例えば低雑音増幅器の下流のダイオード検出器を用いて、その増幅器の電源電流をモニタリングすることによって検出される。
【0081】
この実施例では、減衰器86(図4)のダイナミックレンジは狭く、3dB未満であることを留意されたい。これは、減衰器のダイナミックレンジは原理的に、アンテナを実装した時に、減衰器が様々な低雑音増幅器の利得を等化する機能によって決まるためである。この等化のための、最大のダイナミックレンジは2.5dBである。さらに、隣接するマトリックスの増幅器が故障した時に、マトリックスの出力を再均衡させるのに必要な補償は0.28dBである。
【0082】
これまで受信アンテナにだけついて述べたが、構造が似ているが構成が反対の送信アンテナについても、低雑音増幅器の代わりにパワー増幅器を用いることによって、本発明があてはまることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】いくつかのエリアに分割されており、静止衛星に搭載されたアンテナでカバーされるテリトリを示す図である。
【図2】従来技術の受信アンテナを示す図である。
【図3】本発明による受信アンテナの部分を示す構成図である。
【図4】本発明による受信アンテナの部分を示す構成図である。
【図5】本発明によるアンテナの一部の変形形態を示す構成図である。
【図6】64次のバトラーマトリックスを示す図である。
【図7】4次のバトラーマトリックスを示す構成図である。
【図8】16次のバトラーマトリックスを示す構成図である。
【図9】本発明の別の特徴を示す受信アンテナの構成図である。
【符号の説明】
12、12、12 エリア
14、14、14 サブエリア
22、22、22k+N 放射要素
24、24、24フィルタ
26、26、26 低雑音増幅器
30 分波器
40 ビーム形成ネットワーク
44 減衰器
50、50j、50 バトラーマトリックス
54 逆バトラーマトリックス
60k+1 フィルタ
62k+1 増幅器
84k+1 移相器
86k+1 減衰器
88、90 90°カプラ
142 3dBカプラ
f1、f2、f3、f4 周波数サブバンド

Claims (13)

  1. いくつかのエリアに分割されたテリトリをカバーするための通信システムの静止衛星用受信(または送信)アンテナであって、各エリア向けのビームが、反射器の焦点面の近くに配置された複数の放射要素またはソースによって画定されるとともに、エリアの位置を変更するための手段、またはアンテナの指向誤りを修正するための手段を備え、少なくとも1つの第1バトラーマトリックス(50)を含み、前記マトリックスの各入力(または出力)が放射要素(22k+1、...、22k+8)に接続され、各出力(または入力)が増幅器(62k+1)および移相器(84k+1)を介して逆バトラーマトリックス(54 の対応する入力に接続されるとともに、逆バトラーマトリックスの出力(または入力)がビーム形成ネットワークに連結されており、移相器がエリアを変位させるか、または指向誤りを修正するとともに、第1マトリックス又は逆バトラーマトリックスのいずれか一方が、各放射要素が受けたエネルギーを、増幅器群に分配して、1つの増幅器の故障の効果がすべての出力信号に均一に配分されるようにしており、
    なくとも2つのバトラーマトリックス(M、M)を含み、前記少なくとも2つのバトラーマトリックス(M 、M )は、複数の放射要素に接続された入力(または出力)を有し、少なくとも1つの放射要素(22)が、第1マトリックス(M)の入力および第2マトリックス(M)の入力に接続されている、アンテナ。
  2. 各バトラーマトリックスが、同数の入力と出力とを有することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
  3. 増幅器の利得を等化するための減衰器(86k+1)が、各増幅器および各移相器と直列に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ。
  4. 2つのバトラーマトリックスに連結された放射要素が、これら2つのマトリックスの入力(または出力)に、3dBカプラ(14)で接続されており、逆バトラーマトリックスの対応する出力(または入力)に同様のカプラ(144)が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ。
  5. マトリックスに連結された増幅器が故障した場合に、2つのマトリックスの出力信号を均質化するために、各増幅器と移相器が、他方のバトラーマトリックスの出力信号を減衰させる減衰器(86k+1)を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ。
  6. 例えば90°カプラ(88、90)によって連結された、並列の増幅器(62k+1、62’k+1)が、第1バトラーマトリックスの各出力(入力)と逆バトラーマトリックスの対応する各入力(出力)の間に設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ。
  7. 移相器が、角度偏差を修正し、同時にすべてのビームを再指向するために、第1バトラ−マトリックスの位相前面の勾配を変更することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ。
  8. 第1バトラーマトリックスが、送信周波数バンドを消去するためのフィルタシステムを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の受信用のアンテナ。
  9. 逆バトラーマトリックスと前記ビーム形成ネットワークが、単一のシステムを形成することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナ。
  10. 各増幅器と直列の減衰器が、3dB未満のダイナミックレンジを有することを特徴とする請求項3または5に記載のアンテナ。
  11. バトラーマトリックスが、8次マトリックスまたは16次マトリックスであることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のアンテナ。
  12. 前記第1バトラーマトリックスは、平行な面内に配置された第1の組のバトラーマトリックスと、前記第1の組のバトラーマトリックスに接続され、前記第1の組のバトラーマトリックスの配置された前記面の方向とは異なる方向の平行な面内に配置された第2の組のバトラーマトリックスとを含み、前記2つの異なる方向において、したがってアンテナによってカバーされるエリアのすべての方向においてエリアの変位または指向誤りの修正を可能にすることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のアンテナ。
  13. 第1の組のバトラーマトリックスの配置された前記面の方向と前記第2の組のバトラーマトリックスの配置された前記面の方向が直交していることを特徴とする請求項12に記載のアンテナ。
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