JP5095932B2 - 樹脂被覆アルミニウム板及びその製造方法 - Google Patents

樹脂被覆アルミニウム板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材の少なくとも一方の表面に、樹脂塗料を塗装した又は樹脂フィルムをラミネートした樹脂被覆アルミニウム板に関し、特にプレス成形などの成形加工後において樹脂被覆膜の密着性に優れた缶蓋用アルミニウム合金板に関する。
アルミニウム板又はアルミニウム合金板は、軽量で適度な機械的特性を有し、かつ美感、成形加工性、耐食性等に優れた特徴を有しているため、各種容器類、構造材、機械部品等に広く使用されている。特に、コイル状のアルミニウム合金板をプレス機に連続的に供給する方式の成形加工は生産性に優れるため、上記用途に多く採用されている。
上記用途のアルミニウム板又はアルミニウム合金板は、耐食性や耐溶出性の更なる向上、外観の向上、ならびに、キズ付き防止性等のため、その表面に樹脂塗料の塗装や樹脂フィルムのラミネート加工が施されることも多い。この場合、アルミニウム板又はアルミニウム合金板には何らかの下地処理(例えば、リン酸クロメート、クロム酸クロメート、リン酸ジルコニウム等)が施されるのが一般的である。アルミニウム缶蓋の場合、材料のアルミニウム板又はアルミニウム合金板に下地処理及び樹脂被覆を施してから成型加工する、いわゆるプレコート式が多く採用されている。
プレコート式缶蓋用アルミニウム板又はアルミニウム合金板に対しては、成型加工において樹脂剥離が生じないための樹脂密着性や、腐食雰囲気に曝されても侵食されない耐食性が要求される。そのため、下地処理の方法に工夫を施すことによって、これらを向上させる手法が多く提案されている。
例えば特許文献1には、アルミニウム素材上に樹脂皮膜が設けられた樹脂被覆アルミニウム素材において、アルミニウム素材1上にアルミニウムとの密着性が良好な化成皮膜P2が設けられ、化成皮膜P2上に、化成皮膜P2と樹脂皮膜4の両方に良好に密着する化成皮膜Q3が設けられ、その上に樹脂皮膜4が設けられた、加工性に優れた樹脂被覆アルミニウム材が開示されている。
また特許文献2には、芯材層と皮材層とを有し、前記芯材層及び皮材層の外面の少なくとも一方にフィルムが積層された缶用表面処理アルミニウム合金複合板において、前記皮材層が、Al純度99.7重量%以上の純アルミニウムからなり、前記皮材層及び芯材層の外面に、平坦部が90%未満、表面積が1cm角当たり2cm以上、かつ平坦部からの深さが0.05〜0.5μmの凹部を有するように粗面化されたリン酸クロメート処理皮膜が設けられ、前記フィルムがリン酸クロメート処理皮膜上に張り合わされた缶用表面処理アルミニウム合金複合板が開示されている。
更に特許文献3には、アルミニウム合金板の両面に、皮膜量がクロムとして3〜50mg/mのリン酸クロメート処理を施すか、或いは、皮膜量がジルコニウムとして3〜30mg/mのジルコニウム系処理を施すかして表面処理皮膜を形成し、その上にシランカップリング剤を、水:エタノール=1:4〜4:1の混合溶媒に、シランカップリング剤の濃度が前記混合溶媒に対して0.5〜20%になるように希釈した処理液に浸漬して皮膜量がシリコンとして0.3〜30mg/mのシラン処理してなる皮膜を形成し、さらにその上に、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート単位を主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレート単位を主体としたポリエステル、又はこれらをブレンドした複合樹脂のいずれかからなる樹脂を加熱溶融して直接アルミニウム合金板に樹脂フィルムとして押出して、厚み5〜300μmの樹脂層が積層被覆されてなる缶蓋用樹脂被覆アルミニウム合金板が開示されている。
特開2001−295066号公報 特許第3229511号公報 特許第3386143号公報
しかし、このような従来技術には、以下のような問題点がある。すなわち、缶に充填する内容物によっては、耐食性やバリアー性を重視して樹脂被覆膜を厚膜化することがあり、その場合には、加工における樹脂被覆膜の内部応力が蓄積し易くなる。この内部応力が樹脂密着力を上回ると、樹脂被覆膜の剥離を生じることがある。特に、加工後にレトルト処理が加わる場合には、この傾向が顕著であり、上記特許文献1〜3に代表される密着性向上技術を用いても、樹脂被覆膜の剥離が必ずしも解決しきれていなかった。加えて、特許文献1及び3は、異なる化成処理を二度実施する必要があり、特許文献2は材料のクラッド工程が必須である等、工程追加に伴うコスト増が避けられない。以上の問題点に鑑み、より廉価で簡易な樹脂密着性向上手段が要望されていた。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、化成処理の前処理工程において化成皮膜中に所定量を超えるアルミニウム水和酸化物が形成されると、成型加工後の樹脂密着性が著しく低下することを見出すとともに、このようなアルミニウム水和酸化物を前記所定量以下に抑制する前処理方法を見出して本発明を完成するに至った。
の本発明は請求項1に示す通り、アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材の少なくとも一方の表面をアルカリ脱脂処理する工程と、アルカリ脱脂処理表面を洗浄処理する工程と、洗浄処理表面に化成処理を施す工程と、化成処理表面に樹脂被覆膜を形成する工程と、を含む缶蓋用樹脂被覆アルミニウム板の製造方法であって、前記洗浄処理工程が、前記アルカリ脱脂処理表面に30〜80℃の洗浄液をスプレー噴射することを含み、スプレー噴射量が毎秒当たり3〜50リットル/m であり、かつ、スプレー噴射圧が1.0〜3.5kgf/cm であり、洗浄開始後3秒以内にアルミニウム基材の表面近傍のpHを8以下に低下させることを特徴とする缶蓋用樹脂被覆アルミニウム板の製造方法である。
本発明は請求項2では請求項1において、前記アルミニウム合金板からなる基材を5000系合金とした。また、本発明は請求項3では請求項1又は2において、前記洗浄液が、アルミニウムイオン(Al 3+ )との安定度定数K がlogK ≧15である錯体形成物質を0.05〜0.5mol/リットル含有するものとした。
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板に用いる化成皮膜の特性が従来技術と比較して顕著に向上するため、アルミニウム缶蓋の成型加工後における高い樹脂密着性を確保することができる。しかも、従来の化成処理工程がそのまま利用できるため、製造工程が簡易で、かつ、製造コストが廉価な樹脂被覆アルミニウム板を提供することが可能であり、このような製造方法は工業的にも極めて有用である。
第1の本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板は、第2の本発明に係る製造方法、すなわち、アルミニウム基材の表面にアルカリ脱脂処理を施し、次いで、アルカリ脱脂処理表面を所定条件でスプレー噴射する洗浄処理を施し、更に、洗浄処理表面に化成処理を施して化成皮膜を形成し、最後に、化成皮膜上に樹脂被覆膜を形成することによって得られる。以下、本発明を詳細に説明する。
A.アルミニウム基材
本発明で用いる樹脂被覆アルミニウム板の基材としては、純アルミニウム材及びアルミニウム合金材が用いられ、用途や要求特性に応じて適宜選択することができる。アルミニウム合金材としては、1000系、3000系、5000系等が用いられるが、缶蓋用としては、強度と成型加工性に優れた5000系合金を使用することが好ましい。
なお、本発明では、「アルミニウム」の用語は、純アルミニウム及びアルミニウム合金の双方を含む意とし、「アルミニウム基材」の用語は、純アルミニウム基材及びアルミニウム合金基材の双方を含む意とし、「アルミニウム板」の用語は、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板の双方を含む意とする。
また、本発明では、基材とてアルミニウム材を用いるが、この他の基材として、アルミニウム以外の金属や合金、セラミックス、プラスチック等を用いることもできる。
B.化成皮膜中のアルミニウム水和酸化物含有量と密着性
従来の化成処理によって得られる化成皮膜、特にリン酸クロメート等に代表される無機系反応型の化成皮膜は、加工を伴わない状態における樹脂密着性に優れる反面、硬くて脆い性質のため、加工密着性に問題を残していた。具体的には、張り出し成型やリベット加工のような強い加工を受けると、材料の変形に化成皮膜が追従しきれず、化成皮膜にクラックが生じ、そのクラックを起点として樹脂塗膜又は樹脂フィルムからなる樹脂被覆膜が剥離する問題があった。特に、成型後にレトルト処理を行うと、化成皮膜のクラックに水分が浸入し、樹脂被覆膜が化成皮膜から益々剥離し易くなる問題があった。
本発明者らは、TEM(透過型電子顕微鏡)等により、強加工後における化成皮膜の断面観察を行ったところ、従来技術により形成された化成皮膜は、水平方向すなわち板表面と平行にクラックが生じることを見出した。このため、樹脂被覆膜に垂直方向の力が加わると、クラック部分から剥離しやすいことが判明した。
このようなクラックの発生要因について種々検討したところ、樹脂被覆アルミニウム板において、樹脂被覆膜を形成した後における化成皮膜に含有されるアルミニウム水和酸化物が100mg/m以下である場合に、クラックが発生し難いことを見出した。化成皮膜に含有されるアルミニウム水和酸化物が100mg/m以下であれば、樹脂被覆膜に垂直方向の強加工力が加わっても、樹脂被覆膜は引き続きアルミニウム基材と接着し続けるので、強加工後も高い密着性を保つことができるのである。
これは、樹脂被覆アルミニウム板の化成皮膜におけるアルミニウム水和酸化物の含有量が100mg/m以下の場合は、化成皮膜分子同士のネットワーク構造がアルミニウム水和酸化物を介在せずに規則正しく形成され、強固な化成皮膜が生成するためと考えられる。一方、アルミニウム水和酸化物の含有量が100mg/mを超えると、化成皮膜分子のネットワーク構造中にアルミニウム水和酸化物分子が介在して両者が入り混じった、硬くてもろいネットワーク構造が形成され、結果として強加工時に化成皮膜の平行クラックが生じ、密着性が低下するものと考えられる。
ところで、上記で問題となるアルミニウム水和酸化物の殆どが、化成処理に先立つ前処理の段階で形成される。一般に、化成処理の前処理として、アルカリ脱脂剤を用いた脱脂・エッチング処理が施され、アルミウム板表面の圧延油、磨耗粉及び酸化皮膜等が除去される。そして、このアルカリ脱脂処理終了後の洗浄処理工程において大部分のアルミニウム水和酸化物が生成され、このようなアルミニウム水和酸化物は化成処理中に化成皮膜に取り込まれることが判明した。したがって、洗浄処理工程においてアルミニウム水和酸化物の形成を抑制することにより、化成皮膜に含有されるアルミニウム水和酸化物を低減させることができる。
C.アルカリ脱脂処理工程
アルカリ脱脂処理は,従来技術に基づいた脱脂液及び脱脂方法をそのまま適用することができる。アルカリ脱脂液としては、アルカリ性脱脂剤を例えば0.5〜2.0重量%の濃度で水等の溶媒に溶解又は分散した溶液であって、エッチング性を有するpHが9〜13程度のものが用いられる。アルカリ性脱脂剤は、アルカリビルダー、界面活性剤及びキレート化剤等を含む。このようなアルカリ脱脂剤としては、例えば、日本ペイント社製の商品名「SC−EC370」を用いることができる。
アルカリビルダーとしては、炭酸Na、炭酸K等の炭酸アルカリ金属塩;苛性Na等のアルカリ金属水酸化物;リン酸Naやリン酸水素Na等のアルカリ金属リン酸塩;ケイ酸Na等のアルカリ金属ケイ酸塩等;或いは、これらの混合物;が用いられる。
界面活性剤としては、HLB(親水性−親油性の比率)=8〜11程度のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のポリオキシエチレン系界面活性剤や高級アルコール系界面活性剤等の界面活性剤が用いられる。
キレート化剤としては、EDTA・2Na塩やナフチルアミン等が用いられる。
アルカリ脱脂処理によるアルミニウム基材表面のエッチング量は、60〜300mg/m程度が好ましい。圧延により生じるアルミニウム基材上の酸化皮膜の量は、数十〜数百mg/mの範囲なので、エッチング量が60mg/m未満では酸化皮膜除去が不十分となり、エッチング量が300mg/mを超えたのでは酸化皮膜除去の効果が向上しないだけでなく、スラッジ生成も加速されるので好ましくない。
アルカリ脱脂処理は、例えば、50〜80℃のアルカリ脱脂液を1〜20秒間にわたってアルミニウム基材にスプレー噴霧するか、或いは、50〜90℃のアルカリ脱脂液に10〜60秒間にわたってアルミニウム基材を浸漬する方法が採用される。
D.洗浄工程
上記アルカリ脱脂処理工程に続いて洗浄処理が行われる。上述のようにアルカリ脱脂剤のpHは9以上であり、アルカリ脱脂終了直後のアルミニウム基材の表面近傍におけるpHも当然9以上である。この時点においては、アルミニウムは基材表面に残存する脱脂液中に溶解しているだけである。ところが、洗浄処理工程が開始されて、アルミニウム基材表面に洗浄水が接触すると、アルミニウム基材の表面近傍におけるpHは8〜9の弱アルカリ領域となる。このような弱アルカリ領域のpHでのアルミニウムの溶解度は極めて低い。そこで、洗浄処理が開始されてアルミニウム基材の表面近傍におけるpHが8〜9の弱アルカリに低下すると、pH9以上の状態において溶解していたアルミニウムがアルミニウム水和酸化物として析出する。このようにして析出したアルミニウム水和酸化物は、アルミニウム基材の表面に新たな水和酸化物層を形成してしまう。この水和酸化物層が、化成処理工程において化成皮膜に取り込まれ、ひいては樹脂被覆アルミニウム板の加工後の樹脂密着性を低下させることになる。従って、アルミニウム水和酸化物層の形成を防止するには、水洗処理工程において、アルミニウム基材の表面近傍におけるpHを8以下に低下させる必要がある。
洗浄処理工程において、アルカリ脱脂処理工程終了後のアルミニウム基材の表面近傍におけるpHを8以下に低下させるためには、所定温度の大量の洗浄液を一気にアルミニウム基材上に供給する方法が採用される。具体的には、洗浄液をアルミニウム基材表面にスプレー噴射する方法が好適に用いられる。
スプレー噴射の条件は、毎秒当たり3〜50リットル/mのスプレー噴射量で、かつ、スプレー噴射圧が1.0〜3.5kgf/cmが好ましい。洗浄液の噴射量が毎秒当たり3リットル/m未満の場合や、スプレー噴射圧が1.0kgf/cm未満の場合には、アルミニウム基材表面の近傍におけるpHを迅速に8以下に低下できず、その結果、新たなアルミニウム水和酸化物の形成が促進されるので好ましくない。一方、洗浄液の噴射量が50リットル/mを超えてもpH低下の効果は飽和してしまい、大量の水を消費するだけ生産コストが増加するので好ましくない。また、スプレー噴射圧が3.5kgf/cmを超える場合には、pH低下の効果が飽和するだけでなく高圧に耐えるための配管等の強化も必要となり、不経済となるので好ましくない。
なお、洗浄処理方法としてはディップ(浸漬)方式も挙げられるが、アルミニウム基材上のpH低下速度が緩慢となることから、スプレー噴射方式のような迅速なpH低下効果が得られない。しかしながら、攪拌装置を備えた浸漬浴の使用、或いは、流水式の浸漬浴の使用によって、アルミニウム基材のアルカリ脱脂処理表面でのアルカリ成分の洗浄液への溶解、拡散を促進することにより、スプレー噴射方式のような迅速なpH低下効果を得ることが可能である。
洗浄液の温度については、30〜80℃の範囲で選択される。脱脂・エッチング工程を経た新鮮なアルミニウム基材表面に80℃を超える洗浄液が接触すると、アルミニウムと水が反応して新たに擬ベーマイト状アルミニウム水和酸化物が生成してしまい不適当だからである。また、洗浄液の温度が30℃未満では、十分な脱脂速度又はエッチング速度が得られない。30℃未満では脱脂剤の溶解速度が遅く、pH変化が緩慢になる上に、アルミニウム基材の温度が低下して、脱脂剤に溶存するアルミニウムの析出が生じてしまうからである。
洗浄液としては、従来一般的に工業用水として用いられている水質を有していればよい。すなわち、蒸留水や純水(脱イオン水)を用いるのが好ましいが,軟水や電気伝導度が20mS/m以下の工業用水を用いることもできる。
Al3+との安定度定数logKが15以上である錯体形成物質を0.05〜0.5mol/リットル含有する洗浄液を用いることにより、上記蒸留水等を用いた場合よりアルミニウム水和酸化物の形成を大きく抑制できる。すなわち、このような洗浄液は、洗浄処理工程において、アルミニウム基材表面のAl3+イオンを錯体としてトラップすることが可能であり、これにより、アルミニウム水和酸化物の析出・沈殿を防止する効果を発揮するからである。このようなAl3+との錯体形成物としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、CyDTA(シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸)等のキレート試薬、クエン酸等の有機配位物質を挙げることができる。これらの物質の添加濃度は0.05〜0.5mol/リットルであることが望ましい。0.05mol/リットル未満では、Al3+との錯体を形成してアルミニウム水和酸化物の析出・沈殿を十分に防止する効果が得られないからである。一方、0.5mol/リットルを超えても、アルミニウム水和酸化物の析出・沈殿の効果が飽和するため、多量に使用するだけコスト的に不利となるからである。
洗浄処理時間は製造ラインの構成によって適宜設定されるが、2秒以上であることが望ましい。洗浄処理時間が2秒未満の場合には、脱脂剤に含まれる界面活性剤が除去されきれずに残存し、化成処理工程で用いる化成処理液を汚染するおそれがある。界面活性剤をより確実に除去するためには、洗浄時間が4秒以上であることが好ましい。
一方、洗浄処理時間の上限は特に限定されないが、製造ラインの構成及び製造ラインの操作速度を勘案し、30秒以下とするのが好ましい。洗浄処理時間が30秒を超えると、非常に長い洗浄処理ラインが必要となったり、洗浄処理ラインの操作速度を極端に低下する必要があり、結果的に生産性を阻害することになるからである。
ところで、アルカリ脱脂処理工程の終了後においてアルミニウム基材の表面近傍のpHが8を超えている時間が長時間となる程、アルミニウム基材表面でのアルミニウム水和酸化物層の形成が促進される。アルミニウム水和酸化物層の形成が促進されると、多量のアルミニウム水和酸化物が蓄積され、これを除去するのには多量の洗浄液と長時間を要することになる。したがって、アルカリ脱脂処理工程が終了したら、できるだけ急速にアルミニウム基材の表面近傍のpHを8以下に低下させるのが望ましい。具体的には、アルカリ脱脂処理工程の終了後3秒以内に、アルミニウム基材の表面近傍におけるpHを8以下に急速に低下させることにより、アルミニウム水和酸化物層の形成促進を抑制できる。アルカリ脱脂処理工程の終了と同時に洗浄処理を開始して、開始後3秒以内にpHを8以下に低下させるようにするのが好ましい。
E.化成処理工程
洗浄処理工程に続いて化成処理が施される。化成処理としては、従来の化成処理方法、すなわち、リン酸クロメート処理、リン酸ジルコニウム処理、リン酸チタニウム処理等の反応型化成処理を採用することができる。上述の洗浄処理工程において、アルミニウム水和酸化物の形成を抑制できるので、化成皮膜に取り込まれるアルミニウム水和酸化物を100mg/m以下とすることができる。その結果、成型加工後の樹脂被覆膜の密着性に優れた樹脂被覆アルミニウム板を得ることが可能である。
F.樹脂被覆膜の形成工程
上述の化成処理工程に続いて樹脂被覆膜が形成される。樹脂被覆膜の形成工程では、樹脂塗料の塗装、焼付による樹脂塗膜の形成、或いは、ラミネートによる樹脂フィルムの形成が行われる。
樹脂塗料としては、エポキシ樹脂、エポキシ/アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ/尿素樹脂、エポキシ/フェノール樹脂等の一般的な樹脂を、例えば、水等の水性溶媒又はシクロヘキサノン、ブチルセロソルブ等の有機溶媒に溶解又は分散した樹脂塗料が用いられる。また、塗装した樹脂塗料の焼付け条件は、150〜300℃で10〜60秒である。
ラミネートに用いる樹脂フィルムには、例えばポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系フィルム;ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム;ナイロンのようなポリアミド系フィルム等が用いられる。また、樹脂フィルムのラミネート条件は、150〜300℃である。
このようにして製造される樹脂被覆アルミニウム板は、プレス成形などの成形加工後においても樹脂被覆膜の密着性に優れている。従って、強加工により成型されるアルミニウム缶蓋が、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板によって好適に製造される。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
実施例1
アルミニウム基材として、板厚0.25mmの5182−H38合金板を使用した。まず、アルカリ脱脂剤「SC−EC370(日本ペイント)」を溶媒である水に溶解したアルカリ脱脂液を調製した。アルカリ脱脂液中のアルカリ脱脂剤の濃度は2.0重量%とした。スプレー噴霧圧1.5kgf/cm及びスプレー噴霧時間5秒で、70℃の温度のアルカリ脱脂液をアルミニウム基材の両面にスプレー噴霧した。アルミニウム基材のエッチング量は約150mg/mであった。
アルカリ脱脂処理の終了と同時に、毎秒当たりのスプレー噴射量3.3リットル/m、スプレー噴射圧1.1kgf/cm及びスプレー噴射時間5秒で、50℃の温度の脱イオン水(洗浄液)をアルミニウム基材両面のアルカリ脱脂処理表面にスプレー噴射して、アルカリ脱脂処理したアルミニウム基材を洗浄処理した。
次いで、洗浄処理したアルミニウム基材両面に、従来の化成処理方法に基づきリン酸クロメート処理(クロム付着量20mg/m)を施し、更に、化成処理したアルミニウム基材両面に市販の水性アクリル変性エポキシ塗料を塗装(塗膜量12g/m、焼付温度250℃、焼付時間30秒)し、樹脂被覆膜としての水性アクリル変性エポキシ樹脂塗膜を形成して樹脂被覆アルミニウム板を作製した。
一方、上述のような樹脂被覆アルミニウム板の作製とは別に、同じ素材及び寸法のアルミニウム基材を用いてアルカリ脱脂処理工程の終了から3秒後におけるアルカリ脱脂処理表面のpHを測定した。まず、アルミニウム基材に上記樹脂被覆アルミニウム板の作製におけるのと同じ条件でアルカリ脱脂処理を施した。次いで、スプレー噴射時間を3秒とした以外は、上記樹脂被覆アルミニウム板の作製におけるのと同じ条件でアルミニウム基材を洗浄処理した。次に、洗浄処理表面のpHをpH試験紙により測定した。
実施例2〜7
実施例2では、洗浄液として32℃の温度の脱イオン水を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。実施例3では、洗浄液として、77℃の温度の脱イオン水を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。実施例4では、洗浄液として51℃の温度の脱イオン水を用い、化成処理としてリン酸ジルコニウム処理(ジルコニウム付着量10mg/m)を行った以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。実施例5では、樹脂被覆膜として市販のポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネート加工(フィルム厚さ10μm、ラミネート温度200℃)したものを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。実施例6では、洗浄液として、50℃の温度のEDTA水溶液(0.07mol/リットル)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。実施例7では、洗浄液として、50℃の温度のクエン酸水溶液(0.07mol/リットル)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。
比較例1〜4
比較例1では、水洗処理におけるスプレー噴射量を毎秒当たりの2.1リットル/mとした以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。比較例2では、水洗処理におけるスプレー噴射圧を0.9kgf/cmとした以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。比較例3では、洗浄液として26℃の温度の脱イオン水を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。比較例4では、洗浄液として83℃の温度の脱イオン水を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。
比較例5
比較例5では、洗浄処理として、50℃の温度の脱イオン水を満たした容量60リットルの水槽に、アルカリ脱脂処理したアルミニウム基材を5秒間浸漬した以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製した。また、洗浄処理表面のpH測定では、50℃の温度の脱イオン水を満たした容量60リットルの水槽に、アルカリ脱脂処理したアルミニウム基材を3秒間浸漬後に取り出し、洗浄処理表面のpHをpH試験紙で測定した。
以上の実施例1〜7及び比較例1〜5で作製した樹脂被覆アルミニウム板の作製条件を表1に示す。
Figure 0005095932
実施例1〜7及び比較例1〜5の樹脂被覆アルミニウム板の作製過程において、水洗処理工程後におけるアルミニウム基材の表面に形成されたアルミニウム水和酸化物量、化成処理工程後における化成皮膜に含有されるアルミニウム水和酸化物量、ならびに、樹脂被覆膜形成工程後において化成皮膜に含有されるアルミニウム水和酸化物量を、それぞれ表2に示す。更に、洗浄処理表面のpHも表2に示す。
Figure 0005095932
アルミニウム水和酸化物量は、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)による簡易的な定量操作によって測定した。すなわち、偏光反射法(p波)FT−IRによるAl−OH振動(600〜800cm1付近に現れるピーク;ピーク位置は化成皮膜の種類によって異なる)の吸収率にてアルミニウム水和酸化物量の検量線を作成することにより、簡便、迅速かつ非破壊的に、アルミニウム水和酸化物の量を決定した。
なお、樹脂被覆膜形成工程後に化成皮膜に含有されるアルミニウム水和酸化物量については、作製した樹脂被覆アルミニウム板を常温(25℃)の濃硫酸に2分間浸漬し、その後、流水中で洗浄することにより、樹脂被覆アルミニウム板から樹脂被覆膜を脱膜して、化成皮膜に含有されるアルミニウム水和酸化物量を測定した。
実施例1〜7の洗浄処理工程の条件は、請求項2に示す洗浄処理要件を満たしているため、化成皮膜の種類及び樹脂被覆膜の種類によらず、水洗処理工程後、化成処理工程後及び樹脂被覆膜形成工程後におけるアルミニウム水和酸化物量の殆どが100mg/m以下であった(実施例3の水洗処理工程後のみが100mg/mを超えていた)。特に、洗浄液にEDTA水溶液を用いた場合(実施例6)と、クエン酸水溶液を用いた場合(実施例7)では、アルミニウム水和酸化物形成の抑制効果が極めて大きい。
水洗処理工程後、化成処理工程後、樹脂被覆膜形成工程後の順にアルミニウム水和酸化物量が減少しているが、これは、化成処理工程や樹脂被覆膜形成工程において、アルミニウム水和酸化物の一部が分解又は還元されるためと考えられる。なお、請求項1に規定するアルミニウム水和酸化物量は、樹脂被覆膜形成工程後のものである。
これに対して、比較例1では水洗処理工程におけるスプレー量が少量過ぎたため、比較例2では水洗処理工程におけるスプレー噴射圧が低圧過ぎたため、水洗処理工程後、化成処理工程後及び樹脂被覆膜形成工程後におけるアルミニウム水和酸化物量が、いずれも100mg/mを超えていた。比較例3では洗浄液の温度が低温過ぎたため、比較例4では洗浄液の温度が高温過ぎて擬ベーマイトが生成したため、これまた上記アルミニウム水和酸化物量がいずれも100mg/mを超えていた。比較例5では、ディップ方式の水洗処理を行ったためアルミニウム基材の表面近傍におけるpH減少が緩慢となり、多量のアルミニウム水和酸化物が形成していた。
また、実施例1〜7ではいずれも、アルカリ脱脂処理工程の終了から3秒後におけるアルカリ脱脂処理表面のpHが8以下であった。これらの実施例では、洗浄処理工程において、所定温度の大量の洗浄液を一気にアルミニウム基材表面にスプレー噴射する方法を採用し、アルカリ脱脂処理表面のpHを急速に低下させることができたためである。
これに対して比較例1〜3ではスプレー噴射条件が適切ではなく、比較例5ではディップ方式の水洗処理を行ったため、アルカリ脱脂処理工程の終了から3秒後におけるアルカリ脱脂処理表面のpHが8を超えてしまっていた。
なお、比較例4では、アルカリ脱脂処理工程の終了から3秒後におけるアルカリ脱脂処理表面のpHが8以下であったが、これは高温の洗浄液を用いたために基材表面に残存するアルカリ成分が洗浄液中に溶解したためと考えられる。
次に、実施例1〜7及び比較例1〜5で作製した樹脂被覆アルミニウム板における樹脂被覆膜の密着性に関する評価として、曲げ加工性及び蓋成型性を測定した。結果を表3に示す。
Figure 0005095932
樹脂被覆アルミニウム板の曲げ加工性及び蓋成型性は、以下のようにして評価した。
曲げ加工性
上記のようにして作製した樹脂被覆アルミニウム板を、圧延目に対し横3cm×縦10cmの短冊状に切り出し、中央に180度曲げ(2T曲げ)を施した。次に、125℃で30分間レトルト処理を行った後、2T曲げ部の通電電流(エナメル・レーター・バリュー、ERV)を測定した。表3中の判定記号の意味は下記の通りで、◎及び○は合格であり、△×及び×は不合格である。なお、各例で試験した試料の個数は10個であった。
◎:通電電流(ERV)が0.5mA未満であることを示す。
○:通電電流(ERV)が0.5mA以上で、かつ、1.0mA未満であることを示す。
△×:通電電流(ERV)が1.0mA以上で、かつ、2.7mA未満であることを示す。
×:通電電流(ERV)が2.7mA以上であることを示す。
蓋成型性
上記のようにして作製した樹脂被覆アルミニウム板をシェルプレスにより、外径2×6/10インチ径(206径)のフルフォームシェルに成形し、次いで、コンバージョンプレスによる3段階張り出し加工によって、シェル中央に外径3.0mmのリベット部を形成した。続いて、125℃で30分間レトルト処理を行った後、アセトン−硫酸銅溶液に5分間浸漬し、塗膜剥離に基づくブラックスポット(直径0.5mm以上をカウント対象とした)の数を計数した。なお、各例で試験した試料の個数は3個であった。
表3中の判定記号の意味は下記の通りで、◎及び○は合格であり、△×及び×は不合格である。
◎:ブラックスポット数が0〜2個であることを示す。
○:ブラックスポット数が3〜5個であることを示す。
△×:ブラックスポット数が6〜10個であることを示す。
×:ブラックスポット数が10個を超えることを示す。
実施例1〜7では、曲げ加工性及び蓋成型性の判定はいずれも合格であった。特に、実施例1及び4〜7は、曲げ加工性及び蓋成型性のいずれもが極めて優れていた。このように、各実施例で作製した樹脂被覆アルミニウム板は、樹脂被覆膜の高い密着性を有していることが確認された。なお、曲げ加工性及び蓋成型性は、表2に示す水洗処理工程後、化成処理工程後、ならびに、樹脂被覆膜形成工程後におけるアルミニウム水和酸化物量と対応することが判明した。すなわち、上記アルミニウム水和酸化物量が少量である程、曲げ加工性及び蓋成型性が優れることが確認された。これに対して、比較例1〜5では、曲げ加工性及び蓋成型性の判定はいずれも不合格であった。
樹脂被覆アルミニウム板において、化成皮膜中のアルミニウム水和酸化物の含有量を低減することにより、アルミニウム缶蓋等の成型加工後における樹脂被覆膜の高い密着性が達成される。

Claims (3)

  1. アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材の少なくとも一方の表面をアルカリ脱脂処理する工程と、アルカリ脱脂処理表面を洗浄処理する工程と、洗浄処理表面に化成処理を施す工程と、化成処理表面に樹脂被覆膜を形成する工程と、を含む缶蓋用樹脂被覆アルミニウム板の製造方法であって、
    前記洗浄処理工程が、前記アルカリ脱脂処理表面に30〜80℃の洗浄液をスプレー噴射することを含み、スプレー噴射量が毎秒当たり3〜50リットル/mであり、かつ、スプレー噴射圧が1.0〜3.5kgf/cmであり、洗浄開始後3秒以内にアルミニウム基材の表面近傍のpHを8以下に低下させることを特徴とする缶蓋用樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
  2. 前記アルミニウム合金板からなる基材が5000系合金である、請求項1に記載の缶蓋用樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
  3. 前記洗浄液が、アルミニウムイオン(Al3+)との安定度定数KがlogK≧15である錯体形成物質を0.05〜0.5mol/リットル含有する、請求項1又は2に記載の缶蓋用樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
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