JP5113555B2 - 鉄基焼結合金およびその製造方法 - Google Patents
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(2)なお、特許文献5には、ステンレス鋼からなる小径粒子をそれとほぼ同組成の大径粒子の表面に、1〜2重量%のバインダを用いて付着させた造粒粉末からなる高密度焼結体が開示されている。もっとも、特許文献5の焼結体は、そもそも、気密性や歩留りを向上させる程度の高密度を意図しているに過ぎず、本発明のような著しい高強度化を意図したものではない。また、その造粒に使用されたバインダが焼結前に脱ろう処理で除かれることからも解るように、圧粉体の密度や寸法安定性は少なくともそのバインダ分だけ低下し、さらには、少なくとも脱ろう処理の分、焼結体の製造コストも高くなる。加えて、バインダの残留やバインダの排出により形成される気孔により、焼結体の強度低下、特に、疲労強度の低下がもたらされ得る。
(1)本発明の鉄基焼結合金は、純鉄または鉄合金からなる一種以上の粗粉末と該粗粉末よりも平均粒径が小さい純鉄または鉄合金からなる一種以上の微粉末とを含む原料粉末を混合した混合粉末を加圧成形してなる粉末成形体を加熱し焼結させた焼結体からなる鉄基焼結合金において、
前記微粉末の平均粒径(d)は1≦d≦25(μm)であり、前記粗粉末の平均粒径(D)はd<D≦50(μm)であり、前記混合粉末全体に対する該微粉末の割合は5〜45質量%であり、前記焼結体は理論密度(ρ0’)に対する焼結体の嵩密度(ρ’)の比である焼結体密度比(ρ’/ρ0’ x100%)が96%以上であり、高強度であることを特徴とする。
粗粉末および微粉末(以下、両者を併せて「主原料粉末」という。)の平均粒径(粒度)および配合割合を適正化することで、粗粉末の粒子間に微粉末が充填、導入される。このため、焼結体中に残存する残留気孔が小径化されるのみならず、点在する粗大残留気孔の頻度が著しく減少したと思われる。
〈鉄基焼結合金の製造方法〉
本発明の鉄基焼結合金またはその製造方法は、上述した構成に加えて、次に列挙する構成中から任意に選択した一つまたは二つ以上がさらに付加されるものであると好適である。なお、下記から選択された構成は、複数の発明に重畳的かつ任意的に付加可能であることを断っておく。
(i)前記粉末成形体は、理論密度(ρ0)に対する嵩密度(ρ)の比である粉末成形体密度比(ρ/ρ0 x100%)が95%以上、96%以上、97%以上さらには98%以上の高密度である。
(ii)前記原料粉末または焼結体は、全体を100質量%としたときに、Cr:0.1〜10質量%、Mo:0.1〜2.5質量%、Mn:0.01〜1.2質量%、Si:0.01〜1.2質量%、C:0.01〜1質量%のいずれか一種以上の焼結体を改質する改質元素を含む。
なお、原料粉末(混合粉末)の場合、各種の粉末とその配合割合とから換算することで全体の組成が求まる。一方、焼結体(鉄基焼結合金)の組成は、原料粉末の粒子レベルで観ると均一な組成ではないため、少なくとも1cm3 程度の平均組成の分かる方法(例えば、化学的な湿式分析)により全体組成が決定される。
(iii)前記粗粉末の成分組成と前記微粉末の成分組成とは異なる。
(iv)前記粗粉末は、前記平均粒径または成分組成の異なる複数種の粉末からなる。
(v)前記微粉末は、前記平均粒径または成分組成の異なる複数種の粉末からなる。
(vi)前記粗粉末または前記微粉末の少なくともいずれか一方は、粉末全体を100質量%としたときに含有するC量が0.4質量%以下の低炭素鋼からなる。
(vii)前記原料粉末に含まれる少なくとも一つの粉末は、粉末全体を100質量%としたときに、Cr:0.1〜15質量%、Mo:0.2〜3.0質量%、Mn:0.03〜1.5質量%、Si:0.01〜1.5質量%、C:0.01〜0.4質量%のいずれか一種以上の改質元素を含む鉄合金からなる。
(viii)前記原料粉末は、前記改質元素からなる改質粉末を含む。
(ix)前記改質粉末は、単体(純物質)粉末、鉄合金(フェロアロイ)粉末または化合物粉末のいずれかである。
(x)前記改質元素は、前記粗粉末または微粉末に予合金化されている。
(xi)前記原料粉末は、実質的にCuを含まないCuフリー粉末である。
(xii)前記粗粉末は、0.1〜3.0質量%のMoと残部がFeおよび不可避不純物からなる鉄合金粉末である。
(xiii)前記微粉末は、0.5〜3.5質量%のCr、0.1〜0.6質量%のMo、0.01〜1質量%のMn、0.01〜0.5質量%のSiおよび0.001〜1質量%のCと残部がFeおよび不可避不純物からなる鉄合金粉末である。
(ix)前記原料粉末は、前記粗粉末および前記微粉末とは別に、該粗粉末および該微粉末に含まれる元素よりも酸素(O)と結合し易い易酸化元素からなる易酸化粉末を含む。
(xv)前記粗粉末および前記微粉末は、各々の粉末全体を100質量%としたときに含まれるC量が1.0質量%以下の低炭素鋼粉末であり、 前記原料粉末はさらに炭素粉末を含む。
(i)前記成形工程は、高級脂肪酸系潤滑剤が内面に塗布された前記金型内へ前記混合粉末を充填する充填工程と、該混合粉末を温間状態で加圧して該金型内面に接する該混合粉末の表面に前記高級脂肪酸系潤滑剤とは別の金属石鹸皮膜を生成させる温間加圧成形工程からなる。
(ii)前記焼結工程は、酸素分圧が10-19Pa以下に相当する極低酸素分圧の不活性ガス雰囲気内で行う工程である。
(iii)前記易酸化粉末は、前記易酸化元素を含む単体(純物質)粉末、鉄合金(フェロアロイ)粉末または化合物粉末のいずれかである。
(iv)前記易酸化粉末は、MnおよびSiの合金または化合物からなるMn−Si系粉末またはFe、MnおよびSiの合金または化合物からなるFe−Mn−Si粉末のいずれかである。
(v)前記混合工程は、回転混合、撹拌混合またはプラズマ混合のいずれか一種以上からなる。
(vi)前記混合工程は、回転混合に撹拌混合またはプラズマ混合のいずれかを付加したものである。
(vii)前記成形工程は、高級脂肪酸系潤滑剤が内面に塗布された前記金型内へ前記混合粉末を充填する充填工程と、該混合粉末を温間状態で加圧して該金型内面に接する該混合粉末の表面に前記高級脂肪酸系潤滑剤とは別の金属石鹸皮膜を生成させる温間加圧成形工程である。
(viii)前記焼結工程は、酸素分圧が10-19Pa以下に相当する極低酸素分圧の不活性ガス雰囲気内で行う工程である。
(ix)前記原料粉末中には全体としてCが含まれ、さらに前記焼結工程後の焼結体を焼入れおよび焼戻しする熱処理工程を備える。
(1)平均粒径と配合割合
(a)本発明の鉄基焼結合金の原料粉末は、少なくとも平均粒径の異なる二種類以上の粗粉末および微粉末(主原料粉末)からなる。
(a)主原料粉末は鉄系粉末であり、純鉄または鉄合金からなる。鉄合金粉末に含まれる合金元素は、例えば、C、Mn、Si、Cr、Mo、V、Ti、Nb、Ni等の一種以上の改質元素である。これらの合金元素は、鉄基焼結合金の熱処理性等を向上させ、その強度向上に有効である。
例えば、主原料粉末である粗粉末および微粉末は、前述したようなものであること以外に、さらに次のような粉末であるとより好ましい。
本発明の鉄基焼結合金の製造方法は主に、混合工程、成形工程および焼結工程とからなり、適宜、熱処理工程が行われる。以下、各工程について詳しく説明する。
混合工程は、粗粉末と微粉末とを含む原料粉末を混合して混合粉末とする工程である。この混合工程により各種の原料粉末は均一に混合され、均質な鉄基焼結合金を安定して得ることができる。
本発明の成形工程は、前述した混合粉末を金型へ充填し加圧して粉末成形体とする工程である。本発明でいう高密度の粉末成形体がえら得る限り、粉末成形体の形状や成形圧力自体は問題ではない。
以下、この成形方法の充填工程および温間加圧成形工程についてさらに詳述する。
原料粉末を金型(キャビティ)へ充填する前に、金型の内面に高級脂肪酸系潤滑剤を塗布しておく(塗布工程)。ここで使用する高級脂肪酸系潤滑剤は、高級脂肪酸自体の他、高級脂肪酸の金属塩であってもよい。高級脂肪酸の金属塩には、リチウム塩、カルシウム塩又は亜鉛塩等がある。特に、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等が好ましい。この他、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸リチウム、オレイン酸リチウム、パルミチン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム等を用いることもできる。
高級脂肪酸系潤滑剤が内面に塗布された金型へ、充填された混合粉末を温間で加圧成形すると、金型内面に接する混合粉末(または粉末成形体)の表面に、塗布した高級脂肪酸系潤滑剤とは別の金属石鹸皮膜が生成される。この金属石鹸皮膜の存在により、工業レベルで量産可能な超高圧成形が可能になったと考えられる。
焼結工程は、成形工程で得られた粉末成形体を酸化防止雰囲気で加熱して焼結させる工程である。
焼結温度および焼結時間は、鉄基焼結合金の所望特性、生産性等を考慮して適宜選択される。焼結温度は高い程、短時間で高強度な鉄基焼結合金が得られる。もっとも、焼結温度が高すぎると液相が発生したり、寸法収縮が大きくなって好ましくない。焼結温度が低すぎると、配合した種々の粉末中に含まれる合金元素や強化元素の拡散が不十分となり好ましくない。また、焼結時間が長くなって、鉄基焼結合金の生産性が低下する。
また、焼結時間は、焼結温度、鉄基焼結合金の仕様、生産性、コスト等を考慮しつつ0.1〜3時間さらには0.1〜2時間とするのがよい。
(1)密度
焼結後の密度は7.5g/cm3 以上さらには7.6g/cm3 以上であることが望ましい。成形体密度比(理論密度に対する成形体の嵩密度の比)が95%以上さらには96%以上という超高密度な粉末成形体を焼結させることで、そのような超高密度な焼結体(鉄基焼結合金)を容易に得ることができる。
焼結後の焼結体へ適当な熱処理を施すことで、鉄基焼結合金の組織を部分的または全体的に改質して、鉄基焼結合金の機械的特性等を向上させることができる。この熱処理には、窒化処理、浸炭処理等もあるが、工業的にはCを含む鉄基焼結合金に対して行う焼入れ、焼戻しが代表的である。そして、鉄基焼結合金に所望される強度、靱性等の機械的特性に応じて、含有させるべきC量、焼入れの種類や温度、焼戻しの温度や時間等が適宜調整される。
本発明の鉄基焼結合金はその仕様に応じて、さらに、焼鈍、焼準、時効、調質(焼き入れ、焼き戻し)、浸炭、窒化等の熱処理工程が施されてもよい。勿論、鉄基焼結合金は、熱処理の種類に応じた組成(C、Mo、Cr等)であることが好ましい。
〈試験片の製造〉
(1)混合工程
(a)先ず、主原料粉末の一つである粗粉末となり得る鉄系粉末として、ヘガネス社製のAstaloy Mo(Fe−1.5%Mo)、同社製のAstaloy CrM(Fe−3%Cr−0.5%Mo)および同社製のAstaloy CrL(Fe−1.5%Cr−0.2%Mo)を用意した。なお、組成の単位は質量%であり、以下同様に単に「%」で示す。
(2)成形工程
調製した原料粉末の成形は、金型潤滑温間加圧成形法により行った。具体的には以下の通りである。
(a)得られた各粉末成形体を、連続焼結炉(関東冶金工業製オキシノン炉)を用いて、窒素雰囲気中でそれぞれ焼結させた(焼結工程)。焼結温度は1350℃とし、焼結時間は60分または120分とした。
(b)こうして各種の鉄基焼結合金からなる、φ23mmの円柱状試験片と、□10×55mmの板状試験片とを得た。
(1)上記円柱状試験片を用いて、その焼結前後の重量と寸法から、成形体密度(G.D)およびその密度比、焼結体密度(S.D)およびその密度比を求めた。
上述の各種試験を行った結果を表1〜4Bおよび図1〜5に示した。
(1)主原料粉末の平均粒径と鉄基焼結合金の特性(評価1)
(a)前述したように、平均粒径が27〜80μm内で種々異なるAstaloy Mo粉末からなる粗粉末と、平均粒径が6μmまたは10μmのSCM415粉末からなる微粉末と、Gr粉末と、FeMS粉末とからなる混合粉末を用いて鉄基焼結合金を製造し、試料No.1−A1〜1−A5および試料No.1−B1〜1−B7を得た。
(b)表1および図1から次のことが解る。
(a)平均粒径が80μm、32μmおよび27μmの粗粉末と、平均粒径が10μmの微粉末と、Gr粉末と、FeMS粉末とからなる混合粉末を用いて鉄基焼結合金を製造し、試料No.2−A1〜2−A6、試料No.2−B1〜2−B6および試料No.2−C1〜2−C6を得た。成形、焼結および熱処理の条件は、上記の評価1の場合と同様である。各試料の測定結果を表2および図2に示す。
すなわち、平均粒径が63μmよりも小さい粗粉末に微粉末を混合した粉末からなる試料では、いずれも、抗折力が急激に増加することが解った。一方、平均粒径が63μmよりも大きい粗粉末に微粉末を混合した粉末からなる試料では、抗折力が減少する傾向にあった。そして、微粉末の配合割合を5〜45質量%とする範囲内では、粗粉末の平均粒径が63μm未満の試料の抗折力は、微粉末の平均粒径が63μm超の試料の抗折力よりも、全体的に大きくなった。
(3)易酸化粉末(FeMS粉末)の配合と鉄基焼結合金の特性(評価3)
すなわち、FeMS粉末をわずかでも混合粉末中に配合することで、鉄基焼結合金の引張強さおよび伸びが急激に増加する。この傾向はFeMS粉末の配合量が全体の1.5質量%以下の範囲で現れ、FeMS粉末が1.0質量%以下さらには0.75質量%以下の範囲で顕著であった。
(a)平均粒径が32μmの粗粉末と、平均粒径が10μmの微粉末と、Gr粉末と、FeMS粉末とからなる混合粉末を用いて鉄基焼結合金を製造し、試料No.4−A1〜4−A6および試料No.4−B1〜4−B7と、試料No.4−C1〜4−C3および試料No.4−D1〜4−D4とを得た。各試料は、原料粉末の混合方法とGr粉末の配合量とを変更した鉄基焼結合金について機械的特性を測定したものである。原料粉末の混合は、前述したボールミルによる回転混合だけの場合と、その回転混合に加えて撹拌混合およびプラズマ混合を行った場合の二通りにより行った。
(a)平均粒径が32μmのAstaloy Mo粉末からなる粗粉末と、平均粒径が10μmのSCM415粉末からなる微粉末と、Gr粉末と、FeMS粉末とからなる混合粉末を用いて鉄基焼結合金を製造した。0.5質量%のGr粉末を配合したものを試料No.5−A1、0.55質量%のGr粉末を配合したものを試料No.5−A2とした。
各試料について測定した回転曲げ疲労強度と、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した疲労破壊面とを図5に示す。
Claims (6)
- 純鉄または鉄合金からなる一種以上の粗粉末と該粗粉末よりも平均粒径が小さい純鉄または鉄合金からなる一種以上の微粉末とを含む原料粉末を混合した混合粉末を加圧成形してなる粉末成形体を加熱し焼結させた焼結体からなる鉄基焼結合金において、
前記微粉末の平均粒径(d)は1≦d≦25(μm)であり、
前記粗粉末の平均粒径(D)はd<D≦50(μm)であり、
前記混合粉末全体に対する該微粉末の割合は5〜45質量%であり、
前記焼結体は理論密度(ρ0’)に対する焼結体の嵩密度(ρ’)の比である焼結体密度比(ρ’/ρ0’ x100%)が96%以上であり、
高強度であることを特徴とする鉄基焼結合金。 - 前記焼結体は、
全体を100質量%としたときに、
クロム(Cr):0.1〜10質量%、
モリブデン(Mo):0.1〜2.5質量%、
マンガン(Mn):0.01〜1.2質量%、
ケイ素(Si):0.01〜1.2質量%、
炭素(C):0.01〜1質量%、
のいずれか一種以上の該焼結体を改質する改質元素を含む請求項1に記載の鉄基焼結合金。 - 焼結密度は7.6g/cm 3 以上である請求項1又は2に記載の鉄基焼結合金。
- 純鉄または鉄合金からなる一種以上の粗粉末と該粗粉末よりも平均粒径が小さい純鉄または鉄合金からなる一種以上の微粉末とを含む原料粉末を混合して混合粉末とする混合工程と、
該混合粉末を金型へ充填し加圧して粉末成形体とする成形工程と、
該粉末成形体を酸化防止雰囲気で加熱し焼結させて焼結体とする焼結工程とを備え、
前記微粉末の平均粒径(d)は1≦d≦25(μm)であり、
前記粗粉末の平均粒径(D)はd<D≦50(μm)であり、
該焼結工程後に請求項1〜3のいずれか1項に記載した高強度の鉄基焼結合金が得られることを特徴とする鉄基焼結合金の製造方法。 - 前記原料粉末は、前記粗粉末および前記微粉末とは別に、該粗粉末および該微粉末に含まれる元素よりも酸素(O)と結合し易い易酸化元素からなる易酸化粉末を含む請求項4に記載の鉄基焼結合金の製造方法。
- 前記混合工程は、前記原料粉末を構成する粒子の界面に機械的エネルギーまたは励起エネルギーを付与するエネルギー付与工程を含む請求項4または5に記載の鉄基焼結合金の製造方法。
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