JP5240970B2 - 界面活性剤存在下で安定なコレステロールオキシダーゼ - Google Patents

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Description

本発明は、界面活性剤存在下で安定性を有する新規なコレステロールオキシダーゼおよび新規なコレステロールオキシダーゼをコードする遺伝子に関する。
コレステロールオキシダーゼは、3β−ヒドロキシステロイドと酸素の間の反応を触媒し、相当する3−オキソステロイドと過酸化水素を生成する酸化酵素である。現在までに、体液中のコレステロール濃度の測定(例えば、特許文献1参照)、コレステロール誘導体の製造(例えば、特許文献2参照)、殺虫剤(例えば、特許文献3参照)、洗剤(例えば、特許文献4参照)等に利用することを目的として研究開発されている。
該酵素はストレプトマイセス(例えば、特許文献5参照)、ブレビバクテリウム(例えば、特許文献6参照)、ロドコッカス(例えば、特許文献7参照)、シュードモナス(例えば、特許文献8参照)等多種の微生物により生産されることが知られている。
バークホルデリア セパシア(Burkholderia cepacia)菌株ST−200{旧分類ではPseudomonas sp. 菌株ST−200であり、1998年2月4日付けで通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に寄託された。受託番号は、FERM BP−6661である。}より単離されたコレステロールオキシダーゼ(例えば、特許文献9参照)は、今までに知られたコレステロールオキシダーゼと比較して、コレステロールを基質とした際の生成物が異なること、反応機構が異なること、高い有機溶剤耐性、温度安定性を持つなどの特徴がある。バークホルデリア セパシア菌株ST−200由来のコレステロールオキシダーゼは遺伝子がクローニングされ、様々な宿主において組換え体コレステロールオキシダーゼの高生産が、分泌、細胞内を問わず可能である(例えば、特許文献10参照)。
臨床診断薬に使用する酵素に求められる特性は、多くの場合、対象物に対する高い反応性、特異性、製品としての保存安定性に影響する熱安定性などであるが、コレステロール測定においては、対象物を高い特異性で測定するために、高濃度で界面活性剤を処方することが多く、そのため使用する酵素には上記の特性のほかに界面活性剤共存下での保存安定性が強く求められている。バークホルデリア セパシア菌株ST−200由来のコレステロールオキシダーゼは、先に述べた優れた性質を持つものの、界面活性剤共存下での保存安定性に劣ることが、コレステロール測定試薬への応用を妨げていた。
コレステロール測定系で使用される界面活性剤は、陰イオン系界面活性剤としては、1−ペンタンスルホン酸塩、1−ヘキサンスルホン酸塩、1−ヘプタンスルホン酸塩、1−オクタンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、コール酸塩(コール酸ナトリウム)、コール酸、デヒドロコール酸塩、デオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)コールアミド、N,N-ビス-3-D-グルコンアミドプロピルコールアミド、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウロイルサルコシンなどが用いられている(例えば、特許文献11〜17参照)。また、陽イオン系界面活性剤としては、n-ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルピリジニウムクロリド等が用いられている(例えば、特許文献17参照)。
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、アシルポリオキシエチレンソルビタンエステル、アルキルポリオキシエチレンエーテル、n-ドデシル-β-D-マルトシド、シュークロースモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールp-t-オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、n-オクチル-β-D-グルコシド、ポリオキシエチレングリコールモノドデシルエーテル、n-オクチル-β-D-チオグルコシド、セチルエーテル(C16)、ラウリルエーテル(C12)、オレイルエーテル、ベヘニルエーテル(C20)、ポリオキシエチレンモノラウレート等が用いられている(例えば、特許文献12〜25参照)。
また、両性界面活性剤としては、ベタイン誘導体、アルキルベタイン誘導体、イミダゾリウムベタイン誘導体、スルホベタイン誘導体、アミノカルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体、アミンオキサノイド誘導体、胆汁酸誘導体等が用いられている(例えば、特許文献14,17〜19参照)。
特開平6−169765号公報 特開平6−113883号公報 米国特許第5558862号明細書 国際公開第89/09813号パンフレット 特開昭62−285789号公報 特開平4−218367号公報 特表平3−503487号公報 特開平6−189754号公報 特許第3241712号公報 特開2002−65271号公報 特開平8−116996号公報 特許第2799835号公報 特開平11−56395号公報 特開2000−60600号公報 特開2002−142799号公報 特許第3529081号公報 特開平10−84997号公報 特開2000−325097号公報 特開2001−124780号公報 特開2000−116400号公報 特開平9−299号公報 特開2001−346598号公報 特開平9−224697号公報 特許第3193634号公報 特開平10−210999号公報
本発明は、このような従来のバークホルデリア セパシア菌株ST−200由来のコレステロールオキシダーゼの有する欠点を克服し、界面活性剤処方下で高い安定性を有するコレステロールオキシダーゼおよびそれをコードする遺伝子を提供することにある。
本発明者らは、前記課題解決のために鋭意研究を重ねた結果、バークホルデリア セパシア菌株ST−200由来のコレステロールオキシダーゼ遺伝子(特開2002−65271号公報記載)の改変を行った結果、界面活性剤処方下で高い安定性を有する新規なコレステロールオキシダーゼが得られること等を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
1)下記の理化学的性質を有し、界面活性剤に対する安定性が改善されたことを特徴とする新規なコレステロールオキシダーゼであり、
(a)作用及び基質特異性:コレステロールに作用して、コレスト‐5‐エン‐3‐オンに変換する;コレスト‐5‐エン‐3‐オンに作用してこれを6β‐パーヒドロキシコレスト‐4‐エン‐3‐オンに変換する。3β−ステロール類に作用し、3α−ヒドロキシステロイドには作用しない。
(b)分子量:約60,000(SDS−PAGE)
2)以下の(a)、(b)又は(c)のコレステロールオキシダーゼ活性を有するタンパク質であり、
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ新規なコレステロールオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列からなり、かつ新規なコレステロールオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
3)以下の(a)、(b)又は(c)のコレステロールオキシダーゼ活性を有するタンパク質であり、
(a)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号5で表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ新規なコレステロールオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
(c)配列番号5で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列からなり、かつ新規なコレステロールオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
4)以下の(a)、(b)又は(c)のDNAからなる遺伝子であり、
(a)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号4で表される塩基配列からなるDNAの全長、配列番号4で表される塩基配列からなるDNA中の連続する15塩基以上、またはこれらに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ新規なコレステロールオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号4で表される塩基配列からなるDNAの全長又はそのうちの15塩基以上の部分と80%以上の相同性を示し、かつ新規なコレステロールオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
5)以下の(a)、(b)又は(c)のDNAからなる遺伝子である。
(a)配列番号6で表される塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号6で表される塩基配列からなるDNAの全長、配列番号6で表される塩基配列からなるDNA中の連続する15塩基以上、またはこれらに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ新規なコレステロールオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号6で表される塩基配列からなるDNAの全長又はそのうちの15塩基以上の部分と80%以上の相同性を示し、かつ新規なコレステロールオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
本発明によれば、臨床診断用酵素として試薬中に処方する上で、より界面活性剤に対する安定性の高いコレステロールオキシダーゼおよびそれをコードする遺伝子が提供され、産業上有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の新規なコレステロールオキシダーゼ(以下、「本発明オキシダーゼ」という)とは、下記の理化学的性質を有し、界面活性剤存在下での保存安定性が改善されたコレステロールオキシダーゼである。
(a)作用及び基質特異性:コレステロールに作用して、コレスト‐5‐エン‐3‐オンに変換する;コレスト‐5‐エン‐3‐オンに作用してこれを6β‐パーヒドロキシコレスト‐4‐エン‐3‐オンに変換する。3β−ステロール類に作用し、3α−ヒドロキシステロイドには作用しない。
(b)分子量:約60,000(SDS−PAGE)
常法により、マルチゲル10/20(第一化学薬品社製)を用いるSDS−PAGE法により求める。
このように、本発明オキシダーゼは、その理化学的性質において、公知の何れのコレステロールオキシダーゼとも異なっており、新規なコレステロールオキシダーゼである。従って、保存安定性の優れた臨床診断用酵素としてキット試薬中に処方することができる。
本発明オキシダーゼとしては、天然界よりスクリーニングして得られる種々の生物由来のオキシダーゼや従来公知のコレステロールオキシダーゼを改変して得られるオキシダーゼなどを挙げることができるが、例えば、一例として、以下の(c)、(d)、(e)、(f)、(g)又は(h)などの本発明オキシダーゼ等が挙げられる。
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むコレステロールオキシダーゼ。
(d)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されたアミノ酸配列を含むコレステロールオキシダーゼ。
(e)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列を含むコレステロールオキシダーゼ。
(f)配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むコレステロールオキシダーゼ。
(g)配列番号5で表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されたアミノ酸配列を含むコレステロールオキシダーゼ。
(h)配列番号5で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列を含むコレステロールオキシダーゼ。
ここで「1個以上のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入された」とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の数のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されたことを意味する。また「80%以上の相同性を示す」とは、配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であれば特に制限がなく、例えば、80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
本発明の新規なコレステロールオキシダーゼをコードするコレステロールオキシダーゼ遺伝子(以下、「本発明遺伝子」という)としては、例えば、上記(c)、(d)、(e)、(f)、(g)又は(h)などの本発明オキシダーゼをコードする遺伝子や、さらに、以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)のDNAを含む本発明オキシダーゼをコードする遺伝子等が挙げられる。
(a)配列番号4で表される塩基配列を含むDNA。
(b)配列番号4で表される塩基配列からなるDNAの全長、配列番号4で表される塩基配列からなるDNA中の連続する15塩基以上、またはこれらに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA。
(c)配列番号4で表される塩基配列の全長又は15塩基以上の部分と80%以上の相同性を示す塩基配列を含むDNA。
(d)配列番号6で表される塩基配列を含むDNA。
(e)配列番号6で表される塩基配列からなるDNAの全長、配列番号6で表される塩基配列からなるDNA中の連続する15塩基以上、またはこれらに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA。
(f)配列番号6で表される塩基配列の全長又は15塩基以上の部分と80%以上の相同性を示す塩基配列を含むDNA。
ここで「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、DNAをプローブとして使用し、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAまたは該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、65℃でハイブリダイゼーションを行なった後、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、Current Protocols in Molecular Biology (WILEY Interscience,1989)等に記載されている方法に準じて行なうことができる。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げられる。本発明における、「全長又は塩基配列の15塩基以上の部分と80%以上の相同性を示す塩基配列を含むDNA」の相同性は、例えば80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
次に本発明オキシダーゼ及び本発明遺伝子の取得方法について説明する。
本発明オキシダーゼは、微生物や動物、植物起源の酵素を探索して、自然界より得ることができる。さらに、遺伝子工学的技術や変異処理などの方法を用い、本発明酵素と異なる理化学的性質を有するコレステロールオキシダーゼ(以下、「性質を異にするオキシダーゼ」という)を改変することにより、本発明オキシダーゼを得ることもできる。本発明でいう性質を異にするオキシダーゼとしては、先に述べた既知のオキシダーゼなどが挙げられるが、新たに探索して得られたコレステロールオキシダーゼや遺伝子工学的技術により改変して得られたコレステロールオキシダーゼなどでもよい。例えば、既知のオキシダーゼとしては、好ましくは、バークホルデリア セパシア菌株ST−200由来のコレステロールオキシダーゼ(特許第3241712号、特開2002−65271号公報記載)などが挙げられる。上記コレステロールオキシダーゼは、本来はシグナル配列を持つ分泌たんぱく質であるが、シグナル配列を残したまま用いてもかまわないし、シグナル配列を除去して細胞内に生産してもかまわない。
性質を異にするオキシダーゼの理化学的性質を改変する方法としては、該オキシダーゼを生産する微生物などに、例えば、紫外線、X線、放射線などを照射したり、もしくはエチルメタンサルフォネート、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、亜硝酸などの変異誘発剤を接触させることにより、改変された本発明オキシダーゼを生産する微生物を得、得られた微生物から本発明オキシダーゼを得る方法などが挙げられる。
しかし、一般的には、遺伝子工学的な技術を用い、性質を異にするオキシダーゼなどをコードする遺伝子を改変することにより、本発明オキシダーゼを得ることができる。本発明に用いられる性質を異にするオキシダーゼをコードする遺伝子としては、改変により本発明オキシダーゼを得ることのできる遺伝子であれば、如何なるコレステロールオキシダーゼをコードする遺伝子でも用いることができる。
本発明に用いる、性質を異にするオキシダーゼをコードする遺伝子を得るには、通常一般的に用いられている遺伝子のクローニング方法が用いられる。例えば、性質を異にするオキシダーゼ生産能を有する微生物菌体や種々の細胞から常法、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(WILEY Interscience,1989)記載の方法により、染色体DNA又はmRNAを抽出する。さらにmRNAを鋳型としてcDNAを合成することができる。このようにして得られた染色体DNA又はcDNAのライブラリーを作製する。ついで、上記性質を異にするオキシダーゼのアミノ酸配列に基づき、適当なプローブDNAを合成して、これを用いて染色体DNA又はcDNAのライブラリーからスクリーニングする方法、あるいは、上記アミノ酸配列に基づき、適当なプライマーDNAを作製して、5’RACE法や3’RACE法などの適当なポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)により、目的の遺伝子断片を含むDNAを増幅させ、これらを連結させて全長の目的遺伝子を含むDNAを得ることができる。このようにして得られた性質を異にするオキシダーゼをコードする遺伝子の好ましい一例として、バークホルデリア セパシア菌株ST−200由来のコレステロールオキシダーゼ遺伝子(特開2002−65271号公報記載)などが挙げられる。これらの遺伝子は、常法通り各種ベクターに連結されていることが、取扱い上好ましく、例えば、単離したバークホルデリア セパシア菌株ST−200由来の性質を異にするオキシダーゼをコードする遺伝子を含む組換え体プラスミドpCox4DNA(特開2002−65271号公報記載)から、例えば、QIAGEN(キアゲン社製)を用いることにより、抽出、精製して得られる。なお、本発明において用いることの出来るベクターDNAとしては、上記プラスミドベクターDNAに限定されることなくそれ以外の、例えば、プラスミドベクターDNA、バクテリオファージベクターDNA等を用いることが出来る。具体的には、例えば、pBluescriptII SK+ (STRATAGENE社製)等が好ましい。
次に、上記の方法で得られた性質を異にするオキシダーゼをコードする遺伝子を改変することにより、本発明オキシダーゼを得ることができる。すなわち、本発明においては、性質を異にするオキシダーゼをコードする遺伝子が改変されることにより、その遺伝子により翻訳される性質を異にするオキシダーゼのアミノ酸配列が改変される。その結果、本発明オキシダーゼを含む、改変前の性質を異にするオキシダーゼと種々の性質の異なるコレステロールオキシダーゼが得られる。
改変に用いる性質を異にするオキシダーゼをコードする遺伝子は特に限定されないが、本発明の一実施態様として、バークホルデリア セパシア菌株ST−200由来の性質を異にするオキシダーゼをコードする遺伝子(特開2002−65271号公報記載、配列番号3)などを挙げることができる。さらに、この遺伝子を宿主生物で発現させるのに適したようにアミノ酸残基を付加、欠失、置換しないように、又は付加、欠失、置換するように塩基配列を改変したものもあげることが出来る。
上記遺伝子を改変する方法としては、既知の如何なる方法でも用いることができるが、例えば、前記の組換え体プラスミドpCox4DNA(特2002−65271号公報記載)に、ハイドロキシルアミン、亜硝酸などの化学変異剤を接触させる方法、またはPCR法を用いてランダムに変換する等の点変異方法、市販のキットを使用する部位特異的な置換または欠失変異を生じさせるための周知技術である部位特異的変異誘導法、この組換え体プラスミドDNAを選択的に開裂し、次いで選択されたオリゴヌクレオチドを除去又は付加し、連結する方法、すなわちオリゴヌクレオチド変異誘導法等が挙げられる。次いで、上記処理後の組換え体DNAを脱塩カラム、QIAGEN(キアゲン社製)等を用いて精製し、種々の組換え体DNAを得る。この際、pCox4DNAのコレステロールオキシダーゼのアミノ末端側のシグナル配列をコードする塩基配列を除去し、代わりに開始メチオニンをコードするATGを付加した組換え体DNAや、アミノ末端側をコードした塩基配列を大腸菌などの宿主生物で発現させるのに適した配列に置換した組換え体DNAを用いてもよい。
このようにして得られた種々の組換え体DNAを用いて、例えば、大腸菌K12、好ましくは大腸菌JM109、DH5α(共に東洋紡社製)、XL1−Blue(フナコシ(株)製)等を形質転換又は形質導入し、種々の改変されたコレステロールオキシダーゼ遺伝子断片を保有する組換え体DNAを含む形質転換体又は形質導入体を得ることが出来る。そして、例えば、形質転換体の場合、得られた形質転換体(その中に種々の変異コレステロールオキシダーゼ遺伝子を含む組換え体プラスミドDNAを含有している)より、目的の本発明の界面活性剤存在下での安定性を有する形質転換体(本発明オキシダーゼ生産株)を選抜する。
次に、本発明オキシダーゼ生産株を選抜するためには、例えば、次のような方法を用いることができる。先ず、得られた上記形質転換体のコロニーを滅菌したLB液体培地を入れ、アンピシリンを添加した滅菌済み96穴プレートに植え継ぎ培養する。十分に生育した後、リゾチームなどの溶菌剤を添加し、37℃で1時間ほど静置し、溶菌させる。溶菌したら、適切な界面活性剤を含んだ0.2%牛血清アルブミンを含んだ0.1M MES緩衝液(pH7.0)を50μL各セルに入れた96穴プレートの対応したセルに、溶菌した培養液を50μL加え懸濁し、37℃、5時間処理する。その後、基質であるコレステロール、トリトンX−100、コール酸ナトリウム、ペルオキシダーゼ、フェノール、4−アミノアンチピリンを含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を100μL加え懸濁し、赤紫色の発色の度合いを観察する。改変前の性質を異にするオキシダーゼ生産株についても同様の工程で発色試験を行い、その比較により目的とする形質転換体を選抜する。
使用する界面活性剤は、先に述べたコレステロール測定系に用いられる界面活性剤であればどのようなものでもかまわないが、望ましくは陰イオン系界面活性剤としては、1−ペンタンスルホン酸塩、1−ヘキサンスルホン酸塩、1−ヘプタンスルホン酸塩、1−オクタンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(商品名、エマール20C、エマールNC−35(以上花王製))、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、コール酸塩(コール酸ナトリウム)、コール酸、デヒドロコール酸塩、デオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)コールアミド、N,N-ビス-3-D-グルコンアミドプロピルコールアミド、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウロイルサルコシン等、また陽イオン系界面活性剤としては、n-ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルピリジニウムクロリド等、また非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(商品名、エマルゲン220、エマルゲン104P、エマルゲン108、エマルゲン408など(以上花王製))、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(商品名、エマルゲン903、エマルゲン909、エマルゲン913など(以上花王製))、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物(商品名、プルロニックF88(旭電化製))、アシルポリオキシエチレンソルビタンエステル(商品名、Tween21、Tween81、Tween20、Tween40、Tween60,Tween80,Tween85、Emasol4130など)、アルキルポリオキシエチレンエーテル(商品名、AtlasG2127、Brij36T、Brij56など)、n-ドデシル-β-D-マルトシド、シュークロースモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名、エマルゲン120など)、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル(商品名、エマルゲンA60など)、ポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテル(商品名、エマルゲンB66など)、ポリオキシエチレングリコールp-t-オクチルフェニルエーテル(商品名、TriotonX100)、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル(商品名、エマルゲン705、エマルゲン709など)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、n-オクチル-β-D-グルコシド、ポリオキシエチレングリコールモノドデシルエーテル、n-オクチル-β-D-チオグルコシド、セチルエーテル(C16)、ラウリルエーテル(C12)、オレイルエーテル、ベヘニルエーテル(C20)、ポリオキシエチレンモノラウレート等、また両性界面活性剤としては、ベタイン誘導体、アルキルベタイン誘導体、イミダゾリウムベタイン誘導体、スルホベタイン誘導体、アミノカルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体、アミンオキサノイド誘導体、胆汁酸誘導体等であることが望ましく、特に非イオン系界面活性剤であることがより一層望ましい。
この様にして本発明オキシダーゼ生産能を有する形質転換体を得ることができる。例えば、配列番号1のアミノ酸配列を有するバークホルデリア セパシア菌株ST−200由来のコレステロールオキシダーゼ(特許第3241712号公報)について、上記改変方法を用いて得られた、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む本発明オキシダーゼなどを挙げることができる。さらに必要により、この本発明オキシダーゼ生産能を有する形質転換体を用い、本発明遺伝子を、上記した改変方法により、さらに改変を繰り返し行なうことにより、さらに界面活性剤に対する安定性の高い改変された本発明オキシダーゼ及びその生産能を有する形質転換体を得ることもできる。すなわち本発明においては、配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されたアミノ酸配列を含むコレステロールオキシダーゼおよび配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列を含むコレステロールオキシダーゼなども本発明オキシダーゼに含まれる。例えば、具体的には、後述の実施例に示す本発明オキシダーゼ(R7)などを挙げることができる。R7は、配列番号2で表されるアミノ酸配列から3アミノ酸残基が置換されており、90%以上の相同性を有している。また、このようにして得られた本発明オキシダーゼを生産する形質転換体の一例としては、界面活性剤共存下での残存活性率が80%になった配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む本発明オキシダーゼ(R1)生産大腸菌(E.coli)JM109(pNCP1)を挙げることができる。
また本発明遺伝子の一例として、上記した本発明オキシダーゼ(R1)遺伝子(配列番号6)を挙げることができる。配列番号5をコードする配列番号6を含む遺伝子を含むプラスミドpNCP1は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM BP−10343として寄託されている。さらに本発明遺伝子として、配列番号2又は5で表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されたアミノ酸配列を含むコレステロールオキシダーゼおよび配列番号2又は5で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列を含むコレステロールオキシダーゼなどの本発明オキシダーゼをコードする遺伝子や、さらに、配列番号4又は6で表される塩基配列の全長又は15塩基以上の部分、又はその相補鎖を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNAや配列番号4又は6で表される塩基配列の全長又は15塩基以上の部分と80%以上の相同性を示す塩基配列を含むDNAを含む本発明オキシダーゼをコードする遺伝子等が挙げられる。「15残基以上の部分」の具体的な例としては、配列番号6の部分配列である4〜186塩基の塩基配列などが挙げられる。また配列番号4の130〜312塩基の塩基配列を配列番号6の4〜186塩基の塩基配列と交換したものも配列番号2のアミノ酸配列をコードしており、80%以上の相同性を示す塩基配列を含むDNAの例としてあげる事が出来る。
次に、本発明オキシダーゼ生産能を有する微生物を培地に培養し、培養物より該コレステロールオキシダーゼを採取することにより本発明オキシダーゼを製造する。本発明オキシダーゼ生産能を有する微生物であれば、いかなる微生物も本発明オキシダーゼの製造に用いることができる。例えば、上記のようにして得られた本発明オキシダーゼ生産能を有する形質転換体又は形質導入体などが挙げられる。例えば、本発明オキシダーゼ生産能を有する、好ましくはエッシェリシア属に属する形質転換株を用いて本発明オキシダーゼを生産することができる。上記微生物を培養するには、固体培養法で培養してもよいが、液体培養法を採用して培養するのがより好ましい。また、上記微生物を培養する培地としては、例えば、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、大豆もしくは小麦麹の浸出液などの1種以上の窒素源に、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化第2鉄、硫酸第2鉄もしくは硫酸マンガンなどの無機塩類の1種以上を添加し、さらに必要により糖質原料、ビタミンなどを適宜添加したものが用いられる。なお、培地の初発pHは、6〜9に調製するのが適当である。また培養は、20〜42℃、好ましくは25℃前後で10〜40時間、通気攪拌深部培養、振とう培養、静置培養などにより実施するのが好ましい。培養終了後、該培養物より本発明オキシダーゼを採取するには、通常の酵素採取手段を用いることが出来る。培養液から、例えば、濾過、遠心分離等の操作により菌体を分離し、洗菌する。この菌体から本発明オキシダーゼを採取することが好ましい。この場合、菌体をそのまま用いることも出来るが、超音波破砕機、フレンチプレス、ダイノミル等の種々の破壊手段を用いて菌体を破壊する方法、リゾチームの如き細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法、トリトンX−100等の界面活性剤を用いて菌体から酵素を抽出する方法などにより、菌体から本発明オキシダーゼを採取するのが好ましい。
このようにして得られた粗酵素液から本発明オキシダーゼを単離するには、通常の酵素精製に用いられる方法が使用できる。例えば、硫安塩析法、有機溶媒沈殿法、イオン交換クロマトグラフ法、ゲル濾過クロマトグラフ法、吸着クロマトグラフ法、電気泳動法等を適宜組み合わせて行うのが好ましい。このようにして、本発明オキシダーゼを、SDS−PAGE的にほぼ単一のバンドを示すまでに単離することができる。また、上記精製方法を適宜組合わせて、用途に応じた精製度合いの異なる酵素標品を調整することもできる。
本発明オキシダーゼの酵素活性の測定方法としては、酵素の反応により生成する過酸化水素量を測定する方法や酵素反応により消費する酸素量を測定する方法などが主な測定方法として挙げられる。以下に、一例として、過酸化水素量を測定する方法について示す。以下、本発明酵素の活性測定には、ことわりのない限り、コレステロールを基質として用いる。なお、酵素力価は、コレステロールを基質として測定したとき、1分間に1μmolの過酸化水素を生成する酵素量を1Uと定義した。
A.試薬の調製
(1)試薬1:コレステロール溶液
5.0mlのTritonX−100に500mgのコレステロール(和光純薬製)を添加し、ヒーター上で攪拌溶解する。これに90mlのイオン交換水を添加後、煮沸後、氷上で冷却し、4.0gのコール酸ナトリウム(ナカライテスク製)を添加し、溶解した後、100mlに定容する。
(2)試薬2:6.0%フェノール溶液
フェノール6.0gをイオン交換水に溶解して100mlにする。
(3)試薬3:0.15%ペルオキシダーゼ溶液
150mgを100mlの0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH7.0)に溶解する。
(4)試薬4:4−アミノアンチピリン溶液
1.76gの4−アミノアンチピリン(和光純薬製)をイオン交換水に溶解し、100mlに定容する。
B.測定法
4.0mlの試薬1と51mlの0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)とを混合した後、2.0mlの試薬2、2.0mlの試薬3、1.0mlの試薬4を順に加え、混合する。これを3.0mlずつ試験管に分注し、氷冷保存する。測定時は、3.0mlを37℃で5分加温し、50μlの酵素液を加え混和し、分光光度計(U−3010、日立社製)により、500nmにおける吸光度を測定する。測定値(ΔODtest)は、500nmにおける2分後から4分後の1分間あたりの吸光度変化とする。なお対照液(ΔODblank)は、酵素液の代わりに50μlの0.2%牛血清アルブミンを含む20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を加える以外は前記と同様にしたものである。下記の計算式に従い、算出した値を酵素活性値(U/ml)とした。
Figure 0005240970

13.78:上記の測定条件下でのミリモル分子吸光係数(cm2/micromole)
1/2:酵素反応で生成したHの2分子から形成するQuinoneimine色素は1分子であることによる係数。
1.0:光路長(cm)
本発明で得られるコレステロールオキシダーゼ遺伝子を用い、低基質(コレステロール)濃度でも高い活性を示し、幅広いpHで作用しさらに熱安定性に優れているコレステロールオキシダーゼを安価に提供できる。該コレステロールオキシダーゼは界面活性剤に対する安定性が改善されており、体液や食品中でのコレステロールの測定に特に適するものである。また、有機溶媒重層下において強く活性化されることから、コレステロール類の酵素変換を効率的に行える特徴を有している。その他、本酵素を経口的に摂取させることにより殺虫剤としても使用でき、コレステロール類で汚染した衣類等の洗剤として使用することもできる。
以下に、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(A)組換え体プラスミドの調製
性質を異にするオキシダーゼ遺伝子(配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子)を有する組換え体プラスミドDNA、およびこの遺伝子の大腸菌における発現量を増加させるために本遺伝子のうちアミノ末端をコードする領域の塩基配列を大腸菌のコドンユセージに合うように改変したオキシダーゼ遺伝子を有する組換え体プラスミドDNAをそれぞれ調製した。以後に述べる本発明オキシダーゼを作製するに当たっては、何れの組換え体プラスミドDNAを用いてもよいが、改変したオキシダーゼ遺伝子を有する組換え体プラスミドDNAを用いることが、本発明オキシダーゼを大量に製造する上で有効である。
(1)組換え体プラスミドpCox4DNAの調製
上述のオキシダーゼ遺伝子(配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子)の組換え体プラスミドを有する大腸菌(E.coli)DH5α(pCox4)(FERM P−18002)を、LB培地(1%バクト−トリプトン、0.5%酵母エキス、0.25%NaCl)20mlに接種して、37℃で20時間振とう培養し培養物を得た。この培養物を7000rpmで5分間遠心分離することにより集菌して菌体を得た。この菌体よりQIAGEN tip−100(キアゲン社製)を用いて組換え体プラスミドpCox4DNAを抽出して精製し、組換え体プラスミドpCox4DNAを100μg得た。
(2)アミノ末端側塩基配列を改変した組換え体プラスミドpNCOPDNAの調製
配列番号6の部分配列である配列番号7〜14に記載の塩基配列をもつオリゴヌクレオチドをシグマジェノシス社の受託合成サービスにより入手した。配列番号7〜14のそれぞれをT4 Polynucleotide kinase(宝酒造社製)を用いてリン酸化する。一方、配列番号1を持つpCox4DNAを鋳型とし、配列番号15、16をプライマーとしてEx Taq polymerase(宝酒造社製)を用いてPCR反応を行い、C末端側をコードする遺伝子断片を調製した。さらに、本断片をNdeI(第一化学薬品社製)、NspI(第一化学薬品社製)で処理した。さらにpKF19kDNAをNdeIで処理した後、BAP処理(宝酒造社製試薬を使用)により脱リン酸化を行なった。こうして得られたリン酸化オリゴヌクレオチドのうち、8本のリン酸化オリゴヌクレオチド、pCox4DNA由来遺伝子断片、pKF19k断片を適量混合し、Ligation Kit ver.2(宝酒造社製)を利用しライゲーションし、得られたプラスミドをpNCOPと命名した。続いて、(1)に記載の方法によりpNCOP DNAを100μg調製した。
(B)本発明オキシダーゼ及び本発明オキシダーゼ生産能を有する形質転換株の作製
(1)改変操作(変異の導入)
上記組換え体プラスミド、pNCOPDNAを鋳型としてプライマーとして配列番号17、25を用いてPCR法を実施した。この際、反応系に10%のDMSOを添加することで増幅のミスを誘発させ、変異を導入した。このようにして得たDNA断片を制限酵素NdeIで処理した後、プラスミドpKF19kを同じくNdeIで処理した後、BAP処理(宝酒造社製試薬を使用)により脱リン酸化を行なったものと混合し、Ligation Kit ver.2(宝酒造社製)を利用しライゲーションし、D.M.Morrisonの方法(Method in Enzymology,68,326〜331,1979)に従って大腸菌JM109(東洋紡社製)を形質転換し、約2500株の改変を受けたプラスミドを保有する形質転換株を得た。
(2)本発明オキシダーゼ生産株の選抜
まず、得られた上記形質転換体の全てを1mM IPTG、50μg/mlカナマイシンを含んだ滅菌済みLB培地を100μlずつ各セルに含んだ96穴プレートに植ぐ。各プレートのうち1セルは、pNCOPを保持したJM109を植え、ネガティブコントロールとする。25℃で24時間培養した。こうして得られた培養液を−80℃のフリーザーにプレートごと1時間入れて溶菌させる。その後、100μlの10%エマルゲン913を含んだ0.2%牛血清アルブミン入り100mM MES−NaOH緩衝液(pH7.0)とプレート上で混合し、37℃、5時間静置する。その後、各処理液50μlをとって下記の組成の反応試薬50μlと混ぜ合わせ反応させ、ネガティブコントロールと比較して発色の増加しているものを選択する。

15ml コレステロール溶液
5.0mのTritonX−100に500mgのコレステロール(和光純薬製)を添加し、ヒーター上で攪拌溶解する。これに90mlのイオン交換水を添加後、煮沸後、氷上で冷却し、4.04gのコール酸ナトリウム(ナカライテスク製)を添加し、溶解した後、100mlに定容する。
17.5ml 0.1Mリン酸カリウムバッファー、pH7.0
3.5ml 1.76%4−アミノアンチピリン溶液
7ml 6%フェノール水溶液
7ml 0.15%ペルオキシダーゼ溶液
150mgを100mlの0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH7.0)に溶解する。

ここで選択された発色した10株について2mlのLB培地(50μgカナマイシン添加)で液体培養し、プラスミドに含まれる改変されたコレステロールオキシダーゼを生産させた。培養後、得られた培養物を超音波破砕し、8000rpmで5分間遠心して得たその粗酵素抽出液0.5mlを0.5mlの10%エマルゲン913を含有する0.2%牛血清アルブミン入り100mM MES−NaOH緩衝液(pH7.0)と混ぜ、37℃で一晩反応させた。この反応液と未処理の粗酵素液の2倍希釈液の活性を測定し、活性残存率(反応液の活性/未処理の粗酵素抽出液の活性)を算出した。同様にして培養、抽出、熱処理をし、活性測定をした改変前の性質を異にするオキシダーゼと活性残存率の比較を行い、活性残存率が40%から80%に向上した改変されたコレステロールオキシダーゼとその生産大腸菌3株を得た。そのうちの1種(R1)遺伝子をコードするプラスミドpNCP1を独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM BP−10343として寄託した。
(3)改変の起こった部位の同定
改変されたコレステロールオキシダーゼ遺伝子を保持するプラスミドを回収し、CEQ2000XL DNA解析システム(ベックマンコールター社製)を用いて塩基配列を決定し、それを元に改変されたアミノ酸残基の同定を行った。
これにより、本発明オキシダーゼ(R1)は、配列番号1に表されるアミノ酸配列において配列番号2に示すように、175番目のアスパラギン酸がアスパラギンに置換されていることが分かった。これは、配列番号5においては133番目に相当する。同様に本発明オキシダーゼ(R7)では、配列番号1に表されるアミノ酸配列において、173番目のプロリンがロイシンに、220番目のアスパラギン酸がグルタミン酸に置換されていることが分かった。また、これらは配列番号5においてはそれぞれ131番目、178番目に相当する部位の変異である。
(4)変異点の分離と組み合わせ
これらの変異点をそれぞれ単独で導入してみた。即ち、pNCOP DNAに配列番号17,18(配列番号5の133番目をアスパラギン酸がアスパラギンに置換するようにデザインされている)の配列をプライマーとしてKOD plus polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCR反応を行った後、アガロースゲル電気泳動にてプラスミドの全長に相当するDNA断片の増幅を確認し、制限酵素DpnI(メチル化したDNAに作用する;第一化学薬品製)で処理した後、大腸菌JM109に形質転換し、カナマイシンを添加したLB寒天培地で選択した。生育してきたコロニーをカナマイシン入りの液体培地で培養し、コレステロールオキシダーゼ遺伝子を保持するプラスミドを回収し、塩基配列を確認し目的どおりの変異が導入されていることを確認する。配列番号5の131番目(プロリンをロイシンに置換)、178番目(アスパラギン酸をグルタミン酸に置換)についても131番目については配列番号19,20を、178番目については配列番号21,22を代わりに用いて同様の方法で、部位特異的変異コレステロールオキシダーゼ遺伝子を得た。さらに、ここで得られた部位特異的変異コレステロールオキシダーゼ遺伝子を保持するプラスミドを鋳型に2重変異体コレステロールオキシダーゼ遺伝子を得た。この際、131番目と133番目の変異点は近接しているため、配列番号23,24を用いて行った。さらに3重変異体コレステロールオキシダーゼ遺伝子を保持するプラスミドを得た。
(5)変異点と界面活性剤耐性
上記で得た変異点の異なる変異型コレステロールオキシダーゼ遺伝子をもつプラスミドを保持した大腸菌JM109をそれぞれ1.0mM IPTG添加LB−カナマイシン培地10mlで30℃、24時間攪拌培養し、得られた培養液を8000rpm、5分間遠心分離して集菌し、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1ml懸濁した。その後、超音波により菌体を破砕し、10,000rpm、10分の遠心により上清を回収した。これらの粗酵素抽出液200μlを200μlの2%エマルゲン913入り0.2%牛血清アルブミン含有100mM MES−NaOH緩衝液(pH7.0)と混合し、30℃、7日間静置し、界面活性剤未処方で30℃、7日間静置したものと酵素活性の残存率を比較した(表1)。
Figure 0005240970
P131L変異は、131位のプロリンをロイシンに置換したもの。
D133N変異は、133位のアスパラギン酸をアスパラギンに置換したもの。
D178E変異は、178位のアスパラギン酸をグルタミン酸に置換したもの。

さらに、エマルゲン913に対する安定化効果の認められた変異型コレステロールオキシダーゼについて他の界面活性剤(エマルゲン120、エマール20C、エマール20CM)に対する保存安定性を検討した。条件は前試験に準じ、それぞれ粗酵素抽出液200μlを200μlの2%界面活性剤入り0.2%牛血清アルブミン含有100mM MES−NaOH緩衝液(pH7.0)と混合し、30℃、3日間静置により行った(表2)。
Figure 0005240970
(C)本発明オキシダーゼの生産及びその理化学的性質
上記のようにして得られた本発明オキシダーゼ(R1)を生産する形質転換体、大腸菌(E.coli)JM109(pNCP1)を1mM IPTG入りLB−カナマイシン培地10Lに植菌し、ジャーファーメンターを用いて、通気量1L/min、攪拌速度600rpmの条件で、30℃、24時間攪拌培養した。得られた培養液10Lを7000rpm、10分間遠心分離して集菌し、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1Lに懸濁した。その後、超音波により菌体を破砕し、10,000rpm、10分の遠心により上清を回収し、粗酵素液とした。この粗酵素液を60℃、30分熱処理を行い、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で10倍希釈後、10,000rpm、10分の遠心により上清を回収する。これを限外膜AIP−2013(旭化成製)で5mM EDTA、20mM Tris−HCl(pH8.8)に透析し、500mlに濃縮する。その後、5mM EDTA、20mM Tris−HCl(pH8.8)で平衡化した200mlのQAE−Sephadex A−50に懸濁し、ろ液と200mlの5mM EDTA、20mM Tris−HCl(pH8.8)で洗いこんだものを活性画分として回収する。回収した本発明オキシダーゼ(R1)の比活性は4.0U/A280であった。
得られた本発明オキシダーゼ(R1)の理化学的性質は、下記の通りであった。
(1)作用
前述した酵素活性の測定方法により、基質としてコレステロールに対する反応を確認した。
(2)示適pH
緩衝液として、100mM酢酸緩衝液(pH5.5〜6.0)、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0〜8.22)、100mMTris−HCl緩衝液(pH7.58〜9.5)、100mM NaHCO−NaOH緩衝液(pH9.43〜11.0)を用い、夫々のpHにおいて、温度37℃にて酵素反応を行った結果、その相対活性は、図1に示す通りであった。図1より、本発明オキシダーゼの示適pHは6.5〜8.0であることが判かった。
(3)作用適温の範囲
前述の活性測定法における反応液と同一組成よりなる反応液を用い、種々の温度にて本酵素の活性測定を行った結果、図2に示す通りであった。図2より、本発明オキシダーゼの作用適温の範囲は、55〜65℃であった。
(4)安定pH範囲
緩衝液として、100mM酢酸緩衝液(pH3.5〜6.0)、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0〜8.22)、100mMTris−HCl緩衝液(pH7.58〜9.5)、100mM NaHCO−NaOH緩衝液(pH9.43〜11.0)を用い、夫々のpHにおいて、25℃で20時間処理した後、本発明オキシダーゼの残存活性を測定した結果、図3に示す通りであった。図3より、安定pH範囲は、pH3.5〜8.5であった。
(5)熱安定性
100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を用いて、各温度で15分間処理した場合の熱安定性の結果は、図4に示す通りであり、本発明オキシダーゼは、70℃付近まで安定であった。
(6)分子量
常法により、マルチゲル10/20(第一科学薬品社製)を用いるSDS−PAGE法により分子量を求めた。約60,000であった。
(7)界面活性剤耐性
もとのバークホルデリア セパシア(Burkholderia cepacia)菌株ST−200由来のコレステロールオキシダーゼ(CHO(WT))と界面活性剤に対する安定性を比較した。それぞれ2%の界面活性剤を含む0.2%牛血清アルブミン入り100mM MES−NaOH緩衝液(pH7.0)と2U/mlのコレステロールオキシダーゼを等量混合し、37℃で24時間保存したものである(表3)。
Figure 0005240970
本発明オキシダーゼの示適pHを示す図。 本発明オキシダーゼの作用適温の範囲を示す図。 本発明オキシダーゼの安定pH範囲を示す図。 本発明オキシダーゼの熱安定性を示す図。

Claims (2)

  1. 以下の(a)又は(b)のコレステロールオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
    (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (b)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  2. 以下の(a)又は(b)のDNAからなる遺伝子。
    (a)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA。
    (b)配列番号6で表される塩基配列からなるDNA。
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