JP5329263B2 - スラブ軌道構造及びその築造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、低コストで、温暖地や寒冷地域の耐久性と易メンテナンス性に優れた、鉄道の軌道敷設におけるスラブ軌道構造およびその築造方法に関する。
鉄道において、軌道敷設は一般に道床にバラストを用いる有道床軌道が使用されていたが、近年、列車の高速化や通行回数の増加により道床破壊や保線作業の労力と経費が増加し、それに対応するために軌道のメインテナンスフリー化を主な目的としてスラブ軌道が開発され、既に新幹線や在来線に用いられている。
スラブ軌道の築造方法として、特許文献1では、路盤コンクリートと軌道スラブの間に充填材を注入したロングチューブを設置するに際し、路盤側及び/または軌道スラブ側に凹凸を設けてロングチューブから滲み出した注入材が凹凸に埋まって固化し一体化を増す方法が提案されている。しかしながら、この方法では、下部凹部の脱気が不充分になり、充填材の注入量が不足する問題があった。また、凹凸面を埋めるほど大量の充填材が滲み出るのであれば、注入袋の側面からも同様に注入材が漏れ出し、高さを保つに必要なロングチューブ中の充填材が不足して固化時に均一高さを維持できなくなる可能性と共に、路盤コンクリートにまで流れ出て、路盤を汚す原因にもなる問題があった。
特許文献1の下部凹部の脱気が不充分になり充填材の注入量が不足する問題を解決する方法として、特許文献2では、コンクリート床版または堅固な安定処理土路盤上に多孔性のアスファルト混合物を敷設し、その上に配置する軌道スラブを開口部を有する枠形軌道スラブとし、この枠形軌道スラブを一定の高さに保持した状態で、その下部と開口部に低粘性の常温施工型セメント瀝青系充填材を注入し、硬化させて、枠形軌道スラブを一体にして一定高さに支持すると共に縦、横の水平方向を固定し、枠形軌道スラブ充填材、アスファルト混合物およびコンクリート床版または安定処理土路盤を全一体とするスラブ軌道の構築方法が提案されている。
この方法では、路盤上に設置された多孔性アスファルト混合物に充填材が良く浸透して剥離し難い効果があり、また、側面から多量に滲み出した充填材は多孔性アスファルト混合物に滲み込むので路盤を汚す問題が軽減される効果を有するが、特許文献1の他の問題である側面からの滲み出し過ぎによりロングチューブの均一高さを維持できなくなる可能性は解決されていない。また、多孔性アスファルト混合物に対する冬期の低温によるクラック発生原因と類推されているフラース脆化温度や、滲み込み水の結露による膨張破壊が配慮されていない。
バラストを使用しない他の軌道敷設方法として、特許文献3では、路盤と軌道スラブの間を多数の圧縮コイルバネで接続する方法が提案されている。この方法では、防振効果は期待できるが、コストが高くつく問題と、金属バネの疲労による消耗がメンテナンスの煩雑さを招く可能性があり、安価なコストと、易メンテナンス性には課題が残る。
また、特許文献4では、路盤に軌道スラブを填め込む凹部を設け、凹部下面にクッション材を設置して軌道スラブを填め込む方法が提案されている。この方法で用いるクッション材は、ゴム、マット、ブロック等の防振具で振動と騒音を防止するが、幅方向のズレ防止やメンテナンスに関する提案は全くなされていない。上記防振具がゴムやマットの場合、消耗が激しくなるが、消耗した場合、線路を切り外してから、填め込んだスラブ軌道を抜き出す方法でしか防振具を交換する方法がないので、易メンテナンス性には課題が残る。
従って、従来の方法では、低コストで、耐久性と易メンテナンス性を同時に満足するスラブ軌道構造は得られていないのが現状である。
特開平1−271501号公報 特開平3−137303号公報 特開平8−85903号公報 特開2004−332275号公報
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、低コストで、耐久性と易メンテナンス性に優れたスラブ軌道構造およびその築造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、特別に作られたロングチューブ内を特定のセメントアスファルト混合物で充填し、ロングチューブ側面からのアスファルトの滲み出しを制御することによって、低コスト、易メンテナンス性で、且つ、耐久性を同時に満足できる、優れたスラブ軌道構造を得られることを知見し、本発明の完成に到達した。
即ち、本発明は、コンクリート床版またはその上に設けた路盤コンクリート上に、セメントアスファルト混合物を注入したロングチューブを介して、軌道スラブを位置決めして設置し、この軌道スラブ上にレールを敷設したスラブ軌道構造において、ロングチューブ側面がアスファルトで完全に被覆されていることを特徴とするスラブ軌道構造である。
本発明のスラブ軌道構造の好ましい態様は、以下の(1)〜(6)の通りである。
(1)ロングチューブ側面のアスファルト被覆が、注入したセメントアスファルト混合物から滲み出したアスファルトである。
(2)ロングチューブが、50〜150cc/cm・秒の通気度の交絡処理されていない長繊維不織布から構成され、ロングチューブに注入するセメントアスファルト混合物のフロータイムが、16〜28秒である。
(3)セメントアスファルト混合物の滲み出し固形分率が0.05〜0.30重量%である。
(4)長繊維不織布が50〜110g/mの目付及び1.2〜3.0dtexの繊維径を有する。
(5)長繊維不織布が、10〜30%の圧着面積を有する、圧着処理されたスパンボンド不織布である。
(6)長繊維不織布が、耐光剤を0.01〜5重量%含有する繊維で構成されている。
また、本発明は、コンクリート床版またはその上に設けた路盤コンクリート上に、セメントアスファルト混合物を注入したロングチューブを介して、軌道スラブを位置決めして設置し、この軌道スラブ上にレールを敷設するスラブ軌道構造の築造方法において、軌道スラブがレールを支える部分の下面に、通気度50〜150cc/cm・秒の交絡処理されていない長繊維不織布で構成されたロングチューブを設置し、ロングチューブにフロータイム16〜28秒のセメントアスファルト混合物を注入充填し、注入したセメントアスファルト混合物から滲み出したアスファルトによってロングチューブ側面を完全に被覆することを特徴とするスラブ軌道の築造方法である。
本発明のスラブ軌道構造の築造方法の好ましい態様は、以下の(1)〜(3)の通りである。
(1)セメントアスファルト混合物の滲み出し固形分率が0.05〜0.30重量%である。
(2)長繊維不織布が、10〜30%の圧着面積を有する、圧着処理されたスパンボンド不織布である。
(3)長繊維不織布が、耐光剤を0.01〜5重量%含有する繊維で構成されている。
本発明のスラブ軌道構造は、軌道スラブと路盤コンクリートの間に介在するロングチューブの側面をアスファルトで完全に被覆しているので、クラーク脆化によると類推されるヒビ割れ防止効果が極めて高い。さらに、剛体と剛体に挟まれた低ガラス転移点温度物質特有の機能として、ロングチューブを完全に取り囲むアスファルトが制振効果を発現できるので、騒音と振動を低減する効果も付与できる。
この効果付与に必要なアスファルトのみを滲み出させる量を、ロングチューブを構成する素材の濾過性能で制御し、素材の通気度制御で内部の気泡をほぼ除去してセメントアスファルト混合物の注入斑を防止できるので、軌道スラブの高さ保持に必要な注入量が十分確保され、高さ調整の補修もほとんど必要なくなる利点があり、シンプルな構造のため設置の煩雑さも少なく、設置コストも安価となる。また、ロングチューブは、セメントアスファルトの補強材としての機能も発現して、堅牢な一体構造を長期にわたり維持できるため、易メンテナンス性も付与でき、車両の騒音と振動を低減する効果も付与できる。
このように、本発明のスラブ軌道構造により、低コストで、騒音と振動を低減した、耐久性と易メンテナンス性を満足する鉄道の軌道敷設の提供が可能となる。さらに、ロングチューブの長期にわたる形態安定性が安価に保持できるので、安全コストの低減化と軌道の信頼性向上効果を提供できる。
本発明のスラブ軌道構造の完成状態を示す斜視図である。 ロングチューブを装着した状態の一部拡大斜視図である。
以下、本発明のスラブ軌道構造について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のスラブ軌道構造の一例の完成状態を示す斜視図、図2は、ロングチューブを装着した状態の一部拡大斜視図である。
図において、1はコンクリート床版であり、盛土、トンネル及び橋梁等の表層である。2は路盤コンクリートであり、上部中央に溝3が形成されている。この路盤コンクリート2の溝3にロングチューブ4が敷かれる。5は軌道スラブであり、高さ調整ジャッキ等を用いて軌道スラブ5の高さと中心線の調整を行った後、ロングチューブ4の一方に設けた注入口4aからセメントアスファルト混合物6をロングチューブ4の隅々まで充填するように注入し、硬化後に軌道スラブ5から突出している端部を切り取って軌道スラブの支持材とする。セメントアスファルト混合物6は、ロングチューブ5を構成する不織布の網目を通って全周からセメントアスファルト混合物6の一部を滲み出すと共にロングチューブ内の空気を排出しながら充填される。7は、軌道スラブ5を位置決めするためにコンクリート床版1に突出させた係止突起であり、軌道スラブ5の端部に設けた係止凹部を係止して位置決めする。そこでは、係止突起7の周囲、軌道スラブ5、路盤コンクリート2及びコンクリート床版1の隙間に漏れ止め工を施し、充填剤を注入、固化させて、これらを全一体に固定する。
路盤コンクリート2としては、コンクリート床版1上に打設した現場打ちコンクリートまたはプレキャストコンクリートを用い、軌道スラブ5のレール直下部分を二本の帯状体で支える形状と寸法を有するものが好ましく、無筋コンクリート、鉄筋コンクリート、鉄網入りコンクリートもしくはプレストレストコンクリート等の単一材料または合成材料が使用できる。軌道スラブ5としては、路盤コンクリート2と同様の材料を用いることができる。また、その形状は必ずしも枠形である必要はなく平板状であってもよい。
本発明のスラブ軌道構造では、ロングチューブ側面がアスファルトで完全に被覆されていることを特徴とする。その方法としては、ロングチューブ側面をアスファルト乳剤もしくは加熱流動化したアスファルトで直接塗布して被覆する方法、またはロングチューブに注入したセメントアスファルト混合物をロングチューブの内側から滲み出させてロングチューブ側面をアスファルトで被覆する方法を採用することができる。ここで、ロングチューブ側面とは、スラブ軌道とコンクリート床版またはその上に設けた路盤コンクリート面との間のロングチューブ表面が外部の紫外線に暴露される露出面を言う。
ロングチューブ側面にアスファルトを塗布する方法は、軌道スラブとコンクリート床版またはその上に設けた路盤コンクリート面との間にロングチューブを設置して、所定量のコンクリートアスファルト混合物を注入した後にロングチューブの側面にアスファルトを直接塗布して含浸させることによって行うことができる。塗布する厚みは、ロングチューブ側面が完全に被覆されていれば特に制限されないが、塗布するアスファルトの厚みが大きい方が凍結によるロングチューブの損傷が少なくなるので好ましい。本発明での好ましい塗布厚みは0.1〜3mm、より好ましくは0.5〜3mmである。塗布するアスファルトは特に制限されないが、加熱アスファルトに比べてアスファルト乳剤の方がロングチューブ内に含浸させやすいので、アスファルト乳剤を使用することが望ましい。
一方、ロングチューブの内側から滲み出したアスファルトで被覆する方法は、軌道スラブとコンクリート床版またはその上に設けた路盤コンクリート面との間にロングチューブを水平及び左右に位置決めして設置し、ロングチューブに所定量のセメントアスファルト混合物を注入しつつ、注入圧力を調整して、時間を掛けて、アスファルト乳剤をロングチューブ側面から少しずつ滲みださせてロングチューブ側面をアスファルトによって完全に被覆することによって行うことができる。設置時に一気に滲ませると、固化までに更に滲み出すので、必要なアスファルト乳剤量がロングチューブ内で少なくなり、セメントは硬くなりすぎるので好ましくない。滲み出しは、2〜3日を目安に、使用するロングチューブ素材と注入圧力とセメントアスファルト混合物の組成で調整する。
ロングチューブは、強度があり、注入した混合物が容易に漏れ出ない、安価な、交絡処理されていない長繊維不織布を用いることが好ましい。交絡処理した長繊維不織布や交絡処理した短繊維不織布は、注入物がすぐに流出するので好ましくない。また、高密度の織布も同様の機能があるが、価格が高くつくので好ましくない。
ロングチューブを構成する長繊維不織布の素材は、特に限定されないが、品質の安定性と、軽量化しても必要な強力と寸法安定性を確保でき、注入セメントアスファルトの保持が可能で、且つ安価な、ポリエステル長繊維不織布が好ましく、ポリエチレンテレフタレート長繊維不織布が特に好ましい。
ロングチューブを構成する長繊維不織布の品質は、特に限定されないが、注入するセメントアスファルト混合物が十分充填されるのに必要な脱気ができて、固形分が漏れ出さない濾過分離機能が必要である。具体的には、ロングチューブを構成する長繊維不織布の通気度は50〜150cc/cm・秒であることが好ましい。長繊維不織布の通気度が50cc/cm・秒未満では、セメントアスファルト混合物を注入する際、脱気が十分できずに充填が不充分になる場合があり、好ましくない。150cc/cm・秒を越えると、流動抵抗と圧損で充填していく際に、圧損がかかりにくくなりロングチューブ内に均一に注入できなくなるので好ましくない。特に好ましい通気度は、アスファルトの滲み出しによりロングチューブ側面をアスファルトで完全に被覆する場合、90〜120cc/cm・秒である。
ロングチューブを構成する長繊維不織布の上記通気特性の制御は、構成繊維の目付及び繊維径などによって行うことができる。長繊維不織布の好ましい目付は50〜110g/m、特に65〜95g/mである。長繊維不織布の目付が50g/m未満では、力学特性が劣る場合があり好ましくない。目付が110g/mを越える場合は、セメントアスファルト混合物の側面への滲み出しが不充分になる場合があり好ましくない。また、長繊維不織布を構成する繊維の好ましい繊維径は1.0〜4.0dtex、特に1.2〜3.0dtex、さらに1.5〜2.5dtexである。長繊維不織布を構成する繊維の繊維径は、1.0dtex未満では、セメントアスファルト混合物の側面への滲み出し性が不充分になる場合があり、4.0dtexを超えるとセメントアスファルト混合物の側面への滲み出しが過剰となる場合があり好ましくない。
ロングチューブを構成する長繊維不織布は、圧着処理されたスパンボンド不織布であることが好ましい。圧着処理により、貫通孔を無くしてセメントアスファルト混合物の滲み出しを斑なく均一化でき、更には、圧着点で構成繊維が固定され、強固な繊維構造物となりロングチューブの強度が向上して、軌道構造の耐久性を向上できる。また、長繊維不織布は10〜30%の圧着面積を有することが好ましい。圧着面積が10%未満では、力学特性が劣る場合があり、好ましくなく、30%を越えると、セメントアスファルト混合物の側面への滲み出し性が不充分になる場合があり好ましくない。特に好ましい圧着面積は15〜25%である。
ロングチューブに注入されるセメントアスファルト混合物は、セメント/アスファルト/細骨材を含有し、それぞれの混合物中の固形分の含有重量比率は0.8〜1.1/0.9〜1.2/1.8〜2.2であることが好ましい。セメント成分の含有比率が0.8未満では、セメント混合物の強度が劣り、1.1を越えると弾性係数が高くなり脆くなる。アスファルト成分はアスファルト乳剤として添加されるが、水分が抜けて固まると弾性体として靭性を持つ。アスファルト成分の含有比率が0.9未満では、弾性係数が高くなり脆くなり、1.2を越えると、セメントアスファルト硬化体の強度が低下する。細骨材成分の含有比率が1.8未満では、硬化体が収縮し易くなり、2.2を越えると材料分離の発生や貧配合になり好ましくない。特に好ましいセメント/アスファルト/細骨材の固形分の含有重量比率は、0.8〜1.05/0.92〜1.15/1.85〜2.15である。セメントアスファルト混合物の上記三成分以外の混合物としては、混和剤、樹脂(ST乳剤)、水、AE剤、アルミニウム粉末、消泡剤を含有してもよいが、固形物としては微量である。
ロングチューブに混入されるセメントアスファルト混合物のフロータイムは、16〜28秒であることが好ましい。フロータイムが16秒未満であると、粘性が低下して材料分離が発生し易くなり、またコンクリートアスファルト混合物が側面から滲み出し過ぎる場合がある。28秒を越えると、充填抵抗が大きくなり作業効率の低下とコンクリートアスファルト混合物が側面から滲み出し難くなり好ましくない。
また、セメントアスファルト混合物の滲み出し固形分率は、0.05〜0.30重量%であることが好ましい。この滲み出し固形分率は、ロングチューブの素材、セメントアスファルト混合物の組成や注入圧力などによって制御することができる。滲み出し固形分率が0.05重量%未満であると、側面をセメントアスファルト混合物の滲み出しで充分被覆できない場合があり、0.30重量%を越えると、側面をセメントアスファルト混合物の滲み出しが過剰となり、ロングチューブ内への充填が不良となる場合がある。特に好ましい滲み出し固形分率は0.1〜0.2重量%である。
ロングチューブの耐候性を向上するためには、ロングチューブ側面が耐光処理されていることが好ましい。耐光処理されていない場合、ロングチューブが劣化して、注入固化されたセメントアスファルト混合物を補強被覆していた布帛が脱落して、注入固化したセメントアスファルトの露出面も劣化脱落しやすくなり、メンテナンス必要期間が短くなるので、好ましくない。耐光処理としては、不織布を構成する繊維の耐光性を向上させる方法、ロングチューブ側面を含む表面を耐光性樹脂で被覆する方法、前述のロングチューブ側面をアスファルトで完全に被覆する方法などを採用することができる。
不織布の構成繊維の耐光性を向上させる方法としては、構成繊維に耐光剤を0.01〜10重量%混入して繊維化する方法を挙げることができる。特に好ましい耐光剤の混入量は2〜5重量%である。耐光剤の混入量が上記範囲未満であると、耐光性の向上が少なくなり、上記範囲を越えると、力学特性が低下する場合がある。
耐光剤は、紫外線吸収剤と光安定剤を主成分として併用したものが好ましい。耐光性の観点から、紫外線吸収剤はジフェニルアクリレート系のものを使用し、光安定剤はヒンダートアミン系のものを使用することが好ましい。例えば、紫外線吸収剤としては、アクリル酸−2−シアノ−3,3−ジフェニル−2,2ビス([2−シアノ−1−オキソ−3,3−ジフェニル−2−プロペニル]オキシ)メチル)−1,3プロパンジイル(市販品としては、BASF社のUvinul 3030)が挙げられ、光安定剤としては、繰返し数3500のヒンダードアミンオリゴマー(市販品としては、BASF社のUvinul5050H)が挙げられる。耐光剤中の紫外線吸収剤/光安定剤の重量比率は2/1〜3/1が好ましい。
ロングチューブ側面を含む表面を耐光性樹脂で被覆する方法としては、例えば、セメントアスファルト混合物をロングチューブに注入後に、露出するロングチューブ側面にアクリル系耐光性塗料などを塗布する方法などが挙げられる。
上記のような耐光処理を行うと、ロングチューブ側面の露出部が、強エネルギーサンシャインフェドメーター照射処理時間152時間後でも縦方向の強力を1N/5cm・目付以上に維持することができる。従って、耐光処理していない軌道構造でのロングチューブ側面の耐久性が従来2〜3年であったのに比べて、このようにロングチューブ側面を耐光処理した軌道構造では、ロングチューブ側面補修サイクルを4年以上に延ばすことができる効果を有する。
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例及び比較例中の特性値は以下の方法で評価した。
(1)ロングチューブ不織布の目付
JIS−L−1906−5.2に準拠して、ロングチューブを縫製する前の不織布より、試料を採取して求めた、単位面積当たりの質量を目付として示す。
(2)ロングチューブ不織布の通気度
JIS−L−1906−5.8a)フラジール形法(JIS−L−1096−8.27.1)に準拠して、ロングチューブを縫製する前の不織布より、試料を採取して測定した値を通気度として示す。
(3)不織布の圧着面積
任意の20箇所で30mm角に裁断し、SEMにて50倍の写真を撮る。撮影写真をA3サイズに印刷して圧着単位面積を切り抜き、面積(S0)を求める。次いで圧着単位面積内において圧着部のみを切り抜き圧着部面積(Sp)を求め、圧着面積率(P)を算出する。圧着面積は20点の測定の平均値で算出する。
P=Sp/S0
(4)セメントアスファルト混合物のフロータイム
セメントアスファルト混合物を、J10ロートという逆三角形の筒(640ml)で流下させて測定したセメントアスファルト混合物の流化秒数をフロータイム(T:秒)とする。
(5)セメントアスファルト混合物の滲み出し固形分率
セメントアスファルト混合物10kgを、ロングチューブ基布上にのせた後、セメントアスファルト混合物をロングチューブで包み込むようにして持ち上げ24時間つり下げ、その直下に予め重量を測定したトレーを設置した。放置後、ロングチューブの直下に垂下した滲み出し物を、105℃*24時間加熱真空乾燥した後で重量(Wi:kg)を測定した。処置前後の重量差をセメントアスファルト混合物10kgで除し、滲み出し固形分率(W:%)とした。3回の測定の平均値で示す。
W(%)=100×[(Wi)/10]
(6)ロングチューブの被覆状態
築造3日後に、築造したスラブ軌道構造のロングチューブの側面外側を観察し、被覆状態を目視判定で以下の基準で評価する。10回の測定の平均値を四捨五入する。
完全に被覆されている:◎、90%以上被覆されている:○、80%以上被覆されている:△、80%未満の被覆:×
(7)ロングチューブの充填状態
築造3日後にスラブ軌道構造のスラブをラフタークレーンで吊り上げてロングチューブから剥離する。ロングチューブ表面に透明なビニールシートを敷き、空隙箇所をトレースする。次に、空隙部分のビニールシートを切り取って質量を測定して、次式によっててん充率を求める。
てん充率(%)={1−(B/A+π×0.252×n/C)}×100

式中、A;軌道スラブ全面のビニールシート質量(g)
B;10mm以上の空隙部分のビニールシート質量(g)
n;10mm以下の空隙の個数
C;軌道スラブの全面積(cm
てん充率の測定結果を以下の基準で評価する。
てん充率100%:◎、てん充率90%以上:○、てん充率80%以上:△、てん充率80%未満:×
(8)1〜3年目劣化状態
屋外にて、路盤コンクリートを設置し、軌道スラブ下にロングチューブを入れ、ロングチューブにコンクリートアスファルト混合物を注入して固化させた後、設置した軌道構造体を屋外で3年間経時変化させ、目視判定して、ロングチューブ表面の劣化状態を下記基準で評価した。
劣化評価基準:劣化が認められない:◎、表面に少し劣化あり、脱落なし形態保持OK:○、劣化あり、脱落少しあり、形態保持OK:△、劣化あり、脱落中〜大、形態崩れあり:×。但し、アスファルト部分が脱落していない場合:◎。
実施例1
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを、常法により、乾燥して、285℃にてスパンボンド法で紡糸し、繊度2.4dtex、目付85g/mのウエッブを得た。得られたウエッブを圧着面積15%となるようにエンボス加工して、スパンボンド長繊維不織布(SBと略す)を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
次いで、SBを折り畳んで周りおよび注入口を縫製してロングチューブを作成した。作成したロングチューブを用いて、路盤コンクリートと軌道スラブの間の必要位置をセットしてロングチューブを設置し、フロータイム20秒のセメントアスファルト混合物(セメント:18.7重量%、混和材:2.1重量%、アスファルト乳剤:29.0重量%、樹脂(ST乳剤):4.1重量%、細骨材:41.4重量%、水:4.1重量%、AE剤0.5重量%、及び、微量のアルミ粉末と消泡剤を混合して作製したセメントアスファルト混合物)をヘッド差60cmにてロングチューブに注入して、所定の充填状態とした後、注入口を閉めて、注入セメントアスファルトの硬化後、初期状態を評価、以降、経時変化を観察した結果を表1に示す。
実施例1は、セメントアスファルト混合物の被覆、充填状態とも良好であり、ロングチューブは、経時変化3年でもほとんど劣化しなかった。
実施例2
目付を100g/mとした以外、実施例1と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表1に示す。
実施例2は、セメントアスファルト混合物の被覆、充填状態とも良好であり、ロングチューブは、経時変化3年でもほとんど劣化しなかった。
実施例3
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートに紫外線吸収剤(BASF社製UVINUL3030)3.0重量%、光安定剤(BASF社製UVINUL5050H)1.0重量%を添加し、目付を90g/mとした以外、実施例1と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表1に示す。
実施例3は、セメントアスファルト混合物の被覆、充填状態とも良好であり、ロングチューブは、経時変化3年でも劣化しなかった。
実施例4
紫外線吸収剤(BASF社製UVINUL3030)1重量%、光安定剤(BASF社製UVINUL5050H)0.5重量%を添加した以外、実施例3と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表1に示す。
実施例4は、セメントアスファルト混合物の被覆、充填状態とも良好であり、ロングチューブは、経時変化3年でも劣化しなかった。
実施例5
注入したセメントアスファルト混合物の水分を調整して、フロータイムを17秒とした以外、実施例1と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表1に示す。
実施例5は、セメントアスファルト混合物の被覆、充填状態とも良好であり、ロングチューブは、経時変化3年でもほとんど劣化しなかった。
実施例6
注入したセメントアスファルト混合物の水分を調整して、フロータイムを26秒とした以外、実施例1と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表1に示す。
実施例6は、セメントアスファルト混合物の被覆、充填状態とも良好であり、ロングチューブは、経時変化3年でもほとんど劣化しなかった。
実施例7
繊度を2.2dtexとした以外、実施例1と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表1に示す。
実施例7は、セメントアスファルト混合物の被覆、充填状態とも良好であり、ロングチューブは、経時変化3年でもほとんど劣化しなかった。
実施例8
目付を55g/m、エンボスでの圧着面積を25%とした以外、実施例7と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表1に示す。
実施例8は、セメントアスファルト混合物の被覆、充填状態とも良好であり、ロングチューブは、経時変化3年でもほとんど劣化しなかった。
実施例9
紫外線吸収剤(BASF社製UVINUL3030)0.02重量%、光安定剤(BASF社製UVINUL5050H)0.01重量%を添加した以外、実施例7と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表1に示す。
実施例9は、セメントアスファルト混合物の被覆、充填状態とも良好であり、ロングチューブは、経時変化3年でも劣化しなかった。
比較例1
繊度を2.0dtex、目付を40g/mとした以外、実施例1と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表2に示す。
比較例1は、目付が低く、通気度が高く、滲み出し率も高いので、ロングチューブ側面への滲み出しが多くなり過ぎて、被覆はされるが、被覆状態と充填状態が劣る、好ましくない軌道構造であった。初期状態が悪いため、経時評価は実施しなかった。
比較例2
繊度を1.5dtex、目付を120g/mとした以外、実施例1と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表2に示す。
比較例2は、目付が高く、繊度が細くなり、通気度は低く、滲み出し率が少ないため、ロングチューブ側面への滲み出しが少なく、被覆不良で充填状態も不充分な、耐久性がやや劣る、好ましくない軌道構造であった。
比較例3
繊度を1.0dtexとした以外、実施例1と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表2に示す。
比較例3は、繊度が細くなり、通気度は低く、滲み出し率が小さいため、ロングチューブ側面への滲み出しが少なく、被覆不良で充填状態も不充分な耐久性がやや劣る、好ましくない軌道構造であった。
比較例4
繊度を3.5dtexとした以外、実施例1と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表2に示す。
比較例4は、繊度が高くなり、通気度は高く、滲み出し率が大きいため、被覆状態と充填状態が好ましくなく、耐久性も不充分な軌道構造であった。
比較例5
目付を90g/m、注入モルタルアスファルト混合物の水分を調整してフロータイムが10秒のものを使用した以外、実施例1と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表2に示す。
比較例5は、通気度と滲み出し率とも好ましい値を有するが、使用した注入モルタルアスファルト混合物のフロータイムが小さいので、被覆状態と充填状態が不良で、耐久性も不充分な軌道構造であった。
比較例6
注入モルタルアスファルト混合物の水分を調整してフロータイムが35秒のものを使用した以外、比較例5と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表2に示す。
比較例6は、通気度と滲み出し率とも好ましい値を有するが、使用した注入モルタルアスファルト混合物のフロータイムが大きいので、滲み出しが悪く被覆状態が不良で、ロングチューブへの充填状態も劣る、耐久性がやや劣る軌道構造であった。
比較例7
比較例6で得たウエッブをエンボス加工せずに、ペネ60でニードルパンチした以外は同一条件で得た不織布を用い、注入モルタルアスファルト混合物の水分を調整してフロータイムが20秒のものを使用した以外、比較例6と同様にして長繊維不織布及びロングチューブを作成した。不織布の特性及びロングチューブを用いた軌道構造の評価結果を表2に示す。
比較例7は、ニードルパンチ不織布のため、通気度と滲み出し率がともに高くなるので、滲み出し過ぎて、被覆状態が不良で、ロングチューブへの充填状態も劣る、好ましくない軌道構造であった。このため、経時評価は実施しなかった。
Figure 0005329263
Figure 0005329263
本発明のスラブ軌道構造は、低コストで、耐久性と易メンテナンス性に優れているので、鉄道の軌道敷設において極めて有用である。

Claims (12)

  1. コンクリート床版またはその上に設けた路盤コンクリート上に、セメントアスファルト混合物を注入したロングチューブを介して、軌道スラブを位置決めして設置し、この軌道スラブ上にレールを敷設したスラブ軌道構造において、ロングチューブ側面がアスファルトで完全に被覆されていることを特徴とするスラブ軌道構造。
  2. ロングチューブ側面のアスファルト被覆が、注入したセメントアスファルト混合物から滲み出したアスファルトであることを特徴とする請求項1に記載のスラブ軌道構造。
  3. ロングチューブが、50〜150cc/cm・秒の通気度の交絡処理されていない長繊維不織布から構成され、ロングチューブに注入するセメントアスファルト混合物のフロータイムが、16〜28秒であることを特徴とする請求項1または2に記載のスラブ軌道構造。
  4. セメントアスファルト混合物の滲み出し固形分率が0.05〜0.30重量%であることを特徴とする請求項3に記載のスラブ軌道構造。
  5. 長繊維不織布が、50〜110g/mの目付及び1.2〜3.0dtexの繊維径を有することを特徴とする請求項3または4に記載のスラブ軌道構造。
  6. 長繊維不織布が、10〜30%の圧着面積を有する、圧着処理されたスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のスラブ軌道構造。
  7. 長繊維不織布が、耐光剤を0.01〜5重量%含有する繊維で構成されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のスラブ軌道構造。
  8. 耐光剤がジフェニルアクリレート系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を主成分とすることを特徴とする請求項7に記載のスラブ軌道構造。
  9. コンクリート床版またはその上に設けた路盤コンクリート上に、セメントアスファルト混合物を注入したロングチューブを介して、軌道スラブを位置決めして設置し、この軌道スラブ上にレールを敷設するスラブ軌道構造の築造方法において、軌道スラブがレールを支える部分の下面に、通気度50〜150cc/cm・秒の交絡処理されていない長繊維不織布で構成されたロングチューブを設置し、ロングチューブにフロータイム16〜28秒のセメントアスファルト混合物を注入充填し、注入したセメントアスファルト混合物から滲み出したアスファルトによってロングチューブ側面を完全に被覆することを特徴とするスラブ軌道の築造方法。
  10. セメントアスファルト混合物の滲み出し固形分率が0.05〜0.30重量%であることを特徴とする請求項9に記載のスラブ軌道の築造方法。
  11. 長繊維不織布が、10〜30%の圧着面積を有する、圧着処理されたスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項9または10に記載のスラブ軌道の築造方法。
  12. 長繊維不織布が、耐光剤を0.01〜5重量%含有する繊維で構成されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のスラブ軌道の築造方法。
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