以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明が適用されたクランクシャフト20を備えた内燃機関の概略構成を模式的に示した説明図であって、燃焼荷重(最大荷重)が加わるタイミングの姿勢を示している。
この内燃機関1は、ピストン2のピストンピン3と、クランクシャフト20のクランピン21とが、複数のリンクから構成された複リンク式ピストンクランク機構4によって連結されたものである。
複リンク式ピストンクランク機構4は、ピストン2とクランクシャフト20とを連結するアッパリンク5及びロアリンク6と、アッパリンク5及びロアリンク6の動きを規制するコントロールリンク7と、コントロールリンク7の基端が揺動可能に連結される偏心軸部9を有する制御軸8と、から大略構成されている。
ピストン2は、シリンダブロック10に形成されたシリンダ11内を摺動可能に配置されており、アッパリンク5の一端(図1における上端)にピストンピン3を介して揺動可能に連結されている。
アッパリンク5は、他端(図1における下端)が、第1連結ピン12を介してロアリンク6の一端部に回転可能に連結されている。
ロアリンク6は、その中央部においてクランクシャフト20のクランクピン21に回転可能に取り付けられている。
ロアリンク6の運動を拘束するコントロールリンク7は、一端(図1における上端)が第2連結ピン13を介してロアリンク6の他端部に回動可能に連結され、他端(図1おける下端)が内燃機関本体の一部となるシリンダブロック10に揺動可能に支持されている。コントロールリンク7の他端は、内燃機関の圧縮比の変更のために、その揺動支点14の位置が内燃機関本体に対して変位可能となっている。具体的には、クランクシャフト20と平行に延びた制御軸8を備え、この制御軸8に偏心して設けられた偏心軸部9にコントロールリンク7の他端が回転可能に嵌合している。
この制御軸8には、図示せぬアクチュエータが取り付けられており、このアクチュエータにより制御軸8を回転駆動することによって、揺動支点14の位置が内燃機関本体に対して変位し、クランク角に対するピストン2の行程位置が変化し、ひいては圧縮比が変更されることになる。
図2は、本発明の第1実施形態におけるクランクシャフト20を模式的に示した説明図である。この第1実施形態のクランクシャフト20は、直列4気筒内燃機関に用いられるものであって、4つのクランクピン21と、こららのクランクピン21の両端に配置された合計5つのクランクジャーナル22と、クランクピン21とクランクジャーナル22とを連結するクランクアーム23と、一部のクランクアーム23に一体に形成されたカウンタウエイト24と、を有し、シリンダブロック10に対して各クランクジャーナル22がそれぞれ回転可能に支持されている。
ここで、クランクシャフト20は、図2において最も左側のクランクピン21aが内燃機関1の前端の気筒である第1気筒に対応するものであり、図2において最も右側のクランクピン21dが内燃機関1の後端の気筒である第4気筒に対応し、中央の2つのクランクピン21b、21cが内燃機関1の中間気筒である第2、第3気筒にそれぞれ対応するものである。また、クランクピン21a、21dはクランピン21b、21c対して180°の位相となるよう配列されている。
クランクジャーナル22は、クランクシャフト20前端側から順に(図2における左側から順に)、22a、22b、22c、22d、22eとなっている。
クランクアーム23は、クランクシャフト20前端側から順に(図2における左側から順に)、23a、23b、23c、23d、23e、23f、23g、23hとなっている。
カウンタウエイト24は、クランクアーム23a、23d、23e、23g、23hに対して一体に形成されており、クランクシャフト20前端側から順に(図2における左側から順に)、24a、24b、24c、24d、24eとなっている。
そして、各クランクピン21には、隣接するクランクジャーナル22から油穴25を介して潤滑油が供給されている。この第1実施形態における油穴25は、一端がクランクピン21の外周面に開口し、他端がクランクジャーナル22外周面に開口している。この油穴25によりクランクジャーナル22外周面の潤滑油をクランクピン21の外周面に供給する。クランクジャーナル22外周面には、図示せぬメインギャラリから潤滑油が供給されている。
つまり、クランクピン21aにはクランクジャーナル22aから油穴25aを介して潤滑油が供給されている。クランクピン21bにはクランクジャーナル22bから油穴25bを介して潤滑油が供給されている。クランクピン21cにはクランクジャーナル22cから油穴25cを介して潤滑油が供給されている。クランクピン21dにはクランクジャーナル22dから油穴25dを介して潤滑油が供給されている。尚、図2中の26は、クランクシャフト20の後端に取り付けられたフライホイールである。
ここで、クランクピン21の外周面に油穴25を開口させると、この開口部分に応力集中が生じることになるので、クランクピン21に燃焼荷重が加わるタイミング、すなわち筒内圧荷重最大となるタイミングにおけるクランクピン21の応力分布で、応力が低い位置に油穴25を開口させることが求められる。
そこで、クランクピン21に燃焼荷重が加わるタイミングにおいてクランクピン21に作用する様々な影響を考慮して、油穴25のクランクピン21の外周面の開口位置を決定する。
この第1実施形態の複リンク式ピストンクランク機構4においては、図1及び図3に示すように、クランクピン21の角度が上死点後36°(ATCD36°)が燃焼荷重の加わるタイミングであり、このタイミングにおけるクランクピの荷重の方向は、図1及び図3において矢印Aで示すようように、シリンダ軸線に対して23°傾いた向きとなる。ここで、図1中の矢印Bは燃焼荷重の加わるタイミングで第1連結ピン12に加わる荷重の向きを示し、図1中の矢印Cは燃焼荷重の加わるタイミングで第2連結ピン12に加わる荷重の向きを示している。
クランクピン21に燃焼荷重が作用すると、クランクピン21は燃焼荷重が作用する方向に向かって凸となるような曲げ変形をすることなり、クランクピン21の燃焼荷重が入力される側には圧縮応力が発生し、クランクピン21の燃焼荷重が入力される側と対向する側(反対側)には引っ張り応力が発生し、これらの間の位置が圧縮応力と引っ張り応力の中立位置となる。
つまり、クランクピン21に作用した燃焼荷重によるクランピン21の曲げ変形に対しては、クランクピン21を軸方向視した際に、クランクピン21中心を通り燃焼荷重の入力方向と直交する方向に応力が小さくなる領域である前記中立位置が存在することになる。
そこで、油穴25のクランクピン21外周面の周方向の開口位置は、クランクシャフト20軸方向視で、燃焼荷重が作用するクランクピン21のクランクピン中心を通り、燃焼荷重が最大となるタイミングにおける燃焼荷重のクランクピン21に対する作用方向と直交する直線とクランクピン21の外周面との交点付近となるように設定されている。
このように、燃焼荷重が最大となるタイミングで、クランクピン21に発生する圧縮応力と引っ張り応力の中立位置に、油穴25のクランクピン周方向における開口位置を設定することで、クランクピン21の外周面の油穴25の開口に生じる応力を低減することができる。
また、クランクピン21に燃焼荷重が入力されると、クランクピン21の両端には入力された燃焼荷重に対する反力が作用することなるが、このときクランクピン21の両端に作用する反力の大きさは同じではない。
クランクピン21の配列やクランクピン21とピストンピン3とを連係するロアリンク6やアッパリンク5等のリンク機構の構成や形状、この燃焼荷重と同じタイミングで隣接する気筒に生じる慣性力の影響等によって、燃焼荷重が入力されたクランクピン21の応力分布は変化するが、全体的な傾向としては、燃焼荷重が生じた気筒のクランクピン21に作用する反力は、それ以外のクランクピン21(燃焼荷重が生じていない気筒のクランクピン21)に作用する反力に比べて大きく、かつ燃焼荷重が生じた気筒のクランクピン21の両端に作用する反力は、互いに異なる大きさとなる。
図4及び図5は、燃焼荷重が生じたタイミング、すなわち筒内圧荷重最大となったタイミングにおいて、燃焼荷重が生じた気筒のクランクピン21に作用する荷重Fを基準として、クランクシャフト20のクランクピン21及びクランクジャーナル22に加わる荷重の向きと大きさを模式的に示した説明図であり、図4は内燃機関1の後端の気筒である第4気筒で燃焼荷重が生じたタイミングを示し、図5は内燃機関1の中間気筒である第3気筒で燃焼荷重が生じたタイミングを示している。
図4に示すように、内燃機関1後端の第4気筒で燃焼荷重が生じたタイミングで、クランクピン21dに下向きにFの大きさ荷重が作用するとすると、第3気筒及び第2気筒のクランクピン21c、21bにはそれぞれ下向きに(1/3)Fの大きさの荷重が作用し、第1気筒のクランクピン21aには上向きに(1/3)Fの大きさの荷重が作用する。
また、クランクジャーナル22eには上向きに(171/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル22dには上向きに(387/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル22cには上向きに(125/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル22bには下向きに(24/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル22aには下向きに(61/448)Fの大きさの荷重が作用する。
内燃機関1後端の第4気筒で燃焼荷重が生じたタイミングでは、クランクピン21dの両端には、両側のクランクジャーナル22d、22eからそれぞれ上向きの荷重が作用する。このときのクランクピン21dの一端である内燃機関1前端側の端部にはクランクジャーナル22dから上向きに(387/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクピン21dの他端である内燃機関1後端側の端部にはクランクジャーナル22eから上向きに(171/448)Fの大きさの荷重が作用する。このようにクランクピン21dの両端に作用する荷重は均等ではなく、かつ内燃機関1前端側の端部に作用する荷重が相対的に大きくなることから、第4気筒で燃焼荷重が生じたタイミングにおいて、クランクピン21dの外周面には、クランクピン21dの中央ではなく、クランクピン21dの他端側(図2における右側)に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在することになる。
図6は、油穴25dが形成されていないクランクピン21dおいて、クランクピン21dに作用する燃焼荷重の作用方向に対して直交し、かつクランクピン21dの中心軸を含む平面と交わるクランクピン21dの外周面上の応力分布を示すものであって、縦軸が応力レベル、横軸がクランクピン21の軸方向に沿った位置を表している。この図6からも明らかなように、このようにクランクピン21dの両端に作用する荷重により、クランクピン21dに作用する燃焼荷重の作用方向に対して直交し、かつクランクピン21dの中心軸を含む平面と交わるクランクピン21dの外周面上には、クランクピン21dの中央ではなく、クランクピン21dの他端側に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在する。
そこで、直列4気筒内燃機関の第4気筒に対応するクランクピン21dにおいては、上述した油穴25のクランクピン周方向における開口位置の設定に加えて、クランクピン21dの中央ではなく、もともと応力の低い内燃機関1後端側に偏った位置に、油穴25dのクランクピン21d軸方向における開口位置を設定することで、油穴25dの開口に生じる応力集中を緩和することができる。また、油穴25dの開口における応力集中を緩和できるため、クランクピン21dの軸径を小さくすることによるクランクピン21dの軽量化を図ることや、あるいは、クランクピン21dに作用する燃焼荷重を大きく設定することが可能となる。
尚、直列4気筒の内燃機関1において、クランクシャフト20の全体形状は概ね左右対称であるので、第1気筒に対応するクランクピン21aについては、上述した第4気筒に対応するクランクピン21dと傾向が逆になる。
つまり、内燃機関1前端の第1気筒で燃焼荷重が生じたタイミングでは、クランクピン21aの一端である内燃機関1前端側の端部にはクランクジャーナル22aから上向きの大きさの荷重が作用し、クランクピン21aの他端である内燃機関1後端側の端部にはクランクジャーナル22bから上向きに荷重が作用するが、クランクピン21aの他端にクランクジャーナル22bから作用する荷重の方が、クランクピン21aの一端にクランクジャーナル22aから作用する荷重よりも相対的に大きくなる。
そのため、クランクピン21aの両端に作用する荷重により、クランクピン21aの外周面には、クランクピン21aの中央ではなく、クランクピン21aの一端側に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在する。
詳述すると、クランクピン21aの両端に作用する荷重により、クランクピン21aに作用する燃焼荷重の作用方向に対して直交し、かつクランクピン21aの中心軸を含む平面と交わるクランクピン21aの外周面上には、クランクピン21aの中央ではなく、クランクピン21aの一端側に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在する。
そこで、直列4気筒内燃機関の第1気筒に対応するクランクピン21aにおいては、上述した油穴25のクランクピン周方向における開口位置の設定に加えて、クランクピン21aの中央ではなく、もともと応力の低い内燃機関1前端側に偏った位置に、油穴25aのクランクピン21a軸方向における開口位置を設定すればよい。
次に、直列4気筒の内燃機関1の中間気筒である第3気筒に対応するクランクピン21cについて説明する。
図5に示すように、内燃機関1の第3気筒で燃焼荷重が生じたタイミングで、クランクピン21cに下向きにFの大きさ荷重が作用するとすると、第1気筒及び第4気筒のクランクピン21a、21dにはそれぞれ下向きに(1/3)Fの大きさの荷重が作用し、第2気筒のクランクピン21bには上向きに(1/3)Fの大きさの荷重が作用する。
また、クランクジャーナル22eには上向きに(23/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル22dには上向きに(387/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル22cには上向きに(133/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル22bには上向きに(136/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル22aには上向きに(57/448)Fの大きさの荷重が作用する。
内燃機関1の第3気筒で燃焼荷重が生じたタイミングでは、クランクピン21cの両端には、両側のクランクジャーナル22c、22dからそれぞれ上向きの荷重が作用する。このときのクランクピン21cの一端である内燃機関1前端側の端部にはクランクジャーナル22cから上向きに(133/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクピン21cの他端である内燃機関1後端側の端部にはクランクジャーナル22dから上向きに(387/448)Fの大きさの荷重が作用する。このようにクランクピン21cの両端に作用する荷重は均等ではなく、かつ内燃機関1後端側の端部に作用する荷重が相対的に大きくなることから、第3気筒で燃焼荷重が生じたタイミングにおいて、クランクピン21cの外周面には、クランクピン21cの中央ではなく、クランクピン21cの一端側(図2における左側)に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在することになる。
詳述すると、クランクピン21cの両端に作用する荷重により、クランクピン21cに作用する燃焼荷重の作用方向に対して直交し、かつクランクピン21cの中心軸を含む平面と交わるクランクピン21cの外周面上には、クランクピン21cの中央ではなく、クランクピン21cの一端側に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在する。
そこで、直列4気筒の内燃機関1の第3気筒に対応するクランクピン21cにおいては、上述した油穴25のクランクピン周方向における開口位置の設定に加えて、クランクピン21cの中央ではなく、もともと応力の低い内燃機関1前端側に偏った位置に、油穴25cのクランクピン21c軸方向における開口位置を設定することで、油穴25cの開口に生じる応力集中を緩和することができる。
尚、直列4気筒の内燃機関1において、クランクシャフト20の全体形状は概ね左右対称であるので、第2気筒に対応するクランクピン21bについては、上述した第3気筒に対応するクランクピン21cと傾向が逆になる。
つまり、内燃機関の第2気筒で燃焼荷重が生じたタイミングでは、クランクピン21bの一端である内燃機関1前端側の端部にはクランクジャーナル22bから上向きの大きさの荷重が作用し、クランクピン21bの他端である内燃機関1後端側の端部にはクランクジャーナル22cから上向きに荷重が作用するが、クランクピン21bの一端にクランクジャーナル22bから作用する荷重の方が、クランクピン21bの他端にクランクジャーナル22cから作用する荷重よりも相対的に大きくなる。
そのため、クランクピン21bの両端に作用する荷重により、クランクピン21bの外周面には、クランクピン21bの中央ではなく、クランクピン21bの他端側(図2おける左側)に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在する。
詳述すると、クランクピン21bの両端に作用する荷重により、クランクピン21bに作用する燃焼荷重の作用方向に対して直交し、かつクランクピン21bの中心軸を含む平面と交わるクランクピン21bの外周面上には、クランクピン21bの中央ではなく、クランクピン21bの他端側に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在する。
そこで、直列4気筒の内燃機関1の第2気筒に対応するクランクピン21bにおいては、上述した油穴25のクランクピン周方向における開口位置の設定に加えて、クランクピン21bの中央ではなく、もともと応力の低い内燃機関1後端側に偏った位置に、油穴25bのクランクピン21b軸方向における開口位置を設定すればよい。
また、この第1実施形態においては、ピストンピン3とクランクピン21とが複リンク式ピストンクランク機構4により連結されているので、ピストンピンとクランクピンとがコネクティングロッドで連結された単リンク式のピストンクランク機構の内燃機関に比べて、てこ比により燃焼荷重が増大するため、燃焼荷重が最大となるタイミングにおいて、油穴の開口における応力集中を効果的に低減することができる。
尚、この第1実施形態においては、中間気筒に対応するクランクピン21b、21cに開口する油穴25b、25cのクランクピン21b、21cの中央からのオフセット量は、最前端気筒及び最後端気筒に対応するクランクピン21a、21dに開口する油穴25a、25dのクランクピン21a、21dの中央からのオフセット量に比べて小さくなっている。これは、燃焼荷重が生じた中間気筒に対応するクランクピン21の両端に作用する反力の差分が、燃焼荷重が生じた最前端気筒のクランクピンあるいは燃焼荷重が生じた最後端気筒のクランクピン21の両端に作用する反力の差分よりも相対的に大きくなるからである。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、本発明が直列3気筒内燃機関に適用されたものである。
図7は、直列3気筒内燃機関に適用された場合のクランクシャフト30を模式的に示した説明図である。
クランクシャフト30は、3つのクランクピン31と、こららのクランクピン31の両端に配置された合計4つのクランクジャーナル32と、クランクピン31とクランクジャーナル32とを連結するクランクアーム33と、クランクアーム33に一体に形成されたカウンタウエイト34と、を有し、シリンダブロック10に対して各クランクジャーナル32がそれぞれ回転可能に支持されている。
クランクピン31には、上述した第1実施形態と同様に、複リンク式ピストンクランク機構4のロアリンク6が回転可能に取り付けられている。
ここで、クランクシャフト30は、図7において最も左側のクランクピン31aが内燃機関の前端の気筒である第1気筒に対応するものであり、図7において最も右側のクランクピン31cが内燃機関の後端の気筒である第3気筒に対応し、中央のクランクピン31bが内燃機関の中間気筒である第2気筒にそれぞれ対応するものである。また、各クランクピン31a、31b、31cは、互いに120°の位相となるよう配列されている。
クランクジャーナル32は、クランクシャフト30前端側から順に(図7における左側から順に)、32a、32b、32c、32dとなっている。
クランクアーム33は、クランクシャフト30前端側から順に(図7における左側から順に)、33a、33b、33c、33d、33e、33fとなっている。
カウンタウエイト34は、全てのクランクアーム33に対して一体に形成されており、クランクシャフト30前端側から順に(図7における左側から順に)、34a、34b、34c、34d、34e、34fとなっている。
そして、各クランクピン31には、隣接するクランクジャーナル32から油穴35を介して潤滑油が供給されている。この第2実施形態における油穴35も、一端がクランクピン31の外周面に開口し、他端がクランクジャーナル32外周面に開口している。この油穴35によりクランクジャーナル32外周面の潤滑油をクランクピン31の外周面に供給する。クランクジャーナル32外周面には、図示せぬメインギャラリから潤滑油が供給されている。
つまり、クランクピン31aにはクランクジャーナル32aから油穴35aを介して潤滑油が供給されている。クランクピン31bにはクランクジャーナル32bから油穴35bを介して潤滑油が供給されている。クランクピン31cにはクランクジャーナル32cから油穴35cを介して潤滑油が供給されている。尚、図7中の36は、クランクシャフト30の後端に取り付けられたフライホイールである。
この第2実施形態においても、油穴35のクランクピン31外周面の周方向の開口位置は、上述した第1実施形態と同様の理由から、クランクシャフト30軸方向視で、燃焼荷重が作用するクランクピン31のクランクピン中心を通り、燃焼荷重が最大となるタイミングにおける燃焼荷重のクランクピン31に対する作用方向と直交する直線とクランクピン31の外周面との交点付近となるように設定されている。
図8及び図9は、燃焼荷重が生じたタイミング、すなわち筒内圧荷重最大となったタイミングにおいて、燃焼荷重が生じた気筒のクランクピン31に作用する荷重Fを基準として、クランクシャフト30のクランクピン31及びクランクジャーナル32に加わる荷重の向きと大きさを模式的に示した説明図であり、図8は内燃機関の後端の気筒である第3気筒で燃焼荷重が生じたタイミングを示し、図9は内燃機関の中間気筒である第2気筒で燃焼荷重が生じたタイミングを示している。
図8に示すように、内燃機関後端の第3気筒で燃焼荷重が生じたタイミングで、クランクピン31cに下向きにFの大きさ荷重が作用するとすると、第2気筒及び第1気筒のクランクピン2b、21aにはそれぞれ下向きに(1/6)Fの大きさの荷重が作用する。
また、クランクジャーナル32dには上向きに(175/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル32cには上向きに(360/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル32bには上向きに(20/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル32aには上向きに(37/448)Fの大きさの荷重が作用する。
内燃機関後端の第3気筒で燃焼荷重が生じたタイミングでは、クランクピン31cの両端には、両側のクランクジャーナル32c、32dからそれぞれ上向きの荷重が作用する。このときのクランクピン31cの一端である内燃機関前端側の端部にはクランクジャーナル32cから上向きに(360/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクピン31cの他端である内燃機関後端側の端部にはクランクジャーナル32dから上向きに(175/448)Fの大きさの荷重が作用する。このようにクランクピン21dの両端に作用する荷重は均等ではなく、かつ内燃機関1前端側の端部に作用する荷重が相対的に大きくなることから、第3気筒で燃焼荷重が生じたタイミングにおいて、クランクピン31cの外周面には、クランクピン31cの中央ではなく、クランクピン31cの他端側(図7における右側)に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在することになる。
詳述すると、クランクピン31cの両端に作用する荷重により、クランクピン31cに作用する燃焼荷重の作用方向に対して直交し、かつクランクピン31ac中心軸を含む平面と交わるクランクピン31cの外周面上には、クランクピン31cの中央ではなく、クランクピン31cの他端側に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在する。
そこで、直列3気筒内燃機関の第3気筒に対応するクランクピン31cにおいては、上述した油穴35のクランクピン周方向における開口位置の設定に加えて、クランクピン31cの中央ではなく、もともと応力の低い内燃機関後端側に偏った位置に、油穴35cのクランクピン31c軸方向における開口位置を設定することで、油穴35cの開口に生じる応力集中を緩和することができる。また、油穴35cの開口における応力集中を緩和できるため、クランクピン31cの軸径を小さくすることによるクランクピン31cの軽量化を図ることや、あるいは、クランクピン31cに作用する燃焼荷重を大きく設定することが可能となる。
尚、直列3気筒内燃機関においても、クランクシャフト30の全体形状は概ね左右対称であるので、第1気筒に対応するクランクピン31aについては、上述した第3気筒に対応するクランクピン31cと傾向が逆になる。
つまり、内燃機関前端の第1気筒で燃焼荷重が生じたタイミングでは、クランクピン31aの一端である内燃機関前端側の端部にはクランクジャーナル32aから上向きの大きさの荷重が作用し、クランクピン31aの他端である内燃機関後端側の端部にはクランクジャーナル32bから上向きに荷重が作用するが、クランクピン31aの他端にクランクジャーナル32bから作用する荷重の方が、クランクピン31aの一端にクランクジャーナル32aから作用する荷重よりも相対的に大きくなる。
そのため、クランクピン31aの両端に作用する荷重により、クランクピン31aの外周面には、クランクピン31aの中央ではなく、クランクピン31aの一端側に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在する。
詳述すると、クランクピン31aの両端に作用する荷重により、クランクピン31aに作用する燃焼荷重の作用方向に対して直交し、かつクランクピン31aの中心軸を含む平面と交わるクランクピン31aの外周面上には、クランクピン31aの中央ではなく、クランクピン31aの一端側に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在する。
そこで、直列3気筒内燃機関の第1気筒に対応するクランクピン31aにおいては、上述した油穴35のクランクピン周方向における開口位置の設定に加えて、クランクピン31aの中央ではなく、もともと応力の低い内燃機関前端側に偏った位置に、油穴35aのクランクピン31a軸方向における開口位置を設定すればよい。
次に、直列3気筒の内燃機関の中間気筒である第2気筒に対応するクランクピン31bについて説明する。
図9に示すように、内燃機関の第2気筒で燃焼荷重が生じたタイミングで、クランクピン31bに下向きにFの大きさ荷重が作用するとすると、第1気筒及び第3気筒のクランクピン31a、31cにはそれぞれ下向きに(1/6)Fの大きさの荷重が作用する。
また、クランクジャーナル32cには上向きに(300/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル32bには上向きに(214/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル32aには下向きに(94/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクジャーナル32dには下向きに(1/448)Fの大きさの荷重が作用する。
内燃機関1の第2気筒で燃焼荷重が生じたタイミングでは、クランクピン31bの両端には、両側のクランクジャーナル32b、32cからそれぞれ上向きの荷重が作用する。このときのクランクピン31bの一端である内燃機関前端側の端部にはクランクジャーナル32bから上向きに(214/448)Fの大きさの荷重が作用し、クランクピン31bの他端である内燃機関後端側の端部にはクランクジャーナル32cから上向きに(300/448)Fの大きさの荷重が作用する。このようにクランクピン31bの両端に作用する荷重は均等ではなく、かつ内燃機関後端側の端部に作用する荷重が相対的に大きくなることから、第2気筒で燃焼荷重が生じたタイミングにおいて、クランクピン31bの外周面には、クランクピン31bの中央ではなく、クランクピン31bの一端側(図7における左側)に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在することになる。
詳述すると、クランクピン31bの両端に作用する荷重により、クランクピン31bに作用する燃焼荷重の作用方向に対して直交し、かつクランクピン31bの中心軸を含む平面と交わるクランクピン31bの外周面上には、クランクピン31bの中央ではなく、クランクピン31bの一端側に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在する。
そこで、直列3気筒の内燃機関の第2気筒に対応するクランクピン31bにおいては、上述した油穴35のクランクピン周方向における開口位置の設定に加えて、クランクピン31bの中央ではなく、もともと応力の低い内燃機関前端側に偏った位置に、油穴35bのクランクピン31b軸方向における開口位置を設定することで、油穴35bの開口に生じる応力集中を緩和することができる。
尚、直列3気筒のクランクシャフト30の場合、クランクピン31の配列が120°間隔となっているため、中間気筒となる第2気筒で燃焼荷重が生じたタイミングにおいて、クランクピン31bに作用する燃焼荷重の作用方向に対して直交し、かつクランクピン31bの中心軸を含む平面と交わるクランクピン31bの外周面上には、理論上はクランクピン31bの一端側に偏った位置に応力が小さくなる領域が存在するものの、クランクピン31bの中央からのオフセット量は、クランクピン31a、31cにおけるオフセット量に比べる小さなものとなり、実質的には、クランクピン31bの中央と見なすこともできる。
また、上述した各実施形態においては、直列4気筒内燃機関、直列3気筒内燃機関への適用例を示したが、直列8気筒内燃機関や直列6気筒内燃機関へ適用することも可能である。