JP5856732B2 - プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents
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Description
まず図1に基づき、通常の注型重合で使用される成形型について説明する。
図1に示す成形型10は、レンズの前面(凸面)を形成すべく凹面側に成形面を有する凹面型であるモールド(上型)11、レンズの後面(凹面)を形成すべく凸面側に成形面を有するモールド(下型)12を有し、環状のガスケット13が両モールドの周面を取り囲むことによって内部にキャビティ14が形成されている。上型および下型は、製造治具にて取り扱い可能な非転写面(非使用面17)とキャビティ内の成形体に表面形状を転写するための転写面(使用面16)を有する。この成形型では、注入口部15から注入されたプラスチックレンズ原料液が、ガスケット13の側面に設けられた注入口18からキャビティ14内へ導入され、キャビティ14内で重合反応が行われる。一般に上記構成の成形型は、弾性部材からなるガスケットの開口径よりもわずかに大きい外径を有する2つのガラスモールドを、ガスケットの開口部にねじ込むことにより組み立てられる。キャビティ内の気密性は、ガスケットがモールドを締め付ける力によって確保されることとなる。
この成形型においてキャビティ内で重合収縮が起こると、重合収縮に伴い変形し得る部材は、弾性樹脂からなるガスケットのみであり、ガラス製であるモールドは形状に影響を与えるほどの変化を起こすことはない。ガスケットは重合収縮に追従するようにキャビティ内側に向けて変形するが、その反作用としてモールドを保持している端部では外方向に広がろうとする力が働くためモールドを締め付ける力は減少する。その結果、ガスケット内周面とモールド外周面との間にわずかな隙間が生じることが、泡不良の原因であると本発明者らは推察した。本発明者らの検討によれば、図1に示すように前面が凸面、後面が凹面のレンズを成形するための成形型では、上記泡不良は凹面側において顕著に発生する現象が確認された。これは、形状的な理由から、モールドの締め付け力が減少した際の影響が下型側に顕著に出やすいからであると考えられる。
また、重合収縮に伴う形状不良としては、成形型から離型した成形体の外周側面部(コバ面)に、コバ面中央部が周縁部よりも内側に凹んだ状態となる(くびれが生じる)ことが挙げられる。製品レンズを得るためにはくびれが解消されるように切削加工を行う必要があるため、切削加工により除去される部分はくびれが生じない場合と比べて増えてしまう。したがって、その分廃棄量が増えることとなり環境負荷の増大やコスト増につながる。この点について本発明者らは、成形型をキャビティ内部に引き寄せようとする力を受けて変形する部分がガスケットのみであると、必然的にガスケットの変形量が大きくなるため、大きく変形したガスケットの形状が転写される結果、得られる成形体では外周側面部(コバ面)にくびれが生じてしまうと推察した。
以上の知見に基づき本発明者らは更に検討を重ねた結果、上記構成の成形型において、少なくとも下型をガスケットと同じく弾性樹脂から形成することにより、泡不良および形状不良(コバ面のくびれ)を抑制できることを新たに見出した。これは、重合収縮に伴い下型も変形することによりガスケット内周面と下型外周面との間に隙間が生じることを抑制できることと、ガスケットとともに下型も変形することによりガスケットの変形量が減少することが、上記くびれ発生の抑制につながることによるものと推察される。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
[1]成形型内部のキャビティにプラスチックレンズ原料液を注入し、該キャビティ内で前記プラスチック原料液の重合反応を行うことによりレンズ形状の成形体を得ることを含むプラスチックレンズの製造方法であって、
前記成形型は、2つのモールド、ただし少なくとも一方は弾性樹脂製である、が対向配置され、かつ該2つのモールドの周囲に弾性樹脂製のガスケットが配置されることにより前記キャビティが形成されてなり、
前記成形体は、一方の面が凸面であり、他方の面が凹面であり、
前記凹面を弾性樹脂製モールドの成形面を転写することにより形成することを特徴とする、前記製造方法。
[2] 前記弾性樹脂製モールドは、前記ガスケットを構成する弾性樹脂よりも高弾性の樹脂からなる、[1]に記載のプラスチックレンズの製造方法。
[3]前記弾性樹脂製モールドは、前記ガスケットを構成する弾性樹脂と同じ弾性樹脂からなる、[1]に記載のプラスチックレンズの製造方法。
[4]前記2つのモールドは、一方がガラス製モールドであり、他方が弾性樹脂製モールドである、[1]〜[3]のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法。
[5]前記ガスケットは内周面に突起帯を有し、
前記成形型において、上記突起帯が前記ガラス製モールドの成形面周縁部と当接することで該ガラス製モールドが位置決め保持されている、[4]に記載のプラスチックレンズの製造方法。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
弾性樹脂製モールドを光学面形成のために使用する場合には、モールド成形面に転写される面に鏡面研磨加工を施した金型を用いて弾性樹脂製モールドを成形することにより、光学面を形成可能な成形面を有するモールドを得ることができる。そのようなモールドを使用することにより、モールド成形面の形状が転写された面を、研磨等を行うことなくそのままレンズの光学面とすることができる。ただし前述のように本発明は、重合収縮に伴う変形をガスケットに集中させずモールドと分散することにより各種不良の発生を抑制するものであるため、必然的に重合反応中にモールドも変形を起こすこととなる。したがって弾性樹脂製モールドから光学面を形成する場合には、弾性樹脂製モールドの変形を考慮して、必要に応じて予備実験を行い重合反応における弾性樹脂製モールドの変形量を把握したうえで、モールド成形面の形状設計を行うことが好ましい。また、モールド設計の容易性の観点からは、光学面を形成するためのモールドは重合収縮によって変形を起こすことのないガラス製モールドとすることが好ましい。したがってこの点からは、本発明を凸面側が光学面であり凹面側が非光学面であるセミフィニッシュドレンズ製造のために適用し、光学面(凸面)をガラス製モールドにより形成するとともに、非光学面(凹面)を弾性樹脂製モールドにより形成することが好ましい。光学面を形成するガラス製モールドは、成形型内で正確に位置決め保持することが面精度を高める上で望ましい。そのためにはガスケット内周面に突起帯を設け、該突起帯をガラス製モールド成形面の周縁部と当接させることで、成形型内でガラス製モールドを正確に位置決め保持することが好ましい。ただし、注型重合により得られる成形体の肉厚は成形型内での上下型の間隔により規定されることとなるため、ガスケット内周面に両モールドを位置決め保持する突起帯を設けると、所望の肉厚毎にそれぞれモールドを準備する必要が生じる。これは製造コストおよび生産効率の面からは望ましくない。したがってガスケットにはガラス製モールド側にのみ突起帯を設け、弾性樹脂製モールド側には突起帯を設けないことが、製造コスト低減および生産効率向上の点から好ましい。この場合、ガラス製モールドをガスケット内周面の突起帯と当接させるとともに弾性樹脂製モールドをガスケット開口部の所定の位置まで押し込むことで、所望の肉厚に対応可能な成形型を組み立てることができる。図1に示す成形型は、上記態様の成形型であり、上型側のみにガスケット内周面全周にわたり突起帯19が設けられている。通常、このような態様ではガスケットの突起帯により位置決め保持されないモールドは前述のガスケットの重合収縮による影響を受けやすいが、本発明ではかかるモールドを弾性樹脂製とすることで、その影響を低減することができる。なお、本発明におけるガラス製モールドは、通常の注型重合に使用されるモールドを何ら制限なく使用することができる。また、弾性樹脂製モールドは、弾性樹脂から形成される点以外、通常の注型重合に使用されるモールドと同様の構成とすることができる。通常の注型重合と同様に、上型および下型は、使用するガスケットの開口径よりもわずかに大きな外径として、ガスケットがモールドを締め付ける力によってキャビティの気密性が確保される構成とすることができる。
(1)成形型の作製
図1に断面図を示す成形型を、以下の方法により作製した。
ガスケット13は、エチレン系エラストマー(住友化学製エクセレンVL)を射出成形することにより作製した。作製したガスケットの側面にカッターによって注入口を形成した後、別途射出成形により成形した注入口部を、注入口部の開口とガスケット側面の注入口が連通するように、ガスケット側面に接着剤で貼り付けた。
上型11としては、ソーダガラス製のモールドを準備した。
下型12は、ガスケットと同じエチレン系エラストマー(住友化学製エクセレンVL)を射出成形することにより作製した。
上型および下型を、これらの外径よりもわずかに小さい内径のガスケット開口部に嵌挿することにより成形型を組み立てた。
上記(1)で得た成形型を、注入口部が鉛直上方を向くように配置した後、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)の原料液を、注入口部から成形型キャビティ14に注入し、該キャビティが原料液により満たされた後に、所定の熱重合プログラムに従って重合反応を行った。重合反応終了後、成形型からレンズ形状の成形体を取り出した。
下型を、ガスケット作製に使用したエチレン系エラストマーよりも高弾性の樹脂であるオレフィン系エラストマー(エクソンモービルケミカルカンパニー製サントプレーン)を射出成形することにより作製した点を除き、実施例1と同様の方法でレンズ形状の成形体を得た。
下型として上型と同様にソーダガラス製のモールドを用いた点を除き、実施例1と同様の方法でレンズ形状の成形体を得た。
(1)形状不良(コバ面のくびれ)の有無
比較例1では重合反応中にガスケット側面中央部がキャビティ側に向かって凹む現象が確認された。得られた成形体は、ガスケット側面の凹みが転写されたためコバ面にくびれが見られた(コバ面中央部が周縁部よりも内側に凹んだ形状となった)。
これに対し実施例1、2では、上記現象は確認されず、得られた成形体のコバ面は均一でありくびれは見られなかった。
(2)泡不良の有無
実施例1、2および比較例1で得られた成形体の外観検査を行い、目視レベルで成形体内部に泡の発生が確認されるか否かを判定した。その結果、実施例1、2では泡の存在は確認されなかったのに対し、比較例1では主に凹面側(下型側)に多数の泡が発生していることが確認された。これは、重合収縮によるガスケットの変形によって下型外周面とガスケット内周面との密着性が低下した結果、キャビティ内の原料液に下型側から多数の気泡が混入したことによるものであると考えられる。
以上の結果から、本発明によれば重合収縮による形状不良や泡不良の発生を効果的に抑制できることが示された。
Claims (5)
- 成形型内部のキャビティにプラスチックレンズ原料液を注入し、該キャビティ内で前記プラスチック原料液の重合反応を行うことによりレンズ形状の成形体を得ることを含むプラスチックレンズの製造方法であって、
前記成形型は、2つのモールドが対向配置され、かつ該2つのモールドの周囲にオレフィン系樹脂製のガスケットが配置されることにより前記キャビティが形成されてなり、
前記2つのモールドは、一方がガラス製モールドであり、他方がオレフィン系樹脂製モールドであり、
前記成形体は、凸面である光学面と、凹面である非光学面と、を有するセミフィニッシュドレンズであり、
前記非光学面である凹面を前記オレフィン系樹脂製モールドの成形面を転写することにより形成し、前記光学面である凸面を前記ガラス製モールドの成形面を転写することにより形成することを特徴とする、前記製造方法。 - 前記オレフィン系樹脂製モールドは、前記ガスケットを構成するオレフィン系樹脂よりも高弾性のオレフィン系樹脂からなる、請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
- 前記オレフィン系樹脂製モールドは、前記ガスケットを構成するオレフィン系樹脂と同じ弾性を有するオレフィン系樹脂からなる、請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
- 前記ガスケットは内周面に突起帯を有し、
前記樹脂製モールド側内周面には突起帯を有さず、
前記成形型において、上記突起帯が前記ガラス製モールドの成形面周縁部と当接することで該ガラス製モールドが位置決め保持されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチックレンズの製造方法。 - 前記ガスケットを構成するオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレンである請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチックレンズの製造方法。
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