以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るステアリング装置100の一例を模式的に示す図である。
以下の説明においては、ステアリング装置100が車体VBに取り付けられ、その車体VBが前進するときの進行方向を基準として各部の位置関係について説明する。上下方向とは、車体VBの上下方向をいう。幅方向とは、車体VBの幅方向をいい、左右方向と一致する。前後方向とは、車体VBの前後方向をいう。車体VBの前方を適宜、前方、と称し、車体VBの後方を適宜、後方、と称する。また、部材の部分のうち、最も後方に配置される部分を適宜、一端部又は後端部、と称し、最も前方に配置される部分を適宜、他端部又は前端部、と称する。
図1に示すように、ステアリング装置100は、ステアリングホイール1と、ステアリングホイール1と接続されるステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2の周囲に配置されるステアリングコラム3と、ユニバーサルジョイント4を介してステアリングシャフト2と接続される中間シャフト5と、ユニバーサルジョイント6を介して中間シャフト5と接続されるステアリングギア機構のインプットシャフト7とを備えている。
ステアリングホイール1は、運転者(操作者)に操作される。ステアリングホイール1は、中心軸AXを中心に回転可能である。
ステアリングシャフト2は、中心軸AXを中心に回転可能である。ステアリングシャフト2は、ステアリングホイール1と中間シャフト5との間に配置される。ステアリングシャフト2の一端部(後端部)は、ステアリングホイール1と接続される。ステアリングシャフト2の他端部(前端部)は、ユニバーサルジョイント4を介して中間シャフト5と接続される。ステアリングシャフト2の一端部に、ステアリングホイール1と接続される軸部27が配置される。ステアリングシャフト2の他端部に、ユニバーサルジョイント4を介して中間シャフト5と接続される軸部28が配置される。
ステアリングシャフト2は、中心軸AXと平行な方向に摺動可能であり、中心軸AXを中心にトルク伝達可能となるように、アッパーシャフト21と、アッパーシャフト21とスプライン嵌合されるロアシャフト22とを有する。アッパーシャフト21とロアシャフト22とが中心軸AXと平行な方向に相対移動することにより、ステアリングシャフト2が伸縮して、ステアリングシャフト2の一端部と他端部との距離が変化する。
ステアリングコラム3は、筒状の部材であり、ステアリングシャフト2の周囲に配置される。ステアリングコラム3は、ステアリングシャフト2を回転可能に支持する。ステアリングコラム3は、少なくとも一部がアッパーシャフト21の周囲に配置されるアッパーコラム31と、少なくとも一部がロアシャフト22の周囲に配置されるロアコラム32とを有する。アッパーコラム31とロアコラム32とは、中心軸AXと平行な方向に相対移動可能なように嵌合している。アッパーコラム31とロアコラム32とが中心軸AXと平行な方向に相対移動することにより、ステアリングコラム3が伸縮して、ステアリングコラム3の一端部と他端部との距離が変化する。
中間シャフト5は、中心軸BXを中心に回転可能である。ステアリングシャフト2の中心軸AXと中間シャフト5の中心軸BXとは交差する。中間シャフト5は、ステアリングシャフト2とインプットシャフト7との間に配置される。中間シャフト5の一端部は、ユニバーサルジョイント4を介してステアリングシャフト2と接続される。中間シャフト5の他端部は、ユニバーサルジョイント6を介してインプットシャフト7と接続される。
中間シャフト5は、アッパーシャフト51と、アッパーシャフト51とスプライン嵌合されるロアシャフト52とを有する。アッパーシャフト51は、ユニバーサルジョイント4を介してステアリングシャフト2と接続される。ロアシャフト52は、ユニバーサルジョイント6を介してインプットシャフト7と接続される。アッパーシャフト51とロアシャフト52とは、中心軸BXと平行な方向に相対移動可能である。アッパーシャフト51が中心軸BXを中心に回転すると、ロアシャフト52もアッパーシャフト51と一緒に中心軸BXを中心に回転する。
ステアリング装置100は、ステアリングコラム3に接続されるアッパーブラケット8と、アッパーブラケット8よりも前方(下方)に配置されるロアブラケット9とを備えている。ステアリングコラム3は、アッパーブラケット8及びロアブラケット9を介して車体VBに支持される。アッパーブラケット8は、アッパーコラム31と接続される。ロアブラケット9は、ロアコラム32と接続される。本実施形態において、アッパーブラケット8は、車体VBの支持部材VBaと接続される。ロアブラケット9は、車体VBの支持部材VBbと接続される。
運転者によりステアリングホイール1が中心軸AXを中心に回転すると、ステアリングホイール1に接続されているステアリングシャフト2が中心軸AXを中心に回転する。ステアリングシャフト2が回転すると、中間シャフト5が中心軸BXを中心に回転する。中間シャフト5が回転すると、ステアリングギア機構のインプットシャフト7が回転する。ステアリングギア機構は、ラックアンドピニオン機構を含む。中間シャフト5の回転力は、インプットシャフト7を含むステアリングギア機構を介して、車輪と接続されたリンク機構に伝達される。リンク機構の作動により、車輪の操舵角が調整される。
なお、ステアリング装置100が、運転者の操舵を補助する電気モータのような補助動力源を有するパワーステアリング装置を有してもよい。
以下の説明においては、中心軸AXと平行な方向を適宜、軸方向、と称し、中心軸AXに対する放射方向を適宜、径方向、と称し、中心軸AXを中心とする回転方向を適宜、周方向、と称する。
ステアリング装置100は、ステアリングホイール1の位置を調整する位置調整機構10と、2次衝突における衝撃を吸収する衝撃吸収機構11と、ステアリングホイール1の操作を規制するロック機構12とを備えている。位置調整機構10は、前後方向(軸方向)に関するステアリングホイール1の位置を調整するテレスコピック機構10Aと、上下方向に関するステアリングホイール1の位置を調整するチルト機構10Bとを含む。
位置調整機構10は、ステアリングシャフト2及びステアリングコラム3の移動により、前後方向及び上下方向に関するステアリングホイール1の位置を調整する。例えば、運転者の体格又は運転姿勢に合わせて、前後方向及び上下方向に関するステアリングホイール1の位置が調整される。
テレスコピック機構10Aは、軸方向に伸縮可能なステアリングシャフト2及びステアリングコラム3を含む。ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト2の一端部に接続されている。ステアリングシャフト2とステアリングコラム3とは一緒に伸縮する。ステアリングシャフト2及びステアリングコラム3が伸縮することにより、前後方向に関するステアリングホイール1の位置が調整される。ステアリングシャフト2及びステアリングコラム3が伸びると、ステアリングホイール1は後方に移動する。ステアリングシャフト2及びステアリングコラム3が縮むと、ステアリングホイール1は前方に移動する。
チルト機構10Bは、ステアリングコラム3を回転可能に支持する支持機構を含む。チルト機構10Bは、ステアリングコラム3に接続されたロアブラケット9と、軸部材13を介してロアブラケット9を支持する支持部材14とを含む。支持部材14は、車体VBの支持部材VBbに接続される。ロアブラケット9は、軸部材13の中心軸Jを中心に回転可能である。軸部材13の中心軸Jと平行な方向は、車体VBの幅方向と一致する。
ロアブラケット9が回転することにより、ロアブラケット9に接続されているステアリングコラム3も、軸部材13の中心軸Jを中心に回転する。ステアリングコラム3が回転することにより、ステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3と一緒に中心軸Jを中心に回転する。ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト2の一端部に接続されている。ステアリングシャフト2が中心軸Jを中心に回転することにより、上下方向に関するステアリングホイール1の位置が調整される。
ステアリングホイール1は、テレスコピック機構10Aによって規定される前後方向に関する可動範囲を移動可能である。ステアリングホイール1は、チルト機構10Bによって規定される上下方向に関する可動範囲を移動可能である。以下の説明において、テレスコピック機構10Aによって規定される前後方向(軸方向)に関するステアリングホイール1の可動範囲を適宜、テレスコ可動範囲、と称し、前後方向に関するステアリングホイール1の位置を適宜、テレスコ位置、と称する。また、以下の説明において、チルト機構10Bによって規定される上下方向に関するステアリングホイール1の可動範囲を適宜、チルト可動範囲、と称し、上下方向に関するステアリングホイール1の位置を適宜、チルト位置、と称する。
衝撃吸収機構11は、2次衝突における運転者の衝撃を緩和する。自動車と他の自動車のような物体との衝突は、1次衝突と呼ばれる。1次衝突の後に発生する、運転者とステアリングホイール1との衝突は、2次衝突と呼ばれる。通常時(非衝突時)において、ステアリングホイール1は、テレスコ可動範囲を移動可能である。異常時(2次衝突時)において、ステアリングホイール1は、テレスコ可動範囲を超えて前後方向に移動する。2次衝突において、ステアリングホイール1がテレスコ可動範囲を超えて移動することにより、運転者が受ける衝撃が緩和される。
衝撃吸収機構11は、軸方向に伸縮可能なステアリングシャフト2及びステアリングコラム3と、アッパーブラケット8と車体VBの支持部材VBaとの間に配置される破断可能なコラプシブル部材15とを含む。2次衝突により前方に向かう過大な力がステアリングコラム3に作用すると、コラプシブル部材15が破断する。これにより、ステアリングコラム3及びステアリングホイール1がテレスコ可動範囲を超えて前方に移動する。
ロック機構12は、中心軸AXを中心とする回転方向に関するステアリングシャフト2の回転を規制して、ステアリングホイール1の操作を規制する。イグニッションキーが鍵穴に存在しない状態で、ステアリングホイール1がロックされることにより、自動車の盗難防止が図られる。
図2は、本実施形態に係るステアリング装置100の一例を示す図である。図2は、ステアリング装置100の一部を断面で示す。図3は、図2の一部を拡大した図である。図4は、図2のA−A線矢視図である。図5は、本実施形態に係るステアリングシャフト2及びステアリングコラム3の一例を示す断面図である。図6は、アッパーシャフト21及びロアシャフト22の一例を示す図である。
ステアリングシャフト2は、アッパーシャフト21とロアシャフト22とを含む。アッパーシャフト21は、ステアリングホイール1が接続される軸部27を有する。ロアシャフト22は、アッパーシャフト21に対して軸方向に相対移動可能であり、軸部28を有する。本実施形態において、アッパーシャフト21は、少なくとも一部がロアシャフト22の周囲に配置されるアウターシャフトである。ロアシャフト22は、少なくとも一部がアッパーシャフト(アウターシャフト)21の内側に配置されるインナーシャフトである。軸部27は、ネジ部、セレーション部、及びテーパ部を含む。軸部27は、ステアリングコラム3の一端部よりもステアリングコラム3の外側に配置される。軸部28は、ステアリングコラム3の他端部よりもステアリングコラム3の外側に配置される。
ステアリングコラム3は、アッパーコラム31とロアコラム32とを含む。アッパーコラム31は、少なくとも一部がアッパーシャフト21の周囲に配置される。ロアコラム32は、アッパーコラム31に対して軸方向に相対移動可能であり、少なくとも一部がロアシャフト22の周囲に配置される。本実施形態において、アッパーコラム31は、少なくとも一部がロアコラム32の周囲に配置されるアウターコラムである。ロアコラム32は、少なくとも一部がアッパーコラム(アウターコラム)31の内側に配置されるインナーコラムである。
ステアリングコラム3は、中心軸AXを中心としてステアリングシャフト2を回転可能に支持する。アッパーシャフト21とアッパーコラム31との間に軸受23が配置される。ロアシャフト22とロアコラム32との間に軸受24が配置される。軸受23の内輪がアッパーシャフト21に接続され、軸受23の外輪がアッパーコラム31に接続される。軸受24の内輪がロアシャフト22に接続され、軸受24の外輪がロアコラム32に接続される。ステアリングコラム3は、軸受23及び軸受24を介して、ステアリングシャフト2を回転可能に支持する。
軸方向に関して、アッパーシャフト21とアッパーコラム31との相対位置が実質的に固定されている。軸方向に関して、ロアシャフト22とロアコラム32との相対位置が実質的に固定されている。アッパーシャフト21とロアシャフト22とが軸方向に関して相対移動すると、アッパーシャフト21及びロアシャフト22と一緒に、アッパーコラム31とロアコラム32とが軸方向に関して相対移動する。
次に、図2及び図4を参照して、位置調整機構10、衝撃吸収機構11、及びアッパーコラム31とロアコラム32とを固定(クランプ)するクランプ装置30について説明する。
図2及び図4に示すように、アッパーブラケット8は、アウターコラム31の少なくとも一部を囲むように配置される。アッパーブラケット8は、アウターコラム31の上方に配置されたフランジ部16と、フランジ部16の下方に配置され、アウターコラム31を挟むように配置された2つの板部材17とを有する。
アッパーコラム31は、板部材17と接触するように設けられた上部接触部311と、上部接触部311の下方に設けられたディスタンスブラケット312とを備えている。ディスタンスブラケット312は、板部材17と接触するように設けられた下部接触部313を有する。
アッパーコラム31のディスタンスブラケット312は、テレスコ可動範囲を規定する長孔18を有する。アッパーブラケット8の板部材17は、チルト可動範囲を規定する長孔19を有する。長孔18は、前後方向(軸方向)に長い。長孔19は、上下方向に長い。
クランプ装置30は、アッパーブラケット8に対するアッパーコラム31及びロアコラム32の固定(クランプ)及び固定解除(アンクランプ)を実行可能である。クランプ装置30は、2つの板部材17でアッパーコラム31及びロアコラム32を外側から挟み付けて、アッパーブラケット8に対してアッパーコラム31及びロアコラム32を固定する。
クランプ装置30は、2つの板部材17と、長孔18及び長孔19に配置されるロッド33と、2つの板部材17のうち一方の板部材17の外側に配置された固定カム34A及び可動カム34Bを含むカムロック機構34と、操作レバー35と、2つの板部材17のうち他方の板部材17の外側に配置されたナット36とを含む。固定カム34A、可動カム34B、操作レバー35、及びナット36は、ロッド33の周囲に配置される。
操作レバー35が操作されることにより、アッパーコラム31及びロアコラム32が締め付けられるようにアッパーブラケット8の板部材17が変形する。操作レバー35が操作されることにより、アッパーブラケット8に対するアッパーコラム31及びロアコラム32の固定(クランプ)及び固定解除(アンクランプ)が行われる。アンクランプ状態において、アッパーコラム31は、長孔18によって規定されるテレスコ可動範囲、及び長孔19によって規定されるチルト可動範囲を移動可能である。ロッド33は、ストッパ部材として機能する。ロッド33は、長孔18の内側で長孔18にガイドされながら移動する。ロッド33及び長孔18によってテレスコ可動範囲が規制される。また、ロッド33は、長孔19の内側で長孔19にガイドされながら移動する。ロッド33及び長孔19によってチルト可動範囲が規制される。ロッド33が長孔18にガイドされながらアッパーコラム31が前後方向に移動することにより、ステアリングホイール1のテレスコ位置が調整される。ロッド33が長孔19にガイドされながらアッパーコラム31が上下方向に移動することにより、ステアリングホイール1のチルト位置が調整される。アンクランプ状態でアッパーコラム31(ステアリングホイール1)の位置が調整された後、操作レバー35の操作によりアッパーコラム31及びロアコラム32がクランプ状態になることにより、ステアリングホイール1の位置が固定される。
衝撃吸収機構11のコラプシブル部材15は、アッパーブラケット8のフランジ部16と車体VB(支持部材VBa)との間に配置される。2次衝突によりステアリングホイール1に過大な力が作用し、ステアリングホイール1が前方に押されると、コラプシブル部材15の一部が破断する。その破断により、アッパーブラケット8のフランジ部16がコラプシブル部材15から離脱して、ステアリングコラム3及びステアリングホイール1がテレスコ可動範囲を超えて前方に移動(コラプス移動)する。これにより、2次衝突の衝撃エネルギーが吸収される。
次に、主に図5及び図6を参照しながら、ステアリングシャフト2及びステアリングコラム3について説明する。上述のように、アッパーシャフト21は、アウターシャフトであり、ロアシャフト22は、インナーシャフトである。以下の説明においては、アッパーシャフト21を適宜、アウターシャフト21、と称し、ロアシャフト22を適宜、インナーシャフト22、と称する。また、以下の説明においては、アッパーコラム31を適宜、アウターコラム31、と称し、ロアコラム32を適宜、インナーコラム32、と称する。
アウターシャフト21は、中心軸AXの周囲に配置され、内部空間25を有する円筒部26と、円筒部26の一方の隣(後方)に配置された軸部27とを有する。インナーシャフト22の少なくとも一部は内部空間25に配置される。
アウターシャフト21とインナーシャフト22とはスプライン嵌合される。アウターシャフト21の内部空間25は、スプライン穴部40を含む。スプライン穴部40の内面に雌スプラインが形成される。内部空間25は、アウターシャフト21の先端側に抜けていてもよい。
内部空間25は、軸方向に関してスプライン穴部40の一方の隣(後方)に配置された第1部分空間41と、軸方向に関して第1部分空間41の一方の隣(後方)に配置された第2部分空間42とを含む。中心軸AXと第1部分空間41の内面との距離(半径)D1は、中心軸AXとスプライン穴部40の内面との距離(半径)Dhよりも大きい。中心軸AXと第2部分空間42の内面との距離(半径)D2は、中心軸AXと第1部分空間41の内面との距離D1よりも小さい。
すなわち、第1部分空間41の内径は、スプライン穴部40の内径よりも大きい。第2部分空間42の内径は、第1部分空間41の内径よりも小さい。
以下の説明においては、第1部分空間41を有する円筒部26の一部を適宜、大径部41P、と称し、第2部分空間42を有する円筒部26の一部を適宜、小径部42P、と称する。また、以下の説明においては、雌スプラインが形成された円筒部26の一部を適宜、雌スプライン部40P、と称する。
本実施形態において、第1部分空間41は、スプライン穴部40との境界から軸方向の一方に向かって内径が徐々に大きくなるテーパ部41Tと、テーパ部41Tの一方の隣に配置され、内径が一定のストレート部41Sとを含む。第2部分空間42は、第1部分空間41との境界から軸方向の一方に向かって内径が徐々に小さくなる。
アウターシャフト21の軸部27の外径Wjは、大径部41Pの外径W1よりも小さい。軸受23は、軸部27を支持する。また、雌スプライン部40Pの外径Whは、大径部41Pの外径W1よりも小さい。
インナーシャフト22は、スプライン穴部40とスプライン嵌合されるスプライン軸部43と、スプライン軸部43の他方の隣(前方)に配置された軸部28とを有する。スプライン軸部43の表面は、中心軸AXの周囲に配置される。スプライン軸部43の表面に雄スプラインが形成される。軸部28の表面には雄スプラインは形成されない。なお、軸部28に雄スプラインが長く形成されていてもよい。
スプライン軸部43は、合成樹脂の表面を有する第1スプライン軸部44と、軸方向に関して第1スプライン軸部44の一方の隣(後方)に配置され、インナーシャフト22の一端部(後端部)を含み、金属の表面を有する第2スプライン軸部45とを有する。インナーシャフト22の一端部は、内部空間25に配置される。インナーシャフト22の他端部は、軸部28を含み、内部空間25の外側に配置される。
中心軸AXと第2スプライン軸部45の表面との距離(半径)R2は、中心軸AXと第1スプライン軸部44の表面との距離(半径)R1よりも小さい。すなわち、第2スプライン軸部45の外径V2は、第1スプライン軸部44の外径V1よりも小さい。軸部28の外径は、第1スプライン軸部44の外径V1よりも小さい。
スプライン穴部40と第1スプライン軸部44とがスプライン嵌合される。スプライン穴部40と第2スプライン軸部45とはスプライン嵌合可能である。これにより、軸方向に関してアウターシャフト21とインナーシャフト22とが相対移動可能である。また、アウターシャフト21の回転により、インナーシャフト22も回転する。
本実施形態において、第1スプライン軸部44の表面は合成樹脂である。スプライン軸部43とスプライン穴部40とがスプライン嵌合されたとき、スプライン軸部43の雄スプラインとスプライン穴部40の雌スプラインとのクリアランスに起因して、がたつきが発生したり、操舵感が悪化したり、操舵において異音が発生したりする可能性がある。例えば、第1スプライン軸部44の表面及びスプライン穴部40の表面の両方が金属である場合、ステアリングホイール1(アウターシャフト21)を周方向に関してある方向に回転させた後、逆方向に回転させたとき、雄スプラインと雌スプラインとのクリアランスが大きいと、雄スプラインと雌スプラインとの接触により異音が発生したり、雄スプラインと雌スプラインとの間にがたつきが発生したり、操舵感が悪化したりする可能性がある。また、第1スプライン軸部44の表面及びスプライン穴部40の表面の両方が金属である場合において、雄スプラインと雌スプラインとのクリアランスを小さくしようとすると、インナーシャフト22及びアウターシャフト21の少なくとも一方が僅かに曲がるだけで、スプライン嵌合が困難となる可能性がある。
本実施形態においては、第1スプライン軸部44の表面が、金属よりも柔らかい合成樹脂である。そのため、ステアリングシャフト2の操舵において、がたつきの発生、操舵感の悪化、及び異音の発生などが抑制される。また、第1スプライン軸部44の表面が合成樹脂なので、雄スプラインと雌スプラインとのクリアランスが小さくても、スプライン嵌合は円滑に行われる。
図7は、アウターシャフト21及びアウターコラム31と、インナーシャフト22及びインナーコラム32との関係を説明するための模式図である。
インナーコラム32は、インナーシャフト22の周囲に配置される。軸方向に関するインナーシャフト22とインナーコラム32との相対位置は実質的に固定されている。
アウターコラム31は、アウターシャフト21の周囲に配置される。軸方向に関するアウターシャフト21とアウターコラム31との相対位置は実質的に固定されている。
図7に示すように、インナーシャフト22の第2スプライン軸部45の少なくとも一部は、軸方向に関してインナーコラム32の一端部の端面46よりも外側に配置される。軸方向に関して、アウターコラム31の他端部の端面47とアウターシャフト21の他端部の端面48とは、同一平面内に配置される。同一平面は、中心軸AXと直交する面である。
上述のように、雌スプライン部40Pの外径Whは、大径部41Pの外径W1よりも小さい。アウターコラム31の内径は、軸方向に関して一定である。図7に示すように、大径部41Pの外面とアウターコラム31の内面との距離G1は、雌スプライン部40Pの外面とアウターコラム31の内面との距離Ghよりも小さい。
アウターシャフト21及びアウターコラム31と、インナーシャフト22及びインナーコラム32とを結合するとき、インナーシャフト22の一端部がアウターシャフト21の内部空間25に挿入され、インナーコラム32の一端部がアウターコラム31に挿入される。
図8は、本実施形態に係るロック機構12の一例を示す模式図である。ロック機構12は、ステアリングシャフト2のアウターシャフト21に形成されたロック孔121と、ロック孔121に挿入されるロックキー122と、ステアリングコラム3のアウターコラム31に形成され、ロックキー122が配置される孔123とを含む。テレスコ可動範囲において、ロックキー122が対向する位置にインナーシャフト22は配置されない。ロックキー122は、ロック孔121及び孔123の両方に配置されるように、ロック孔121に挿入される。ロックキー122がロック孔121の周縁部と接触することによって、ステアリングシャフト2の回転が規制される。なお、ロック機構の一例が、特開2002−067975号公報及び特開2009−190680号公報などに開示されている。
ロック孔121にロックキー122が挿入されたロック状態でステアリングホイール1(ステアリングシャフト2)が無理やり回転されても、ロック状態が解除されないように、ステアリングシャフト2の外面とステアリングコラム3の内面との距離は短いことが望ましい。そのため、本実施形態においては、ステアリングシャフト2のアウターシャフト21に大径部41Pが設けられている。ステアリングコラム3(アウターコラム31)の内面との距離G1が短い大径部41Pにロック機構12(ロック孔121)が設けられることにより、ステアリングシャフト2を安定してロックすることができる。
図9は、本実施形態に係るインナーシャフト22の一例を示す側面図である。図10は、第1スプライン軸部44の一例を示す断面図であって、図9のB−B線矢視図に相当する。図11は、第2スプライン軸部45の一例を示す断面図であって、図9のC−C線矢視図に相当する。
図9、図10、及び図11に示すように、スプライン軸部43は、雄スプラインが形成された金属製の芯材60を含む。第1スプライン軸部44の表面は、芯材60の表面に形成された合成樹脂膜61の表面である。第2スプライン軸部45の表面は、芯材60の表面である。本実施形態において、合成樹脂膜61は、例えばポリアミド系の合成樹脂製である。
次に、本実施形態に係るステアリング装置100の製造方法の一例について説明する。図5及び図6などを参照して説明したような、スプライン穴部40を含む内部空間25を有するアウターシャフト21が製造される。すなわち、スプライン穴部40と第1部分空間41と第2部分空間42とを有するアウターシャフト21が製造される。第1部分空間41は、軸方向に関してスプライン穴部40の一方の隣に形成される。第2部分空間42は、軸方向に関して第1部分空間41の一方の隣に形成される。
インナーシャフト22の製造において、まず、スプライン軸部43を含む金属製の芯材60が製造される。
図12及び図13は、スプライン軸部43を含む金属製の芯材60の一例を示す図である。図12は、芯材60の側面図である。図13は、図12のD−D線矢視図である。図12に示すように、雄スプラインを有するスプライン軸部43が形成される。スプライン軸部43の表面は、金属である。軸方向に関して、スプライン軸部43の外径は一定である。
次に、スプライン軸部43の表面の一部に合成樹脂膜61が形成されるように、スプライン軸部43の表面が処理される。
本実施形態においては、芯材60の一端部を含むスプライン軸部43の表面の一部がマスク部材70で覆われる。マスク部材70で覆われたスプライン軸部43に合成樹脂が供給されることによって、スプライン軸部43の表面の一部に合成樹脂膜61が形成され、合成樹脂の表面を有する第1スプライン軸部44が形成される。また、マスク部材70で覆われたスプライン軸部43の一部に合成樹脂膜61は形成されない。マスク部材70で覆われたスプライン軸部43の一部が第2スプライン軸部45となる。
図14は、本実施形態に係るマスク部材70の一例を示す側面図である。図15は、本実施形態に係るマスク部材70の一例を示す平面図である。図14及び図15に示すように、本実施形態において、マスク部材70は、雌スプラインが形成されたキャップ部材を含む。
図16は、キャップ部材70でスプライン軸部43の一部が覆われる状態の一例を説明するための模式図である。図16に示すように、芯材60の一端部を含むスプライン軸部43の表面の一部がキャップ部材70で覆われる。キャップ部材70は、スプライン軸部43の雄スプラインと噛み合う雌スプラインを有し、スプライン軸部43の表面の一部を十分に覆うことができる。
次に、スプライン軸部43の表面の一部がキャップ部材70で覆われた状態で、スプライン軸部43の表面に合成樹脂が供給される。本実施形態においては、スプライン軸部43の表面の一部がキャップ部材70で覆われた状態で、そのスプライン軸部43が溶融状態の合成樹脂に浸漬される。
図17は、溶融状態の合成樹脂に浸漬された後のスプライン軸部43の一例を示す模式図である。スプライン軸部43が溶融状態の合成樹脂に浸漬されることにより、スプライン軸部43の表面の一部に合成樹脂膜61が形成される。
図18は、スプライン軸部43に合成樹脂膜61が形成され、スプライン軸部43からキャップ部材70が取り外された後のスプライン軸部43の一例を示す模式図である。図19は、図18のE−E線矢視図である。図18及び図19に示すように、キャップ部材70で覆われていた部分に合成樹脂膜61は形成されない。キャップ部材70で覆われていた部分が第2スプライン軸部45となる。合成樹脂膜61が形成された部分は、第1スプライン軸部44となる。なお、溶融状態の合成樹脂にスプライン軸部43を浸漬して合成樹脂膜61が形成された後、シェービング加工により、合成樹脂膜61が整形されてもよい。
合成樹脂膜61が形成されることにより、その第1スプライン軸部44の外径V1は、第2スプライン軸部45の外径V2よりも大きくなる。以上により、合成樹脂の表面を有する第1スプライン軸部44と、軸方向に関して第1スプライン軸部44の一方の隣に配置され、内部空間25に配置される芯材60の一端部を含み、第1スプライン軸部44よりも小径な金属の表面を有する第2スプライン軸部45と、を有するインナーシャフト22が製造される。
次に、インナーコラム32が、インナーシャフト22の周囲に配置される。図7などを参照して説明したように、インナーコラム32は、第2スプライン軸部45がインナーコラム32の一端部の端面46よりも外側に配置されるように、インナーシャフト22の周囲に配置される。インナーコラム32は、軸方向に関するインナーシャフト22との相対位置が実質的に固定されるように、インナーシャフト22の周囲に配置される。
また、アウターコラム31が、アウターシャフト21の周囲に配置される。図7などを参照して説明したように、アウターコラム31は、軸方向に関してアウターシャフト21の他端部の端面48とアウターコラム31の他端部の端面47とが同一平面内に配置されるように、アウターシャフト21の周囲に配置される。アウターコラム31は、軸方向に関するアウターシャフト21との相対位置が実質的に固定されるように、アウターシャフト21の周囲に配置される。
次に、第2スプライン軸部45がアウターシャフト21の内部空間25に挿入され、軸方向に関してアウターシャフト21とインナーシャフト22とが相対移動するように、スプライン穴部40と第1スプライン軸部44とがスプライン嵌合される。第2スプライン軸部45がアウターシャフト21の内部空間25に挿入されるとき、インナーコラム32もアウターコラム31に挿入され、アウターコラム31とインナーコラム32とが結合される。
本実施形態においては、第2スプライン軸部45は、第1スプライン軸部44よりも小径である。したがって、インナーシャフト22をアウターシャフト21に挿入するとき、第2スプライン軸部45から挿入することによって、その挿入作業を円滑に行うことができる。
また、本実施形態においては、第2スプライン軸部45に合成樹脂膜61は形成されてなく、第2スプライン軸部45の表面は金属である。そのため、挿入作業のとき、第2スプライン軸部45とアウターシャフト21の少なくとも一部とが接触しても、第2スプライン軸部45の表面状態の悪化が抑制される。すなわち、第2スプライン軸部45の表面が合成樹脂の表面である場合、合成樹脂は金属よりも柔らかく、第2スプライン軸部45とアウターシャフト21との接触により、その合成樹脂が損傷する可能性が高い。その損傷により、合成樹脂の表面状態が変化(悪化)する可能性がある。また、その損傷部分から合成樹脂に亀裂が発生し、合成樹脂が剥離する可能性がある。本実施形態においては、挿入先端部である第2スプライン軸部45に合成樹脂膜が設けられていないため、その第2スプライン軸部45の表面状態の悪化が抑制される。
図20は、内部空間25にインナーシャフト22の一部が配置されている状態の一例を示す図である。図20は、内部空間25にスプライン軸部43が配置されている状態の一例を示す図である。図20は、軸方向に関するアウターシャフト21に対するインナーシャフト22のテレスコ可動範囲において、インナーシャフト22が最も後方の位置に配置された状態を示す。すなわち、図20は、テレスコ可動範囲において、ステアリングシャフト2が最も縮むようにアウターシャフト21とインナーシャフト22との相対位置が調整された例を示す。以下の説明において、テレスコ可動範囲においてステアリングシャフト2が最も縮んだ状態を適宜、テレスコ最小状態、と称する。
図20に示すように、テレスコ最小状態において、第2スプライン軸部45は、第1部分空間41に配置され、スプライン穴部40に配置されない。本実施形態において、第2スプライン軸部45は、第1部分空間41のテーパ部41Tに配置される。
テレスコ最小状態において、第1スプライン軸部44の全部が、スプライン穴部40に配置される。すなわち、第2スプライン軸部45が第1部分空間41に配置され、スプライン穴部40とスプライン嵌合していない状態において、第1スプライン軸部44は、スプライン穴部40に配置され、スプライン穴部40とスプライン嵌合した状態である。
図21は、内部空間25にスプライン軸部43が配置されている状態の一例を示す図である。図21は、軸方向に関するアウターシャフト21に対するインナーシャフト22のテレスコ可動範囲において、インナーシャフト22が最も前方の位置に配置された状態を示す。すなわち、図21は、テレスコ可動範囲において、ステアリングシャフト2が最も伸びるようにアウターシャフト21とインナーシャフト22との相対位置が調整された例を示す。以下の説明において、テレスコ可動範囲においてステアリングシャフト2が最も伸びた状態を適宜、テレスコ最大状態、と称する。
図21に示すように、テレスコ最大状態において、第2スプライン軸部45の少なくとも一部がスプライン穴部40に配置される。なお、図21に示す例では、テレスコ最大状態において、第2スプライン軸部45の一部が第1部分空間41に配置される。なお、テレスコ最大状態において、第2スプライン軸部45の全部がスプライン穴部40に配置されてもよい。
テレスコ最大状態において、第1スプライン軸部44の全部が、スプライン穴部40に配置される。すなわち、テレスコ最大状態においては、第1スプライン軸部44がスプライン穴部40とスプライン嵌合されるとともに、第2スプライン軸部45の少なくとも一部がスプライン穴部40とスプライン嵌合される。
本実施形態においては、テレスコ最小状態及びテレスコ最大状態の両方において、第1スプライン軸部44の全部がスプライン穴部40に配置される。本実施形態においては、テレスコ可動範囲において、第1スプライン軸部44はスプライン穴部40の内側に配置され続ける。
本実施形態において、2次衝突が発生した場合、ステアリングシャフト2及びステアリングコラム3は、テレスコ可動範囲を超えて縮む。2次衝突が発生したとき、インナーシャフト22の第2スプライン軸部45の少なくとも一部が、アウターシャフト21の第2部分空間42に配置されるまで、ステアリングシャフト2が縮む。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1スプライン軸部44の表面が合成樹脂であるため、第1スプライン軸部44とスプライン穴部40とがスプライン嵌合されたとき、第1スプライン軸部44の雄スプラインとスプライン穴部40の雌スプラインとのクリアランスに起因するがたつきの発生、操舵感の悪化、及び異音の発生などが抑制される。
本実施形態において、スプライン軸部43は、第1スプライン軸部44よりも小径の第2スプライン軸部45を有する。ステアリング装置100の製造工程において、アウターシャフト21の内部空間25にインナーシャフト22を挿入するとき、第2スプライン軸部45が挿入先端部となる。これにより、インナーシャフト22をアウターシャフト21に挿入する工程を含むステアリング装置100の製造が円滑に行われる。
また、第2スプライン軸部45の表面は金属である。金属の表面は、合成樹脂の表面よりも傷つき難く、打痕が発生し難い。そのため、インナーシャフト22をアウターシャフト21に挿入する工程において、第2スプライン軸部45がアウターシャフト21に接触しても、第2スプライン軸部45の表面の損傷、及び第2スプライン軸部45の表面における打痕の発生などが抑制される。第2スプライン軸部45の表面状態が変化(悪化)すると、軸方向に関してアウターシャフト21とインナーシャフト22とを相対移動させてステアリングシャフト2を伸縮させるときの力(摺動力)が変化(増大)する可能性がある。本実施形態によれば、第2スプライン軸部45の表面は、合成樹脂よりも高強度な金属製なので、表面状態の変化が抑制される。したがって、摺動力の安定化が図られ、ステアリングシャフト2は円滑に伸縮される。これにより、ステアリング装置100の性能の低下が抑制される。
また、本実施形態においては、金属製の芯材60の表面の一部に合成樹脂膜61が形成されることによって、大径の第1スプライン軸部44と小径の第2スプライン軸部45とが円滑に製造される。
また、本実施形態においては、第1スプライン軸部44及び第2スプライン軸部45の両方がスプライン穴部40とスプライン嵌合することができ、スプライン嵌合の安定化が図られる。
また、本実施形態においては、アウターシャフト21の内部空間25は、スプライン穴部40と第1部分空間41と第2部分空間42とを含む。第1部分空間41が設けられ、大径部41Pが設けられることにより、図8を参照して説明したように、アウターシャフト21の外面とアウターコラム31の内面との距離G1を小さくすることができる。したがって、ロック状態においてステアリングシャフト2が無理やり回転されても、ロック状態が解除され難いロック機構12が提供される。
本実施形態においては、ロック機構12のようなステアリング装置100の付加機構の設置のために、軸方向に関するアウターシャフト21のスプライン穴部40の寸法(スプライン長)が制限されても、第2スプライン軸部45が第1部分空間41に配置され、第1スプライン軸部44がスプライン穴部40に配置されるように各部の寸法が調整されることによって、第1スプライン軸部44とスプライン穴部40とのスプライン嵌合は安定化される。
本実施形態において、第2スプライン軸部45が第1部分空間41(テーパ部41T)に配置されている状態において、その第2スプライン軸部45の表面とアウターシャフト21の内面との間に間隙が形成される。すなわち、第2スプライン軸部45が第1部分空間41(テーパ部41T)に配置されている状態において、その第2スプライン軸部45の表面に部材は接触しない。第2スプライン軸部45の表面に部材が接触していない状態で温度が上昇しても、第2スプライン軸部45は、合成樹脂よりも熱膨張し難い金属製である。したがって、第2スプライン軸部45を第1部分空間41からスプライン穴部40に移動させても、第2スプライン軸部45の熱膨張が抑制されているので、第2スプライン軸部45は、第1部分空間41からスプライン穴部40に円滑に移動できる。すなわち、温度が上昇したときに第2スプライン軸部45が第1部分空間41からスプライン穴部40に移動するようにステアリングシャフト2が伸ばされても、摺動力の変化が抑制される。
また、本実施形態においては、テレスコ最小状態で、第2スプライン軸部45が第1部分空間41に配置され、第1スプライン軸部44がスプライン穴部40に配置される。製品であるステアリングシャフト2が輸送されるとき、輸送の効率化の観点から、ステアリングシャフト2はテレスコ最小状態で輸送される場合が多い。例えばステアリングシャフト2が低温な製品製造国から高温の車両組立国に輸送される場合においても、テレスコ最小状態において第1部分空間41に配置される第2スプライン軸部45は合成樹脂よりも熱膨張し難い金属製なので、熱膨張に起因する摺動力の増大が抑制される。また、ステアリングシャフト2が伸びることにより、第1スプライン軸部44及び第2スプライン軸部45の両方がスプライン穴部40とスプライン嵌合することができる。
また、本実施形態においては、テレスコ可動範囲において、第1スプライン軸部44はスプライン穴部40の内側に配置され続ける。これにより、第1スプライン軸部44の周囲に常にスプライン穴部40が存在するため、合成樹脂膜61の熱膨張は抑制される。また、スプライン軸部43とスプライン穴部40との間に常に合成樹脂が存在するため、ステアリングシャフト2が回転されたときのがたつきの発生、操舵感の悪化、及び異音の発生などが抑制される。
また、本実施形態においては、内部空間25は、第2部分空間42を含み、アウターシャフト21は、小径部42Pを有する。これにより、ステアリングシャフト2のコンパクト化が図られる。また、軸受23でアウターシャフト21を支持する場合、小径部42Pと接続された軸部27が軸受23で支持されることにより、軸受23の大型化が抑制される。
また、本実施形態において、第2スプライン軸部45は、軸方向に関してインナーコラム32の一端部よりも外側に配置され、軸方向に関して、アウターコラム31の他端部の端面47とアウターシャフト21の他端部の端面48とは、同一平面内に配置される。これにより、インナーシャフト22をアウターシャフト21に挿入する工程が円滑に行われる。また、インナーシャフト22及びインナーコラム32とアウターシャフト21及びアウターコラム31とは十分に嵌まり合い、スプライン嵌合の剛性が確保される。したがって、ステアリング装置100の性能の低下が抑制される。
また、ステアリング装置100の製造工程において、キャップ部材70でスプライン軸部43の一部が覆われた状態で、スプライン軸部43に溶融状態の合成樹脂が供給されることにより、合成樹脂を有する第1スプライン軸部44と、合成樹脂を有しない第2スプライン軸部45とが円滑に製造される。
なお、本実施形態においては、アッパーシャフト21がアウターシャフトであり、ロアシャフト22がインナーシャフトであることとした。アッパーシャフト21がインナーシャフトであり、ロアシャフト22がアウターシャフトでもよい。以下の実施形態においても同様である。
なお、本実施形態においては、アッパーコラム31がアウターコラムであり、ロアコラム32がインナーコラムであることとした。アッパーコラム31がインナーコラムであり、ロアコラム32がアウターコラムでもよい。以下の実施形態においても同様である。
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図22及び図23は、本実施形態に係るステアリング装置100の製造方法の一例を示す図である。上述の実施形態と同様、ステアリング装置100の製造工程は、スプライン軸部43の表面の一部をキャップ部材70で覆った状態で、そのスプライン軸部43を液体状の合成樹脂に浸漬することを含む。図22に示すように、本実施形態においては、キャップ部材70にマグネット80が設けられている。キャップ部材70に設けられたマグネット80の磁力により、キャップ部材70と金属製のスプライン軸部43とが固定される。マグネット80によりキャップ部材70とスプライン軸部43とが固定された状態で、そのスプライン軸部43が液体状の合成樹脂に浸漬されることによって、図23に示すように、スプライン軸部43の表面の一部に合成樹脂膜61が形成される。
以上説明したように、本実施形態によれば、合成樹脂に対する浸漬中にキャップ部材70が脱落することが抑制される。したがって、第1スプライン軸部44に合成樹脂膜61が形成され、第2スプライン軸部45に合成樹脂膜61が形成されないようにすることができる。
なお、上述の実施形態においては、キャップ部材70が雌スプラインを有することとした。キャップ部材(マスク部材)70は、雌スプラインを有しなくてもよい。以下の実施形態においても同様である。
なお、合成樹脂膜61を設けない第2スプライン軸部45を製造する場合、スプライン軸部43の表面全体に合成樹脂膜61を形成した後、その合成樹脂膜61の一部を除去することによって、第2スプライン軸部45を形成してもよい。例えば、スプライン軸部43の表面に形成された合成樹脂膜61の一部が切削加工により除去されてもよい。以下の実施形態においても同様である。
なお、溶融状態の合成樹脂にスプライン軸部43を浸漬する前に、ショットブラストによりスプライン軸部43の表面が処理されてもよい。ショットブラストにより、スプライン軸部43の表面が粗面化される。ショットブラストの後、溶融状態の合成樹脂にスプライン軸部43が浸漬されることにより、スプライン軸部43の表面と合成樹脂膜61との密着性が向上する。以下の実施形態においても同様である。
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図24は、本実施形態に係るインナーシャフト22Bの一例を示す図である。図24に示すように、スプライン軸部43は、合成樹脂の表面を有する第1スプライン軸部44と、軸方向に関して第1スプライン軸部44の一方の隣に配置され、金属の表面を有する第2スプライン軸部45と、軸方向に関して第1スプライン軸部44の他方の隣に配置され、金属の表面を有する第3スプライン軸部49と、を含む。第3スプライン軸部49の外径は、第1スプライン軸部44の外径よりも小さい。第2スプライン軸部45の外径と第3スプライン軸部49の外径とは等しい。
本実施形態においては、軸方向に関してスプライン軸部43の中央部のみに合成樹脂膜61が形成され、スプライン軸部43の両端部に合成樹脂膜61は形成されない。
本実施形態によれば、合成樹脂の量が低減される。また、軸方向に関する第3スプライン軸部49の寸法を大きくして、軸方向に関するスプライン軸部43の全体の寸法を大きくすることによって、2次衝突において、テレスコ可動範囲を超えて、例えば第2スプライン軸部45が第2部分空間42に配置される程度までステアリングシャフト2が縮んでも、第3スプライン軸部49はスプライン穴部40に存在し続けることができる。すなわち、ステアリングシャフト2がテレスコ可動範囲を超えて縮んでも、スプライン軸部43とスプライン穴部40とのスプライン嵌合は維持される。これにより、2次衝突後において自動車を移動するとき、ステアリング装置100により操舵しながら車両を移動することができる。
<第4実施形態>
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図25は、本実施形態に係るインナーシャフト22の一例を示す側面図である。図26は、第1スプライン軸部44の一例を示す断面図であって、図25のB−B線矢視図に相当する。図27は、第2スプライン軸部45の一例を示す断面図であって、図25のC−C線矢視図に相当する。
インナーシャフト22は、スプライン穴部40とスプライン嵌合される第1スプライン軸部44と、軸方向に関して第1スプライン軸部44の一方の隣(後方)に配置される第2スプライン軸部(シャフト部)45と、軸方向に関して第1スプライン軸部44の他方の隣(前方)に配置される軸部28とを有する。第1スプライン軸部44の表面は、中心軸AXの周囲に配置される。シャフト部45の表面は、中心軸AXの周囲に配置される。
第1スプライン軸部44の表面に雄スプラインが形成される。軸部28の表面には雄スプラインは形成されない。なお、軸部28に雄スプラインが長く形成されていてもよい。本実施形態において、シャフト部45は、表面に雄スプラインを有する第2スプライン軸部を含む。
第1スプライン軸部44は、合成樹脂の表面を有する。第2スプライン軸部45は、軸方向に関して第1スプライン軸部44の一方の隣(後方)に配置され、インナーシャフト22の一端部(後端部)を含み、合成樹脂の表面を有する。インナーシャフト22の一端部は、内部空間25に配置される。インナーシャフト22の他端部は、軸部28を含み、内部空間25の外側に配置される。
中心軸AXと第2スプライン軸部45の表面との距離(半径)R2は、中心軸AXと第1スプライン軸部44の表面との距離(半径)R1よりも小さい。すなわち、第2スプライン軸部45の外径V2は、第1スプライン軸部44の外径V1よりも小さい。軸部28の外径は、第1スプライン軸部44の外径V1よりも小さい。
スプライン穴部40と第1スプライン軸部44とがスプライン嵌合される。第2スプライン軸部45のスプラインの歯たけは、第1スプライン軸部44のスプラインの歯たけよりも小さい。スプライン穴部40と第2スプライン軸部45とはスプライン嵌合可能である。これにより、軸方向に関してアウターシャフト21とインナーシャフト22とが相対移動可能である。また、アウターシャフト21の回転により、インナーシャフト22も回転する。
図25、図26、及び図27に示すように、インナーシャフト22は、少なくとも一部に雄スプラインが形成された金属製の芯材60を含む。第1スプライン軸部44の表面及び第2スプライン軸部(シャフト部)45の表面のそれぞれは、芯材60の表面に形成された合成樹脂膜61の表面である。本実施形態において、合成樹脂膜61は、例えばポリアミド系の合成樹脂製である。
次に、本実施形態に係るステアリング装置100の製造方法の一例について説明する。図5及び図6などを参照して説明したような、スプライン穴部40を含む内部空間25を有するアウターシャフト21が製造される。すなわち、スプライン穴部40と第1部分空間41と第2部分空間42とを有するアウターシャフト21が製造される。第1部分空間41は、軸方向に関してスプライン穴部40の一方の隣に形成される。第2部分空間42は、軸方向に関して第1部分空間41の一方の隣に形成される。
インナーシャフト22の製造において、まず、スプライン軸部43を含む金属製の芯材60が製造される。
図12及び図13に示したように、中心軸AXの周囲に配置される表面を有するスプライン軸部43を有する芯材60が製造される。スプライン軸部43は、雄スプラインを有する。スプライン軸部43の表面は、金属である。軸方向に関して、スプライン軸部43の外径は一定である。
次に、芯材60の一端部を含み、軸方向に関してスプライン軸部43の一部分45Bが加工される。芯材60の一端部は、内部空間25に配置されるインナーシャフト22の端部である。
本実施形態においては、一部分45Bのスプラインの先端部が切削加工により除去される。先端部が除去されたスプラインを有するスプライン軸部43の一部分45Bが第2スプライン軸部45となる。切削加工が行われなかった、スプライン軸部43の一部分44Bが第1スプライン軸部44となる。
図28は、切削加工後の芯材60の側面図である。図29は、図28のE−E線矢視図である。図30は、一部分45Bのスプラインの拡大図である。
図30において、寸法H1は、一部分44B(第1スプライン軸部44)のスプラインの歯たけを示す。寸法H2は、一部分45B(第2スプライン軸部45)のスプラインの歯たけを示す。
このように、スプライン軸部43の一部が切削加工されることにより、歯たけH1のスプラインを有する一部分44Bと、歯たけH2のスプラインを有する一部分45Bとが形成される。中心軸AXと一部分45Bの表面との距離(一部分45Bの半径)は、中心軸AXと一部分44Bの表面との距離(一部分44Bの半径)よりも小さい。以下の説明においては、一部分44Bを適宜、大径部44B、と称し、一部分45Bを適宜、小径部45B、と称する。本実施形態においては、切削加工により、スプライン軸部43から小径部45Bが形成される。
小径部45Bが形成された後、芯材60の大径部44B及び小径部45Bに合成樹脂が供給される。本実施形態においては、大径部44B及び小径部45Bが溶融状態の合成樹脂に浸漬される。
図31は、溶融状態の合成樹脂に浸漬された後の大径部44B及び小径部45Bの一例を示す模式図である。図32は、図31のF−F線矢視図である。図33は、図31のG−G線矢視図である。
大径部44B及び小径部45Bが溶融状態の合成樹脂に浸漬されることにより、それら大径部44Bの表面及び小径部45Bの表面のそれぞれに合成樹脂膜61が形成される。
溶融状態の合成樹脂に大径部44B及び小径部45Bを浸漬して合成樹脂膜61が形成された後、シェービング加工により、合成樹脂膜61が整形される。以上により、合成樹脂の表面を有する第1スプライン軸部44と、軸方向に関して第1スプライン軸部44の一方の隣に配置され、合成樹脂の表面を有する第2スプライン軸部(シャフト部)45と、を含むインナーシャフト22が製造される。
次に、インナーコラム32が、インナーシャフト22の周囲に配置される。図7などを参照して説明したように、インナーコラム32は、第2スプライン軸部45がインナーコラム32の一端部の端面46よりも外側に配置されるように、インナーシャフト22の周囲に配置される。インナーコラム32は、軸方向に関するインナーシャフト22との相対位置が実質的に固定されるように、インナーシャフト22の周囲に配置される。
また、アウターコラム31が、アウターシャフト21の周囲に配置される。図7などを参照して説明したように、アウターコラム31は、軸方向に関してアウターシャフト21の他端部の端面48とアウターコラム31の他端部の端面47とが同一平面内に配置されるように、アウターシャフト21の周囲に配置される。アウターコラム31は、軸方向に関するアウターシャフト21との相対位置が実質的に固定されるように、アウターシャフト21の周囲に配置される。
次に、第2スプライン軸部45及び第1スプライン軸部44がアウターシャフト21の内部空間25に挿入され、軸方向に関してアウターシャフト21とインナーシャフト22とが相対移動するように、スプライン穴部40と第1スプライン軸部44とがスプライン嵌合される。第2スプライン軸部45がアウターシャフト21の内部空間25に挿入されるとき、インナーコラム32もアウターコラム31に挿入され、アウターコラム31とインナーコラム32とが結合される。
本実施形態においては、第2スプライン軸部45は、第1スプライン軸部44よりも小径である。したがって、インナーシャフト22をアウターシャフト21に挿入するとき、第2スプライン軸部45から挿入することによって、その挿入作業を円滑に行うことができる。
また、第2スプライン軸部45は、小径であるため、挿入作業のとき、第2スプライン軸部45とアウターシャフト21の少なくとも一部との接触が抑制される。したがって、第2スプライン軸部45の表面状態の悪化が抑制される。第2スプライン軸部45とアウターシャフト21との接触により、第2スプライン軸部45の表面の合成樹脂が損傷すると、その損傷により、合成樹脂の表面状態が変化(悪化)する可能性がある。また、その損傷部分から合成樹脂に亀裂が発生し、合成樹脂が剥離する可能性がある。本実施形態においては、挿入先端部である第2スプライン軸部45が小径であるため、第2スプライン軸部45とアウターシャフト21との接触が抑制されるので、第2スプライン軸部45の表面状態の悪化が抑制される。
図20に示したように、テレスコ最小状態において、第2スプライン軸部45は、第1部分空間41に配置され、スプライン穴部40に配置されない。本実施形態において、第2スプライン軸部45は、第1部分空間41のテーパ部41Tに配置される。
テレスコ最小状態において、第1スプライン軸部44の全部が、スプライン穴部40に配置される。すなわち、第2スプライン軸部45が第1部分空間41に配置され、スプライン穴部40とスプライン嵌合していない状態において、第1スプライン軸部44は、スプライン穴部40に配置され、スプライン穴部40とスプライン嵌合した状態である。
図21に示したように、テレスコ最大状態において、第2スプライン軸部45の少なくとも一部がスプライン穴部40に配置される。なお、図21に示す例では、テレスコ最大状態において、第2スプライン軸部45の一部が第1部分空間41に配置される。なお、テレスコ最大状態において、第2スプライン軸部45の全部がスプライン穴部40に配置されてもよい。
テレスコ最大状態において、第1スプライン軸部44の全部が、スプライン穴部40に配置される。すなわち、テレスコ最大状態においては、第1スプライン軸部44がスプライン穴部40とスプライン嵌合されるとともに、第2スプライン軸部45の少なくとも一部がスプライン穴部40とスプライン嵌合される。
本実施形態においては、テレスコ最小状態及びテレスコ最大状態の両方において、第1スプライン軸部44の全部がスプライン穴部40に配置される。本実施形態においては、テレスコ可動範囲において、第1スプライン軸部44はスプライン穴部40の内側に配置され続ける。
本実施形態において、2次衝突が発生した場合、ステアリングシャフト2及びステアリングコラム3は、テレスコ可動範囲を超えて縮む。2次衝突が発生したとき、インナーシャフト22の第2スプライン軸部45の少なくとも一部が、アウターシャフト21の第2部分空間42に配置されるまで、ステアリングシャフト2が縮む。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1スプライン軸部44の表面が合成樹脂であるため、第1スプライン軸部44とスプライン穴部40とがスプライン嵌合されたとき、第1スプライン軸部44の雄スプラインとスプライン穴部40の雌スプラインとのクリアランスに起因するがたつきの発生、操舵感の悪化、及び異音の発生などが抑制される。
本実施形態において、インナーシャフト22は、第1スプライン軸部44よりも小径の第2スプライン軸部(シャフト部)45を有する。ステアリング装置100の製造工程において、アウターシャフト21の内部空間25にインナーシャフト22を挿入するとき、第2スプライン軸部45が挿入先端部となる。これにより、インナーシャフト22をアウターシャフト21に挿入する工程を含むステアリング装置100の製造が円滑に行われる。
また、第2スプライン軸部45は、小径である。そのため、インナーシャフト22をアウターシャフト21に挿入する工程において、第2スプライン軸部45がアウターシャフト21に接触することが抑制される。第2スプライン軸部45とアウターシャフト21との接触により、第2スプライン軸部45の表面状態が変化(悪化)すると、軸方向に関してアウターシャフト21とインナーシャフト22とを相対移動させてステアリングシャフト2を伸縮させるときの力(摺動力)が変化(増大)する可能性がある。本実施形態によれば、第2スプライン軸部45の表面状態の変化が抑制される。したがって、摺動力の安定化が図られ、ステアリングシャフト2は円滑に伸縮される。これにより、ステアリング装置100の性能の低下が抑制される。
また、本実施形態においては、大径部44B及び小径部45Bを有する金属製の芯材60を製造した後、その大径部44B及び小径部45Bのそれぞれに合成樹脂を供給することによって、合成樹脂膜61をそれぞれ有する大径の第1スプライン軸部44と小径の第2スプライン軸部45とが円滑に製造される。
また、本実施形態においては、第1スプライン軸部44の雄スプラインとスプライン穴部40の雌スプラインとは、十分に噛み合うことができる。第2スプライン軸部45の雄スプラインとスプライン穴部40の雌スプラインとは、僅かに噛み合うことができる。第1スプライン軸部44及び第2スプライン軸部45の両方がスプライン穴部40とスプライン嵌合することができ、スプライン嵌合の安定化が図られる。
また、本実施形態においては、アウターシャフト21の内部空間25は、スプライン穴部40と第1部分空間41と第2部分空間42とを含む。第1部分空間41が設けられ、大径部41Pが設けられることにより、図8を参照して説明したように、アウターシャフト21の外面とアウターコラム31の内面との距離G1を小さくすることができる。したがって、ロック状態においてステアリングシャフト2が無理やり回転されても、ロック状態が解除され難いロック機構12が提供される。
本実施形態においては、ロック機構12のようなステアリング装置100の付加機構の設置のために、軸方向に関するアウターシャフト21のスプライン穴部40の寸法(スプライン長)が制限されても、第2スプライン軸部45が第1部分空間41に配置され、第1スプライン軸部44がスプライン穴部40に配置されるように各部の寸法が調整されることによって、第1スプライン軸部44とスプライン穴部40とのスプライン嵌合は安定化される。
本実施形態において、第2スプライン軸部45が第1部分空間41(テーパ部41T)に配置されている状態において、その第2スプライン軸部45の表面とアウターシャフト21の内面との間に間隙が形成される。すなわち、第2スプライン軸部45が第1部分空間41(テーパ部41T)に配置されている状態において、その第2スプライン軸部45の表面に部材は接触しない。第2スプライン軸部45の表面に部材が接触していない状態で温度が上昇しても、第2スプライン軸部45は小径なので、熱膨張後の合成樹脂を含む第2スプライン軸部45の外径は、第1スプライン軸部44の外径よりも小さい。したがって、第2スプライン軸部45を第1部分空間41からスプライン穴部40に移動させても、第2スプライン軸部45は、第1部分空間41からスプライン穴部40に円滑に移動できる。すなわち、温度が上昇したときに第2スプライン軸部45が第1部分空間41からスプライン穴部40に移動するようにステアリングシャフト2が伸ばされても、摺動力の変化が抑制される。
また、本実施形態においては、テレスコ最小状態で、第2スプライン軸部45が第1部分空間41に配置され、第1スプライン軸部44がスプライン穴部40に配置される。製品であるステアリングシャフト2が輸送されるとき、輸送の効率化の観点から、ステアリングシャフト2はテレスコ最小状態で輸送される場合が多い。例えばステアリングシャフト2が低温な製品製造国から高温の車両組立国に輸送される場合においても、テレスコ最小状態において第1部分空間41に配置される第2スプライン軸部45は小径であり、第2スプライン軸部45の合成樹脂が熱膨張したとしても、第2スプライン軸部45の外径は、第1スプライン軸部44の外径よりも小さい。そのため、熱膨張に起因する摺動力の増大が抑制される。また、ステアリングシャフト2が伸びることにより、第1スプライン軸部44及び第2スプライン軸部45の両方がスプライン穴部40とスプライン嵌合することができる。
また、本実施形態においては、テレスコ可動範囲において、第1スプライン軸部44はスプライン穴部40の内側に配置され続ける。これにより、第1スプライン軸部44の周囲に常にスプライン穴部40が存在するため、合成樹脂膜61の熱膨張は抑制される。また、第1スプライン軸部44とスプライン穴部40との間に常に合成樹脂が存在するため、ステアリングシャフト2が回転されたときのがたつきの発生、操舵感の悪化、及び異音の発生などが抑制される。
また、本実施形態においては、内部空間25は、第2部分空間42を含み、アウターシャフト21は、小径部42Pを有する。これにより、ステアリングシャフト2のコンパクト化が図られる。また、軸受23でアウターシャフト21を支持する場合、小径部42Pと接続された軸部27が軸受23で支持されることにより、軸受23の大型化が抑制される。
また、本実施形態において、第2スプライン軸部45は、軸方向に関してインナーコラム32の一端部よりも外側に配置され、軸方向に関して、アウターコラム31の他端部の端面47とアウターシャフト21の他端部の端面48とは、同一平面内に配置される。これにより、インナーシャフト22をアウターシャフト21に挿入する工程が円滑に行われる。また、インナーシャフト22及びインナーコラム32とアウターシャフト21及びアウターコラム31とは十分に嵌まり合い、スプライン嵌合の剛性が確保される。したがって、ステアリング装置100の性能の低下が抑制される。
なお、本実施形態においては、アッパーシャフト21がアウターシャフトであり、ロアシャフト22がインナーシャフトであることとした。アッパーシャフト21がインナーシャフトであり、ロアシャフト22がアウターシャフトでもよい。以下の実施形態においても同様である。
なお、本実施形態においては、アッパーコラム31がアウターコラムであり、ロアコラム32がインナーコラムであることとした。アッパーコラム31がインナーコラムであり、ロアコラム32がアウターコラムでもよい。以下の実施形態においても同様である。
<第5実施形態>
第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本実施形態においては、シャフト部450が、スプラインを有しない円筒部である例について説明する。以下、本実施形態に係るインナーシャフト220の製造方法の一例について説明する。
図34は、本実施形態に係る芯材600の一例を示す図である。図35は、図34のH−H線矢視図である。図36は、図34のI−I線矢視図である。本実施形態において、芯材600は、円筒状(円柱状)であり、スプラインを有しない。芯材600は、直径Daの第1部分601と、直径Dbの第2部分602と、直径Dcの第3部分603とを有する。直径Dbは、直径Da及び直径Dcよりも大きい。直径Daと直径Dcとは等しくてもよいし、異なってもよい。第1部分601は、シャフト部450となる部分である。第2部分602は、第1スプライン軸部44となる部分である。第3部分603は、軸部28となる部分である。
芯材600のうち、第2部分602が加工(スプライン加工)される。図37は、加工後の芯材600の一例を示す図である。図38は、図37のJ−J線矢視図である。図39は、図37のK−K線矢視図である。
第2部分602が加工されることにより、スプラインが形成される。加工後の第2部分602は、第1スプライン軸部44となる。なお、スプラインの形成は、プレス押し出し成形でもよいし、転造成形でもよい。
第1部分601は加工されない。これにより、円筒状の第1部分601及び雄スプラインが形成された第2部分602を有する芯材600が製造される。その後、第1部分601及び第2部分602が溶融状態の合成樹脂に浸漬される。以上により、円筒状のシャフト部450を有するインナーシャフト220が製造される。
<第6実施形態>
第6実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図40は、本実施形態に係るインナーシャフト220Bの一例を示す図である。図40に示すように、インナーシャフト220Bは、合成樹脂の表面を有する第1スプライン軸部44と、軸方向に関して第1スプライン軸部44の一方の隣に配置され、合成樹脂の表面を有するシャフト部45と、軸方向に関して第1スプライン軸部44の他方の隣に配置され、金属の表面を有する第3スプライン軸部49と、を含む。第3スプライン軸部49の外径は、第1スプライン軸部44の外径よりも小さい。
本実施形態によれば、合成樹脂の量が低減される。また、軸方向に関する第3スプライン軸部49の寸法を大きくして、軸方向に関するスプライン軸部43の全体の寸法を大きくすることによって、2次衝突において、テレスコ可動範囲を超えて、例えばシャフト部45が第2部分空間42に配置される程度までステアリングシャフト2が縮んでも、第3スプライン軸部49はスプライン穴部40に存在し続けることができる。すなわち、ステアリングシャフト2がテレスコ可動範囲を超えて縮んでも、スプライン軸部43とスプライン穴部40とのスプライン嵌合は維持される。これにより、2次衝突後において自動車を移動するとき、ステアリング装置100により操舵しながら車両を移動することができる。