JP6032576B2 - 銅系材料 - Google Patents

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Description

本発明は、銅又は銅合金材料の表面に、銅とは異なる金属元素からなる薄い表面処理層を設けることにより、表面の変色及び酸化が低減された装飾材料用又は導電材料用の銅系材料に関する。
日常生活の中で、さまざまな商品(家、家具、車、家電製品、道具、嗜好品、アクセサリー、日常雑貨等)が存在するが、それら商品の価値を決定するものとして、実用性、機能の他、美的外観が挙げられる。美的外観を求める装飾品においては、形、色、艶等が、その価値を高める要因となっている。純銅系材料が持つ淡いピンク色及びその光沢は、古くから好まれ、装飾用の材料として利用されてきた。
また、銅は、銀に次いで電気伝導率が高いため、ケーブルを始めとした多くの導電用部材として利用されている。純銅系導体としては、無酸素銅、タフピッチ銅が代表的であり、線若しくは板状材料、又はめっきとして利用される。
装飾用としての銅素材には、その表面に、ベンゾトリアゾール等の防錆剤を塗布して、銅素材の酸化を抑制することが行われているが、大気環境下で放置した場合、経年に伴い、その色や光沢は劣化し、純銅としての本来の美的外観が損なわれる。銅の場合、自然酸化膜としての数nmの厚さの初期の酸化膜が生じるが、その後この酸化膜の厚さが、数十nmの厚さに成長しただけでも、外観の色調は大きく変化し、光沢も低下してしまう。これは、銅表面に、主に銅と酸素が結合した酸化物(Cu2OやCuO)を形成し、時間とともにその厚さが増大するためである。
一方で、この耐食性向上を目的として、銅素材に添加元素を加えて、銅素材自体を合金化するという考え方がある。また、銅材表面に、亜鉛(Zn)めっきを施した後、拡散加熱処理を行うことで、亜鉛(Zn)濃度が10〜40%である銅―亜鉛(Cu−Zn)の層を形成し、耐食性のある銅系部材とする手法がある(例えば、特許文献1参照)。
特開昭62−040361号公報 国際公開2007/108496号公報 特開2008−045203号公報 特開2004−176082号公報 特開2001−059198号公報 特開2010−163641号公報
しかし、本発明者等の検討によると、このような銅系部材を用いたとしても、例えば、環境温度、又は環境温度及び動作温度を合わせた温度が100℃以上に達する自動車、又は車両用の動力及び信号伝達用ケーブル導体として使用した場合、製品に求められる要求性能、つまり、高温での長時間の使用に対する耐食性(耐酸化性)は、未だ十分に満足し得るものではないことが判明している。
また、近年では、アモルファス合金が、原子が密に詰まった構造を有することから、優れた耐食性を示すとの報告がなされている(例えば、特許文献2〜6参照)。
上述のアモルファス合金は、優れた耐食性を有する点において利点を有するが、複数の金属元素を利用して合金化された材料を必要とするため、製造工程が煩雑化してしまう欠点があり、合金化されていない亜鉛元素を使用してアモルファス層を形成する技術については、未だ十分な検討がなされていない。
本発明の目的は、高温環境下における長時間の使用に耐え得る耐食性(耐酸化性)を有し、かつ、簡易な手法によりアモルファス層を形成することができる銅系材料を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の銅系材料が提供される。
(1)銅を主成分とする基材と、前記基材の表面に配置され、銅よりも酸素との親和性が高い金属及び酸素を含有し、RHEED分析による電子線の回折像がハローパターンを示す層と、を備えた銅系材料。
本発明によれば、高温環境下における長時間の使用に耐え得る耐食性(耐酸化性)を有し、かつ、簡易な手法によりアモルファス層を形成することができる銅系材料を提供することができる。
本発明の一の実施の形態に係る銅系材料を模式的に示す断面図である。 本発明の他の実施の形態に係る銅系材料を模式的に示す断面図である。 本発明の実施例3に係る銅系材料の恒温(100℃)保持試験における1000時間試験品の、表層からスパッタを繰り返しながら深さ方向のオージェ元素分析を行った結果を示すグラフである。 本発明の実施例3及び比較例4に係る銅系材料の恒温(100℃)保持試験における、表層からの酸素進入深さ(酸化膜厚さ)の時間変化を示すグラフ図である。 本発明の実施例に係る銅系材料のRHEED分析結果を示す電子線の回折像である。
[実施の形態の要約]
本実施の形態の銅系材料は、銅を主成分とする基材と、基材の表面に形成された、アモルファス層を有する表面処理層とを備えて構成された銅系材料において、アモルファス層は、銅よりも酸素との親和性が高い金属元素(例えば、亜鉛)及び酸素、並びに必要に応じて基材から拡散した銅を含有して構成されたものである。
以下に、本発明の一の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の他の実施の形態に係る銅系材料を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る銅系材料1は、銅を主成分とする基材2と、基材2の表面に形成された、アモルファス層を有する表面処理層3とを備えて構成され、このアモルファス層は、例えば、銅よりも酸素との親和性が高い金属元素(例えば、亜鉛)及び酸素、又は銅よりも酸素との親和性が高い金属元素(例えば、亜鉛)、酸素及び基材2から拡散した銅を含有している。元素がランダムに配置されるアモルファス層は、元素が規則正しく配列した結晶質層と比較して緻密な構造と考えられるため、このアモルファス層が、銅素材の酸化の原因である表面処理層の表面への銅の拡散、又は銅素材中へ酸素の進入、及びその結果としての、銅及び酸素が結合することを阻止するバリア層として機能すると考えられる。
このアモルファス層を形成するためには、酸素及び銅以外の他の金属元素が優先的に結合することが必要であり、そのアモルファス層の形成を促進するためには、基材2である銅よりも酸素との親和性が高い金属元素(例えば、亜鉛)が基材の表面に配置されていることが好ましい。
なお、図2に示すように、本発明の他の実施の形態に係る銅系材料4として、表面処理層5は、アモルファス層7と、アモルファス層7の下に形成された、銅及び銅よりも酸素との親和性が高い金属元素(例えば、亜鉛)からなる拡散層6、又は、銅、銅よりも酸素との親和性が高い金属元素及び酸素からなる拡散層6を有するものであってもよい。
このように構成された本実施の形態に係る銅系材料は、装飾用途の部材及び導電用途の部材のいずれの用途に対しても広く耐食性(耐酸化性)を有し、特に、高温環境下での長時間の使用に耐え得る耐食性(耐酸化性)を有する。
以下、本実施の形態に係る銅系材料のさらに具体的な構成について説明する。
本実施の形態に係る銅系材料1に用いられる表面処理層3(拡散層6を有する銅系材料4の場合は表面処理層5)の厚さは、拡散層6の厚さ及び加熱処理条件にもよるが、3.6nm以上0.6μm以下が好ましい。
また、拡散層6を有する場合、アモルファス層7の厚さとしては、特に制限はないが、3.0nm以上が好ましい。
また、拡散層6の厚さは、その下限値としては特に制限はなく、心材としての銅が被覆されていればよく、実用上の下限の被覆厚さは3nm程度である。
また、拡散層6の厚さは、0.5μm以下が好ましい。0.5μmを超えると、高い耐食性の発現に寄与するアモルファス層7が安定して形成されにくくなることがある。
表面処理層3、すなわちアモルファス層(拡散層6を有する場合はアモルファス層7)を構成する、銅よりも酸素との親和性が高い金属元素としては、亜鉛以外に、例えば、Ti,Mg,Al,Fe,Sn,Mn等を挙げることができる。とりわけ、リサイクルの観点から、銅の製造時に酸化除去し易いTi及びMgが好ましい。
基材2を構成する、銅を主成分とする材料としては、必ずしも純銅である必要はなく、本発明の効果を奏する限りにおいては、銅合金を使用することも可能であり、例えば、無酸素銅、タフピッチ銅等を使用することができる。具体的には、3〜15質量ppmの硫黄と、2〜30質量ppmの酸素と、5〜55質量ppmのTiとを含む希薄銅合金等を使用することができる。
また、表面処理層3又は5は、異種元素が界面で接する拡散層を含むため、異種元素界面で、通常なだらかな濃度変化を示すものであり、表面処理層の厚さの定義が難しい。そこで、本発明においては、表面処理層の厚さを、「銅よりも酸素との親和性が高い金属元素及び酸素、並びに必要に応じて銅を含有する層の厚さであり、かつ、その層を構成する元素のいずれをも、元素含有比率としての原子濃度(at%)として、2at%以上含有する層の厚さ)」と定義した。
本実施の形態の銅系材料は、銅よりも酸素との親和性が高い金属元素が、例えば、亜鉛である場合には、最終製品のサイズ及び形状にて、銅系導体の表面に電解めっきでZn層を形成した後、そのまま50℃以上150℃以下の温度で30秒以上60分以下の時間の条件で大気中にて加熱することで少なくとも、亜及び酸素からなるアモルファス層を含有した表面処理層を有する銅系材料を製造することができる。つまり、銅を主成分とする基材の表面に、亜鉛を被覆して所定の加熱処理を施すだけの簡易な手法によりアモルファス層を形成することができる。なお、表面処理層は、基材の片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
また、その他の実施の形態として、最終製品サイズ、形状に加工する前に、予め亜鉛からなるめっきを行い、その後、最終製品サイズ、形状に加工し、被覆層を0.5μm以下とする方法で製造したものであってもよい。
本発明の銅系材料は、導電材料、飾り物、文字プレート等の装飾材料等への適用が可能である。
また、その他、本発明の銅系材料は、高周波用導体を用いたケーブル、アンテナ、高周波同軸ケーブル用の導体、可とう楕円導波管等への適用が可能である。
また、本発明の銅系材料の製造方法では、上述のように、被覆層を、50℃以上150℃以下の温度で、30秒以上60分以下の時間で加熱処理することが好ましい。また、Zn層の形成は、めっき法を好ましく用いることができる。なお、めっき法のほか、スパッタ法、真空蒸着法、クラッド法等を用いることもできる。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。ここで、本発明の実施例1〜6及び比較例1〜5の概略を、表1に示す。
実施例1〜6及び比較例1〜5の詳細については、後述するが、表1における実施例1〜6、及び比較例1〜5は、概略として、基材としての銅からなる平板上に、種々の厚さの亜鉛の被覆層を電解めっきにより形成し、作製したものである。
すなわち、実施例1〜6の銅系材料は、タフピッチ銅からなる平板上に、0.002〜0.45μmの亜鉛めっきの厚さを変えた被覆層を形成し、その後、大気中で焼鈍をして作製したものである。
また、比較例1の銅系材料は、銅系材料の特性に及ぼす亜鉛層の厚さの影響を評価すべく、厚さを変化させた亜鉛層を形成し、その後、実施例1と同様の加熱処理をしたものであり、比較例2及び3の銅系材料は、銅系材料の特性に及ぼす加熱処理条件の影響を評価すべく、加熱処理条件を変化させ(比較例2)、又は加熱処理をせずに(比較例3)、作製したものである。
さらに、比較例4及び5として、タフピッチ銅(比較例4)、及びCu−30質量%Zn合金(比較例5)を用意した。
表1において、アモルファス層の存在の確認は、RHEED分析(Reflection High Energy Electron Diffraction)により行った。アモルファス層の存在を示すハローパターンが確認できたものを「有」、結晶質の構造を示す電子線の回折斑点が確認できたものを「無」とした。
なお、表1において、作製した各銅系材料の外観、耐食性、総合評価は、以下のようにして行った。
「外観」は、100℃に設定した恒温槽において、大気中で1000時間まで保持する恒温保持試験、及び温度85℃×湿度85%の試験槽中で100時間保持する試験を実施し、評価した。試験前後の色、光沢の変化で判断し、最も変化の少ないものを◎、最も変化が大きく外観上劣化したものを×、その中間を△とした。
「耐食性」は、100℃に設定した恒温槽において、大気中で1000時間まで保持し、試験後に計測された酸化膜の増加量により評価した。初期(試験前)と比較して最も変化が少ないものを◎、最も変化が大きく、劣化していたものを×とし、その中間をその変化の程度に応じてそれぞれ○、△とした。定量的な基準としては、初期(試験前)の酸化膜の厚さと比較し、1000時間後の酸化膜の厚さが3倍以上となったものは、外観の変化によらず全て×とした。
「総合評価」は、これらの項目を総合的に評価して、◎最良、○良好、△不足、×不適と判断した。
以下に、実施例1〜6及び比較例1〜5の詳細を示す。
[実施例1]
純Cu(タフピッチ銅;以下TPC)からなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.002μmの亜鉛からなる被覆層を形成し、その後、50℃の温度で10分間、大気中で加熱処理して、表面処理層を備えた銅系材料を作製した。作製した銅系材料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)からなる群から選択された2種又は3種で構成される表面処理層が、0.003μmの厚さに形成されていることを確認した。
[実施例2]
実施例2では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.005μmのZn層を形成し、その後、50℃の温度で1時間、大気中で加熱処理した銅系材料を作製した。作製した銅系材料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)からなる群から選択された2種又は3種で構成される表面処理層が、0.006μmの厚さに形成されていることを確認した。
[実施例3]
実施例3では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.008μmのZn層を形成し、その後、100℃の温度で5分間、大気中で加熱処理した銅系材料を作製した。作製した銅系材料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)からなる群から選択された2種又は3種で構成される表面処理層が、0.01μmの厚さに形成されていることを確認した。
[実施例4]
実施例4では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.04μmのZn層を形成し、その後、120℃の温度で10分間、大気中で加熱処理した銅系材料を作製した。作製した銅系材料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)からなる群から選択された2種又は3種で構成される表面処理層が、0.05μmの厚さに形成されていることを確認した。
[実施例5]
実施例5では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.08μmのZn層を形成し、その後、150℃の温度で30秒間、大気中で加熱処理した銅系材料を作製した。作製した銅系材料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)からなる群から選択された2種又は3種で構成される表面処理層が、0.1μmの厚さに形成されていることを確認した。
[実施例6]
実施例6では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.45μmのZn層を形成し、その後、150℃の温度で30秒間、加熱処理した銅系材料を作製した。作製した銅系材料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)からなる群から選択された2種又は3種で構成される表面処理層が、0.5μmの厚さに形成されていることを確認した。
[比較例1]
比較例1では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.95μmのZn層を形成し、その後、100℃の温度で5分間、大気中で加熱処理した銅系材料を作製した。作製した銅系材料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)からなる群から選択された2種又は3種で構成される表面処理層が、1μmの厚さに形成されていることを確認した。
[比較例2]
比較例2では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.02μmのZn層を形成し、銅系材料を作製した。
[比較例3]
比較例3では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.01μmのZn層を形成し、その後、400℃の温度で30秒間、大気中で加熱処理した銅系材料を作製した。作製した銅系材料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)からなる群から選択された2種又は3種で構成される表面処理層が、0.02μmの厚さに形成されていることを確認した。
[比較例4]
比較例4では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を評価試料とした。
[比較例5]
比較例5では、Cu−30質量%Zn合金(黄銅)の厚さ0.5mmの平板を評価試料とした。
図3は、実施例3に係る銅系材料の恒温(100℃)保持試験における1000時間試験品の、表層からスパッタを繰り返しながら深さ方向のオージェ元素分析を行った結果を示すグラフである。横軸は表面からの深さ(nm)、縦軸は原子濃度(at%)を表し、実線は酸素の含有比率としての原子濃度(at%)、長い破線は亜鉛の原子濃度、破線は銅の原子濃度を示している。酸素進入深さは、表面から8nm程度であり、特に深さ0〜3nmの表層部位における平均元素含有比率を(深さ0〜3nmでの各元素の最大原子濃度−最小原子濃度)/2と定義すると、実施例3では、亜鉛(Zn)が37at%、酸素(O)が50at%、銅(Cu)が13at%であった。
また、他の実施例を含めると、上記平均元素含有比率は、亜鉛(Zn)が35〜68at%、酸素(O)が30〜60at%、銅(Cu)が0〜15at%の範囲にあることがわかった。
一方、比較例1の銅系材料は、亜鉛(Zn)が33at%、酸素(O)が41at%、銅(Cu)が26at%であり、比較例5の銅系材料は、亜鉛(Zn)が5at%、酸素(O)が46at%、銅(Cu)が49at%であった。
図4は、実施例3及び比較例4に係る銅系材料の恒温(100℃)保持試験における、表層からの酸素進入深さ(酸化膜厚さ)の時間変化を示すグラフ図である。酸素進入深さは、各時間保持したサンプル表面から、スパッタを繰り返しながら、深さ方向にオージェ分析を行うことで求めた。図4において、横軸は100℃等温保持時間(h)、縦軸は酸素進入深さ(nm)を表し、実線は実施例3、破線は比較例4及び5の酸素進入深さを示している。なお、比較例1は点で示されている。
実施例3では、図3に示すように、3600時間保持経過後の状態で、表面近傍での酸素濃度が増加しているものの、その進入深さは試験前と殆ど変化せず約0.01μm以下であり、実施例3の銅系材料は高い耐酸化性を示した。
一方、図4に示すように、恒温保持試験前の比較例4(タフピッチ銅)及び比較例5では酸素を含む層の厚さが表面から約0.006μm程度と、恒温保持試験前の実施例3と同程度の深さであったが、3600時間保持試験後の比較例4では、表面近傍での酸素濃度が恒温保持試験前に比較して顕著に増加し、さらに、比較例4の酸素進入深さは約0.036μmと試験前の5倍以上となり、比較例5の酸素進入深さは約0.078μmと試験前の13倍となった。また試験後の比較例4及び比較例5では外観上も赤茶系に変色しており、明らかに酸素を含む層が厚く形成されていると判断することができた。また、TPCに0.95μmのZn層を形成した比較例1は1000時間保持試験後に既に酸素進入深さが約0.080μmに達していた。
耐食性に優れた実施例3の表面をRHEED分析した結果を図5に示す。電子線の回折像は、ハローパターンを示しており、表1にも示すとおり、表面にアモルファス層が形成されていることがわかった。一方、耐食性に劣る比較例4は、銅及び酸素で構成される結晶質であることが確認された。
また、表1によれば、厚さを0.003〜0.5μmに変化させた表面処理層をもち、かつ、その表面処理層がアモルファス構造を有している実施例1〜6の外観及び耐食性の評価は良好であった。特に、表面処理層の厚さが0.006〜0.05μmの場合、優れた特性を示した。
以上の結果から、実施例1〜6に示す構造は、表面酸化の進行がなく、100℃×1000時間にも及ぶ恒温保持試験、及び、85℃×85%の環境でも安定した表面状態を保っていることが確認された。
一方、同じくZn系の表面処理層を持つ比較例1〜3であっても、良好な特性が得られない場合が認められた。比較例1のように、亜鉛の厚さが厚い場合、比較例2のようにめっき後の加熱処理を実施していない場合、比較例3のようにめっき後に過剰な加熱処理を行った場合等、表層にアモルファスが形成されないものはいずれも、耐食性の評価結果は不良となった。
以上の結果から、加熱処理の条件としては、酸素を1%以上含む雰囲気中で50℃以上であることが好ましいことが確認された。
コスト(経済性)に関して、本発明の実施例1〜6は、材料そのものの耐食性に優れているが材料コストが高い貴金属コーティング等を必要とせず、安価なZnを使用し、しかもその厚さが極めて薄いため、生産性と経済性に極めて優れている。
上述の結果から総合的に判断すると、実施例1〜6に示す本発明によれば、高温環境下における長時間の使用に耐え得る耐食性(耐酸化性)を有し、かつ、簡易な手法によりアモルファス層を形成することができ、銅系の装飾用材料及び導電材料として好適である銅系材料及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、銅又は銅合金材料本来の色や光沢を有し、それらの表面酸化による劣化を低減させた銅系の装飾用材料及び導電材料を得ることができる。
また、心材(基材)としての銅及び銅合金は、一般的なタフピッチ銅、無酸素銅に制限されるものではなく、高純度銅や上述したいわゆる希薄銅合金に対しても、本発明の方法は適用が可能である。
1 銅系材料
2 基材
3 表面処理層
4 銅系材料
5 表面処理層
6 拡散層
7 アモルファス層

Claims (3)

  1. 銅を主成分とする基材と、
    前記基材の表面に配置され、銅よりも酸素との親和性が高い金属及び酸素を含有する金属酸化物層を有する表面処理層とを備え、
    前記金属酸化物層は、RHEED分析による電子線の回折像がハローパターンを示す銅系材料。
  2. 前記表面処理層は、前記金属酸化物層の下に、さらに、銅及び銅よりも酸素との親和性が高い金属元素からなる拡散層、又は銅、銅よりも酸素との親和性が高い金属元素及び酸素からなる拡散層を有する請求項1に記載の銅系材料。
  3. 前記金属酸化物層は、前記基材から拡散した銅をさらに含有した請求項1または2に記載の銅系材料。
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