JP6325529B2 - ポリ乳酸の精製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、脂肪族ポリエステルの精製方法およびその方法で精製された脂肪族ポリエステルに関する。
近年、石油資源の枯渇が懸念されることや、廃棄物処理等が自然環境保護等の見地から問題となっている。特に、一般的な汎用高分子材料の成形品や加工品は、廃棄物として埋め立てた場合、微生物等による分解性および崩壊性がほとんどないため、異物として半永久的に残存する可能性がある。さらに、ポリマの加工安定性や製品寿命を長くする目的等で添加される、可塑剤等の添加剤が溶出して環境を汚染する可能性があること等が問題となっている。また、廃棄物として焼却する場合には、燃焼熱量が高いことにより、炉を損傷し得ること、燃焼により発生する排煙や排ガスが、環境汚染の原因となり得ることが問題視されている。
このような背景から、自然環境中で分解可能な生分解性ポリマおよびその成形品が求められ、脂肪族ポリエステル等の自然分解性樹脂の研究が活発に行われている。脂肪族ポリエステルの中でも特に乳酸系ポリマは融点が例えば170〜180℃と十分に高く、しかも透明性に優れるため、包装材料や透明性を生かした成形品等として大いに期待され、一部は商品化されている。また、乳酸系ポリマは、強靱でありながら、水の存在下では容易に加水分解する特性を有するため、それを環境中に放棄しても、環境に与える影響は従来の汎用樹脂に比べ軽減される。また、医療用材料として生体内に留置された場合には、生体内分解吸収性の性質を持ち、分解物が低毒性であること、生体内で分解および吸収されるので生体にやさしいという優れた性質等から、ドラッグデリバリシステム(DDS)や骨固定材、ステント等の医療用材料として期待され、一部が商品化されている。
脂肪族ポリエステルは、例えば、重合開始剤および触媒の存在下、脂肪族環状エステルの開環重合により得られる(例えば、特許文献1参照)。乳酸系ポリマは、環状エステルであるラクチドを単独または生分解性を有する他のモノマとの組み合わせのいずれかにおいて、ポリマの融点以上の温度で開環重合する方法か、ヒドロキシカルボン酸である乳酸を単独または生分解性を有する他のモノマと組み合わせて縮合重合する方法等の方法により得られる。さらには、固相重合等と組み合わせる方法も知られている。
一般に、乳酸系ポリマの成形加工においては、ポリマの融点以上に加熱されるため、ポリマの精製度合い等によっては、加水分解、解重合および環式オリゴマ化、ならびに分子間および分子内エステル交換反応等が起こることが知られている。特に、成形加工前のポリマの乾燥が不十分であると、加工中に加水分解し、得られる成形体が十分な物性を確保できないことがある。さらに、乳酸系ポリマ中に残存する重合触媒が、解重合触媒として働き、ポリマがモノマに分解されるため、成形加工性を悪化させたり、成形体の物性低下を来したりすることがある。
また、乳酸系ポリマの成形加工においては、残存触媒や残留モノマが多いと、成形加工中の着色を著しく促進し、得られる成形体の外観を著しく損なうばかりでなく、熱安定性等の安定性を低下させることがある。通常は、これらの影響を軽減する目的で、ポリマに熱安定剤や加工安定剤、酸化防止剤や触媒失活剤等の添加剤を添加する手段が取られたり、ポリマ製造の最終工程で、脱モノマや触媒除去等が行われる。一方で、乳酸系ポリマの医療用途への利用においては、それら添加剤は、低毒性等の観点から、添加することができないのが現状である。よって、成形加工時の分子量低下等を考慮して、原料となる乳酸系ポリマの分子量を高める等により対処するため、逆に成形加工性を悪化させたり、品質のばらつきや着色の原因となったりすることがある。特に、高強度が望まれ、加水分解速度を制御して一定期間強度を維持することが望まれる骨固定具等は、汎用的な用途で所望される分子量より高い分子量を要求されるため、原料となる乳酸系ポリマを溶媒等で洗浄する等して、複雑な工程を経て精製し、熱安定性を向上させたり、着色を低減したりしているのが現状である。
以上のような現状に鑑み、乳酸系ポリマを精製して熱安定性等の安定性を向上させる方法が検討されている。例えば、特許文献2には、乳酸系ポリマを有機溶媒中にて塩化水素ガスで処理した後、沈澱剤と混合してポリマを析出させる技術が記載されている。この方法によれば、ポリマ中の触媒を塩化物の形に変換して除去できるため、安定性が向上するが、溶媒を必要とすること、また、塩化水素を扱うための特殊な設備が必要であることから、多大な労力とコストが必要となる。また、ポリマの着色については何ら言及されておらず、得られるポリマの色相等については不明である。
特許文献3には、高分子量ポリラクチドの固体粒子をメタノール、ついでアセトンに接触させ、未反応モノマと残留触媒を抽出し、精製、安定化する方法が記載されている。しかしながら、特許文献3では、溶媒を必要とすることから、多大な労力とコストが必要となる。また、残留触媒の除去については言及されているが、得られるポリマの着色については何ら言及されておらず、また安定性についても不明である。
特許文献4では、窒素雰囲気下または大気下で、好ましくは窒素雰囲気下でUV照射しながら乳酸系ポリマを120℃以上融点以下の温度で加熱処理することによって、着色を低減する方法が記載されている。しかしながら、特許文献4では、着色の低減効果は見られるとしているものの、残留触媒については何ら言及されていない。また、この方法では紫外光を発生する装置が必要であり、かつ、紫外光を有効に照射するための工夫が必要であり、その適用箇所が限られる。
特許文献5には、揮発性触媒を用いた固相重合法により得られるポリ乳酸を、流通ガス下、固相重合の反応温度以上でかつ170℃未満の温度で加熱処理することにより、安定性に優れた脂肪族ポリエステルを得る技術が記載されている。この方法によれば、有機スルフォン酸からなる触媒を揮発または不活化させることで、脂肪族ポリエステルの成形時の安定性および保存安定性を得られるとのことであるが、適用できるポリマが揮発性の触媒を使用する必要があること、固相重合で得られたものに限定されていること、また、着色に関しては何ら言及されていない。
以上のように、乳酸系ポリマ等の脂肪族ポリエステルの精製に関する従来の技術では、安定性を高める目的で残留触媒を除去することに主眼が置かれており、簡易な設備で安易な方法により、着色、残留モノマ、残留触媒を同時に低減させる方法は見られない。さらに、溶媒や特殊な触媒、または紫外光を発生する装置を用いたりするため、エネルギーが多量に必要であり、かつ、経済的に不利である。また、特許文献1には、得られたポリマの脱モノマ処理を施すことが記載されているが、ポリマの着色については何ら言及されておらず、得られるポリマの色相等については不明である。
特開2007−056138号公報 特許第3273821号公報 特許第3286061号公報 特許第3731298号公報 特許第4651802号公報
本発明の目的は、脂肪族ポリエステルの着色を低減し、かつ残留モノマや残留触媒の量を低減し、安定性と外観を向上する脂肪族ポリエステルの精製方法を提供することにある。また、本発明の目的は、この精製方法により得られる安定性の向上した脂肪族ポリエステルを提供することにある。
本発明は、モノマを含む脂肪族ポリエステルを、酸素含有乾燥気体下で、前記モノマの融点以上かつ前記脂肪族ポリエステルの融点以下の温度で加熱処理する脂肪族ポリエステルの精製方法である。
発明は、重合反応をモノマとポリマの平衡状態まで進めて得られる重合物にモノマを30質量%以下となるように添加するか、または、重合反応におけるモノマのポリマへの転化率が70%以上となった時点で反応を停止するかして得られる、ポリマ中のモノマの含有量が0.2質量%以上30質量%以下であるポリ乳酸を、酸素含有乾燥気体下で、前記モノマの融点以上かつ前記ポリ乳酸の融点以下の温度で加熱処理する、ポリ乳酸の精製方法である。
また、前記ポリ乳酸の精製方法において、前記酸素含有乾燥気体の大気圧露点温度が−5℃以下である。
また、本発明は、重合反応をモノマとポリマの平衡状態まで進めて得られる重合物にモノマを30質量%以下となるように添加するか、または、重合反応におけるモノマのポリマへの転化率が70%以上となった時点で反応を停止するかして得られる、ポリマ中のモノマの含有量が0.2質量%以上30質量%以下である脂肪族ポリエステルを、酸素含有量が全気体量に対して1体積%以上であり、大気圧露点温度が−5℃以下である酸素含有乾燥気体下で、前記モノマの融点以上かつ前記脂肪族ポリエステルの融点以下の温度で加熱処理する脂肪族ポリエステルの精製方法で精製され、前記加熱処理の前後のYI(黄色度)低下率が15.9%以上である、脂肪族ポリエステルである。
本発明では、モノマを含む脂肪族ポリエステルを、酸素含有乾燥気体下で、モノマの融点以上かつ脂肪族ポリエステルの融点以下の温度で加熱処理することにより、脂肪族ポリエステルの着色を低減し、かつ残留モノマや残留触媒の量を低減し、安定性と外観を向上することができる。また、本発明では、重合反応をモノマとポリマの平衡状態まで進めて得られる重合物にモノマを添加して得られる脂肪族ポリエステル、または、重合反応におけるモノマのポリマへの転化率が70%以上となった時点で反応を停止して得られる脂肪族ポリエステルを、酸素含有乾燥気体下で、モノマの融点以上かつ脂肪族ポリエステルの融点以下の温度で加熱処理することにより、脂肪族ポリエステルの着色を低減し、かつ残留モノマや残留触媒の量を低減し、安定性と外観を向上することができる。また、これらの精製方法により、安定性の向上した乳酸系ポリマ等の脂肪族ポリエステルが得られる。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、モノマを含む脂肪族ポリエステルを、酸素含有乾燥気体下で、モノマの融点以上かつ脂肪族ポリエステルの融点以下の温度で加熱処理することにより、脂肪族ポリエステルの着色を低減し、かつ残留モノマや残留触媒の量を低減し、安定性と外観を向上することができることを見出した。
本発明の実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法によれば、例えば製造工程中に発生する、または、原料に由来する着色を低減し、かつ、残留モノマ、残留触媒の量を低減し、製品の熱安定性等の安定性と色相等の外観を向上することができる。本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法は、簡易な方法であり、工業規模で利用可能である。
本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法で精製することにより、安定性の向上した脂肪族ポリエステルが得られる。特に、熱安定剤等の添加が望まれない医療用途向けの安定性の向上した脂肪族ポリエステルが得られる。
脂肪族ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸等の多価カルボン酸とジアルコール等の多価アルコールとの重合により合成される脂肪族のポリエステル樹脂である。脂肪族ポリエステル樹脂としては、乳酸系ポリマ、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリグリコール酸等が挙げられる。本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法は、これらのうち、ガラス転移温度と融点が高いため、より高温度での処理が可能であり、また、加熱処理後の体積収縮が小さく、ペレット状の固体物から成形体まで適用可能である等の観点から、特に乳酸系ポリマに好適に適用される。また、脂肪族ポリエステル樹脂は混合物であってもよく、そのポリマ組成にも何ら制限はない。
脂肪族ポリエステル樹脂および乳酸系ポリマの重量平均分子量は、所望される要求物性や用途等により異なるが、一般に5,000〜100万程度であり、好ましくは1万〜50万程度、より好ましくは5万〜30万程度である。
乳酸系ポリマとは、乳酸ホモポリマの他、乳酸コポリマ、ブレンドポリマをも含むものである。また、これらのポリマは混合物であってもよく、そのポリマ組成にも何ら制限はない。
乳酸ホモポリマは、乳酸モノマまたはラクチドが重合されたものである。乳酸コポリマは、乳酸モノマまたはラクチドと、共重合可能な他の成分とが共重合されたものである。ここで、乳酸モノマは、L乳酸、D乳酸、またはL乳酸とD乳酸が等量混合されたDL乳酸である。ラクチドは、Lラクチド、Dラクチド、L乳酸とD乳酸が脱水して環状エステルとなったメソラクチド、またはLラクチドとDラクチドが等量混合されたDLラクチドである。乳酸ホモポリマまたは乳酸コポリマにおけるL乳酸単位、D乳酸単位の構成モル比L/Dは、100/0〜0/100のいずれでもよい。さらに、L乳酸単位がリッチな乳酸系ポリマとD乳酸単位がリッチな乳酸系ポリマとを、ブレンドまたはブロック共重合して得られるステレオコンプレックス体も含む。さらに、乳酸系ポリマは、結晶性であっても非晶性であってもよい。一般に、乳酸系ポリマが結晶性を有するには、乳酸ホモポリマの場合、L乳酸またはD乳酸いずれかの単位が75モル%以上であればよいが、より高い融点を得るにはL乳酸またはD乳酸のいずれかの単位が90モル%以上であることが好ましい。
共重合可能な他の成分としては、2個以上のエステル結合形成性の官能基を有するジカルボン酸等の多価カルボン酸、ジアルコール等の多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等、およびこれら種々の構成成分より成る各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等が挙げられる。
多価カルボン酸の例としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、またはイソフタル酸等のジカルボン酸が好ましく挙げられる。
多価アルコールの例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、もしくはポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール、またはビスフェノールにエチレンオキシドを付加させた芳香族多価アルコール等が好ましく挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸の例としては、グリコール酸、2−ヒドロキシブタノイックアシッド、2−ヒドロキシペンタノイックアシッド、2−ヒドロキシヘキサノイックアシッド、2−ヒドロキシヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−メチルブタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−エチルブタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−メチルペンタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−エチルペンタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−プロピルペンタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ブチルペンタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−メチルヘキサノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−エチルヘキサノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−プロピルヘキサノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ブチルヘキサノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ペンチルヘキサノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−メチルヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−エチルヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−プロピルヘプタニックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ブチルヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ペンチルヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ヘキシルヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−メチルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−エチルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−プロピルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ブチルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ペンチルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ヘキシルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ヘプチルオクタノイックアシッド、3−ヒドロキシプロパノイックアシッド、3−ヒドロキシブタノイックアシッド、3−ヒドロキシペンタノイックアシッド、3−ヒドロキシヘキサノイックアシッド、3−ヒドロキシヘプタノイックアシッド、3−ヒドロキシオクタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−メチルブタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−メチルペンタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−エチルペンタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−エチルヘキサノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−プロピルヘキサノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−メチルヘプタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−エチルヘプタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−プロピルヘプタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−ブチルヘプタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−メチルオクタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−エチルオクタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−プロピルオクタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−ブチルオクタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−ペンチルオクタノイックアシッド、4−ヒドロキシブタノイックアシッド、4−ヒドロキシペンタノイックアシッド、4−ヒドロキシヘキサノイックアシッド、4−ヒドロキシヘプタノイックアシッド、4−ヒドロキシオクタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−メチルペンタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−メチルヘキサノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−エチルヘキサノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−メチルヘプタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−エチルヘプタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−プロピルヘプタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−メチルオクタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−エチルオクタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−プロピルオクタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−ブチルオクタノイックアシッド、5−ヒドロキシペンタノイックアシッド、5−ヒドロキシヘキサノイックアシッド、5−ヒドロキシヘプタノイックアシッド、5−ヒドロキシオクタノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−メチルヘキサノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−メチルヘプタノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−エチルヘプタノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−メチルオクタノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−エチルオクタノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−プロピルオクタノイックアシッド、6−ヒドロキシヘキサノイックアシッド、6−ヒドロキシヘプタノイックアシッド、6−ヒドロキシオクタノイックアシッド、6−ヒドロキシ−6−メチルヘプタノイックアシッド、6−ヒドロキシ−6−メチルオクタノイックアシッド、6−ヒドロキシ−6−エチルオクタノイックアシッド、7−ヒドロキシヘプタノイックアシッド、7−ヒドロキシオクタノイックアシッド、7−ヒドロキシ−7−メチルオクタノイックアシッド、8−ヒドロキシオクタノイックアシッド等が挙げられる。また、それらヒドロキシカルボン酸の中には不斉炭素を有し、各々D体、L体、DL体の形態をとる場合があるが、その形態には何ら制限はない。
ラクトンの例としては、例えば、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、またはδ−バレロラクトン等が好ましく挙げられる。
脂肪族ポリエステル樹脂を得るための重合反応に用いる触媒は、特に限定されるものではないが、公知の重合用触媒を用いることができる。例えば、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリル酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α−ナフトエ酸スズ、β−ナフトエ酸スズ、オクチル酸スズ、粉末スズ、酸化スズ等のスズ系化合物;亜鉛末、ハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛系化合物;テトラプロピルチタネート等のチタン系化合物;ジルコニウムイソプロポキシド等のジルコニウム系化合物;三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物;酸化ビスマス(III)等のビスマス系化合物;酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウム系化合物等が挙げられる。
これらの中でも、スズまたはスズ化合物からなる触媒は、活性が高く、添加量が少量でよい点から特に好ましく、その使用量は、例えばラクチドの開環重合を行う場合、ラクチドに対して0.001〜1重量%程度である。
脂肪族ポリエステル樹脂の重合方法としては、上記触媒の存在下、触媒種によって異なるが、通常100〜220℃程度の温度で行うことができる。乳酸系ポリマの重合方法としては、例えば、ラクチドを主原料とする開環重合による方法や、特開平7−33861号公報に記載のヒドロキシカルボン酸類またはそのオリゴマを原料とする脱水縮合による方法や、特開平7−247345号公報に記載のようなラクチドを主原料とする溶融重合と加熱重合の2段階重合や、特開昭59−96123号公報に記載のような乳酸モノマからの直接脱水縮合等が挙げられる。これらのうち、後述するポリマ中のモノマの含有量を調整可能である等の点から、開環重合法のうち溶融重合法が好ましい。
脂肪族ポリエステル樹脂には、必要に応じて、従来公知の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、抗カビ剤、核形成剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。
脂肪族ポリエステル樹脂に各種添加剤を配合する方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、ミルロール、バンバリーミキサ、スーパーミキサ、単軸または二軸押出機等を用いて混練すればよく、この混合混練は、通常120〜220℃程度の温度で行われる。
このように、本実施形態の精製方法を適用することができる脂肪族ポリエステル樹脂は広範囲にわたるが、これらポリマは、製造工程、ポリマ組成物の混合混練工程等における熱等によって、ポリマの分解や着色等が起こる場合がある。ポリマの製造過程や成形加工過程で発生する着色の原因は明らかではないが、原料モノマに由来する着色成分の混入や、これらの工程で受ける熱等によって、ポリマの加水分解や解重合等が起こり、ラクチドや他の乳酸ダイマ等の低分子成分を含む何らかの着色成分が生成したりすることが原因として考えられる。特に、水分や酸素はポリマの分解を促進したり、着色を促進したりする可能性が高いと考えられる。
本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法では、ポリマの製造途中または製造後の成形加工前または成形加工後に、ポリマを、酸素含有乾燥気体の存在下で、モノマの融点以上かつポリマの融点以下の温度で加熱処理することで着色を低減し、同時に残留モノマと残留触媒の量も低減することができる。特に従来、着色を助長するため、加熱処理には適さないとされていた酸素含有気体を乾燥させて用いることが、従来の方法と大きく異なる。脱色機構は定かでないが、酸素含有乾燥気体下で加熱処理することで、酸素の作用で何らかの反応により着色成分が分解、昇華されたり、またはポリマ中に組み込まれたり、さらに、モノマの融点以上で加熱するため、発汗現象によりモノマがポリマ中より排除されるに伴い、同時にポリマ中の着色成分や残留触媒等が除去されるため、着色が低減されるとともに安定化されると考えられる。
本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法における加熱処理温度は、モノマの融点以上かつ脂肪族ポリエステルの融点以下の温度であればよい。加熱処理温度がモノマの融点未満であると、発汗作用が有効に作用せず、脂肪族ポリエステルの融点を超えると、脱色より着色の速度が速くなり効果が得られない。脂肪族ポリエステルが例えば乳酸系ポリマの場合、乳酸系ポリマの結晶性等の違いによって加熱処理温度は異なるが、一般的に、結晶性を有する乳酸系ポリマの融点は、ホモポリマかコポリマかによって相違し、乳酸ホモポリマの場合は、通常175℃程度である。さらに、ステレオコンプレックス体においては、例えば210℃から230℃程度である。加熱処理温度の上限はポリマの融点以下であるが、モノマ残量等に応じて決定するのがよく、ポリマペレットを対象とした場合は、ポリマ同士の融着が起こらない程度の温度を上限とするのが好ましい。また、必要以上に高温にすると、脱色より着色の速度が速くなり効果が得られにくくなるため、モノマの融点より20〜40℃程度高い温度で処理するのが好適である。LラクチドまたはDラクチドを、またはそれらを等量含むDLラクチドを原料とした乳酸系ホモポリマの場合は、加熱処理温度は、例えば90℃から170℃であり、好ましくは95℃から160℃であり、より好ましくは100℃から150℃である。
なお、ペレットは、従来公知の方法で製造されたものであれば、球形、俵型、柱状、板状、フレーク状、粉砕品等のいかなる形状のものも使用することができる。
本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法は、ポリマの製造途中または製造後の成形加工前だけではなく、成形加工後の成形品や加工品等にも適用することができ、その場合の加熱処理温度は、それらの耐熱温度を上限として処理するのが好ましく、自動車用途や高耐熱グレードの乳酸系ポリマを対象とした場合、その耐熱温度が120℃程度あれば、例えば110℃程度の温度を選択可能である。
本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法における加熱処理時間は、加熱処理温度、モノマ残量、所望とする分子量等によって決定すればよいが、高温であればより短い時間で脱色が可能である。例えば100℃から150℃程度の温度範囲では、加熱処理時間は、1時間〜30時間程度が好ましく、より好ましくは、3時間〜20時間程度である。20時間より長く加熱すると、脱色後に再着色が見られることがあり、分子量の低下が著しくなったりすることがある。加熱処理時間が1時間より短い時間では、効果が得られにくくなる。
本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法によれば、加熱処理により、ポリマに含まれる残留モノマの一部が発汗と昇華等によりポリマ中から除かれると考えられるため、残留モノマ成分の低減が可能である。また、残留モノマの発汗作用に伴い、残留触媒も同時に除去されると考えられる。これらの効果により、脂肪族ポリエステルの熱安定性等の安定性が向上する。ポリマ中のモノマの残量が高いほど、前述の発汗作用が有効に作用し、脱色と触媒低減効果が高くなると考えられるが、経済性やその後の脱モノマ処理等の負担が大きくなること等から、ポリマ中のモノマの含有量は30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。また、本明細書において「モノマを含む」とは、ポリマ中のモノマの含有量が0.2質量%以上であることをいい、0.3質量%以上であることが好ましい。ポリマ中のモノマの含有量が0.1質量%未満であると、発汗作用が有効に作用しない場合がある。
ポリマ中のモノマの含有量を0.2質量%以上とするために、ポリマの製造後にモノマを添加してもよいし、ポリマの製造の際にモノマ残量を調整してもよい。固相重合法によって脂肪族ポリエステルを製造すると、通常モノマの残量が0.1質量%以下となり、本精製方法に用いる脂肪族ポリエステルの製造方法としては適さない。
なお、バッチ式の反応機等を用いたラクチド等の溶融重合で重量平均分子量が例えば20万以上の高分子量体を得る場合、高粘度化に伴い撹拌が困難になるとともに、せん断発熱による局部的な温度上昇で着色が強くなる傾向にある。また、次工程への移送に多大なエネルギーを必要とすることがある。これに対し、例えば特許2621813号では、重合反応が平衡に達する前、すなわち、前述の問題が出る前に、重合物を系外に取り出し、その後、別の装置や方法で重合を進める方法が取られている。本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法は、これらの重合途中または、粘度を下げる目的等で重合後にモノマを添加したりして得られるモノマ残量が多いポリマにも適用することができる点で、製造プロセスの任意な組み合わせを実現することができる。
特に、熱安定剤や加工安定剤等の添加剤の添加が望まれない医療用途等では、少量多品種に対応するためバッチ式の反応機を使用する場合が多い。しかし、バッチ式反応機を使用した溶融重合の場合、(1)撹拌動力が大きくなり多くのエネルギーが必要となることがある、(2)高分子量体を反応機から取り出す際に粘度を下げるために高温度とすると、熱による着色や分子量低下等の品質劣化が起こることがある、(3)重合が進み高粘度化するにつれて、均一な撹拌が困難となることがある等の理由により、高粘度体(高分子量体)を得るのが困難である。そこで、重合反応をモノマとポリマの平衡状態まで進めて得られる重合物に、モノマを添加して得られる脂肪族ポリエステルを本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法の原料とすることにより、モノマを添加して粘度を下げる効果があり、反応機から低温度での取り出しが可能となり、特に、上記(2)の影響を軽減することができる。また、上記の通り、ポリマ中のモノマの残量が高いほど、前述の発汗作用が有効に作用し、脱色と触媒低減効果が高くなると考えられるため、より効果が発揮される。
また、重合反応におけるモノマのポリマへの転化率が70%以上となった時点で反応を停止して得られる脂肪族ポリエステルを本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法の原料とすることにより、重合物の高粘度化による上記で挙げた悪影響を抑えることができ、さらに、上記のようなポリマ中のモノマの含有量を30質量%以下とすることができる。この方法により、重合物を取り出した後に温度を変えて別の反応機で重合を進めなくてもよく、所望の分子量のポリマを得るためには、反応停止時に所望するモノマ含量に応じて、重合開始時に添加する分子量調節剤の量を調整すればよい。
さらに本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法では、酸素含有乾燥気体の存在下において加熱処理する。通常の加熱処理では、ポリマの熱劣化による着色等を防ぐ目的で、酸素を実質的に含有しない窒素やアルゴン等の不活性ガスが使用されるが、本精製方法では、酸素含有乾燥気体中の酸素が脱色を促進すると考えられるため、酸素含有乾燥気体を用いる。酸素が脱色を促進する機構は定かでなく、着色成分が加熱状態で酸素と触れることで、何らかの作用を受けて化学的に変性することが考えられる。なお、本精製方法では酸素を実質的に含有しない窒素等の不活性ガスでは効果が小さいかほとんど見られず、酸素が脱色剤として働いている可能性を裏付けている。なお、加熱処理終了後は、再着色等を防ぐ目的で、処理後の脂肪族ポリエステルを窒素等の不活性ガス等で置換してもよい。
酸素含有気体としては、空気、酸素、酸素を含有する窒素、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられ、入手が容易で経済的である等の観点から空気が好ましい。酸素含有乾燥気体は従来公知の方法および装置で得られるものを使用することができる。具体的には、空気をコンプレッサ等で圧縮して得られるもの、これをさらに冷却したもの、窒素と酸素を任意の割合で混合したもの、これらの空気をオゾン化したもの等が挙げられる。酸素含有乾燥気体の純度は水分の露点温度を除いて、任意の純度のものを使用することができる。本明細書において「酸素含有気体」の酸素含有量は、全気体量に対して1体積%以上酸素を含有する気体のことをいい、全気体量に対して1体積%以上90体積%以下であることが好ましく、3体積%以上80体積%以下であることがより好ましい。酸素含有気体の酸素含有量が1体積%未満であると、脱色効果が十分に得られない場合があり、90体積%を超えると、加熱処理中に発火したり粉塵爆発を起こしたりする可能性が増す場合がある。
本明細書において「乾燥気体」とは、乾燥気体中の水分の大気圧露点温度が−5℃以下である気体のことをいう。乾燥気体は、気体を除湿処理すること等により得られる。
酸素含有乾燥気体下での加熱処理中は、ポリマの加水分解等に起因して、大なり小なり分子量が低下することがある。したがって、加熱処理中の分子量低下を極力抑制するため、特に分子量低下を初期分子量の−10%以下程度に抑える場合には、大気圧露点温度が−50℃以下であることが好ましく、−70℃以下であることがより好ましい。
本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法では、酸素含有乾燥気体の流量や導入方法や圧力等については特に限定されない。しかしながら、酸素含有乾燥気体を大量に使用すると経済性等が劣ったり、酸素含有乾燥気体中の水分等によりポリマの分子量低下が大きくなったりすることがある。加圧下での使用が可能な装置においては密閉状態で加熱処理を行ってもよい。また、大気圧下で加熱処理を行う場合には、酸素含有乾燥気体の流量は、モノマの発汗作用等を妨げない程度に、蒸発や昇華等によるモノマの系外への除去を促進するに足る量で十分である。なお、減圧下で酸素含有乾燥気体を流通する場合は、モノマの発汗作用を妨げない程度の減圧度、例えば13kPa以上の減圧度として行うのがよい。以上のように、酸素含有乾燥気体の流量等は、処理条件や装置等に合わせて適時選択することができる。
さらに、本精製方法での処理後に、脂肪族ポリエステルの純度を高める等の目的で、さらに公知の各種精製法を適用してもよい。これらの精製法は単独で行ってもよいし、組み合わせて行ってもよい。精製法の例としては、例えば、特許第4659451号に記載されているように、脱色処理物がペレット状であれば、溶媒による洗浄方法等を適用することができる。また、特許第3419609号に記載されているように、残留モノマの量をさらに低減する目的で、溶融状態または固体状態で、減圧下で残留モノマを蒸発または昇華等により除去することができる。一般には、前述の諸条件は、脱色安定化の対象となるポリマ組成物の着色度合いや、残留モノマ量、残留触媒量、製品の用途等を考慮して、着色および残留モノマ量等を所望の度合いに減少させることができる程度に、条件を選択して処理を行えばよい。
本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法により得られる乳酸系ポリマ等の脂肪族ポリエステルは、着色が低減され、かつ残留モノマや残留触媒の量が低減されている。よって、各種用途に使用が可能であり、一般のプラスチックと同様に、例えば成形温度150〜250℃程度で、射出成形、押出成形、インフレーション成形、押出中空成形、発泡成形、カレンダー成形、ブロー成形、バルーン成形、真空成形、紡糸等の成形加工法に好適に用いられる。
前述の各種の成形加工法により得られるものとしては、特に制限はないが、例えば、ボールペン・シャープペン・鉛筆等の筆記用具の部材、ステーショナリの部材、ゴルフ用ティー、始球式用発煙ゴルフボール用部材、経口医薬品用カプセル、肛門・膣用座薬用担体、皮膚・粘膜用張付剤用担体、農薬用カプセル、肥料用カプセル、種苗用カプセル、コンポスト、釣り糸用糸巻き、釣り用浮き、漁業用擬餌、ルアー、漁業用ブイ、狩猟用デコイ、狩猟用散弾カプセル、食器等のキャンプ用品、釘、杭、結束材、ぬかるみ・雪道用滑り止め材、ブロック、弁当箱、食器、コンビニエンスストアで販売されるような弁当や惣菜の容器、箸、割り箸、フォーク、スプーン、串、つまようじ、カップラーメンのカップ、飲料の自動販売機で使用されるようなカップ、鮮魚、精肉、青果、豆腐、惣菜等の食料品用の容器やトレイ、鮮魚市場で使用されるようなトロバコ、牛乳・ヨーグルト・乳酸菌飲料等の乳製品用のボトル、炭酸飲料・清涼飲料等のソフトドリンク用のボトル、ビール・ウイスキ等の酒類ドリンク用のボトル、シャンプや液状石鹸用のポンプ付き、または、ポンプなしのボトル、歯磨き粉用チューブ、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、保冷箱、植木鉢、浄水器カートリッジのケーシング、人工腎臓や人工肝臓等のケーシング、注射筒の部材、テレビやステレオ等の家庭電化製品の輸送時に使用するための緩衝材、コンピュータ・プリンタ・時計等の精密機械の輸送時に使用するための緩衝材、ガラス・陶磁器等の窯業製品の輸送時に使用するための緩衝材等が挙げられる。
本実施形態に係る脂肪族ポリエステルの精製方法により得られる乳酸系ポリマ等の脂肪族ポリエステルは、前述の各種用途に適用可能であるが、精製時に残留触媒量等を低減する目的で用いられる溶媒や、成形加工時の着色等を抑制する目的で添加される加工安定剤や酸化防止剤といった添加物等を用いなくても、色相等の外観や耐熱性等の安定性に優れるため、これらの不純物を含むことが望まれない医療用途等に好適に用いることができる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<各種測定方法>
[モノマとポリマの融点]
示差走査熱量測定装置を使用し、下記測定条件で得られる吸熱ピークの頂点温度をモノマおよびポリマの融点とした。
(測定条件)
装置 :DSC−60(株式会社島津製作所製)
測定試料量 :10mg
雰囲気 :窒素 流量50mL/min
測定開始温度:30℃
測定終了温度:250℃
昇温速度 :10℃/min
[重量平均分子量(Mw)]
GPC分析によるポリスチレン換算値として、下記に示す測定条件で重量平均分子量を測定した。
(測定条件)
装置 :GPC装置 Shodex(登録商標) GPC−104(昭和電工株式会社製)
測定カラム:Shodex(登録商標) LF404(昭和電工株式会社製)を2本直列に連結
対象カラム:Shodex(登録商標) KF404(昭和電工株式会社製)を2本直列に連結
検出器 :RI(示差屈折計)
測定温度 :40℃
溶離液 :クロロホルム(純正化学株式会社製、高速液体クロマトグラフ用)
測定方法 :溶離液流速0.3mL/minで、試料を5mg/mLの濃度で溶離液と同じグレードのクロロホルムに溶かし、20μL注入し測定した。同様に、分子量の異なる東ソー株式会社製のポリスチレンスタンダード10種を0.5mg/mLの濃度として測定し、較正曲線を作成した
[残留モノマ量]
残留モノマであるラクチド成分は、下記測定条件でガスクロマトグラフ分析により測定した。
(測定条件)
装置 :ガスクロマトグラフ装置 GC−14B(株式会社島津製作所製)
検出器 :FID
水素圧 :60kPa
空気圧 :50kPa
検出器温度 :200℃
カラムオーブン温度 :175℃
インジェクション温度:200℃
キャリアーガス :ヘリウム
キャリアーガス流量 :50mL/min
カラム :FAL−M10% Shimalite(登録商標)TPA 60−80meshとTenax(登録商標)TA 60−80meshとを容量比1で混合したものを内径2.6mm×長さ1.5mのガラスカラムに充填したもの
記録計 :CR−7Aplus(株式会社島津製作所製)
定量方法 :ポリマ試料1gに対し内部標準物質としてトリエチレングリコール0.4gを添加したものをクロロホルム25mLに溶解し、注入量1μLで測定した
[YI(黄色度)]
得られたポリマ1.5gをクロロホルム10mLに溶解し、光路1cmの石英セルに入れ、分光光度計 SHIMADZU UV−2550(株式会社島津製作所製)にて、視野角2°、光源C、780〜360nmの波長範囲でスキャンし、カラー測定ソフトウェアにより、XYZ3刺激値を算出したのちYI(黄色度)に換算し、その増減として評価した。
[残留触媒量]
処理前後の残留触媒は、下記に示した方法でSn元素の含有量の増減で評価した。
(測定条件)
装置:ICP発光分析装置 ICPS−8000(株式会社島津製作所製)
測定:ポリマ試料0.5gを石英ビーカに量り取り、硝酸3mLと過塩素酸0.5mLおよび硫酸0.5mLを加え、加熱して試料を分解し、冷却後、純水で全量を20mLとして測定溶液とした。別途、Sn含有量が0、0.2、0.4、1.0ppmの標準溶液を用意し、測定溶液を検量線法で測定した。測定値は3回の繰り返しにおける平均値とし、これに定容量を乗じ、ポリマ試料の量り取り量を除し、ppmとした
[熱安定性]
褐色ガラスアンプル10mLに、外径2〜3mmの脱色処理サンプルまたは未処理のポリマペレット3gを充填し、100℃、10mmHgで2.5時間減圧乾燥した。その後、窒素置換を4回繰り返したのち、ガスバーナでアンプル先端を溶封し、密閉状態とした。次に、220℃のオーブン中に1時間または3時間放置し、熱安定性試験を実施し、処理前後の分子量低下幅を評価した。なお、脱色処理後のサンプルのうち、残留モノマ量が0.5質量%を超えるものは、残留モノマを減圧下、130℃で加熱して除去して、試験サンプルとした。
[Mw保持率]
脱色処理または熱安定性試験における加熱前後の重量平均分子量を下記式1に当てはめ、Mw保持率とした。
Figure 0006325529
[YI低下率]
脱色処理におけるYIの低下幅を下記式2に当てはめて評価した。
Figure 0006325529
[Sn含有量低下率]
脱色処理におけるSn含有量の低下幅を下記式3にあてはめ評価した。
Figure 0006325529
<製造例>
ダブルヘリカルリボン翼を付した反応機を使用し、表1に示したポリL乳酸をそれぞれ作製した。各ポリマとも触媒としてオクチル酸スズを原料のLラクチド3000質量部(武蔵野化学研究所製)に対して50ppm添加して、また、分子量調整剤としてラウリルアルコールを表1に示した量添加し、190〜200℃の温度で開環重合した。
なお、原料1は、Lラクチドのポリマへの転化率が平衡状態に達する前に、触媒失活剤としてポリリン酸ナトリウムを200ppm添加して重合反応を停止することでラクチド含有量を調整した後、溶融状態で反応系外にストランドとして取り出して、水冷後に重合物をカットしながら、3から4mmの長さで2から3mmの外径を有する柱状ペレットとした。なお、Lラクチドのポリマへの転化率は、反応系内から採取した重合物中のラクチド含有量を測定し、重合物中に残存するラクチド以外はすべてポリマに変換されたと仮定し、以下の式から求めたところ、ポリマへの転化率は88.75%であった。
転化率(%)=100−Lラクチド含有量(%) 式4
原料2は、平衡状態に達するまで重合反応を行った後、Lラクチドを150質量部添加してラクチド含有量を調整した以外は原料1と同様とした。なお、1時間おきに反応系から重合物を採取してLラクチド含有量を測定し、Lラクチドの含有量に変化が見られなくなった時点で重合反応が「平衡状態」に達したと判断した。原料3は、原料2ペレットを用いて、真空オーブン中で150℃、10mmHg、15時間の条件で脱モノマを行い、ラクチド含有量を調整したものとした。原料4は、平衡状態に達するまで重合反応を行った後、原料1と同様の方法でペレットとした。原料5は、原料4ペレットを用いて、真空オーブン中、140℃、10mmHg、15時間の条件で脱モノマを行い、ラクチド含有量を調整したものとした。原料6は、以下の方法で得られたペレットを原料とした。撹拌機を付した容器中に、200質量部のアセトンと100質量部の原料2ペレットを投入して、撹拌回転数10rpm、40℃で6時間洗浄処理し、目開き0.5mmのステンレス製網が固定された容器を用いて、洗浄ペレットとアセトンを分離した。前記洗浄処理を3回繰り返した後、洗浄ペレットを真空オーブン中、80℃、5mmHg、20時間の条件で放置し、ペレットに残留するアセトンを除去した。原料1から原料6は、真空オーブン中、100℃で3時間乾燥し、シリカゲルを入れたデシケータ中で保管した。なお、原料2を減圧処理して原料3を、原料4を減圧処理して原料5を得たが、ラクチド含有量のみが低下し、YIは変化がなかった。
<実施例1〜11>
肉厚0.45mmで波長450nmの光線透過率が45%以下の10mL容の褐色ガラスアンプルに、製造例で得られたポリL乳酸を、それぞれ3質量部充填し、10mmHgで15分保持した後、表2に示すガスを用いて減圧を解除した。前記の減圧、ガスによる減圧解除を4回繰り返した後、ガスバーナでアンプル先端を溶封し、ガス雰囲気で密閉状態とした後、表2に示す温度、処理時間で加熱処理を行った。加熱処理した後は室温まで冷却後、ペレットを取り出し、重量平均分子量Mw、黄色度YI、ラクチドおよびSnの定量分析を行った。結果を表3に示した。なお、表中の実施例1から5は加熱処理温度の影響を、実施例6から8は乾燥空気の露点温度の影響を、実施例9はラクチド含有量の影響を、実施例10と実施例11は分子量の影響を示した。
<実施例12,13>
熱安定性試験を行い、試験条件と結果を表4に示した。
なお、「乾燥空気」のうち、−5℃の露点温度を有する乾燥空気は、コンプレッサを用いて圧縮したものを、−50℃または−70℃の露点温度を有する乾燥空気は、ボンベ封入された市販されているものを用いた。
<比較例1〜5>
製造例で得られたポリL乳酸を、実施例1から10と同様に褐色アンプル中で減圧とガス置換を行った後、表2に示す条件で加熱処理を行い、重量平均分子量Mw、黄色度YI、ラクチドおよびSnの定量分析を行った。結果を表3に示した。比較例1は乾燥空気に代え、酸素を実質的に含有しない乾燥窒素(窒素含有量99.6体積%、酸素含有量0.4体積%)とし、比較例2は高露点温度の空気(大気)を使用した。比較例3はモノマの融点未満で加熱処理を行い、比較例4はポリマの融点を超える温度で加熱処理を行った。比較例5はモノマを実質的に含有しないポリL乳酸の加熱処理を行った。
<比較例6,7>
熱安定性試験を行い、試験条件と結果を表4に示した。
表3より、100℃以上で加熱処理することにより、また乾燥空気雰囲気下で加熱処理することにより、明らかにYI(黄色度)は減少し、乳酸系ポリマの黄色がかった着色は低減した。また、分子量は乾燥空気の水分の大気圧露点温度によっては若干低下するが、実用上の問題はない範囲であった。
また、残留ラクチドの量は、加熱処理後のサンプルでは明らかに低減している。また、ポリマ中の残留ラクチドの量が多いほど、脱色効果が高かった。さらに、残留触媒の量も低減している。次に、熱安定性試験では、表4より、脱色処理したものは着色が低く抑えられており、熱時の分子量低下が少なく、熱安定性が向上している。
このように実施例の精製方法によれば、比較例に比べて、脂肪族ポリエステルの着色を低減し、かつ残留モノマや残留触媒の量を低減し、安定性と外観を向上することができた。実施例の精製方法によれば、上述のように簡易な方法で、特殊な設備を必要とせず、乳酸系ポリマの着色を十分低減することができる。また、それと同時に残留モノマと残留触媒の量の低減が可能となり、乳酸系ポリマの安定性も向上できる。さらに、この精製方法は、簡易であると共に、乳酸系ポリマの成形には必須である予備乾燥による水分除去と同時並行して行うことができるため、非常に効率的で有効な方法である。さらに、残留モノマの発汗作用を利用することで、熱安定剤等の添加が望まれない医療用途において、溶媒等による洗浄をしなくても、外観がよく安定性の向上した乳酸系ポリマを得られる点で、コストや労力を低減できるため、非常に有効で画期的な方法である。
Figure 0006325529
Figure 0006325529
Figure 0006325529
Figure 0006325529

Claims (2)

  1. 重合反応をモノマとポリマの平衡状態まで進めて得られる重合物にモノマを30質量%以下となるように添加するか、または、重合反応におけるモノマのポリマへの転化率が70%以上となった時点で反応を停止するかして得られる、ポリマ中のモノマの含有量が0.2質量%以上30質量%以下であるポリ乳酸を、大気圧露点温度が−5℃以下である酸素含有乾燥気体下で、前記モノマの融点以上かつ前記ポリ乳酸の融点以下の温度で加熱処理することを特徴とするポリ乳酸の精製方法。
  2. 請求項1に記載のポリ乳酸の精製方法であって、
    前記酸素含有乾燥気体の酸素含有量が、全気体量に対して1体積%以上90体積%以下であることを特徴とするポリ乳酸の精製方法。
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