JP6448432B2 - リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池 - Google Patents

リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池に関し、特に表面修飾されたリチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池に関する。
リチウムイオン電池の正極活物質には、一般にリチウム含有遷移金属酸化物が用いられている。具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)等であり、特性改善(高容量化、サイクル特性、保存特性、内部抵抗低減、レート特性)や安全性を高めるためにこれらを複合化することが進められている。車載用やロードレベリング用といった大型用途におけるリチウムイオン電池には、これまでの携帯電話用やパソコン用とは異なった特性が求められている。
リチウムイオン電池用正極活物質に用いられる技術の一つに、表面修飾がある(特許文献1〜4)。これは、次の3つの技術(a)〜(c)が主体となっている。
(a)は、活物質の表面で電解液が分解する副反応をなるべく抑制する技術である。かつてはAl23やZrO2などの単独元素の酸化物が主体となっていたが、これで活物質表面を全部修飾してしまうとLiイオンの挿入脱離ができなくなってしまうため、現在は部分的に表面を修飾したり、Liイオン伝導体や活物質で表面修飾する技術が主体となっている。
(b)は、電解液中のフッ化水素不純物により活物質から遷移金属(特にMn)が溶出することを防止する技術である。この場合も(a)と同様に活物質表面を全部修飾することはできないため、現在はNi系活物質とのブレンドにより電解液中のフッ化水素不純物を反応させてMn溶出を抑制する技術が主体となっている。Mnが特に溶出抑制対象となっている理由として、負極の炭素と反応しやすいことが挙げられ、正極がMn系活物質でかつ負極が黒鉛系活物質の電池で充放電を繰り返した場合、電池の設計によっては10サイクルで初期の10分の1の放電容量となってしまう。
(c)は、電子伝導性の低い活物質への、電子伝導性の高い物質の被覆に関する技術である。この技術に関しては、リン酸塩系やケイ酸塩系、リチウムチタン系の活物質などに炭素材料を被覆する技術として確立しており、製造も容易であることから工具用などの電池に実用化されている。
特開2011−082133号公報 特開2013−175412号公報 特開2009−054583号公報 特開2014−197540号公報
(a)〜(c)の技術を考えた場合に、表面修飾技術においても電池特性を向上する機能が求められていると云える。ここで、現在、正極活物質を焼成によって製造する際、あまり一次粒子径を大きくしてしまうと、生成した正極活物質のサイクル特性が悪化するおそれがあることがわかっている。これを防ぐ手段として、焼成パターンを調整することで焼成物の一次粒子径を抑制しているが、既存の焼成パターンに比べて総熱量を低減する方向になるため、未反応原料の発生とのトレードオフになってしまい、電池特性の向上の点で問題が生じる。
そこで、本発明は、電池特性が良好な表面修飾されたリチウムイオン電池用正極活物質を提供することを課題とする。
本発明者は、このような問題を解決するため種々の検討を行った結果、表面に硫酸根を被覆させた活物質の作製において、硫酸根含有化合物などを原料に含ませておき、焼成中に一次粒子の表面に析出させることで当該一次粒子の粒子成長を抑制すること、さらに、電池特性を向上させるため、活物質の断面SIMのXPSを測定したときのS2p結合のピークを制御することが効果的であることを見出した。一般に、活物質表面に別の物質を被覆して表面修飾されたリチウムイオン電池用正極活物質を作製する場合、活物質表面に化学的に強固に結合を形成させるか、ごく短時間焼成することで活物質表面に被覆物質を固着させることが行われている。本発明では、表面に被覆した硫酸根について、活物質内に固溶せず、表面に所定量を留まらせることを狙ってS2p結合のピークを所定の範囲に制御する。
このような構成により、リチウムイオン伝導を阻害せず、かつ電解液分解も抑制した表面修飾を行うことができ、さらに電池特性が向上することを見出した。
上記知見を基礎にして完成した本発明は一側面において、組成式:LiaNibCocMnde2
(前記式において、1.0≦a≦1.05、0.5≦b≦0.9、0.1≦c≦0.3、0.1≦d≦0.3、0≦e≦0.005、b+c+d+e=1、MはMg、Al、Zrからなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
で表され、一次粒子の表面に硫黄含有化合物または硫黄含有イオンが付着しており、粒子全体のS/(Ni+Co+Mn+M)がモル比で0.001〜0.005であり、活物質の断面SIMのXPSを測定したとき、S2p結合のピークが、165〜175eVに存在するリチウムイオン電池用正極活物質である。
本発明は別の一側面において、本発明のリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極である。
本発明は更に別の一側面において、本発明のリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池である。
本発明によれば、電池特性が良好な表面修飾されたリチウムイオン電池用正極活物質を提供することができる。
(リチウムイオン電池用正極活物質の構成)
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、
組成式:LiaNibCocMnde2
(前記式において、1.0≦a≦1.05、0.5≦b≦0.9、0.1≦c≦0.3、0.1≦d≦0.3、0≦e≦0.005、b+c+d+e=1、MはMg、Al、Zrからなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
で表される。
リチウムイオン電池用正極活物質における全金属に対するリチウムの比率が1.0〜1.05であるが、これは、1.0未満では、安定した結晶構造を保持し難く、1.05超では電池の高容量が確保できなくなるためである。
また、リチウムイオン電池用正極活物質におけるニッケルの組成が0.5〜0.9であるため、当該リチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池の容量、出力、安全性の三つがバランスよく向上する。リチウムイオン電池用正極活物質におけるニッケルの組成は好ましくは0.7〜0.9、より好ましくは0.8〜0.9である。
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、一次粒子の表面に硫黄含有化合物または硫黄含有イオンが付着している。一次粒子の表面に付着する硫黄含有化合物は、例えば、硫酸リチウム、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン等であってもよい。また、一次粒子の表面に付着する硫黄含有イオンは、例えば、SO4 2-等であってもよい。焼成前に硫黄含有イオンを含ませておき、正極活物質となった時に上記のような構成とすることで、その一次粒子径が焼成時にあまり発達せず、結果として正極活物質の一次粒子径が小さくなり、電池とした時のサイクル特性が改善する。
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、粒子全体のS/(Ni+Co+Mn+M)がモル比で0.001〜0.005である。粒子全体のS/(Ni+Co+Mn+M)がモル比で0.001未満であると、一次粒子径があまり小さくならず、サイクル特性が改善しないという問題が生じる。また、粒子全体のS/(Ni+Co+Mn+M)がモル比で0.005を超えると、電池とした時の容量が悪化するという問題が生じる。
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、活物質の断面SIMのXPSを測定したとき、S2p結合のピークが、165〜175eVに存在する。このような構成により、一次粒子径があまり発達せず、従ってサイクル特性が良好となる。また、一次粒子径を抑制する必要が無いため、その結果焼成パターンを調整する必要が無く、未反応原料の発生の問題が解消する。また、硫黄のXPSスペクトルであるS2p結合のピークが165〜175eVであると、一次粒子の表面に硫黄含有化合物または硫黄含有イオンが付着していることがわかる。当該ピーク範囲が175eVを超えて、例えば180eV以上となると、一次粒子の表面に硫黄含有化合物または硫黄含有イオンが「付着」しているのではなく、一次粒子に硫黄含有化合物または硫黄含有イオンが「固溶」していることを示す。このように一次粒子に硫黄含有化合物または硫黄含有イオンが「固溶」していると、一次粒子の表面近傍において格子不整が生じ、サイクル特性が悪くなる。また、該ピークが165eVを下回り、例えば150eV以下となると、一次粒子の表面への硫黄含有化合物または硫黄含有イオンの「付着」の程度が弱くなり、サイクル特性向上への寄与がなくなる。
また、当該S2p結合のピークの位置が165eV未満であると、活物質の被覆が剥がれやすくなり、電池のサイクル特性が劣化する。また、当該S2p結合のピークの位置が175eVを超えると、活物質の被覆が壊れて、活物質内に硫酸根が入ってしまい、電池のサイクル特性が劣化する。
(リチウムイオン電池用正極及びそれを用いたリチウムイオン電池の構成)
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極は、例えば、上述の構成のリチウムイオン電池用正極活物質と、導電助剤と、バインダーとを混合して調製した正極合剤をアルミニウム箔等からなる集電体の片面または両面に設けた構造を有している。また、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池は、このような構成のリチウムイオン電池用正極を備えている。
(リチウムイオン電池用正極活物質の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法について詳細に説明する。まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンを所定の金属のモル比で含む水溶液を用意する。
次に、当該ニッケル、コバルト及びマンガンの硫酸塩の水溶液に、アンモニア水、苛性ソーダ水を加え、これらの溶液のpHが11〜12になるように調整して種晶を作製する。次に、pH10〜11で粒子成長させて共沈中間体を作製する。
次に、ろ過を行って前駆体を得るが、このとき、粒子全体のS/(Ni+Co+Mn+M)がモル比で0.001〜0.005となるように洗浄した。
次に、粒子全体のS/(Ni+Co+Mn+M)がモル比で0.001〜0.005となった前駆体を、O2フロー回転炉で700℃で1時間焼成した後、Li/(Ni+Co+Mn+M)がモル比で1.01〜1.05となるようにLi2CO3と共沈中間体とを混合し、焼成する。当該焼成としては、(1)660〜680℃で2〜4時間焼成した後、(2)720〜750℃で5〜7時間焼成する。あるいは、(1’)690〜710℃で2〜4時間焼成した後、(2’)720〜900℃で3〜5時間焼成する。
その後、必要であれば、焼成体を、例えばパルベライザー等を用いて解砕することにより正極活物質の粉体を得る。
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
(実施例1)
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンを、Ni:Co:Mn=8:1:1のモル比で含む水溶液を用意し、同時に14mol/Lのアンモニア水、18mol/Lの苛性ソーダ水を用意した。これらの溶液をpHが11〜12になるように一つの反応槽に投入して種晶を作製後、pH10〜11で粒子成長させて共沈中間体を作製した。この後、ろ過するが、洗浄量を調節してS/(Ni+Co+Mn+M)がモル比で0.001となるようにした。これをO2フロー回転炉で700℃で1時間焼成した後、Li/(Ni+Co+Mn)がモル比で1.01となるようにLi2CO3と共沈中間体とを混合した。これをO2雰囲気の焼成炉に入れ、660℃で3時間焼成後、750℃で5時間焼成して活物質を得た。
(実施例2)
2雰囲気の焼成炉における焼成について、660℃で3時間焼成後、750℃で7時間焼成したこと以外は実施例1と同様に活物質を作製した。
(実施例3)
2雰囲気の焼成炉における焼成について、700℃で3時間焼成後、750℃で5時間焼成したこと以外は実施例1と同様に活物質を作製した。
(実施例4〜11、14〜21、24〜31、34〜40)
ニッケル、コバルト及びマンガンの硫酸塩におけるNi:Co:Mnのモル比、及び、ろ過工程でのS/(Ni+Co+Mn+M)のモル比を変更した以外は、実施例1と同様にして活物質を作製した。
なお、実施例8、18、28、38について、ニッケル、コバルト、マンガンの硫酸塩と同時に、硫酸マグネシウムの形で投入することで正極活物質の組成においてM種の金属であるMgを加えた。
また、実施例9、19、29、39について、ニッケル、コバルト、マンガンの硫酸塩と同時に、硫酸アルミニウムの形で投入することで正極活物質の組成においてM種の金属であるAlを加えた。
また、実施例10、20、30、40について、ニッケル、コバルト、マンガンの硫酸塩と同時に、オキシ硫酸ジルコニウムの形で投入することで正極活物質の組成においてM種の金属であるZrを加えた。
(実施例12、22、32)
ニッケル、コバルト及びマンガンの硫酸塩におけるNi:Co:Mnのモル比、及び、ろ過工程でのS/(Ni+Co+Mn+M)のモル比を変更した以外は、実施例2と同様にして活物質を作製した。
(実施例13、23、33)
ニッケル、コバルト及びマンガンの硫酸塩におけるNi:Co:Mnのモル比、及び、ろ過工程でのS/(Ni+Co+Mn+M)のモル比を変更した以外は、実施例3と同様にして活物質を作製した。
(比較例1)
2雰囲気の焼成炉における焼成について、690℃で3時間焼成後、750℃で7時間焼成したこと以外は実施例1と同様に活物質を作製した。
(比較例2)
2雰囲気の焼成炉における焼成について、620℃で3時間焼成後、750℃で1時間焼成したこと以外は実施例1と同様に活物質を作製した。
(比較例3〜6)
ニッケル、コバルト及びマンガンの硫酸塩におけるNi:Co:Mnのモル比、及び、ろ過工程でのS/(Ni+Co+Mn+M)のモル比を変更した以外は、実施例1と同様にして活物質を作製した。
なお、比較例4について、ニッケル、コバルト、マンガンの硫酸塩と同時に、硫酸チタニルの形で投入することで正極活物質の組成においてM種の金属であるTiを加えた。
(比較例7)
まず、Li2CO3、NiO、Co34、MnO2を、Ni:Co:Mn=8:1:1、Li/(Ni+Co+Mn)が1.01のモル比となるように一つの反応槽に投入してスラリーを作製し、これを900℃で5時間焼成した。
次に、追加のLi2CO3、硫黄単体を、(追加で添加するLi2CO3のLi)/S=2、S/(Ni+Co+Mn)=0.001のモル比となるようにメカノケミカル装置にて混合後、毎分3℃の速度で昇温し、700℃で3時間保持した後、徐冷して活物質を作製した。
(評価)
−正極材組成の評価−
各正極材中の金属含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)で測定し、各金属の組成比(モル比)を算出し、酸素含有量はLECO法で測定した。
−XPS測定−
以下の条件により活物質の断面SIMのXPS測定を行い、S2p結合のピークを得た。
・X線出力:15kV、25W
・測定面積:100μmφ
・取り出し角:45°
・結合エネルギー軸補正:C1sスペクトル上の炭酸由来ピークである284.6eV
−電池特性の評価−
各正極材と、導電材と、バインダーとを85:8:7の割合で秤量し、バインダーを有機溶媒(N−メチルピロリドン)に溶解したものに、正極材料と導電材とを混合してスラリー化し、Al箔上に塗布して乾燥後にプレスして正極とした。続いて、対極をLiとした評価用の2032型コインセルを作製し、電解液に1M−LiPF6をEC−DMC(1:1)に溶解したものを用いて、電流密度0.2Cの際の放電容量を測定した。また、45〜55℃の範囲に保った恒温槽で10サイクル充放電を繰り返したときのサイクル特性を測定した。
これらの結果を表1及び表2に示す。なお、表1及び2のS/(Ni+Co+Mn+M)は活物質の粒子全体のモル比を示す。
(評価結果)
実施例1〜40は、いずれも一次粒子の表面に硫黄含有化合物または硫黄含有イオンが付着しており、粒子全体のS/(Ni+Co+Mn+M)がモル比で0.001〜0.005であり、活物質の断面SIMのXPSを測定したとき、S2p結合のピークが、165〜175eVに存在しており、放電容量及びサイクル特性がいずれも良好であった。
比較例1、2、7は、S2p結合のピークが、165〜175eVに存在しておらず、サイクル特性が不良であった。
比較例3は、粒子全体のS/(Ni+Co+Mn+M)がモル比で0.005を超えていたため、サイクル特性が不良であった。
比較例4は、コアがTiを含有するため、構造安定化の効果が無くなり、サイクル特性が不良であった。
比較例5は、Niの組成が小さく、放電容量及びサイクル特性が不良であった。
比較例6は、正極活物質がゲル化したため電池作製ができなかった。

Claims (3)

  1. 組成式:LiaNibCocMnde2
    (前記式において、1.0≦a≦1.05、0.5≦b≦0.9、0.1≦c≦0.3、0.1≦d≦0.3、0≦e≦0.005、b+c+d+e=1、MはMg、Al、Zrからなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
    で表され、
    一次粒子の表面に硫黄含有化合物または硫黄含有イオンが付着しており、粒子全体のS/(Ni+Co+Mn+M)がモル比で0.001〜0.005であり、
    活物質の断面SIMのXPSを測定したとき、S2p結合のピークが、165〜175eVに存在するリチウムイオン電池用正極活物質。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極。
  3. 請求項2に記載のリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池。
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