以下、本発明の各実施の形態について説明する。
一般的に、クロム(Cr)系材料の薄膜において、高Cr材料であるCrN膜は比較的強い引張応力を有していることが知られている。また、低Cr材料であるCrOCN膜やCrOC膜は、圧縮応力の傾向を有していることも知られている。例えば、上述の特許文献2には、成膜条件によってCrN膜の膜応力を調整することが記載されている。具体的には、成膜時にCrN膜の窒素含有量を調整することにより、CrN膜の膜応力を、引張応力、又は、圧縮応力とすることが記載されている。そして、CrN膜のN含有量と膜応力との傾向について記載されている。
また、特開2010−237501号公報には、SiON系材料やSiO2系材料の薄膜は圧縮応力の傾向を有することが記載され、また、特開2009−230113号公報には、TaO系材料の薄膜は引張応力の傾向を有することが記載されている。
一方、位相シフトマスクのパターンの微細化の要求に従って、遮光膜のエッチングの異方性を高めることが求められている。そして、Cr系材料からなる遮光膜のエッチングの異方性を高める手法として、従来よりも塩素系ガスの混合比率を大幅に高めた酸素含有塩素系ガス(例えば、Cl2とO2との混合ガス)を用いて、従来よりも大幅に高いバイアス電圧を掛けた条件下でのドライエッチング(高バイアスエッチング条件)が検討されている。しかしながら、上記条件を適用する場合には、従来のマスクブランクから転写用マスクを作製する際に用いられている、有機系材料からなるレジストパターンのマスクでは、遮光膜のパターン形成が困難となっている。
このため、酸素含有塩素系ガスを用いた高バイアスエッチング条件の適用が可能となるように、マスクブランクに無機系材料からなるハードマスク膜を形成し、このハードマスク膜により転写用マスクを形成することが行なわれている。無機系材料のハードマスク膜としては、Cr系材料からなる遮光膜を構成する材料とのエッチング選択性が高いことが重要となる。
上述の圧縮応力を有するSiON系材料やSiO2系材料の薄膜をハードマスクに適用した場合は、酸素含有塩素系ガスを用いた高バイアスエッチング条件を適用し、Cr系材料からなる遮光膜をパターニングして転写用マスクを作製する際、ハードマスク膜のエッチング耐性が十分に得られない。特に、ハードマスク膜のパターンのサイドエッチングが顕著となり、マスクパターンの外周の端部の減退によってマスクパターンが縮小してしまう。そして、このマスクパターンの縮小に伴い、遮光膜に形成されるパターンも縮小され、パターン精度を高めることが困難となり、位相シフトマスクのパターンの微細化に不利となる。
このため、酸素含有塩素系ガスを用いた高バイアスエッチング条件を適用し、Cr系材料からなる遮光膜をパターニングして位相シフトマスクを作製する際に、SiO系材料以外の材料からハードマスクを作製する必要がある。そこで、Cr系材料とのエッチング選択性に着目し、TaO系材料をハードマスク膜として用いることを検討した。例えば、特開2013−83933号公報には、塩素系ガスと酸素の混合ガスを用いたドライエッチングによって遮光膜をパターニングするマスクブランクとして、上層に組成の異なるTaO系材料が積層された遮光膜上に、CrN、CrON、CrCN、CrOCN、CrBN、CrOBN、CrOCBN等のCr系材料からなるハードマスク膜を有する構成が記載されている。
また、マスクブランクから転写用マスクを製造するプロセスでは、レジストパターンをマスクとし、酸素含有塩素系ガスによるドライエッチングでCr系材料のハードマスク膜をパターニングし、そのパターンが形成されたハードマスク膜をマスクとし、酸素非含有塩素系ガスによるドライエッチングでTaO系材料の上層を含む遮光膜をパターニングしている。しかし、ハードマスク膜のエッチングは、有機系材料のレジストパターンをマスクとしているため、高バイアスエッチング条件で行っていない。また、遮光膜をパターンングしたときに行われている酸素非含有塩素系ガスによるドライエッチングは、イオン主体のエッチングであるため、通常のバイアス条件で行ってもエッチングの異方性は十分に得られる。すなわち、この公報では、酸素含有塩素系ガスを用いた高バイアスエッチング条件における、Cr系材料とTaO系材料との間のエッチング選択性について開示されてはいない。
以上のことを踏まえ、さらなる検討を進めた結果、Cr系材料からなる遮光膜と、TaO系材料からなるハードマスクを備えるマスクブランクの構成に思い至った。この構成のマスクブランクによれば、Cr系材料からなる遮光膜のパターニングに、エッチングの異方性を高めるために酸素含有塩素系ガスを用いた高バイアスエッチング条件を適用した場合においても、TaO系材料からなるハードマスク膜であれば十分なエッチング耐性を有する。このため、Cr系材料からなる遮光膜をパターニングして転写用マスクを作製する際、ハードマスク膜パターンのサイドエッチングを抑制することができ、マスクパターンの減退、及び、これに伴う遮光膜に形成されるパターンの減退を抑制することができる。この結果、マスクブランクから位相シフトマスクを作製する際のパターン精度を高めることができ、位相シフトマスクのパターンの微細化が可能となる。
上述のように、TaO系材料の薄膜は、引張応力の傾向を有する。このため、ハードマスク膜を形成する材料にTaO系材料を選定し、遮光膜を形成する材料に引張応力を有するCr系材料を選定することは好ましくない。この構成では、転写パターンをハードマスク膜に形成した際のハードマスクパターンの位置ずれの方向と、転写パターンを遮光膜に形成した際の遮光パターンの位置ずれの方向とが同じ方向になる。このため、設計時の遮光パターンの位置を基準としたときの、実際に遮光膜に形成される遮光パターンの位置のずれ量が非常に大きくなる。
そこで、TaO系材料のハードマスク膜とは逆の膜応力(圧縮応力)を有する遮光膜を設ける構成とすることを考えた。すなわち、ハードマスク膜の引張応力に起因するハードマスクパターンの位置ずれの方向に対し、遮光膜の圧縮応力に起因するハードマスクパターンの位置ずれの方向が反対方向になるようにする。これにより、設計時の遮光パターンの位置を基準としたときの実際に遮光膜に形成された遮光パターンの位置のずれ量をハードマスク膜が積層されていない場合よりも小さくすることができる。
遮光膜を形成するクロム系材料は、所定の光学濃度を極力薄い膜厚で満たすことを可能としつつ、酸素含有塩素系ガスに対するエッチングレートが速いことが望まれる。Crに、酸素(O)と、インジウム(In)、スズ(Sn)、及び、モリブデン(Mo)から選ばれる少なくとも1以上の金属元素(以下、インジウム等金属元素Mと称する)とを含有させたCr系材料(以下、CrOM系材料)は、上記の遮光膜の材料としての条件に適している。また、このCrOM系材料は、その組成によっては圧縮応力を有することが見出された。さらに、このCrOM系材料は、Crとインジウム等金属元素Mとの含有量を調整することにより、膜の圧縮応力の大きさを調整することが可能であることが見出された。このようなCrOM系材料の薄膜が圧縮応力を有すること、インジウム等金属元素MとCrとの組成によりCrOM系材料の圧縮応力を調整する手法は、これまで開示されていない。
従って、本発明のマスクブランクにおいては、圧縮応力を有するCrOM系材料からなる遮光膜と、引張応力を有するTaO系材料からなるハードマスク膜とを備える構成とする。この構成のマスクブランクにより、遮光膜及びハードマスク膜の膜応力によって生じる、遮光膜に形成されるパターンの位置ずれを抑制することができる。さらに、この構成のマスクブランクにより、酸素含有塩素系ガスをエッチングガスに用い、かつ高バイアス電圧を掛けるドライエッチングによってこの遮光膜をパターニングした場合においても、パターンが形成された遮光膜の光学特性を維持しつつパターン精度が良好な位相シフトマスクを作製することが可能となる。この圧縮応力を有するCrOM系材料からなる遮光膜と、引張応力を有するTaO系材料からなるハードマスク膜とを備える構成を適用することが好適なマスクブランクとしては、堀込みレベンソン型位相シフトマスク用のマスクブランク、ハーフトーン型位相シフトマスク用のマスクブランクが挙げられる。
以下、図面に基づいて、上述した本発明の詳細な構成を説明する。なお、各図において同様の構成要素には同一の符号を付して説明を行う。
〈マスクブランク〉
図1、及び、図2に、マスクブランクの実施形態の概略構成を示す。図1に示すマスクブランク10は、透光性基板11における一方の主表面11S上に、主表面11S側から順に、遮光膜12、及び、ハードマスク膜13が積層された構成であり、遮光膜12が単層で構成されている。図2に示すマスクブランク10Aは、透光性基板11における一方の主表面11S上に、主表面11S側から順に、遮光膜12、及び、ハードマスク膜13が積層された構成であり、遮光膜12が主表面11S側から下層12Aと上層12Bとの複数層(本例では2層)で構成されている。以下の説明では、下層12Aと上層12Bとをまとめて遮光膜12とも称する。また、図1、及び、図2に示すマスクブランク10,10Aは、ハードマスク膜13上に、必要に応じてレジスト膜14を有する構成であってもよい。以下、マスクブランク10、及び、マスクブランク10Aの主要構成部の詳細を説明する。
なお、以降ではマスクブランクにおける薄膜の膜応力は、差分形状のPV値をその指標として用いる。その対象となる薄膜が他の薄膜の表面(基板とは反対側の表面)に接して設けられている場合、薄膜の差分形状とは、その対象となる薄膜の表面形状(基板側とは反対側の表面形状)から他の薄膜の表面形状(基板側とは反対側の表面形状)を差し引いて得られる差分形状のことをいう。また、その対象となる薄膜が基板の表面(対象となる薄膜が形成される側の表面)に接して設けられている場合、薄膜の差分形状とは、その対象となる薄膜の表面形状(基板側とは反対側の表面形状)から基板の表面形状(対象となる薄膜が形成される側の表面形状)を差し引いて得られる差分形状のことをいう。
この差分形状は、膜応力を有する薄膜を成膜したことによって生じる基板、又は、他の薄膜の表面形状の変化分布である。差分形状が凸形状になるような薄膜は圧縮応力を有し、差分形状が凹形状になるような薄膜は引張応力を有する。薄膜の差分形状のPV値は、その差分形状に係る基板の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域における最高高さと最低高さの差のことをいう。差分形状が凸形状の場合、その差分形状のPV値は正の値になり、差分形状が凹形状の場合、その差分形状のPV値は負の値になる。すなわち、差分形状のPVが正の値の場合、その薄膜は圧縮応力を有しており、差分形状のPVが負の値の場合、その薄膜は引張応力を有している。
透光性基板11、遮光膜12、後述の位相シフト膜21(図3参照)の表面形状は、表面形状解析装置、例えば、UltraFLAT200M(Corning Tropel社製)で測定する。表面形状を測定する領域は、差分形状およびそのPV値を算出する領域である基板の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域を包含する領域とする。具体的には、例えば、表面形状を測定する領域は、基板の中心を基準とする一辺が148mmの四角形の内側領域を包含する領域とする。
[透光性基板]
透光性基板11は、リソグラフィーにおける露光工程で用いられる露光光に対して透過性が良好な材料からなる。このような材料としては、合成石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO2−TiO2ガラス等)、その他各種のガラス基板を用いることができる。特に、合成石英ガラスを用いた石英基板は、ArFエキシマレーザ光(波長:193nm)に対する透明性が高いので、マスクブランク10,10Aの透光性基板11として好適に用いることができる。
尚、ここで言うリソグラフィーにおける露光工程とは、このマスクブランク10,10Aを用いて作製された位相シフトマスクを用いてのリソグラフィーにおける露光工程であり、以下において露光光とはこの露光工程で用いられる露光光であることとする。この露光光としては、ArFエキシマレーザ光(波長:193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長:248nm)、i線光(波長:365nm)のいずれも適用可能であるが、露光工程における位相シフトパターンの微細化の観点からは、ArFエキシマレーザ光を露光光に適用することが望ましい。このため、以下においてはArFエキシマレーザ光を露光光に適用した場合についての実施形態を説明する。
[遮光膜]
マスクブランク10,10Aに適用される遮光膜12は、図1に示すように単層で形成されていてもよく、また、図2に示すように、複数の層に分かれて形成されていてもよい。図2に示すマスクブランク10Aでは、遮光膜12が複数の層に分かれて形成されている例として、主表面11S側から下層12Aと、上層12Bとが形成された構成を示している。
遮光膜12は、このマスクブランク10,10Aに形成される遮光パターンを構成する膜であり、リソグラフィーにおける露光工程で用いられる露光光に対して遮光性を有する膜である。遮光膜12は、後述の透光性基板11と遮光膜12との間に位相シフト膜21を介さない図1の構成のマスクブランクの場合、例えば波長193nmのArFエキシマレーザ光に対する光学濃度(OD)が2.8以上であることが望まれ、3.0以上であることが好ましい。また、リソグラフィーにおける露光工程において、露光光の反射による露光転写の不具合を防止するため、両側主表面においての露光光の表面反射率が低く抑えられている。特に、露光装置の縮小光学系からの露光光の反射光が当たる、遮光膜12における表面側(透光性基板11から最も遠い側の表面)の反射率は、例えば40%以下(好ましくは、30%以下)であることが望まれる。これは、遮光膜12の表面と縮小光学系のレンズの間での多重反射で生じる迷光を抑制するためである。
一方、露光装置の投影光学系からの露光光が当たる、遮光膜12における裏面側(透光性基板11側の表面)の反射率は、例えば50%未満(好ましくは、40%以下)であることが望まれる。これは、透光性基板11と遮光膜12の裏面との界面と、透光性基板11の投影光学系側の主表面との間での多重反射で生じる迷光を抑制するためである。
遮光膜12は、要求される遮光性を満たす最低限度以上の膜厚を有する構成とする。遮光膜12の膜厚は30nm以上であることが好ましく、35nm以上であるとより好ましく、40nm以上であると特に好ましい。また、遮光膜12の膜厚は、70nm以下であることが好ましく、65nm以下であるとより好ましく、60nm以下であると特に好ましい。
また、遮光膜12が複数層で形成されている場合には、複数層の遮光膜12全体で要求される遮光性を満たせばよい。このため、遮光膜12が複数層で形成されている場合には、複数の層の合計の膜厚が30nm以上であることが好ましく、35nm以上であるとより好ましく、40nm以上であると特に好ましい。また、遮光膜12の膜厚は、複数の層の合計の膜厚が70nm以下であることが好ましく、65nm以下であるとより好ましく、60nm以下であると特に好ましい。
さらに、遮光膜12が複数層で形成されている場合には、全体の厚さが上記を満たせば、各層の厚さは特に限定されないが、例えば、それぞれの層の厚さは、35nm以下であることが好ましく、さらに30nm以下であることが好ましく、25nm以下であるとより好ましい。また、それぞれの層の厚さは、10nm以上であることが好ましく、さらに15nm以上であると好ましく、20nm以上であるとより好ましい。
遮光膜12は、透光性基板11に掘込パターンを形成する際に用いられるエッチングガス(フッ素系ガス)に対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。
また、遮光膜12は、圧縮応力を有する組成のクロム(Cr)系材料から構成される。遮光膜12が複数の層から形成されている場合には、この遮光膜12を構成するすべての層が、圧縮応力を有する組成のクロム(Cr)系材料から構成される。
圧縮応力を有するCr系材料としては、Cr、酸素(O)、及び、インジウム(In)、錫(Sn)、及び、モリブデン(Mo)から選ばれる少なくとも1以上の金属元素(インジウム等金属元素M)を主成分とする材料によって構成される。ここで、クロム、酸素及びインジウム等金属元素Mを主成分とするとは、遮光膜12中におけるクロム、酸素及びインジウム等金属元素Mの合計含有量が、95原子%以上であることをいう。また、好ましくは、クロム、酸素及びインジウム等金属元素Mの合計含有量が98%原子以上である。さらに、後述の不可避不純物を除き、すべてクロム、酸素及びインジウム等金属元素Mから構成されていることが好ましい。以下、クロム、酸素及びインジウム等金属元素Mを主成分とする材料をCrOMと表記して説明する。また、このCrOMを主成分とする遮光膜12をCrOM膜と表記することもある。
上記CrOMを主成分とする遮光膜12において、Crとインジウム等金属元素Mとの合計の含有量を50原子%以上80原子%以下とすることにより、圧縮応力を有する遮光膜12を構成することができる。このとき、残部が酸素であることが好ましい。さらに、Crとインジウム等金属元素Mとの合計の含有量が50原子%以上であることにより、十分な遮光性を確保することができる。また、Crとインジウム等金属元素Mとの合計の含有量が80原子%以下であれば、酸素含有塩素系ガスのドライエッチングに対するエッチングレートを十分に確保することができる。
また、遮光膜12において、Cr含有量は40原子%以上60原子%以下であることが好ましい。Crの含有量が、40原子%以上であることにより、十分な遮光性を確保することができる。また、Cr含有量が、60原子%以下であれば、酸素含有塩素系ガスのドライエッチングに対するエッチングレートを十分に確保することができる。
さらに、遮光膜12において、Crとインジウム等金属元素Mとの合計含有量に対する、インジウム等金属元素Mの含有量の比率は、50%以下であることが好ましい。インジウム等金属元素Mは、Crに比べ、薬液洗浄や温水洗浄に対する耐性が低いためである。
遮光膜12が複数の層で形成されている場合には、各層のCr含有量の差は、20原子%以下であることが好ましい。Cr含有量の差は、20原子%以下であることにより、各層の酸素含有塩素系ガスのドライエッチングに対するエッチングレートの差を抑制することができる。このため、遮光膜12をパターニングして転写用マスクを作製する際、遮光膜12のサイドエッチング量の差を少なくし、パターン側壁の形状安定性を確保することができ、遮光膜12に形成されるパターン形状の精度の低下を抑制することができる。
また、遮光膜12が複数の層で形成されている場合には、透光性基板11側に形成されている層が、この上(透光性基板11と逆側)に形成されている層よりもCrとインジウム等金属元素Mとの合計の含有量が大きいことが好ましい。最も透光性基板11側に形成される層のCrとインジウム等金属元素Mとの合計の含有量は、50原子%以上80原子%以下であることが好ましい。そして、最も透光性基板11と逆側に形成される層のCrとインジウム等金属元素Mとの合計の含有量は、50原子%以上70原子%以下であることが好ましい。
例えば、図2に示す遮光膜12では、透光性基板11側に設けられた下層12AのCrとインジウム等金属元素Mとの合計の含有量を50原子%以上80原子%以下とすることが好ましい。そして、下層12A上に設けられた上層12BのCrとインジウム等金属元素Mとの合計の含有量を50原子%以上70原子%以下とすることが好ましい。さらに、下層12AのCrとインジウム等金属元素Mとの合計の含有量が、上層12BのCrとインジウム等金属元素Mとの合計の含有量よりも大きいことが好ましい。
遮光膜12は、クロム、酸素及びインジウム等金属元素Mの他に、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)、及び、水素(H)等が含まれていてもよい。また、遮光膜12においては、CrOM膜を形成する際に、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の元素が成膜時に混入することが避け難い。このような混入が避け難い元素を不可避不純物という。遮光膜12は、CrOM膜の組成が上記の範囲を満たし、圧縮応力を有する組成である限り、クロム、酸素及びインジウム等金属元素M以外の他の元素や不可避不純物が混入していてもよい。
CrOM膜は、クロムとインジウム等金属元素Mとの混合ターゲットを用いた反応性スパッタ法、又は、クロムターゲットとインジウム等金属元素Mのターゲットとを用いた反応性スパッタ法(共スパッタ)により、基板側から順次成膜することにより形成することができる。スパッタ法としては、直流(DC)電源を用いたものでも、高周波(RF)電源を用いたものでもよく、またマグネトロンスパッタリング方式であっても、コンベンショナル方式であってもよい。DCスパッタの方が、機構が単純である点で好ましい。また、マグネトロンを用いた方が、成膜速度が速くなり、生産性が向上する点から好ましい。なお、成膜装置はインライン型でも枚葉型でも構わない。上述のターゲットには、上述の構成元素のほか、窒素、ホウ素、炭素が含有していてもよい。
CrOM膜を成膜する場合にはスパッタガスとしては、酸素を含むガス(CO2、NO2、NO、O2、O3等)と、希ガス(Ar、Ne、Kr、Xe、He、Ne等)とを含む混合ガスを用いることができる。また、スパッタガスとして、上記混合ガスに、窒素ガスや酸素を含まず炭素を含むガス(CH4、C2H4、C2H6等)をさらに混合させてもよい。特に、スパッタガスとしてCO2と希ガスとの混合ガスを用いると安全であり、CO2ガスは酸素等より反応性が低いが故に、チャンバー内の広範囲に均一にガスが回り込むことができ、成膜されるCrOM膜の膜質が均一になる点から好ましい。導入方法としては別々にチャンバー内に導入してもよいし、いくつかのガスをまとめて又は全てのガスを混合して導入してもよい。
遮光膜12において、ケイ素(Si)は実質的に含まないことが好ましい。遮光膜12中のSiの含有量は、1原子%以下であることが好ましく、検出限界値以下であることが好ましい。このため、CrOM膜の形成に用いるターゲットとしては、ケイ素を含むクロム、及び、その他ケイ素を含む材料を用いないことが好ましい。
[ハードマスク膜]
ハードマスク膜13は、遮光膜12の表面に接して設けられている。ハードマスク膜13は、遮光膜12をエッチングする際に用いられるエッチングガスに対してエッチング耐性を有する材料で形成された膜である。このハードマスク膜13は、遮光膜12にパターンを形成するためのドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜の厚さがあれば十分であり、基本的に光学特性の制限を受けない。このため、ハードマスク膜13の厚さは遮光膜12の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。
ハードマスク膜13の厚さは、20nm以下であることが求められ、15nm以下であると好ましく、10nm以下であるとより好ましい。ハードマスク膜13の厚さが厚すぎると、ハードマスク膜13に遮光パターンを形成するドライエッチングにおいて、マスクとなるレジスト膜の厚さが必要になってしまうためである。ハードマスク膜13の厚さは、3nm以上であることが求められ、5nm以上であると好ましい。ハードマスク膜13の厚さが薄すぎると、酸素含有塩素系ガスによる高バイアスエッチングの条件によっては、遮光膜12に遮光パターンを形成するドライエッチングが終わる前に、ハードマスク膜13のパターンが消失する恐れがあるためである。
そして、このハードマスク膜13にパターンを形成するフッ素系ガスによるドライエッチングにおいて、エッチングマスクとして用いる有機系材料のレジスト膜14は、ハードマスク膜13のドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜の厚さがあれば十分である。このため、ハードマスク膜13を設けていない従来の構成よりも、ハードマスク膜13を設けたことによって大幅にレジスト膜14の厚さを薄くすることができる。
また、ハードマスク膜13は、引張り応力を有するTaO系材料から構成される。引張り応力を有するTaO系材料からハードマスク膜13を構成するためには、TaO系材料として、タンタル(Ta)と酸素(O)を含み、Oの含有量が50原子%以上である材料を用いる。以下、タンタル(Ta)と酸素(O)とを含む材料をTaOと表記して説明する。
また、ハードマスク膜13を構成するTaO膜は、Oの含有量が50原子%以上であることにより、遮光膜12のパターニングに適用される酸素含有塩素系ガスを用いた高バイアスエッチング条件においても、高いエッチング耐性を持つ。
ハードマスク膜13は、遮光膜12をエッチングする際に行なう、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた高バイアスエッチング条件でのエッチング耐性が十分に高い必要がある。エッチング耐性が十分でないと、ハードマスク膜13のパターンのエッジ部分がエッチングされ、マスクパターンが縮小するため、遮光パターンの精度が悪化する。Taを含有する材料は、材料中の酸素含有量が少なくとも50原子%(原子%)以上とすることにより、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによるドライエッチングに対する耐性を十分に高めることができる。
ハードマスク膜13を構成するTaO膜は、結晶構造が微結晶、好ましくは非晶質であることが望まれる。ハードマスク膜13内の結晶構造が微結晶や非晶質であると、単一構造にはなりにくく、複数の結晶構造が混在した状態になりやすい。このため、ハードマスク膜13におけるTaOは、TaO結合、Ta2O3結合、TaO2結合、及び、Ta2O5結合が混在する状態(混晶状態)になりやすい。ハードマスク膜13におけるTaOは、Ta2O5結合の存在比率が高くなるにつれて、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによるドライエッチングに対する耐性が向上する傾向がある。また、ハードマスク膜13におけるTaOは、Ta2O5結合の存在比率が高くなるにつれて、水素侵入を阻止する特性、耐薬性、耐温水性及びArF耐光性もともに高くなる傾向がある。
ハードマスク膜13を構成するTaO膜の酸素含有量が50原子%以上66.7原子%未満であると、層中のタンタルと酸素の結合状態はTa2O3結合が主体になる傾向が高くなると考えられ、一番不安定な結合のTaO結合は、層中の酸素含有量が50原子%未満の場合に比べて非常に少なくなると考えられる。ハードマスク膜13を構成するTaO膜が、層中の酸素含有量が66.7原子%以上であると、タンタルと酸素の結合状態はTaO2結合が主体になる傾向が高くなると考えられ、一番不安定な結合のTaO結合及びその次に不安定な結合のTa2O3の結合はともに非常に少なくなると考えられる。
また、ハードマスク膜13を構成するTaO膜の酸素含有量が67原子%以上であると、TaO2結合ではなく、Ta2O5の結合状態の比率が高くなると考えられる。このような酸素含有量になると、Ta2O3、及び、TaO2の結合状態は稀に存在する程度となり、TaOの結合状態は存在し得なくなってくる。ハードマスク膜13を構成するTaO膜の酸素含有量が71.4原子%であると、実質的にTa2O5の結合状態だけで形成されていると考えられる。
ハードマスク膜13を構成するTaO膜の酸素含有量が50原子%以上であると、最も安定した結合状態のTa2O5だけでなく、Ta2O3、及び、TaO2の結合状態も含まれることになる。一方、ハードマスク膜13を構成するTaO膜において、ドライエッチング耐性に影響を与えない程度で、一番不安定な結合のTaO結合が少ない量となる酸素含有量の下限値は、少なくとも50原子%であると考えられる。
Ta2O5結合は、非常に高い安定性を有する結合状態であり、Ta2O5結合の存在比率を多くすることで、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた高バイアスエッチング条件のドライエッチングに対する耐性が大幅に高まる。また、水素侵入を阻止する特性、耐薬性、耐温水性などのマスク洗浄耐性及びArF耐光性も大幅に高まる。特に、ハードマスク膜13を構成するTaO膜は、Ta2O5の結合状態だけで形成されていることが最も好ましい。なお、ハードマスク膜13を構成するTaO膜は、窒素、その他の元素は、これらの作用効果に影響のない範囲であることが好ましく、実質的に含まれないことが好ましい。
また、ハードマスク膜13を構成するTaO膜は、X線電子分光分析(XPS分析)を行ったときのTa4fのナロースペクトルが23eVよりも大きい束縛エネルギーで最大ピークを有する材料とすることにより、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた高バイアスエッチング条件のドライエッチングに対する耐性を大幅に高めることができる。高い束縛エネルギーを有する材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによるドライエッチングに対する耐性が向上する傾向がある。また、水素侵入を阻止する特性、耐薬性、耐温水性、及び、ArF耐光も高くなる傾向がある。タンタル化合物で最も高い束縛エネルギーを有する結合状態は、Ta2O5結合である。
すなわち、ハードマスク膜13を構成するTaO膜は、Ta2O5結合の存在比率が高いほど、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた高バイアスエッチング条件のドライエッチングに対する耐性が向上する。さらに、ハードマスク膜13を構成するTaO膜の酸素含有量を制御することによって、Ta2O5結合の存在比率が高くなるように促すことも可能である。しかし、より確実にTa2O5結合の存在比率が高いTaO膜を形成するには、実際に形成されたTaO膜に対してX線電子分光分析を行い、Ta4fのナロースペクトルを観察することで制御した方がよい。例えば、スパッタ成膜装置の成膜条件、及び、TaO膜を形成する表面処理の処理条件等について、複数の条件を設定し、各条件でハードマスク膜13としてTaO膜を形成したマスクブランクをそれぞれ製造する。そして、各マスクブランクのハードマスク膜13に対してX線電子分光分析を行い、Ta4fのナロースペクトルを観察して、束縛エネルギーの高いTaO膜を形成する条件を選定し、ハードマスク膜13に、その選定された条件で形成したTaO膜を備えるマスクブランクを製造する。このようにして製造されたマスクブランクは、その遮光膜の表層に形成されているハードマスク膜13におけるTa2O5結合の存在比率が確実に高くなる。
上述のように、ハードマスク膜13を構成するTaO膜は、X線電子分光分析を行ったときのTa4fのナロースペクトルが23eVよりも大きい束縛エネルギーで最大ピークを有することが好ましい。束縛エネルギーが23eV以下であるタンタルを含有する材料は、Ta2O5結合が存在しにくくなるためである。さらに、ハードマスク膜13を構成するTaO膜は、X線電子分光分析を行ったときのTa4fのナロースペクトルにおける束縛エネルギーが、24eV以上であると好ましく、25eV以上であるとより好ましく、25.4eV以上であると特に好ましい。ハードマスク膜13を構成するTaO膜の束縛エネルギーが25eV以上であると、TaO膜中におけるタンタルと酸素との結合状態はTa2O5結合が主体となり、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた高バイアスエッチング条件のドライエッチングに対する耐性が大幅に高まる。
[レジスト膜]
マスクブランク10,10Aは、ハードマスク膜13の表面に接して、有機系材料のレジスト膜14が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの場合、遮光膜12に形成すべき遮光パターンに、線幅が40nmのSRAF(Sub-Resolution Assist Feature)が設けられることがある。しかし、この場合でも上述のようにハードマスク膜13を設けたことによってレジスト膜14の膜厚を抑えることができ、これによってこのレジスト膜14で構成されたレジストパターンの断面アスペクト比を1:2.5と低くすることができる。したがって、レジスト膜14の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊や脱離することを抑制することができる。なお、レジスト膜14は、膜厚が80nm以下であることがより好ましい。レジスト膜14は、電子線描画露光用のレジストであると好ましく、さらにそのレジストが化学増幅型であるとより好ましい。
[マスクブランクの製造手順]
以上の構成のマスクブランク10,10Aは、次のような手順で製造する。先ず、透光性基板11を用意する。この透光性基板11は、端面及び主表面11Sが所定の表面粗さ(例えば、一辺が1μmの四角形の内側領域内において自乗平均平方根粗さRqが0.2nm以下)に研磨され、その後、所定の洗浄処理及び乾燥処理が施されたものである。
次に、この透光性基板11上に、スパッタ法によって遮光膜12としてCrOM膜を成膜する。遮光膜12を複数の層で形成する場合には、CrOM膜の組成が異なるように複数回の成膜を行なう。そして、遮光膜12上にスパッタ法によってハードマスク膜13としてTaO膜を成膜する。スパッタ法による各層の成膜においては、各層を構成する材料を所定の組成比で含有するスパッタリングターゲット及びスパッタガスを用い、さらには必要に応じて上述の希ガスと反応性ガスとの混合ガスをスパッタガスとして用いた成膜を行う。
この後、このマスクブランク10,10Aがレジスト膜14を有するものである場合には、ハードマスク膜13の表面に対してHMDS処理を施す。そして、HMDS処理がされたハードマスク膜13の表面上に、スピンコート法のような塗布法によってレジスト膜14を成膜し、マスクブランク10,10Aを完成させる。
〈マスクブランク(位相シフト膜)〉
上述の透光性基板、遮光膜、及び、ハードマスク膜からなるマスクブランクの構成は、位相シフト膜を備えるマスクブランクにも適用可能である。図3及び図4に、遮光膜、ハードマスク膜とともに位相シフト膜を備えるマスクブランクの概略構成を示す。
図3に示すマスクブランク20は、透光性基板11における一方側の主表面11S上に、この透光性基板11側から順に、位相シフト膜21、遮光膜12、及び、ハードマスク膜13が積層された構成である。また、図4に示すマスクブランク20Aは、透光性基板11における一方の主表面11S上に、主表面11S側から順に、位相シフト膜21、遮光膜12、及び、ハードマスク膜13が積層された構成であり、遮光膜12が主表面11S側から下層12Aと上層12Bとの複数層(本例では2層)で構成されている。以下の説明では、下層12Aと上層12Bとをまとめて遮光膜12とも称する。また、図3、及び、図4に示すマスクブランク20,20Aは、ハードマスク膜13上に、必要に応じてレジスト膜14を有する構成であってもよい。以下、マスクブランク20、及び、マスクブランク20Aの主要構成部の詳細を説明する。
なお、図3、及び、図4に示す構成のマスクブランク20,20Aにおいて、透光性基板11、遮光膜12、下層12A、上層12B、ハードマスク膜13、及び、レジスト膜14は、上述の実施形態における説明と同様の構成である。このため、以下では、マスクブランク20,20Aの主要構成において、位相シフト膜21に係わる構成のみを説明する。
[位相シフト膜]
位相シフト膜21は、透光性基板11と遮光膜12との間に形成されている。位相シフト膜21は、露光転写工程で用いられる露光光に対して所定の透過率を有し、かつ位相シフト膜を透過した露光光と、位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ大気中を透過した露光光とが、所定の位相差となるような光学特性を有する。
このような位相シフト膜21は、ここではケイ素(Si)を含有する材料で形成されていることとする。また位相シフト膜21は、ケイ素の他に、窒素(N)を含有する材料で形成されていることが好ましい。このような位相シフト膜21は、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによってパターニングが可能であり、上述の遮光膜12を構成するCrOM膜に対して、十分なエッチング選択性を有する材料を用いる。
また位相シフト膜21は、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによってパターニングが可能であれば、さらに、半金属元素、非金属元素、金属元素から選ばれる1以上の元素を含有していてもよい。
このうち、半金属元素は、ケイ素に加え、いずれの半金属元素であってもよい。非金属元素は、窒素に加え、いずれの非金属元素であってもよく、例えば酸素(O)、炭素(C)、フッ素(F)及び水素(H)から選ばれる一以上の元素を含有させると好ましい。金属元素は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)が例示される。
このような位相シフト膜21は、例えばMoSiNで構成され、露光光(例えばArFエキシマレーザ光)に対する所定の位相差(例えば、150[deg]〜180[deg])と所定の透過率(例えば、1%〜30%)を満たすように、位相シフト膜21の屈折率n、消衰係数k及び膜厚がそれぞれ選定され、その屈折率n及び消衰係数kとなるように膜材料の組成や膜の成膜条件が調整されている。
このマスクブランク20の遮光膜12の場合においては、遮光膜12のみで上述のArFエキシマレーザ光に対する光学濃度(OD)の下限値を満たす必要はない。位相シフト膜21及び遮光膜12の積層構造で、上記のArFエキシマレーザ光に対する光学濃度の各下限値(2.8、より好ましくは3.0)を満たせればよい。また、この場合における遮光膜12の膜厚は25nm以上であることが好ましく、30nm以上であるとより好ましい。遮光膜12の膜厚は60nm以下であることが好ましく、55nm以下であるとより好ましい。
[マスクブランクの製造手順]
以上のような構成のマスクブランク20,20Aは、次のような手順で製造する。先ず、透光性基板11を用意する。この透光性基板11は、端面及び主表面11Sが所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理及び乾燥処理が施されたものである。
次に、この透光性基板11上に、スパッタ法によって位相シフト膜21を成膜する。位相シフト膜21を成膜した後には、後処理として所定の加熱温度でのアニール処理を行う。
次に、位相シフト膜21に、スパッタ法によって遮光膜12としてCrOM膜を成膜する。遮光膜12を複数の層で形成する場合には、CrOM膜の組成が異なるように複数回の成膜を行なう。そして、遮光膜12上にスパッタ法によってハードマスク膜13としてTaO膜を成膜する。スパッタ法による各層の成膜においては、各層を構成する材料を所定の組成比で含有するスパッタリングターゲット及びスパッタガスを用い、さらには必要に応じて上述の希ガスと反応性ガスの混合ガスとをスパッタガスとして用いた成膜を行う。
この後、このマスクブランク20,20Aがレジスト膜14を有するものである場合には、ハードマスク膜13の表面に対してHMDS処理を施す。そして、HMDS処理がされたハードマスク膜13の表面上に、スピンコート法のような塗布法によってレジスト膜14を成膜し、マスクブランク20,20Aを完成させる。
〈位相シフトマスクの製造方法(堀込みレベンソン型)〉
次に、上述のマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法について説明する。以下の位相シフトマスクの製造方法では、図1に示す構成のマスクブランクを用いた堀込みレベンソン型の位相シフトマスクの製造方法を例に説明する。なお、図2に示すような遮光膜が複数の層により形成されている場合にも、同様の方法によりレベンソン型の位相シフトマスクを作製することができる。
先ず、図5に示すように、マスクブランクのレジスト膜(第1レジスト膜)14に対して、遮光膜12に形成すべき遮光パターンを露光描画する。この際、透光性基板11の中央部分を、位相シフトパターン(転写パターン)形成領域11Aとし、ここに位相シフトパターンとなる遮光パターンを露光描画する。また、位相シフトパターン形成領域11Aの外周領域11Bには、例えばアライメントパターンとなる遮光パターンを露光描画する。その後、レジスト膜14に対してPEB処理、現像処理、ポストベーク処理等の所定の処理を行い、レジスト膜14に遮光パターン及びアライメントパターンを形成する。
なお、ここで説明する堀込みレベンソン型の位相シフトマスクでは、位相シフトパターンは遮光パターンと掘込パターンとから構成される。また、レジスト膜14の露光描画には、電子線が用いられる場合が多い。
次に、図6に示すように、遮光パターン及びアライメントパターンが形成されたレジスト膜14をマスクとして、フッ素系ガスを用いてTaOからなるハードマスク膜13にドライエッチングを行い、ハードマスク膜13に遮光パターン及びアライメントパターンを形成する。この後、レジスト膜14を除去する。なお、レジスト膜14を除去せず残存させたまま、遮光膜12のドライエッチングを行ってもよい。この場合にも、レジスト膜14は遮光膜12のドライエッチング中に消失する。
次に、図7に示すように、遮光パターン及びアライメントパターンが形成されたTaOからなるハードマスク膜13をマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガス(酸素含有塩素系ガス)を用いる遮光膜12のドライエッチングを行い、CrOMからなる遮光膜12をパターニングする。このときの酸素含有塩素系ガスによるドライエッチングは、従来よりも塩素系ガスの混合比率の高いエッチングガスを用いる。遮光膜12のドライエッチングにおける塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスの混合比率は、エッチング装置内でのガス流量比で、塩素系ガス:酸素ガス=10以上:1であることが好ましく、15以上:1であるとより好ましく、20以上:1であるとより好ましい。塩素系ガスの混合比率の高いエッチングガスを用いることにより、ドライエッチングの異方性を高めることができる。また、遮光膜12のドライエッチングにおいて、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスの混合比率は、エッチングチャンバー内でのガス流量比で、塩素系ガス:酸素ガス=40以下:1であることが好ましい。
遮光膜12が組成の異なるCrOM系材料により複数の層で構成されている場合にも、上記の方法で、一度にエッチングすることができる。例えば、上述の図2に示すマスクブランク10Aのように、遮光膜12が下層12Aと上層12Bとからなる場合にも、CrOM系材料で構成されていれば一度のドライエッチングで同時にパターニングすることができる。
また、この遮光膜12に対する酸素含有塩素系ガスのドライエッチングでは、透光性基板11の裏面側から掛けるバイアス電圧も従来よりも高くする。エッチング装置によって、バイアス電圧を高める効果に差はあるが、例えば、このバイアス電圧は、15[W]以上であると好ましく、20[W]以上であるとより好ましく、30[W]以上であるとより好ましい。バイアス電圧を高めることにより、酸素含有塩素系ガスのドライエッチングの異方性を高めることができる。
以上の手法により、遮光膜12で構成された遮光パターンを形成する。この遮光パターンは、位相シフトパターン形成領域11Aに遮光パターンを有し、外周領域11Bに孔形状のアライメントパターン15を有する。
次に、図8に示すように、遮光パターンを形成したハードマスク膜13上に、掘込パターンを有するレジスト膜(第2レジスト膜)16を形成する。
この際、先ず透光性基板11上に、レジスト膜16をスピン塗布法によって形成する。次に、塗布したレジスト膜16に対して露光描画を行った後、現像処理等の所定の処理を行う。これにより、位相シフトパターン形成領域11Aのレジスト膜16に、透光性基板11が露出する掘込パターンを形成する。なお、ここでは、リソグラフィーの合わせズレのマージンを取った開口幅でレジスト膜16に掘込パターンを形成し、レジスト膜16に形成する掘込パターンの開口が、遮光パターンの開口を完全に露出するように、掘込パターンを形成する。
なお、次の透光性基板11に掘込パターンを形成する工程において、フッ素系ガスを用いる透光性基板11のドライエッチングの終了時に、ハードマスク膜13上に形成されたレジスト膜16は、ハードマスク膜13と共に消失する。但し、遮光パターンの間に充填されているレジスト膜16は、掘込パターンを形成する工程のドライエッチングの終了時でも、少なくとも透光性基板11の主表面11Sが露出しない程度に残存することが好ましい(図9参照)。このため、レジスト膜16は、掘込パターンを形成する工程のドライエッチング後に、透光性基板11の主表面11Sが露出しない程度の厚さで形成することが好ましい。
次に、図9に示すように、掘込パターンを有するレジスト膜16と、遮光パターンを形成した遮光膜12とをマスクとして、フッ素系ガスを用いて透光性基板11のドライエッチングを行う。これにより、透光性基板11の位相シフトパターン形成領域11Aにおいて、主表面11Sに掘込パターンを形成する。この掘込パターンは、ここで得られる位相シフトマスクを用いたリソグラフィーの露光工程で用いられる露光光に対して、位相を半周期(180度)ずらす程度の深さに形成する。例えばArFエキシマレーザ光を露光光に適用した場合であれば、掘込パターンは、173nm程度の深さで形成する。
また、このフッ素系ガスによる透光性基板11のドライエッチングの最中に、レジスト膜16は減膜し、ハードマスク膜13上のレジスト膜16が全て消失する。さらに、ハードマスク膜13もフッ素系ガスによるドライエッチングで消失する。これにより、位相シフトパターン形成領域11Aに、遮光パターンと、透光性基板11に形成した掘込パターンとからなる位相シフトパターン17を形成する。その後、残存するレジスト膜16を除去する。
以上の工程により、図10に示すような位相シフトマスク30を得る。以上の工程により作製された位相シフトマスク30は、透光性基板11における一方の主表面11S側に掘込パターンが形成され、この透光性基板11における主表面11S上に、遮光パターンが形成された遮光膜12を積層した構造を有するものとなる。掘込パターンは、透光性基板11における位相シフトパターン形成領域11Aにおいて、遮光パターンの開口底部から連続する状態で、透光性基板11の主表面11S側に形成されている。位相シフトパターン形成領域11Aには、この掘込パターンと遮光パターンとからなる位相シフトパターン17が配置された状態となる。また、外周領域11Bには、遮光膜12を貫通する孔形状のアライメントパターン15が設けられた状態となる。
なお、以上の工程において、ドライエッチングで使用する塩素系ガスとしては、Clが含まれていれば特に制限はない。例えば、塩素系ガスとして、Cl2、SiCl2、CHCl3、CH2Cl2、CCl4、BCl3等があげられる。また、以上の工程において、ドライエッチングで使用するフッ素系ガスとしては、Fが含まれていれば特に制限はない。例えば、フッ素系ガスとして、CHF3、CF4、C2F6、C4F8、SF6等があげられる。
以上説明した位相シフトマスクの製造方法では、図1を用いて説明したマスクブランク10を用いて位相シフトマスクを製造している。このような位相シフトマスクの製造では、図7を用いて説明する、CrOMからなる遮光膜12のドライエッチング工程において、等方性エッチングの傾向を有する酸素含有塩素系ガスによるドライエッチングを適用している。さらに、この図7の工程における酸素含有塩素系ガスによるドライエッチングは、酸素含有塩素系ガスの塩素系ガスの比率が高く、かつ高いバイアスを掛けるエッチング条件で行う。これにより、CrOMからなる遮光膜12のドライエッチング工程において、エッチングレートの低下を抑制しつつ、エッチングの異方性の傾向を高めることが可能となる。これにより、遮光膜12にパターンを形成するときのサイドエッチングが低減される。
また、上記CrOMからなる遮光膜12のドライエッチング工程において、TaOからなるハードマスク膜13をパターンマスクとして用いる。これにより、物理的エッチングの作用が強まる高バイアス条件のドライエッチングにおいても、ハードマスク膜13のパターン形状の変形や縮小が抑制され、精度の高い遮光膜12のパターニングが可能となる。
以上の作用により、酸素含有塩素系ガスによるドライエッチングによって形成される遮光膜12のパターンの側壁形状が良好となり、パターン精度が良好な位相シフトマスク30を作製することができる。
〈位相シフトマスクの製造方法(ハーフトーン型)〉
次に、図3に示す構成のマスクブランクを用いた、ハーフトーン型の位相シフトマスクの製造方法を例に説明する。なお、図4に示すような遮光膜が複数の層により形成されている場合にも、同様の方法によりレベンソン型の位相シフトマスクを作製することができる。
先ず、図11に示すように、マスクブランクのレジスト膜14(第1レジスト膜)に対して、位相シフト膜21に形成すべき位相シフトパターンとアライメントマークパターンとを、電子線等を用いて露光描画する。この際、透光性基板11の中央部分を位相シフトパターン形成領域11Aとし、ここに位相シフトパターンに対応するパターンを露光描画する。また、位相シフトパターン形成領域11Aの外周領域11Bには、位相シフトパターンを形成せず、アライメントマークのパターンを露光描画する。その後、レジスト膜14に対してPEB処理、現像処理、ポストベーク処理等の所定の処理を行い、位相シフトパターン及びアライメントマークパターンを有する第1レジストパターン22を形成する。
次に図12に示すように、第1レジストパターン22をマスクとして、フッ素系ガスを用いてTaOからなるハードマスク膜13のドライエッチングを行い、ハードマスク膜13にハードマスク膜パターン23を形成する。この後、第1レジストパターン22を除去する。なお、ここで、第1レジストパターン22を除去せず残存させたまま、遮光膜12のドライエッチングを行ってもよい。この場合でも、遮光膜12のドライエッチングの際に第1レジストパターン22が消失する。
遮光膜12に対する酸素含有塩素系ガスによるドライエッチングは、従来よりも塩素系ガスの混合比率の高いエッチングガスを用いる。遮光膜12のドライエッチングにおける塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスの混合比率は、エッチング装置内でのガス流量比で、塩素系ガス:酸素ガス=10以上:1であることが好ましく、15以上:1であるとより好ましく、20以上:1であるとより好ましい。塩素系ガスの混合比率の高いエッチングガスを用いることにより、ドライエッチングの異方性を高めることができる。また、遮光膜12のドライエッチングにおいて、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスの混合比率は、エッチングチャンバー内でのガス流量比で、塩素系ガス:酸素ガス=40以下:1であることが好ましい。
また、この遮光膜12に対する酸素含有塩素系ガスのドライエッチングでは、透光性基板11の裏面側から掛けるバイアス電圧も従来よりも高くする。エッチング装置によって、バイアス電圧を高める効果に差はあるが、例えば、このバイアス電圧は、15[W]以上であると好ましく、20[W]以上であるとより好ましく、30[W]以上であるとより好ましい。バイアス電圧を高めることにより、酸素含有塩素系ガスのドライエッチングの異方性を高めることができる。
以上の手法により、遮光膜12で構成された遮光パターンを形成する。この遮光パターンは、位相シフトパターン形成領域11Aに遮光パターンを有し、外周領域11Bに孔形状のアライメントパターンを有する。
次に、図13に示すように、TaOからなるハードマスク膜パターン23をマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガス(酸素含有塩素系ガス)を用いて遮光膜12のドライエッチングを行い、CrOMからなる遮光膜12をパターニングする。これにより、遮光パターン24を形成する。
遮光膜12が組成の異なるCrOM系材料により複数の層で構成されている場合にも、上記の方法で、一度にエッチングすることができる。例えば、上述の図4に示すマスクブランク10Aのように、遮光膜12が下層12Aと上層12Bとからなる場合にも、CrOM系材料で構成されていれば一度のドライエッチングで同時にパターニングすることができる。
次に、図14に示すように、遮光パターン24をマスクとし、フッ素系ガスを用いて位相シフト膜21のドライエッチングを行ない、位相シフト膜21をパターニングする。これにより、透光性基板11の位相シフトパターン形成領域11Aに、位相シフトパターン25を形成する。また、透光性基板11の外周領域11Bに、アライメントマークパターン26を形成する。なお、位相シフト膜21のドライエッチングにおいては、ハードマスク膜パターン23が同時に除去される。
次に、図15に示すように、透光性基板11の外周領域11Bを覆う形状に、レジスト膜(第2レジスト膜)を形成し、第2レジストパターン27を形成する。この際、先ず透光性基板11上に、レジスト膜(第2レジスト膜)をスピン塗布法によって形成する。次に、透光性基板11の外周領域11Bを覆う形状のレジスト膜が残るように、レジスト膜に対して露光描画を行う。その後、レジスト膜に対して現像処理等の所定の処理を行う。これにより、透光性基板11の外周領域11Bを覆う形状に、第2レジストパターン27を形成する。
次に、図16に示すように、第2レジストパターン27をマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いて遮光膜12のドライエッチングを行い、外周領域11Bを覆う帯状に遮光膜12をパターニングして、遮光パターン28を形成する。なお、このときの遮光膜12のドライエッチングは、塩素系ガスと酸素ガスの混合比率およびバイアス電圧は従来の条件で行ってもよい。このときも、遮光膜12が組成の異なるCrOM系材料により複数の層で構成されても、一度のドライエッチングで同時にパターニングすることができる。
さらに、図17に示すように、第2レジストパターン27を除去し、洗浄等の所定の処理を行い、位相シフトマスク31を得る。
なお、以上の製造工程中のドライエッチングで使用される酸素含有塩素系ガスとしては、Clが含まれていれば特に制限はない。たとえば、塩素系ガスとして、Cl2、SiCl2、CHCl3、CH2Cl2、CCl4、BCl3等があげられる。また、以上の製造工程中のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスとしては、Fが含まれていれば特に制限はない。たとえば、フッ素系ガスとして、CHF3、CF4、C2F6、C4F8、SF6等があげられる。特に、Cを含まないフッ素系ガスは、ガラス基板に対するエッチングレートが比較的低いため、ガラス基板へのダメージをより小さくすることができる。
以上の工程により作製された位相シフトマスク31は、透光性基板11上に、透光性基板11側から順に位相シフトパターン25が形成された位相シフト膜21、及び、遮光パターン28が形成された遮光膜12が積層された構成を有する。位相シフト膜21と遮光膜12との積層部には、これらを貫通する孔形状のアライメントマークパターン26を有する。
このうち位相シフトパターン25は、透光性基板11における中央部分に設定された位相シフトパターン形成領域11Aに設けられている。また、遮光パターン28は、位相シフトパターン形成領域11Aを囲む外周領域11Bにおいて、位相シフトパターン形成領域11Aを囲む帯状に形成されている。そしてアライメントマークパターン26は、外周領域11Bに設けられている。
上述のハーフトーン型の位相シフトマスクの製造方法においても、上述の堀込みレベンソン型の位相シフトマスクと同様の効果を得ることができる。
CrOMからなる遮光膜12のドライエッチング工程において、酸素含有塩素系ガスを用いて高いバイアス電圧を掛けるドライエッチング条件により、CrOMからなる遮光膜12のエッチングレートの低下を抑制しつつ、エッチングの異方性の傾向を高めることが可能となる。これにより、遮光膜12にパターンを形成するときのサイドエッチングが低減される。
さらに、TaOからなるハードマスク膜13をパターンマスクとして用いることにより、エッチングレートが速められた上記条件においても、パターンマスク形状の変形や縮小が抑制され、精度の高い遮光膜12のパターニングが可能となる。
従って、遮光膜12のパターンの側壁形状が良好となり、パターン精度が良好な位相シフトマスク31を作製することができる。
〈半導体デバイスの製造方法〉
次に、上述の製造方法により作製された位相シフトマスクを用いる半導体デバイスの製造方法について説明する。半導体デバイスの製造方法は、上述の製造方法によって製造された堀込みレベンソン型の位相シフトマスク、及び、ハーフトーン型の位相シフトマスクを用いて、基板上のレジスト膜に対して位相シフトマスクの転写パターン(位相シフトパターン)を露光転写することを特徴としている。このような半導体デバイスの製造方法は、次のように行う。
先ず、半導体デバイスを形成する基板を用意する。この基板は、例えば半導体基板であってもよいし、半導体薄膜を有する基板であってもよいし、さらにこれらの上部に微細加工膜が成膜されていてもよい。そして、用意した基板上にレジスト膜を成膜し、このレジスト膜に対して、上述の製造方法によって製造された堀込みレベンソン型の位相シフトマスク、又は、ハーフトーン型の位相シフトマスクを用いてパターン露光を行なう。これにより、位相シフトマスクに形成された転写パターンをレジスト膜に露光転写する。この際、露光光としては、転写パターンを構成する位相シフト膜に対応する露光光を用いることとし、例えばここではArFエキシマレーザ光を用いる。
以上の後、転写パターンが露光転写されたレジスト膜を現像処理してレジストパターンを形成したり、このレジストパターンをマスクにして基板の表層に対してエッチング加工を施したり、不純物を導入する処理等を行う。処理が終了した後には、レジストパターンを除去する。
以上のような処理を、転写用マスクを交換しつつ基板上において繰り返し行い、さらに必要な加工処理を行うことにより、半導体デバイスを完成させる。
以上のような半導体デバイスの製造においては、上述の製造方法によって製造された堀込みレベンソン型の位相シフトマスク、及び、ハーフトーン型の位相シフトマスクを用いることにより、基板上に初期の設計仕様を十分に満たす精度のレジストパターンを形成することができる。このため、このレジスト膜のパターンをマスクとして、下層膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足に起因する配線短絡や断線のない高精度の回路パターンを形成することができる。
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
〈実施例1〉
[マスクブランクの製造]
図1を参照し、主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなる透光性基板11を準備した。この透光性基板11は、端面及び主表面を所定の表面粗さ(自乗平均平方根粗さRqで0.2nm以下)に研磨され、その後、所定の洗浄処理及び乾燥処理が施されている。
この透光性基板11における遮光膜が形成される側の主表面11Sの表面形状を、表面形状解析装置 UltraFLAT200M(Corning Tropel社製)で測定した。表面形状を測定する領域は、透光性基板11の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域を包含する領域とした。具体的には、表面形状を測定する領域は、透光性基板11の中心を基準とする一辺が148mmの四角形の内側領域を包含する領域とした。なお、以降の実施例及び比較例で行われている透光性基板11、及び、透光性基板11上に形成される各薄膜の表面形状の測定についても、上記と同様の方法を用いている。
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板11を設置し、クロム(Cr)とインジウム(In)の混合ターゲット(Cr:In=90原子%:10原子%)を用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)及びヘリウム(He)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行なった。これにより、透光性基板11上に、クロム、インジウム、酸素、炭素及び窒素からなる遮光膜(CrInOCN膜)12を58nmの膜厚で形成した。
上記遮光膜(CrInOC膜)12が形成された透光性基板11に対して、加熱処理を施した。具体的には、ホットプレートを用いて、大気中で加熱温度を280℃、加熱時間を5分として、加熱処理を行った。そして、加熱処理後の遮光膜12に対し、表面形状解析装置を用いて、遮光膜12の表面形状を測定した。
次に、遮光膜12の表面形状から透光性基板11の表面形状を差し引くことにより差分形状を取得した。この差分形状に対し、基板の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域における最高高さと最低高さの差、すなわちPV値を算出した。その差分形状のPV値は、+71nm(凸方向の差分形状を「+」とする。以下同じ。)であった。これは、この遮光膜12が、基板の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域において、透光性基板11の表面形状を上記PV値の数値分だけ変形させる圧縮応力を有することを意味する。
別の透光性基板上に同様の手順で遮光膜を形成した後、X線光電子分光分析法(ESCA、RBS補正有り)で分析を行なった。酸化が進んでいる最表層を除いた領域における遮光膜の各構成元素の含有量は、Cr=61原子%、In=7原子%、O=14原子%、C=9原子%、N=9原子%であることがわかった。なお、以降の実施例及び比較例における薄膜の組成についても、上記と同様の分析方法を用いている。
加熱処理後の遮光膜12に対し、分光光度計(アジレントテクノロジー社製 Cary4000)を用いてArFエキシマレーザの光の波長(約193nm)における光学濃度を測定したところ、3.0以上であることが確認できた。
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に遮光膜12が形成された透光性基板11を設置し、タンタル(Ta)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)及び酸素(O2)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行なった。これにより、遮光膜12の表面に接して、タンタル及び酸素からなるハードマスク膜13(TaO膜、組成:Ta=42原子%、O=58原子%)を6nmの膜厚で形成した。さらに、ハードマスク膜13に対し、表面形状解析装置を用いて、ハードマスク膜13の表面形状を測定した。さらに所定の洗浄処理を施し、実施例1のマスクブランク10を得た。
ハードマスク膜13の表面形状から透光性基板11の表面形状を差し引くことにより差分形状を取得した。この差分形状に対し、基板の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域における最高高さと最低高さの差、すなわちPV値を算出した。その差分形状のPV値は、+29nmであった。これは、この遮光膜12とハードマスク膜13の積層構造が、基板の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域において、基板の表面形状を上記PV値の数値分だけ変形させる圧縮応力を有するということを意味する。この結果から、圧縮応力を有する遮光膜12の上に、引張応力を有するハードマスク膜13の積層することで、2つの薄膜の積層構造による全体の膜応力が十分に低減できていることがわかる。
[位相シフトマスクの製造]
図5〜図10を参照し、作製した実施例1のマスクブランク10を用い、以下の手順で実施例1の位相シフトマスク30を作製した。先ず、ハードマスク膜13上に、レジスト膜(第1レジスト膜)14を形成した。そして、図5を参照し、レジスト膜14に対して、ハードマスク膜13に形成すべき遮光パターンを電子線描画し、その後所定の現像処理、レジスト膜14の洗浄処理を行い、遮光パターンとアライメントパターン(以下、これらのパターンをまとめて遮光パターン等という。)を形成した。
次に、図6に示すように、遮光パターン等を有するレジスト膜14をマスクとして、フッ素系ガス(CF4)を用いたハードマスク膜13のドライエッチングを行い、ハードマスク膜13に遮光パターン等を形成した。この後、レジスト膜14を除去した。
次に図7に示すように、遮光パターン等を有するハードマスク膜13をマスクとして、塩素ガス(Cl2)と酸素ガス(O2)との混合ガス(ガス流量比Cl2:O2=20:1)を用いた遮光膜12のドライエッチング(バイアス電圧30[W])を行い、遮光パターンを形成した。
次に、図8に示すように、遮光パターンが形成されたハードマスク膜13上に、掘込パターンが形成されたレジスト膜(第2レジスト膜)16を形成した。具体的には、スピン塗布法によって、ハードマスク膜13の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジスト(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 PRL009)からなるレジスト膜16を膜厚50nmで形成した。尚、このレジスト膜16の膜厚は、ハードマスク膜13上の膜厚である。そして、レジスト膜16に対して掘込パターンを電子線描画し、所定の現像処理、レジスト膜16の洗浄処理を行い、掘込パターンを有するレジスト膜16を形成した。このとき、レジスト膜16に形成された掘込パターンの開口が遮光パターンの開口を完全に露出するように、リソグラフィーの合わせズレのマージンを取った開口幅でレジスト膜16に掘込パターンを形成した。
その後、図9に示すように、掘込パターンを有するレジスト膜16をマスクとして、フッ素系ガス(CF4)を用いた透光性基板11のドライエッチングを行った。これにより、透光性基板11の一方の主表面11S側における位相シフトパターン形成領域11Aに、掘込パターンを173nmの深さで形成した。また、このフッ素系ガスによるドライエッチングの際に、レジスト膜16が減膜していき、ドライエッチングの終了時にはハードマスク膜13上のレジスト膜16は全て消失した。さらに、ハードマスク膜13もフッ素系ガスによるドライエッチングで除去された。そして、図10に示すように、残存するレジスト膜16を除去し、洗浄等の処理を行い、実施例1の位相シフトマスク30を得た。
[パターン転写性能の評価]
以上の手順を得て作製された位相シフトマスク30に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、この実施例1の位相シフトマスク30を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
〈実施例2〉
[マスクブランクの製造]
図1を参照し、上述の実施例1のマスクブランク10の作製において、遮光膜12を、クロム、スズ、酸素、炭素及び窒素からなるCrSnOCN膜(膜厚:57nm、組成:Cr=60原子%、Sn=8原子%、O=13原子%、C=9原子%、N=10原子%)で形成したことを除き、上述の実施例1と同様の方法で、実施例2のマスクブランク10を作製した。
具体的には、実施例2のマスクブランク10の遮光膜12は、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板11を設置し、クロム(Cr)とスズ(Sn)の混合ターゲット(Cr:Sn=90原子%:10原子%)を用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)及びヘリウム(He)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって形成した。なお、実施例1と同様の手順で加熱処理を行った後の遮光膜12に対し、ArFエキシマレーザの光の波長(約193nm)における光学濃度を測定したところ、3.0以上であった。
実施例1と同様に、実施例2のマスクブランク10の遮光膜12の表面形状から透光性基板11の表面形状を差し引くことにより得られる差分形状を取得し、差分形状のPV値を算出したところ、+70nmであった。また、ハードマスク膜13の表面形状から透光性基板11の表面形状を差し引くことにより差分形状を取得し、差分形状のPV値を算出したところ、+28nmであった。この結果から、実施例2のマスクブランク10の場合においても、圧縮応力を有する遮光膜12の上に、引張応力を有するハードマスク膜13を積層することで、2つの薄膜の積層構造による全体の膜応力が十分に低減できていることがわかる。
[位相シフトマスクの製造]
実施例2で作製したマスクブランク10を用いて、上述の実施例1と同様の方法で、実施例2の位相シフトマスク30を作製した。
[パターン転写性能の評価]
以上の手順を得て作製された実施例2の位相シフトマスク30に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、この実施例2の位相シフトマスク30を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
〈実施例3〉
[マスクブランクの製造]
図3を参照し、実施例1と同様の手順で透光性基板11を準備した。そして、この透光性基板11について、遮光膜が形成される側の主表面11Sの表面形状を測定した。なお、この透光性基板11の水素含有量をレーザーラマン分光光度法によって測定したところ、3.0×1017分子数/cm3であった。
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板11を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=12原子%:88原子%)を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N2)及びヘリウム(He)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行なった。これにより、透光性基板11上に、モリブデン、ケイ素及び窒素からなる位相シフト膜(MoSiN膜)21を69nmの膜厚で形成した。
上記位相シフト膜(MoSiN膜)21が形成された透光性基板11に対して、位相シフト膜21の表層に酸化層を形成する処理を施した。具体的には、加熱炉(電気炉)を用いて、大気中で加熱温度を450℃、加熱時間を1時間として、加熱処理を行った。加熱処理後の位相シフト膜21は、透光性基板11側とは反対側の表面近傍の領域(表面から2nm程度の深さまでの領域)が、それ以外の領域よりも酸素含有量が多い組成傾斜部(酸素含有量が50原子%以上)を有することが確認できた。
また、位相シフト膜21の組成傾斜部を除く領域における各構成元素の含有量は、平均値でMo=11原子%、Si=40原子%、N=49原子%であることがわかった。さらに、位相シフト膜21の組成傾斜部を除く領域の厚さ方向における各構成元素の差は、いずれも3原子%以下であり、厚さ方向の組成傾斜は実質的にないことが確認できた。
加熱処理後の位相シフト膜21に対し、位相シフト量測定装置を用いてArFエキシマレーザの光の波長(約193nm)における透過率と位相差とを測定したところ、透過率が6.07%、位相差が177.3度であった。
また、加熱処理後の位相シフト膜21の表面形状を測定し、位相シフト膜21の表面形状から透光性基板11の表面形状を差し引くことにより差分形状を取得した。この差分形状に対し、基板の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域における最高高さと最低高さの差、すなわちPV値を算出した。その差分形状のPV値は、+27nmであった。これは、この位相シフト膜21が、基板の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域において、透光性基板11の表面形状を上記PV値の数値分、変形させる程度の圧縮応力しか有していないことを意味する。
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に位相シフト膜21が形成された透光性基板11を設置し、クロム(Cr)とインジウム(In)の混合ターゲット(Cr:In=90原子%:10原子%)を用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)及びヘリウム(He)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行なった。これにより、透光性基板11上に、クロム、インジウム、酸素、炭素及び窒素からなる遮光膜(CrInOCN膜、組成:Cr=61原子%、In=7原子%、O=14原子%、C=9原子%、N=9原子%)12を41nmの膜厚で形成した。
上記遮光膜(CrInOCN膜)12が形成された透光性基板11に対して、加熱処理を施した。具体的には、ホットプレートを用いて、大気中で加熱温度を280℃、加熱時間を5分として、加熱処理を行った。加熱処理後の遮光膜12に対し、表面形状解析装置を用いて、遮光膜12の表面形状を測定した。
次に、遮光膜12の表面形状から位相シフト膜21の表面形状を差し引くことにより差分形状を取得した。この差分形状に対し、基板の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域における最高高さと最低高さの差、すなわちPV値を算出した。その差分形状のPV値は、+52nmであった。
また、位相シフト膜21と遮光膜12との積層構造に対し、分光光度計(アジレントテクノロジー社製 Cary4000)を用いてArFエキシマレーザの光の波長(約193nm)における光学濃度を測定したところ、3.0以上であることが確認できた。
次に、実施例1と同様の手順により、遮光膜12の表面に接して、タンタル及び酸素からなるハー また、ハードマスク膜13(TaO膜、組成:Ta=42原子%、O=58原子%)を6nmの膜厚で形成した。さらに、ハードマスク膜13に対し、表面形状解析装置を用いて、ハードマスク膜13の表面形状を測定した。さらに所定の洗浄処理を施し、実施例3のマスクブランク20を得た。
ハードマスク膜13の表面形状から位相シフト膜21の表面形状を差し引くことにより差分形状を取得した。この差分形状に対し、基板の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域における最高高さと最低高さの差、すなわちPV値を算出した。その差分形状のPV値は、+10nmであった。これは、この遮光膜12とハードマスク膜13の積層構造が、基板の中心を基準とする一辺が142mmの四角形の内側領域において、基板の表面形状を上記PV値の数値分だけ変形させる圧縮応力を有することを意味する。この結果から、圧縮応力を有する遮光膜12の上に、引張応力を有するハードマスク膜13を積層することで、2つの薄膜の積層構造による全体の膜応力が十分に低減できていることがわかる。
[位相シフトマスクの製造]
図11〜図17を参照し、作製した実施例3のマスクブランク20を用い、以下の手順で実施例3の位相シフトマスク31を作製した。先ず、ハードマスク膜13上に、レジスト膜(第1レジスト膜)14を形成した。そして、図11を参照し、レジスト膜14に対して、位相シフト膜に形成すべき位相シフトパターンとアライメントマークパターンを含む第1パターンを電子線描画し、所定の現像処理及び洗浄処理を行い、第1レジストパターン22を形成した。第1レジストパターン22は、SRAFパターンのパターン寸法に対応する40nm幅のラインアンドスペースの位相シフトパターンを形成した。
次に、図12に示すように、第1レジストパターン22をマスクとして、フッ素系ガス(CF4)を用いたハードマスク膜13のドライエッチングを行い、ハードマスク膜13にハードマスク膜パターン23を形成した。この後、第1レジストパターン22を除去した。
次に図13に示すように、ハードマスク膜パターン23をマスクとして、塩素ガス(Cl2)と酸素ガス(O)との混合ガスを用いて遮光膜12のドライエッチングを行い、遮光パターン24を形成した。
次に、図14に示すように、遮光パターン24をマスクとして、フッ素系ガス(SF6)を用いて位相シフト膜21のドライエッチングを行った。これにより、透光性基板11における位相シフトパターン形成領域11Aに、位相シフトパターン25を形成した。また、透光性基板11における外周領域11Bに、遮光膜12と位相シフト膜21とを貫通する孔形状のアライメントマークパターン26を形成する。なお、このとき、ハードマスク膜パターン23も同時に除去された。
次に、図15に示すように、透光性基板11における外周領域11Bを覆う形状で、第2レジストパターン27を形成した。その後、図16に示すように、第2レジストパターン27をマスクとして、塩素(Cl2)ガスと酸素ガス(O)との混合ガスを用いて遮光膜12のドライエッチングを行った。これにより、遮光膜12をパターニングして、外周領域11Bを覆う帯状の遮光パターン28を形成した。次に、図17に示すように、第2レジストパターン27を除去し、洗浄等の所定の処理を行い、実施例3の位相シフトマスク31を得た。
[パターン転写性能の評価]
以上の手順を得て作製された実施例3の位相シフトマスク31に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、この実施例3の位相シフトマスク31を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
〈実施例4〉
[マスクブランクの製造]
図3を参照し、上述の実施例3のマスクブランク20の作製において、遮光膜12を、クロム、スズ、酸素、炭素及び窒素からなるCrSnOCN膜(膜厚:42nm、組成:Cr=60原子%,Sn=8原子%,O=13原子%,C=9原子%,N=10原子%)で形成したことを除き、上述の実施例3と同様の方法で、実施例4のマスクブランク20を作製した。
具体的には、実施例4のマスクブランク20の遮光膜12は、枚葉式DCスパッタ装置内に位相シフト膜21が形成された透光性基板11を設置し、クロム(Cr)とスズ(Sn)の混合ターゲット(Cr:Sn=90原子%:10原子%)を用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)及びヘリウム(He)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって形成した。なお、この実施例3の位相シフト膜21と遮光膜12との積層構造に対し、ArFエキシマレーザの光の波長(約193nm)における光学濃度を測定したところ、3.0以上であった。
実施例3と同様に、実施例4のマスクブランク20の遮光膜12の表面形状から位相シフト膜21の表面形状を差し引くことにより得られる差分形状を取得し、差分形状のPV値を算出したところ、+51nmであった。また、ハードマスク膜13の表面形状から位相シフト膜21の表面形状を差し引くことにより差分形状を取得し、差分形状のPV値を算出したところ、+9nmであった。この結果から、実施例4のマスクブランク20の場合においても、圧縮応力を有する遮光膜12の上に、引張応力を有するハードマスク膜13を積層することで、2つの薄膜の積層構造による全体の膜応力が十分に低減できていることがわかる。
[位相シフトマスクの製造]
実施例4で作製したマスクブランク20を用いて、上述の実施例1と同様の方法で、実施例4の位相シフトマスク31を作製した。
[パターン転写性能の評価]
以上の手順を得て作製された実施例4の位相シフトマスク31に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、この実施例4の位相シフトマスク31を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
〈実施例5〉
[マスクブランクの製造]
図4を参照し、上述の実施例3のマスクブランク20の作製において、遮光膜12を、クロム、スズ、酸素及び炭素からなる下層12A(CrSnOC膜,膜厚:45nm,組成:Cr=65原子%,Sn=8原子%,O=16原子%,C=11原子%)と、クロム、スズ、酸素及び炭素からなる上層12B(CrSnOC膜,膜厚:5nm,組成:Cr=47原子%,Sn=5原子%,O=16原子%,C=11原子%)との積層構造で形成したことを除き、上述の実施例3と同様の方法で、実施例5のマスクブランク20Aを作製した。
具体的には、実施例5のマスクブランク20Aの下層12Aは、枚葉式DCスパッタ装置内に位相シフト膜21が形成された透光性基板11を設置し、クロム(Cr)とスズ(Sn)の混合ターゲット(Cr:Sn=90原子%:10原子%)を用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)及びヘリウム(He)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって形成した。上層12Bは、下層12Aと同じく、クロム(Cr)とスズ(Sn)の混合ターゲット(Cr:Sn=90原子%:10原子%)を用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)及びヘリウム(He)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって形成した。
下層12Aと上層12Bとの2層構造の遮光膜12を形成した透光性基板11に対し、実施例1と同じ条件で加熱処理を行った。加熱処理後の遮光膜12に対し、表面形状解析装置を用いて、遮光膜12の表面形状を測定した。なお、この実施例5の位相シフト膜21と遮光膜12の積層構造に対し、ArFエキシマレーザの光の波長(約193nm)における光学濃度を測定したところ、3.0以上であった。
実施例3と同様に、実施例5のマスクブランク20Aの遮光膜12の表面形状から位相シフト膜21の表面形状を差し引くことにより得られる差分形状を取得し、差分形状のPV値を算出したところ、+62nmであった。また、ハードマスク膜13の表面形状から位相シフト膜21の表面形状を差し引くことにより差分形状を取得し、差分形状のPV値を算出したところ、+20nmであった。この結果から、実施例5のマスクブランク20Aの場合においても、圧縮応力を有する遮光膜12の上に、引張応力を有するハードマスク膜13を積層することで、2つの薄膜の積層構造による全体の膜応力が十分に低減できていることがわかる。
[位相シフトマスクの製造]
実施例5で作製したマスクブランク20Aを用いて、上述の実施例3と同様の方法で、実施例5の位相シフトマスク31を作製した。
[パターン転写性能の評価]
以上の手順を得て作製された実施例5の位相シフトマスク31に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、この実施例5の位相シフトマスク31を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
〈比較例1〉
[マスクブランクの製造]
上述の実施例1のマスクブランク10の作製において、ハードマスク膜13をケイ素、酸素及び窒素からなるSiON膜(膜厚:10nm,組成:Si=37原子%,O=44原子%,N=19原子%)で形成したことを除き、上述の実施例1と同様の方法で、比較例のマスクブランク10を作製した。
具体的には、比較例のマスクブランク10のハードマスク膜13は、枚葉式DCスパッタ装置内に遮光膜12が形成された透光性基板11を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、酸素(O2)、窒素(N2)及びヘリウム(He)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって形成した。
実施例1と同様に、比較例のマスクブランク10の遮光膜12の表面形状から透光性基板11の表面形状を差し引くことにより得られる差分形状を取得し、差分形状のPV値を算出したところ、+71nmであった。また、ハードマスク膜13の表面形状から透光性基板11の表面形状を差し引くことにより差分形状を取得し、差分形状のPV値を算出したところ、+123nmであった。この結果から、比較例1のマスクブランク10におけるハードマスク膜13は、遮光膜12と同じ圧縮応力を有することがわかった。圧縮応力を有する遮光膜12の上に、同じ圧縮応力を有するハードマスク膜13を積層することで、2つの薄膜の積層構造による全体の膜応力が逆に増大してしまうこともわかる。
[位相シフトマスクの製造]
上記比較例1のマスクブランク10を用いて、上述の実施例1の位相シフトマスク30の製造の手順と同様の手順で、比較例1の位相シフトマスク30を製造した。
[パターン転写性能の評価]
比較例1の位相シフトマスク30に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、転写不良が確認された。これは、遮光パターンのパターン側壁形状の垂直性が悪く、ラインエッジラフネスも悪いことが、転写不良の発生要因と推察される。この結果から、この比較例1の位相シフトマスク30を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンに不良箇所が発生してしまうといえる。
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。