JP6803799B2 - 被覆鋼管の製造方法 - Google Patents
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Description
このポリオレフィン樹脂被覆鋼管は多くの場合、表面処理層としてクロメートを用いることで耐食性を向上させ、剥離を防止している。しかしクロメート処理液に含有する六価クロムの環境への影響が大きく、近年では使用が制限されることが多い。
付着塩分とは鋼管表面に存在する塩化ナトリウムを代表とする成分である。これらは鋼管の保管、搬送中に多く付着し、特に海岸や港湾付近で鋼管を保管する場合、海から飛来する塩分が大量に付着する。塗装前の付着塩分量は20mg/m2以下が望ましいとされているが、飛来した塩分が付着すると50mg/m2を優に超える。こうした付着塩分の除去方法としては一般的に鋼管の水洗が行われている。
ブラスト時の付着塩分の食い込みと研掃材への付着を防止するためにはブラスト前に付着塩分を除去する手法が必要である。ブラスト前の塩分付着量を低減させる手法としては、洗浄水の温度、水量を上げることが一般には考えられるが、洗浄水の温度、水量を種々変更して洗浄しても10mg/m2以下を満足できない事例が多く見られた。そこで本発明者らは洗浄条件の新たな影響因子として、洗浄水の電気伝導度に着目し、本発明者らは同一の温度、水量で洗浄しても、洗浄水の電気伝導度により、洗浄後の付着塩分量に差が生じることを見出した。
付着塩分10mg/m2以下を満足させる電気伝導度の値は洗浄時の水温、水量に影響される。本発明者らはこれら3要因の関係について調査を行い、洗浄水の電気伝導度Dが(1)式を満足すれば、鋼面に残留する付着塩分を10mg/m2以下にすることができることを導き出した。
D < 534.4 lnA + 482.4 lnB − 101.7 lnA・lnB −1867.8・・・(1)
D:洗浄水の電気伝導度(μS/cm)
A:洗浄水温度(℃)
B:水量(L/m2)
直径216.3mm、肉厚5.8mm、長さ5.5mの鋼管に対し、洗浄水の温度Aを20〜80℃、電気伝導度Dを50〜500μS/cm間で変化させ、洗浄後の付着塩分量が10mg/m2以下となる洗浄条件を調査した。これらは水量Bを1,5,10,15L/m2の条件で行った。図1に水量1L/m2での洗浄水温度Aと電気伝導度Dの関係を、図2に水量5L/m2での洗浄水温度Aと電気伝導度Dの関係を、図3に水量10L/m2での洗浄水温度Aと電気伝導度Dの関係を、図4に水量15L/m2での洗浄水温度Aと電気伝導度Dの関係を示す。図中の○印は10mg/m2以下を満足した条件、×印は10mg/m2を超えた条件を示している。
この結果、付着塩分量10mg/m2以下を満足する洗浄水温度Aと電気伝導度Dの関係は以下(2)〜(5)式で表現できることが判明した。
D < 543.5lnA − 1891.3 (B=1L/m2) ・・・(2)
D < 346.9lnA − 1025 (B=5L/m2) ・・・(3)
D < 304 lnA − 780.1 (B=10L/m2)・・・・(4)
D < 269.8lnA − 581.5 (B=15L/m2)・・・・(5)
これら対数関数の係数をX、切片をYとすると(6)式の様に表現できる。
D < XlnA − Y ・・・(6)
洗浄水温度Aと電気伝導度Dの対数関数は水量Bと相関すると考えられるため、X,Yと水量Bの関係を比較した。図5にX,Yと水量Bの関係を示す。その結果、X,Yと水量Bは以下(7)、(8)式で近似可能であると判明した。
X = −101.7lnB + 534.4 ・・・(7)
Y = −482.4lnB + 1867.8・・・(8)
得られた(7)、(8)式を(6)式に代入すると、次の(1)式が得られる。
D < 534.4 lnA + 482.4 lnB − 101.7 lnA・lnB −1867.8 ・・・(1)
すなわち洗浄水温度A、水量Bから付着塩分量10mg/m2以下を満足できる電気伝導度Dを算出し、洗浄後の鋼材表面に残存する導電性成分を低減させることによって、耐剥離性に優れたポリオレフィン樹脂被覆鋼管を製造することができる。
本発明に使用する鋼材としては普通鋼、あるいは高合金鋼などどのような鋼種でも適用可能である。なお、従来重防食被覆が適用されていた鋼管、及び海洋構造物等で使用される鋼管杭、鋼管矢板等にも適用可能である。
鋼材1の洗浄に使用する水の温度は好ましくは60℃以上とする。60℃以上では鋼管を後工程の表面処理時に必要な温度に加熱でき、生産能力が向上する。
洗浄水の水量は好ましくは1L/m2以上とする。1L/m2以上では鋼面全体を洗浄水が濡れ広がり処理時間の短縮化が可能となる。
洗浄に使用する水の電気伝導度は(1)式を用いて、使用する洗浄水の温度と水量から算出したD値未満とする。電気伝導度がD値以上の場合、鋼面に導電性成分が多量に残存し、その状態でブラストをすることで鋼面に食い込んでしまい、付着塩分量10mg/m2以下を満足できず、塗膜剥離が大きくなる。
洗浄後、速やかに鋼面の水分を除去する。手法に特に制限はないが、例えば乾燥空気の吹きかけによる乾燥が挙げられる。
洗浄後の塩分付着量は10mg/m2以下とする。10mg/m2を超えると付着塩分が多いため、クロメート処理なしでは塗膜剥離が増大する。
乾燥後、鋼管をブラスト処理し、スケールを除去する。研掃材は硅砂、スチールショット、スチールグリット等が挙げられる。投射方法はインペラーブラスト、エアーブラスト等が挙げられる。
表面処理層形成時の鋼材温度は40℃以上とする。40℃未満では鋼材表面の処理反応の進行が遅くなるため耐食性が低下する。
粉体エポキシ樹脂プライマーの塗布前に鋼材を加熱する必要がある。加熱温度範囲は160〜260℃である。160℃未満では粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化反応が不十分となり、プライマー層自体の破壊が起きる可能性がある。加熱温度が260℃を超える場合は、形成されたプライマー層の劣化が始まり密着性、防食性が低下する。鋼材の加熱方法は高周波誘導加熱、遠赤外加熱、ガス直火加熱などの方式を適用することができる。
エポキシ樹脂プライマー層3に使用する材料の成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂エポキシ樹脂等を単独、もしくは混合して使用する。更に高温特性が要求される場合、多官能性のフェノールノボラック型エポキシ樹脂やハロゲン化樹脂を上記のビスフェノールA型エポキシ樹脂あるいは、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂と組み合わせて用いることが出来る。エポキシ樹脂硬化剤はジシアンアミド系、芳香族ポリアミン系、フェノール系硬化剤等が使用でき、中でもフェノール系硬化剤が好ましい。フェノール系硬化剤を用いることで低温衝撃性に優れた塗膜が得られる。また、硬化促進剤、レベリング剤、流動化助剤、脱気剤等の添加剤や助剤を含有してもよい。
粉体エポキシ樹脂プライマーのガラス転移温度(Tg)は好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。Tgが80℃未満では操業温度が高温である時に耐食性が低下する。
粉体エポキシ樹脂プライマーは静電粉体塗装や流動浸漬塗装等の一般的な粉体塗装方法で塗布することができる。膜厚は50〜1000μmの範囲で塗布することが好ましい。膜厚が50μmより薄い場合にはピンホールが多数発生する。一方、1000μmを超える厚膜塗装では低温での耐衝撃性等の特性が低下しやすい。
グラフト変性率は0.1%〜3%であることが好ましい。0.1%より少ない場合はエポキシ樹脂プライマー層との化学結合が少なく、密着力に乏しい。対して3%を超える場合では変性の過程で低分子量成分が増大し、接着界面に拡散し接着力が低下する。グラフト変性率の測定は赤外分光法にて行う。本発明で用いることができる変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)(190℃あるいは230℃、荷重2.16kg)は、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.1〜2.5g/10分である。この範囲より多くても少なくても成形性が悪くなる。
変性ポリオレフィン樹脂接着剤の被覆方法としては、押出機のダイスを用いて加熱溶融した変性ポリオレフィン樹脂で直接鋼材を被覆する押出被覆方法を用いることができる。あるいは加熱した鋼材に予め成形した変性ポリオレフィン樹脂シートを貼り付ける方法、粉砕した変性ポリオレフィン樹脂を粉体塗装して溶融した被膜を形成する方法等がある。これらの方法により、0.05〜1mmの膜厚を有する変性ポリオレフィン樹脂接着剤層を形成することが好ましい。膜厚が0.05mm未満ではエポキシ樹脂プライマー層との溶融濡れが悪く、接着力が不十分である。また、1mmを越えると経済性の観点から好ましくない。
本発明で用いることができるポリオレフィン樹脂のMFR(190℃あるいは230℃、荷重2.16kg)は、好ましくは0.1〜5g/10分、より好ましくは0.1〜2.5g/10分である。この範囲より多くても少なくても成形性が悪くなる。
最外層のポリオレフィン樹脂層には、ポリオレフィン樹脂以外の成分としては、耐熱性、耐候性対策としてカーボンブラック又はその他の着色顔料、充填強化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の耐候剤等を任意の組み合わせで添加することができる。
ポリオレフィン樹脂の被覆方法としては、接着剤と同様に押出機のダイスを用いて加熱溶融したポリオレフィン樹脂で直接鋼材を被覆する押出被覆方法を用いることができる。あるいは加熱した鋼材に予め成形したポリオレフィン樹脂シートを貼り付ける方法、粉砕したポリオレフィン樹脂を粉体塗装して溶融して被膜を形成する方法等がある。これらの方法により、1mm〜6mmの膜厚を有するポリオレフィン樹脂層を形成することが好ましい。膜厚が1mmより薄いと、防食性、耐衝撃性が劣るため好ましくない。また膜厚が6mmを超えると寒暖差による塗膜の収縮により、端部からポリオレフィン樹脂被覆が剥離しやすいため好ましくない。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
鋼管サンプルとして、直径216.3mm、肉厚5.8mm、長さ5.5mの鋼管を準備し、洗浄前の付着塩分量を測定した。付着塩分量は次の方法で測定する。
鋼面にJISP3801に規定されたφ110mmの5種Aのろ紙を表面に置き、1.6mLの純水で全面を濡らし、2分間保持し付着塩分をろ紙に吸着させる。その後SCM400(エルコメーター社)を用いて、ろ紙の電気伝導度から付着塩分量を算出した。
ターニングロール上で鋼管を周速25m/minで回転させ、上から洗浄水を10分間かけ流し、洗浄を実施した。実施例1〜5は請求項の範囲内に温度、水量、電気伝導度を変化させた洗浄水を使用した。なお電気伝導度はイオン交換処理により調整した。
比較例1、5は洗浄を行わずに供試した。比較例2〜4は請求項の範囲外となる温度、水量、電気伝導度を変化させた水を使用した。
洗浄後、比較例1,5を除く鋼管に対し、洗浄前と同様に付着塩分を測定した。
上記鋼管に対し、インペラーブラストにより処理を施した。比較例5はブラスト後に洗浄を行い、洗浄後に付着塩分を測定した。
鋼管サンプルは、続いて50℃に加熱し、リン酸処理の後、さらに鋼管を200℃に加熱し、粉体エポキシ樹脂プライマーを静電粉体塗装で150μmに塗装し、200℃で加熱した厚さ200μmの変性ポリエチレン樹脂と厚さ3mmのポリエチレン樹脂を押出機からシート状に押出し、順に被覆し、本発明の実施例、比較例の被覆鋼管サンプルを作製した。
上記実施例および比較例によって得られた被覆鋼管サンプルを次に従って評価試験を行った。
JISG3477−1(印加電圧:−1.5V、試験温度:60℃、試験期間:28日間)に準拠し、陰極剥離の試験を行った。試験終了後塗膜の剥離半径を測定した。
本発明の実施例及び比較例の結果を表1に示す。
対して比較例1は洗浄を行わなかったため、付着塩分量が多く剥離が増大した。比較例2〜4は請求項1を満足しておらず、塩分除去能力の不足と導電性成分の残存により付着塩分量が多く剥離が増大した。比較例5はブラスト後に塩分が吸着してしまい、ブラスト後の洗浄では付着塩分を除去できずに剥離が増大した。
以上の結果、ブラスト前に洗浄し、当該洗浄水の電気伝導度を調整することによって、表面処理層にクロメートを使用せずとも優れた陰極剥離性を有するポリオレフィン樹脂被覆鋼管を得ることができる。
2 表面処理層
3 エポキシ樹脂プライマー層
4 変性ポリオレフィン樹脂接着剤層
5 ポリオレフィン樹脂層
Claims (2)
- 鋼管表面をブラストした後、表面処理層、エポキシ樹脂プライマー層、変性ポリオレフィン樹脂接着剤層、ポリオレフィン樹脂層を順次積層していく鋼管の外面ポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法において、ブラスト前に鋼管を洗浄することによって鋼管表面の塩分付着量を10mg/m2以下とすることを特徴とするポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法。
- 鋼管の洗浄に用いる洗浄水の電気伝導度Dが(1)式を満足することを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法。
D < 534.43 lnA + 482.4 lnB − 101.7 lnA・lnB −1867.8・・・(1)
D:洗浄水の電気伝導度(μS/cm)
A:洗浄水温度(℃)
B:水量(L/m2)
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