JP6855732B2 - 粉体組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スクラルファートを含有する粉体組成物に関するものである。
スクラルファートは胃で潰瘍部に特異的に付着し、保護膜(ペースト)を形成することで潰瘍を物理的に保護する。近年、スクラルファートの特徴を食道炎や食道潰瘍、小腸や大腸潰瘍、口内炎等の胃以外の患部に適用させる試みがなされている。例えば、特開平8−268895号公報(特許文献1)では、分子中にカルボキシル基を2つ以上有するか又は水酸基を1つ以上有する有機カルボン酸とスクラルファートとを併用することにより、食道炎や潰瘍、小腸・大腸潰瘍、口内炎等への付着性を高める技術が公開されている。
特表平10−505822号公報(特許文献2)では、スクラルファートとポリアルコールを含む水性懸濁液を噴霧乾燥して得られる固形化合物が、再び水に分散されるとチキソトロピー性を示すことが報告されている。しかしながら、ここで得られる固形化合物は含水率が低すぎる(5%未満)ため、十分なショ糖オクタ硫酸エステルの保存安定性が得られず、未だ改善の余地がある。また、アセチルサリチル酸等の水に溶けにくい酸が使用されていることから、その製造過程においてスクラルファートが酸で溶解された状態にならない。そのため、得られる固形化合物は、水に接触した際に速やかにゲル化するものとはならない。
このように、良好な粘膜付着性を速やかに発揮する液状やゲル状の薬剤は得られているが、水と接触して粉末の状態から速やかにゲル化して、口腔や食道のような通過時間の短い器官の粘膜に対しても良好な粘膜付着性を発揮する固形剤は未だ得られていない。
特開平8−268895号公報 特表平10−505822号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、スクラルファートを含有する粉体組成物であって、水と接触して粉末の状態から速やかにゲル化して、口腔や食道のような通過時間の短い器官の粘膜に対しても良好な粘膜付着性を発揮する粉体組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、スクラルファートをいったん有機酸及び水と混合した後、乾燥することによって得られる粉体組成物が、水の含有量と、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の吸熱ピーク面積から求められる融解熱量の総和とが適切な範囲に調整された場合において、再度水に接触した際に速やかにゲル化して優れた粘膜付着性を発揮することを見出し、本発明をなすに至ったものである。
従って、本発明は下記の粉体組成物及びその製造方法を提供する。
[1](A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を含有する粉体で、(C)成分の含有量が10〜30質量%であり、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、−20〜0℃の温度領域に現れる吸熱ピークの面積から求められる融解熱量の総和が0〜0.05J/gであることを特徴とする粉体組成物。
[2]上記熱融解量の総和が自由水及び結合水由来である[1]記載の粉体組成物。
[3](A)/(C)で表される含有質量比が1〜8である[1]又は[2]記載の粉体組成物。
[4](B)/(C)で表される含有質量比が0.2〜10である[1]〜[3]のいずれかに記載の粉体組成物。
[5](A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を含有する液状組成物を調製する工程と、該液状組成物を乾燥する工程とを含む粉体組成物の製造方法。
[6]上記乾燥を、マイクロ波乾燥又は凍結乾燥によって行う[5]記載の製造方法。
本発明によれば、水と接触して速やかにゲル化し、口腔や食道のような通過時間の短い器官の粘膜に対しても良好な粘膜付着性を発揮する粉体組成物を提供することができる。
比較例4に係る粉体組成物のDSC曲線である。 実施例1に係る粉体組成物のDSC曲線である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の粉体組成物は、(A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を含有する液状組成物を乾燥して、(C)水の含有量と、DSC曲線の吸熱ピーク面積から求められる融解熱量の総和とを適切な範囲とすることによって得られるものである。なお、以下の説明において、「液状組成物」とは上記(A)〜(C)成分を配合した段階の液状の組成物を意味し、「粉体組成物」とは「液状組成物」を乾燥して得た粉状の組成物を意味する。
(A)スクラルファート
(A)スクラルファート(ショ糖オクタ硫酸エステルアルミニウム塩)は、粘膜炎症部のタンパク質と結合して炎症部を被覆・保護しながら修復する作用を有し、「胃の絆創膏」とも呼ばれる薬物である。本発明では、胃の炎症部への効果の他、口腔内崩壊錠とすることによって、胸焼けの原因である食道の炎症部にも優れた効果を発揮することができる。
(A)スクラルファートの液状組成物中の含有量は、5〜80質量%が好ましく、10〜65質量%がより好ましく、20〜50質量%が更に好ましい。(A)成分の含有量を上記範囲内とすることで、分散安定性や製造適性(製造過程での粘度一定性)がより良好になる。
(A)成分の粉体組成物中の含有量は、30〜80質量%が好ましい。(A)成分の含有量を上記範囲内とすることで、粘膜付着性の高いゲルが得られ、粘膜保護効果が発揮できる。
(B)有機酸
(B)有機酸としては、水溶性の(即ち、水に溶けやすい)有機酸であれば特に限定されず、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、風味、分散安定性の点から、アルギン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、酪酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる1種以上が好ましく、特にクエン酸、リンゴ酸及び乳酸が好ましい。
(B)成分の液状組成物中の含有量は、5〜45質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。(B)成分の含有量を下限以上とすることで液状組成物の経時分散安定性が良好になり、製剤化が容易になる。また、(B)成分の含有量を上限以下とすることで、粘膜付着性が良好になる。
(B)成分の粉体組成物中の含有量は、5〜60質量%が好ましく、9〜55質量%がより好ましい。(B)成分の含有量を下限以上とすることで粘膜付着性が向上し、上限以下とすることで粘膜付着性が向上すると共に顆粒強度が高まる。
(C)水
(C)水の液状組成物中の含有量は、30〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。(C)成分の含有量を上記範囲とすることで、製造適性が良好になる。
(C)水の粉体組成物中の含有量(含水率)は、10〜30質量%である。(C)成分の含有量が30質量%を超えると、顆粒強度が弱まり粉末化が困難になる。(C)成分の含有量が10質量%未満になると、ショ糖オクタ硫酸エステルの安定性が悪化する。
[粉体組成物の含水率]
本発明において、上記粉体組成物中の(C)水の含有量(含水率)は、以下の式より算出される値(%)である。含水率は市販の水分計(例えば、(株)島津製作所製の「MOC63u」等)で測定することができる。
含水率(%)=(105℃・2hrで減量した水分量)/(粉体組成物の質量)×100
[(A)/(C)比]
液状組成物において、(A)/(C)で表される含有質量比は0.8〜6が好ましい。この比率を下限以上とすることで粘膜付着性が良好になり、液状組成物自体の分散安定性が良好になり製剤化が容易になる。また、上記比率を上限以下とすることで、良好な分散安定性が得られる。
また、粉体組成物中において、(A)/(C)で表される含有質量比は1〜8が好ましく、2.5〜6がより好ましい。(C)成分の含有量を下限以上とすることで粉体組成物の顆粒強度が増大し、打錠等でも壊れにくく、製剤化に適した顆粒が得られる。(C)成分の含有量を上限以下とすることでショ糖オクタ硫酸エステルの安定性が向上するほか、粘膜付着性が向上する。
[(B)/(C)比]
液状組成物において、(B)/(C)で表される含有質量比は、0.05〜4が好ましく、0.1〜2がより好ましい。この比率を上記範囲内とすることで、液状組成物の製造時のハンドリング性がよくなる。
また、粉体組成物中において、(B)/(C)で表される含有質量比は、0.2〜10が好ましく、0.4〜5がより好ましい。この比率を上記範囲内とすることで、粘膜付着性の高いゲルが得られる。
[液状組成物]
本発明の「液状」とは、粘度(25℃)が概ね100〜50,000mPa・sである流動体を意味する。粘度は、製造適性の点から、100〜10,000mPa・sが好ましい。なお、粘度は、B型粘度計(例えば、東機産業(株)製、「RB−80」)、3又は4番ローター(粘度に応じて変更)を用い、回転速度12rpm/20℃で測定する。本発明において、製造適性とは、スクラルファート液状組成物の調製時や、該液状組成物に更なる製剤化処理(乾燥工程等)を加えるために次製造プロセスに移行する際等における取り扱いやすさを意味する。特に組成物の粘度が高すぎた場合、攪拌やライン輸送等が困難になるおそれがあり、製造適性上望ましくない。そのため、本発明では、液状組成物の粘度は上記範囲内とすることが好ましい。
[粉体組成物]
粉体組成物は、上記で得られた液状組成物を乾燥して、水の含有量と、DSC曲線の吸熱ピーク面積から求められる融解熱量の総和とを、上記の範囲となるように調整することにより得られるものである。
乾燥方法としては、マイクロ波乾燥、凍結乾燥等を採用することができ、特に短時間で乾燥が完了するマイクロ波乾燥を好適に採用することができる。なお、温熱乾燥や自然乾燥でも所定の含水率に調整することはできるが、後述する示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、−20〜0℃の温度領域に現れる吸熱ピークの面積から求められる融解熱量の総和が本発明で規定する範囲にならない。そのため、これらの乾燥方法で得られる粉末は、速やかにゲル化するものとはならない。
スクラルファート自体の1回服用量は、好ましくは700〜3,600mg、より好ましくは800〜1,300mgである。これに別途制酸剤を加えたり、ソフトチュアブルカプセルに内包させたりすることにより、服用する。
上記液状組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を適宜配合することができる。任意成分としては、制酸剤、その他の有効成分、賦型剤、結合剤、糖アルコール、崩壊剤、甘味剤、滑沢剤、防腐剤、香料、色素等が挙げられる。
本発明の粉体組成物が適用される剤型としては、粉体組成物をそのまま顆粒剤、散剤としてもよく、更に賦型剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、乳化剤、基剤等の任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することで、錠剤(チュアブル錠、口腔内崩壊錠含む)、ハードカプセル剤、顆粒剤、散剤とすることができる。本発明においては特に錠剤、顆粒剤、散剤が好ましい。胃や腸粘膜に送達する場合は腸溶性ハードカプセルとするのが好ましい。
制酸剤としては、炭酸水素ナトリウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウムの共沈生成物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸二マグネシウムビスマス、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、ボレイ、アミノ酢酸、ロートエキス等が挙げられる。最も好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
制酸剤の含有量は特に限定はされないが、制酸効果の観点から、1回服用量として100〜1,500mgが好ましく、200〜1,000mgがより好ましい。また、(A)スクラルファート500mgに対して、制酸剤100〜1,500mgが好ましく、200〜1,000mgがより好ましい。
その他有効成分として、ラニチジン又はラニチジン塩酸塩、ファモチジン、シメチジン、塩酸ロキサチジンアセタート、ニザチジン、ラフチジン、ランソプラゾール、ラベプラゾール、オメプラゾール等の胃酸分泌抑制剤、ピレンゼピン、アトロピン、スコポラミン等のムスカリン受容体拮抗薬、アルジオキサ、アズレン、L−グルタミン、レバミピド等の防御因子促進剤等が挙げられる。
賦型剤としては、乳糖、コーンスターチ、結晶セルロース、バレイショデンプン等が挙げられる。結合剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、アルファー化デンプン、カルボキシビニルポリマー、寒天、ハチミツ等が挙げられる。糖アルコールとしては、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、パラチニット、ラクチトール等が挙げられる。崩壊剤としては、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。甘味剤としては、ショ糖、果糖、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、精製白糖、サッカリン、グリチルリチン等が挙げられる。防腐剤としては、パラベン類、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。香料としては、メントール、リモネン、オレンジフレーバー、ライチフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、ミントフレーバー、グレープフルーツフレーバー等が挙げられる。色素としては、カラメル、カルミン、カロチン液、β−カロテン、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム等が挙げられる。
[融解熱量]
本発明において、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、−20〜0℃の温度領域に現れる吸熱ピークの面積から求められる融解熱量の総和は0〜0.05J/gであり、0〜0.03J/gが好ましく、0〜0.01J/gがより好ましい。融解熱量の総和が0.05J/gを超えると、粉体組成物が水と接触したときの導水性が悪くなってしまうことから、速やかにゲル化しにくくなる。そのため、所望する粘膜付着性が得られない。
上記の示差走査熱量計により測定される融解熱量は、JIS K 7121(プラスチックの転移温度測定方法)及びJIS K 0129(熱分析通則)に準じて示差走査熱量計(DSC)(例えば、ネッチ社製の「DSC 3500 Sirius」)を用いて測定されたDSC曲線より算出されるものである。具体的には、当該融解熱量は、粉体組成物を室温から−30℃まで冷却し、凍結した後、30℃まで昇温する凍結昇温過程において、−30℃から30℃まで加熱する昇温過程で検出される吸熱ピークの面積より算出されるものである。上記吸熱ピークの面積は、DSCの自動面積計算ソフト(例えば、ネッチジャパン社製の「Thermal Analysis System Ver5.1 SP3」等)の自動ピーク検出機能により算出することができる。本発明において、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、−20〜0℃の温度領域に現れる吸熱ピークの面積から求められる融解熱量の総和は、本発明の粉体組成物を構成する水以外の成分のいずれもがこの温度範囲に融解ピークをもたないことから、自由水及び結合水由来の融解熱量の総和と一致する。なお、本発明において、自由水とは、他分子と結びつきのない、結合水以外の水をいい、結合水とは組織の空隙などで物理的相互作用により捉えられたり、水素結合などにより構成分子(溶質、イオン、双極子)と水和している水をいう。
ここで、吸熱ピークについてより具体的に説明するため、図1及び図2に粉体組成物について測定したDSC曲線を示した。測定条件等については、後述する実施例において説明する。
図1に示したDSC曲線は、比較例4のものである。この図では、昇温過程で−10〜−5℃付近において結合水由来の吸熱ピークが観測され、−4℃付近において自由水由来の吸熱ピークが現れていることが確認できる。粉体組成物中に自由水及び結合水が存在する場合、これらは吸熱ピークとして現れるため、その面積から融解熱量の総和を求めることができる。
一方、図2に示したDSC曲線は、実施例1のものである。この図では、昇温過程において吸熱ピークが現れておらず自由水及び結合水が存在しない(若しくは、検出限界を下回っている)ことが確認できる。この場合、自由水及び結合水由来の融解熱量の総和は0J/gである。なお、粉体組成物中に結合水及び自由水が存在しない場合を融解熱量の総和0J/gとするが、これは、DSCの自動面積計算ソフトにて自動ピーク検出されず(=ピークとみなされず)面積の測定ができない状態を意味するものとする。この時、組成物中に存在する水分子の物理化学的な存在状態は、「自由水、結合水として存在せずショ糖オクタ硫酸エステルと酸が作る高次構造体の中に取り込まれ、運動が束縛された状態」にあると考えられる。
本発明では、特に(A)スクラルファートを水溶性の(B)有機酸で一度処理することが有効であり、液状組成物を調製する工程においてこの処理を経ることで、本発明で規定する自由水及び結合水の融解熱量の総和を上記の範囲とすることができる。なお、乾燥工程を経ないで、単に含水率が10〜30質量%となるように上記各成分を混ぜ合わせたとしても、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、−20〜0℃の温度領域に現れる吸熱ピークの面積から求められる融解熱量の総和(自由水及び結合水の融解熱量の総和)を上記の範囲とすることができず、速やかにゲル化して良好な粘膜付着性を有する本発明の粉体組成物を得ることはできない。
[製造方法]
本発明の粉体組成物は、(A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を所定の比率で混合して液状組成物を得る工程と、得られた液状組成物を乾燥する工程とを経ることにより製造することができる。
上記の液状組成物を調製する工程においては、特別な攪拌・混合を行う必要なく、公知の攪拌・混合法を採用することができる。攪拌装置としては、スターラー攪拌、プロペラ攪拌、ホモジナイザー、ホモミキサー及び乳化機等が挙げられる。
上記乾燥工程では、上記で得た液状組成物を所定の乾燥方法により乾燥することにより本発明の粉体組成物を得ることができる。乾燥方法としては、液状組成物を十分に乾燥し得、本発明で規定する要件を満足する粉体組成物を得ることができるものであれば特に限定されないが、マイクロ波乾燥や凍結乾燥等を採用することができる。本発明では製造性の観点から、より短時間で乾燥を完了することができるマイクロ波乾燥を好適に採用することができる。
マイクロ波乾燥を行う場合は、公知のマイクロ波オーブン(例えば、ミクロ電子(株)製の「MOH−1500HP」等)を使用することができる。乾燥条件としては、特に制限されるものではないが、例えば、乾燥温度は60℃以下、好ましくは40℃以下、乾燥時の圧力は20〜100Torr、好ましくは20〜30Torr、乾燥時間は20〜180分、好ましくは20〜60分といった条件を採用することができる。
凍結乾燥を行う場合は、公知の凍結乾燥器(例えば、ADVANTEC(株)製の「DRZ350WA」等)を使用することができる。乾燥条件は、特に制限されるものではないが、例えば、−40℃までチャンバー内を予備冷却した後、試料を入れて20Pa以下に減圧し、72時間乾燥する条件を採用することができる。
また、その他の乾燥方法としては、温熱乾燥、自然乾燥及び噴霧乾燥等が挙げられるが、本発明においてこれらの乾燥方法を採用した場合、十分に乾燥したとしても上記融解熱量の総和が本発明で規定する範囲とはならない。スクラルファートを含有する液状の組成物をこれらの乾燥方法で粉末化した場合、得られる粉末は、水に濡れても再分散性が悪いため速やかにゲル化するものとはならず、消化管到達時に目的とする粘膜付着効果が得られるものとはならない。これは乾燥過程でスクラルファートと有機酸の複合体の高次構造が変化し、導水性が悪くなるためと推察される。これに対し、本発明で採用し得るマイクロ波乾燥や凍結乾燥では、乾燥過程でスクラルファートと有機酸の複合体の高次構造が維持されることから、このような不都合を生じることはない。
なお、本発明では、乾燥工程を経ないで、単に含水率が10〜30質量%となるように上記各成分を混ぜ合わせたとしても、自由水及び結合水の融解熱量の総和を上記の範囲とすることができず、速やかにゲル化して良好な粘膜付着性を有する本発明の粉体組成物を得ることはできない。
[ハードカプセル]
ゼラチン、プルラン、セルロース等の可食性基剤からなる外皮に本発明の粉体組成物を内包して製する。カプセル自体は、一般的な方法(浸漬法等)で得られる剤を用いることができる。内用物の充填は、粉末充填で一般的に用いられる方法(オーガー式、ダイコンプレス式、ファンネル式等が知られている)ではなく、ポンプ式等の液剤充填に用いられる方法が好ましい。ソフトカプセルの場合と同様の目的で、無機塩や糖アルコールを液状組成物に溶かし込んで添加してもよい。
なお、本発明の粉体組成物をカプセル剤とする場合、粉体組成物と皮膜との質量比は、粉体組成物/皮膜=8.0〜0.5とすることが好ましい。ハードカプセル剤とした場合は、口腔内で咀嚼又は舐めて皮膜を溶かして内容物(粉体組成物)を口内で暴露させることにより口腔粘膜に滞留させたり、暴露した内容物を嚥下して食道粘膜を通過させることで食道粘膜に直接作用させたりする。本発明のように1回服用量を小容量(1回の服用量として多くとも10g、好ましくは0.5〜4g程度、より好ましくは1〜3g程度)とすることで、特に嚥下直後はその大半が食道に滞留するため、すぐに胃に流れてしまうことがない。これらによって、高い治療効果が期待できる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。
なお、以下の実施例で用いたスクラルファート(富士化学工業(株)製、「スクラルファート水和物」)には12質量%程度の水分が含まれる。そのため、下記表では、(A)スクラルファートの含有量は、固形分と含有水分とを個別に記載した。下記表に示した実施例及び比較例では、スクラルファート(固形分)500g、含有水分70gを含有しているが、これはスクラルファート水和物として570gを配合したことを示している。また、各成分の割合、(A)/(C)比及び(B)/(C)比は、スクラルファート水和物に含まれる含有水分を(C)水に含めて算出した。
[実施例1〜11、比較例1〜6]
下記表の組成に従い、以下の通り組成物を調製した。
(1)液状組成物の調製
(B)有機酸を(C)水(精製水)に溶解した。スターラー攪拌(回転数100〜1,000rpm)を続けながら(A)スクラルファート粉末を直接添加し、一昼夜攪拌後、液状組成物を得た(スクラルファート液状組成物:粘度100〜48,000mPa・s)。得られた液状組成物の詳細については表1に示した。なお、比較例1は、(A)〜(C)成分を単に混ぜただけで、乾燥処理をせずに調製した粉体組成物である。
(2)粉体組成物の調製
上記(1)で得た液状組成物50gを500mLビーカーに入れ、下記(A)〜(D)の方法で目標の含水率になるまで乾燥してフレーク(粉体組成物)を得た。得られたフレークは、乳鉢ですり潰した後、φ75mmの自動振動篩装置にてふるい分けし、177〜425μmの粉末を回収して評価用の試料とした。得られた粉体組成物の含水率の測定については後述する。
(A)マイクロ波乾燥
乾燥機:ミクロ電子(株)製、「MOH−1500HP」(マイクロ波オーブン)
出力:200W又は100W
乾燥温度:40℃以下
圧力:20〜30Torr(試料の泡立ち具合を見ながら調整)
乾燥時間:20〜60分
乾燥中の攪拌:しない
(B)凍結乾燥
乾燥機:ADVANTEC(株)製、「DRZ350WA」(凍結乾燥器)
乾燥方法:−40℃までチャンバー内を予備冷却した後、試料を入れて20Pa以下に減圧し、72時間乾燥した。乾燥物を軽く砕いてフレークを得た。
(C)温熱乾燥
乾燥機:(株)三商製、「Vacuum Drying Oven SVD10」
乾燥方法:105℃で3時間静置して乾燥し、フレークを得た。
(D)自然乾燥
室温にて開放系で1週間静置し、フレークを得た。
(3)粉体組成物の含水率の測定
(株)島津製作所製の水分計「MOC63u」使用し、上記で得られた粉体組成物の水分量を測定し、上記の計算式で含水率を求めた。
上記で得られた粉体組成物について、下記評価を行った。結果を表1及び2に示す。
[融解熱量]
JIS K 7121(プラスチックの転移温度測定方法)及びJIS K 0129(熱分析通則)に準じて示差走査熱量測定(DSC)を行った。そして、得られたDSC曲線において、−20〜0℃の温度領域に現れる吸熱ピークの面積から求められる融解熱量の総和(自由水及び結合水の融解熱量の総和)を算出した。
<条件>
示差走査熱量計:ネッチ社製、「DSC 3500 Sirius」
測定条件:室温から−30℃まで10℃/分で冷却後5分間静置し、次に1℃/分の速度で30℃まで昇温した。
[in vitro付着量]
粘膜モデルとして表面がカチオン性であるアミノアルキルシリル化処理ガラスプレートを用いた。
粉体組成物30mgをガラスプレートに量りとり、精製水100mgを添加して30秒間静置した後、精製水で洗い流して残存したゲルの重量を測定した。なお、本発明の粉体組成物が水と接触することにより生成するゲルは、有効成分であるスクラルファートの他に酸や水を含んだヒドロゲルであり、全体として損傷粘膜を被覆する防御能があると考えられるので、粉体組成物の残存量ではなくガラスプレート上に残存したゲルの全重量で評価した。
ゲルがガラスプレート上に30mg以上残存した場合を合格とした。
[顆粒強度]
顆粒強度測定機を用いて顆粒の圧縮に対する強度を測定した。3粒の顆粒の平均値を顆粒強度とした。30g以上を合格とした。
<条件>
顆粒強度測定機:GRANO Particle Hardness Tester(岡田精工(株)製)
測定条件:顆粒1粒ずつを室温にて測定
[ショ糖オクタ硫酸エステルの保存安定性]
試料を瓶に密閉保存し、50℃恒温槽に1週間保存後及び保存前のショ糖オクタ硫酸エステルの含量を評価した。日局「スクラルファート水和物」の定量法(HPLC法)に準じて試験した。
[所要時間]
以下の条件で粉体組成物の製造の所要時間を計測した。短時間であるほど生産効率の観点で望ましい。なお、下記表において、所要時間の単位は、特に明記しない場合は「分」であるが、「hr」とした場合は「時間」、「d」とした場合は「日」を表す。
(始点)
乾燥機で乾燥する場合:チャンバーに試料を設置し、所望の温度、圧力条件に達した時間を乾燥開始時間とした。
自然乾燥の場合:試料をシャーレに満たし、室温開放系で静置下時間を乾燥開始時間とした。
(終点)
所望の水分量になった時間を乾燥終点とした。なお、水分量は(株)島津製作所製の水分計で測定した。
Figure 0006855732
Figure 0006855732
また、比較例の結果から以下のことが確認できた。
比較例1は、乾燥工程を経ることなく、単に各成分を配合して水分量を調節しただけでは本発明のように速やかにゲル化して優れた粘膜付着性を有する粉体は得られなかった。
比較例2は、乾燥後における含水率が高すぎたため、粘着性のゲルとなってしまい、粘膜付着性は良好であるものの、目的とする粉体とはならなかった。
比較例3は、乾燥後における含水率が低すぎたため、保存安定性に劣るものとなった。
比較例4は、融解熱量の総和が高いため、粘膜付着性に劣るものとなった。
比較例5は、融解熱量の総和が高いため、粘膜付着性に劣るものとなった。
比較例6は、(B)有機酸を配合していないため、粘膜付着性に劣るものとなった。
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
スクラルファート:富士化学工業(株)製、「スクラルファート水和物」
乳酸:DSP五協フード&ケミカル(株)製、90%DL−乳酸
リンゴ酸:関東化学(株)製、「リンゴ酸」
クエン酸:関東化学(株)製、「クエン酸」
精製水:共栄製薬(株)製、「精製水(蒸留)」

Claims (5)

  1. (A)スクラルファート、(B)クエン酸、リンゴ酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる1種以上の有機酸、及び(C)水を含有する粉体で、(C)成分の含有量が10〜30質量%であり、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、−20〜0℃の温度領域に現れる吸熱ピークの面積から求められる融解熱量の総和が0〜0.05J/gであることを特徴とする粉体組成物。
  2. 上記熱融解量の総和が自由水及び結合水由来である請求項1記載の粉体組成物。
  3. (A)/(C)で表される含有質量比が1〜8である請求項1又は2記載の粉体組成物。
  4. (B)/(C)で表される含有質量比が0.2〜10である請求項1〜3のいずれか1項記載の粉体組成物。
  5. (A)スクラルファート、(B)クエン酸、リンゴ酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる1種以上の有機酸、及び(C)水を含有する液状組成物を調製する工程と、該液状組成物を乾燥する工程とを含み、
    上記乾燥を、マイクロ波乾燥又は凍結乾燥によって行う粉体組成物の製造方法。
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