JP7011987B2 - Ni基溶接金属及び溶接構造物 - Google Patents
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Description
図1において、縦軸は、Ni基溶接金属を粒界腐食試験に供して測定した粒界侵食速度(Inter-granular Penetration rate:IGP)値、横軸は、Ni基溶接金属について計算したmNBar値(フィッティング後の数式(I))を示す。●のプロットは、既存の6種類の690系合金相当の溶接金属(52溶接合金、152溶接合金)のそれぞれを供試材とした場合の結果であり、○のプロットは、既存の3種類の600系合金相当の溶接金属(82溶接合金、182溶接合金)のそれぞれを供試材とした場合の結果である。
図2において、左軸は、Ni基溶接金属を隙間付き定歪み曲げ試験(Creviced bent beam test:CBB試験)に供して測定した最大き裂深さ(長さ)、右軸は、Ni基溶接金属のビッカース硬さ(Hv5)、横軸は、Ni基溶接金属のmNBar値を示す。■のプロットは、ビッカース硬さの測定結果であり、●のプロットは、IGSCCの最大き裂深さの測定結果であり、○のプロットは、TGSCCの最大き裂深さの測定結果である。供試材は、いずれも、690系合金相当の溶接金属である。
図3において、縦軸は、Ni基溶接金属の試験片のビッカース硬さ(Hv5)、横軸は、Ni基溶接金属の3種の添加元素(Nb、Ta及びTi)の濃度(質量%)を合算した計算値(数式(I)の部分変数の計算値)を示す。●のプロットは、690系合金相当の溶接金属のうち、IGSCCの発生、進展が確認されたがTGSCCが発生しなかった供試材の結果、○のプロットは、既存の600系合金相当の溶接金属であり、IGSCCの発生、進展が確認されたがTGSCCが発生しなかった供試材の結果、◆のプロットは、690系合金相当の溶接金属のうち、TGSCCが発生した供試材の結果である。
図4において、縦軸は、Ni基溶接金属(182溶接合金、82溶接合金)におけるき裂進展速度(Crack Growth Rate:CGR)値、横軸は、Ni基溶接金属のCr濃度(質量%)を示す。図4は、公知文献(G. A. Young, et al., 13th International Conference on Environmental Degradation of Materials in Nuclear Power Systems, 2007, p808-831)の試験結果を引用したものである。
図5及び図6に示すように、Ni-Cr-Fe系合金は、フェライト安定化元素であるCrの濃度が高いと、オーステナイト相(γ相)とフェライト相(α相)との混相になり、靭性や耐食性が低下する。そのため、Ni基溶接金属のCr濃度は、オーステナイト単相が安定になる上限値以下に調整することが好ましい。
Cは、オーステナイト相を安定化し、硬さ、強度等の向上に寄与する。しかし、C量が多すぎると、炭化物の過剰な析出によって、耐SCC性や靭性が低下する。よって、C量は、0.01質量%以上が好ましい。また、0.15質量%以下が好ましく、0.10質量%以下がより好ましく、0.06質量%以下が更に好ましく、0.04質量%以下が更に好ましい。Cを添加する場合、C量は、0.02質量%以上、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、且つ、0.3質量%以下、好ましくは0.25質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下等とすることができる。
Mnは、脱酸剤として働き、オーステナイト相を安定化し、耐高温割れ性等の向上に寄与する。しかし、Mn量が多すぎると、延性や靭性が低下する。よって、Mn量は、4.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下が更に好ましく、1.5質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以下が更に好ましい。Mnを添加する場合、Mn量は、1.0質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、且つ、5.0質量%以下、好ましくは4.0質量%以下等とすることができる。
Feは、オーステナイト相を安定化し、硬さ、強度等の向上に寄与する。しかし、Fe量が多すぎると、σ相、ラーベス相等を析出して延性や靭性が低下したり、割れ感受性が高くなったりする。よって、他の合金元素を添加する場合、Fe量は、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、2.5質量%以上が更に好ましい。また、7.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましい。Feで高強度化を図る場合、Fe量は、7.0質量%以上が好ましく、8.0質量%以上がより好ましく、9.0質量%以上が更に好ましく、10.0質量%以上が更に好ましい。また、17.0質量%以下が好ましく、14.0質量%以下がより好ましく、11.0質量%以下が更に好ましい。
Pは、不可避的不純物であり、凝固割れ、液化割れ等を含む高温割れの感受性を増大させる。よって、P量は、0.04質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がより好ましく、0.02質量%以下が更に好ましい。
Sは、不可避的不純物であり、凝固割れ、液化割れ等を含む高温割れの感受性を増大させる。よって、S量は、0.02質量%以下が好ましく、0.015質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましい。
Siは、脱酸剤として働き、耐酸化性、濡れ性等の向上に寄与する。しかし、Si量が多すぎると、靭性、耐食性、溶接性が低下し、割れ感受性が高くなる。よって、Si量は、1.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。Siを添加する場合、Si量は、1.0質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、且つ、5.0質量%以下、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下等とすることができる。
Cuは、オーステナイト相を安定化し、硬さ、強度等の向上に寄与する。しかし、Cu量が多すぎると、延性、耐食性、溶接性が低下する。よって、Cu量は、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましい。Cuを添加する場合、Cu量は、0.5質量%以上、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、且つ、3.0質量%以下、好ましくは2.0質量%以下等とすることができる。
Coは、オーステナイト相を安定化し、溶接性等の向上に寄与する。しかし、Co量が多すぎると、σ相を析出して延性や靭性が低下したり、放射線環境下において放射化したりする。よって、Co量は、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が更に好ましい。Coを添加する場合、Co量は、27.0質量%以上、好ましくは28.0質量%以上、且つ、32.0質量%以下、好ましくは31.0質量%以下等とすることができる。
Alは、脱酸剤として働き、耐酸化性等の向上に寄与する。しかし、Al量が多すぎると、靭性や溶接性が低下する。よって、Al量は、1.5質量%以下が好ましく、1.3質量%以下がより好ましく、1.1質量%以下が更に好ましく、0.8質量%以下が更に好ましく、0.6質量%以下が更に好ましい。Alを添加する場合、Al量は、1.0質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、且つ、5.0質量%以下、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下等とすることができる。
Tiは、炭化物を析出して鋭敏化を妨げる他、脱酸剤として働き、耐高温割れ性等の向上に寄与する。しかし、Ti量が多すぎると、過剰な炭化物を析出して靭性、耐食性が低下したり、溶接性が低下したり、割れ感受性が高くなったりする。よって、Tiを添加する場合、Ti量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が更に好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。また、2.16質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。
NbやTaは、炭化物を析出して鋭敏化を妨げる他、耐高温割れ性等の向上に寄与する。しかし、Nb量やTa量が多すぎると、過剰な炭化物や金属間化合物を析出して靭性、耐食性が低下したり、割れ感受性が高くなったりする。よって、Nb量及びTa量の合計は、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、1.0質量%以上が更に好ましく、1.5質量%以上、2.0質量%以上等とすることもできる。また、Nb量及びTa量の合計は、4.32質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.5質量%以下が更に好ましく、3.0質量%以下、2.5質量%以下等とすることもできる。
Moは、硬さ、強度、耐酸化性、耐食性等の向上に寄与する。しかし、Mo量が多すぎると、偏析して靭性や耐食性が低下したり、割れ感受性が高くなったりする。よって、Mo量は、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.7質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。Moを添加する場合、Mo量は、1.0質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは4.0質量%以上、且つ、7.0質量%以下、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下等とすることができる。
Ni基溶接金属は、以上の元素の他に、目的に応じて、その他の添加元素が添加されてもよい。その他の添加元素としては、例えば、W、Mg、Ca、V、Zr、B、N等が挙げられる。その他の添加元素は、合計の濃度が0.50質量%以下であることが好ましい。BやNの濃度は、それぞれ、0.05質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましい。
Ni基溶接金属は、意図的に添加される添加元素を除く残部が、Ni及び不可避的不純物からなる。不可避的不純物としては、Ni基溶接金属の原料中に混入している不純物や、Ni基溶接金属の製造過程で混入する不純物や、被溶接材から浸入する不純物等があり、例えば、意図的に添加されない前記の各元素の他、Sn、Pb、O等が挙げられる。不可避的不純物は、各元素毎の濃度が0.05質量%以下、合計の濃度が0.50質量%以下であれば含有することを許容される。
図8において、縦軸は、Ni基溶接金属の3種の添加元素(Nb、Ta及びTi)の濃度(質量%)を合算した計算値(数式(I)の部分変数の計算値)、横軸は、Ni基溶接金属のCr濃度(質量%)を示す。破線は、数式(I)に[%C]=0.01、mNBar値=8を代入した結果、実線は、数式(I)に[%C]=0.01、mNBar値=35を代入した結果、一点鎖線は、数式(I)に[%C]=0.055、mNBar値=8を代入した結果、二点鎖線は、数式(I)に[%C]=0.055、mNBar値=35を代入した結果である。
図9において、縦軸は、図8と同様に、3種の添加元素(Nb、Ta及びTi)の濃度(質量%)を合算した計算値(数式(I)の部分変数の計算値)、横軸は、Cr濃度(質量%)を示す。図中の太線枠は、図8の破線よりも上の領域のうち、数式(II)、(III)、(IV)及び(V)を満たす領域を示している。また、斜線で網掛けされた領域は、690系合金相当の一般的な溶接金属の規格値、ドットで網掛けされた領域は、690系合金相当の一般的な溶接金属の文献値に相当する(表1参照)。
Claims (5)
- Cr:26質量%以上27質量%未満、C:0.01質量%以上0.055質量%以下、Mn:5.0質量%以下、Fe:17.0質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.02質量%以下、Si:5.0質量%以下、Cu:3.0質量%以下、Co:32.0質量%以下、Al:5.0質量%以下、Mo:7.0質量%以下であり、Nb、Ta及びTiのうちの一種以上を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなり、Nbの濃度(質量%)を[%Nb]、Taの濃度(質量%)を[%Ta]、Tiの濃度(質量%)を[%Ti]としたとき、[%Nb]+[%Ta]+2[%Ti]が、1.5を超え2.0未満であるNi基溶接金属。
- Cr:26質量%以上27質量%未満、C:0.01質量%以上0.055質量%以下、Mn:5.0質量%以下、Fe:17.0質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.02質量%以下、Si:5.0質量%以下、Cu:3.0質量%以下、Co:32.0質量%以下、Al:5.0質量%以下、Mo:7.0質量%以下であり、Nb、Ta及びTiのうちの一種以上を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなり、Nbの濃度(質量%)を[%Nb]、Taの濃度(質量%)を[%Ta]、Tiの濃度(質量%)を[%Ti]としたとき、[%Nb]+[%Ta]+2[%Ti]が、4.2を超え4.32以下であるNi基溶接金属。
- Cr:31.5質量%を超え32質量%以下、C:0.01質量%以上0.055質量%以下、Mn:5.0質量%以下、Fe:17.0質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.02質量%以下、Si:5.0質量%以下、Cu:3.0質量%以下、Co:32.0質量%以下、Al:5.0質量%以下、Mo:7.0質量%以下であり、Nb、Ta及びTiのうちの一種以上を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなり、Nbの濃度(質量%)を[%Nb]、Taの濃度(質量%)を[%Ta]、Tiの濃度(質量%)を[%Ti]としたとき、[%Nb]+[%Ta]+2[%Ti]が、3.1を超え4.32以下であるNi基溶接金属。
- 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のNi基溶接金属で溶接部が形成された溶接構造物。
- 原子炉の炉内構造物である請求項4に記載の溶接構造物。
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