JP7055943B2 - 石炭灰の無害化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セメント分野、土木分野、建築分野などにおいて、石炭灰をリサイクル材として用いる際に、石炭灰中に含有される可能性がある有害元素の溶出を確実に抑制し、石炭灰を無害化する技術に関する。
従来より、石炭を燃料とする火力発電設備やボイラなどのプロセスからは、石炭灰といわれる粉じん状の副産物が発生することが知られている。この石炭灰は、火力発電所や大型のボイラのような大規模設備では膨大な量となる。例えば、石炭火力発電所では石炭を燃焼させると燃焼させた石炭の約1割の量の石炭灰が発生する。近年国内では1200万トン/年程度の量の石炭灰が発生しており、今後更に増加すると予想されている。そのため、廃棄物の低減を意図し、石炭灰の再利用(リサイクル材としての使用)が行われている。
つまり、石炭灰はその70%程度がセメント原料の一部へ、20%程度が路盤材等の土木分野や建築分野へ、5%程度が埋め立て処理されている。増え続ける石炭灰に対し、例えば、電力会社は新規用途の開拓を進めているがその実現には至っていないのが現状である。今後、主要用途である国内のセメント需要が鈍化した場合、石炭灰の需給バランスが崩壊する可能性もある。この為、既存のセメント以外の新規用途を開拓することが重要となってくる。
新規用途を開拓する際、石炭灰に含まれる有害元素の溶出が問題になってくる可能性がある。たとえば、石炭灰を路盤材等に使用した際、人体に悪影響を及ぼす元素が溶出してくるという問題がある事が知られている。加えて、今後、上述した燃料の石炭に低品位のものを用いざるを得ない場合が増えることも考えられ、低品位の石炭に不純物として含まれるフッ素(F)、ホウ素(B)、セレン(Se)、ヒ素、六価クロム、鉛、カドミウム、水銀等の有害元素が石炭灰中に移行することで、石炭灰に含まれる有害元素が問題となってくる可能性がある。以上のような理由から、リサイクル原料などを含む、セメント原料以外の用途に石炭灰を使用する場合に備え、これら有害な元素の溶出を確実に抑制する無害化処理を行う必要性が増してくる。
石炭灰を無害化し再利用する方法の1つとして、石炭灰を造粒物の形(Fly ash pellet)に成形し、それを一旦蒸気エージング処理にて強度を出したのちに粉砕し路盤材に使用するという、石炭灰の無害化技術が実用化されている。
しかしながら、この技術ではリサイクル材が造粒物であるため、セメント等の粉末状態での用途に石炭灰を活用できない。また、造粒、養生、粉砕といった製造コストが掛かり、また無害化のためにセメントや消石灰などを添加する必要があり、副原料費も多量に必要となり、資源保護の点からも好ましくない。
一方で、石炭灰の無害化技術の一つとして、セメント固化と呼ばれる技術もある。
これは、溶出抑制のために高炉セメント等の固化材を石炭灰に添加し、有害元素を物理的にセメント内に封じ込めるものである。
しかしながら、この方法は、無害化に対し添加材を加える必要がある事から、資源保護の点から好ましくなく、また原料コストが掛かるというデメリットがある。また、Fly ash pelletを製造するときと同じように、製品が一定以上の大きさの塊成物であるため、用途が限定されることとなる。
近年では、Ca添加によってCaを継続的に溶出させることで、有害元素の溶出を抑制する技術が数多く発表されている。しかし、この技術では、Fly ash pellet化やセメント固化と同様、資源保護の点や原料費の点が好ましくない。加えて、Ca溶出が止まると有害元素の溶出抑制ができなくなる可能性があり、すなわち溶出抑制効果の長期安定性の点では解決すべき課題を未だに有している。つまり、環境規制が悪化した際に問題として顕在化する可能性がある。
上記したような様々な困難の中、石炭灰の無害化する技術としては、以下の特許文献に示す技術が開発されている。
特許文献1には、賦形剤以外の添加剤を用いることなく流動床フライアッシュを造粒した後、得られた造粒物を800~1100℃の温度で焼成する流動床フライアッシュ中の重金属不溶化方法が開示されている。この技術は、賦形剤以外の添加物を用いることなく、石炭灰を造粒した後、得られた造粒物を800~1100℃の温度で焼成するといった不溶化技術であり、得られた不溶化製品は、路盤材原料として利用するとされ、石炭灰に含有する重金属の不溶化技術を提供するものとなっている。
特許文献2は、有害物を含有する廃棄物にセメントおよび石灰を添加し混合する混合工程と、該混合工程により得られる混合物を水熱処理する水熱処理工程とを有する廃棄物の処理方法を開示する。この技術により、B、F、Se、Cr等を含む廃棄物、例えば石炭灰の有害元素がリサイクル時に溶出することを抑制できるとしている。
特許文献3は、石炭灰を造粒固化して造粒物を成形し、該造粒物を焼成する石炭灰からの有害物質の溶出抑制方法を開示する。
特許文献4は、重量で、フライアッシュ:1%~70%、ガラス又はガラスカレット:4%~60%、ボトムアッシュ:1%~80%の原料を粒粉体とし、これら原料を混合して空気遮断状態下に、600℃~1100℃の温度域で1分間~120分間の焼成を行った後、空気遮断状態下に冷却するセラミック多孔質体の製造方法を開示する。
この技術は、ボトムアッシュを原料の一部として有害重金属溶出の危険性の無い(中略)セラミックス多孔質体を製造するものであり、石炭灰をガラスと混合し、空気遮断下で1~120分間焼結することとしている。
特開2016-147243号公報 特開2007-268513号公報 特開2015-142910号公報 特開2009-7233号公報
しかしながら、特許文献1の技術を用いて、石炭灰を無害化したとしても、製造された製品は成形体形状であるため、石炭灰の主用途であるセメントには使用できず、路盤材としての使用に限定されるといった不都合があった。加えて、無害化処理において、賦形剤を入れるため、材料添加が必要になり、コスト面や資源保護の点でデメリットが生じることとなる。また、石炭灰を無害化するのに、1000℃で1時間(Fの無害化)という高温且つ長時間の加熱を必要とする。
また、特許文献2の技術を用いて、石炭灰(廃棄物)を無害化すると、廃棄物の成形体を造形するためのセメントに加え、石灰を添加する必要があり、コスト面や資源保護の点でデメリットが生じることとなる。加えて、造粒工程が必要であるため、コストが嵩むこととなる。特許文献2の技術により製造された製品は、成形体形状であるため、石炭灰の主用途であるセメントには使用できず、路盤材としての使用に限定されるといった難点もある。特許文献2の技術のように、Ca分を添加しそれが溶出することで有害元素の溶出を抑制するものは、Ca溶出が終了すると有害元素溶出の抑制が十分でなくなる、つまり長期の溶出抑制が困難となる可能性が高いという短所がある。
特許文献3の技術に関しては、実施例に示されている石炭灰の有害元素溶出量が、処理前の段階ですでに環境基準以内であり、熱処理の効果が出現する温度が明確化できていないといった難点があり、有害元素が多く含まれる場合であっても本当に石炭灰を無害化できるか疑問が残る。
特許文献4の技術に関しては、熱処理時間は1~120分としているが、実施例はいずれも1時間であり、1分という数値に根拠が無い。すなわち、特許文献4の技術を用いたとしても、本当に石炭灰を無害化できるか疑問が残る。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、石炭灰のリサイクルにおいて、有害元素の溶出抑制を目的とし、ペレット化したり、セメントを添加することで固化したり、Ca源を入れるなどの技術によらず、石炭灰の有害元素の溶出量を大幅に削減することを可能とする石炭灰の無害化技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の石炭灰の無害化方法は、石炭を燃焼した後に発生する石炭灰中に、フッ素、セレン、ホウ素の少なくとも1つ以上が存在する場合に、下記の(1)~(3)のいずれかの条件にて加熱処理を行うことを特徴とする石炭灰の無害化方法。
(1)前記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、フッ素のみが所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、700℃以上900℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
(2)前記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、セレンのみが所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、900℃以上1150℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
(3)前記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、少なくともホウ素が所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、1000℃ 以上1300℃ 未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
お、本技術的手段は、フッ素(F)、ホウ素(B)、セレン(Se)、ヒ素、六価クロム、鉛、カドミウム、水銀等の有害元素のうち、特に溶出量が多くなることが知られているF、B、Seについての無害化方法を記載したものであり、上記したいずれの温度や時間条件において、F、B、Se以外の有害元素のいずれも無害化できることを出願人は確認している。
また、本発明の石炭灰の無害化方法は、石炭を燃焼した後に発生する石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、ホウ素の量を予め調べておき、その結果、フッ素、セレン、ホウ素の少なくとも1つ以上が存在し且つ所定の溶出基準量を超えると推定される際に、下記の(
1)~(3)のいずれかの条件にて、加熱処理を行うことを特徴とする石炭灰の無害化方法。
(1)前記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、フッ素のみが所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、700℃以上900℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
(2A)前記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、セレンのみが所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、900℃以上1150℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
(2B)前記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、ホウ素が所定の溶出基準量を超えないと推定され、且つ含まれるフッ素とセレンとが所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、900℃以上1150℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
(3)前記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、少なくともホウ素が所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、1000℃ 以上1300℃ 未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
ましくは、前記加熱処理を行うに際しては、前記石炭灰に添加材を加えないとよい。
好ましくは、前記加熱処理を行うに際しては、前記石炭灰を非造粒とするとよい。
好ましくは、前記石炭灰に対する加熱処理を、キルン炉、回転炉床炉、電気炉のいずれかにて実施する、又は精錬中の製鋼スラグ上に散布することで実施するとよい。
本発明の技術を用いることで、粉末状の石炭灰から、有害元素が大量に溶出することを確実に防止することが可能となる。これにより、路盤材利用に限定されていた石炭灰の利用先を、セメント用途など粉末で使用できる用途まで広げることができる。また、本発明の技術によれば、溶出抑制のための副原料添加が不要となり、資源保護や原材料費の低減が可能になり、長期溶出抑制も実現できるようになる。
熱処理温度とF溶出量との関係をまとめたグラフである。 熱処理温度とSe溶出量との関係をまとめたグラフである。 熱処理温度とB溶出量との関係をまとめたグラフである。 熱処理前後におけるBの溶出状態を示した図である。 熱処理後における石炭灰の様子を示した写真である。
以下、本発明にかかる石炭灰の無害化方法、言い換えれば、石炭灰から有害元素が溶出することを抑制する方法の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
石炭を燃料とする火力発電設備やボイラなどのプロセスからは、石炭灰といわれる粉じん状の副産物が発生することが知られている。この石炭灰は、火力発電所や大型のボイラのような大規模設備では膨大な量となる。そのため、廃棄物の低減を意図し、石炭灰の再利用(リサイクル材としての使用)が行われている。リサイクルの方法の一つとしては、石炭灰を造粒物の形(Fly ash pellet)に成形し、それを一旦蒸気エージング処理にて強度を出したのちに粉砕し路盤材に使用するという、石炭灰の無害化技術が実用化されている。
一方で、本願発明にかかる石炭灰の無害化方法は、火力発電設備やボイラなどのプロセスにて発生する石炭灰に対して、以下の条件(1)~条件(3)のいずれかのもとで、加熱処理を行うものである。
その条件とは、以下の通りである。
条件(1):石炭灰中に、フッ素(Fと表記することもある)のみが存在する場合には、加熱の条件を700℃以上900℃未満の温度にて、60分間以上120分間未満とする。
条件(2):石炭灰中に、セレン(Seと表記することもある)のみ、又はフッ素とセレンとが存在する場合には、加熱の条件を900℃以上1150℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
条件(3):石炭灰中に、ホウ素(Bと表記することもある)が存在する場合には、加熱の条件を1000℃以上1300℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
このような加熱処理を行うに際しては、石炭灰に、何らかの添加材を加えることはしていない(添加材の非添加)。また、ペレタイザーなどを用いて、石炭灰を造粒物の形(Fly ash pellet)に成形することもしない。石炭灰を粉末のまま熱処理して、粉末のままリサイクル材として使用するものである。そのため、造粒されているものに比べて石炭灰の内部に熱が伝わりやすく、石炭灰を無害化できる温度は従来よりも低温となり、経済的である。また、無害化された石炭灰は、セメントのみならず、環境修復材や路盤材、土木資材としても利用可能である。つまり、フライアッシュセメント(焼成済みセメントに1~3割程度の石炭灰を混合する)としても利用可能であり、無害化した石炭灰の利用価値も高くなる。
本願発明の石炭灰の無害化方法のより具体的なやり方としては、まず、火力発電設備やボイラなどのプロセスにて発生する石炭灰(リサイクル材として使用しようと考えている石炭灰)に対して、事前にこの石炭灰中に含まれるF、Se、Bの量を調べておく。なお、火力発電設備やボイラなどの使用原料や運転条件により、排出される石炭灰の有害元素の溶出量が予想できたり、過去の操業実績より、石炭灰中に含まれるF、Se、Bの量が判っている場合には、予め有害元素(F、Se、B)の含有量を調べる必要はなく、予想値や過去の実績値に基づいて、加熱処理の条件(条件(1)~条件(3)のいずれか)を選択するとよい。
その後、事前調査の結果、石炭灰中に含まれるFの量が、所定の溶出基準量(例えば、0.8mg/L、環告第46号)を超えると推定される際には、700℃以上900℃未満の温度にて、60分間以上120分間未満の条件で、石炭灰に熱を加えるようにする。SeやBに比べて、Fは低温の加熱で溶出抑制が可能であるため、石炭灰に含まれる有害元素がFのみの場合は、低温の加熱にてFのみの溶出をまず抑制する。このような低温加熱を行えば、従来に比して、加熱に必要なエネルギも時間も節約可能となる。
また、事前調査の結果、石炭灰中に含まれるSeの量、又はSeとFの量が所定の溶出基準量(例えば、セレン:0.01mg/L、環告第46号)を超えると推定される際には、900℃以上1150℃未満の温度にて60分間以上120分間未満の条件で、石炭灰にに熱を加えるようにする。つまり、Fに比べてさらに高温で処理しなければ無害化できないSeが石炭灰に含まれている場合は、Fのみの場合よりも高温の加熱を行う。このような高温の加熱を行えば、SeとFとの双方を無害化することが可能となる。また、900℃以上1150℃未満という加熱温度は、Bの溶出抑制を考慮した加熱温度よりは低く、加熱に必要なエネルギや時間を十分に節約可能なものとなる。
事前調査の結果、石炭灰中に含まれるBの量が、所定の溶出基準量(例えば、1.0mg/L、環告第46号)を超えると推定される際には、1000℃以上1300℃未満の温度にて60分間以上120分間未満の条件で、石炭灰に熱を加えるようにする。このような高温の加熱を行えば、無害化が困難なBの溶出抑制が可能となり、F、Se、Bといった有害な元素の溶出を確実に抑制することができるようになる。
なお、石炭灰中にSeとBが存在した場合や、F,Se,Bのすべてが存在した場合には、Bの無害化を鑑み、条件(3)を選択する。
石炭灰に対する加熱処理は、様々な炉で行うことができる。例えば、電気炉で行ってもよく、高炉用のペレットなどを製造するためのキルン炉(ロータリーキルン炉)や回転炉床炉などで加熱処理を行ってもよい。また、精錬中の製鋼スラグ上に散布することで、石炭灰に熱を付与するようにしてもよい。
このようにすることで、火力発電設備やボイラなどのプロセスから排出される石炭灰を、添加材など無しで且つ粉末状態で加熱し無害化することが可能となる。加熱にあたっては、従来の技術(例えば、特許文献1、Fを無害化するのに1000℃で1時間の加熱が必要)に比して、非常に低温で熱処理が行え、Fの溶出量を確実に環境基準以下とすることができる。
なお、本発明は、フッ素(F)、ホウ素(B)、セレン(Se)、ヒ素、六価クロム、鉛、カドミウム、水銀等の有害元素のうち、特に溶出量が多くなることが知られているF、B、Seについての無害化方法を記載したものであり、上記したいずれの温度や時間条件において、F、B、Se以外の有害元素のいずれも無害化できることを出願人は確認している。
表1には、上記した方法により、石炭灰を無害化した実験の結果が示されている。
実験の条件としては、石炭灰の粉末50gを白金坩堝に入れ、実験室規模の電気炉にて加熱処理した。
具体的には、φ50mm、高さ35mmの白金坩堝に、粉末状態の石炭灰を15g、高さ15mm程度入れた。なお、本発明は粉末状態の石炭灰に熱を加えることに特徴があるため、熱が十分加わるものであれば、石炭灰の投入量、層厚は限定されない。
表2に示すように、加熱処理を行う石炭灰は「石炭灰A」と「石炭灰B」の2種類であり、これらの石炭灰はF、Se、Bの溶出量が互いに異なるものとなっている。つまり、「石炭灰A」及び「石炭灰B」は、いずれも環告第46号の基準値(環境基準値)を超えるF、Se、Bを含むものとなっている。
その後、予熱した実験室規模の電気炉に上記白金坩堝を装入し、条件(1)~条件(3)のいずれかに基づき、石炭灰の加熱処理を行った。
条件(1)~条件(3)のいずれかに基づき、所定時間だけ加熱後、電気炉から取り出した上で、25℃の大気雰囲気下で冷却した(図3参照)。なお、本発明は粉末状態の石炭灰に熱を加えることに特徴があるため、冷却条件には影響を受けないことを、本願出願人は確認している。冷却後の石炭灰は、環告46号溶出試験に基づき、溶出試験を行った。
表1、表2は、実験の結果を一覧の形でまとめたものである。
Figure 0007055943000001
Figure 0007055943000002
表1の比較例、表2は、本願発明の加熱処理を行っていない石炭灰A,Bからの有害元素の溶出状態を示したものである。表からわかるように、実験に用いた石炭灰A,Bでは、環告46号溶出試験を行うと、環告46号の基準値を大幅に超える量のF、Se、Bが溶出していることがわかる。
一方、表1の結果をグラフにしたものが、図1A~図1C、図2である。
図1Aから明らかなように、加熱処理での温度とFの溶出量を鑑みた場合、加熱温度が700℃以上で1時間の加熱時間を付与することで、フッ素の溶出量は溶出基準の0.8mg/Lを下回ることがわかる。また、未処理のもの(比較例)に比して、溶出量は一桁小さいものとなっている。本願出願人は、熱エネルギーの過剰な使用は自然環境に対する影響が大きいと考え、700℃以上900℃未満の温度にて、60分間以上120分間未満の条件で、石炭灰に熱を加えることとした。
図1Bから明らかなように、加熱処理での温度とSeの溶出量を鑑みた場合、加熱温度が900℃以上で1時間の加熱時間を付与することで、Seの溶出量は溶出基準の0.01mg/Lを下回ることがわかる。また、未処理のもの(比較例)に比して、溶出量は一桁小さいものとなっている。本願出願人は、熱エネルギーの過剰な使用は環境に対する影響が大きいと考え、900℃以上1150℃未満の温度にて60分間以上120分間未満の条件で、石炭灰に熱を加えることとした。
図1Cから明らかなように、加熱処理での温度とBの溶出量を鑑みた場合、加熱温度が1000℃以上で1時間の加熱時間を付与することで、Bの溶出量は溶出基準の1.0mg/Lを下回ることがわかる。また、未処理のもの(比較例)に比して、溶出量は一桁小さいものとなっている。本願出願人は、熱エネルギーの過剰な使用は環境に対する影響が大きいと考え、1000℃以上1300℃未満の温度にて60分間以上120分間未満の条件で、石炭灰に熱を加えることとした。
図2は、石炭灰中のBの含有量に着目したものである。
熱処理前の石炭灰に含有されるBのうち、8割程度のものが、易溶出(溶出が容易な状態)であることを本願出願人は確認している。しかしながら、本願発明の加熱処理を行うことで、石炭灰に含有されるBのうち、5割程度が難溶出(溶出が困難な状態)となり、石炭灰の無害化が進んでいることがわかる。なお、熱処理前後に関し、Bの含有量の変化はほとんどないが、溶出量が減少することが明らかとなった。このことは、Bが大気飛散等するのではなく、その形態が変化したことを示唆していると考えられる。
なお、前述した図3を参照するに、石炭灰を溶融せずとも無害化できていることが見て取れる。このことは、溶融した成分に有害元素が内包されることで無害化されたものではないことを示唆していると思われる。
以上の結果より、本発明の技術を用いることで、石炭灰からの有害元素の溶出量を大幅に削減し、環境基準値以下に抑えることができる。
特に、本発明の技術によれば、石炭灰を粉末状態のままで無害化できるため、その後の用途によらずリサイクル可能である。また、粉末状態で加熱することで、従来よりも試料への熱の伝わりが早く、従来よりも低温で無害化することができる。前述した実施例においては、溶出元素が多い石炭灰を使い、元素毎に必要な熱処理温度を調べており、この点からも本来必要としないような加熱を抑えることも実現している。加えて、従来の無害化処理のように、溶出抑制材(石灰など)を添加する必要が無い為、資源保護につながり、且つリサイクルのためのコストを抑えることができる。従来技術にあるような石灰添加と異なり、長期溶出抑制も実現できる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。

Claims (5)

  1. 石炭を燃焼した後に発生する石炭灰中に、フッ素、セレン、ホウ素の少なくとも1つ以上が存在する場合に、下記の(1)~(3)のいずれかの条件にて加熱処理を行うことを特徴とする石炭灰の無害化方法。
    (1)前記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、フッ素のみが所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、700℃以上900℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
    (2)前記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、セレンのみが所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、900℃以上1150℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
    (3)前記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、少なくともホウ素が所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、1000℃ 以上1300℃ 未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
  2. 石炭を燃焼した後に発生する石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、ホウ素の量を予め調べておき、その結果、フッ素、セレン、ホウ素の少なくとも1つ以上が存在し且つ所定の溶出基準量を超えると推定される際に、下記の(1)~(3)のいずれかの条件にて、加熱処理を行うことを特徴とする石炭灰の無害化方法。
    (1)記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、フッ素のみが所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、700℃以上900℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
    (2記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、セレンのみが所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、900℃以上1150℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
    (2B)前記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、ホウ素が所定の溶出基準量を超えないと推定され、且つ含まれるフッ素とセレンとが所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、900℃以上1150℃未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
    (3)記石炭灰中に含まれるフッ素、セレン、およびホウ素の内、少なくともホウ素が所定の溶出基準量を超えると推定される際には、加熱条件を、1000℃ 以上130
    0℃ 未満の温度にて60分間以上120分間未満とする。
  3. 前記加熱処理を行うに際しては、前記石炭灰に添加材を加えないことを特徴とする請求項1又は2に記載の石炭灰の無害化方法。
  4. 前記加熱処理を行うに際しては、前記石炭灰を非造粒としていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の石炭灰の無害化方法。
  5. 前記石炭灰に対する加熱処理を、キルン炉、回転炉床炉、電気炉のいずれかにて実施する、又は精錬中の製鋼スラグ上に散布することで実施することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の石炭灰の無害化方法。
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